説明

ハイブリッド車両の駆動制御装置

【課題】燃料の供給を遮断してエンジンを停止させるときに、バッテリの劣化を抑制しながら、エンジンを迅速に停止させることが可能なハイブリッド車両の駆動制御装置を提供することである。
【解決手段】駆動制御装置30は、排気管24内に設けられた排気ガスを浄化する触媒コンバータ16,17と、排気ガスの空燃比を検知するサブO2センサ26とを備えたハイブリッド車両10に搭載され、燃料の供給を遮断してエンジン11を停止させるときに、エンジン11に対してMG1の発電負荷を加えてエンジン11の回転数を下げる引き下げ手段31と、排気ガスの空燃比がリーン状態となるまで、エンジン11に対するMG1の発電負荷の付与を制限又は禁止する引き下げ制限手段32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両では、例えば、エンジンの停止と再始動が繰り返される間欠運転が頻繁に行われる。エンジンの停止は、燃料の供給を遮断することで行なわれるが、回転しているエンジンは燃料の遮断により直ちに停止せず、惰性によって幾分かの回転を続ける。燃料の供給を遮断した後、エンジンが完全停止するまでの時間が長くなると、酸素(O2)に富む排気ガスが触媒コンバータに流入して、触媒の窒素酸化物(NOx)浄化能力が低下する可能性がある。つまり、排気ガスの空燃比がリーン状態になると、NOxと共に触媒コンバータに流入する炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)が、触媒の作用によりNOxと反応して窒素(N2)なる前に酸素と反応し、NOxが浄化されずに排出されることになる。
【0003】
このような状況に鑑みて、例えば、特許文献1には、車両の走行状態に基づいてエンジンを停止させる条件が成立したことを判断する手段と、エンジン停止条件成立に基づいてエンジンの燃料供給を遮断する手段と、燃料遮断後のエンジンの回転を制動するよう発電機能手段の負荷をエンジンに課する手段とを有するハイブリッド車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002‐130001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたハイブリッド車両では、エンジンの停止と再始動が頻繁に繰り返されると、発電機による発電回数が増加して、バッテリの充電が繰り返され、バッテリが劣化する虞がある。つまり、特許文献1の技術は、バッテリの劣化の抑制について未だ改良の余地がある。
【0006】
即ち、本発明の目的は、燃料の供給を遮断してエンジンを停止させるときに、バッテリの劣化を抑制しながら、エンジンを迅速に停止させることが可能なハイブリッド車両の駆動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置は、排気ガスを浄化する触媒を排気系統に備えたハイブリッド車両に搭載され、燃料の供給を遮断してエンジンを停止させるときに、回転電機の発電負荷によりエンジンの回転数を下げるハイブリッド車両の駆動制御装置であって、排気ガスの空燃比がリーン状態となるまで、エンジンに対する発電負荷の付与を制限又は禁止する手段を有することを特徴とする。
【0008】
或いは、本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置は、排気系統に設けられた排気ガスを浄化する触媒と、排気ガスの空燃比を検知する検知装置と、を備えたハイブリッド車両に搭載され、燃料の供給を遮断してエンジンを停止させるときに、検知装置の検知情報に基づいて排気ガスの空燃比がリーン状態であると判定された場合に、エンジンに対して回転電機の発電負荷を付与する手段を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、燃料の供給を遮断してエンジンを停止させるときに、排気ガスの空燃比がリーン状態となるまで、エンジンに対して回転電機の発電負荷が付与されない、又は付与される発電負荷が制限されるため、不要な発電をなくして、バッテリの過充電を抑制することができる。一方、排気ガスの空燃比がリーン状態となれば、発電負荷をかけてエンジンの回転数を迅速に引き下げ、触媒のNOx浄化能力の低下を抑制することができる。
【0010】
また、バッテリの充電率が所定値以上である場合に、エンジンに対する発電負荷の付与を制限又は禁止する手段を有することが好適である。
当該構成によれば、例えば、バッテリの充電率が高く過充電となる虞がある場合に、発電負荷の付与を制限又は禁止して、バッテリの過充電を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るハイブリッド車両の駆動制御装置によれば、燃料の供給を遮断してエンジンを停止させるときに、バッテリの劣化を抑制しながら、エンジンを迅速に停止させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である駆動制御装置及びそれを搭載したハイブリッド車両の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態である駆動制御装置の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態である駆動制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
実施形態では、走行用動力源としてエンジンとモータとを使い分けるシリーズ・パラレル・ハイブリッド方式のハイブリッド車両10(以下、HV車両10とする)を例示するが、シリーズ方式やパラレル方式の車両であってもよい。
【0014】
まず初めに、図1を参照して、HV車両10の構成を詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、HV車両10は、走行用動力源であるエンジン11と、主としてジェネレータとして機能する第1モータジェネレータ(以下、MG1とする)と、主として走行用モータとして機能する第2モータジェネレータ(以下、MG2とする)と、MG1及びMG2に電力を供給可能なバッテリ12と、走行状況やバッテリ12の充電率(SOC:State Of Charge)等に基づいて、エンジン11、MG1、及びMG2の動作を制御する駆動制御装置30とを備える。また、HV車両10には、動力分配機構13やインバータ14,15が搭載されている。また、エンジン11の排気設備には、触媒コンバータ16,17が設けられている。
【0016】
エンジン11は、ガソリン等を燃料とする内燃機関である。エンジン11は、駆動制御装置30からの指令に基づき始動、運転、停止等が制御される。詳しくは後述するが、エンジン11を停止させるときには、駆動制御装置30の機能により、MG1の発電負荷をエンジン11にかけて、エンジン11の回転数を下げる制御がなされる。なお、エンジン11から動力分配機構13へと延伸する出力軸18には、エンジン11の回転数を検出する図示しない回転センサが設置されている。回転センサにより検出される回転数は、駆動制御装置30に入力される。
【0017】
動力分配機構13は、例えば、遊星歯車機構によって構成されることが好適である。エンジン11から出力軸18を介して動力分配機構13に入力された動力は、減速機21及び車軸22を介して駆動輪23に伝達される。また、動力分配機構13は、エンジン11の動力の一部又は全部をMG1に伝達できる。
【0018】
エンジン11の排気管24には、上流側に配置される触媒コンバータ16と、下流側に配置される触媒コンバータ17とが設けられている。触媒コンバータ16,17は、排気ガス中の有害物質を酸化還元して浄化する装置であって、HC、CO、及びNOxを同時に浄化できる所謂三元触媒を含むことが好適である。触媒コンバータ16,17は、例えば、三次元網目構造やハニカム構造の触媒担体の表面に、触媒物質として貴金属触媒(例えば、白金、パラジウム、ロジウム等)が担持された構成である。
【0019】
排気管24には、触媒コンバータ16の上流にメイン空燃比センサ25が設けられている。また、排気管24の触媒コンバータ16,17の間には、サブO2センサ26が設けられている。メイン空燃比センサ25は、例えば、触媒コンバータ16に流入する排気ガスの空燃比に比例する出力特性をもつセンサである。サブO2センサ26は、例えば、空燃比が理論空燃比に対して燃料が濃いか薄いか、つまりリッチ状態かリーン状態かを検出するセンサである。サブO2センサ26は、例えば、理論空燃比を境に、リッチ信号又はリーン信号を出力する。
【0020】
メイン空燃比センサ25及びサブO2センサ26の出力は、それぞれエンジン電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)27に送信される。エンジンECU27には、さらに、燃料噴射弁やエンジン11の運転状態を検出する各種センサ(例えば、エアフロメータ、クランク角センサ、スロットルポジションセンサ、及びアクセルポジションセンサ等)が接続されている。
【0021】
エンジンECU27は、例えば、メイン空燃比センサ25の出力に基づいてメインのフィードバック制御を実行し、サブO2センサ26の出力に基づいてサブのフィードバック制御を実行する。メインフィードバック制御では、排気ガスの空燃比が、理論空燃比を制御中心とする目標空燃比と一致するように燃料噴射量の制御を行う。サブフィードバック制御では、触媒コンバータ16から流出する排気ガスの空燃比の平均が理論空燃比(リッチ状態とリーン状態との間)となるように、メインのフィードバック制御を修正する。
【0022】
また、サブO2センサ26の出力情報は、例えば、エンジンECU27を介して駆動制御装置30にも送信され、エンジン11を停止させるときのMG1の制御にも利用される。
【0023】
MG1は、その回転軸19が動力分配機構13を介してエンジン11の出力軸18と連結されている。そして、MG1は、主としてエンジン11によって駆動されるジェネレータ(発電機)として機能する。MG1は、例えば、永久磁石からなるロータと、U相、V相、W相のステータコイルを含むステータとから構成される三相同期型回転電機である。MG1により発電された三相交流電流は、インバータ14によって直流電流に変換された後、バッテリ12に充電される。また、MG1は、例えば、エンジン11を始動させるセルモータとして機能する。
【0024】
MG2は、主として走行用モータ(電動機)として機能する。MG2は、MG1と同様に、三相同期型回転電機とすることが好適である。MG2は、バッテリ12から供給される電力により回転駆動される。具体的には、バッテリ12の直流電流がインバータ15によって三相交流電流に変換されてMG2に供給される。そして、MG2の出力は、回転軸20が連結された動力分配機構13、減速機21、及び車軸22を介して駆動輪23に伝達される。これにより、HV車両10では、MG2によりエンジン11をアシストする走行又はMG2のみを動力源とするEV走行が可能となる。また、MG2は、回生制動時にジェネレータとして機能する。
【0025】
バッテリ12は、主としてMG2に電力を供給する蓄電装置である。バッテリ12には、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、及びリチウムイオン電池等の二次電池が適用される。バッテリ12には、効率的な使用、劣化防止等の観点から、所定のSOCを上下限値とする管理幅が設定されている。バッテリ12のSOC制御は、駆動制御装置30の機能により実行される。駆動制御装置30は、例えば、図示しない電池監視ユニットにより測定されたSOC情報に基づいて、バッテリ12の過充電又は過放電が発生しないように、MG1、MG2、及びエンジン11の動作を制御する。なお、電池監視ユニットは、図示しない電圧計、電流計、温度計等を用いて、SOCを含むバッテリ12の状態を監視している。
【0026】
インバータ14,15は、上記のように、交流・直流変換装置である。例えば、インバータ14は、駆動制御装置30の制御の下、MG1で発電された交流電流を半導体スイッチング素子のON/OFF操作により直流電流に変換してバッテリ12に充電する機能を有する。また、インバータ14は、要求される発電量に応じた発電機トルクを発生させるために、バッテリ12の直流電流を交流電流に変換してMG1に供給する機能を有する。詳しくは後述するが、これにより、エンジン11にMG1の発電負荷が加わる。
【0027】
駆動制御装置30は、HV車両10の駆動力を制御する装置であって、所謂ハイブリッドECU、或いはその一部として構成することができる。駆動制御装置30は、各センサや各ECUからの情報や信号に基づいて、MG1、MG2、及びエンジン11の動作を統合的に制御する。なお、駆動制御装置30及び各ECUは、CPU、入出力ポート、メモリ等を備えるマイクロコンピュータで構成され、駆動制御装置30の各機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。
【0028】
駆動制御装置30は、燃料の供給を遮断してエンジン11を停止させるときに、バッテリ12の過充電を防止してバッテリ12の劣化を抑制しながら、排気ガスの空燃比がリーン状態となれば、エンジン11を迅速に停止させる機能を有する。当該機能を発揮するため、駆動制御装置30は、引き下げ手段31と、引き下げ制限手段32とを有する。
【0029】
引き下げ手段31は、燃料の供給を遮断してエンジン11を停止させるときに、エンジン11の出力軸18に対して回転数を下げるための引き下げトルクを加える機能を有する。引き下げ手段31は、例えば、MG1にエンジン11の回転抵抗となる発電機トルク(負のトルク)が発生するように、MG1のU相、V相、W相に電流を供給する。つまり、エンジン11には、MG1の発電負荷が付与され、回転数が迅速に引き下げられる。また、MG1は、発電機トルクに応じた電力を発電し、インバータ14を介してバッテリ12を充電する。
【0030】
引き下げ手段31は、例えば、燃料の供給遮断の可否を規定するF/Cフラグ(フューエルカットフラグ)がL(非実行)からH(実行)へと切り替わり、且つ引き下げ制限手段32から引き下げトルクの付与を許可する許可指令を取得したときに、MG1に負のトルクが発生するようにU相、V相、W相に電流を供給して、引き下げトルク、即ちMG1の発電負荷をエンジン11に加えることができる。或いは、引き下げ手段31は、F/CフラグがH(実行)に切り替わったときに、第1の引き下げトルクを加え、引き下げ制限手段32から制限解除指令を取得したときに、第1の引き下げトルクよりも大きな第2の引き下げトルクを加えてもよい。
【0031】
なお、引き下げトルクの大きさは、特に限定されず、例えば、段階的に引き上げてもよい。引き下げトルクを付与する時間も、特に限定されず、例えば、エンジン11の回転数がゼロになるまで付与することができる。
【0032】
引き下げ制限手段32は、排気ガスの空燃比がリーン状態となるまで、エンジン11に対する発電負荷の付与を制限又は禁止する機能を有する。引き下げ制限手段32は、サブO2センサ26から出力信号を取得して、排気ガスの空燃比がリーン側に移行したか否かを判定することが好適である。例えば、サブO2センサ26のリーン信号が予め定めた所定時間以上継続したときに、リーン状態であると判定する。
【0033】
引き下げ制限手段32は、排気ガスの空燃比がリーン状態であると判定したときに、引き下げ手段31に対して、引き下げトルクの付与を許可する許可指令を出力する。或いは、引き下げ制限手段32は、引き下げ手段31に対して、引き下げトルクの増加を許可する制限解除指令を出力する。
【0034】
さらに、引き下げ制限手段32は、バッテリ12のSOCが所定値以上である場合に、エンジン11に対する発電負荷の付与を制限又は禁止する機能を有する。引き下げ制限手段32は、バッテリECUからSOC情報を取得して、SOCが予め定めた所定値以上であるか否かを判定することが好適である。所定値としては、SOCの上限値に近似する値であって、上限値以下に設定することが好ましい。
【0035】
引き下げ制限手段32は、SOCが所定値以上であると判定したときに、引き下げ手段31に対して引き下げトルクの付与を禁止する禁止指令を出力する。或いは、引き下げ制限手段32は、SOCが所定値以上であると判定したときに、引き下げ手段31に対して引き下げトルクを制限する制限指令を出力する。引き下げ制限手段32は、SOCが所定値以上であると判定したときに、例えば、排気ガスの空燃比の判定に基づく許可指令を取り消す、又は空燃比の判定を中止することで、引き下げトルクの付与を禁止することもできる。また、排気ガスの空燃比がリーン状態であり且つSOCが所定値未満であるときに、初めて許可指令や制限解除指令を出力してもよい。
【0036】
次に、図2及び図3を参照して、駆動制御装置30による制御の一例を説明する。
ここで、図2は、エンジン11の回転数やサブO2センサ26の出力信号の経時変化、引き下げトルクの付与のタイミング等を説明するための図であり、横軸を時間軸としている。図3は、駆動制御装置30の制御手順を示すフローチャートである。
【0037】
図2及び図3に示すように、HV車両10の走行状況等に応じてエンジン11を停止させるときには、まず、エンジン11の出力要求を下げて燃料の供給を遮断する(S10)。この手順は、駆動制御装置30の機能によって実行される。駆動制御装置30は、例えば、エンジンECU27に対してエンジン11の出力要求をゼロにする制御指令を出力し、燃料の供給を遮断させる。燃料の供給が遮断されると、F/CフラグがL(非実行)からH(実行)に切り替わると共に、排気ガスの空燃比が次第にリーン側に移行する。
【0038】
S10でF/CフラグがH(実行)に切り替わったことを条件として、排気ガスの空燃比がリーン状態であるか否かを判定する(S11)。この手順は、駆動制御装置30の引き下げ制限手段32の機能によって実行される。引き下げ制限手段32は、例えば、F/CフラグがH(実行)に切り替わったときに、サブO2センサ26の出力信号を取得して、リーン信号が予め定めた所定時間以上継続しているか否かを判断する。そして、リーン信号が所定時間以上継続していると判断したときには、空燃比がリーン状態であると判定する。
【0039】
S11で空燃比がリーン状態であると判定された場合、バッテリ12のSOCが所定値未満であるか否かを判定する(S12)。換言すると、バッテリ12のSOCが所定値以上であるか否かを判定する。この手順も、引き下げ制限手段32の機能によって実行される。引き下げ制限手段32は、例えば、バッテリECUから取得したSOCと予め定めた所定値とを比較して、SOCが所定値未満であるか否かを判定する。なお、S12の手順は、S11の手順よりも先に又は同時に実行してもよい。
【0040】
S12でSOCが所定値未満であると判定された場合には、例えば、引き下げ制限手段32から引き下げ手段31に対して許可指令が出力される。一方、S12でSOCが所定値以上であると判定された場合には、例えば、許可指令が出力されない。或いは、引き下げ制限手段32から引き下げ手段31に対して禁止指令が出力される。
【0041】
S12でSOCが所定値未満であると判定されて、引き下げ制限手段32から許可指令が出力された場合、引き下げトルク、即ちMG1の発電負荷をエンジン11に加える(S13)。この手順は、引き下げ手段31の機能によって実行される。引き下げ手段31は、インバータ14を制御して、MG1にエンジン11の発電機トルクが発生するように、MG1のU相、V相、W相に電流を供給させる。一方、S12でSOCが所定値以上であると判定されて、引き下げ制限手段32から許可指令が出力されない場合には、引き下げトルクの付与が禁止される。
【0042】
以上のように、駆動制御装置30は、燃料の供給を遮断してエンジン11を停止させるときに、排気ガスの空燃比がリーン状態となり、且つSOCが所定値未満である場合に、エンジン11に対してMG1の発電負荷をかける。これにより、不要な充電をなくし、バッテリ12の過充電を抑制しながら、触媒のNOx除去能力が低下するリーン状態では、エンジン11を迅速に停止させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で設計変更できる。
【0044】
例えば、上記実施形態では、サブO2センサ26の出力情報に基づいて、排気ガスの空燃比がリーン状態であるか否かを判定したが、当該判定にメイン空燃比センサ25の出力情報を用いてもよい。また、実験やシミュレーションにより燃料供給の遮断後、排気ガスの空燃比がリーン状態となるまでの時間を予め求めておき、空燃比の検知装置を用いることなく、燃料供給が遮断されてから当該時間が経過するまでエンジン11に対する発電負荷の付与を禁止してもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、例えば、引き下げ制限手段32から許可指令を取得することを条件として、引き下げ手段31の機能により、エンジン11に対して引き下げトルクを付与するものとして説明したが、引き下げ手段31が排気ガスの空燃比がリーン状態であるか否かを判定して、引き下げトルクの付与を実行してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 ハイブリッド車両(HV車両)、MG1 第1モータジェネレータ、MG2 第2モータジェネレータ、11 エンジン、12 バッテリ、13 動力分配機構、14,15 インバータ、16,17 触媒コンバータ、18 出力軸、19,20 回転軸、21 減速機、22 車軸、23 駆動輪、24 排気管、25 メイン空燃比センサ、26 サブO2センサ、27 エンジン電子制御ユニット(エンジンECU)、30 駆動制御装置、31 引き下げ手段、32 引き下げ制限手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを浄化する触媒を排気系統に備えたハイブリッド車両に搭載され、燃料の供給を遮断してエンジンを停止させるときに、回転電機の発電負荷により前記エンジンの回転数を下げるハイブリッド車両の駆動制御装置において、
排気ガスの空燃比がリーン状態となるまで、前記エンジンに対する前記発電負荷の付与を制限又は禁止する手段を有することを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項2】
排気系統に設けられた排気ガスを浄化する触媒と、排気ガスの空燃比を検知する検知装置とを備えたハイブリッド車両に搭載され、
燃料の供給を遮断してエンジンを停止させるときに、前記検知装置の検知情報に基づいて排気ガスの空燃比がリーン状態であると判定された場合に、前記エンジンに対して回転電機の発電負荷を付与する手段を有するハイブリッド車両の駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置において、
バッテリの充電率が所定値以上である場合に、前記エンジンに対する前記発電負荷の付与を制限又は禁止する手段を有することを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−218710(P2012−218710A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90092(P2011−90092)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】