説明

ハイブリッド車両の駆動装置

【課題】 エンジンとモーターを選択的に使い分けて動力をトランスミッション側へ延びる出力軸へ伝達し、軸長を短くすると共にモーターの性能を高めたハイブリッド車両用の駆動装置の提供。
【解決手段】 エンジン側にはトルクコンバータ2を配置すると共に該トルクコンバータ2の後方にモーター3を配置した構造とし、トルクコンバータ内にはポンプ15を回転する第1クラッチ1と、出力軸4が嵌るタービンハブ27と上記ポンプ15を連結する第2クラッチ5を備えると共に、第2クラッチ5とタービンハブ間にはダンパ6を取付けている。そしてモーター3のステータ31を取付ける固定フレーム35とロータ32を取付ける回転フレーム39をスリーブ37,40に同心を成して取付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両に取付けられ、軸長を短くしてコンパクトで性能向上を図った駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両はエンジンとモーターの2種類の動力源を備え、走行に際してはこれらエンジンとモーターとを選択的に車輪側に接続し、それぞれの駆動出力を駆動車輪に伝達して車両は走行することが出来る。エンジンが作動して走行している場合には同時にジェネレータにてバッテリーを充電し、該バッテリーがある程度充電されたならば、エンジンが停止すると共にモーターが作動して車両は走行出来る。又、減速する際にはエンジンは停止してジェネレータにてバッテリーは充電される。
【0003】
そして、バッテリーの充電量が減少した場合、又走行時に加速する場合にはモーターからエンジン駆動に切り換えられるが、その為にクラッチが取付けられている。すなわち、エンジンにて車輪を駆動すると共にジェネレータを回す場合にはクラッチはONされ、又エンジンとモーターによって車輪を駆動する場合にもクラッチはONされる。
【0004】
そして、モーターによって車輪を駆動し、エンジンを停止している場合にはクラッチはOFFとし、同じく減速する場合にエンジンを停止してジェネレータにて発電する時もクラッチはOFFとなる。すなわち、クラッチを接続又は分離することにより、エンジンとモーターとの間で駆動力の伝達又は遮断が行なわれる。ところで、従来からハイブリッド車両の駆動装置に関する技術は色々と知られている。
【0005】
特開2009−1127号に係る「ハイブリッド駆動装置」は従来技術の1つであり、電動機の回転部材の軸線に沿った方向に小型化されたハイブリッド駆動装置である。
そこで、エンジンの動力がクラッチを第1トルク伝達部材に伝達されるように構成され、かつ、電動機の動力がクラッチを経由せずに第1トルク伝達部材に伝達されるように構成されているハイブリッド駆動装置であり、前記電動機の回転部材の軸線を中心とする半径方向で、前記電動機の内側に前記クラッチが配置された構造としている。
【0006】
ところが、該ハイブリッド駆動装置は、電動機の回転部材の軸線を中心とする半径方向で、該電動機の内側にクラッチが配置されているものの、駆動装置全体としてはクラッチが2ヶ所とダンパも2ヶ所に設けられ、軸長はそれ程短くならない。勿論、ダンパを2ヶ所に設けることで製造コストは高くなる。
【0007】
そして、エンジンからのトルクは軸線付近の内径側にて受ける構造としている為に、エンジンのトルク変動は大きな負荷として軸線付近の内径側に作用することになり、この衝撃的負荷を緩和する為にもクラッチ部位にはダンパは必要となる。そして、電動機(モーター)はトルクコンバータの外殻外周に取付けられているが、該トルクコンバータの外殻が内圧などの影響で変形すれば、電動機のステータとロータ間の隙間に変化が発生し、少なくとも接触しないように前以て該隙間を大きく設定しなくてはならない。しかし、該隙間が大きくなると電動機の性能は低下してしまうといった問題を残している。
【特許文献1】特開2009−1127号に係る「ハイブリッド駆動装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来の上記特開2009−1127号に係る「ハイブリッド駆動装置」には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、エンジンとトルクコンバータ間のダンパを削除することで軸長を短くすると共に製造コストを安くし、又、電動機のステータとロータ間の隙間がトルクコンバータの外殻の変形の影響を受けないようにしたハイブリッド車両の駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の駆動装置では、トルクコンバータ内にフロントカバーとポンプを切り離すことが出来る第1クラッチを配置し、モーターとポンプをトルク伝達可能なように結合している。そして、従来のトルクコンバータと同じように、エンジンからの入力トルクをドライブプレートを介してフロントカバーと外周側の位置で連結し、従って、この部位でのダンパは備えていない。
【0010】
又、トルクコンバータ内にはポンプによって回されたタービンランナが所定の回転速度に達したところでロックアップするように第2クラッチ(ロックアップクラッチ)を備えている。そして、第2クラッチがロックアップする際に発生する衝撃トルクとエンジンのトルク変動を緩和する為にダンパを設けている。ここで、上記第1クラッチ及び第2クラッチの具体的な構造は特に限定せず、上記ダンパの構造も自由である。
【0011】
そして、電動機(モーター)はトルクコンバータの後方(エンジンから離れた方向)に配置され、ステータはトルクコンバータを収容しているハウジングに直接又はトルクコンバータ外殻の後方中央から延びるスリーブと同心を成してハウジングに取付けられた固定フレームの外周ホルダーに取着される。一方のロータはポンプから後方へ延びたスリーブに取付けた回転フレームのホルダーに取着されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るハイブリッド車両の駆動装置は、トルクコンバータのタービンランナが所定の回転速度を越えた際にロックアップするが、この時の衝撃を緩和することが出来るダンパを備えている。しかし、エンジンとトルクコンバータのフロント側を連結する第1クラッチが取付けられている部位にダンパは存在せず、その分だけ駆動装置の軸長は短くなり、よりコンパクト化される。そして、ダンパを設けないことで、製造コストは安くなる。
【0013】
一方、本発明では電動機(モーター)がトルクコンバータの外殻に取付けられず、外殻の変形に基づく電動機への悪影響は発生しない。すなわち、ステータは外殻の後方に延びるスリーブと同心を成して取付けた固定フレームに取着され、又ロータはポンプから後方へ延びたスリーブに取付けた回転フレームに取着されている。従って、ステータとロータは同心を成し、間の隙間は小さく出来ると共に、トルクコンバータの外殻の変形による影響を受けず、その為に該電動機の性能は向上する。そして、第1クラッチをON,OFFすることで、エンジンと電動機を選択的に使用して車両を走行させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るハイブリッド車両の流体伝動装置の概要を示すレイアウト。
【図2】本発明に係るハイブリッド車両の流体伝動装置の実施例。
【図3】本発明に係るハイブリッド車両の流体伝動装置の他の実施例。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係るハイブリッド車両の駆動装置の概要を示すレイアウトである。エンジンの動力はトルクコンバータ(T/C)へ伝達されるが、クラッチ(第1クラッチ)がONされていない状態では外殻が回転するのみでシャフト(出力軸)へ伝達することは出来ない。すなわち、トランスミッションを介して車輪を回転する動力の伝達はされない。
【0016】
上記クラッチ(第1クラッチ)がONすれば、トルクコンバータの外殻と共にポンプが回転し、その結果、外殻に充填されている作動油を介してタービンランナが回転する。そして、タービンランナの回転速度が所定の領域を超えたならば、ロックアップクラッチ(第2クラッチ)がONしてポンプの回転を直接シャフト(出力軸)へ伝達する。この際、ロックアップクラッチ(第2クラッチ)がONすることで発生する衝撃トルクはダンパによって緩和される。
【0017】
一方、該駆動装置にはモーターを備え、上記エンジンとモーターを選択して使い分けすることが出来る。モーターは作動油が充填されている外殻の外に取付けられ、モーターが作動するならばトルクコンバータを介してシャフト(出力軸)を回転することが出来る。すなわち、ロックアップクラッチ(第2クラッチ)がOFFの場合は、ポンプとタービンランナ間の作動油を介してシャフトへトルクを伝達し、ロックアップクラッチ(第2クラッチ)がONの場合は、直接シャフトへトルクが伝達される。そして、エンジンによってポンプが回転する場合には、モーターも回転してジェネレータとして機能するようになる。
【0018】
図2は本発明に係る駆動装置を示す実施例を表している。1は第1クラッチ、2はトルクコンバータ、3はモーター(電動機)、4は出力軸、5は第2クラッチ(ロックアップクラッチ)、6はダンパをそれぞれ表している。エンジンのクランクシャフト7の先端にはドライブプレート8が取付けられ、該ドライブプレート8の外周部はトルクコンバータ2のフロントカバー9に溶接された固定ナット10,10・・・にネジ締めして連結されている。
【0019】
ここで、フロントカバー9の中心にはセンターピース11が溶接されて、クランクシャフト7の先端に形成したセンター穴12に嵌り、該トルクコンバータ2はセンタリングされている。エンジンが作動してクランクシャフト7が回転すれば、トルクコンバータ2の外殻13は回転するが、ピストン14が作動して第1クラッチ1がONになればポンプ15も回転する。すなわち、第1クラッチ1がOFFに成ればポンプ15はエンジンから切り離される。
【0020】
上記第1クラッチ1はピストン14、外ドラム16、内ドラム17、クラッチ外プレート18,18、クラッチ内プレート19から成っている。外ドラム16はフロントカバー9の内側外周部に溶接され、内ドラム17は内殻20のフロント部21に溶接されていて、上記クラッチ外プレート18,18の外周は外ドラム16に係合している。すなわち、クラッチ外プレート18,18は回転することは出来ないが、軸方向への移動は可能と成っている。ただし、外ドラム16の先端にはストッパーが所定の位置に設けられ、ピストン14に押圧されたクラッチ外プレート18,18の移動をストッパーにて規制している。
【0021】
又、クラッチ内プレート19は上記クラッチ外プレート18,18の間に挟まれて、その内周は内ドラム17に係合している。クラッチ内プレート19も内ドラム17に対して回転することは出来ないが、軸方向への移動は許容されている。従って、上記ピストン14が作動して同図の右方向へ移動するならば、クラッチ内プレート19はクラッチ外プレート18,18に挟まれて、フロントカバー9の回転をフロント部21へ伝達し、そして内殻20と共に上記ポンプ15が回転する。すなわち、エンジンにてトルクコンバータ2のポンプ15が回転する。
【0022】
内殻20内には該ポンプ15を構成すると共に、タービンランナ22を対向して配置し、ポンプ15とタービンランナ22の間にはステータ23が取付けられている。又、内殻20のフロント部21には第2クラッチ5(ロックアップクラッチ)が設けられ、ロックアップピストン24の作動にて、該第2クラッチ5はON−OFFすることが出来るように成っている。
【0023】
ところで、外殻13の内部には作動油が充填されている為に、ポンプ15が回転するならば、作動油が流れてタービンランナ22も回転することが出来る。上記ステータ23はワンウエイクラッチを介して軸支されて、タービンランナ22の回転速度が低い場合にはステータ23は回転しないでタービンランナ22から流れ出た作動油をポンプ15へ戻すように作用し、タービンランナ22の回転速度が速くなれば、該ステータ23も回転することが出来る。
【0024】
そして、該タービンランナ22の回転速度が高くなって所定の領域に達したならば、上記第2クラッチ5が作動してポンプ15の回転を直接出力軸4へ伝達することが出来る。ところで、第2クラッチ5はロックアップピストン24、内殻20に溶接された外ドラム25、ロックアップピストン24にリベット止めされている内ドラム26、そして外ドラム25に係合するクラッチ外プレート、内ドラム26に係合しているクラッチ内プレートで構成している。
【0025】
そこで、ロックアップピストン24が作動して左方向へ移動するならば、クラッチ外プレート及びクラッチ内プレートはフロント部21との間に挟まれて、フロント部21の回転トルクは上記出力軸4へ伝達される。ここで、内ドラム26とタービンハブ27との間にはダンパ6が介在している。すなわち、ロックアップピストン24が作動して第2クラッチ5がONする場合、タービンハブ27に取付けられているタービンランナ22とフロント部21との回転速度は多少違い、僅かに速いフロント部21に係合することで衝撃トルクが発生する。
【0026】
この衝撃トルクを緩和する為に上記ダンパ6を設けている。該ダンパ6は中央ディスク28と両側プレート29a,29b、及び複数本のダンパスプリング30,30・・・から構成している。両側プレート29a,29bに形成されているバネ収容部にダンパスプリング30,30・・・が収容され、又リング状の中央ディスク28の内周側にはバネ押えを設けている。そして、両側プレート29a,29bにて中央ディスク28は挟まれて、バネ押えの間に上記ダンパスプリング30,30・・が介在している。
【0027】
そして、中央ディスク28の外周は内ドラム26と係合し、両側プレート29a,29bは上記タービンハブ27と連結している。すなわち、タービンハブ27の外周に形成したスプライン歯にプレート29bの内周に形成した歯が係合して、相対回転することが出来ない構造と成っている。そこで、ピストン24が作動して第2クラッチ5がONする際の衝撃トルクはダンパスプリング30,30・・・が圧縮変形することで緩和される。勿論、第2クラッチ5がONする際の衝撃トルクだけでなく、ロックアップ状態でのエンジンのトルク変動を該ダンパ6にて吸収することが可能と成る。
【0028】
一方、本発明の駆動装置はハイブリッド車両に搭載されるもので、上記トルクコンバータ2の後方にはモーター3(電動機)が備わっている。該モーター3は回転しないリング状のステータ31と回転するロータ32で構成されているが、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機(ジェネレータ)としても機能するように成っている。
【0029】
そこで、該ステータ31は軸方向に沿って積層された複数枚の電磁鋼板とこの電磁鋼板に巻き付けたコイルで構成され、又ロータは軸方向に沿って積層された複数枚の電磁鋼板が締結具33にて締付けられ、この状態でホルダー34の外周に取付けられて上記ステータ31の穴に嵌っている。
【0030】
ところで、上記ステータ31は固定フレーム35のホルダー36に取付けられ、この固定フレーム35は上記トルクコンバータ2の外殻13の後方中央に延びるスリーブ37に同心を成して取付けられ、外周はハウジング38に固定されている。ここで、該固定フレーム35は回転しないが、スリーブ37は回転することが出来るように成っている。
【0031】
又、ロータ32は回転フレーム39の外周に設けたホルダー34に取付けられ、この回転フレーム39は内殻20の後方中央から延びるスリーブ40に取付けられ、回転フレーム39のスプライン穴にスリーブ40に形成したスプライン軸部が嵌っている。従って、ロータ32とスリーブ40、及びポンプ15は同調して回転することが出来る構造と成っている。
【0032】
ここで、ステータ31の穴にロータ32が嵌って回転することが出来るが、該ステータ31とロータ32との間に形成される隙間41は小さくなっている。すなわち、ステータ31を取付けている固定フレーム35はスリーブ37と同心を成し、ロータ32を取付けている回転フレーム39はスリーブ40と同心を成している為に、トルクコンバータ2の外殻13の変形によって位置ズレすることはなく、両者の隙間41は小さくすることが可能となり、そのことから、該モーター3の性能は高くなる。
【0033】
すなわち、固定フレーム35と回転フレーム39との間には軸受け46が介在して同心を成している。又、該回転フレーム39はポンプを取付けているフレーム47との間に軸受け48が介在している。ただし、回転フレーム39を軸支する軸受け48をフレーム47に限定する必要はなく、ハウジング側との間に軸受けを設けることも可能である。例えば、回転フレーム39のホルダー34を後方側へ延ばし、ハウジング38に形成したボス49との間に軸受けを取付けることも出来る。
【0034】
ところで、本発明の流体伝動装置の動作を以下に説明する。
(1)エンジンのみが作動する場合。
エンジンが作動する時にはクランクシャフト7によってドライブプレート8を介してフロントカバー9及び外殻13は回転する。そして、作動油が出力軸4の軸穴42を流れて油路43から油室44へ入ってピストン14を動かして第1クラッチ1をONする。
【0035】
そこで、第1クラッチ1がONすればポンプ15が回転し、該ポンプ15によって作動油を媒介としてタービンランナ22が回転する。タービンランナ22はタービンハブ27に取着されており、その為にタービンハブ27の軸穴に嵌っている出力軸4が回転し、トランスミッションへ動力が伝達される。そして、タービンランナ22の回転速度が高くなって所定の領域を超えたならば、内殻20内又は外殻13と内殻20間の油圧を制御することによりロックアップピストン24を動かして第2クラッチ5(ロックアップクラッチ)をONする。
【0036】
従って、ポンプ15の回転はタービンハブ27に直接伝達されるが、第2クラッチ5がONされてロックアップされる時にはポンプ15とタービンランナ22との間に設けたダンパ6によって、両者の速度差に基づく衝撃トルクを緩和することが出来る。勿論、ロックアップ時のみならず、ロックアップ状態でのエンジンのトルク変動も吸収することが可能となる。
【0037】
ここで、ポンプ15の後方中央からスリーブ40が延び、このスリーブ40に回転フレーム39が取付けられていて、ロータ32はポンプ15と共に回転し、その結果、発電することが出来る。すなわち、エンジンが作動することで出力軸4を回転して車輪に動力を伝達する一方で、モーター3が発電機として機能することでバッテリーに充電を行なうことが出来る。
【0038】
(2)エンジンとモーターが作動する場合。
車両のスタート時に加速する場合にはエンジンと共にモーターが同時に作動することが出来る。従って、この場合には上記ロータ32の回転トルクは回転フレーム39を介してスリーブ40へ伝達され、ポンプ15の回転を助長し、エンジンの動力にプラスして出力軸4へ伝達することが出来る。
エンジンの動力伝達に関しては上記(1)にて説明した場合と同じである。
【0039】
(3)モーターのみが作動する場合。
モーター3のみが作動する場合には、エンジンは停止してトルクコンバータ2の外殻13は回転しない。しかし、モーター3によって回転フレーム39を介してスリーブ40が回転し、該スリーブ40が連結しているポンプ15が回転し、該ポンプ15の回転は第2クラッチ5がONされることでダンパ6を介してタービンハブ27へ回転トルクが伝達され、出力軸4が回る。又、回転速度が低い場合には第2クラッチ5がONせず、ポンプ15の回転に伴ってタービンランナ22が回転することでタービンハブ27及び出力軸4が回転することが出来る。ここで、第1クラッチ1はOFF状態とされ、ポンプ15の回転が外殻13へ伝達されないようにしている。
【0040】
(4)減速する場合。
車両が減速する場合、又は下り坂を走行する場合にはエンジンは停止し、出力軸4の回転をロータ32へ伝達して発電するようにモーター3が機能する。すなわち、モーター3は発電機として働く。この場合、出力軸4の回転はタービンハブ27を伝わってダンパ6を介してポンプ15が回される。従って、第2クラッチ5はONされる。ポンプ15が回転するならば、内殻20の後方中央から延びるスリーブ40が回り、該スリーブ40に嵌って取付けられている回転フレーム39が回転してロータ32が回って発電することが出来る。
【0041】
(5)モーターでエンジンを始動させる場合。
車が停止している場合、又はモーター3にて車が走行している場合には、該モーター3によってエンジンを始動させることが出来る。この場合、第1クラッチ1をONにすることにより、モーター3の回転力をエンジンへ伝達する。すなわち、モーター3の回転はポンプ15から第1クラッチ1、外殻13、ドライブプレート8、及びクランクシャフト7へと伝達し、エンジンを回転させることで始動する。
【0042】
このように、ハイブリッドカーでは、エンジンとモーターを選択的に作動して車両が走行することが出来るように成っている。図3は本発明に係る他の実施例であり、前記図2に示す場合とは一部構造を異にしている。すなわち、内殻を外殻のフロントカバー側へ延ばした形状とし、その為に、ロックアップダンパ及びロックアップピストンは内殻内に収まっている。
【0043】
第1クラッチ1のクラッチ外プレート18は外ドラム16に係合し、クラッチ内プレート19は内殻20に溶接して形成した内殻ドラム45に係合している。これらクラッチ外プレート18は外殻13と、そしてクラッチ内プレート19は内殻20と共に回転するが、ピストン14が作動して第1クラッチ1がONすればクラッチ外プレート18とクラッチ内プレート19は互いに係合し、エンジンによって回転駆動される外殻13と共に内殻20は回転し、ポンプ15は回転することが出来る。
【0044】
又第2クラッチ5は内殻ドラム45とロックアップピストン24に取着した内ドラム26との間に構成され、クラッチ外プレートは内殻ドラム45に係合し、クラッチ内プレートは内ドラム26に係合している。そこで、上記ロックアップピストン24が作動するならば内殻ドラム45の回転をタービンハブ27へ伝達することが出来る。この場合、ロックアップピストン24が作動してロックアップする際の衝撃トルクを緩和する為に、ダンパ6がロックアップピストン24とタービンハブ27との間に取付けられている。
【符号の説明】
【0045】
1 第1クラッチ
2 トルクコンバータ
3 モーター
4 出力軸
5 第2クラッチ
6 ダンパ
7 クランクシャフト
8 ドライブプレート
9 フロントカバー
10 固定ナット
11 センターピース
12 センター穴
13 外殻
14 ピストン
15 ポンプ
16 外ドラム
17 内ドラム
18 クラッチ外プレート
19 クラッチ内プレート
20 内殻
21 フロント部
22 タービンランナ
23 ステータ
24 ロックアップピストン
25 外ドラム
26 内ドラム
27 タービンハブ
28 中央ディスク
29 プレート
30 ダンパスプリング
31 ステータ
32 ロータ
33 締結具
34 ホルダー
35 固定フレーム
36 ホルダー
37 スリーブ
38 ハウジング
39 回転フレーム
40 スリーブ
41 隙間
42 軸穴
43 油路
44 油室
45 内殻ドラム
46 軸受け
47 フレーム
48 軸受け
49 ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモーターを選択的に使い分けて動力をトランスミッション側へ延びる出力軸へ伝達するハイブリッド車両用の駆動装置において、エンジン側にはトルクコンバータを配置すると共に該トルクコンバータの後方にモーターを配置した構造とし、該トルクコンバータ内には外殻とポンプを連結する第1クラッチと、出力軸が嵌るタービンハブと上記ポンプを連結する第2クラッチを備えると共に、トルクコンバータのポンプの後方中央から延びるスリーブには回転フレームを取付けると共に該回転フレームのホルダーにはロータを取付けたことを特徴とするハイブリッド車両用の駆動装置。
【請求項2】
上記エンジンのクランクシャフトの先端に取着したドライブプレートとトルクコンバータのフロントカバーを連結した請求項1記載のハイブリッド車両用の駆動装置。
【請求項3】
上記第2クラッチとタービンハブとの間にダンパを取付けた請求項1、又は請求項2記載のハイブリッド車両用の駆動装置。
【請求項4】
上記トルクコンバータ外殻の後方中央から延びるスリーブには固定フレームを同心を成して取付けると共に外周はハウジングに固定し、この固定フレームに設けたホルダー又はハウジングにモーターのステータを取付けた請求項1、請求項2、又は請求項3記載のハイブリッド車両用の駆動装置。
【請求項5】
エンジンとモーターを選択的に使い分けて動力をトランスミッション側へ延びる出力軸へ伝達するハイブリッド車両用の駆動装置において、エンジン側にはトルクコンバータを配置すると共に該トルクコンバータの後方にモーターを配置した構造とし、クランクシャフトの先端に取着したドライブプレートはトルクコンバータのフロントカバーと連結し、該トルクコンバータ内には外殻とポンプを連結する第1クラッチと、出力軸が嵌るタービンハブと上記ポンプを連結する第2クラッチを備えると共に、第2クラッチとタービンハブ間にはダンパを取付け、そして上記トルクコンバータ外殻の後方中央から延びるスリーブには固定フレームを同心を成して取付けると共に外周はハウジングに固定し、この固定フレームに設けたホルダー又はハウジングにモーターのステータを取付け、又トルクコンバータのポンプの後方中央から延びるスリーブには回転フレームを取付けると共に該回転フレームのホルダーにはロータを取付けたことを特徴とするハイブリッド車両用の駆動装置。
【請求項6】
上記第1クラッチは外殻のフロントカバーに固定した外ドラムと内殻のフロント部に取着した内ドラムとの間にクラッチ外プレートとクラッチ内プレートを係合し、そして上記クラッチ外プレート及びクラッチ内プレートを互いに圧接するピストンにて構成した請求項5記載のハイブリッド車両用の駆動装置。
【請求項7】
上記第1クラッチは外殻のフロントカバーに固定した外ドラムと内殻に形成した内殻ドラムとの間にクラッチ外プレートとクラッチ内プレートを係合し、そして上記クラッチ外プレート及びクラッチ内プレートを互いに圧接するピストンにて構成した請求項5記載のハイブリッド車両用の駆動装置。
【請求項8】
上記第2クラッチは内殻に形成したドラムとロックアップピストンに取着した内ドラムとの間にクラッチ外プレートとクラッチ内プレートを係合し、そして上記クラッチ外プレート及びクラッチ内プレートを互いに圧接するロックアップピストンにて構成した請求項5、請求項6、又は請求項7記載のハイブリッド車両用の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−131619(P2011−131619A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290245(P2009−290245)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(594079143)アイシン・エィ・ダブリュ工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】