説明

ハイブリッド車両の駆動装置

【課題】第1モードから第2モードにモードを切り替えるときに、第1クラッチの解放による駆動力の低下を抑制することが可能なハイブリッド車両の駆動装置を提供する。
【解決手段】前輪7を駆動する第1MG3と、第1クラッチ15を介して後輪10と接続され第2クラッチを介して内燃機関とが接続された第2MGと、を備えたHV車両の駆動装置であって、第1及び第2MG3、4がそれぞれ前輪7及び後輪10を駆動する4輪駆動で走行中に、エンジン17で第2MG4に発電をさせ第1MG3で前輪7を駆動する2輪駆動に切り替える場合、第2MG4の駆動力を低下させつつその低下分が第1MG3の駆動力で補償されるように第1MG3の駆動力を上昇させ、第2MG4からの駆動力の出力が停止後に第1クラッチ15を解放状態に第2クラッチ16を係合状態に切り替えた後、エンジン17の始動が行われるように制御する制御手段20を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのモータジェネレータを駆動輪に接続させ、内燃機関をモータジェネレータに接続するハイブリッド車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのモータジェネレータと、内燃機関と、2つのクラッチを備えているハイブリッド車両の駆動装置であって、2つのモータジェネレータのうち一方を前輪に他方を後輪にそれぞれ接続し、一方のモータジェネレータと前輪との間に選択的に動力を伝達する第1クラッチを配置し、一方のモータジェネレータと内燃機関との間で選択的に動力を伝達する第2クラッチを配置する。この構成により、第1モードは、第1クラッチを係合するとともに第2クラッチを解放して、4輪駆動で走行する。また、第2モードは、第1クラッチを解放するとともに第2クラッチを係合して、一方のモータジェネレータは内燃機関の動力により発電し、その発電した電力をバッテリに蓄え、他方のモータジェネレータのみで走行する。これにより、低公害化とエネルギ効率との向上を図るとともに、良好な走行性能と安全性とを得ることができるハイブリッド車両の駆動装置が知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2、3が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−237806号公報
【特許文献2】特開2000−142134号公報
【特許文献3】特開2006−118681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のハイブリッド車両の駆動装置においては、第1モードから第2モードにモードを切り替えるときに、駆動力が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、第1モードから第2モードにモードを切り替えるときに、第1クラッチの解放による駆動力の低下を抑制することが可能なハイブリッド車両の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、第1駆動輪を駆動するための第1モータジェネレータと、動力伝達を断続可能な第1クラッチ手段を介して第2駆動輪と接続されるとともに動力伝達を断続可能な第2クラッチ手段を介して内燃機関と接続された第2モータジェネレータと、を備え、前記第1クラッチ手段が係合状態であるとともに前記第2クラッチ手段が解放状態であり、かつ前記内燃機関を停止させ、前記第1モータジェネレータで前記第1駆動輪を駆動するとともに前記第2モータジェネレータで前記第2駆動輪を駆動する第1走行モードと、前記第1クラッチ手段が解放状態であるとともに前記第2クラッチ手段が係合状態であり、かつ前記第1モータジェネレータで前記第1駆動輪を駆動するとともに前記内燃機関で前記第2モータジェネレータを回転させて発電を行う第2走行モードとに切替可能なハイブリッド車両の駆動装置であって、前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替える場合、まず前記第2モータジェネレータから出力されている駆動力を低下させつつその駆動力の低下が前記第1モータジェネレータから出力される駆動力で補償されるように前記第1モータジェネレータの出力を上昇させ、前記第2モータジェネレータからの駆動力の出力が停止した後に前記第1クラッチ手段を解放状態に切り替え、続いて前記第2クラッチ手段を係合状態に切り替え、その後前記内燃機関の始動が行われるように前記第1モータジェネレータ、前記第2モータジェネレータ、前記第1クラッチ手段、及び前記第2クラッチ手段の動作をそれぞれ制御する制御手段を備えているものである(請求項1)。
【0007】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置においては、制御手段が第2モータジェネレータから出力されている駆動力を低下させつつその駆動力の低下が第1モータジェネレータから出力される駆動力で補償されるように第1モータジェネレータの出力を上昇させ、すなわち第1モータジェネレータの駆動力に第2モータジェネレータの駆動力を上乗せし、第2モータジェネレータからの駆動力の出力が停止した後に、第1クラッチ手段を解放状態に切り替える。そのため、第1走行モードから第2走行モードにモードを切り替える場合、駆動力の低下を抑制することができる。
【0008】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一態様においては、前記第1クラッチ手段及び前記第2クラッチ手段のそれぞれに油圧機構をさらに備え、前記制御手段は前記油圧機構の油圧を制御することによって前記第1クラッチ手段及び前記第2クラッチ手段のそれぞれの係合状態と解放状態とを制御するハイブリッド車両の駆動装置であって、前記油圧機構が油圧を発生させていない場合には、前記第1クラッチ手段は係合状態に制御され、前記第2クラッチ手段は解放状態に制御されてもよい(請求項2)。この形態によれば、第1走行モードで走行中には、油圧機構が油圧を発生させていないので、その油圧を発生させない分の電費を向上することができる。
【0009】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一態様においては、前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替える場合、前記制御手段が前記第2クラッチ手段を係合状態に切り替える前に、前記第2モータジェネレータの回転を停止させてもよい(請求項3)。この形態によれば、第2モータジェネレータの回転を停止させてから第2クラッチ手段を係合状態にして内燃機関を始動させるので、内燃機関始動時のショックを発生させることなく、内燃機関を始動することができる。
【0010】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一態様においては、前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替える場合、前記制御手段は前記第1クラッチ手段を解放状態に切り替えると同時に前記第2クラッチ手段を係合状態に切り替えてもよい(請求項4)。この形態によれば、第1クラッチ手段を解放状態に切り替えると同時に前記第2クラッチ手段を係合状態に切り替えるので、この他の形態と比較して、素早く内燃機関を始動することができる。
【0011】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一態様においては、前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替えたハイブリッド車両の駆動装置であって、前記第1走行モードにて所定距離を走行可能な電力を残した前記バッテリの充電状態で、前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替え、前記第2走行モードで走行中に、前記第1走行モードによる走行の必要性を判定する第1走行モード要否判定手段をさらに備え、前記第2走行モードで走行中に前記第1走行モード要否判定手段が前記第1走行モードによる走行を必要であると判定したときに、前記第2走行モードから前記第1走行モードにモードを切り替える場合、前記制御手段は前記第2クラッチ手段を解放状態に切り替えると同時に前記第1クラッチ手段を係合状態に切り替えてもよい(請求項5)。この形態によれば、第2走行モードで走行中に、第1走行モードによる走行が必要になった場合でも、第1走行モードにモードを切り替えることができ、第1走行モードで走行することができる。
【0012】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一態様においては、前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替えたハイブリッド車両の駆動装置であって、前記車両の運転者の操作にて前記第2走行モードから前記第1走行モードにモードを切り替えることが可能な切替手段と、前記バッテリの充電状態が前記第1走行モードにて所定距離を走行可能な状態か否かを判別する充電状態判別手段と、をさらに備え、前記車両の運転者の操作にて前記切替手段が操作され、かつ、前記第2走行モードで走行中に前記充電状態判別手段が前記第1走行モードで走行可能な前記バッテリの充電状態にあると判別した場合、前記第2走行モードから前記第1走行モードにモードを切り替えてもよい(請求項6)。この形態によれば、第2走行モードで走行中でも、バッテリの充電状態が第1走行モードにて所定距離を走行可能な状態にあれば、運転者の操作によって、第1走行モードにモードを切り替えることができ、第1走行モードで走行することができる。
【0013】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一態様においては、前記第1走行モードにて走行可能な前記所定距離を概算する計算手段と、前記計算手段により求まった走行可能な前記所定距離を表示する表示手段と、をさらに備えてもよい(請求項7)。この形態によれば、運転者に第1走行モードで走行可能な所定距離を表示することができる。これにより、運転者に注意を喚起することができる。
【0014】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一態様においては、前記バッテリに対して外部電源から充電できるように外部充電手段をさらに備えてもよい(請求項8)。この形態によれば、外部充電手段と外部電源とを接続することにより、バッテリに対して充電することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のハイブリッド車両の駆動装置においては、制御手段が第2モータジェネレータから出力されている駆動力を低下させつつその駆動力の低下が第1モータジェネレータから出力される駆動力で補償されるように第1モータジェネレータの出力を上昇させ、すなわち第1モータジェネレータの駆動力に第2モータジェネレータの駆動力を上乗せし、第2モータジェネレータからの駆動力の出力が停止した後に、第1クラッチ手段を解放状態に切り替える。そのため、第1走行モードから第2走行モードにモードを切り替える場合、駆動力の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一形態に係るハイブリッド車両の駆動装置が搭載された車両の要部を概念的に示す図。
【図2】図1の駆動装置の配置の変更例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の形態)
図1は、本発明の一形態に係るハイブリッド車両の駆動装置が搭載された車両の要部を概念的に示している。車両1は、いわゆるハイブリッド車両として構成されている。車両1にはその走行のために駆動装置2が設けられている。駆動装置2は、第1電動機としての第1モータジェネレータ(以下、第1MGと略称することがある。)3と、第2電動機としての第2モータジェネレータ(以下、第2MGと略称することがある。)4と、電力が充電されたバッテリ5と、そのバッテリ5の電力を第1及び第2MG3、4に供給するパワーコントロールユニット(PCU)6と、車両1の第1駆動輪としての前輪の駆動輪7を駆動するための第1駆動軸8に第1MG3の動力を出力するための第1出力軸9と、車両1の第2駆動輪としての後輪の駆動輪10を駆動するための第2駆動軸11に第2MG4の動力を出力するための第2出力軸12と、を備えている。第1出力軸9は、前輪の左右の駆動輪7の差動回転を許容する第1差動装置13に接続されている。第2出力軸12は、後輪の左右の駆動輪10の差動回転を許容する第2差動装置14に接続されている。また、第2MG4は、動力伝達を断続可能な第1クラッチ手段としての第1クラッチ15を介して第2差動装置14に接続されている。第1クラッチ15は、第2MG4の動力を第2駆動軸11に伝達する係合状態とその伝達を切断する解放状態に切り替えることができる。さらに、第2MG4は、動力伝達を断続可能な第2クラッチ手段としての第2クラッチ16を介して内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)17と接続されている。第2クラッチ16は、エンジン17の動力を第2MG4に伝達する係合状態とその伝達を切断する解放状態に切り替えることができる。なお、第2クラッチ16は、内燃機関17の動力伝達を断続可能とするだけでなく、係合状態時に第2MG4の動力をエンジン17に伝達し、解放状態時にその伝達を切断するように用いることもできる。ハイブリッド車両1は、駆動装置2を駆動するために、PCU6を介して第1及び第2MG3、4、第1及び第2クラッチ15、16、エンジン17等を制御する装置としての電子制御装置(EVECU)20と、第1及び第2MG3、4等を制御するPCU6とを備えている。
【0018】
EVECU20は、ハイブリッド車両1の運転を適正に制御するためのコンピュータとして構成されており、PCU6、第1及び第2クラッチ15、16、エンジン17、アクセル開度に対応する信号を出力するアクセル開度センサ21、及びバッテリ5の残量(充電状態)を検出するためのSOCセンサ22等と接続されている。この他にもEVECU20には各種のセンサ等の周辺機器が接続されているが、それらの図示は省略した。EVECU20は、アクセル開度センサ21等の各種のセンサから取得した数値により、運転状態に応じた第1及び第2MG3、4出力を算出し、PCU6等の制御装置に出力要求を送信することで駆動力を制御する。また、SOCセンサ22からの出力信号が、EVECU20に入力される。これにより、EVECU20は、バッテリ5の残量(充電状態)を把握することができる。このEVECU20が、本発明の制御手段として機能する。
【0019】
PCU6は、EVECU20からの要求により第1及び第2MG3、4を制御するためのコンピュータとして構成されたMG(モータジェネレータ)ECUと、バッテリ5からの直流電力を交流電力に変換し第1及び第2MG3、4に供給するとともに第1及び第2MG3、4により発電された交流電力を直流電力に変換しバッテリ5に充電するインバータと、コンバータとを含み、さらに第2MG4で発電された電力を第1MG3に供給可能な制御装置として構成されている。このPCUが、EVECU20の要求に従うことにより、本発明の制御手段として機能する。
【0020】
前述したように、第1及び第2MG3、4は、PCU6を介してバッテリ5に接続されている。第1及び第2MG3、4は、そのバッテリ5に充電された電力を利用して電動機として動作する一方で、状況に応じて発電機として発電した電力をバッテリ5に充電することができる。そのバッテリ5には、バッテリ5の残量を検出するためのSOCセンサ22が接続されている。ハイブリッド車両1には外部充電手段としての外部充電装置23が設けられており、この外部充電装置23と住宅等に設置された不図示の外部電源とをユーザ(運転者等)が接続することによりバッテリ5に対して充電できるように構成されている。このようなハイブリッド車両1は、外部電源による充電が不能なものと区別してプラグインハイブリッド車両1と呼ばれることがある。
【0021】
車両1は、第1走行モードとしての4輪駆動又は第2走行モードとしての2輪駆動により走行する。4輪駆動で走行している場合は、EVECU20により、第1クラッチ15が係合状態に制御されるとともに第2クラッチ16が解放状態に制御され、かつエンジン17を停止させている。第1及び第2MG3、4には、バッテリ5に充電されている電力がPCU6を介して供給される。この電力により、第1及び第2MG3、4は、第1及び第2電動機3、4として動作する。第1電動機3の駆動力は前輪の駆動輪7へ、第2電動機4の駆動力は後輪の駆動輪10へと出力される。これにより、車両1は4輪駆動で走行する。
【0022】
2輪駆動で走行している場合は、EVECU20により、第1クラッチ15が解放状態に制御されるとともに第2クラッチ16が係合状態に制御され、かつエンジン17が動作している。エンジン17の動力は、第2クラッチ16を介して第2MG4に伝達される。このとき、第2MG4は、エンジン17の動力により回転させられて発電機として動作する。発電機によって発電された電力は、PCU6を介して第1電動機として動作する第1MG4に供給される。なお、発電された電力はPCU6を介してバッテリ5に充電された後、バッテリ5からPCU6を介して第1電動機として動作する第1MG4に供給されてもよい。第1電動機3の駆動力は前輪の駆動輪7へと出力される。これにより、車両1は2輪駆動(前輪駆動)で走行する。
【0023】
4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替える場合について説明する。まず、第2MG4から出力されている駆動力を低下させつつその駆動力の低下が第1MG3から出力される駆動力で補償されるように第1MG3の出力を上昇させる。これは、EVECU20がPCU6に、電力供給量を制御させて行う。第2MG4から出力されている駆動力を低下させるには、電力供給量を減らしていくように制御する。また、第1MG3の出力を上昇させるには、電力供給量を増やしていくように制御する。これにより、第1MG3の駆動力に第2MG4の駆動力が上乗せされることになる。このため、第2MG4の駆動力はなくなる。次に、第2MG4からの駆動力の出力が停止した後に、EVECU20により第1クラッチ15を解放状態に切り替える。続いて、EVECU20により第2クラッチ16を係合状態に切り替え、その後エンジン17の始動が行われるように、EVECU20により制御される。これにより、車両1は前述した2輪駆動(前輪駆動)で走行する。
【0024】
以上の形態によれば、4輪駆動で走行中には第2クラッチ16を解放状態にして、第2MG4を電動機として動作させているので、エンジン17が連れ回らない。これにより、電費を向上することができる。また、4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替えることができる。さらに、2輪駆動に切り替える前に、第1MG3の駆動力に第2MG4の駆動力を上乗せしてから、第1クラッチ15を解放状態に制御させるため、4輪駆動で走行中に2輪駆動に走行モードを切り替える場合であっても、駆動力の低下を抑制することができる。
【0025】
(第2の形態)
次に、本発明の第2の形態を説明する。第1の形態と共通する構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。第2の形態は、4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替える場合、その切替過程が第1の形態とは異なる。この切替過程以外は、第1の形態と共通するので説明を省略する。
【0026】
4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替える場合について説明する。まず、第2MG4から出力されている駆動力を低下させつつその駆動力の低下が第1MG3から出力される駆動力で補償されるように第1MG3の出力を上昇させる。これは、EVECU20がPCU6に、電力供給量を制御させて行う。第2MG4から出力されている駆動力を低下させるには、電力供給量を減らしていくように制御する。また、第1MG3の出力を上昇させるには、電力供給量を増やしていくように制御する。これにより、第1MG3の駆動力に第2MG4の駆動力が上乗せされることになる。このため、第2MG4の駆動力はなくなる。次に、第2MG4からの駆動力の出力が停止した後に、EVECU20により第1クラッチ15を解放状態に切り替える。ここまでの過程は、第1の形態と同様である。続いて、第2MG4の電動機としての回転が停止した後に、EVECU20により第2クラッチ16を係合状態に切り替え、その後エンジン17の始動が行われるように、EVECU20により制御される。これにより、車両1は前述した2輪駆動(前輪駆動)で走行する。
【0027】
第2の形態によれば、4輪駆動で走行中には第2クラッチ16を解放状態にして、第2MG4を電動機として動作させているので、エンジン17が連れ回らない。これにより、電費を向上することができる。また、4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替えることができる。さらに、2輪駆動に切り替える前に、第1MG3の駆動力に第2MG4の駆動力を上乗せしてから、第1クラッチ15を解放状態に制御させるため、4輪駆動で走行中に2輪駆動に走行モードを切り替える場合であっても、駆動力の低下を抑制することができる。さらに、第2MG4の電動機としての回転が停止した後に、第2クラッチ16を係合状態に切り替えるので、エンジン17始動時のショックを発生させることなく、エンジン17を始動することができる。また、クラッチ係合時にトルク分担する必要がなく、簡易なスリーブ機構にでき、大きなエネルギを必要とせず、電費向上することができる。
【0028】
(第3の形態)
次に、本発明の第3の形態を説明する。第1の形態と共通する構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。第3の形態は、4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替える場合、その切替過程が第1の形態とは異なる。この切替過程以外は、第1の形態と共通するので説明を省略する。
【0029】
4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替える場合について説明する。まず、第2MG4から出力されている駆動力を低下させつつその駆動力の低下が第1MG3から出力される駆動力で補償されるように第1MG3の出力を上昇させる。これは、EVECU20がPCU6に、電力供給量を制御させて行う。第2MG4から出力されている駆動力を低下させるには、電力供給量を減らしていくように制御する。また、第1MG3の出力を上昇させるには、電力供給量を増やしていくように制御する。これにより、第1MG3の駆動力に第2MG4の駆動力が上乗せされることになる。このため、第2MG4の駆動力はなくなる。ここまでの過程は、第1の形態と同様である。次に、第2MG4からの駆動力の出力が停止した後に、EVECU20により第1クラッチ15を解放状態に切り替えると同時に第2クラッチ16を係合状態に切り替え、その後エンジン17の始動が行われるように、EVECU20により制御される。これにより、車両1は前述した2輪駆動(前輪駆動)で走行する。
【0030】
第3の形態によれば、4輪駆動で走行中には第2クラッチ16を解放状態にして、第2MG4を電動機として動作させているので、エンジン17が連れ回らない。これにより、電費を向上することができる。また、4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替えることができる。さらに、2輪駆動に切り替える前に、第1MG3の駆動力に第2MG4の駆動力を上乗せしてから、第1クラッチ15を解放状態に制御させるため、4輪駆動で走行中に2輪駆動に走行モードを切り替える場合であっても、駆動力の低下を抑制することができる。さらに、第1クラッチ15を解放状態に切り替えると同時に第2クラッチ16を係合状態に切り替えるので、第1及び第2の形態と比較して、素早くエンジン17を始動することができる。
【0031】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。第1及び第2クラッチ15、16は、スリーブ嵌合機構で構成してもよい。これにより、構成が簡易になるとともに、クラッチの構成を安価にできる。その他、第1及び第2クラッチ15、16は、ぞれぞれに油圧機構を備え、油圧機構の油圧をEVECU20が制御することによって第1及び第2クラッチ15、16のそれぞれの係合状態と解放状態とを制御する。このとき、油圧機構が油圧を発生させていない場合には、第1クラッチ15は係合状態に制御され、第2クラッチ16は解放状態に制御されてもよい。これにより、4輪駆動で走行中には、油圧機構が油圧を発生させていないので、その油圧を発生させない分の電費を向上することができるとともに、4輪駆動による走行距離を延ばすことができる。
【0032】
4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替える場合の条件として、バッテリ5の電力がなくなった場合であってもよいし、バッテリ5の電力が4輪駆動で所定距離を走行できる程度残っている場合であってもよい。この他、2輪駆動に走行モードを切り替える場合の条件を適宜に決定してよい。
【0033】
上述した形態では、4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替える場合について説明したが、2輪駆動で走行中に4輪駆動に走行モードを切り替えてもよい。例えば、上述したようにバッテリ5の電力が4輪駆動で所定距離を走行できる程度残っているときであって、4輪駆動で走行中に、2輪駆動に走行モードを切り替えた場合である。この場合に、EVECU20は、2輪駆動で走行中に4輪駆動による走行の必要性を判定する。4輪駆動による走行が必要と判定された場合には、EVECU20により第2クラッチ16を解放状態に切り替えると同時に第1クラッチ15を解放状態に切り替える。この形態によれば、2輪駆動で走行中に4輪駆動による走行が必要になった場合でも、4輪駆動に走行モードを切り替えることができ、4輪駆動で走行することができる。また、運転者の運転技量によらず、4輪駆動による走行が必要な場合に4輪駆動で走行することができる。なお、EVECU20が、本発明の第1走行モード要否判定手段として機能する。
【0034】
また、2輪駆動で走行中に、運転者の操作にて4輪駆動に走行モードを切り替えてもよい。例えば、車両1の運転者の操作にて2輪駆動で走行中に4輪駆動に走行モードを切り替えることが可能な切替手段としての切替スイッチをさらに備えて、EVECU20はバッテリ5の充電状態が4輪駆動にて所定距離を走行可能な状態か否かを判別する。この場合に、車両1の運転者の操作に切替スイッチが操作され、かつ、2輪駆動で走行中にEVECU20が4輪駆動で走行可能なバッテリ5の充電状態にあると判別した場合、2輪駆動で走行中に4輪駆動に走行モードを切り替えてもよい。この形態によれば、2輪駆動で走行中でも、バッテリ5充電状態が4輪駆動にて所定距離を走行可能な状態にあれば、運転者の操作によって、4輪駆動に走行モードを切り替えることができ、4輪駆動で走行することができる。さらに、この形態において、EVECU20は4輪駆動にて走行可能な所定距離を概算して、その概算により求まった走行可能な所定距離を表示する表示手段としての表示画面と、を備えてもよい。この形態によれば、運転者に4輪駆動で走行可能な所定距離を表示することができる。これにより、運転者に注意を喚起することができる。なお、EVECU20が、本発明の充電状態判別手段及び計算手段として機能する。
【0035】
また、車両1の減速時には、第1及び第2MG3、4は発電機として動作して、その発電した電力をPCU6を介して、バッテリ5に回生してもよい。また、図2に示すように、図1の駆動装置の配置を変更してもよい。この形態によれば、第1及び第2MG3、4が一つの構成に収まるので、構成がコンパクトになる。さらに、上述した形態では、第1MG3を前輪の駆動輪7に接続し、第2MG4を後輪の駆動輪10に接続したが、逆に接続してもよい。つまり、第1MG3を後輪の駆動輪10に接続し、第2MG4を前輪の駆動輪7に接続してもよい。
【符号の説明】
【0036】
2 駆動装置
3 第1モータジェネレータ(第1電動機、第1MG、発電機、MG1)
4 第2モータジェネレータ(第2電動機、第2MG、発電機、MG2)
5 バッテリ(BATT)
6 PCU(パワーコントロールユニット、制御手段)
15 第1クラッチ(第1クラッチ手段)
16 第2クラッチ(第2クラッチ手段)
17 内燃機関(エンジン、ENG)
20 EVECU(電子制御装置、制御手段、第1走行モード要否判定手段、充電状態判別手段、計算手段)
22 SOCセンサ
23 外部充電装置(外部充電手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動輪を駆動するための第1モータジェネレータと、動力伝達を断続可能な第1クラッチ手段を介して第2駆動輪と接続されるとともに動力伝達を断続可能な第2クラッチ手段を介して内燃機関と接続された第2モータジェネレータと、を備え、
前記第1クラッチ手段が係合状態であるとともに前記第2クラッチ手段が解放状態であり、かつ前記内燃機関を停止させ、前記第1モータジェネレータで前記第1駆動輪を駆動するとともに前記第2モータジェネレータで前記第2駆動輪を駆動する第1走行モードと、前記第1クラッチ手段が解放状態であるとともに前記第2クラッチ手段が係合状態であり、かつ前記第1モータジェネレータで前記第1駆動輪を駆動するとともに前記内燃機関で前記第2モータジェネレータを回転させて発電を行う第2走行モードとに切替可能なハイブリッド車両の駆動装置であって、
前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替える場合、まず前記第2モータジェネレータから出力されている駆動力を低下させつつその駆動力の低下が前記第1モータジェネレータから出力される駆動力で補償されるように前記第1モータジェネレータの出力を上昇させ、前記第2モータジェネレータからの駆動力の出力が停止した後に前記第1クラッチ手段を解放状態に切り替え、続いて前記第2クラッチ手段を係合状態に切り替え、その後前記内燃機関の始動が行われるように前記第1モータジェネレータ、前記第2モータジェネレータ、前記第1クラッチ手段、及び前記第2クラッチ手段の動作をそれぞれ制御する制御手段を備えていることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項2】
前記第1クラッチ手段及び前記第2クラッチ手段のそれぞれに油圧機構をさらに備え、前記制御手段は前記油圧機構の油圧を制御することによって前記第1クラッチ手段及び前記第2クラッチ手段のそれぞれの係合状態と解放状態とを制御するハイブリッド車両の駆動装置であって、
前記油圧機構が油圧を発生させていない場合には、前記第1クラッチ手段は係合状態に制御され、前記第2クラッチ手段は解放状態に制御されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項3】
前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替える場合、前記制御手段が前記第2クラッチ手段を係合状態に切り替える前に、前記第2モータジェネレータの回転を停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項4】
前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替える場合、前記制御手段は前記第1クラッチ手段を解放状態に切り替えると同時に前記第2クラッチ手段を係合状態に切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項5】
前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替えたハイブリッド車両の駆動装置であって、
前記第1走行モードにて所定距離を走行可能な電力を残した前記バッテリの充電状態で、前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替え、
前記第2走行モードで走行中に、前記第1走行モードによる走行の必要性を判定する第1走行モード要否判定手段をさらに備え、
前記第2走行モードで走行中に前記第1走行モード要否判定手段が前記第1走行モードによる走行を必要であると判定したときに、前記第2走行モードから前記第1走行モードにモードを切り替える場合、前記制御手段は前記第2クラッチ手段を解放状態に切り替えると同時に前記第1クラッチ手段を係合状態に切り替えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項6】
前記第1走行モードから前記第2走行モードにモードを切り替えたハイブリッド車両の駆動装置であって、
前記車両の運転者の操作にて前記第2走行モードから前記第1走行モードにモードを切り替えることが可能な切替手段と、前記バッテリの充電状態が前記第1走行モードにて所定距離を走行可能な状態か否かを判別する充電状態判別手段と、をさらに備え、
前記車両の運転者の操作にて前記切替手段が操作され、かつ、前記第2走行モードで走行中に前記充電状態判別手段が前記第1走行モードで走行可能な前記バッテリの充電状態にあると判別した場合、前記第2走行モードから前記第1走行モードにモードを切り替えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項7】
前記第1走行モードにて走行可能な前記所定距離を概算する計算手段と、前記計算手段により求まった走行可能な前記所定距離を表示する表示手段と、をさらに備えた請求項6に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項8】
前記バッテリに対して外部電源から充電できるように外部充電手段をさらに備えた請求項1〜7のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−98663(P2011−98663A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255198(P2009−255198)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】