説明

ハイブリッド車両用駆動装置

【課題】エンジン及びジェネレータからオーバハングしているモータの振動を抑制し、モータ及びジェネレータを連結する冷却水配管を保護する。
【解決手段】エンジンでジェネレータを駆動し、ジェネレータの発電電力でモータを駆動する場合に、ジェネレータケース2をエンジン1の車両幅方向端部に連結し、モータケース3をジェネレータケース2の車両後側に連結し、電力ケーブル10をジェネレータケース2及びモータケース3の上方の空間に配置し、冷却水配管12をモータケース3の下方で且つジェネレータケース2の車両前後方向後方の空間に配置し、ジェネレータケース2の下面及びモータケース3の下面を連結するスティフナー16で冷却水配管12の下方を覆う。また、リヤマウント部材9の車両前方にスティフナー16を配置することで、リヤマウント部材9に主として上下方向の振動だけを入力し、振動を効率よく抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両用の駆動装置に関し、例えばエンジンでジェネレータを駆動し、ジェネレータの発電電力でモータを駆動するハイブリッド車両に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
このようなハイブリッド車両で、モータを効率よく駆動するためにはモータに交流電流を印加するのが好ましく、一方、蓄電装置であるバッテリの出力は直流電流である。従って、ハイブリッド車両のようにバッテリに蓄電し、モータで駆動する車両にはインバータが不可欠となる。また、ハイブリッド車両では、インバータもモータもジェネレータも発熱するため、エンジンだけでなく、それら電気系統も冷却する必要がある。下記特許文献1では、主としてエンジンを冷却するための冷媒冷却用ラジエータと、主として電気系統を冷却するための冷媒冷却用ラジエータを備え、電気系統ではラジエータからインバータ、モータ、ジェネレータ、ラジエータの順に冷媒が流れるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−631608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、所謂シリーズハイブリッド型のハイブリッド車両などでは、エンジンとジェネレータを車両幅方向に連結し、モータをジェネレータの車両前後方向後側に連結する場合がある。このようなレイアウトの場合、エンジンとジェネレータとモータを一体化したパワートレインの左右両側部及び後部をマウント部材によって車体に支持することが多い。この際、後部のマウント部材がモータに固定されるが、モータの重心がエンジン及びジェネレータの重心から離れている(オーバハングしている)ため、ジェネレータとモータの連結部が変形することに伴うモータの振動が大きくなり、その振動が車体に伝わり易い。
【0005】
また、このようなレイアウトでは、モータ及びジェネレータに夫々連結される電力ケーブルをモータ及びジェネレータの上方に配置し、モータとジェネレータを連結する冷却水配管はモータ及びジェネレータの下方に配置することが多い。これは、冷却水配管から冷却水が漏れた場合に、漏れた冷却水が電力ケーブルの接続部を通してモータの内部やジェネレータの内部に侵入するのを回避するためである。しかしながら、そのような配置にすると、冷却水配管は路面に接近した状態となるため、車両走行時に飛び石や水飛沫などに晒されたり、塩害によって耐久性が低下したりすることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、エンジン及びジェネレータからオーバハングしているモータの振動を抑制し、モータ及びジェネレータを連結する冷却水配管を保護することができるハイブリッド車両用駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、発明の実施態様は、エンジンでジェネレータを駆動し、ジェネレータの発電電力でモータを駆動するハイブリッド車両用駆動装置において、前記ジェネレータが内装され前記エンジンの車両幅方向端部に連結されたジェネレータケースと、前記モータが内装され前記ジェネレータケースの車両前後方向後側に連結され下面が前記ジェネレータケースの下面より上方に配置されたモータケースと、前記ジェネレータケース及びモータケースの上方の空間に配置され前記ジェネレータケース及びモータケースに夫々連結される電力ケーブルと、前記モータケースの下方で且つジェネレータケースの車両前後方向後方の空間に配置され前記ジェネレータケース及びモータケース間を連結する冷却水配管と、前記冷却水配管の下方を覆い前記ジェネレータケースの下面及び前記モータケースの下面を連結する連結補強部材とを備えたことを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置である。
【0008】
また、別の実施態様は、前記連結されたエンジン及びジェネレータケースの車両幅方向端部の夫々を左右のマウント部材によって車体に支持すると共に前記モータケースをリヤマウント部材によって車体に支持し、前記連結補強部材をリヤマウント部材の車両前後方向前方に配置したことを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置である。
【発明の効果】
【0009】
而して、発明の実施態様によれば、エンジンでジェネレータを駆動し、ジェネレータの発電電力でモータを駆動する場合に、ジェネレータが内装されたジェネレータケースをエンジンの車両幅方向端部に連結し、モータが内装されたモータケースをジェネレータケースの車両前後方向後側に連結すると共にモータケースの下面をジェネレータケースの下面より上方に配置し、ジェネレータケース及びモータケースに夫々連結される電力ケーブルをジェネレータケース及びモータケースの上方の空間に配置し、ジェネレータケース及びモータケース間を連結する冷却水配管をモータケースの下方で且つジェネレータケースの車両前後方向後方の空間に配置し、冷却水配管の下方を覆う連結補強部材でジェネレータケースの下面及びモータケースの下面を連結する。従って、エンジン及びジェネレータケースからオーバハングした状態のモータケースの下面、即ち外周面を連結補強部材でジェネレータケースの下面に支持することができ、モータケースの振動を効果的に抑制することができると共に、連結補強部材が冷却水配管の下方を覆うことで、モータケース及びジェネレータケースを連結する冷却水配管を保護することができる。
【0010】
また、連結されたエンジン及びジェネレータケースの車両幅方向端部の夫々を左右のマウント部材によって車体に支持すると共にモータケースをリヤマウント部材によって車体に支持し、連結補強部材をリヤマウント部材の車両前後方向前方に配置した。従って、リヤマウント部材に入力されるモータケースの振動方向が主として上下方向だけとなり(言い換えれば、車両前後方向へ延びる鉛直面に対して左右方向へ倒れるように振動することを防止でき)、リヤマウント部材によってモータケースの振動を効率よく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のハイブリッド車両用駆動装置の一実施形態を示すエンジンルームの上面図である。
【図2】図1のハイブリッド車両用駆動装置の下面図である。
【図3】図1のハイブリッド車両用駆動装置の左側面図である。
【図4】図1のハイブリッド車両用駆動装置の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のハイブリッド車両用駆動装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のハイブリッド車両の車両前後方向前方のエンジンルームの上面図である。図中の符号2はジェネレータが内装されたジェネレータケース、符号3はモータが内装されたモータケースである。ジェネレータケース2はエンジン1の車両幅方向の端部に連結され、モータケース3はジェネレータケース2の車両前後方向後側に連結されている。本実施形態のハイブリッド車両は、エンジン1でジェネレータケース2内のジェネレータを駆動し、ジェネレータの発電電力でモータケース3内のモータを駆動する、所謂シリーズハイブリッド型のハイブリッド車両である。モータの出力はギヤボックス4を介して図示しない駆動輪に伝達され、車両が駆動される。ジェネレータは電力ケーブル10を介してインバータ11に接続され、モータも電力ケーブル10を介してインバータ11に接続され、またインバータは図示しないバッテリに接続されている。
【0013】
また、図1中の符号5は、エンジンルームの車両幅方向両側に設けられた左右のサイドメンバであり、図の下方が車両前方であるので、図の右方のサイドメンバが左サイドメンバ5、図の左方のサイドメンバが右サイドメンバ5となる。また、図中の符号6は、エンジンルームの車両前後方向後方でサイドメンバ5と交差する方向に接続されたクロスメンバである。本実施形態の駆動装置は、右マウント部材7を介してエンジン1の車両右方端部を右サイドメンバ5に支持し、左マウント部材8を介してジェネレータケース2の車両左方端部を左サイドメンバ5に支持し、リヤマウント部材9を介してモータケース3の車両前後方向後端部をクロスメンバ6に支持する。なお、図中の符号13は、モータケース3とジェネレータケース2の上側連結部である。
【0014】
本実施形態でも、前記特許文献1と同様に、エンジン1とは個別に電気系統の冷却を行い、例えば冷却水(冷却用冷媒)は図示しないラジエータからインバータ、モータ、ジェネレータ、ラジエータの順に流れる。図2は、後述するスティフナーが取付けられていない状態での駆動装置の下面図であり、モータケース3とジェネレータケース2を連結する冷却水配管12はジェネレータケース2及びモータケース3の下方の空間に配置されている。これは、前述したように、冷却水配管から冷却水が漏れた場合に、漏れた冷却水が電力ケーブルの接続部を通してモータの内部やジェネレータの内部に侵入するのを回避するため、電力ケーブル10をモータケース3やジェネレータケース2の上方に配置しており、モータケース3とジェネレータケース2を連結する冷却水配管12はモータケース3及びジェネレータ2の下方に配置する。なお、図中の符号14は、モータケース3とジェネレータケース2の下側連結部である。また、図中の符号15は、モータケース3の下面及びジェネレータケース2の下面の夫々に二箇所ずつ設けられたボルト固定用ボスであり、その中央部には車両上下方向上向きにスティフナー取付け用のボルト穴が形成されている。
【0015】
図3は、本実施形態の駆動装置の左側面図である。本実施形態では、モータケース3の下面をジェネレータケース2の下面よりも上方に配置し、このモータケース3の下方で且つジェネレータケース2の車両前後方向後方の空間に前記モータケース3とジェネレータケース2を連結する冷却水配管12を配置している。これにより、冷却水配管12を少しでも路面から遠ざけ、飛び石や水飛沫との接触を抑制することができる。なお、図中の符号17は、左マウント部材8をジェネレータケース2に取付けるための左マウントブラケット、符号18は、リヤマウント部材9をモータケース3に取付けるためのリヤマウントブラケットである。
【0016】
更に、本実施形態では、モータケース3の下面とジェネレータケース2の下面を連結するスティフナー(連結補強部材)16を、冷却水配管12を覆うように取付ける。このスティフナー16は、モータケース3の下面とジェネレータケース2の下面にスティフナー16をあてがい、スティフナー16に形成されているボルト穴にボルトを差し込み、ボルト固定用ボス15のボルト穴にボルトをねじ込んで固定されている。図4は、前記スティフナー16が取付けられた状態の本実施形態の駆動装置の下面図である。このスティフナー16は、モータケース3を補強支持するためのものであるが、冷却水配管12の下方を覆うように取付けられているため、このスティフナー16によっても飛び石や水飛沫の冷却水配管12との接触が回避される。
【0017】
また、図4に明示するように、本実施形態では、スティフナー16を車両前後方向に長手とし、且つモータケース3をクロスメンバ6に支持するリヤマウント部材9の車両前後方向前方に配置しているため、リヤマウント部材9を捻る(言い換えれば、リヤマウント部材9を車両前後方向へ延びる鉛直面に対して左右方向へ倒す)ようなモータケース3の振動成分が抑制され、リヤマウント部材9には主としてモータケース3の上下方向への振動成分が入力されるため、モータケース3を斜め下方から支持するリヤマウント部材9はモータケース3の振動を効率よく抑制することができる。また、スティフナー16とモータケース3を連結するボルトの軸線が車両上下方向になるため、モータケース3の振動をボルトのせん断や曲げで受ける場合に比して、剛性が高く、モータケース3の上下方向への振動低減に効果がある。
【0018】
このように本実施形態のハイブリッド車両用駆動装置では、エンジン1でジェネレータを駆動し、ジェネレータの発電電力でモータを駆動する場合に、ジェネレータが内装されたジェネレータケース2をエンジン1の車両幅方向端部に連結し、モータが内装されたモータケース3をジェネレータケース2の車両前後方向後側に連結すると共にモータケース3の下面をジェネレータケース2の下面より上方に配置し、ジェネレータケース2及びモータケース3に夫々連結される電力ケーブル10をジェネレータケース2及びモータケース3の上方の空間に配置し、ジェネレータケース2及びモータケース3間を連結する冷却水配管12をモータケース3の下方で且つジェネレータケース2の車両前後方向後方の空間に配置し、冷却水配管12の下方を覆うスティフナー16でジェネレータケース2の下面及びモータケース3の下面を連結する。従って、エンジン1及びジェネレータケース2からオーバハングした状態のモータケース3の下面、即ち外周面をスティフナー16でジェネレータケース2の下面に支持することができ、モータケース3の振動を効果的に抑制することができると共に、スティフナー16が冷却水配管の下方を覆うことで、モータケース3及びジェネレータケース2を連結する冷却水配管12を保護することができる。
【0019】
また、連結されたエンジン1及びジェネレータケース2の車両幅方向端部の夫々を左右のマウント部材7、8によってサイドメンバ(車体)5に支持すると共にモータケース3をリヤマウント部材9によってクロスメンバ(車体)6に支持し、スティフナー16をリヤマウント部材9の車両前後方向前方に配置した。従って、リヤマウント部材9に入力されるモータケース3の振動方向が主として上下方向だけとなり、リヤマウンド部材9によってモータケース3の振動を効率よく抑制することができる。
【符号の説明】
【0020】
1はエンジン
2はジェネレータケース
3はモータケース
4はギヤボックス
5はサイドメンバ
6はクロスメンバ
7は右マウント部材
8は左マウント部材
9はリヤマウント部材
10は電力ケーブル
11はインバータ
12は冷却水配管
13は上側連結部
14は下側連結部
15はボルト固定用ボス
16はスティフナー(連結補強部材)
17は左マウントブラケット
18はリヤマウントブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンでジェネレータを駆動し、ジェネレータの発電電力でモータを駆動するハイブリッド車両用駆動装置において、
前記ジェネレータが内装され前記エンジンの車両幅方向端部に連結されたジェネレータケースと、
前記モータが内装され前記ジェネレータケースの車両前後方向後側に連結され下面が前記ジェネレータケースの下面より上方に配置されたモータケースと、
前記ジェネレータケース及びモータケースの上方の空間に配置され前記ジェネレータケース及びモータケースに夫々連結される電力ケーブルと、
前記モータケースの下方で且つジェネレータケースの車両前後方向後方の空間に配置され前記ジェネレータケース及びモータケース間を連結する冷却水配管と、
前記冷却水配管の下方を覆い前記ジェネレータケースの下面及び前記モータケースの下面を連結する連結補強部材とを備えたことを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項2】
前記連結されたエンジン及びジェネレータケースの車両幅方向端部の夫々を左右のマウント部材によって車体に支持すると共に前記モータケースをリヤマウント部材によって車体に支持し、
前記連結補強部材をリヤマウント部材の車両前後方向前方に配置したことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82339(P2013−82339A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223918(P2011−223918)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】