説明

ハイブリッド車両

【課題】電動駆動時の変速段の選択の自由度と、ハイブリッド駆動時における変速段のプレシフトの自由度を高めることができるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】第1入力軸13と第2入力軸14を差動歯車装置25のキャリア20と第1サンギヤ21にそれぞれ結合し、第2入力軸14にモータジェネレータ2を結合する。エンジン1と第1入力軸13の間にクラッチCL1を介在させ、エンジン1と第2入力軸14の間、エンジン1と第2サンギヤ22の間にクラッチCL2,CL3を介在させる。第1入力軸13と出力軸15,16の間に1速,5速ギヤ列40,41を選択可能に設け、第2入力軸13と出力軸15,16の間に3速,7速ギヤ列44,45を選択可能に設ける。偶数の変速段は第1入力軸13側のギヤ列と第2入力軸14側のギヤ列を出力軸15,16に同時に接続し、その状態でクラッチCL3を接続して得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動源としてエンジンとモータジェネレータを併用するハイブリッド車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される変速機として、入力軸を奇数段用と偶数段用で2軸設けるとともに、各入力軸とエンジンの間にそれぞれ個別にクラッチを介在させ、両入力軸のクラッチの同時並行的な切換え操作によって変速段の切換えを迅速に行えるようにしたツインクラッチ式の変速機(DCT:Dual Clutch Transmission)が開発されている。
【0003】
このツインクラッチ式の変速機をさらに改良し、エンジンに個別にクラッチ接続される2つの入力軸と差動歯車装置とを組み合わせることにより、軸長の短縮と変速段の多段化を図った変速機が案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この変速機は、第1入力軸と第2入力軸にそれぞれ異なる奇数段のギヤ列(例えば、1速,5速用ギヤ列と3速,7速用ギヤ列)を割り振り、各入力軸を差動歯車装置の異なる2つの回転要素(サンギヤとキャリア)にそれぞれ結合するとともに、第1入力軸とエンジン、第2入力軸とエンジンの各間に第1のクラッチと第2のクラッチをそれぞれ介在させ、差動歯車装置の残余の回転要素(リングギヤ)とエンジンの間を第3のクラッチを介して断接可能に接続した構造とされている。
【0005】
この変速機では、例えば、エンジンの動力を1速や5速で車輪駆動部に伝達する場合には、出力軸側と噛み合うギヤ列を1速と5速の一方に設定した状態で第1入力軸を第1のクラッチによってエンジンと接続し、3速や7速で車輪駆動部に伝達する場合には、出力側と噛み合うギヤ列を3速と7速の一方に設定した状態で第2入力軸を第2のクラッチによってエンジンに接続する。
【0006】
そして、エンジンの動力を偶数段の変速段で車輪駆動部に伝達する場合には、目的とする偶数段を挟む前後の奇数段のギヤ列を出力軸に同時に噛合させることにより、差動歯車装置のサンギヤとキャリアの回転比関係を固定し、それよって目時とする偶数段を生成する。つまり、2速を生成する場合には、第1入力軸側のギヤ列を1速に設定すると同時に第2入力軸側のギヤ列を3速に設定し、1速のギヤ列と3速のギヤ列を出力軸側に同時に噛合させることによってサンギヤとキャリアの回転比関係を2速の変速段が得られるように固定する。この状態でリングギヤを第3のクラッチを介してエンジンに接続すると、エンジンの動力がサンギヤとキャリアに分割され、その動力が目的とする偶数段の変速段に変速されて出力軸を通して車輪駆動部に伝達される。
【0007】
また、従来、この変速機にモータジェネレータを組み合わせたハイブリッド車両が案出されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
このハイブリッド車両は、変速機の第1,第2入力軸にそれぞれ差動歯車装置のキャリアとサンギャを結合し、第1,第2入力軸とエンジンの各間に第1のクラッチと第2のクラッチを介在させるとともに、リングギヤにモータジェネレータを結合し、リングギヤとエンジンの間に第3のクラッチを介在させた構造とされている。
このハイブリッド車両では、エンジンによる駆動時の変速は上記と同様に行われ、モータジェネレータのみによる走行時(電動駆動時)や、モータジェネレータによるアシスト走行時(ハイブリッド駆動時)には、第1入力軸側のギヤ列と第2入力軸側のギヤ列を出力軸側に同時に噛合させた状態において、モータジェネレータの動力が差動歯車装置のリングギヤに入力され、その動力がキャリアとサンギヤの少なくとも一方を通して出力軸に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−266980号公報
【特許文献2】特開2004−322935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、この従来のハイブリッド車両において、モータジェネレータが差動歯車装置の第1入力軸や第2入力軸に結合されないリングギヤに接続されているため、モータジェネレータのみによる電動駆動時や、エンジンとモータジェネレータによるハイブリッド駆動時には、第1入力軸側のギヤ列と第2入力軸側のギヤ列を出力軸側に同時に噛合させておく必要がある。
即ち、第1入力軸側のギヤ列と第2入力軸側のギヤ列が出力軸側に同時噛合されない状態では、差動歯車装置の第1入力軸側の回転要素であるキャリアと第2入力軸側の回転要素であるサンギヤが特定の回転比関係に拘束される(差動を制限される)ことがなく、リングギヤを通して第1入力軸側のキャリアにモータジェネレータの動力が入力されても、その動力は第2入力軸側のサンギヤを空転させるのみで出力軸側には伝達されなくなってしまう。
【0011】
このため、上記従来のハイブリッド車両では、電動駆動時には、偶数段の変速状態でなければ電動機の動力を車輪駆動部に伝達することができず、例えば、1速段でのモータジェネレータによる始動を行うことができない。また、ハイブリッド駆動時には、第1入力軸側のキャリアと第2入力軸側のサンギヤの差動を制限する必要から(モータジェネレータの動力抜けを無くす必要から)、エンジンの動力を切り離した状態でのギヤ列のプレシフト(噛合準備操作)を行うことができない。
【0012】
そこでこの発明は、電動駆動時の変速段の選択の自由度と、ハイブリッド駆動時における変速段のプレシフトの自由度を高め、車両の燃費効率の向上とドライバビリティの向上を図ることのできるハイブリッド車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、駆動源として機能するエンジン(例えば、実施形態のエンジン1)と、駆動源と発電機として機能するモータジェネレータ(例えば、実施形態のモータジェネレータ2)と、車輪駆動部(例えば、実施形態のディファレンシャル装置3)と前記エンジン及びモータジェネレータとの間に介装されて入出力の回転速度比を調整する変速機(例えば、実施形態の変速機4)と、前記モータジェネレータに対して電力を供給し前記モータジェネレータで発電された電力を蓄電する蓄電手段(例えば、実施形態の高圧バッテリ5)と、を備え、これらが車両の運転状況に応じて制御されるハイブリッド車両において、前記変速機は、前記車輪駆動部に接続される出力軸(例えば、実施形態の出力軸15,16)と、この出力軸にギヤ列を介して接続可能な第1入力軸(例えば、実施形態の第1入力軸13)と、前記出力軸に別のギヤ列を介して接続可能な第2入力軸(例えば、実施形態の第2入力軸14)と、前記エンジンと前記第1入力軸及び第2入力軸との間に、前記エンジン側の動力を前記第1入力軸と第2入力軸とに動力分割可能に配置された動力分割機構(例えば、実施形態の差動歯車装置25)と、前記エンジンと前記第1入力軸の間に介装されて動力を断接操作する第1のクラッチ(例えば、実施形態の第1のクラッチCL1)と、前記エンジンと前記第2入力軸の間に介装されて動力を断接操作する第2のクラッチ(例えば、実施形態の第2のクラッチCL2)と、前記エンジンと前記動力分割機構の間に介装されて動力を断接操作する第3のクラッチ(例えば、実施形態の第3のクラッチCL3)と、を備え、前記第3のクラッチの接続操作により、前記第1入力軸側のギヤ列による変速段と前記第2入力軸側のギヤ列による変速段の中間変速段で前記エンジンと前記出力軸とを接続し、前記モータジェネレータは、前記第1入力軸と第2入力軸の少なくとも一方に接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、駆動源として機能するエンジン(例えば、実施形態のエンジン1)と、駆動源と発電機として機能するモータジェネレータ(例えば、実施形態のモータジェネレータ2)と、車輪駆動部(例えば、実施形態のディファレンシャル装置3)と前記エンジン及びモータジェネレータとの間に介装されて入出力の回転速度比を調整する変速機(例えば、実施形態の変速機4)と、前記モータジェネレータに対して電力を供給し前記モータジェネレータで発電された電力を蓄電する蓄電手段(例えば、実施形態の高圧バッテリ5)と、を備え、これらが車両の運転状況に応じて制御されるハイブリッド車両において、前記変速機は、前記車輪駆動部に接続される出力軸(例えば、実施形態の出力軸15,16)と、この出力軸にギヤ列を介して接続可能な第1入力軸(例えば、実施形態の第1入力軸13)と、前記出力軸に別のギヤ列を介して接続可能で、かつ前記モータジェネレータが接続されている第2入力軸(例えば、実施形態の第2入力軸14)と、前記エンジンと前記第1入力軸及び第2入力軸との間に、前記エンジン側の動力を前記第1入力軸と第2入力軸とに動力分割可能に配置された動力分割機構(例えば、実施形態の差動歯車装置25)と、前記エンジンと前記第1入力軸の間に介装されて動力を断接操作する第1のクラッチ(例えば、実施形態の第1のクラッチCL1)と、前記エンジンと前記第2入力軸の間に介装されて動力を断接操作する第2のクラッチ(例えば、実施形態の第2のクラッチCL2)と、前記エンジンと前記動力分割機構の間に介装されて動力を断接操作する第3のクラッチ(例えば、実施形態の第3のクラッチCL3)と、を備え、前記第3のクラッチの接続操作により、前記第1入力軸側のギヤ列による変速段と前記第2入力軸側のギヤ列による変速段の中間変速段で前記エンジンと前記出力軸とを接続することを特徴とする。
【0015】
これらの発明では、エンジンによる走行時に、第1,第2入力軸に設定されたギヤ列の変速段(例えば、奇数段の変速段)で変速を行う場合には、予め目的とする変速段のギヤ列を出力軸側に噛合させておき、その状態で第1のクラッチと第2のクラッチの一方を接続状態とする。これにより、エンジンの動力は目的とする変速段のギヤ列で変速され、その動力は出力軸から車輪駆動部へと伝達される。また、エンジンによる走行時に、第1,第2入力軸に設定されたギヤ列の中間の変速段(例えば、偶数段の変速段)で変速を行う場合には、目的とする中間段の前後のギヤ列を同時に出力軸側に噛合させて中間段を生成し、その状態で第3のクラッチを接続状態にする。これにより、エンジンの動力は動力分割機構を通して第1入力軸と第2入力軸に分割され、ここで中間段に変速された動力は出力軸から車輪駆動部へと伝達される。
また、電動駆動時には、モータジェネレータの接続されている側の入力軸上の目的とする変速段のギヤ列を出力軸側に噛合し、その状態でモータジェネレータを駆動させる。これにより、モータジェネレータの動力は出力軸に噛合されているギヤ列を介して車輪駆動部へと伝達される。
また、ハイブリッド駆動時には、モータジェネレータの動力が常に一方の入力軸に直接的に入力されることから、エンジンがいずれの変速段で車輪駆動部を駆動させているときにも、モータジェネレータの駆動力を、ギヤ列を通して出力軸に伝達することができる。また、ハイブリッド駆動時に、モータジェネレータの接続されていない側の入力軸からエンジンの動力を切り離した状態で同入力軸側のギヤ列をプレシフトしても、出力軸へのモータジェネレータの動力伝達が途切れることがなくなる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のハイブリッド車両において、前記第1入力軸を当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続し、前記第1のクラッチを接続して前記エンジンと出力軸とを前記第1入力軸を経由して接続しているときに、前記第2入力軸を、当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続し、かつ前記第2のクラッチによって前記エンジンとの接続を遮断した状態にし、その状態で前記モータジェネレータによって車輪駆動部を駆動し、若しくは、回生制動を行うことを特徴とする。
これにより、モータジェネレータの動力は第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介して出力軸に伝達され、その動力が第1入力軸側から出力軸に入力されるエンジンの動力に加算されて車輪駆動部へと伝達される。また、回生制動時には、車輪駆動部から出力軸に入力された動力が第2入力軸側のギヤ列を介してモータジェネレータに入力される。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載のハイブリッド車両において、前記第1入力軸を当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続し、前記第1のクラッチを接続して前記エンジンと出力軸とを前記第1入力軸を経由して接続しているときに、前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断し、かつ前記第2のクラッチによって前記第2入力軸と前記エンジンを接続状態にし、その状態で前記モータジェネレータによって車輪駆動部を駆動し、若しくは、回生制動を行うことを特徴とする。
これにより、モータジェネレータの動力は第2入力軸と第2クラッチを介してエンジンに伝達され、その動力がエンジンの動力に加算されて第1入力軸と出力軸を通して車輪駆動部へと伝達される。また、回生制動時には、車輪駆動部から出力軸に入力された動力が、第1入力軸、エンジン、第2のクラッチ、第2入力軸を順次経由してモータジェネレータに入力される。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、前記第2入力軸を、当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続するとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、その状態で前記車輪駆動部を前記モータジェネレータによって単独で駆動する電動駆動状態から、前記エンジンを始動して前記車輪駆動部を前記エンジンとモータジェネレータによって駆動するハイブリッド駆動状態に移行したときに、前記第1のクラッチを接続して前記エンジンの動力を前記第1入力軸と当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に伝達するとともに、前記第2のクラッチを遮断して前記第2入力軸側を前記エンジンから切り離し、その状態で前記第2入力軸側のギヤ列を、運転状況に適合した変速段のギヤ列に切換えることを特徴とする。
これにより、電動駆動状態からハイブリッド駆動状態に移行するときには、エンジンの動力伝達経路が第1入力軸側に移され、エンジンから第2入力軸への動力伝達が遮断されている間に、第2入力軸側のギヤ列が運転状況に適合した変速段のものに切換えられるようになる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、前記第1入力軸に、前記出力軸の回転を減速してその回転を前記第1入力軸に伝達するエンジン始動ギヤ列(例えば、実施形態のエンジン始動ギヤ列42)を設けるとともに、このエンジン始動ギヤ列に、前記出力軸から前記第1入力軸への回転伝達を許容し前記第1入力軸から前記出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチ(例えば、実施形態のツーウェイクラッチ43)を設け、前記第2入力軸を、当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続するとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、その状態で前記車輪駆動部を前記モータジェネレータによって単独で駆動する電動駆動状態から、前記第1のクラッチを接続することにより、前記エンジン始動ギヤ列と第1入力軸を経由した前記出力軸の回転によって前記エンジンを始動し、前記エンジンの始動直後の回転が前記エンジン始動ギヤ列を通して前記出力軸に伝達されるのを、前記ツーウェイクラッチによって阻止することを特徴とする。
これにより、車輪駆動部がモータジェネレータによって単独で駆動されているときには、出力軸の回転がエンジン始動ギヤ列で減速されて第1入力軸に伝達される。このとき第1のクラッチが接続されると、第1入力軸からエンジンにトルクが加えられてエンジンが始動する。こうしてエンジンが始動すると、その動力が第1のクラッチを介して第1入力軸に入力されるが、エンジン始動ギヤ列には、第1入力軸から出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチが設けられているため、エンジンの始動直後の不安定な回転トルクは出力軸側に伝達されなくなる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のハイブリッド車両において、前記第2入力軸の回転を前記第1入力軸に逆向きの回転として伝達する反転機構(例えば、実施形態の差動歯車装置25)を設け、前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断状態にするとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、その状態で前記モータジェネレータと前記反転機構を作動させて、前記第1入力軸側の前記エンジン始動ギヤ列よりも変速比の小さい別のギヤ列を介して前記第1入力軸の逆転方向の動力を前記出力軸に伝達し、このとき、前記エンジン始動ギヤ列を通して前記第1入力軸から前記出力軸に回転が伝達されるのを、前記ツーウェイクラッチによって阻止することを特徴とする。
これにより、第2入力軸が出力軸とエンジンに対して遮断状態とされているときに、モータジェネレータが作動し、さらに反転機構が作動すると、モータジェネレータの動力によって第2入力軸が回転し、その回転が反転機構を介して第1入力軸に逆向きの回転として伝達されるようになる。こうして、第1入力軸が逆向きに回転すると、その回転がエンジン始動ギヤ列よりも変速比の小さい別のギヤ列を介して第1入力軸と車輪駆動部に伝達される。このとき、別のギヤ列とエンジン始動ギヤ列が出力軸側と同時に噛み合うことによる軸同士の相互ロックがツーウェイクラッチによって阻止される。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のハイブリッド車両において、前記第2入力軸の回転を前記第1入力軸に逆向きの回転として伝達する反転機構を設け、前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断状態にするとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、その状態で前記モータジェネレータと前記反転機構を作動させて、前記第1入力軸側の前記エンジン始動ギヤ列よりも変速比の小さい別のギヤ列を介して前記第1入力軸の逆転方向の動力を前記出力軸に伝達し、このとき、前記エンジン始動ギヤ列を通して前記第1入力軸から前記出力軸に回転が伝達されるのを、前記ツーウェイクラッチによって阻止し、さらに、この状態で前記蓄電手段の蓄電残容量が規定値を下回ったときには、前記第2のクラッチを容量制御しつつ接続することで前記エンジンを始動し、前記エンジンの動力による後退走行に切換えることを特徴とする。
これにより、モータジェネレータによる後退発進時に蓄電手段の蓄電残容量が規定値を下回り、モータジェネレータによる後退走行の継続が難しくなったときには、第2のクラッチを接続することによってエンジンが始動され、始動したエンジンの回転が反転機構を介して第1入力軸に逆向きの回転として伝達されるようになる。この結果、エンジンの動力によって車両の後退走行が継続されるようになる。この場合にも、別のギヤ列とエンジン始動ギヤ列が出力軸側と同時に噛み合うことによる軸同士の相互ロックがツーウェイクラッチによって阻止される。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項6に記載のハイブリッド車両において、前記第2入力軸の回転を前記第1入力軸に逆向きの回転として伝達する反転機構を設け、前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断状態にするとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとを前記第2のクラッチによって接続し、その状態で前記モータジェネレータを作動させて前記エンジンを始動し、さらに前記反転機構を作動させることにより、前記第1入力軸の逆転方向の動力を、前記第1入力軸側の前記エンジン始動ギヤ列よりも変速比の小さい別のギヤ列を介して前記出力軸に伝達し、このとき、前記エンジン始動ギヤ列を通して前記第1入力軸から前記出力軸に回転が伝達されるのを、前記ツーウェイクラッチによって阻止することを特徴とする。
これにより、第2入力軸が出力軸と遮断状態とされ、かつエンジンと接続状態とされてモータジェネレータが作動すると、エンジンが始動し、第2入力軸がその動力を受けて回転するようになる。この状態から反転機構が作動すると、第2入力軸の回転が反転機構を介して第1入力軸に逆向きの回転として伝達されるようになる。こうして、第1入力軸が逆向きに回転すると、その回転がエンジン始動ギヤ列よりも変速比の小さい別のギヤ列を介して第1入力軸と車輪駆動部に伝達される。このとき、別のギヤ列とエンジン始動ギヤ列が出力軸側と同時に噛み合うことによる軸同士の相互ロックがツーウェイクラッチによって阻止される。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項2〜9のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、動力駆動される補機(例えば、実施形態のエアコンプレッサ48)を前記モータジェネレータに接続し、車両のアイドル停止時に、前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断状態にするとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、その状態で前記モータジェネレータによって前記補機を作動させることを特徴とする。
これにより、車両のアイドル停止時には、モータジェネレータが出力軸やエンジンから切り離されて補機を作動させることになる。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、複数のプラネタリギヤ(例えば、実施形態のプラネタリギヤ19)を支持するキャリア(例えば、実施形態のキャリア20)と、前記プラネタリギヤに噛合する第1サンギヤ(例えば、実施形態の第1サンギヤ21)と第2サンギヤ(例えば、実施形態の第2サンギヤ22)を有する差動歯車装置(例えば、実施形態の差動歯車装置25)を備え、前記キャリアは前記第1入力軸に接続され、前記第1サンギヤは前記第2入力軸に接続され、前記第1入力軸は前記第1のクラッチを介して前記エンジンに接続され、前記第2入力軸は、前記モータジェネレータに接続される一方で、前記エンジンに前記第2のクラッチを介して接続され、前記第2サンギヤは前記第3のクラッチを介してエンジンに接続され、前記第1入力軸と前記出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な1速ギヤ列(例えば、実施形態の1速ギヤ列40)と5速ギヤ列(例えば、実施形態の5速ギヤ列41)と、前記出力軸の回転を減速して前記第1入力軸に伝達するエンジン始動ギヤ列(例えば、実施形態のエンジン始動ギヤ列42)とが並列に設けられるとともに、1速ギヤ列による連結状態、5速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第1シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第1シンクロクラッチS1)が設けられ、前記エンジン始動ギヤ列には、前記出力軸から前記第1入力軸への回転伝達を許容し前記第1入力軸から前記出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチ(例えば、実施形態のツーウェイクラッチ43)が設けられ、前記第2入力軸と出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な3速ギヤ列(例えば、実施形態の3速ギヤ列44)と7速ギヤ列(例えば、実施形態の7速ギヤ列45)とが並列に設けられるとともに、3速ギヤ列による連結状態、7速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第2シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第2シンクロクラッチS2)が設けられ、前記第3のクラッチの前記第2サンギヤ側と逆側の接離部には、前記エンジンとの接続状態、固定壁との接続状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第3シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第3シンクロクラッチS3)が設けられていることを特徴とする。
【0025】
この場合、差動歯車装置が動力分割機構を構成し、第3のクラッチによってエンジンと第2サンギヤが接続されると、エンジンの動力がキャリアと第1サンギヤを介して第1入力軸と第2入力軸とに分割される。また、第3のクラッチが遮断された状態で、第1,第2のクラッチのうちの一方が接続されると、エンジンの動力は第1入力軸と第2入力軸のうちの一方に伝達される。変速段の1速と5速は第1入力軸側の第1シンクロクラッチによって操作され、3速と7速は第2入力軸側の第2シンクロクラッチによって操作される。また、変速機の前進回転、後退回転、ニュートラルの状態は第3シンクロクラッチによって切換え操作される。第3シンクロクラッチによって第3のクラッチの第2サンギヤ側と逆側の接離部が固定壁に接続されると、差動歯車装置の第2サンギヤの回転が固定される。これにより、第1サンギヤが一方に回転すると、プラネタリギヤが第1サンギヤの回転方向と逆向きに公転し、その結果、キャリアには逆向きの回転が伝達されることになる。
また、エンジンが停止し第1のクラッチの接続が遮断された状態で出力軸がモータジェネレータの動力を受けて回転すると、出力軸の回転はエンジン始動ギヤ列で減速されて第1入力軸に伝達される。この状態から第1のクラッチが接続されると、エンジンに動力が伝達されてエンジンの始動が可能になる。エンジンの始動直後に第1入力軸に入力されたエンジンの動力は、ツーウェイクラッチの機能により、エンジン始動ギヤ列を通して出力軸に伝達されなくなる。
【0026】
請求項12に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、複数のプラネタリギヤ(例えば、実施形態のプラネタリギヤ219)を支持するキャリア(例えば、実施形態のキャリア220)と、前記プラネタリギヤに噛合するサンギヤ(例えば、実施形態のサンギヤ221)とリングギヤ(例えば、実施形態のリングギヤ223)を有する差動歯車装置(例えば、実施形態の遊星歯車装置225)を備え、前記リングギヤは前記第1入力軸に接続され、前記サンギヤは前記第2入力軸に接続され、前記第1入力軸は前記第1のクラッチを介して前記エンジンに接続され、前記第2入力軸は、前記モータジェネレータに接続される一方で、前記エンジンに前記第2のクラッチを介して接続され、前記キャリアは、前記第3のクラッチを介してエンジンに接続され、前記第1入力軸と前記出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な3速ギヤ列(例えば、実施形態の3速ギヤ列44)と7速ギヤ列(例えば、実施形態の7速ギヤ列45)と、前記出力軸の回転を減速して前記第1入力軸に伝達するエンジン始動ギヤ列(例えば、実施形態のエンジン始動ギヤ列42)とが並列に設けられるとともに、3速ギヤ列による連結状態、7速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第1シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第1シンクロクラッチS1)が設けられ、前記エンジン始動ギヤ列には、前記出力軸から前記第1入力軸への回転伝達を許容し前記第1入力軸から前記出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチ(例えば、実施形態のツーウェイクラッチ43)が設けられ、前記第2入力軸と出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な1速ギヤ列(例えば、実施形態の1速ギヤ列40)と5速ギヤ列(例えば、実施形態の5速ギヤ列41)とが並列に設けられるとともに、1速ギヤ列による連結状態、5速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第2シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第2シンクロクラッチS2)が設けられ、前記第3のクラッチの前記キャリア側と逆側の接離部には、前記エンジンとの接続状態、固定壁との接続状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第3シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第3シンクロクラッチS3)が設けられていることを特徴とする。
【0027】
この場合、差動歯車装置が動力分割機構を構成し、第3のクラッチによってエンジンとキャリアが接続されると、エンジンの動力がリングギヤとサンギヤを介して第1入力軸と第2入力軸とに分割される。また、第3のクラッチが遮断された状態で、第1,第2のクラッチのうちの一方が接続されると、エンジンの動力は第1入力軸と第2入力軸のうちの一方に伝達される。変速段の1速と5速は第2入力軸側の第2シンクロクラッチによって操作され、3速と7速は第1入力軸側の第1シンクロクラッチによって操作される。また、変速機の前進回転、後退回転、ニュートラルの状態は第3シンクロクラッチによって切換え操作される。第3シンクロクラッチによって第3のクラッチの第2サンギヤ側と逆側の接離部が固定壁に接続されると、差動歯車装置のキャリアの公転が固定される。これにより、サンギヤが一方に回転すると、プラネタリギヤが逆転方向に自転し、その結果、リングギヤには逆向きの回転が伝達されることになる。
また、エンジンが停止し第1のクラッチの接続が遮断された状態で出力軸がモータジェネレータの動力を受けて回転すると、出力軸の回転はエンジン始動ギヤ列で減速されて第1入力軸に伝達される。この状態から第1のクラッチが接続されると、エンジンに動力が伝達されてエンジンの始動が可能になる。エンジンの始動直後に第1入力軸に入力されたエンジンの動力は、ツーウェイクラッチの機能により、エンジン始動ギヤ列を通して出力軸に伝達されなくなる。
【0028】
請求項13に記載の発明は、請求項2〜10のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、複数のプラネタリギヤ(例えば、実施形態のプラネタリギヤ219)を支持するキャリア(例えば、実施形態のキャリア220)と、前記プラネタリギヤに噛合するサンギヤ(例えば、実施形態のサンギヤ221)とリングギヤ(例えば、実施形態のリングギヤ223)を有する差動歯車装置(例えば、実施形態の差動歯車装置225)を備え、前記リングギヤは前記第1入力軸に接続され、前記サンギヤは前記第2入力軸に接続され、前記第1入力軸は前記第1のクラッチを介して前記エンジンに接続され、前記第2入力軸は、前記モータジェネレータに接続される一方で、前記エンジンに前記第2のクラッチを介して接続され、前記キャリアは、前記第3のクラッチを介してエンジンに接続され、前記第1入力軸と前記出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な3速ギヤ列(例えば、実施形態の3速ギヤ列44)と7速ギヤ列(例えば、実施形態の7速ギヤ列45)が並列に設けられるとともに、3速ギヤ列による連結状態、7速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第1シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第1シンクロクラッチS1)が設けられ、前記7速ギヤ列には、前記第1シンクロクラッチとは別経路で前記出力軸から前記第1入力軸への回転伝達を許容し前記第1入力軸から前記出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチ(例えば、実施形態のツーウェイクラッチ43)が設けられ、前記第2入力軸と出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な1速ギヤ列(例えば、実施形態の1速ギヤ列40)と5速ギヤ列(例えば、実施形態の5速ギヤ列41)とが並列に設けられるとともに、1速ギヤ列による連結状態、5速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第2シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第2シンクロクラッチS2)が設けられ、前記第3のクラッチの前記キャリア側と逆側の接離部には、前記エンジンとの接続状態、固定壁との接続状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第3シンクロクラッチ(例えば、実施形態の第3シンクロクラッチS3)が設けられていることを特徴とする。
【0029】
この場合、差動歯車装置が動力分割機構を構成し、第3のクラッチによってエンジンとキャリアが接続されると、エンジンの動力がリングギヤとサンギヤを介して第1入力軸と第2入力軸とに分割される。また、第3のクラッチが遮断された状態で、第1,第2のクラッチのうちの一方が接続されると、エンジンの動力は第1入力軸と第2入力軸のうちの一方に伝達される。変速段の1速と5速は第2入力軸側の第2シンクロクラッチによって操作され、3速と7速は第1入力軸側の第1シンクロクラッチによって操作される。また、変速機の前進回転、後退回転、ニュートラルの状態は第3シンクロクラッチによって切換え操作される。第3シンクロクラッチによって第3のクラッチの第2サンギヤ側と逆側の接離部が固定壁に接続されると、差動歯車装置のキャリアの公転が固定される。これにより、サンギヤが一方に回転すると、プラネタリギヤが逆転方向に自転し、その結果、リングギヤには逆向きの回転が伝達されることになる。
また、エンジンが停止し第1のクラッチの接続が遮断された状態で出力軸がモータジェネレータの動力を受けて回転すると、出力軸の回転動力はツーウェイクラッチを介して7速ギヤ列を通り、ここで減速されて第1入力軸に伝達される。この状態から第1のクラッチが接続されると、エンジンに動力が伝達されてエンジンの始動が可能になる。エンジンの始動直後に第1入力軸に入力されたエンジンの動力は、ツーウェイクラッチの機能により、7速ギヤ列を通して出力軸に伝達されなくなる。
【0030】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載のハイブリッド車両において、前記第1入力軸と出力軸を接続するギヤ列の前記出力軸側のギヤ要素(例えば、実施形態のドリブンギヤ45b)と、前記第2入力軸と出力軸を接続するギヤ列の前記出力軸側のギヤ要素とが共用され、前記第1入力軸側のギヤ要素と前記第2入力軸側のギヤ要素が前記出力軸上の共通のギヤ要素に共噛みされるとともに、前記第1入力軸側のギヤ要素と前記第2入力軸側のギヤ要素が異なる歯数に設定されていることを特徴とする。
これにより、第1入力軸側のギヤ要素と第2入力軸側のギヤ要素が軸方向でオーバーラップして配置され、装置全体の軸長の短縮が可能になるとともに、出力軸上のギヤ要素の部品点数が削減されることになる。
【発明の効果】
【0031】
請求項1に記載の発明によれば、それぞれ固有のギヤ列を介して出力軸に接続可能な第1,第2入力軸と、動力分割機構とを組み合わせ、これらを第1〜第3のクラッチによってエンジンと適宜断接することで変速段を切換えることから、装置の軸長の増大を招くことなく変速段の多段化を図ることでき、さらに、モータジェネレータが第1入力軸と第2入力軸の少なくとも一方に接続されていることから、モータジェネレータによる電動駆動時には、モータジェネレータの接続される側の入力軸上のギヤ列を選択して適切な変速段を使用することができ、しかも、ハイブリッド駆動時には、出力軸へのモータジェネレータの動力伝達を途切れさせることなく変速段のプレシフトを行うことができる。したがって、車両の燃費効率の向上とドライバビリティの向上を図ることができる。
【0032】
請求項2に記載の発明によれば、それぞれ固有のギヤ列を介して出力軸に接続可能な第1,第2入力軸と、動力分割機構とを組み合わせ、これらを第1〜第3のクラッチによってエンジンと適宜断接することで変速段を切換えることから、装置の軸長の増大を招くことなく変速段の多段化を図ることができるうえ、モータジェネレータが第2入力軸に接続されていることから、モータジェネレータによる電動駆動時には、第2入力軸上のギヤ列を選択して適切な変速段を使用することができ、しかも、ハイブリッド駆動時には、出力軸へのモータジェネレータの動力伝達を途切れさせることなく変速段のプレシフトを行うことができる。したがって、車両の燃費効率の向上とドライバビリティの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の全体構成を示す図である。
【図2】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両を模式的に示した図である。
【図3】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両で採用される変速機の作動図表である。
【図4】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両で採用される変速機の速度線図である。
【図5】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の1速走行時の作動状態を示す図である。
【図6】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の2速走行時の作動状態を示す図である。
【図7】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の3速走行時の作動状態を示す図である。
【図8】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の4速走行時の作動状態を示す図である。
【図9】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の5速走行時の作動状態を示す図である。
【図10】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の6速走行時の作動状態を示す図である。
【図11】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の7速走行時の作動状態を示す図である。
【図12】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の前方発進時の作動状態を示す図である。
【図13】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の後退発進時の作動状態を示す図である。
【図14】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の後退発進時の作動状態を示す図である。
【図15】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の後退発進時の作動状態を示す図である。
【図16】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の前方発進時の作動状態を示す図である。
【図17】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の走行時における変速機、エンジン、モータジェネレータの作動を示すタイミングチャートである。
【図18】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の走行時における変速機、エンジン、モータジェネレータの作動を示すタイミングチャートである。
【図19】この発明の第1の実施形態のハイブリッド車両の走行時における変速機、エンジン、モータジェネレータの作動を示すタイミングチャートである。
【図20】この発明の第2の実施形態のハイブリッド車両の全体構成を示す図である。
【図21】この発明の第2の実施形態のハイブリッド車両を模式的に示した図である。
【図22】この発明の第2の実施形態のハイブリッド車両で採用される変速機の作動図表である。
【図23】この発明の第2の実施形態のハイブリッド車両の走行時における変速機、エンジン、モータジェネレータの作動を示すタイミングチャートである。
【図24】この発明の第3の実施形態のハイブリッド車両の全体構成を示す図である。
【図25】この発明の第3の実施形態のハイブリッド車両を模式的に示した図である。
【図26】この発明の第4の実施形態のハイブリッド車両を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図19に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態のハイブリッド車両100の全体構成を示す図である。同図に示すように、このハイブリッド車両100は、駆動源として機能するエンジン1と、駆動源と発電機として機能するモータジェネレータ2と、車輪駆動部であるディファレンシャル装置3と、エンジン1、モータジェネレータ2、ディファレンシャル装置3の3者の間に介装されて入出力の回転速度比を調整する変速機4と、モータジェネレータ3に対して電力を供給しモータジェネレータ3で発電された電力を蓄電する蓄電手段である高圧バッテリ5と、を備えている。
【0035】
エンジン1は、ガソリンや軽油等の燃料を燃焼して動力を発生するレシプロ式の多気筒の内燃機関であり、その出力軸1aには、ダンパ機能を備えたフライホイール6が接続されている。
【0036】
モータジェネレータ2は、3相のDCブラシレスモータによって構成され、変速機4のハウジング(図示せず)に一体に固定された円環状のステータ7と、ステータ7の内側に回転可能に配置された円環状のロータ8とを備えている。ロータ8には複数の永久磁石(図示せず)が装着され、ステータ7には3相のコイル(図示せず)が巻回されている。
ステータ7のコイルは、インバータを含むパワードライブ・ユニット(PDU)9を介して高圧バッテリ5に接続されている。PDU9は、モータジェネレータ2やエンジン1の作動機器を統合的に制御する電子制御ユニット(ECU)10に電気的に接続されるとともに、補機作動用の低圧バッテリである12Vバッテリ11にも電気的に接続されている。
ECU10は、車両の運転状況に応じてPDU9を制御し、それによって高圧バッテリ11の電力によるモータジュネレータ2の力行運転と、モータジェネレータ2の発電電力を高圧バッテリ5に充電する回生運転とを行う。
【0037】
変速機4は、エンジン1の出力軸1aにフライホイール6を介して結合される直結軸12が設けられ、直結軸12の外周側には、円筒状の第1入力軸13と第2入力軸14が同軸に、かつ回転可能に配置されている。第1入力軸13は、第2入力軸14よりも大径に形成され、かつ第2入力軸14のほぼ半分の長さの軸長とされている。また、変速機4には、第1,第2入力軸13,14と平行に一対の出力軸15,16が設けられ、これらの出力軸15,16上に設けられたファイナルギヤ17,18がディフアレンシャル装置3のリングギヤ3aに常時噛み合っている。
【0038】
変速機4のエンジン1側と逆側の軸方向の端部には、プラネタリギヤ19を回転可能に支持するキャリア20と、プラネタリギヤ19に噛合する第1サンギヤ21及び第2サンギヤ22を備えた差動歯車装置25(動力分割機構)が設けられている。各プラネタリギヤ19は、外径と歯数の異なる2つのギヤ部19a,19bを同軸にかつ一体回転可能に備え、外径の大きいギヤ部19aが第1サンギヤ21と噛合され、外径の小さいギヤ部19bが第2サンギヤ22と噛合されている。
第1サンギヤ21と第2サンギヤ22は、直結軸12の外周側に軸方向に並んで同軸に配置され、第1サンギヤ21は、第1入力軸13の軸方向の端部に一体回転可能に設けられている。第2サンギヤ22は、複数のプラネタリギヤ19の一方のギヤ部19bの外周側を非接触状態で覆う保持リング26に一体回転可能に設けられている。
キャリア20は、第2入力軸14の軸方向の端部に一体回転可能に設けられている。このキャリア20には、複数のプラネタリギヤ19の他方のギヤ部19aの外周側を非接触状態で覆う保持リング27が一体に設けられている。
【0039】
また、保持リング26,27の外周側にはクラッチドラム28が回転可能に設けられ、クラッチドラム28とキャリア20側の保持リング27の間には第1のクラッチCL1が設けられ、クラッチドラム28と第2サンギヤ22側の保持リング26の間には第3のクラッチCL3が設けられている。なお、クラッチドラム28は、第3のクラッチCL3の第2サンギヤ22側と逆側の接離部を構成している。第1のクラッチCL1と第3のクラッチCL3は、いずれも多板式のクラッチによって構成され、ECU10による制御に基づく油圧操作によって動力の断接が行われるようになっている。
【0040】
クラッチドラム28は、直結軸12に対し、第3シンクロクラッチS3(同期噛合い装置)によって断接可能とされている。第3シンクロクラッチS3は、クラッチドラム28を、直結軸12(エンジン1)との接続状態、変速機4の固定壁36との接続状態(回転停止状態)、ニュートラル状態の3状態のうちのいずれかに選択的に切換えるものであり、ECU10による制御に基づく油圧操作によってこれらの状態の切換えを実行する。第3シンクロクラッチS3の上記の3状態の切換えは車室内のシフトレバーや切換えスイッチの操作に応じて行われる。即ち、ドライブモード等の車両を前進させるモードでは、クラッチドラム28を直結軸12(エンジン1)に接続し、パーキングモードやリバースモードでは、クラッチドラム28を固定壁36に接続し、ニュートラルモードでは、クラッチドラム28をニュートラル状態とする。
なお、クラッチドラム28が直結軸12(エンジン1)に接続された状態においては、第1のクラッチCL1が接続されると、エンジン1とキャリア20(第1入力軸13)とが接続状態とされ、また、第3のクラッチCL3が接続されると、エンジン1と第2サンギヤ22とが接続状態とされる。
【0041】
また、第2入力軸14のエンジン1側の端部は、モータジェネレータ2のロータ8に一体回転可能に接続されるとともに、第2のクラッチCL2を介して直結軸12(エンジン1)に対して断接可能とされている。第2のクラッチCL2は、第1,第3のクラッチCL1,CL3と同様に多板式のクラッチによって構成され、ECU10による制御に基づく油圧操作によって動力の断接が行われるようになっている。
【0042】
ところで、第1入力軸13と一方の出力軸15には、常時相互に噛合うギヤ対から成る1速ギヤ列40が設けられている。この1速ギヤ列40は、第1入力軸13側のドライブギヤ40aが第1入力軸13に一体に固定される一方で、出力軸15側のドリブンギヤ40bが出力軸15に回転可能に支持され、後述する第1シンクロクラッチS1(同期噛合い装置)の操作によって出力軸15に断接可能にされている。
また、第1入力軸13と他方の出力軸16には、常時相互に噛合うギヤ対から成る5速ギヤ列41とエンジン始動ギヤ列42が設けられている。5速ギヤ列41は、第1入力軸13側のドライブギヤ41aが第1入力軸13に一体に固定される一方で、出力軸16側のドリブンギヤ41bが出力軸16に対して回転可能に支持され、第1シンクロクラッチS1の操作によって出力軸16に断接可能にされている。
【0043】
第1シンクロクラッチS1は、一方の出力軸15側の操作子と他方の出力軸16側の操作子が相互に連動するように設けられ、1速ギヤ列40のドリブンギヤ40bと出力軸15との接続状態、5速ギヤ列41のドリブンギヤ41bと出力軸16との接続状態、いずれのドリブンギヤ40b,41bも出力軸15,16に接続しないニュートラル状態のうちのいずれかを選択的に切換えるものであり、ECU10による制御に基づく油圧操作によってこれらの状態の切換えを実行する。
【0044】
エンジン始動ギヤ列42は、第1入力軸13側のドライブギヤ42aが第1入力軸13に一体に固定され、他方の出力軸16側のドリブンギヤ42bが出力軸16に対してツーウェイクラッチ43を介して取り付けられている。
ツーウェイクラッチ43は周知の構造のものが用いられるが、このツーウェイクラッチ43は、ドリブンギヤ42bとドライブギヤ42aを介した出力軸16側から第1入力軸13への正転・逆転双方の回転伝達を許容し、第1入力軸13側から出力軸16への正転・逆転双方の回転伝達を阻止するようになっている。
【0045】
また、第2入力軸14と一方の出力軸15には、常時相互に噛合うギヤ対から成る3速ギヤ列44が設けられている。この3速ギヤ列44は、第2入力軸14側のドライブギヤ44aが第2入力軸14に一体に固定される一方で、出力軸15側のドリブンギヤ44bが出力軸15に回転可能に支持され、後述する第2シンクロクラッチS2(同期噛合い装置)の操作によって出力軸15に断接可能にされている。
第2入力軸14と他方の出力軸16には、常時相互に噛合うギヤ対から成る7速ギヤ列45が設けられている。7速ギヤ列45は、第2入力軸14側のドライブギヤ45aが第2入力軸14に一体に固定される一方で、出力軸16側のドリブンギヤ45bが出力軸16に対して回転可能に支持され、第2シンクロクラッチS2の操作によって出力軸16に断接可能にされている。
【0046】
第2シンクロクラッチS2は、第1シンクロクラッチS1と同様に、一方の出力軸15側の操作子と他方の出力軸16側の操作子が相互に連動するように設けられ、3速ギヤ列44のドリブンギヤ44bと出力軸15との接続状態、7速ギヤ列45のドリブンギヤ45bと出力軸16との接続状態、いずれのドリブンギヤ44b,45bも出力軸15,16に接続されないニュートラル状態のうちのいずれかに選択的に切換えるものであり、ECU10による制御に基づく油圧操作によってこれらの状態の切換えを実行する。
【0047】
なお、図1中47は、高圧バッテリ5の電圧が低下したときに、12Vバッテリ11によってエンジン1を始動するためスタータモータであり、また、同図中48は、動力駆動される一補機である空気調和装置のエアコンプレッサである。このエアコンプレッサ48は、モータジェネレータ2、若しくは、第2入力軸14に対して接続可能とされている。
【0048】
図2は、機能の把握を容易にするために、図1に示すハイブリッド車両100を模式化して示した図である。この図においては、差動歯車装置25を単純化し、第1サンギヤ21と第2サンギヤ22とキャリア20を相互に連結された平行な3本の線で示し、ディファレンシャル装置3に接続される出力軸15,16は1本の線で示している。なお、ハイブリッド車両100の各作動を説明するために後に参照する図5〜図16についても同様である。
図3は、変速機4の各シフトモードに対応する第1〜第3のクラッチCL1,CL2,CL3と第1〜第3シンクロクラッチS1,S2,S3の作動状態を図表化して示したものである。
図4は、出力軸15,16側の回転を基準にしたエンジン1側の回転速度比を、エンジン1からの入力に用いるクラッチCL1,CL2,CL3を対応させて示した速度線図であり、同図中(1)〜(7)は変速機の対応する変速段を意味し、RVSは後退段を意味するものとする。
以下、上記の各図を参照しつつ、図5〜図16に示す各作動状態について順次説明する。
【0049】
[1速エンジン走行]
図3に示すように、第3シンクロクラッチS3は前進側(エンジン1側)に接続され、第1シンクロクラッチS1と第2シンクロクラッチS2は1速ギヤ列40側と3速ギヤ列44側にそれぞれ接続され、その状態で第1のクラッチCL1が接続される。
これにより、エンジン1の動力は、図5の実線矢印で示すように、差動歯車装置25のキャリア20を通して第1入力軸13に入力され、1速ギヤ列40で1速段の変速比に変速されて出力軸15,16に出力される。
この状態では、第2入力軸14が第2のクラッチCL2によってエンジン1側と切り離され、かつ第2シンクロクラッチS2を通して出力軸15,16側と3速ギヤ列44で接続されているため、この状態からモータジェネレータ2を作動させることにより、図5の上側の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2側を3速段にしたハイブリッド駆動が可能となる。また、車両の減速時に、この状態でモータジェネレータ2が回生制動状態にされると、モータジェネレータ2は3速段で回生運転を行う。
なお、この1速エンジン走行時には、図5の下側の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2をエンジン1に直結してハイブリッド駆動を行うことも可能である。この場合、第2シンクロクラッチS2をニュートラル状態にし、第2のクラッチCL2によってモータジェネレータ2とエンジン1とを直結する。これにより、モータジェネレータ2は結果として1速段でハイブリッド駆動を行うことになる。
【0050】
[2速エンジン走行]
図3に示すように、第3シンクロクラッチS3は前進側(エンジン1側)に接続され、第1シンクロクラッチS1と第2シンクロクラッチS2は1速ギヤ列40側と3速ギヤ列44側にそれぞれ接続され、その状態で第3のクラッチCL3が接続される。
このとき、第1入力軸13側の1速ギヤ列40と第2入力軸14側の3速ギヤ列44がそれぞれ出力軸15,16側に噛合するが、各出力軸15,16は、図1に示すようにファイナルギヤ17,18を介してディファレンシャル装置3に同時に噛合(共噛み)しているため、差動歯車装置25のキャリア20と第1サンギヤ21の回転比関係が、2速の変速段が得られるように固定される。したがって、この状態で第3のクラッチCL3によってエンジン1と第2サンギヤ22が接続されると、エンジン1の動力は、図6の実線矢印で示すように、差動歯車装置25のキャリア20と第1サンギヤ21とに分割され、その動力が2速段に変速されて出力軸15,16に出力される。
この状態では、第2入力軸が第2シンクロクラッチS2を通して出力軸15側と3速ギヤ列44で接続されているため、この状態からモータジェネレータ2を作動させることにより、図6の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2側を3速段にしたハイブリッド駆動が可能となる。また、この場合も、車両の減速時にモータジェネレータ2が回生制動状態にされると、モータジェネレータ2は3速段で回生運転を行う。
【0051】
[3速エンジン走行]
図3に示すように、第3シンクロクラッチS3は前進側(エンジン1側)に接続され、第1シンクロクラッチS1はニュートラルにされ、第2シンクロクラッチS2は3速ギヤ列44側に接続され、その状態で第2のクラッチCL2が接続される。
これにより、エンジン1の動力は、図7の実線矢印で示すように、差動歯車装置25の第1サンギヤ21を通して第2入力軸14に入力され、3速ギヤ列44で3速段の変速比に変速されて出力軸15に出力される。
また、この状態からモータジェネレータ2を作動させることにより、図7の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2側を3速段にしたハイブリッド駆動が可能となり、車両の減速時に、モータジェネレータ2が回生制動状態にされると、モータジェネレータ2は3速段で回生運転を行うことになる。
【0052】
[4速エンジン走行]
図3に示すように、第3シンクロクラッチS3は前進側(エンジン1側)に接続され、第1シンクロクラッチS1と第2シンクロクラッチS2は5速ギヤ列41側と3速ギヤ列44側にそれぞれ接続され、その状態で第3のクラッチCL3が接続される。
このとき、第1入力軸13側の5速ギヤ列41と第2入力軸14側の3速ギヤ列44の同時噛合いによってキャリア20と第1サンギヤ21の回転比関係が、4速の変速段が得られるように固定され、エンジン1の動力は、図8の実線矢印で示すように、キャリア20と第1サンギヤ21とに分割され、その動力が4速段に変速されて出力軸15,16に出力される。
この状態からモータジェネレータ2を作動させることにより、図8の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2側を3速段にしたハイブリッド駆動が可能となり、車両の減速時に、モータジェネレータ2が回生制動状態にされると、モータジェネレータ2は3速段で回生運転を行うことになる。
【0053】
[5速エンジン走行]
図3に示すように、第3シンクロクラッチS3は前進側(エンジン1側)に接続され、第1シンクロクラッチS1と第2シンクロクラッチS2は5速ギヤ列41側と3速ギヤ列44側にそれぞれ接続され、その状態で第1のクラッチCL1が接続される。
エンジン1の動力は、図9の実線矢印で示すように、キャリア20を通して第1入力軸13に入力され、5速ギヤ列41で5速段の変速比に変速されて出力軸15,16に出力される。
この状態からモータジェネレータ2を作動させることにより、図9の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2側を3速段にしたハイブリッド駆動が可能となり、車両の減速時に、モータジェネレータ2が回生制動状態とされると、モータジェネレータ2は3速段で回生運転を行うことになる。なお、このとき第2入力軸14側の第2シンクロクラッチS2を7速ギヤ列45側に切換えることにより、図9の別の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2側を7速段にしたハイブリッド駆動と回生制動が可能になる。
【0054】
[6速エンジン走行]
図3に示すように、第3シンクロクラッチS3は前進側(エンジン1側)に接続され、第1シンクロクラッチS1と第2シンクロクラッチS2は5速ギヤ列41側と7速ギヤ列45側にそれぞれ接続され、その状態で第3のクラッチCL3が接続される。
このとき、第1入力軸13側の5速ギヤ列41と第2入力軸14側の7速ギヤ列45の同時噛合いによってキャリア20と第1サンギヤ21の回転比関係が、6速の変速段が得られるように固定され、エンジン1の動力は、図10の実線矢印で示すように、キャリア20と第1サンギヤ21とに分割され、その動力が6速段に変速されて出力軸15,16に出力される。
この状態からモータジェネレータ2を作動させることにより、図10の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2側を7速段にしたハイブリッド駆動が可能となり、車両の減速時に、モータジェネレータ2が回生制動状態にされると、モータジェネレータ2は7速段で回生運転を行うことになる。
【0055】
[7速エンジン走行]
図3に示すように、第3シンクロクラッチS3は前進側(エンジン1側)に接続され、第1シンクロクラッチS1はニュートラルにされ、第2シンクロクラッチS2は7速ギヤ列45側に接続され、その状態で第2のクラッチCL2が接続される。
エンジン1の動力は、図11の実線矢印で示すように、第1サンギヤ21を通して第2入力軸14に入力され、7速ギヤ列45で7速段の変速比に変速されて出力軸16に出力される。
また、この状態からモータジェネレータ2を作動させることにより、図11の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2側を7速段にしたハイブリッド駆動が可能となり、車両の減速時に、モータジェネレータ2が回生制動状態にされると、モータジェネレータ2は7速段で回生運転を行うことになる。
【0056】
[モータによる前方発進→エンジン始動]
図12に示すように、モータジェネレータ2の動力で車両を前方発進する準備段階として、第1〜第3のクラッチCL1,CL2,CL3はすべて遮断状態とされ、第3シンクロクラッチS3はエンジン1(直結軸12)側に接続され、第1シンクロクラッチS1はニュートラルにされ、第2シンクロクラッチS2は3速ギヤ列44側に接続される。
この状態からモータジェネレータ2が始動されると、図12中の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2の動力が3速ギヤ列44を介して出力軸15,16に伝達され、車両はこれによって前方発進する。また、このとき出力軸15,16の回転がエンジン始動ギヤ列42で減速され、その回転が第1入力軸13へと伝達される。
【0057】
次に、この状態からモータジェネレータ2のトルクを増大させつつ第1のクラッチCL1が接続されると、図12中の別の点線矢印で示すように第1入力軸13の回転がエンジン1に伝達され、このとき、エンジン1の内部において燃料噴射と点火を行うことによってエンジン1が始動される。なお、こうしてエンジン1が始動されると、始動直後の不安定な回転が第1のクラッチCL1を通して第1入力軸13に伝達されるが、第1入力軸13と出力軸16の間のエンジン始動ギヤ列42には、第1入力軸13側から出力軸15,16への動力伝達を阻止するツーウェイクラッチ43が設けられているため、このときエンジン1のトルクは出力軸15,16側には伝達されない。
【0058】
この後、第1のクラッチCL1によって第1入力軸13がエンジン1から切り離され、例えば、そのまま第2のクラッチCL2が接続されることにより、図12中の実線矢印で示すように、エンジン1の動力が第2入力軸14と3速ギヤ列44を介して出力軸15に伝達される。これにより、モータジェネレータ2とエンジン1の動力が合成されて出力軸15に伝達され、ハイブリッド駆動が実現される。
なお、エンジン1の始動後には、第1〜第3のクラッチCL1〜CL3とシンクロクラッチS1,S2の作動の組み合わせによって前進側の任意の変速段に変速することもできる。
【0059】
[モータによる後退発進]
図13に示すように、モータジェネレータ2の動力で車両を後退発進する準備段階として、第3シンクロクラッチS3は後退側(固定壁36側)に接続され、第1シンクロクラッチS1は1速ギヤ列40側に接続され、第2シンクロクラッチS2はニュートラルにされる。
次に、この状態から第3のクラッチCL3が接続されることによって差動歯車装置25の第2サンギヤ22がロックされ、その状態でモータジェネレータ2が回転駆動される。これにより、図13中の点線矢印で示すように、モータジェネレータ2による第2入力軸14の正転方向の回転が差動歯車装置25を介して逆転方向の回転として第1入力軸13に伝達される。このとき、第1入力軸13の回転は1速ギヤ列40を介して出力軸15,16に伝達され、エンジン始動ギヤ列42を通した第1入力軸13から出力軸15,16への回転伝達はツーウェイクラッチ43の機能によって阻止される。したがって、第1入力軸13と出力軸15,16は、ギヤ比の異なる2組のギヤが同時に噛み合うことによる相互ロックが回避される。
また、モータジェネレータ2の動力で車両を後退発進している最中にバッテリ5の残容量が規定値を下回ったときには、上述の状態から第2のクラッチCL2を容量制御しつつ接続することでエンジン1を始動し、そこでエンジン1の動力による後退走行に切換える。
【0060】
[モータによるエンジン始動後の後退発進]
図14に示すように、モータジェネレータ2の動力でエンジン1を始動し、その動力で車両を後退発進する準備段階として、第3シンクロクラッチS3は後退側(固定壁36側)に接続され、第1シンクロクラッチS1は1速ギヤ列40側に接続され、第2シンクロクラッチS2はニュートラルにされる。
【0061】
次に、この状態から第2のクラッチCL2によって第2入力軸14とエンジン1が連結され、その状態でモータジェネレータ2が回転駆動される。このとき、エンジン1の内部で燃料噴射と点火を行うことによってエンジン1が始動される(図14中の点線矢印参照)。
【0062】
この後、第3のクラッチCL3が接続されて差動歯車装置25の第2サンギヤ22の回転がロックされる。これにより、図12中の実線矢印で示すように、エンジン1による第2入力軸14の正転方向の回転は差動歯車装置25を介して逆転方向の回転として第1入力軸13に伝達される。この場合も、第1入力軸13の回転が1速ギヤ列40を介して出力軸15,16に伝達され、エンジン始動ギヤ列42を通した第1入力軸13から出力軸15,16への回転伝達はツーウェイクラッチ43の機能によって阻止される。これにより、第1入力軸13と出力軸15,16の相互ロックは回避される。
【0063】
[スタータモータによるエンジン始動後の後退発進]
通常は、モータジェネレータ2によって上記のようにエンジン1を始動するが、高圧バッテリ5の残容量が規定値を下回る場合には、図15に示すように、モータジェネレータ2に代えてスタータモータ47によってエンジン1を始動させる(図15中の点線矢印参照)。この場合、後退発進のための準備操作やエンジン始動後の作動は、モータジェネレータ2を用いる場合と同様となる。なお、スタータモータ47は、12Vバッテリ11の電力によって駆動されるが、12Vバッテリ11を用いるスタータモータ47による始動は低温始動用のために可及的に控えるようにする。
【0064】
[アイドル停止中のコンプレッサ作動→車両発進]
アイドル停止中に空調装置を用いる場合には、モータジェネレータ2を用いてエアコンプレッサ48を作動させることができる。この場合、図16に示すように、第2シンクロクラッチS2がニュートラル状態にされて第2入力軸14と出力軸15,16との動力伝達が遮断されるとともに、第2入力軸14とエンジン1の間が第2のクラッチCL2によって遮断される。そして、この状態でモータジェネレータ2とエアコンプレッサ48が接続され、モータジェネレータ2によってエアコンプレッサ48が駆動される。
【0065】
また、この状態から車両を発進する場合には、モータジェネレータ2を回転させたまま第2のクラッチCL2を接続し、図16中の点線矢印で示すように、そのモータジェネレータ2の動力によってエンジン1を始動する。こうして、エンジン1が始動されると、図16中の実線矢印で示すように、第1のクラッチCL1を接続してエンジン1とモータジェネレータ2の動力を第1入力軸13に伝達し、さらに1速ギヤ列40で変速してその動力を出力軸15,16へと伝達する。これにより、車両はエンジン1とモータジェネレータ2の動力を受けて発進する。
【0066】
以上では、運転状況に応じたこのハイブリッド車両100の個別の作動について説明したが、つづいて、図17,図18,図19に示す各走行パターン例にしたがって車両制御の流れを説明する。なお、以下の説明においては、モータジェネレータ2単体による発進と走行をそれぞれ「EV発進」と「EV走行」と呼び、モータジェネレータ2単体による定速走行を「EVクルーズ走行」と呼ぶものとする。
【0067】
[EV発進→エンジン走行→EVクルーズ走行]
図17に示す走行パターンにおいては、(a)の時点において、モータジェネレータ2単体で車両の発進を行う。このとき、第1〜第3のクラッチCL1〜CL3は全て遮断状態とされ、第1シンクロクラッチS1はニュートラルにされ、第2シンクロクラッチS2は3速ギヤ列44に接続され、第3シンクロクラッチS3はエンジン1側(前進側)に接続されている。したがって、このときモータジェネレータ2は3速段で車両を前進駆動する。
【0068】
次に、(b)の領域では、第1のクラッチCL1が接続され、3速ギヤ列44と出力軸15,16を通したモータジェネレータ2回転がエンジン始動ギヤ列42と第1入力軸13を経由してエンジン1に伝達される。この状態からモータジェネレータ2のトルクを増大させつつ(図中(b−c)参照)、エンジン1での燃料噴射と点火が行われ、(c)の領域において、エンジン1が始動される。エンジン1の回転速度はここで上昇する。
【0069】
この後、(d)の領域において、第1のクラッチCL1の接続状態から第2のクラッチCL2の接続状態へと切換えられ、エンジン1の動力が3速ギヤ列44を通して出力軸15,16へと伝達される。したがって、このとき車両はモータジェネレータ2とエンジン1の動力を用いたハイブリッド駆動となる。
【0070】
この状態からさらにアクセルペダルが踏み込まれて車両が加速すると、(e)の領域において、最初に、第1入力軸13側の5速ギヤ列41がプレシフトされ、つづいて第2のクラッチCL2の接続状態から第3のクラッチCL3の接続状態へと切換えられ、エンジン1の動力が4速段に変速されて出力軸15,16に伝達されるようになる。さらに加速が続くと、第3のクラッチCL3の接続状態から第1のクラッチCL1の接続状態へと切換えられ、エンジン1の動力が5速段に変速されて出力軸15,16に伝達されるようになる。この間、車両はほぼエンジン走行となる。
【0071】
(f)の領域は、EVクルーズ走行領域であり、この領域では、第1〜第3クラッチCL1〜CL3がすべて遮断状態にされる。このとき、モータジェネレータ2は3速ギヤ列44で定速走行を行い、その間、エンジン1は機関停止状態、若しくは、気筒休止状態とされる。
なお、このエンジン1の機関停止や気筒休止への切換えは、例えば、ナビゲーションシステムの情報に基づいて実行したり、車室内のモードスイッチ(「エコランモード」等)の切換え操作に応じて実行したりするようにしても良い。
【0072】
また、この状態から高圧バッテリ5の残容量の低下等によってEVクルーズ走行を終了する場合には、(g)の領域で、第1のクラッチCL1を接続し、エンジン1を再始動してエンジン1によるクルーズ走行に切換える。この(g)の領域でのエンジン1の始動は上記の(b)〜(d)と同様になる。また、エンジン1によるクルーズ走行に切換えるときに、第1のクラッチCL1の接続状態から第2のクラッチCL2の接続状態に切換えられる。したがって、エンジン1によるクルーズ走行は3速ギヤ列44で行われる。
【0073】
[減速走行→再加速]
図18に示す走行パターンにおいては、(h)の領域では、第2のクラッチCL2が接続状態とされ、第1シンクロクラッチS1がニュートラル状態にされ、第2シンクロクラッチS2が7速ギヤ列45に接続され、第3シンクロクラッチS3がエンジン1側(前進側)に接続されている。この状態では、エンジン1とモータジェネレータ2がいずれも7速ギヤ列45を介して出力軸15,16に接続されている。
【0074】
この状態から(i)の領域で車両が減速され始めると、エンジン1は7速段で出力軸15,16に接続されたまま気筒休止され、このとき、モータジェネレータ2は、7速段での接続において回生制動を開始する。また、(i)の領域の後期においては、次の変速に備えて第1シンクロクラッチS1が5速ギヤ列41にプレシフトされる。
【0075】
つづく、(j)の領域においては、エンジン1が気筒休止運転から通常運転に戻され、その一方で、第2のクラッチCL2の接続状態から第3のクラッチCL3の接続状態へと切換えられ、エンジン1が出力軸15,16に対して6速で接続される(図中(j−1参照))。これにより、車両にはエンジンブレーキが作用する。
次に、こうして車両にエンジンブレーキが作用している間に、第2シンクロクラッチS2の接続を7速ギヤ列45から3速ギヤ44に切換える。この結果、エンジン1は出力軸15,16に対して4速で接続され、モータジェネレータ2は3速段で出力軸15,16に接続されるようになる。この状態で、図中(j−2)に示すようにエンジン1を停止する。
【0076】
(k)の領域においては、エンジン1が停止したまま、モータジェネレータ2が3速段での接続において回生制動を行う。したがって、この領域(k)においては、制動エネルギーのほぼ全量が回生に用いられる。
【0077】
つづく、(l),(m)の領域においては、車両の加速を再開する。
(l)の領域では、第1のクラッチCL1が接続され、モータジェネレータ2が高トルクで駆動される。これにより、エンジン1が再び始動される。そして、(l)の領域の後期には、第1シンクロクラッチS1によって5速ギヤ列41がプレシフトされる。
つづく(m)の領域では、第1のクラッチCL1の接続状態から第3のクラッチCL3の接続状態へと切換えられ、エンジン1が出力軸15,16に対して4速段で接続される。これにより、エンジン1側4速段、モータジェネレータ2側3速段でもって車両が加速される。
【0078】
(n)の領域では、車両の加速を終了し、エンジン1によって定速走行を行う。
ここでは、最初に第3のクラッチCL3の接続状態から第1のクラッチCL1の接続状態に切換えられ、エンジン1が出力軸15,16に対して5速で接続される。次に、この状態で第2シンクロクラッチS2が7速ギヤ列45側に接続され、モータジェネレータ2が出力軸に対して7速段で接続される。
【0079】
[EV走行モード→エンジン走行→車両停止]
図19に示す走行パターンにおいては、(p)の領域でモータジェネレータ2のみによって車両を発進加速する。このとき、第1〜第3のクラッチCL1〜CL3は全て遮断状態とされ、モータジェネレータ2は第2シンクロクラッチS2によって3速段で出力軸15,16に接続されている。
つづく、(q)の領域では、出力軸15,16に3速段で接続されたモータジェネレータ2のみによって定速走行を行う。
【0080】
以上のEV走行の状態から、(r)の領域に移行すると、エンジン1を始動してエンジン走行(ハイブリッド駆動走行)に切換える。
(r)の領域では、最初に、モータジェネレータ2が高トルク駆動されるとともに、第1のクラッチCL1が接続され、エンジン1に起動トルクが加えられてエンジン1が始動する。この(r)の領域の後期には第1のクラッチCL1が切断され、その間に第1シンクロクラッチS1が5速ギヤ列41に切換えられる。
【0081】
つづく、(s)の領域では、第1のクラッチCL1が再度接続され、エンジン1の動力は第1入力軸13を経て5速段に変速されて出力軸15,16に伝達される。このとき車両は、エンジン1とモータジェネレータ2の動力を受けて加速する。
次の(u)の領域では、エンジン1によるクルーズ走行に移行するためにモータジェネレータ2側の変速を行う。
ここでは、第1のクラッチCL1を接続状態にしたままエンジン1の動力を第1入力軸13側の5速ギヤ列41を経由して出力軸15,16に伝達する一方で、第2入力軸14側の7速ギヤ列45を第2シンクロクラッチS2によって出力軸15,16側に接続する。これにより、モータジェネレータ2は、エンジン動力の遮断された状態において、出力軸15,16に対する変速段がスムーズに7速段に変更される。
【0082】
この後の(v)の領域では、第1のクラッチCL1の接続状態から第2のクラッチCL2の接続状態に切換えられ、エンジン1の動力が7速段に変速されて出力軸15,16に伝達される。また、モータジェネレータ2は出力(トルク)0の状態とされる。したがって、この領域においては、車両はエンジン1の動力のみによって定速走行する。
【0083】
この後の(w),(x),(y)の領域では、車両が減速される。
(w)の領域では、エンジン1が第2入力軸14側の7速ギヤ列45を介して出力軸15,16に接続された状態のまま、エンジン1が気筒休止運転とされ、モータジェネレータ2が7速段での接続において回生制動を開始する。また、(w)の領域においては、次の変速に備えて第1シンクロクラッチS1が5速ギヤ列41にプレシフトされる。
【0084】
つづく、(x)の領域においては、エンジン1が気筒休止運転から通常運転に戻され、その一方で、第2のクラッチCL2の接続状態から第3のクラッチCL3の接続状態へと切換えられ、エンジン1が出力軸15,16に対して6速段で接続され、車両にはエンジンブレーキが作用する。そして、こうして車両にエンジンブレーキが作用している間に、第2シンクロクラッチS2の接続を7速ギヤ列45から3速ギヤ列44に切換える。これにより、エンジン1は出力軸15,16に対して4速段で接続され、モータジェネレータ2は3速で出力軸15,16に接続される。
【0085】
(y)の領域では、エンジン1を完全に停止させ、その状態において、モータジェネレータ2が3速の接続で回生制動を行う。車両はこの後に停止する。
【0086】
以上のように、このハイブリッド車両100は、1速ギヤ列40と5速ギヤ列41の一方によって出力軸15,16に接続可能な第1入力軸13と、3速ギヤ列44と7速ギヤ列45の一方によって出力軸15,16に接続可能な第2入力軸14が、差動歯車装置25のキャリア20と第1サンギヤ21にそれぞれ結合され、エンジン1とキャリア20(第1入力軸13)の間に第1のクラッチCL1、エンジン1と第2入力軸(第1サンギヤ21)の間に第2のクラッチCL2、エンジン1と第2サンギヤ22の間に第3のクラッチCL3がそれぞれ介装されており、第1のクラッチCL1と第2のクラッチCL2の一方を接続することによって奇数段の変速段を得ることができるとともに、第3のクラッチC3を接続することによって偶数段の変速段を得ることができるため、装置の軸長の増大を招くことなく、変速段の多段化を図ることができる。
そして、このハイブリッド車両100においては、モータジェネレータ2が第2入力軸14に一体に連結されているため、モータジェネレータ2によるEV走行時には、第2入力軸14上の3速ギヤ列44と7速ギヤ列45を走行条件に応じて適切に選択して使用することができ、しかも、ハイブリッド駆動時には、殆どの条件下で出力軸15,16への動力伝達を途切れさせることなく変速段のプレシフトを行うことができる。
したがって、このハイブリッド車両100においては、装置の大型化を招くことなく、燃費効率の向上とドライバビリティの向上を図ることができる。
【0087】
つづいて、図20〜図23に示すこの発明の第2の実施形態について説明する。なお、後に説明する他の実施形態も含め、各実施形態の共通部分には同一符号を付して、重複する説明を省略するものとする。
この第2の実施形態のハイブリッド車両200は、基本的な構成は第1の実施形態のものとほぼ同様であるが、第1入力軸13側に配置されるギヤ列と第2入力軸14側に配置されるギヤ列が逆である点と、差動歯車装置225の構成が若干異なっている。
【0088】
即ち、図20の全体構成図に示すように、このハイブリッド車両200の場合、第1入力軸13と出力軸15,16の間には3速ギヤ列44と7速ギヤ列45が配置され、第2入力軸14と出力軸15,16の間には1速ギヤ列40と5速ギヤ列41が配置されている。なお、エンジン始動ギヤ列42は、第1の実施形態と同様に第1入力軸13と出力軸16の間に配置されている。
【0089】
また、差動歯車装置225は、複数のプラネタリギヤ219を回転可能に支持するキャリア220と、プラネタリギヤ219に噛合するサンギヤ221とリングギヤ223とを備え、リングギヤ223が第1入力軸13に結合される一方で、サンギヤ221が第2入力軸14に結合されている。そして、直結軸12に結合されるクラッチドラム28とリングギヤ223(第1入力軸13)の間には第1のクラッチCL1が介装され、直結軸12と第2入力軸14(サンギヤ221)の間には第2のクラッチCL2が介装され、クラッチドラム28とキャリア220の保持リング227の間には第3のクラッチCL3が介装されている。
【0090】
図21は、機能の把握を容易にするために、図20に示すハイブリッド車両200を模式化して示した図であり、図22は、変速機4の各シフトモードに対応する第1〜第3のクラッチCL1,CL2,CL3と第1〜第3シンクロクラッチS1,S2,S3の作動状態を図表化して示したものである。
ここでは、車両の走行状態毎の変速機4の個々の作動は図22の図表を参照するのみで詳細な説明を省略するが、以下において、一走行パターンの制御例として、EV走行→エンジン走行→EVクルーズ走行へと移行するときの制御を図23に基づいて説明する。
【0091】
図23の(A)の時点においては、モータジェネレータ2単体で車両の発進(EV発進)を行う。このとき、第1〜第3のクラッチCL1〜CL3は全て遮断状態とされ、第1シンクロクラッチS1はニュートラルにされ、第2シンクロクラッチS2は1速ギヤ列40に接続され、第3シンクロクラッチS3はエンジン1側(前進側)に接続されている。したがって、このときモータジェネレータ2は1速段で車両を前進駆動する。
【0092】
(B)の領域においては、第1のクラッチCL1が接続され、1速ギヤ列40と出力軸15,16を通したモータジェネレータ2の回転がエンジン始動ギヤ列42と第1入力軸13を経由してエンジン1に伝達される。この状態からモータジェネレータ2のトルクを増大させつつ(図中(B−C)参照)、エンジン1での燃料噴射と点火が行われ、(C)の領域において、エンジン1が始動される。エンジン1の回転速度はここで上昇する。
【0093】
この後、(D)の領域においては、第1のクラッチCL1の接続が一旦遮断され、その間に第1入力軸13側の第1シンクロクラッチS1が3速ギヤ列44に接続され、その後に第1のクラッチCL1が再び接続される。これにより、エンジン1の動力が3速ギヤ列44を通して出力軸15,16に伝達され、車両はモータジェネレータ2とエンジン1の動力を用いたハイブリッド駆動となる。
【0094】
つづく、(E)の領域においては、エンジン動力が第1入力軸13側を経由して出力軸15,16に伝達されている間に、モータジェネレータ2のトルクを減少させつつ、第2入力軸14側のギヤ列を第2シンクロクラッチS2によって1速ギヤ列40から5速ギヤ列41にプレシフトする。
【0095】
この状態からさらにアクセルペダルが踏み込まれて車両が加速すると、(F)の領域において、最初に、第2のクラッチCL2の接続状態から第3のクラッチCL3の接続状態へと切換えられ、エンジン1の動力が4速段に変速されて出力軸15,16に伝達されるようになる。さらに、加速が続くと、第3のクラッチCL3の接続状態から第2のクラッチCL2の接続状態へと切換えられ、エンジン1の動力が5速段に変速されて出力軸15,16に伝達されるようになる。この間、車両はほぼエンジン走行となる。
【0096】
(G)の領域はEVクルーズ走行領域であり、この領域では、第1〜第3クラッチCL1〜CL3がすべて遮断状態にされる。このとき、モータジェネレータ2は5速ギヤ列41で定速走行を行い、その間、エンジン1は機関停止状態、若しくは、気筒休止状態とされる。
【0097】
また、この状態から高圧バッテリ5の残容量の低下等によってEVクルーズ走行を終了する場合には、(H)の領域で、第1のクラッチCL1を接続し、エンジン1を再始動してエンジン1によるクルーズ走行に切換える。この(H)の領域でのエンジン1の始動は上記の(B)〜(D)と同様になる。また、エンジン1によるクルーズ走行に切換えるときに、第1のクラッチCL1の接続状態から第2のクラッチCL2の接続状態に切換えられる。したがって、エンジン1によるクルーズ走行は5速ギヤ列41によって行われる。
【0098】
この第2の実施形態のハイブリッド車両200においても、第1入力軸13側と第2入力軸14側のギヤ列の配置と、差動歯車装置225の構成が第1の実施形態のものと若干異なるものの、第1入力軸13と第2入力軸14がリングギヤ223とサンギヤ221にそれぞれ結合され、エンジン1とリングギヤ223(第1入力軸13)の間に第1のクラッチCL1、エンジン1と第2入力軸(サンギヤ221)の間に第2のクラッチCL2が介装され、エンジンとキャリア20の間に第3のクラッチCL3が介装された構造とされているため、第1の実施形態と同様に装置の軸長の増大を招くことなく、変速段の多段化を図ることができる。
そして、このハイブリッド200車両の場合も、モータジェネレータ2が第2入力軸14に一体に連結されていることから、EV走行時に、1側ギヤ列44と5速ギヤ列41を走行条件に応じて適切に選択して使用することができ、ハイブリッド駆動時には、殆どの条件下で出力軸15,16への動力伝達を途切れさせることなく変速段のプレシフトを行うことができる。
【0099】
次に、図24,図25に示す第3の実施形態について説明する。
図24は、このハイブリッド車両300の全体構成を示した図であり、図25は、その構成を模式化して示した図である。このハイブリッド車両300は、ギヤ列の基本的な配置や差動歯車機構225の構成は第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態で第1入力軸13と出力軸16の間に設けられていたエンジン始動ギヤ列42が廃止され、最も変速比の大きい7速ギヤ列45に、エンジン始動ギヤ列の機能を併せ持たせた点だけが異なっている。以下では、この相違点についてのみ説明する。
また、この実施形態の変速機4の各シフトモードに対応する第1〜第3のクラッチCL1,CL2,CL3と第1〜第3シンクロクラッチS1,S2,S3の作動は、図22に示す第2の実施形態のものと同様である。
【0100】
このハイブリッド車両300の7速ギヤ列45は、他の実施形態と同様にドライブギヤ45aが第1入力軸13に一体に固定され、ドリブンギヤ45bが出力軸16に回転可能に支持されるとともに、第1シンクロクラッチS1によって出力軸16に対して接続可能にされている。そして、ドリブンギヤ45bの内周側には、第1シンクロクラッチS1とは別の経路で、出力軸16から第1入力軸13への正逆双方の回転伝達を許容し第1入力軸13から出力軸16への正逆双方の回転伝達を阻止するツーウェイクラッチ43が設けられている。
【0101】
したがって、このハイブリッド車両300では、例えば、EV走行時に、エンジン1が停止し第1のクラッチCL1が遮断した状態で出力軸16が回転すると、第1シンクロクラッチS1がニュートラル状態にあっても、出力軸16の回転がツーウェイクラッチ43と7速ギヤ列45を介して第1入力軸13に伝達される。このとき、出力軸16の回転は7速ギヤ列45によって大きく減速される。そして、この状態から、第1のクラッチCL1が接続されると、出力軸16の回転が第1入力軸13からさらにエンジン1に伝達され、このときエンジン1で燃料噴射と点火が行われると、エンジン1が始動されることになる。こうしてエンジン1が始動されると、その回転が第1入力軸13に伝達されるが、このとき第1シンクロクラッチS1はニュートラル状態にあり、7速ギヤ列45はツーウェイルクラッチ43の機能によって第1入力軸13から出力軸15への回転伝達を阻止するため、エンジン1の始動直後の不安定なトルクは出力軸15,16には伝達されることはない。
よって、このハイブリッド300においては、他の実施形態のものと同様の機能を保持しつつエンジン始動用の専用のギヤ列を無くし、それによって部品点数の削減と装置のさらなる小型化を図ることができる。
【0102】
図26は、この発明の第4の実施形態のハイブリッド車両400の構成を模式化して示すものである。
このハイブリッド車両400は、第2の実施形態と類似した構造であるが、第7ギヤ列45の出力軸15,16側のドリブンギヤ45bに共噛みされる9速ギヤ列45Aのドライブギヤ45Aaが第2入力軸14側に追加されている点が、第2の実施形態のものと異なっている。
【0103】
このハイブリッド車両400では、第1入力軸13と出力軸15,16を接続する7速ギヤ列45のドリブンギヤ45b(ギヤ要素)と、第2入力軸14と出力軸15,16を接続する9速ギヤ列45Aのドリブンギヤが共用され、7速ギヤ列45側のドライブギヤ45aと9速ギヤ列45A側のドライブギヤ45Aaが共通のドリブンギヤ45bに噛合されるようになっている。なお、7速ギヤ45側のドライブギヤ45aと9速ギヤ側45Aのドライブギヤ45Aaとは歯数と外径が異なって設定されている。
また、9速ギヤ列45A側のドリブンギヤ45Aaは、第2入力軸14に回転可能に支持され、第4シンクロクラッチS4によって第2入力軸14に対して断接可能とされている。
【0104】
エンジン1の動力を7速に変速する場合には、第1シンクロクラッチS1によって第1入力軸13と出力軸15,16を7速ギヤ列45で接続し、その状態において第1のクラッチCL1を接続する。
そして、エンジン1の動力を8速に変速する場合には、第1シンクロクラッチS1によって第1入力軸13と出力軸15,16を7速ギヤ列45で接続すると同時に、第4シンクロクラッチS4によって第2入力軸14と出力軸15,16を9速ギヤ列45Aで接続し、その状態において第3のクラッチCL3を接続する。
また、エンジン1の動力を9速に変速する場合には、第4シンクロクラッチS4によって第2入力軸14と出力軸15,16を9速ギヤ列45Aで接続し、この状態において第2のクラッチCL2を接続する。
【0105】
したがって、この実施形態のハイブリッド車両400においては、第2の実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができるうえ、大幅な部品点数の増加や軸長の増大を招くことなく変速機の変速段を増加させることができる。即ち、9速ギヤ列45Aについては、出力軸15,16側に専用のドリブンギヤを追加する必要がないため、ギヤ要素を一つ削減してその分軸長も短縮することができる。
この実施形態では、7速ギヤ列45のドリブンギヤ45bを9速ギヤ列45Aと共用したが、残余のギヤ列についても同様にドリブンギヤを共用し、さらに変速機の変速段を増加させることができる。また、第1,第3の実施形態のハイブリッド車両100,300においても、同様の手法によって変速機4の変速段を増加させることができる。
【0106】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の各実施形態においては、差動歯車装置25,225に接続される2つの入力軸(第1入力軸13と第2入力軸14)のうちの一方のみにモータシェネレータ2を結合したが、両方の入力軸にモータジェネレータ2を結合するようにしても良い。
【符号の説明】
【0107】
1…エンジン
2…モータジェネレータ
3…ディファレンシャル装置(車輪駆動部)
4…変速機
5…高圧バッテリ(蓄電手段)
13…第1入力軸
14…第2入力軸
15,16…出力軸
19,219…プラネタリギヤ
20…キャリア
21…第1サンギヤ
22…第2サンギヤ
25,225…差動歯車装置(動力分割機構,反転機構)
36…固定壁
40…1速ギヤ列
41…5速ギヤ列
42…エンジン始動ギヤ列
43…ツーウェイクラッチ
44…3速ギヤ列
45…7速ギヤ列
45b…ドリブンギヤ
48…エアコンプレッサ(補機)
100,200,300,400…ハイブリッド車両
220…キャリア
221…サンギヤ
223…リングギヤ
CL1…第1のクラッチ
CL2…第2のクラッチ
CL3…第3のクラッチ
S1…第1シンクロクラッチ
S2…第2シンクロクラッチ
S3…第3シンクロクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源として機能するエンジンと、
駆動源と発電機として機能するモータジェネレータと、
車輪駆動部と前記エンジン及びモータジェネレータとの間に介装されて入出力の回転速度比を調整する変速機と、
前記モータジェネレータに対して電力を供給し前記モータジェネレータで発電された電力を蓄電する蓄電手段と、を備え、
これらが車両の運転状況に応じて制御されるハイブリッド車両において、
前記変速機は、
前記車輪駆動部に接続される出力軸と、
この出力軸にギヤ列を介して接続可能な第1入力軸と、
前記出力軸に別のギヤ列を介して接続可能な第2入力軸と、
前記エンジンと前記第1入力軸及び第2入力軸との間に、前記エンジン側の動力を前記第1入力軸と第2入力軸とに動力分割可能に配置された動力分割機構と、
前記エンジンと前記第1入力軸の間に介装されて動力を断接操作する第1のクラッチと、
前記エンジンと前記第2入力軸の間に介装されて動力を断接操作する第2のクラッチと、
前記エンジンと前記動力分割機構の間に介装されて動力を断接操作する第3のクラッチと、を備え、
前記第3のクラッチの接続操作により、前記第1入力軸側のギヤ列による変速段と前記第2入力軸側のギヤ列による変速段の中間変速段で前記エンジンと前記出力軸とを接続し、
前記モータジェネレータは、前記第1入力軸と第2入力軸の少なくとも一方に接続されていることを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
駆動源として機能するエンジンと、
駆動源と発電機として機能するモータジェネレータと、
車輪駆動部と前記エンジン及びモータジェネレータとの間に介装されて入出力の回転速度比を調整する変速機と、
前記モータジェネレータに対して電力を供給し前記モータジェネレータで発電された電力を蓄電する蓄電手段と、を備え、
これらが車両の運転状況に応じて制御されるハイブリッド車両において、
前記変速機は、
前記車輪駆動部に接続される出力軸と、
この出力軸にギヤ列を介して接続可能な第1入力軸と、
前記出力軸に別のギヤ列を介して接続可能で、かつ前記モータジェネレータが接続されている第2入力軸と、
前記エンジンと前記第1入力軸及び第2入力軸との間に、前記エンジン側の動力を前記第1入力軸と第2入力軸とに動力分割可能に配置された動力分割機構と、
前記エンジンと前記第1入力軸の間に介装されて動力を断接操作する第1のクラッチと、
前記エンジンと前記第2入力軸の間に介装されて動力を断接操作する第2のクラッチと、
前記エンジンと前記動力分割機構の間に介装されて動力を断接操作する第3のクラッチと、を備え、
前記第3のクラッチの接続操作により、前記第1入力軸側のギヤ列による変速段と前記第2入力軸側のギヤ列による変速段の中間変速段で前記エンジンと前記出力軸とを接続することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
前記第1入力軸を当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続し、前記第1のクラッチを接続して前記エンジンと出力軸とを前記第1入力軸を経由して接続しているときに、
前記第2入力軸を、当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続し、かつ前記第2のクラッチによって前記エンジンとの接続を遮断した状態にし、
その状態で前記モータジェネレータによって車輪駆動部を駆動し、若しくは、回生制動を行うことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記第1入力軸を当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続し、前記第1のクラッチを接続して前記エンジンと出力軸とを前記第1入力軸を経由して接続しているときに、
前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断し、かつ前記第2のクラッチによって前記第2入力軸と前記エンジンを接続状態にし、
その状態で前記モータジェネレータによって車輪駆動部を駆動し、若しくは、回生制動を行うことを特徴とする請求項2または3に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記第2入力軸を、当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続するとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、その状態で前記車輪駆動部を前記モータジェネレータによって単独で駆動する電動駆動状態から、前記エンジンを始動して前記車輪駆動部を前記エンジンとモータジェネレータによって駆動するハイブリッド駆動状態に移行したときに、
前記第1のクラッチを接続して前記エンジンの動力を前記第1入力軸と当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に伝達するとともに、前記第2のクラッチを遮断して前記第2入力軸側を前記エンジンから切り離し、
その状態で前記第2入力軸側のギヤ列を、運転状況に適合した変速段のギヤ列に切換えることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記第1入力軸に、前記出力軸の回転を減速してその回転を前記第1入力軸に伝達するエンジン始動ギヤ列を設けるとともに、このエンジン始動ギヤ列に、前記出力軸から前記第1入力軸への回転伝達を許容し前記第1入力軸から前記出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチを設け、
前記第2入力軸を、当該軸側のギヤ列を介して前記出力軸に接続するとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、その状態で前記車輪駆動部を前記モータジェネレータによって単独で駆動する電動駆動状態から、前記第1のクラッチを接続することにより、前記エンジン始動ギヤ列と第1入力軸を経由した前記出力軸の回転によって前記エンジンを始動し、
前記エンジンの始動直後の回転が前記エンジン始動ギヤ列を通して前記出力軸に伝達されるのを、前記ツーウェイクラッチによって阻止することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記第2入力軸の回転を前記第1入力軸に逆向きの回転として伝達する反転機構を設け、
前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断状態にするとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、
その状態で前記モータジェネレータと前記反転機構を作動させて、前記第1入力軸側の前記エンジン始動ギヤ列よりも変速比の小さい別のギヤ列を介して前記第1入力軸の逆転方向の動力を前記出力軸に伝達し、このとき、前記エンジン始動ギヤ列を通して前記第1入力軸から前記出力軸に回転が伝達されるのを、前記ツーウェイクラッチによって阻止することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド車両。
【請求項8】
前記第2入力軸の回転を前記第1入力軸に逆向きの回転として伝達する反転機構を設け、
前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断状態にするとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、
その状態で前記モータジェネレータと前記反転機構を作動させて、前記第1入力軸側の前記エンジン始動ギヤ列よりも変速比の小さい別のギヤ列を介して前記第1入力軸の逆転方向の動力を前記出力軸に伝達し、このとき、前記エンジン始動ギヤ列を通して前記第1入力軸から前記出力軸に回転が伝達されるのを、前記ツーウェイクラッチによって阻止し、
さらに、この状態で前記蓄電手段の蓄電残容量が規定値を下回ったときには、前記第2のクラッチを容量制御しつつ接続することで前記エンジンを始動し、前記エンジンの動力による後退走行に切換えることを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド車両。
【請求項9】
前記第2入力軸の回転を前記第1入力軸に逆向きの回転として伝達する反転機構を設け、
前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断状態にするとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとを前記第2のクラッチによって接続し、
その状態で前記モータジェネレータを作動させて前記エンジンを始動し、さらに前記反転機構を作動させることにより、前記第1入力軸の逆転方向の動力を、前記第1入力軸側の前記エンジン始動ギヤ列よりも変速比の小さい別のギヤ列を介して前記出力軸に伝達し、このとき、前記エンジン始動ギヤ列を通して前記第1入力軸から前記出力軸に回転が伝達されるのを、前記ツーウェイクラッチによって阻止することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド車両。
【請求項10】
動力駆動される補機を前記モータジェネレータに接続し、
車両のアイドル停止時に、前記第2入力軸と当該軸側のギヤ列を介した前記出力軸との接続を遮断状態にするとともに、前記第2入力軸と前記エンジンとの接続を前記第2のクラッチによって遮断し、その状態で前記モータジェネレータによって前記補機を作動させることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項11】
複数のプラネタリギヤを支持するキャリアと、前記プラネタリギヤに噛合する第1サンギヤと第2サンギヤを有する差動歯車装置を備え、
前記キャリアは前記第1入力軸に接続され、
前記第1サンギヤは前記第2入力軸に接続され、
前記第1入力軸は前記第1のクラッチを介して前記エンジンに接続され、
前記第2入力軸は、前記モータジェネレータに接続される一方で、前記エンジンに前記第2のクラッチを介して接続され、
前記第2サンギヤは前記第3のクラッチを介してエンジンに接続され、
前記第1入力軸と前記出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な1速ギヤ列と5速ギヤ列と、前記出力軸の回転を減速して前記第1入力軸に伝達するエンジン始動ギヤ列とが並列に設けられるとともに、1速ギヤ列による連結状態、5速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第1シンクロクラッチが設けられ、
前記エンジン始動ギヤ列には、前記出力軸から前記第1入力軸への回転伝達を許容し前記第1入力軸から前記出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチが設けられ、
前記第2入力軸と出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な3速ギヤ列と7速ギヤ列とが並列に設けられるとともに、3速ギヤ列による連結状態、7速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第2シンクロクラッチが設けられ、
前記第3のクラッチの前記第2サンギヤ側と逆側の接離部には、前記エンジンとの接続状態、固定壁との接続状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第3シンクロクラッチが設けられていることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項12】
複数のプラネタリギヤを支持するキャリアと、前記プラネタリギヤに噛合するサンギヤとリングギヤを有する差動歯車装置を備え、
前記リングギヤは前記第1入力軸に接続され、
前記サンギヤは前記第2入力軸に接続され、
前記第1入力軸は前記第1のクラッチを介して前記エンジンに接続され、
前記第2入力軸は、前記モータジェネレータに接続される一方で、前記エンジンに前記第2のクラッチを介して接続され、
前記キャリアは、前記第3のクラッチを介してエンジンに接続され、
前記第1入力軸と前記出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な3速ギヤ列と7速ギヤ列と、前記出力軸の回転を減速して前記第1入力軸に伝達するエンジン始動ギヤ列とが並列に設けられるとともに、3速ギヤ列による連結状態、7速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第1シンクロクラッチが設けられ、
前記エンジン始動ギヤ列には、前記出力軸から前記第1入力軸への回転伝達を許容し前記第1入力軸から前記出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチが設けられ、
前記第2入力軸と出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な1速ギヤ列と5速ギヤ列とが並列に設けられるとともに、1速ギヤ列による連結状態、5速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第2シンクロクラッチが設けられ、
前記第3のクラッチの前記キャリア側と逆側の接離部には、前記エンジンとの接続状態、固定壁との接続状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第3シンクロクラッチが設けられていることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項13】
複数のプラネタリギヤを支持するキャリアと、前記プラネタリギヤに噛合するサンギヤとリングギヤを有する差動歯車装置を備え、
前記リングギヤは前記第1入力軸に接続され、
前記サンギヤは前記第2入力軸に接続され、
前記第1入力軸は前記第1のクラッチを介して前記エンジンに接続され、
前記第2入力軸は、前記モータジェネレータに接続される一方で、前記エンジンに前記第2のクラッチを介して接続され、
前記キャリアは、前記第3のクラッチを介してエンジンに接続され、
前記第1入力軸と前記出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な3速ギヤ列と7速ギヤ列が並列に設けられるとともに、3速ギヤ列による連結状態、7速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第1シンクロクラッチが設けられ、
前記7速ギヤ列には、前記第1シンクロクラッチとは別経路で前記出力軸から前記第1入力軸への回転伝達を許容し前記第1入力軸から前記出力軸への回転伝達を阻止するツーウェイクラッチが設けられ、
前記第2入力軸と出力軸の間には、両軸を固有の変速比をもって連結可能な1速ギヤ列と5速ギヤ列とが並列に設けられるとともに、1速ギヤ列による連結状態、5速ギヤ列による連結状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第2シンクロクラッチが設けられ、
前記第3のクラッチの前記キャリア側と逆側の接離部には、前記エンジンとの接続状態、固定壁との接続状態、ニュートラル状態の3状態を選択的に切換え可能な第3シンクロクラッチが設けられていることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項14】
前記第1入力軸と出力軸を接続するギヤ列の前記出力軸側のギヤ要素と、前記第2入力軸と出力軸を接続するギヤ列の前記出力軸側のギヤ要素とが共用され、前記第1入力軸側のギヤ要素と前記第2入力軸側のギヤ要素が前記出力軸上の共通のギヤ要素に共噛みされるとともに、前記第1入力軸側のギヤ要素と前記第2入力軸側のギヤ要素が異なる歯数に設定されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−110966(P2011−110966A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266512(P2009−266512)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】