説明

ハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置

【課題】第1電気装置と第2電気装置の均一な冷却性能を保障すると共に、全体的に優れた放熱性能を確保するハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置は、上部の第1電気装置10と下部の第2電気装置11が上下に積層結合され、第1電気装置10と第2電気装置11との間には各冷却水流路が上下部にそれぞれ設けられ、冷却水流路は一方のインレット13と他方のアウトレットとが連通している構造であって、第1電気装置10の底面にある冷却水流路と第2電気装置11の上面にある冷却水流路との間の境界には薄板状のクーリングセパレータ15が設置され、インレット13を介して流入した冷却水が上下の各冷却水流路に沿って分岐して流れた後、アウトレットを介して排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置に係り、より詳細には、ハイブリッド自動車や電気自動車に設置されているインバータやLDCなどの電気部品を効果的に冷却するハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ハイブリッド自動車や電気自動車には、電気モータの駆動電力を提供する高電圧バッテリが装着される。このような高電圧バッテリは、車両運行中に充電と放電を繰り返すことにより必要とする電力を供給する。
このような高電圧バッテリシステムは、複数の部品が複合されて1つの統合構造物として設計されて車両内の後部座席シートの下方やトランクルーム内に装着される。このバッテリシステムの部品としては、バッテリ、LDC(Low DC−DC Converter)、MCU(Motor Control Unit)、インバータなどがある。
例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車には高電圧バッテリの電力を整流して直流に変換するLDC、すなわち、DC/DCコンバータが含まれており、この時のLDCは一般直流をスイッチングして交流に変換し、この交流をコイル、トランス、キャパシタンスなどを用いて昇圧または降圧した後、再び整流して直流に変換し、各電場負荷で使用される電圧に合わせて電気を供給する役割をする。
【0003】
また、このようなハイブリッド自動車や電気自動車は、電気モータを作動させるための高出力インバータシステムが必要であり、このインバータシステムは、バッテリのD/Cエネルギーをモータの駆動に必要とするA/C電流に変換する役割をする。この際、多量の熱が放出されるため、適切な作動状態を維持するようにインバータの温度を、内蔵されているICが耐えられる限界内の温度に維持する必要がある。近来、電気部品の冷却技術の研究が進められ、放熱効率が向上してきているが、まだ多くの問題点が残されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、従来のハイブリッド車用電気装置の冷却装置は、ハイブリッド車用第1電気装置(例えば、LDCなど)と第2電気装置(例えば、インバータなど)が上下に積層配置され、その間には放熱カバーの放熱部の接触面に沿って流路が形成される構造である。
しかしながら、この冷却装置は、第1電気装置と第2電気装置が冷却水及び流路を共有して共に冷却される構造であるため、冷却水の圧力降下が大きい場合には第1電気装置の冷却性能が低下し、バイパス構造を必要とするなどの問題点がある。
また、第1電気装置と第2電気装置の発熱量が冷却水の温度上昇を招き、放熱効率が低下する問題点がある。
すなわち、第1電気装置と第2電気装置が冷却水を共有する場合、第1電気装置、第2電気装置の発熱エネルギーが同時に冷却水に伝達されるため、冷却水の温度が必要な温度以上に上昇することになり、結局、放熱効率の低下を招くという問題点がある。
また、第1電気装置と第2電気装置の放熱のための別の流路が必ず付設されるため、設計自由度が低下するという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−53295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、第1電気装置と第2電気装置の均一な冷却性能を保障すると共に、全体的に優れた放熱性能を確保するハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明のハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置は、上部の第1電気装置と下部の第2電気装置が上下に積層結合され、第1電気装置と第2電気装置との間には各冷却水流路が上下部にそれぞれ設けられ、冷却水流路は一方のインレットと他方のアウトレットとが連通している構造であって、第1電気装置の底面にある冷却水流路と第2電気装置の上面にある冷却水流路との間の境界には薄板状のクーリングセパレータが設置され、インレットを介して流入した冷却水が上下の各冷却水流路に沿って分岐して流れた後、アウトレットを介して排出されることを特徴とする。
【0008】
ここで、上下の冷却水流路を隔離させるクーリングセパレータは、第1電気装置と第2電気装置の平面上に形成される冷却水流路の経路形状に沿ってジグザグ状につながる形態に形成されることが好ましい。
また、クーリングセパレータには、局部的に冷却性能を増大させるために、上下の冷却水流路を連結させるオリフィスが複数形成されることが好ましい。
さらに、クーリングセパレータは、冷却水に対する耐食性を有するラバー材質またはステンレス材質からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置は、次のような効果を奏する。
第1に、第1電気装置と第2電気装置の冷却水を分離運用することにより、相互間の発熱の影響を減少させるなど、第1電気装置、第2電気装置の均一な冷却性能を保障することができる。
第2に、第1電気装置と第2電気装置の接合部分に液状のシーリング剤を使用する場合、シーリング剤の残渣が冷却水流路に流入することをクーリングセパレータが防止するため、冷却流路の詰まりの問題を排除できるなど、品質を高めることができる。
第3に、従来の第1電気装置と第2電気装置が冷却水を共有する冷却構造のコンパクトなパッケージングに僅かな変更を加えるだけで冷却性能を向上させるなど、商品性を高めることができる。
第4に、第1電気装置と第2電気装置の放熱のための別途付設される流路を必要としないため、放熱設計の自由度を極大化することができ、コンパクトな放熱部のパッケージングを維持することができる。
第5に、第1電気装置と第2電気装置の冷却水を分離運用することにより、冷却システムの圧力降下を低減でき、ウォーターポンプの仕様を最適化し、これによって、コストダウンが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の他の実施例に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置に適用されるクーリングセパレータを示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施例に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置における冷却水の流れを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1、2は、本発明の実施例に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置を示す斜視図であり、図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置を示す断面図である。
【0012】
図1〜図3に示すとおり、本発明の冷却装置は、上部に位置する第1電気装置10と下部に位置する第2電気装置11との間に位置する冷却水流路12a、12bを分離運用して各電気装置の均一な冷却性能を保障し、全体的な放熱性能を向上させるものである。
このために、ハイブリッド自動車や電気自動車に使用される電気装置は、例えばLDCなどの第1電気装置10とインバータなどの第2電気装置11であり、第1電気装置10と第2電気装置11は上下に積層するよう組み立てられ、密閉されたシーリング構造を有する。
【0013】
ここで、第1電気装置と第2電気装置は、図面ではハウジングの形態だけ示したが、ハウジングの中には各種電気装置が内蔵されるため、以下ではハウジングの形態であっても、LDCやインバータなどの第1電気装置、第2電気装置として説明する。
第1電気装置10の底面外側には第1電気装置10の平らな底面に沿って一方向へ冷却水が流れる所定の経路を有する冷却水流路12aが形成される。一方、第2電気装置11の上面外側には第2電気装置11の平らな上面に沿って冷却水流路12aと同方向へ冷却水が流れる所定の経路を有する冷却水流路12bが形成される。
【0014】
第1電気装置10と第2電気装置11が上下の位置に結合されると、第1電気装置、第2電気装置それぞれの冷却水流路12a、12bも上下に対向する構造になる。
冷却水流路12a、12bは、一端に冷却水の流入のためのインレット13を有し、他端に冷却水の排出のためのアウトレット14とを有し、インレット13とアウトレット14が冷却水流路12a、12bを介して連通している構造を形成する。これによって、インレット13を介して流入される冷却水は、冷却水流路12a、12bを経由して第1電気装置10及び第2電気装置11の冷却を行った後、アウトレット14を介して外部に排出される。
【0015】
特に、本発明では、第1電気装置10の冷却水流路12aと第2電気装置11の冷却水流路12bとを分離する手段としてクーリングセパレータ15を提供する。
クーリングセパレータ15は薄板状に形成され、第1電気装置10の底面下にある冷却水流路12aと第2電気装置11の上面上にある冷却水流路12bとの間の境界に挿入設置される。
このようにクーリングセパレータ15が上下の冷却水流路12a、12bの間に設けられることにより、上方の冷却水流路12aと下方の冷却水流路12bは隔離(分離)される。このため、冷却水流路12a、12bに供給される冷却水も分岐して、各冷却水流路12a、12bを別々に流れることになる。
【0016】
ここで、クーリングセパレータ15は、所定の形状をもって各冷却水流路12a、12bを形成しており、効果的に第1、第2電気装置10、11を冷却することができる。
例えば、図4に示すように、第1電気装置10の底面外側と第2電気装置11の上面外側の平面上に形成される冷却水流路12a、12bの経路形状は、平面上でジグザグ状になっており、冷却水が一方から他方に向かって進むとき、クーリングセパレート15の複数の折れ区間が交互に繰り返されることにより、ジグザグ状に流れることになる。
【0017】
クーリングセパレータ15は、冷却水に対する耐食性が高い、ラバー材質やステンレスなどの金属材質からなり、これによって、冷却機能を長期にわたり維持する耐久性を有する。
また、クーリングセパレータ15には、複数のオリフィス16が形成されている。複数のオリフィス16は、クーリングセパレータ15をその厚さ方向に貫通する形態で形成されており、上下の冷却水流路12a、12bを複数の箇所で連結している。このようにオリフィス16を適用することにより、クーリングセパレータ15は、局部的に冷却性能を増加することができ、かつ、オリフィス16の位置を変更することにより冷却水流量のコントロールも可能になる。LDCやインバータなどの第1電気装置10、第2電気装置11の冷却装置において、上下の冷却水流路12a、12bを連結させるオリフィスの数は、2〜20が好ましく、通常5〜15程度である。
【0018】
このようなクーリングセパレータ15は、電気装置の冷却水流路を分離する手段であるが、適用方法によっては気密維持のためのガスケットの役割をしてもよい。
また、液状のシーリング剤を使用する場合、シーリング剤の残渣が冷却水流路に流入することをクーリングセパレータが防止するため、冷却水流路のシーリング剤による流路の詰まりを防止することができる。
例えば、第1電気装置と第2電気装置を上下結合する場合、その接合部分のフランジには液状のシーリング剤が塗布される。上下結合と同時にシーリング剤が押さえられて、余剰のシーリング剤が内側に入り込むこともあるが、この際、冷却水流路はクーリングセパレータにより覆われているため、シーリング剤が冷却水流路に侵入することを防止することができる。
【0019】
上記のように構成されるハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置の作用は次の通りである。
図5は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置における冷却水の流れを示す断面図である。
図5に示すとおり、上部の第1電気装置10と下部の第2電気装置11が上下に積層して組み立てられ、互いに対向して接する位置に配置される冷却水流路12a、12bの間にはクーリングセパレータ15が挿入配置されるため、上下の冷却水流路12a、12bは隔離された状態になると共に、その両端に設けられたインレット13とアウトレット14が連通する状態になる。
【0020】
したがって、インレット13を介して冷却水が流入すると、冷却水は上方の冷却水流路12aと下方の冷却水流路12bに分岐して流れ、第1電気装置10と第2電気装置11に対してそれぞれの冷却を行い、冷却を終了した冷却水はアウトレット14を介して排出される。この過程を繰り返すことにより、それぞれの冷却水流路に流れる冷却水により第1電気装置と第2電気装置の冷却が行われる。
【0021】
このように、第1電気装置と第2電気装置のための冷却水を分離することにより、各冷却水流路内の冷却水の温度をそれぞれ管理することができる。これによって、相互間の発熱による影響を減少させ、第1電気装置と第2電気装置の両方の均一な冷却を保障できるため、第1電気装置、第2電気装置に対する全体的に優れた放熱性能を確保することができる。
【符号の説明】
【0022】
10 第1電気装置
11 第2電気装置
12a、12b 冷却水流路
13 インレット
14 アウトレット
15 クーリングセパレータ
16 オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部の第1電気装置(10)と下部の第2電気装置(11)が上下に積層結合され、前記第1電気装置(10)と前記第2電気装置(11)との間には各冷却水流路(12a、12b)が上下部にそれぞれ設けられ、前記冷却水流路(12a、12b)は一方のインレット(13)と他方のアウトレット(14)とが連通している構造であって、
前記第1電気装置(10)の底面にある前記冷却水流路(12a)と前記第2電気装置(11)の上面にある前記冷却水流路(12b)との間の境界には薄板状のクーリングセパレータ(15)が設置され、前記インレット(13)を介して流入した冷却水が前記上下の各冷却水流路(12a、12b)に沿って分岐して流れた後、アウトレット(14)を介して排出されることを特徴とするハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置。
【請求項2】
前記上下の冷却水流路(12a、12b)を隔離させる前記クーリングセパレータ(15)は、前記第1電気装置(10)と前記第2電気装置(11)の平面上に形成される前記冷却水流路(12a、12b)の経路形状に沿ってジグザグ状につながる形態に形成されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置。
【請求項3】
前記クーリングセパレータ(15)には、局部的に冷却性能を増大させるために、前記上下の冷却水流路(12a、12b)を連結させるオリフィス(16)が複数形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置。
【請求項4】
前記クーリングセパレータ(15)は、冷却水に対する耐食性を有するラバー材質またはステンレス材質からなることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド車及び電気自動車用電気装置の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−116455(P2012−116455A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85229(P2011−85229)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】