ハイブリッド金属半導体ナノ粒子、光誘導荷電分離方法およびその応用
本発明は、酸化還元反応および水分解など、多様な化学反応の光触媒に関するハイブリッド金属半導体ナノ粒子の開発および使用を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、ハイブリッド金属半導体ナノ粒子、光誘導電荷分離反応および応用におけるハイブリッド金属半導体ナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、触媒の存在下において、光反応を加速させる。光生成触媒において、光触媒活性は、触媒の能力に依存して光を吸収し、後で二次的酸化還元(redox)反応を可能とする電子正孔対を形成する。
【0003】
光触媒の大きな進展は、二酸化チタン(「光触媒水分解(water splitting)」と命名される)の光誘導プロセスを用いた水電気分解の発見である[1]。光触媒は、水分解において重要な市販用途を有し、また、水および空気精製、染料工業[2]からの残さなどの有機物汚染、および、光電気化学電池[3]を含むさらなる領域においても、重要な市販用途を有している。これらの技術の興味深い将来性のある側面は、プロセスを開始させる光源など、太陽エネルギーを利用する能力である。従って、光触媒は、クリーンで無料の太陽エネルギーを獲得する簡潔で直接的な方法を示しており、この太陽エネルギは、例えば、水分解プロセスから水素ガスを生成するのに有用な仕事をし[4、5]、あるいは、光電気化学電池の場合においては、有用な電気エネルギとなる。さらに、光誘導電荷分離プロセスは、光(PV)電池で電気エネルギーを生成するのに直接利用される。いわゆるグリーンテクノロジが化石燃料への依存度を低減するので、上述の領域における用途には、高い将来性があり、幅広い商業的可能性があり、重要な社会貢献性がある。
【0004】
効率的な光触媒の探索が、化学および材料科学の分野で長い間行われてきた。半導体のナノ結晶およびナノ構造は、光触媒活性について研究されている[7、8]。しかしながら、半導体自体の電荷キャリアの急速な再結合により、光触媒活性の効率は、電荷キャリアが酸化還元反応に関して不安定ではないので、制限される。
【0005】
半導体材料上に金属アイランドを加えることによって、光誘導電荷分離エンティティを形成可能であり、ここで、半導体は光を吸収し、電子空正孔対を形成し、その後、迅速な電荷分離が続き、1つの種類の電荷キャリアが金属に残り、他方の種類が半導体に残る[9、10]。このような効果によって、電荷キャリアは酸化還元反応または電流などの科学プロセスおよび物理プロセスに容易に利用可能となり、所望しない電子正孔再結合プロセスと競合する可能性がある。
【0006】
従って、光触媒の半導体金属システムの例は、いくつかの態様に制限される;第1に、ほとんどの半導体光触媒は、TiO2、ZnOおよびCdSなど高いバンドギャップの半導体に基づいている[11、12、13、14]。このような高いバンドギャップの半導体は、太陽スペクトルに適合しないので、光触媒の応用を厳しく制限する。例えば、最も一般的な光触媒システム、TiO2は、UVのみを吸収可能であり、2〜4%の太陽スペクトルを得る。青色光の下、水素を光触媒で生成するためのPt充填CdSナノ構造の生成を報告しているBao et al[6]の場合でさえ、CdSeナノ構造のバンドギャップは、520nmおよびそれ以下に制限され、光触媒の太陽吸収範囲が制限される。さらに、ナノ構造寸法および形状の限定的コントロールのみがなされ、金属堆積も限定的にコントロールされた。実際、光堆積された10%共触媒(co−catlyst)を有する触媒の利用は、触媒の構造及び形状に関して何も示さなかった。
【0007】
第2に、全てのシステムは、金属アイランドサイズ、半導体上の金属の位置、および、金属の種類においてさえ、十分に制御されていない。実際に、組み合わせた半導体−金属システムは、広いサイズ、形状および組成物分布に悩まされる。これは、触媒の性能をリサーチして理解する能力だけでなく、制御された状態で触媒を改善する能力も制限する。
【0008】
最後に、このように使用される全てのシステムにおいて、ナノ粒子は、ポリマーマトリックスでドープされるか、異種(non−homogenous)ナノ粒子サイズ分布を有するナノ構造フィルムとして存在する。これらの構造は、ナノ粒子の化学的処理可能性、液体/ゲル培地の同種分布、および、特性を変更せずに、より複雑な構造における洗練された使用(同種自己アッセンブル薄膜または電極表面のコーティングなど)を低減した。
【0009】
[参考文献]
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[22]Lugo, J. E.; Taguena-Martinez, J.; del Rio, J. A. Solid State Communications 2001,117, (9), 555-559
【発明の概要】
【0010】
本発明は、光誘導電荷分離効果を示す高度に制御された半導体金属ハイブリッドナノ粒子に基づいている光触媒の開発及び使用に関する。この効果は、1つの粒子ならびに複数の上記粒子で観察される。光触媒作用が、本明細書に開示されるシステムを太陽熱の放射に単に暴露することによって得られるという驚くべき発見に基づいて、本発明の光触媒(ナノ粒子)、または、本発明の方法によって使用される光触媒には、各種光触媒反応における適用性、および、電気化学電池および光電池など光誘導電荷分離を使用する他の用途があることがわかった。これによって、環境汚染物質の分解(decomposition)および水分解(splitting)に化学的変換に有用な多種多様な方法および装置の開発が実現した。
【0011】
以下で詳述するが、効率的な光触媒活性を有するナノ粒子について、これらは、各々、少なくとも1つの金属/金属合金領域と、可視(400−700nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)において吸収開始(absorption onset)を有する少なくとも1つの半導体領域と、を具えるハイブリッドナノ粒子として構成されなければならない。本明細書にさらに検討している構造を有する上記ナノ粒子は、一般的に、以下のように特徴付けられる:
1.ナノ粒子は、多様な形状およびサイズ、サイズ分布ならびに化学組成で構成されてもよい;
2.ナノ粒子は、例として示されるように、表面コーティングに基づいた水性または有機媒体において可溶となる能力による、表面処理を介した優れた化学的処理可能性を有する;
3.例えば、半導体の表面および/または金属領域など、ナノ粒子表面は、自己アッセンブルを可能とするように機能化してもよい;
4.光触媒効果は、単一ならびに複数(集合)の光触媒で観察される;
5.光触媒は、電荷を保持し、従って、暗所でさえ化学反応を触媒するように使用されてもよい;
6.光触媒は、1またはそれ以上のナノ粒子集合を含むユニークなナノ構造に構造化されてもよい;
7.光触媒は、各種装置に使用できる。
【0012】
従って、本発明は、光触媒としての使用、ならびに、光誘導電荷分離を組み込む装置の構造における使用に関して、少なくとも1つの金属/金属合金領域と、可視(400−700nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)において吸収開始を有する少なくとも1つの半導体領域とを含む、光活性化ハイブリッドナノ粒子を提供する。
【0013】
いくつかの実施例においては、少なくとも1つの半導体領域は、420nmから3μmの範囲において吸収開始を有する。
【0014】
いくつかの他の実施例においては、少なくとも1つの半導体領域は、450nmから3μmの範囲において吸収開始を有する。
【0015】
いくつかの他の実施例においては、少なくとも1つの半導体領域は、470nmから3μmの範囲において吸収開始を有する。
【0016】
さらなる他の実施例においては、少なくとも1つの半導体領域は、500nmから3μmの範囲において、吸収開始を有する。
【0017】
本発明に従って、光触媒に使用されるナノ粒子が、ナノ粒子の半導体材料のバンドギャップエネルギを超えるエネルギを有する光源を用いて照射(照光)されるとき、電子および正孔は、例えば、金属/半導体境界面で、または、所定の実施例においては2つの接触している半導体サブ領域の境界面で、電子−正孔対の形状で形成される。当分野の当業者であれば認識されるように、「金属/半導体境界面」またはその範囲に関し、本明細書に開示および記載されるナノ粒子の2つの領域またはサブ領域間の境界面は、合成中に金属が成長する半導体結晶面上の領域、または、他の半導体材料と接触する半導体表面の領域からなる。次に、半導体の上記領域は、他の機能性に対して、および/または、溶媒分子からブロックされる。物理的観点から、境界面は、平衡状態の時、(金属および半導体、または、2つの異なる半導体材料の)2つのFermi準位が等しくなるポイントである。
【0018】
ナノ粒子の例示的な1つの構造についてのスキーム1に示されるように、一旦形成されると、電子と正孔は電荷分離され、この段階で、それらは、隣接する電子アクセプタ分子と電子ドナー分子と相互作用することによって、本明細書で「光触媒反応」として呼ばれる各種反応を生じさせることができる。正孔は、一般的に、酸化力を有するので、光触媒として作用するナノ粒子は、例えば光活性化によって、電子および正孔が形成されている限り、酸化還元(redox)反応を触媒することができる。このプロセスでナノ粒子が消費されず、開示される光誘導プロセスを受けるためのその能力が失われないので、ナノ粒子の機能は、光源の存在、または、電荷を保持して光のないプロセスでも受けるためのその能力に依存している。
【0019】
スキーム1:一般的かつ例示的なイラストは、金属/半導体ハイブリッドナノ粒子の光触媒活性を示す。この活性は、電子−正孔対を形成するフォトンによって開始され、電荷キャリアの1つは半導体にとどまり(この例においては、ナノ粒子の中心の細長部分)、他は金属に移動し(この例においては、細長部分の端部の領域の1つ)、特定の実施例においては、酸化還元試薬と反応することが可能である。
【0020】
一般的に、光触媒として使用されるナノ粒子は、ここでの目的のため、2つのグループに分けてもよい:当分野で周知なナノ粒子と、本発明によるナノ粒子。
【0021】
いくつかの実施例においては、ナノ粒子は、少なくとも1つの金属/金属合金領域と、可視(400−700nm、いくつかの実施例においては、420以上、450以上または500nm以上)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)における吸収開始を有する少なくとも1つの半導体領域と、を具え、前記ナノ粒子は照射(照光)のとき、所定の実施例においては、ナノ粒子は細長形状を有し、ナノ粒子は、参照することで本明細書に組み込む[15]:国際公開公報WO05/075339またはその米国出願に開示されるように調製可能である。しかしながら、規定されたナノ粒子の形状およびサイズは、ナノ粒子の光活性があるように、細長構造に単純に依存せずに、変化する。
【0022】
いくつかの実施例においては、本発明のナノ粒子は、少なくとも1つの半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、上記2つの金属/金属合金領域の各々は、異なるまたは同一の金属/金属合金材料(すなわち、各々の、異なるまたは同一のFermiポテンシャルを有する)。
【0023】
いくつかの実施例においては、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々は、異なる金属/金属合金材料(異なるFermiポテンシャルを有する)である。
【0024】
いくつかの実施例においては、2つの金属/金属合金は、同一金蔵/金属合金材料である。
【0025】
他の実施例においては、本発明のナノ粒子は、少なくとも2つの半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々は、異なる又は同一の金属/金属合金材料(すなわち、それぞれ異なる又は同一のFermiポテンシャル)であり、前記少なくとも2つの半導体領域の各々は、異なるエネルギギャップおよび/または異なるエネルギバンド位置を有する。
【0026】
いくつかの実施例においては、少なくとも2つの半導体領域は、少なくとも1つの金属/金属合金領域によって離間される。
【0027】
他の実施例においては、前記少なくとも2つの半導体領域は、1又はそれ以上の金属/金属合金領域によって離間され、従って、本明細書では「サブ領域」と呼ぶ。これらの2又はそれ以上の半導体は、各々異なる半導体材料である。
【0028】
本発明の文脈内において、用語「材料」は、ナノ粒子またはその1つの領域が構成される固体物質を意味する。前記物質は、例えば、元素、合金、酸化形態、あるいは、上記物質の混合体など、1つの物質から構成される。
【0029】
本発明のナノ粒子または本発明の方法によって使用されるナノ粒子は、以下に記載されるように、不連続のエンティティであり、その次元の少なくとも1つ(例えば、直径、長さなど)は、1〜20nmである。長さが400nm、好ましくは200nm未満、ロッド用構造を有することもできる。さらに、ナノ粒子は、以下で詳述するように、全体寸法中の数ミクロンのナノ−ネットワーク形態の形状でもよい。ナノ粒子の全体形状は、球形またはディスク様であり、より大きなサイズは、球形またはディスクの直径である。
【0030】
上述した内容に制限されず、ナノ粒子は、あらゆる形状および対称性を有することができ、分岐した構造およびネット構造を示すことができる。限定するものではないが、ナノ粒子は、対象または非対称でもよく、ロッド形態、円(球形)、楕円、ピラミッド状、ディスク様、ブランチ、ネットワークを有するように、細長でもよい。
【0031】
用語「粒子」の使用は、予め規定された特定の形状を示唆するものではない。構造および対称性、形状およびある程度のサイズにおける変化の観点から、本発明のナノ粒子は、互換可能に「ナノ構造」と呼ぶことができる。
【0032】
いくつかの実施例においては、ナノ粒子は、細長ロッド様形状を有するナノロッドである。
【0033】
いくつかの他の実施例においては、ナノロッドは、1または両方の端部で、金属または金属合金領域を有する半導体金属から構成される。
【0034】
本明細書に使用されるように、用語「領域」は、その化学組成物によって規定されるナノ粒子の連続的セグメントを言う。これらの領域は、例えば、金属/金属合金領域によって規定される半導体領域など、異なる材料の領域によって規定されてもよく、あるいは、ナノ粒子の端部を規定する末端領域でもよい。従って、半導体領域は、半導体材料から構成される一部であり、金属/金属合金領域は、金属、金属合金またはあらゆる比率でのその組み合わせから構成される。各領域は、さらに「サブ領域」にセグメント化され、各々は、異なる種類の半導体材料または金属/金属合金材料から構成される。例えば、半導体領域は、共通の境界面を有する2またはそれ以上のサブ領域にセグメント化されてもよく、各々は異なる半導体材料から構成される。サブ領域が単一の半導体領域(または他の実施例においては金属/金属合金領域)であるので、サブ領域は、互いに接触し、連続し(すなわち、共通の境界面を有し、厚さまたは組成物の区分的領域がなく)、サブ領域または金属/金属合金領域(または半導体領域)の領域によって規定される。
【0035】
他の実施例においては、ナノ粒子は、その上に離間した少なくとも1つの金属/金属合金材料の領域を有する、半導体材料の連続面の形態にある。半導体材料の連続面は、ナノスフィア、ナノロッドまたは他の形状−規則または不規則−ナノ構造の表面である。一実施例においては、ナノ粒子は、少なくとも1つの半導体から構成されるナノロッドであり、その表面は、1又はそれ以上の離間した、少なくとも1つの金属/金属合金のアイランドまたはドットでスポットされる。各々の上記アイランドは、同一または異なる金属/金属合金材料からなってもよい。別の実施例においては、ナノロッドは、その端部の1つにおいて、金属/金属合金領域を有し、離間したその半導体表面において、金属/金属合金アイランドまたはドットを有し、当該アイランドまたはドットは、単一材料から構成されても、あるいは、そうでなくてもよい、若しくは、金属/金属合金として同一材料からなっていても、なっていなくてもよい。
【0036】
さらなる実施例においては、ナノ粒子は、少なくとも1つの金属/金属合金材料の少なくとも1つの領域(アイランドまたはドットの形態)をその表面において有するナノロッドの形態である。いくつかの実施例においては、ナノロッドは、その表面において、同一または異なる金属/金属合金材料の複数の離間した金属/金属合金領域を有する。
【0037】
他の実施例においては、前記少なくとも1つのナノ粒子は、本明細書ではナノ粒子の集合として呼ぶ、複数の上記ナノ粒子である。これらのナノ粒子の集団は、サイズ分布、形状分布および/または空間構成、すなわち、半導体金属表面の半導体領域および/または金属/金属合金領域に関連した空間分布を有することを特徴とする。
【0038】
上述したように、本発明によって使用されるナノ粒子は、少なくとも2つの異なる領域を具える:1つの領域は半導体材料からなり、第2の領域は金属/金属合金材料からなり、電子−正孔対は、金属/半導体境界面に近接している半導体領域で形成され、電荷分離が続く。電子アクセプタおよび正孔アクセプタの存在下で、電子及び正孔は、独立してそれぞれのアクセプタに送られる。従って、金属/金属合金材料が選択され、金属のFermiエネルギレベルの調整よって、サイズ、組成および形状による半導体のバンド構造の調整が、電荷キャリア(電子または正孔)を金属に送り、半導体に残る制御を可能にする。金属/金属合金は、光化学反応を各自にする触媒活性を提供する。
【0039】
本発明のナノ粒子は、2またはそれ以上の少なくとも1つの金属/金属合金材料の異なる領域を有するように構成され、各々の領域は、半導体の領域(または複数の領域)によって他方と離れ、電荷分離は、ナノ粒子の複数の領域で生じる。
【0040】
上記の実施例においては、2以上の金属/金属合金領域が存在するところで、第1の前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料は、第2の前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料と同じでもよい。いくつかの実施例においては、第1の前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料は、第2の前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料と異なる。
【0041】
いくつかの別の実施例においては、2以上の金属/金属合金領域がある場合、第1および第2の金属/金属合金材料の各々、ならびに、さらなる前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料は、異なるFermiポテンシャルを有し、これによって、電荷分離が促進される。
【0042】
異なるFermiポテンシャルの金属/金属合金対の非限定的な実施例は、金およびパラジウム;白金およびパラジウム;銀および金;銀および白金;ならびに銀およびパラジウムである。銅、鉄、ならびに、マンガン、コバルト、ルテニウムなどの遷移金属が使用されてもよい。
【0043】
いくつかの実施例においては、異なるFermiポテンシャルを有する金属/金属合金材料は、金およびパラジウムであり、Fermiエネルギの高い金は、電子アクセプタとして作用し、Fermiエネルギの低いパラジウムは、ナノ粒子の正孔アクセプタとして作用する。
【0044】
所定の実施例においては、本発明のナノ粒子が半導体材料の2又はそれ以上の領域を有するように構成され、各々の前記2以上の領域が、同じ半導体材料(例えば、複数の金属/金属合金領域がそれらの上に堆積される)でもよく、複数の同様の電荷分離反応が、ナノ粒子に亘って行われる。
【0045】
いくつかの代替の実施例においては、半導体材料の領域は、異なる半導体材料のサブ領域を有する1つの連続領域の形態でもよく、各々の半導体材料は、構成、ならびに、バンドギャップおよび電子バンドアライメントにおいて、他のものとは異なる。非限定的な一実施例においては、本発明のナノ粒子は、2つの半導体サブ領域から構成され、「タイプII(スタッガード;staggered)」半導体境界面を形成し、ここで、1つのサブ領域の1つの半導体の価電子帯(valance band)と伝導バンドアライメントの両方は、他のサブ領域の半導体アライメントよりもエネルギー的に高い。このようなナノ粒子構成において、電子および正孔は、異なる半導体領域に分けられ、続いて、金属/金属合金アイランドに分けられる。
【0046】
さらに他の実施例においては、ナノ粒子は、第1の端で、Fermiポテンシャルの高い金属/金属合金材料の第1の金属/金属合金領域と、第2の端で、Fermiポテンシャルの低い金属/金属合金材料の第2の金属/金属合金領域とを有するナノロッドであり、前記第1の端と第2の端との間の細長領域が、半導体材料の2つのサブ領域にセグメント化され、伝導帯エネルギの低い前記半導体材料の第1のサブ領域は、前記第1の金属/金属合金領域と接触し、前記第1のサブ領域の前記半導体材料のものよりも高く、前記第2の金属/金属合金領域の前記第2の金属/金属合金のFermiポテンシャルよりも低い前記半導体材料の第2のサブ領域は、前記第2の金属/金属合金領域と接触する。以下のスキーム2において概略的に明確に示すために、この構成は効率的な電荷分離を確実にする。
スキーム2:4領域ナノ構造における正孔および/または電子のカスケード。図示されるように、半導体材料の伝導帯からFermiエネルギの高い(まだバンドギャップ内にある)において電子はカスケードし、正孔は、価電子帯に対するFermiエネルギの低い(まだバンドギャップ内)の金属/金属合金において、カスケードする。
【0047】
1又はそれ以上の半導体領域は、通常、可視(visible)、可視および近赤外領域または3μmよりも深い赤外線における各々の吸収開始(absorption onset)を有する。半導体材料のいくつかは、UV範囲においても吸収する能力を有することができ、本発明のナノ粒子に使用された半導体材料は、UV範囲において単に吸収されない。
【0048】
理論に拘束されなければ、異なる半導体材料は、異なるバンドギャップエネルギを有し、従って、異なる最適波長吸光度を有する。上記半導体のナノメートル粒子は、粒子サイズの関数として異なる調整可能な波長において、および、一般的にバルク材料からより短い波長において吸収し、使用されるナノ粒子の半導体材料は、照射波長、あるいは、特定の方法または特定の用途において使用する意図の波長の組み合わせに従って選択されるべきである。ナノ粒子のいくつかの集合を使用することができ、半導体材料/サイズおよび吸光度範囲の各々は、広域光スペクトル領域を超えて、効果的な反応を可能とする。半導体材料を変化させることで、バンドギャップおよびバンドオフセットを調整可能にし、ナノ構造によって利用可能な波長領域を拡張し、例えば、酸化還元プロセスなどのバンド位置を調整可能とする。
【0049】
従って、半導体材料は、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeおよびこれらの合金(CdZnSeなど)などの群II−VIの元素、InAs、InP、GaAs、GaP、InN、GaN、InSb、GaSb、AlP、AlAs、AlSbおよびInAsP、CdSeTe、ZnCdSe、InGaAsなど群III−Vの元素、PbSe、PbTeおよびPbSおよびその合金などIV−VI群の元素、InSe、InTe、InS、GaSeおよびInGaSe、InSeSなどの合金など群III−VI、SiおよびGeおよびこれらの合金など群IV半導体、および、複合体構造およびコア/シェル構造における上記の組み合わせ、から選択される。いくつかの実施例においては、本発明のナノ粒子は、群II−VI半導体、その合金およびこれらから製造されるコア/シェル構造から選択される半導体材料を具える。更なる実施例においては、群II−VI半導体は、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、これらの合金、これらの組み合わせ、および、これらのコア/シェル、コアマルチシェル層構造である。
【0050】
いくつかの実施例においては、半導体材料は、TiO2以外である。
【0051】
金属/金属合金材料は、通常、遷移金属である。これらの非限定的な例は、Cu、Ag、Au、Pt、Co、Pd、Ni、Ru、Rh、Mn、Cr、Fe、Ti、Zn、Ir、W、Moおよびこれらの合金である。
【0052】
いくつかの実施例においては、金属はAu、PdおよびPtおよびこれらの合金である。
【0053】
更なる実施例においては、金属は、Au、PdおよびPtならびにその合金であり、前記少なくとも1つの半導体材料は、CdS、CdSeまたはCdTeである。
【0054】
光化学反応を触媒するために、1つならびに複数のナノ粒子を使用してもよい。ナノ粒子の集合は、ナノ粒子のコレクション(ブレンド)として特徴付けられ、各々が本明細書に開示されるように特徴付けられてもよく、集合は、化学的処理可能性および/または所定の分布の少なくとも一方を有するように更に特徴付けられる。いくつかの実施例においては、ナノ粒子の集合は、化学的処理可能性および所定の分布の両方を有するように特徴付けられる。
【0055】
ナノ粒子の集合の化学的処理可能性は、同一性(homogenous)または所定の分布(distribution)が求められる媒体においてナノ粒子の制御された分布を得るために、ナノ粒子表面を操作、化学的に修飾、および、処理する能力を意味する。上記媒体は、水性溶液、非水性溶液を含む液体媒体、ゲル、または、ポリマ、フィルム、電極および各種他の表面または、これらの混合物などの固体媒体、を具える。
【0056】
いくつかの実施例においては、分布は、集合(aggregate)形態である。他の実施例においては、分布は、非集合型ネット様分布形態である。
【0057】
上述したように、本発明のナノ粒子は、相対的に狭いサイズの分布を有し、すなわち、それらは、相対的に狭い範囲のサイズで製造される。実際、粒子サイズの標準偏差(シグマ)は、通常、25%未満である。いくつかの実施例においては、粒子サイズの偏差は、15%未満である。ナノ粒子が細長部(ナノロッド)である場合、1つの集合の長さのシグマは35%未満であり、幅のシグマは15%未満である。
【0058】
狭いサイズ分布は、1又はそれ以上の以下の利点を有するナノ粒子の同一性集合の設計を可能にする:
a)上記集合を使用する光触媒反応の再現性、
b)アレイにおける簡素化された配列およびアッセンブリ、および/または、
c)太陽エネルギを利用するのに最適化された吸収、および、皮下触媒活性を最適化するバンドアライメントを含む電子特性を調整する能力。
【0059】
いくつかの実施例においては、ナノ粒子の集合は、当該集合が相対的に同一サイズおよび/または形状のナノ粒子を具えるような同一性がある。
【0060】
他の実施例においては、ナノ粒子の集合は、2またはそれ以上の異なる集合のブレンドであり、各々は、異なるサイズ(またはサイズ分布)および/または形状のナノ粒子を有する。
【0061】
所定の用途に関して、集合を構成するナノ粒子のサイズおよび形状を変化させるだけでなく、ナノ粒子の化学的組成およびナノ粒子に亘って半導体および金属/金属合金領域の配列を変化させるのが望ましい。従って、いくつかの実施例においては、ナノ粒子の集合は、1又はそれ以上の以下の種類/グループのナノ粒子のブレンドである:
1)所定のサイズ分布のナノ粒子;
2)所定の形状のナノ粒子;
3)1つの金属/金属合金領域および1つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上のサブ領域を有する)を有するナノ粒子;
4)少なくとも2つの金属/金属合金領域および1つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上のサブ領域を有する)を有するナノ粒子;
5)1つの金属/金属合金領域および少なくとも2つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上の各々のサブ領域を有する)を有するナノ粒子;
6)少なくとも2つの金属/金属合金領域および少なくとも2つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上のサブ領域を有する)を有するナノ粒子;
7)少なくとも2つの金属/金属合金領域および少なくとも2つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上のサブ領域を有する)を有するナノ粒子であって、ナノ構造に亘った領域またはサブ領域の配列(シークエンス)は、1つの集団と別の集団では異なる;
8)特定の波長においてのみ、または、所定の波長または波長の範囲においてのみ、光触媒活性されるナノ粒子;
9)本明細書に記載されるように、光活性化を受けないナノ粒子。
【0062】
ナノ粒子の集合は、1又はそれ以上の上記タイプのナノ粒子を混合することによって得ることができる。代替としては、ヘテロ集合は、例えば、非化学量論的な開催材料などを使用することによって調製可能である。各々のグループのナノ粒子は別々に製造され、将来使用するために保存できる。当分野の当業者であれば理解されるように、ナノ粒子の上記群の各々は、実質的に均一または同一性のある状態で調製可能である。しかしながら、例えば、製造プロセス、開始材料の純度および他の因子などと関連のあるランダムな欠陥によって、サイズ、形状、化学的組成および他のパラメータにおける欠陥を有するナノ粒子の程度は、各々の上記タイプのナノ粒子で見つけることができる。上記欠陥の存在は、本明細書で開示される特徴の1つ、特に、その光触媒活性に必ずしも影響を与えないことを理解されたい。
【0063】
ナノ粒子の集合は、ナノ粒子の周知の所定の比率において、上記種類の1又はそれ以上のナノ粒子のブレンドを具えるか、あるいは、上記ナノ粒子のランダム混合物を具えることができる。非限定的な例においては、ナノ粒子の集合は、サイズおよび形状の大きな多様性を有し、1つの金属/金属合金領域および2つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料の1又はそれ以上のサブ領域を有する)から構成されるナノ粒子を具える。別の実施例においては、ナノ粒子の集合は、異なる形状および異なる化学組成のナノ粒子を具えてもよい。さらに別の実施例においては、集合は、細長構造の一端又はその両端で、少なくとも1つの金属/金属合金領域を有するナノロッド、および/または、細長ナノ構造の中心非末端部分の少なくとも1つの金属/金属合金領域のブレンドを具える。
【0064】
さらに、本発明による、あるいは、本発明の1つの方法で使用される1つのナノ粒子、および、本出願の範囲外の少なくとも1つのタイプのナノ粒子、を具えるナノ粒子集合が、さらに、本明細書で提供される。本明細書に記載されるようにナノ粒子および当分野で周知なナノ粒子の上記混合集合は、本明細書で開示される1つの用途に適した有利な効果を有することができる。
【0065】
以下でさらに検討しているように、異なるナノ粒子集合のブレンドを提供する能力を有することによって、材料の光学特性を調整することができ、従って、効果的に全範囲の波長を使用することができる。金属組成物およびサイズに関する代替(alternation)は、Fermi準位エネルギおよびナノ構造の酸化還元ポテンシャルを微調整することができる。異なる形態は、多種多様なデバイスの制御および設計を可能にする。
【0066】
以下でさらに 示すように、本発明のナノ粒子は、本明細書で「ナノネット」と呼ぶネット状配列を形成することができ、例えば、図11b、11cおよび11dに示すように、個々のナノ粒子は、1つのネット状構造を形成するように互いに協力に相互作用することができる。ナノネット構造において、半導体セグメントは、共有結合で融合され、セグメント間において、強力な結合が生じ、面は、金属アイランドで装飾(decorate)される。
【0067】
ナノネット構造は、ナノ粒子の単なるランダム集合またはコレクションを意味しない構造となることが強調される。このようなナノ粒子のランダム集合またはコレクションは、3次元構造のランダム集合に起因して、個々のナノ粒子の表面積のブロッキング(一部または全体)に起因する低い全面積を有するものとして特徴付けられる。上記集合は、より小さな集合または個々のナノ粒子に対してより厳しさの低い条件下で、安定性が低く、分解される。
【0068】
ナノ粒子のランダム集合またはコレクションとは違い、本発明のナノネット構造は、より多孔性であり、相互接続(融合)ナノ構造から構成されるより暴露した高表面積構造を有する。実際に、本発明のナノネットが検査されるとき、例えば、この構造を調整するのに使用されたナノロッドまたは球状粒子など、もともとのナノ粒子間での接触ポイントを区別するのはほぼ不可能である。
【0069】
実験が示しているように、典型的な集合において、光触媒活性は、低減されるか、または、消失してもよい。本発明のナノネットは、光触媒活性を示し、基質または膜構造上で容易に静止可能であり、光触媒反応溶液から分離されるので、光触媒についての望ましい形態である。
【0070】
従って、本発明は、ナノ粒子に由来するナノネットも提供する。ネット「アーム」の直径は、通常、1−50nmである。束になったナノネットの範囲は、数十ナノメートルスケールから数マイクロメートルまで変化可能である。
【0071】
ナノ粒子の異種性集合と同様に、ナノネットも異種性、すなわち、各種サイズ、形状、化学的組成物などのナノ粒子から構成される。
【0072】
他の実施例においては、ナノネットは、最初はナノロッドから調整される。
【0073】
さらなる実施例においては、ナノロッドは、化学的組成および/またはサイズに基づいて同一性または異種性である。
【0074】
上述したように、本発明によるナノ粒子、これらを含む集合、または、そのナノ構造は、多様な光誘導反応における光触媒として使用可能である。上記の光誘導反応は、水分解;例えば、汚染の分解を介して汚染からの水および空気の浄化;脱臭;工業的廃棄物および排気の処理;毒性の低いより環境に優しい安全な物質への染料産業からの残さなど有機汚染物の化学的変換;抗菌用途;抗雲(anti−clouding)用途、および、所望の中間体または目的生成物を生成するための、あるいは、有害汚染物質を除去するための酸化還元反応を含む化学反応、のうちの1又はそれ以上でもよい。
【0075】
一実施例においては、光誘導反応は水分解である。
【0076】
他の実施例においては、水分解反応が日光によって誘導される。
【0077】
光触媒を得るために、ナノ粒子を、適宜な条件下で、少なくとも1の電荷キャリアアクセプタ(酸化還元カップリング、電極、電極/酸化還元カップリング)と接触させ、酸化還元カップリングは、溶液(例えば、液体、ゲル、ポリマなど)中の衝突を介して電荷を受け、電極への接触は、フィルム形態、または、有効な接触を保証する他の自己アッセンブル状態となる。電荷キャリアアクセプタとの接触において、ナノ粒子を含有する媒体および少なくとも1の電荷キャリアアクセプタは、紫外/可視/近赤外領域において光で照射される。ナノ粒子は、可視から近IR領域において、および選択的にUV領域においても吸収開始を有する半導体から構成されるので、照射する際の金属−半導体境界面での電荷分離は、好ましくは、可視または近赤外光でなされる。このような光は太陽光に豊富にあり、大半の省エネおよびグリーンイルミネーションは、通常の幅広いスペクトルの太陽光で直接提供可能である。
【0078】
本発明のナノ粒子は、いくつかの実施例においては、電荷の保持が可能であり、次いで、継続的な照射のない酸化還元反応において、電子アクセプタに電子を送ることができる。すなわち、ナノ粒子は、予め照射されてもよく、すなわち、1種類のみの電荷アクセプタの存在下で、反対の電荷キャリアタイプのアクセプタと接触する前に照射され、従って、励起され、電子−正孔対を形成する。次いで、キャリアの1つは、例えば、正孔アクセプタなどのアクセプタに対して伝達され、例えば、電子など反対の電荷を光触媒の特定のセグメントの上に置く。このような過剰な電荷は、十分な時間保持可能である。荷電されたナノ粒子を第2のタイプの電荷キャリアアクセプタと接触させるとき、アクセプタ分子の還元は、可視またはNIR光がないところ、また、暗所でさえも生じる可能性がある。
【0079】
CdSeナノロッドおよび金ナノ粒子のブレンドの例示的な場合において、電荷は、溶液中に金ナノ粒子に保持され、励起したCdSeナノロッドから生産的衝突を介して送られる。ストークス−アインシュタインの関係を用いて、金ナノ粒子とCdSeナノロッドとの平均的な衝突時間は、CdSeナノロッド(約10ナノ秒)中の励起時間よりも大幅に長い約1ミリ秒と推定される。しかしながら、照射溶液における有意な量のフラクションにおける正孔スカベンジャ、または、他の正孔アクセプタとしてのエタノールの存在下で、励起CdSeナノロッドからの正孔移動が可能となり、衝突中に金ナノ粒子にその過剰な電子を送る負に荷電されたナノロッドが残る。NDBsの一般的な構造を有する細長構造の場合、細長構造の両端で、金の上のよりいっそう効果的な電荷保持は、中心CdSeおよび金領域間の迅速な電荷分離に割り当てられ、特定の実施例におけるエタノールなど、正孔アクセプタによる正孔スカベンジングによってなされ、電荷キャリアの再結合を阻止する。光触媒の注意深い設計は、より効果的な活性を可能とする。
【0080】
理論に拘束されず、さらなる理解のために、NDBあたり保持電子の数を、還元されたアクセプタ分子の量および吸光度スペクトルを用いてNDB量の推定から大まかに推定したことを示した。これによって、実験した最も長い前照射(prer−irradiation)時間でのNDBあたり約50電子の平均保持を得た。このような大きな数は、電子の付加を用いて、金のチップ(tip)のエネルギを荷電する際の変化を推定することによって有理化(rationalize)可能である。金チップの電荷の蓄積は、結果的に、金属のFermi準位平衡へとなり、半導体部品は、さらに電荷分離を抑制する。
【0081】
従って、光触媒作用に関する以下の方法の1または組み合わせにおいて、NDBsなどの本発明のナノ粒子を使用することができる:
1)直接光触媒作用、すなわち、本明細書に詳述するように、酸化還元反応を直接行うための、ナノ粒子および荷電キャリアアクセプタおよびドナーを含む媒体の同時照射、および/または、
2)光のない状態(または、少なくともさらなる照射を必要としない状態)で電荷キャリアアクセプタと接触する、前照射されたナノ粒子を用いること(1種類の電荷キャリアアクセプタがあり、反対の電荷キャリアアクセプタがないとき、光に故意的に露光させることによって照射され、従って、電荷保持を示す)。
【0082】
これらの方法は、本発明の一般的な方法を使用して、光電気化学電池および光電池など、デバイスの構成要素に使用されてもよい。
【0083】
従って、本発明は、光誘導電荷分離および電荷キャリアの電荷アクセプタへの移動に関する別の側面も提供し、前記発明は、
1)本明細書に開示されるように、少なくとも1つのナノ粒子を提供するステップと、
2)前記少なくとも1つのナノ粒子を、媒体において、少なくとも1の電子アクセプタおよび少なくとも1の電子ドナー(例えば、正孔アクセプタ)と接触させるステップと、および、
3)選択的に、可視および/またはIR領域、選択的にUV領域の放射を用いて、前記少なくとも1つのナノ粒子、少なくとも1の電子アクセプタおよび少なくとも1の電子ドナーを含む媒体を照射するステップと、を含み;
これにより、少なくとも1つのナノ粒子の金属/半導体境界面における電子−正孔対の形成、続く電荷分離、前記少なくとも1の電子アクセプタおよび前記少なくとも1の電子ドナーの各々への、電子および正孔の移動を可能とする。
【0084】
この方法によって、光の存在下での電子−正孔対の形成(可視および/または近赤外および選択的に紫外も)、および、ナノ粒子中の電子−正孔対(本明細書において「電荷キャリア」と呼ぶ)の各々のアクセプタ部分に移動する電荷への分離、を可能にし:電子アクセプタに対する電子(本明細書において「電子アクセプタ」と呼ぶ)、および、正孔アクセプタに対する正孔(本明細書において「電子ドナー」または「正孔アクセプタ」と呼ぶ)。電子アクセプタ分子は、非限定的な態様において、メチレンブルー、アズールBおよびチオニンなどのアクセプタ染料;酸素;硝酸;鉄(III)化合物;マンガン(IV)化合物;硫酸塩;二酸化炭素;テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、ジクロロエテン(DCE)、および、ビニル塩化物(VC)などの塩化化合物;水;メタノールおよびエタノールなどのアルコール、および、分子のLUMO(最低未占分子軌道)がハイブリッドナノ構造のFermi準位よりも低いその他の酸化分子から選択される。
【0085】
電子ドナー分子は、非限定的な態様において、メタノールおよびエタノールなどのアルコール、水、S2−、例えばNa2S、Se2−イオンなどから提供され、例えばNa2Se、SO32−イオンから提供され、例えばNa2SO3、SeO32−イオンなどから提供され、例えばNa2SeO3などから提供されるか、あるいは、分子のHOMO(最高被占分子軌道)がハイブリッドナノ構造のFermi準位よりも高い他の還元分子から選択される。
【0086】
電子および正孔の各々のアクセプタへの移動によって、電子アクセプタ分子は還元され、電子ドナー分子は酸化され、化学的トランスフォーメーションがアクセプタまたはドナー分子で起き、その他の適用可能な利点を得る。この還元および酸化反応は、還元−酸化が必要とされる少なくとも2つの有機または無機化合物の同時に還元および酸化する反応に使用されるか、または、その他の還元および酸化を受ける犠牲用添加物の存在下で、上記化合物の少なくとも1つの還元または酸化に使用される。
【0087】
従って、本発明は、その別の態様において、第1の有機または無機化合物の少なくとも一方を還元する方法および/または第2の有機または無機化合物の少なくとも一方を酸化する方法を提供し、前記方法は、
1)本明細書に開示されるように、少なくとも1つのナノ粒子を提供するステップと、
2)前記少なくとも1つのナノ粒子を前記第1の有機または無機化合物(電子アクセプタである)の少なくとも一方、および、前記第2の有機または無機化合物(電子ドナーである)の少なくとも一方と、媒体中において、接触させるステップと、
3)選択的に、可視および/または近IR領域および選択的にUV領域における放射を用いて前記媒体(前記少なくとも1つのナノ粒子、前記第1の有機または無機化合物の少なくとも一方、および、前記第2の有機または無機化合物の少なくとも一方を含有する)を照射するステップと、を含み;
これにより、前記第1の有機または無機化合物の少なくとも一方の還元、および/または、前記第2の有機または無機化合物の少なくとも一方の酸化が可能となる。
【0088】
本発明の別の態様において、水素を光触媒的に生成する方法が提供され、当該方法は、本明細書に開示されるように、少なくとも1つのナノ粒子を含む水性媒体、および選択的に、少なくとも1つの他の電荷キャリアアクセプタを、可視および/または近IR領域、および選択的にUV領域における光を用いて照射するステップを具え、前記光は選択的に太陽光であり、水分解後に水素を得る。
【0089】
さらに、水または空気における少なくとも1の汚染物質を分解する方法が提供され、当該方法は、
1)少なくとも1つの汚染物質を含有する媒体に、規定されるように少なくとも1つのナノ粒子を誘導するステップと、
2)可視および/または近IR領域および選択的にUV領域における光で前記媒体を照射するステップと、を含み、これにより、前記少なくとも1つの汚染物質に還元または酸化を生じさせる。
【0090】
半導体CdS粒子、金属(Pt)で堆積されたものの統計的に10%のみを使用するBao et al[6]によって報告される光触媒方法とは異なり、本発明の方法は、少なくとも1つの金属/金属合金領域と、可視(400−700nm、いくつかの実施例において、420、450、500nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)における吸収開始を有する半導体材料から構成された少なくとも1つの半導体領域と、の少なくとも2成分構造を有するハイブリッドナノ粒子を使用する。
【0091】
さらに、Bao粒子[6]と対照的に、本発明の方法によって使用されるナノ粒子は、高い化学的処理可能性を示し、上述したように所定の分布で製造され、非ナノワイヤ配列においてさえ光活性がある。さらに、本出願は、可視範囲およびそれを超えて照射可能にする一方で、Baoは、500、好ましくは450nm(青色)より短い波長の光についてのCdS限定バンドギャップに限定される。
【0092】
本発明の方法によって使用されるナノ粒子は、可視および/またはNIR領域における放射を用いて照射するときに、金属/半導体境界面での電子−正孔対を形成することができ、これに続いて、電荷分離が生じる。細長ロッド様形状などの例は、参照することで組み込まれる国際特許出願公開公報WO05/075339[15]に開示されている。
【0093】
いくつかの実施例においては、少なくとも1つのナノ粒子は、細長形状である。他の実施例においては、少なくとも1つナノ粒子は細長ではない。
【0094】
いくつかの実施例においては、使用される少なくとも1つのナノ粒子は、少なくとも1つの半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、前記2つの金属/金属合金領域の各々は、異なるまたは同一の金属/金属合金材料である(すなわち、異なるまたは同一のFermiポテンシャルをそれぞれ有する)。
【0095】
いくつかの実施例においては、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々は、異なる金属/金属合金領域(異なるFermiポテンシャルを有する)である。
【0096】
いくつかの実施例においては、2つの金属/金属合金は、同一の金属/金属合金材料である。
【0097】
他の実施例においては、本発明の1つの方法によって使用されるナノ粒子は、少なくとも2つの半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々は、異なるまたは同一の金属/金属合金材料(すなわち、異なるまたは同一のFermiポテンシャルをそれぞれ有する)であり、前記少なくとも2つの半導体領域の各々は、異なるエネルギギャップおよび異なるエネルギバンド位置を有する。
【0098】
いくつかの実施例においては、前記少なくとも2つの半導体領域は、少なくとも1つの金属/金属合金領域によって離間される。
【0099】
他の実施例においては、前記少なくとも2つの半導体領域の各々は、異なる半導体材料であり、前記領域は、金属/金属合金領域によって離間されない。
【0100】
本発明の方法のいくつかの実施例においては、前記少なくとも1つのナノ粒子はナノロッドである。
【0101】
さらなる実施例においては、ナノロッドは第1の金属/金属合金領域をその端部の1つ、および、他の端部に第2の金属/金属合金領域を有するNDB形状であり、第1および第2の金属/金属合金領域は、化学的組成が互いに異なり、すなわち、Fermiポテンシャルが異なる。
【0102】
さらなる実施例においては、NDBは、ナノ構造の細長セグメントにおいて、少なくとも1つの付加的な金属/金属合金領域を有する。
【0103】
いくつかの実施例においては、少なくとも1つのナノ粒子は、粒子の集合である。
【0104】
いくつかの他の実施例においては、ナノ粒子の集合は、同一性があり、すなわち、1つの種類のナノ粒子を含むか、あるいは、異種性があり、すなわち、ナノ粒子のブレンドを含む。
【0105】
さらなる実施例においては、規定されるようにナノ粒子の集合を、水性、有機またはこれらの混合物でもよい媒体において、前記少なくとも1の電荷キャリアアクセプタまたは少なくとも1の電荷キャリアドナーと接触させる。いくつかの実施例においては、本発明の方法は、少なくとも1の電子ドナー分子を具える水溶液で行われる。
【0106】
電子および正孔のそれぞれのアクセプタに対する各々の移動について、ナノ粒子、集合(aggregate)、ナノネットまたはその他のこれらの集合を、媒体において、電子および正孔アクセプタと接触させなければならない。本発明の文脈において、用語「接触」またはその言語的変形は、前記少なくとも1のナノ粒子と前記少なくとも1のアクセプタ分子との間における電荷移動を可能にするように、前記少なくとも1のアクセプタ分子および前記少なくとも1のナノ粒子を集めることを意味し、これによって、アクセプタ分子(電子アクセプタまたは正孔アクセプタ)の還元または酸化を確実になされる。1またはそれ以上のナノ粒子と、1又はそれ以上のアクセプタ分子との接触は、溶液に溶解されたアクセプタ分子と、電極(バイアスあり、または、なし)の一部として構成されるナノ粒子と、なされ、マトリックス中に固定され、モノ−またはマルチ層状のフィルムに堆積し、および/または、媒体に自由に分布する。いくつかの用途に関して、アクセプタ分子およびナノ粒子は、同じ物理または化学環境であり、すなわち、例えば、マトリックス中に固定され、層として堆積される。
【0107】
他の実施例においては、本発明は、使用されるナノ粒子集合や、得られる化学的トランスフォーメーションと無関係に、日光の下で実施される。
【0108】
本明細書で提供される開示によって当分野の当業者が理解されるように、ハイブリッドナノ粒子は、多様な光誘導化学トランスフォーメーションにおいて光触媒として使用可能である。先行技術より優れた光触媒として本発明のハイブリッドナノ粒子を使用する利点がいくつかある。
【0109】
第1に、ナノ粒子の集合は、特定の光誘導プロセス[13]を必要とされるので、そのバンドギャップおよびバンド−オフセットを調整(tune)するように半導体を選択することによって、適応させることができる。量子閉じ込め効果は、半導体領域のサイズを調整することによって使用可能であり、ギャップおよびバンド位置をシフトして特定の光触媒プロセスに適合させることができる。これによって、広いスペクトル範囲が、太陽エネルギを効率的に利用可能となり、粒子、金属(または金属合金)および酸化還元カップリング間のバンドオフセットを調整可能となる。さらに、ヘテロ構造ナノ粒子およびロッドを調整することができ、電荷分離に有用なエネルギ構成(landscape)を提供し、競合再結合プロセスを制限する。
【0110】
第2に、金属/金属合金は、触媒活性を促進し、エネルギレベル位置を調整し、光誘導プロセスを可能とするように、選択され、使用されることができる。
【0111】
第3に、ナノメートル粒子は多くの反応中心を提示する高表面積を有し、従って、その効率を潜在的に増大させる。
【0112】
第4に、ナノ粒子は、表面操作およびリガンド交換[14]を介して、化学的に利用可能であり、水を含む有機溶液または極性溶液に可溶化可能であり、モノ−あるいはマルチ−層状フィルムとして堆積されるか、あるいは、例えば、電極における表面に結合され、光触媒の用途および上述の他の用途において、幅広いフレキシビリティを提供する。
【0113】
本発明のナノ粒子によって触媒化される光触媒反応の非限定的な例は、水分解、汚染物質からの水および空気の浄化、染料工業からの残さを毒性の低い環境に優しい物質にするなど有機汚染物質の化学トランスフォーメーション、および、所望の中間体または目的生成物の生成、あるいは、有害汚染物質の除去についての酸化還元反応を含むその他の一般的な化学反応、である。本発明のナノ粒子を使用する光触媒反応の種類は、ナノ粒子またはナノ粒子集団(同一性/異種性)および使用される酸化還元カップリングに依存している。半導体の伝導帯および価電子帯のエネルギバンドアライメントおよび金属のFermiエネルギは、使用可能な酸化還元カップリングの特異的なウィンドウを決定する。
【0114】
いくつかの実施例においては、本発明の方法は、水分解プロセスにおいて水素ガスを生成する光触媒の方法として使用される。このような実施例においては、本発明の方法は、光電気化学電池で実施されてもよく、電荷キャリアアクセプタは、電極および酸化還元カップリングの形態である。
【0115】
さらなる実施例においては、本発明の方法は、電極の形態において電荷キャリアを使用する所定の実施例において、光−電圧生成に使用される。このような実施例においては、本発明の方法は、太陽電池デバイスで実施可能である。
【0116】
更なる実施例においては、本発明の方法は、回路に電流を生成するのに使用されるか、または、例えば、バッテリに貯蔵可能な電気エネルギを生成するのに使用される。これらの実施例においては、本発明の方法は、光電気化学電池において実施可能であり、電荷キャリアアクセプタは、電極および酸化還元カップリングの形態である。
【0117】
本発明は、その別の側面において、本発明による少なくとも1のナノ粒子を具えるデバイスを提供する。デバイスなどの非限定的な例は、太陽電池、光電気化学太陽電池、汚染物質の光触媒処理用デバイス、および、化学反応に関する光触媒用デバイスである。これらのデバイスは、1つの電池またはそのアレイとして使用可能である。
【0118】
本発明のデバイスは、本明細書に定義されるように、ナノ粒子の集合を具えてもよい。
【0119】
一実施例においては、本発明のデバイスは、例えば、I−/I3−など、電極間に挟まれた電解質液を有する構成として提供される場合、負極および正極、および選択的にゲート電極を具える1つの特定構造における電極配列を含む光電気化学電池である。このような構成においては、本明細書に開示されるように複数のナノ粒子が、例えば、負極など2つの電極の一方に堆積され、各々の前記ナノ粒子の少なくとも1の金属/金属合金領域は、前記電極と接触し、半導体領域は、電解質に晒される。電池、または、ナノ粒子を堆積した電極コンポーネントの照射に際し、ナノ粒子は、本明細書に開示されているように、一連のイベントを受け、負極および正極に亘って起電力を生成する。
【0120】
いくつかの実施例においては、前記電極の一方または両方はITOである。他の実施例においては、前記電極の一方または両方は透明電極である。
【0121】
光電気化学電池は、化学反応の光電気誘導に使用されてもよい。このような電池は、汚染物質分解の光電気誘導、1又はそれ以上の有機および/または無機化合物の還元および/または酸化、少なくとも1つの犠牲化合物があるとき、または、ないときの水分解、および、他の化学トランスフォーメーションに使用される。
【0122】
別の実施例においては、本発明のデバイスは、特定の構成において、2つの電極間に配置されたハイブリッドナノ粒子の自己アッセンブル層を有する2つの電極を含む光電池であり、層のナノ粒子の各々の異なる領域は、異なる電極、すなわち、一方の電極に対する金属/金属合金領域、および、他方の電極に対する半導体領域と接触させられる。光吸収後、電荷分離は、一連のイベントに続いて起こり、2つの電極間に電流を形成する。
【0123】
いくつかの実施例においては、前記電極の一方または両方はITOである。他の実施例においては、前記電極の一方または両方は透明電極である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
本発明を理解し、実際にどのように本発明が実施されるかをみるために、ここで、特定の実施例を、添付の図面を参照しながら非限定的な例として記載する。
【図1】図1は、ナノダンベルとして構成される本発明のナノ粒子による光吸収を一般的に示す。図示されるように、電極および正孔対は、例えば、金属領域に対する電子、および、半導体領域に対する正孔対あるいはその逆など、ナノ粒子の異なる領域を分け、有機または無機化合物の酸化還元を可能にする。
【図2A】図2Aは、光生成された電子−正孔対が分かれているナノダンベルにおける光誘導電荷分離機構を概略的に示している本発明の実施例であり、電子は、金チップに存在し、正孔はCdSeナノロッドに存在する。さらに、このスキームは、スカベンジャに対する正孔の移動、および、金チップからの電子移動における、例示的な分子、メチレンブルー、MBの還元を表している。挿入図は、CdSeと金の間のエネルギバンドアライメントを示している。
【図2B】図2Bは、水溶液中で合成されたCdSe−AuハイブリッドナノダンベルのTEM画像を示す。
【図3】図3は、水溶液中に成長した金チップに対する約22×4nmナノダンベルについての金チップのサイズ分布を示す。
【図4】図4は、励起ピークが維持されている、クロロホルム溶液中のCdSeロッド(約38×4nm)(一番下の線)、水溶液中の同一のナノロッド(真ん中の線)の吸光度スペクトル、および、励起特徴部はなくなっている(スペクトルは、簡略化のため、垂直方向にシフトされている)、水溶液中でそれらの上で金チップを成長させた後の吸光度スペクトル(一番上の線)を示している。
【図5】図5は、真っ暗な条件において、成長したナノダンベルのTEM画像を示す。金の成長は、光がなくてもみられる。この分析に使用されるTEMグリッドを、疎水性炭素コーティンググリッドであり、結果として、ナノダンベルは、堆積および溶媒蒸発の際、集合した。
【図6】図6は、金の還元に際し、CdSeの犠牲的なエッチングによりロッド長が明らかに短縮している、同一ナノロッドからのCdSe−Auナノダンベル、および、水溶液中のCdSeナノロッドテンプレートの長さ分布を示す。
【図7】図7は、CdSe−Auナノダンベル(約40×4nm)のTEM画像を示す:532nmレーザを用いた照射30分前の図7A、および、照射後30分の図7Bは、照射後の粒子の同様の形態を示している。緩衝液の存在は、TEMグリッド上で集合を生じさせ、低減したコントラストを生じさせる。
【図8A】図8Aは、MBの二重ピーク吸光度特徴部がはっきりしているMB−ナノダンベル溶液の吸光度スペクトルセットを示しており、各々スペクトルは、MBの添加前、532nmの粒子溶液における異なる前照射時間に対応している。
【図8B】図8Bは、前照射時間に対するCdSeナノロッド−金ナノ粒子混合体(オープン青色三角形)およびハイブリッドCdSe−Auナノダンベル溶液(オープン黒色四角形)によって還元される、MB染料の標準化濃度を示している。ナノ粒子における高効率の電荷保持が示されており、MB還元に対する活性につながる。
【図9】図9は、473nmで照射されたナノ粒子の光触媒作についての同時照射実験を要約している。4nmの金ナノ粒子とのMB混合物におけるMB染料の標準化濃度の(赤色の線)、6nmの金ナノ粒子(緑色の線)、CdSeナノロッド(青色の線)およびCdSe−Auナノ粒子(ドットおよび黒色ガイドライン)のタイムトレース。同一時間帯において、ナノ粒子は有意な光還元活性を示した(染料の61%が還元した)。
【図10A】図10Aは、MBを用いた同時照射実験であるコントロールに使用される金ナノ粒子のTEM画像を示する。図9Aは、4nm粒子であり、図9Bは6nm粒子である。
【図10B】図10Bは、MBを用いた同時照射実験であるコントロールに使用される金ナノ粒子のTEM画像を示する。図9Aは、4nm粒子であり、図9Bは6nm粒子である。
【図11A】図11A−Fは、異なるpH条件での水溶液中におけるCdSeナノロッド上でのPt成長のTEM画像を示す(スケールバー50nm)。図11Aは、pH10でのPt成長後、単離されたナノロッド。挿入図は、70×8nmの次元のもともとのロッドサンプルを示す。
【図11B】図11Bは、中間状態は、pH7で得られる。
【図11C】図11Cは、pH4は、ナノネット表面に亘ってPtが成長するナノ構造を生成する。
【図11D】図11Dは、pH4は、ナノネット表面に亘ってPtが成長するナノ構造を生成する。
【図11E】図11Eは、極めて強い酸性条件、例えばpH1で、あきらかなPt成長のない、ネットのみが形成される。
【図11F】図11Fは、異なるpH条件で成長したCdSe−Ptハイブリッドの吸収スペクトル。底部から頂部まで:水中のナノロッド、および、pH10、pH7、pH4およびpH1での白金の成長後のナノロッド。スペクトルは、明確化のために、垂直方向にオフセットされている。pH10でのハイブリッドの吸光度は、いくぶんかの励起構造を示している。
【図12】図12Aおよび12Bは、70×8nmのCdSeナノロッド状の白金ドットのサイズ分布を示す。Ptドットの平均サイズは、pH10および4で、それぞれ3.3±1.1nm、1.9±0.5nmである。図12Cおよび図12Dは、Ptドット間の最も近い隣接距離のヒストグラムを示す。平均の最も近い隣接距離は、pH10およびpH4で、それぞれ5.3±2.0nmおよび3.3±0.7nmである。200以上のナノロッドが、各ヒストグラムについて試験されている。
【図13】図13は、Pt成長の前(1)および後(2)のCdSeロッドの粉末X線回析スペクトルを示す。バルクCdSeおよびPtピークがマークされている。Ptの(111)面が分解可能である。
【図14A】図14Aは、pH10で成長した1つのCdSe−PtハイブリッドのHRTEM画像を示している。ロッドのCdSeラチスがみられる。挿入図、FFTアルゴリズムを使用し、Ptナノ結晶の(111)面が決定された。
【図14B】図14Bは、HRTEMを示している。
【図14C】図14Cは、ナノネットを形成するpH4でのCdSe−PtハイブリッドのHAADF−STEM画像を示す。
【図15A】図15A−Dは、CdSe−Ptハイブリッドの光触媒を示す。図15Aは、CdSe−Ptナノロッドにおける光誘導電荷分離プロセスの概略図であり、金属アイランドをその表面に有するナノロッド形状ナノ粒子上の光触媒活性が続く。
【図15B】図15Bは、照射の60分前および後のMBおよびCdSe−Ptナノネット混合物の吸光度スペクトルを示す。ピークは、照射後、減少している。
【図15C】図15Cは、両方ともpH7で測定されたCdSe−Ptナノネットの溶液中、および、単離されたCdSe−PtにおけるMB染料の標準化濃度のタイムトレースを示している。これらのプロットは、同様の特性を有するいくつかの異なる実験についての結果の平均を示している。ナノネットは、単離されたCdSe−Pt(25%の染料が還元される)よりもより反応性がたかい(46%の染料が還元される)。黒色の線は、MB染料、CdSeナノロッドおよびPtドット(2nm直径)の結果であり、5%の染料が還元されることを示している。
【図15D】図15Dは、ナノネットサンプルの照射中、各時間でのMBの3つのインジェクションを示す(第2および第3はハーフバスである)CdSe−Ptナノネットの連続的な光触媒実験を示す。
【図16】図16は、本発明による例示的な光電池の図である。
【図17】図17は、本発明による例示的な光電気化学電池の図である。
【発明を実施するための形態】
【0125】
可視光光触媒は、太陽エネルギを化学エネルギに変換する有望な経路である。半導体または金属−半導体ハイブリッド材料は、水素を生成する光化学水分解、光電気化学電池、および、有機汚染物質および細菌解毒の光化学的浄化における光触媒として研究されている。従来では、半導体/金属ハイブリッド触媒は、太陽スペクトルの5%未満からなるUV範囲への適用可能性を制限する幅広ギャップの半導体にほとんど基づいていた。さらに、それらは、半導体粒子、金属アイランドサイズ、形状および位置の面から、あまり制御されず、従って、その理解及び制御された改善は制限されていた。
【0126】
本発明の発明者らは、より高度に制御可能なハイブリッド金チップCdSeナノロッド(本明細書では、ナノダンベル(NDB)と呼ぶ)の可視領域光触媒活性を示している。上述したように、光吸収の後、迅速な電荷分離が、金属/半導体境界面で行われ、分離された電荷は、水分解のケースについての図1、および、モデルアクセプタ化合物を用いた別の特異的な例についての図2A、に概略的に示されるように、多様な形態の酸化還元化学を実行可能である。さらに、ナノダンベルは、酸化還元反応に後程使用するために、照射中、電荷を保持できる。
【0127】
半導体を有する光触媒について、光吸収後に形成される電子−正孔対の再結合を抑制する必要がある。TiO2およびZnOなど大きなギャップ酸化物半導体において、上記構造に堆積された金属アイランドは、電荷分離を促進するように作用し、さらに、電荷保持を示した。近年、3つのコンポーネント、CdS−Au−TiO2ナノジャンクションシステムが開発され、ベクトル電子移動を達成し電荷再結合が抑制されたが、依然として、スペクトル適用範囲は制限されていた。さらに、CdS−Ptハイブリッド材料は、水分解に関する可視光光触媒を示した。本発明につながる研究において、サイズ調整可能可視光領域を有するCdSeシステムが、光触媒のベースとして使用され、球状、ロッド−およびテトラポッド状粒子の生成を可能にする高度に発展した合成の利点を得た。CdSeナノ粒子の電荷分離は、分子複合体または半導体ポリマを使用して以前に示されていた。ここで、CdSeロッド上のAuチップの十分に制御された成長が、電荷を分離するように使用された。AuおよびCdSe間のバンドオフセット分析は、CdSeの伝導帯からAuチップへの迅速な電子移動が可能であり、これにより電荷分離が生じることを示している(図2Aの挿入図)。
【0128】
ハイブリッドCdSe−Auナノダンベルの合成がいくつかの方法でなされた。第1に、有機リガンド(トリ−オクチルホスホン酸化物TOPOと、テトラデシルホスホン酸TDPAなどのホスホン酸との化合)でキャップされた半導体ナノロッド(例えば、長さ40nm、直径4nm)を、公開された工程[16]に基づいて有機媒体中で合成した。ナノロッドのチップ上の金属の成長は、有機溶液[19]または水溶液中で得られた。
【0129】
光触媒作用は、ほとんどの場合、水溶液が適切である。得られているように、適宜なリガンド交換を介して有機相から水相へとNDBの可溶性を変える可能性がある一方で、この方法は、時間を消費し、大きな容量について実現するのは困難である。その代わりに、水溶液中で直接NDBを合成する新規な方法を、本明細書で紹介する。この方法は、利用可能な水溶性金属イオン前駆体の幅広い選択を用いて、半導体ナノ粒子上のAuとは別に、付加的な金属の成長に容易に拡張される。金属チップ材料の制御は、このシステムの光触媒活性を調整するように、本質的で強力なノブ(knob)と考えられる。
【0130】
この新規なアプローチにおいて、CdSeナノロッド(約38×4nm)は、既に報告されているように[16]、トリオクチルホスフィン酸化物とホスホン酸の混合物を含む配位性溶媒において、適宜な前駆体の高温熱分化によって成長した。CdSeナノロッドは、リガンド交換によって水溶液に移動される[17、18、20]。調製された(約20mg)これらのナノロッドは、過剰量のメルカプトウンデカンサン(MUA,約4mg)の存在下において、約4mlのクロロホルムで溶解された。pH13で、3回蒸留水(TDW)中の3mlのKOH溶液は、クロロホルム溶液とともにバイアルに加えられ、浸透され、乳状の茶色溶液を得た。次に、溶液は、6000RPMで30秒間遠心分離され、2相、下部有機相および上部有色非スキャット(non−scat)水相を得て、これは、水相へのナノロッド十分な移行を示している。水相を分離し、ナノロッドを析出させ、TDW対メタノール比が1:3のメタノールを加えることによって洗浄した。さらに、洗浄したロッドを4mlのTDWに再分散させ、その濃度を吸光度測定で測定し、おおよそ3×10−7Mとなった。
【0131】
次のステージにおいて、AuCl3を秤量し、CdSeナノロッドあたり約8000金原子の濃度とし、2mlのTDWに溶解した。金の溶液を、すぐに、勢いよく撹拌したナノロッド水溶液に加え、透明な褐色溶液から濃い黒色溶液への瞬間的な色の変化が観察された。この懸濁液を1分間、6000RPMで遠心分離し、沈殿物を乾燥した。沈殿物を選択した濃度になるようにTDWに再分散させた。これは、さらなる試験や複数の用途に使用されるハイブリッドAu−CdSe光触媒ナノ粒子生成物を構成した。
【0132】
金(III)塩化物は、ナノロッド対金原子の比が約1:8000で秤量され、4mlのTDW(3回蒸留水)に溶解した。すぐに金の溶液を、勢いよく撹拌し、周囲光の下で、ナノロッド溶液に加えた。黒色析出物が30分以内に出現し、そのまま2時間撹拌し、その後、黒色析出物(ナノダンベル)を遠心分離を用いて回収し、乾燥させた。これは、過剰なイオンに対する浄化工程としても作用した。析出物を20分のソニケーション後、pH7のTDW緩衝液で完全に再分散させた。中性pHで、透明で安定な溶液を得たが、より酸性条件では、表面からのMUA基の除去(abstraction)により、十分に溶解しなかった。
【0133】
図2Bは、上述のように調製したCdSe−Auハイブリッドナノダンベルの透過型電子顕微鏡(TEM)を示す。有機溶液において既になされていたことと同様に、両方のロッドチップでAuの選択的成長が観察された。平均Au粒子サイズは3.5(±0.6)nmだった(図3)。前述の研究と同様に、Auの成長は、もともとのCdSeナノロッドの励起吸収特性を消失させた(図4)。
【0134】
理論に拘束されなければ、成長機構は、いくつかの可能性のある機構によって説明可能である。考え得る可能性のある第1機構は、半導体ロッドの光吸収後に生成された電子による金の光還元である。暗条件で行われたコントロール実験は、同様の金の成長を示した(図5)。ナノダンベルのより詳しい試験によって、もともとのナノロッドと比べて大幅に短いことがわかった。平均長さは、水中のロッドについての38nmからNDBにおける22nmまで短縮した(図6)。ロッドからのSe2−は、ロッド短縮と一致するロッドエッチングによってなされるAu3+を還元した。
【0135】
2種類の実験を行って、電荷分離を証明し、NDBの光触媒活性を示した。メチレンブルー(MB)、異なる形状の吸光度スペクトルを有する優れた電子アクセプタをモデル光触媒化化合物として使用した。2つの電子による還元に際し、MBは、可視スペクトルで透明である白色メチレンブルー(leucomethylene blue:MBH)に変換され、MB還元についての明らかなスペクトルシグニチャを提供する。
【0136】
「前照射(pre−irradation)実験」と命名された1つの実験セットにおいて、NDB溶液をまず照射し、次いで、さらに照射せずにMBのみを加えた。5×10−8Mの典型的な濃度を有するNDBの水溶液(pH7)と、犠牲的正孔スカベンジャとしてのエタノールを、エタノール対緩衝溶液の比を1:4にして調製した。暗室で調製したサンプルを気密性キュベットにおいて乾燥窒素ガスで泡立て(bubble)、酸素によって蓄積された電子のスカベンジングを阻止した。TDWにMB結晶(Sigma−Aldrich)を溶解することでメチレンブルー溶液を調製し、667nmでのMBの主な吸収ピークで、1の光密度を用いて溶液を受けた。各々の実験について、撹拌しながら可変時間の間、532nmのCWレーザおよび27mWの電力で2mlのNDB水溶液を前照射した。この照射スキームは、CdSeが十分に定義された可視波長で光を効率的に吸収するように選択され、吸収された光子の定量化が可能である。照射後、1mlの脱気MB染料溶液をキュベットに加えた。NDBは構造または形態学的変化を示さなかった(図7)。
【0137】
図8Aは、MBナノダンベル水溶液の一連の吸光度スペクトルを示しており、MBの二重ピーク特性(609nmおよび667nm)が明確にみられる。吸光度スペクトルは、吸収プロファイルの時間トレースに続いて変化するので、暗所で30分間混合したサンプルを撹拌させた後に得て、反応を完了させた。MBの還元は、測定準備の具体的な制限である数十秒よりも早い。NDBはMBからMBHに還元されるので、明らかにみられるように、二重ピーク吸収特性は消失し、より長い前照射(pre−irradiation)は、還元が全体的増加にし、このことは、より多くの電荷がNDBに保持されることを示唆している。図8Bは、比率が1:2、および、NDB溶液に対する同様の濃度のもともとのCdSeナノロッドと直径5nmのAuナノ粒子との混合物のコントロール溶液(三角)についての結果とともに、NDBと前照射時間の還元活性の相関をプロットしている。これらのハイブリッドNDBは、120分間の前照射後、MB染料の64%を還元し、全く同一条件下で、上記混合物は、MB染料を13%のみ還元した。
【0138】
さらなるコントロール実験は、CdSeナノロッドまたは金ナノ粒子の溶液が、前照射後に光触媒還元効果を示さず、従って、電荷保持も示さなかった。このように、NDBは、既に観察されている光ルミネセンス急冷と一致する可視光下における電荷分離を示すと結論づけられる;さらに、NDBは、イルミネーションが消された後でさえ、正孔スカベンジャが正の電荷を除去するように使用される場合、長時間励起した電荷分離状態を保持する能力を有する。電荷保持しているNDBsは、それらの電子を、光の存在しない酸化還元反応において、電子アクセプタに移動可能である。
【0139】
CdSeナノロッドおよび金ナノ粒子混合物の場合、電荷は、溶液中の金ナノ粒子上に保持され、励起したCdSeナノロッドからの生産的衝突を介して移動された。ストークス−アインシュタインの関係を用いて、金ナノ粒子とCdSeナノロッドとの間の平均衝突時間は、CdSeナノロッド(約10ナノ秒)の励起寿命よりも大幅に長い約1ミリ秒と推定された。しかしながら、照射された溶液において、有意な容量フラクションの正孔スカベンジャとしてのエタノールの存在によって、励起したCdSeナノロッドから正孔を移動可能であり、衝突中に金ナノ粒子に過剰な電子を移動した負の電荷ロッドが残された。NDBの場合、金の上でのもっとより有効な電荷保持が、電荷キャリアの再結合を阻止したエタノールによる正孔スカベンジングによってなされるとともに、CdSe部分と金部分との間において迅速な電荷分離に割り当てられた。従って、光触媒の注意深い設計によって、より大幅な効果的な活性が可能となった。
【0140】
NDBにつき保持される電子の数は、吸光度スペクトルを用いて、還元したMB量およびNDB量の推定値からおおまかに推定可能である。これによって、実験された最も長い前照射時間での1NDBあたり約50電子の平均保持量(average retention)を得た。
【0141】
MB還元の直接光触媒用にNDBを使用することも可能である。同時照射と命名された第2の実験セットにおいて、473nmの30mW CWレーザでサンプルを照射しつつ、MBナノダンベル水溶液中のMBの吸収(667nm)が行われた。この波長は、MBがこの領域において最小吸光度を有するので選択され、直接の光脱色を最小限にする。正孔アクセプタとしてのエタノールおよびMBを加え、上述したようにサンプルを調製した。
【0142】
図9においては、照射されたMBナノダンベル溶液、MB−CdSeナノロッドコントロール溶液、および、MB−金ナノ粒子のコントロール溶液の吸光度の標準化タイムトレースが示されており、直径4(±1.3)nmおよび6(±1)nmからなるMUAコーティングAu粒子が使用されている(図10およびサポート情報の調製情報)。照射30分後、MB−ナノダンベル溶液は、61%のMB染料の還元を示した。コントロールのAu溶液は、4および6nm粒子の両方に対してMBの還元はほとんど示さなかったが、コントロールのCdSe溶液は、15%のMBの還元を示した。別のコントロール実験において、MB溶液のみを、照射下で染料の光退色(photobleach)量を推定するのに使用した。30分の照射後、約5%のみの染料が光退色した。MB−ナノダンベル溶液におけるMB染料吸収の大幅な減少は、従って、NDBの存在によって生じる光触媒効果に起因する可能性がある。
【0143】
これらの結果は、十分に定義されたハイブリッドナノ構造において光還元反応を活性化するための可視光の使用、ならびに、照射を停止した後でさえ、還元反応において、後で使用するための電荷を保持できる可能性、を示している。ほとんどの従来のナノ光触媒システムは、プローブ分子の直接的な光退色を生じさせる可能性があるUV照射を使用し、より重要なことには、半導体は、可視領域の太陽スペクトルを効率的に吸収することができない可能性がある。本発明のシステムは、光触媒特性を超える高度な制御を提供し、付加的なハイブリッド金属−半導体ナノ粒子は、将来的可能性があり、光触媒として使用可能である。
【0144】
本発明の方法および材料に関するさらなる実施例については、室温は、水溶液中のCdSeナノロッド上の白金触媒の成長に接近することが本明細書に開示されている。新規ハイブリッドナノ結晶の化学的および物理的特性が試験され、Au−CdSeケースについて開示されているように、モデルアクセプタMBの還元を再度使用して、その光触媒特性が開示されている。
【0145】
CdSeナノロッド(70×8nm)を開示されているように合成した。合成後、CdSeナノロッドを、アルキル−ホスフィン表面リガンドとメルカプト−ウンデカン酸(MUA)とを交換することによって水溶液に移動した。白金成長については、PtCl4を水に溶解し、室温で二日間、CdSeナノロッド水溶液と十分に混合した。暗褐色/黒色の析出物が形成され、遠心分離を用いて回収し、CdSe−Ptハイブリッド粒子を得た。個別のナノ結晶を乾燥させ、光触媒における使用および特性化(characterization)のために、三回蒸留水(TDW)に再溶解した。
【0146】
図11に示すように、異なるpHでのCdSeナノロッド状のPtの成長パターンにおいて、ある種の変化が観察されることもある。塩基性条件(pH10)での反応において、金属はロッド表面で成長する。TEM観察は、成長中の溶液および離間した状態のロッドにおいて、融合または集合が生じないことを示した(図11A)。pH7で、有意なナノロッド融合は観察されなかったが、ナノロッドのクラスタリングはTEMグリッドで観察されることもあり(図11B)、このことは、溶液におけるハイブリッドナノ結晶間に存在する強力な引力と一致する。pH4では、Ptの成長もナノロッド表面で生じ;成長中に同時に、ナノロッドは、集合および融合を開始し、連結されたCdSe−Ptハイブリッドナノ構造から構成される多孔質の高表面積「ナノネット」構造を形成する(図11C−D)。強力な酸性条件(pH1)での反応は、ナノロッド表面のPt成長を示さず、広がっただけのナノロッド集合(図11E)、および、ナノロッド集合を囲む付着していない小さなPtナノ結晶の存在を示した。
【0147】
異なるpH条件での成長パターンの差は、ハイブリッドナノ構造の吸光度スペクトルにみることができる(図11F)。pH10では、第1の励起ピークが広がり、赤色に向けてのテール部が発展しているが、CdSe−Ptハイブリッドナノロッドの吸光度は、もともとのCdSeナノロッドシード(seeds)のいくつかの励起子構造を示している。このようなパターンも、CdSeナノロッド上のAuナノ結晶の成長中にみられ、核があることおよび小さな金属ナノ結晶の成長の指標として現れる。pHがより酸性になると、CdSe−Ptナノロッドの吸収特性は消失し、可視スペクトルの吸光度は、赤色までさらに広がる。この効果は、ナノネットを形成するハイブリッドナノ結晶の融合により生じている可能性があり、これにより、より大きなコロイドの存在に起因して溶液散乱において増加することとなる。
【0148】
成長中の溶液のpHも、CdSeナノロッド上で成長するPtナノ結晶の特性化に影響を与える。サイズの分布と、pH4およびpH10の成長条件についての200Ptドットを超える最も近い隣接距離は、図12に示されている。塩基性条件下で成長するPtドットの平均直径は、3.3±1.1nm(図12A)であり、酸性条件において、Ptナノ結晶サイズは、1.9±0.5nmである(図12B)。塩基性条件下で成長するPtドットの平均の最も近い隣接距離は、5.3±2.0nm(図12C)であり、酸性条件下で成長するPtドットの距離、3.1±0.7nmと比較してほぼ2倍の大きさである(図12D)。
【0149】
CdSe−Ptハイブリッドナノ結晶の構造および化学組成を試験した。約1μm領域以上、pH4で調製したCdSe−Ptハイブリッド粒子に関してHRTEMで得たエネルギ分散的X線(EDX)スペクトル(図示せず)は、期待したCd、SeおよびPtピークを示した。Cd:Se原子比は、1:1.07であり、CdSeナノロッドの期待される比率1:1に近かった。CdSeとPtとの比は、約2.4:1だった。Pt成長前後での(pH10)、70×8nmのCdSeナノロッドについての粉末X線回析(XRD)が図13に示されている。Pt成長後の小さなPt(111)ピークの様相は、結晶Ptが存在するという付加的な証拠を提示している。小さなPt粒子サイズの場合、広くて弱いピークが期待される。
【0150】
Ptがナノロッド表面に直接結合するのを確認するために、高解像度TEM(HRTEM)および高角度散乱暗視野TEM画像(HAADF−STEM)技術を使用した。図14Aは、pH10で成長した1つのCdSe−Ptナノロッドの画像を示す。ロッドのCdSe(002)ラチスを十分に識別可能であるが、Ptドットは、極めて小さく(平均直径が3.3±1.1nm)、そのラチス構造の直接間接を難しくしている。TEMマイクログラフにおいて、選択されたナノ結晶の高速フーリエ変換(FFT)を計算し、目で的確に決定するのには難しいラチス構造を識別するために使用した(図14Aの挿入図)。Ptナノ結晶の(111)面を決定した。図14B−Cは、pH4でのPt成長のHRTEMおよびHAADF−STEM特性化を示す;上述したように、このような条件下では、ナノロッドは、Pt成長中に融合し、ナノロッドを形成する傾向にある。この方法が、より重いPt原子が強力に散乱する原子番号コントラスト(Zコントラスト画像)を提供するとき、HADDF−STEMにおける明るい白色のドット(図14C)は、灰色ナノロッドの表面上の白金ドットである。
【0151】
可視光光触媒におけるCdSe−Ptハイブリッドナノ粒子の融合は、次に示す。上述したように、光触媒用の金属−半導体ハイブリッドの使用は、半導体における迅速な電子−正孔再結合と効果的に競合する可能性がある、金属/半導体境界面での電荷分離に依存している。可視光光触媒および電荷保持は、上述したCdSe−Auナノダンベル(NDB)で観察され、同様のことは、CdSe−Ptシステムについて拡張された。
【0152】
この目的について、前述したように、MBを電子アクセプタとして使用し、正孔スカベンジャとしてエタノールを使用した。電荷分離および酸化還元反応に関する提案したスキームは、図15Aに例示している;ハイブリッド粒子において、サンプル照射および光誘導電荷キャリアの形成後、電子および正孔は、システムにおいて最低エネルギレベルに緩和され、電子は白金ドットにあり、正孔はCdSeナノロッドにある。このような状態において、例としては、正孔をエタノールに移動させ、電子をMBに移動させてもよい。2つの電子を加えると同時に、MBは還元され、無色(colorless)の白色メチレンブルー(MBH)を形成する。
【0153】
MB還元の光触媒に続いて、ナノロッドのみ励起する(MB染料を直接はしない)ように、473nm、30mWのCW青色レーザでサンプルを継続して照射している間、MBの主吸収ピークの減少(667nm)を所定の時間に亘りモニタした。CdSe−Ptのサンプルを1:4のエタノール対水の比を用いて再懸濁し、これらの溶液のpHを緩衝液を用いて7に設定した。次いで、数分間、密閉キュベットで乾燥窒素ガスをバブリングすることによって脱気して、水に溶解したMBの添加を行った。図15Bは、時間0、照射後60分での溶液の吸光度を示している。MB主ピークの減少は、相当の還元を示した。図15Cは、MBの主吸光度ピーク、667nmでのサンプルの吸光度の標準化タイムトレース(C/C0、ここで、C0は時間0でのMB濃度である)を示す。これらのプロットは、同様の特性を有するいくつかの異なる実験の平均結果を示している。
【0154】
塩基性(ナノロッド)および酸性(ナノネット)で成長したCdSe−Ptの光触媒活性を比較した。照射後60分で、MB/CdSe−Ptナノネット(図15C)は、46%のMB染料の還元を示し、MB/CdSe−Pt独立ナノロッドは、25%のMBの還元を示した。粒子を含まずMBとエタノールを含む溶液の照射は、2%のみの直接光退色を示した。CdSeナノロッドを混合物に加え、10%還元した。Ptドット(2nm、トルエンで成長し、MUAを用いて水に移動した)は、4%の還元を示した。比が1:20の、CdSeナノロッドとPtドットの混合物(Pt−CdSeナノロッドの比を反映)は、MBの5%還元を示した。明らかに、CdSe−Ptハイブリッドは重要な光触媒活性を示している。これは、金属半導体境界面で行われる電荷分離に割り当てられ、エタノールによる正孔スカンベンジングおよびMBの還元が続く。Ptが効果的な触媒金属であることは周知である。
【0155】
さらに、光触媒活性の改善を、ナノロッドと比較してナノネットで観察した。これは、酸性pHでのPtドットのより小さい平均寸法と一致し、反応性を増大させることとなる場合がある。さらに、酸性条件においては、Ptドットでのロッド表面被覆範囲は、塩基性条件よりも密度が高く、CdSe−Ptナノロッドと比較してCdSe−Ptナノネット上においてより多くの触媒部位を提供する。従って、理論に束縛されなければ、電荷分離は、ナノネットにおいてより効率的であってもよい。
【0156】
CdSe−Ptハイブリッドについての光触媒効果をさらに示すために、各々がオリジナルのMB量の半分と考えられる2つのインジェクションにおいて、さらなるMB量が加えられる一方で、照射は、60分継続される。これは、pH4で調製されたCdSe−Ptナノネットのサンプルについて行われた。図15Dにみられるように、このシステムは、さらなるインジェクションに際して染料を依然として還元し、活性が同様に保たれていることを示す。
【0157】
本発明の方法は、溶液中でフリー、または、電極表面に層として堆積される複数のナノ粒子を含む電気化学電池において実行されてもよい。一つの例示的で一般的な設定において、図16において例示のために示されるように、光電池は、電池の電極間に配置されたナノ粒子の自己アッセンブル層から構成される。この実施例においては、一つの電極は、ITO、または、光が電池に入ることができる透明電極である。この設定においては、各ナノ粒子の異なる領域は、電池の異なる電極に接触している。光吸収後、電荷分離が行われる。
【0158】
光電池と同様に、図17に示される例示的な構成の光電気化学電池が、構成されてもよい。図示されるように、各電極と接触するようにナノ粒子を配列するかわりに、電極溶液は、一般的には、一つの電極と接触しているナノ粒子の金属領域を用いて、中間媒体として使用される。酸化還元反応は、電荷がナノ粒子から電極へ移動可能である水性媒体で行われ、これにより、電流を生成する。
【0159】
当分野の当業者であれば理解されるように、本明細書に記載される実施例は、本発明のある種特定の実施例のみである。ナノ粒子、方法、使用および装置の他の実施例は、開示し、請求している本発明の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、ハイブリッド金属半導体ナノ粒子、光誘導電荷分離反応および応用におけるハイブリッド金属半導体ナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、触媒の存在下において、光反応を加速させる。光生成触媒において、光触媒活性は、触媒の能力に依存して光を吸収し、後で二次的酸化還元(redox)反応を可能とする電子正孔対を形成する。
【0003】
光触媒の大きな進展は、二酸化チタン(「光触媒水分解(water splitting)」と命名される)の光誘導プロセスを用いた水電気分解の発見である[1]。光触媒は、水分解において重要な市販用途を有し、また、水および空気精製、染料工業[2]からの残さなどの有機物汚染、および、光電気化学電池[3]を含むさらなる領域においても、重要な市販用途を有している。これらの技術の興味深い将来性のある側面は、プロセスを開始させる光源など、太陽エネルギーを利用する能力である。従って、光触媒は、クリーンで無料の太陽エネルギーを獲得する簡潔で直接的な方法を示しており、この太陽エネルギは、例えば、水分解プロセスから水素ガスを生成するのに有用な仕事をし[4、5]、あるいは、光電気化学電池の場合においては、有用な電気エネルギとなる。さらに、光誘導電荷分離プロセスは、光(PV)電池で電気エネルギーを生成するのに直接利用される。いわゆるグリーンテクノロジが化石燃料への依存度を低減するので、上述の領域における用途には、高い将来性があり、幅広い商業的可能性があり、重要な社会貢献性がある。
【0004】
効率的な光触媒の探索が、化学および材料科学の分野で長い間行われてきた。半導体のナノ結晶およびナノ構造は、光触媒活性について研究されている[7、8]。しかしながら、半導体自体の電荷キャリアの急速な再結合により、光触媒活性の効率は、電荷キャリアが酸化還元反応に関して不安定ではないので、制限される。
【0005】
半導体材料上に金属アイランドを加えることによって、光誘導電荷分離エンティティを形成可能であり、ここで、半導体は光を吸収し、電子空正孔対を形成し、その後、迅速な電荷分離が続き、1つの種類の電荷キャリアが金属に残り、他方の種類が半導体に残る[9、10]。このような効果によって、電荷キャリアは酸化還元反応または電流などの科学プロセスおよび物理プロセスに容易に利用可能となり、所望しない電子正孔再結合プロセスと競合する可能性がある。
【0006】
従って、光触媒の半導体金属システムの例は、いくつかの態様に制限される;第1に、ほとんどの半導体光触媒は、TiO2、ZnOおよびCdSなど高いバンドギャップの半導体に基づいている[11、12、13、14]。このような高いバンドギャップの半導体は、太陽スペクトルに適合しないので、光触媒の応用を厳しく制限する。例えば、最も一般的な光触媒システム、TiO2は、UVのみを吸収可能であり、2〜4%の太陽スペクトルを得る。青色光の下、水素を光触媒で生成するためのPt充填CdSナノ構造の生成を報告しているBao et al[6]の場合でさえ、CdSeナノ構造のバンドギャップは、520nmおよびそれ以下に制限され、光触媒の太陽吸収範囲が制限される。さらに、ナノ構造寸法および形状の限定的コントロールのみがなされ、金属堆積も限定的にコントロールされた。実際、光堆積された10%共触媒(co−catlyst)を有する触媒の利用は、触媒の構造及び形状に関して何も示さなかった。
【0007】
第2に、全てのシステムは、金属アイランドサイズ、半導体上の金属の位置、および、金属の種類においてさえ、十分に制御されていない。実際に、組み合わせた半導体−金属システムは、広いサイズ、形状および組成物分布に悩まされる。これは、触媒の性能をリサーチして理解する能力だけでなく、制御された状態で触媒を改善する能力も制限する。
【0008】
最後に、このように使用される全てのシステムにおいて、ナノ粒子は、ポリマーマトリックスでドープされるか、異種(non−homogenous)ナノ粒子サイズ分布を有するナノ構造フィルムとして存在する。これらの構造は、ナノ粒子の化学的処理可能性、液体/ゲル培地の同種分布、および、特性を変更せずに、より複雑な構造における洗練された使用(同種自己アッセンブル薄膜または電極表面のコーティングなど)を低減した。
【0009】
[参考文献]
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[20]Jiang, W.; Mardyani, S.; Fischer, H.; Chan, W. C. W. Chemistiy of Materials 2006, 18, (4), 872-878
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[22]Lugo, J. E.; Taguena-Martinez, J.; del Rio, J. A. Solid State Communications 2001,117, (9), 555-559
【発明の概要】
【0010】
本発明は、光誘導電荷分離効果を示す高度に制御された半導体金属ハイブリッドナノ粒子に基づいている光触媒の開発及び使用に関する。この効果は、1つの粒子ならびに複数の上記粒子で観察される。光触媒作用が、本明細書に開示されるシステムを太陽熱の放射に単に暴露することによって得られるという驚くべき発見に基づいて、本発明の光触媒(ナノ粒子)、または、本発明の方法によって使用される光触媒には、各種光触媒反応における適用性、および、電気化学電池および光電池など光誘導電荷分離を使用する他の用途があることがわかった。これによって、環境汚染物質の分解(decomposition)および水分解(splitting)に化学的変換に有用な多種多様な方法および装置の開発が実現した。
【0011】
以下で詳述するが、効率的な光触媒活性を有するナノ粒子について、これらは、各々、少なくとも1つの金属/金属合金領域と、可視(400−700nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)において吸収開始(absorption onset)を有する少なくとも1つの半導体領域と、を具えるハイブリッドナノ粒子として構成されなければならない。本明細書にさらに検討している構造を有する上記ナノ粒子は、一般的に、以下のように特徴付けられる:
1.ナノ粒子は、多様な形状およびサイズ、サイズ分布ならびに化学組成で構成されてもよい;
2.ナノ粒子は、例として示されるように、表面コーティングに基づいた水性または有機媒体において可溶となる能力による、表面処理を介した優れた化学的処理可能性を有する;
3.例えば、半導体の表面および/または金属領域など、ナノ粒子表面は、自己アッセンブルを可能とするように機能化してもよい;
4.光触媒効果は、単一ならびに複数(集合)の光触媒で観察される;
5.光触媒は、電荷を保持し、従って、暗所でさえ化学反応を触媒するように使用されてもよい;
6.光触媒は、1またはそれ以上のナノ粒子集合を含むユニークなナノ構造に構造化されてもよい;
7.光触媒は、各種装置に使用できる。
【0012】
従って、本発明は、光触媒としての使用、ならびに、光誘導電荷分離を組み込む装置の構造における使用に関して、少なくとも1つの金属/金属合金領域と、可視(400−700nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)において吸収開始を有する少なくとも1つの半導体領域とを含む、光活性化ハイブリッドナノ粒子を提供する。
【0013】
いくつかの実施例においては、少なくとも1つの半導体領域は、420nmから3μmの範囲において吸収開始を有する。
【0014】
いくつかの他の実施例においては、少なくとも1つの半導体領域は、450nmから3μmの範囲において吸収開始を有する。
【0015】
いくつかの他の実施例においては、少なくとも1つの半導体領域は、470nmから3μmの範囲において吸収開始を有する。
【0016】
さらなる他の実施例においては、少なくとも1つの半導体領域は、500nmから3μmの範囲において、吸収開始を有する。
【0017】
本発明に従って、光触媒に使用されるナノ粒子が、ナノ粒子の半導体材料のバンドギャップエネルギを超えるエネルギを有する光源を用いて照射(照光)されるとき、電子および正孔は、例えば、金属/半導体境界面で、または、所定の実施例においては2つの接触している半導体サブ領域の境界面で、電子−正孔対の形状で形成される。当分野の当業者であれば認識されるように、「金属/半導体境界面」またはその範囲に関し、本明細書に開示および記載されるナノ粒子の2つの領域またはサブ領域間の境界面は、合成中に金属が成長する半導体結晶面上の領域、または、他の半導体材料と接触する半導体表面の領域からなる。次に、半導体の上記領域は、他の機能性に対して、および/または、溶媒分子からブロックされる。物理的観点から、境界面は、平衡状態の時、(金属および半導体、または、2つの異なる半導体材料の)2つのFermi準位が等しくなるポイントである。
【0018】
ナノ粒子の例示的な1つの構造についてのスキーム1に示されるように、一旦形成されると、電子と正孔は電荷分離され、この段階で、それらは、隣接する電子アクセプタ分子と電子ドナー分子と相互作用することによって、本明細書で「光触媒反応」として呼ばれる各種反応を生じさせることができる。正孔は、一般的に、酸化力を有するので、光触媒として作用するナノ粒子は、例えば光活性化によって、電子および正孔が形成されている限り、酸化還元(redox)反応を触媒することができる。このプロセスでナノ粒子が消費されず、開示される光誘導プロセスを受けるためのその能力が失われないので、ナノ粒子の機能は、光源の存在、または、電荷を保持して光のないプロセスでも受けるためのその能力に依存している。
【0019】
スキーム1:一般的かつ例示的なイラストは、金属/半導体ハイブリッドナノ粒子の光触媒活性を示す。この活性は、電子−正孔対を形成するフォトンによって開始され、電荷キャリアの1つは半導体にとどまり(この例においては、ナノ粒子の中心の細長部分)、他は金属に移動し(この例においては、細長部分の端部の領域の1つ)、特定の実施例においては、酸化還元試薬と反応することが可能である。
【0020】
一般的に、光触媒として使用されるナノ粒子は、ここでの目的のため、2つのグループに分けてもよい:当分野で周知なナノ粒子と、本発明によるナノ粒子。
【0021】
いくつかの実施例においては、ナノ粒子は、少なくとも1つの金属/金属合金領域と、可視(400−700nm、いくつかの実施例においては、420以上、450以上または500nm以上)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)における吸収開始を有する少なくとも1つの半導体領域と、を具え、前記ナノ粒子は照射(照光)のとき、所定の実施例においては、ナノ粒子は細長形状を有し、ナノ粒子は、参照することで本明細書に組み込む[15]:国際公開公報WO05/075339またはその米国出願に開示されるように調製可能である。しかしながら、規定されたナノ粒子の形状およびサイズは、ナノ粒子の光活性があるように、細長構造に単純に依存せずに、変化する。
【0022】
いくつかの実施例においては、本発明のナノ粒子は、少なくとも1つの半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、上記2つの金属/金属合金領域の各々は、異なるまたは同一の金属/金属合金材料(すなわち、各々の、異なるまたは同一のFermiポテンシャルを有する)。
【0023】
いくつかの実施例においては、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々は、異なる金属/金属合金材料(異なるFermiポテンシャルを有する)である。
【0024】
いくつかの実施例においては、2つの金属/金属合金は、同一金蔵/金属合金材料である。
【0025】
他の実施例においては、本発明のナノ粒子は、少なくとも2つの半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々は、異なる又は同一の金属/金属合金材料(すなわち、それぞれ異なる又は同一のFermiポテンシャル)であり、前記少なくとも2つの半導体領域の各々は、異なるエネルギギャップおよび/または異なるエネルギバンド位置を有する。
【0026】
いくつかの実施例においては、少なくとも2つの半導体領域は、少なくとも1つの金属/金属合金領域によって離間される。
【0027】
他の実施例においては、前記少なくとも2つの半導体領域は、1又はそれ以上の金属/金属合金領域によって離間され、従って、本明細書では「サブ領域」と呼ぶ。これらの2又はそれ以上の半導体は、各々異なる半導体材料である。
【0028】
本発明の文脈内において、用語「材料」は、ナノ粒子またはその1つの領域が構成される固体物質を意味する。前記物質は、例えば、元素、合金、酸化形態、あるいは、上記物質の混合体など、1つの物質から構成される。
【0029】
本発明のナノ粒子または本発明の方法によって使用されるナノ粒子は、以下に記載されるように、不連続のエンティティであり、その次元の少なくとも1つ(例えば、直径、長さなど)は、1〜20nmである。長さが400nm、好ましくは200nm未満、ロッド用構造を有することもできる。さらに、ナノ粒子は、以下で詳述するように、全体寸法中の数ミクロンのナノ−ネットワーク形態の形状でもよい。ナノ粒子の全体形状は、球形またはディスク様であり、より大きなサイズは、球形またはディスクの直径である。
【0030】
上述した内容に制限されず、ナノ粒子は、あらゆる形状および対称性を有することができ、分岐した構造およびネット構造を示すことができる。限定するものではないが、ナノ粒子は、対象または非対称でもよく、ロッド形態、円(球形)、楕円、ピラミッド状、ディスク様、ブランチ、ネットワークを有するように、細長でもよい。
【0031】
用語「粒子」の使用は、予め規定された特定の形状を示唆するものではない。構造および対称性、形状およびある程度のサイズにおける変化の観点から、本発明のナノ粒子は、互換可能に「ナノ構造」と呼ぶことができる。
【0032】
いくつかの実施例においては、ナノ粒子は、細長ロッド様形状を有するナノロッドである。
【0033】
いくつかの他の実施例においては、ナノロッドは、1または両方の端部で、金属または金属合金領域を有する半導体金属から構成される。
【0034】
本明細書に使用されるように、用語「領域」は、その化学組成物によって規定されるナノ粒子の連続的セグメントを言う。これらの領域は、例えば、金属/金属合金領域によって規定される半導体領域など、異なる材料の領域によって規定されてもよく、あるいは、ナノ粒子の端部を規定する末端領域でもよい。従って、半導体領域は、半導体材料から構成される一部であり、金属/金属合金領域は、金属、金属合金またはあらゆる比率でのその組み合わせから構成される。各領域は、さらに「サブ領域」にセグメント化され、各々は、異なる種類の半導体材料または金属/金属合金材料から構成される。例えば、半導体領域は、共通の境界面を有する2またはそれ以上のサブ領域にセグメント化されてもよく、各々は異なる半導体材料から構成される。サブ領域が単一の半導体領域(または他の実施例においては金属/金属合金領域)であるので、サブ領域は、互いに接触し、連続し(すなわち、共通の境界面を有し、厚さまたは組成物の区分的領域がなく)、サブ領域または金属/金属合金領域(または半導体領域)の領域によって規定される。
【0035】
他の実施例においては、ナノ粒子は、その上に離間した少なくとも1つの金属/金属合金材料の領域を有する、半導体材料の連続面の形態にある。半導体材料の連続面は、ナノスフィア、ナノロッドまたは他の形状−規則または不規則−ナノ構造の表面である。一実施例においては、ナノ粒子は、少なくとも1つの半導体から構成されるナノロッドであり、その表面は、1又はそれ以上の離間した、少なくとも1つの金属/金属合金のアイランドまたはドットでスポットされる。各々の上記アイランドは、同一または異なる金属/金属合金材料からなってもよい。別の実施例においては、ナノロッドは、その端部の1つにおいて、金属/金属合金領域を有し、離間したその半導体表面において、金属/金属合金アイランドまたはドットを有し、当該アイランドまたはドットは、単一材料から構成されても、あるいは、そうでなくてもよい、若しくは、金属/金属合金として同一材料からなっていても、なっていなくてもよい。
【0036】
さらなる実施例においては、ナノ粒子は、少なくとも1つの金属/金属合金材料の少なくとも1つの領域(アイランドまたはドットの形態)をその表面において有するナノロッドの形態である。いくつかの実施例においては、ナノロッドは、その表面において、同一または異なる金属/金属合金材料の複数の離間した金属/金属合金領域を有する。
【0037】
他の実施例においては、前記少なくとも1つのナノ粒子は、本明細書ではナノ粒子の集合として呼ぶ、複数の上記ナノ粒子である。これらのナノ粒子の集団は、サイズ分布、形状分布および/または空間構成、すなわち、半導体金属表面の半導体領域および/または金属/金属合金領域に関連した空間分布を有することを特徴とする。
【0038】
上述したように、本発明によって使用されるナノ粒子は、少なくとも2つの異なる領域を具える:1つの領域は半導体材料からなり、第2の領域は金属/金属合金材料からなり、電子−正孔対は、金属/半導体境界面に近接している半導体領域で形成され、電荷分離が続く。電子アクセプタおよび正孔アクセプタの存在下で、電子及び正孔は、独立してそれぞれのアクセプタに送られる。従って、金属/金属合金材料が選択され、金属のFermiエネルギレベルの調整よって、サイズ、組成および形状による半導体のバンド構造の調整が、電荷キャリア(電子または正孔)を金属に送り、半導体に残る制御を可能にする。金属/金属合金は、光化学反応を各自にする触媒活性を提供する。
【0039】
本発明のナノ粒子は、2またはそれ以上の少なくとも1つの金属/金属合金材料の異なる領域を有するように構成され、各々の領域は、半導体の領域(または複数の領域)によって他方と離れ、電荷分離は、ナノ粒子の複数の領域で生じる。
【0040】
上記の実施例においては、2以上の金属/金属合金領域が存在するところで、第1の前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料は、第2の前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料と同じでもよい。いくつかの実施例においては、第1の前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料は、第2の前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料と異なる。
【0041】
いくつかの別の実施例においては、2以上の金属/金属合金領域がある場合、第1および第2の金属/金属合金材料の各々、ならびに、さらなる前記2以上の金属/金属合金領域の金属/金属合金材料は、異なるFermiポテンシャルを有し、これによって、電荷分離が促進される。
【0042】
異なるFermiポテンシャルの金属/金属合金対の非限定的な実施例は、金およびパラジウム;白金およびパラジウム;銀および金;銀および白金;ならびに銀およびパラジウムである。銅、鉄、ならびに、マンガン、コバルト、ルテニウムなどの遷移金属が使用されてもよい。
【0043】
いくつかの実施例においては、異なるFermiポテンシャルを有する金属/金属合金材料は、金およびパラジウムであり、Fermiエネルギの高い金は、電子アクセプタとして作用し、Fermiエネルギの低いパラジウムは、ナノ粒子の正孔アクセプタとして作用する。
【0044】
所定の実施例においては、本発明のナノ粒子が半導体材料の2又はそれ以上の領域を有するように構成され、各々の前記2以上の領域が、同じ半導体材料(例えば、複数の金属/金属合金領域がそれらの上に堆積される)でもよく、複数の同様の電荷分離反応が、ナノ粒子に亘って行われる。
【0045】
いくつかの代替の実施例においては、半導体材料の領域は、異なる半導体材料のサブ領域を有する1つの連続領域の形態でもよく、各々の半導体材料は、構成、ならびに、バンドギャップおよび電子バンドアライメントにおいて、他のものとは異なる。非限定的な一実施例においては、本発明のナノ粒子は、2つの半導体サブ領域から構成され、「タイプII(スタッガード;staggered)」半導体境界面を形成し、ここで、1つのサブ領域の1つの半導体の価電子帯(valance band)と伝導バンドアライメントの両方は、他のサブ領域の半導体アライメントよりもエネルギー的に高い。このようなナノ粒子構成において、電子および正孔は、異なる半導体領域に分けられ、続いて、金属/金属合金アイランドに分けられる。
【0046】
さらに他の実施例においては、ナノ粒子は、第1の端で、Fermiポテンシャルの高い金属/金属合金材料の第1の金属/金属合金領域と、第2の端で、Fermiポテンシャルの低い金属/金属合金材料の第2の金属/金属合金領域とを有するナノロッドであり、前記第1の端と第2の端との間の細長領域が、半導体材料の2つのサブ領域にセグメント化され、伝導帯エネルギの低い前記半導体材料の第1のサブ領域は、前記第1の金属/金属合金領域と接触し、前記第1のサブ領域の前記半導体材料のものよりも高く、前記第2の金属/金属合金領域の前記第2の金属/金属合金のFermiポテンシャルよりも低い前記半導体材料の第2のサブ領域は、前記第2の金属/金属合金領域と接触する。以下のスキーム2において概略的に明確に示すために、この構成は効率的な電荷分離を確実にする。
スキーム2:4領域ナノ構造における正孔および/または電子のカスケード。図示されるように、半導体材料の伝導帯からFermiエネルギの高い(まだバンドギャップ内にある)において電子はカスケードし、正孔は、価電子帯に対するFermiエネルギの低い(まだバンドギャップ内)の金属/金属合金において、カスケードする。
【0047】
1又はそれ以上の半導体領域は、通常、可視(visible)、可視および近赤外領域または3μmよりも深い赤外線における各々の吸収開始(absorption onset)を有する。半導体材料のいくつかは、UV範囲においても吸収する能力を有することができ、本発明のナノ粒子に使用された半導体材料は、UV範囲において単に吸収されない。
【0048】
理論に拘束されなければ、異なる半導体材料は、異なるバンドギャップエネルギを有し、従って、異なる最適波長吸光度を有する。上記半導体のナノメートル粒子は、粒子サイズの関数として異なる調整可能な波長において、および、一般的にバルク材料からより短い波長において吸収し、使用されるナノ粒子の半導体材料は、照射波長、あるいは、特定の方法または特定の用途において使用する意図の波長の組み合わせに従って選択されるべきである。ナノ粒子のいくつかの集合を使用することができ、半導体材料/サイズおよび吸光度範囲の各々は、広域光スペクトル領域を超えて、効果的な反応を可能とする。半導体材料を変化させることで、バンドギャップおよびバンドオフセットを調整可能にし、ナノ構造によって利用可能な波長領域を拡張し、例えば、酸化還元プロセスなどのバンド位置を調整可能とする。
【0049】
従って、半導体材料は、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、HgS、HgSe、HgTeおよびこれらの合金(CdZnSeなど)などの群II−VIの元素、InAs、InP、GaAs、GaP、InN、GaN、InSb、GaSb、AlP、AlAs、AlSbおよびInAsP、CdSeTe、ZnCdSe、InGaAsなど群III−Vの元素、PbSe、PbTeおよびPbSおよびその合金などIV−VI群の元素、InSe、InTe、InS、GaSeおよびInGaSe、InSeSなどの合金など群III−VI、SiおよびGeおよびこれらの合金など群IV半導体、および、複合体構造およびコア/シェル構造における上記の組み合わせ、から選択される。いくつかの実施例においては、本発明のナノ粒子は、群II−VI半導体、その合金およびこれらから製造されるコア/シェル構造から選択される半導体材料を具える。更なる実施例においては、群II−VI半導体は、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、これらの合金、これらの組み合わせ、および、これらのコア/シェル、コアマルチシェル層構造である。
【0050】
いくつかの実施例においては、半導体材料は、TiO2以外である。
【0051】
金属/金属合金材料は、通常、遷移金属である。これらの非限定的な例は、Cu、Ag、Au、Pt、Co、Pd、Ni、Ru、Rh、Mn、Cr、Fe、Ti、Zn、Ir、W、Moおよびこれらの合金である。
【0052】
いくつかの実施例においては、金属はAu、PdおよびPtおよびこれらの合金である。
【0053】
更なる実施例においては、金属は、Au、PdおよびPtならびにその合金であり、前記少なくとも1つの半導体材料は、CdS、CdSeまたはCdTeである。
【0054】
光化学反応を触媒するために、1つならびに複数のナノ粒子を使用してもよい。ナノ粒子の集合は、ナノ粒子のコレクション(ブレンド)として特徴付けられ、各々が本明細書に開示されるように特徴付けられてもよく、集合は、化学的処理可能性および/または所定の分布の少なくとも一方を有するように更に特徴付けられる。いくつかの実施例においては、ナノ粒子の集合は、化学的処理可能性および所定の分布の両方を有するように特徴付けられる。
【0055】
ナノ粒子の集合の化学的処理可能性は、同一性(homogenous)または所定の分布(distribution)が求められる媒体においてナノ粒子の制御された分布を得るために、ナノ粒子表面を操作、化学的に修飾、および、処理する能力を意味する。上記媒体は、水性溶液、非水性溶液を含む液体媒体、ゲル、または、ポリマ、フィルム、電極および各種他の表面または、これらの混合物などの固体媒体、を具える。
【0056】
いくつかの実施例においては、分布は、集合(aggregate)形態である。他の実施例においては、分布は、非集合型ネット様分布形態である。
【0057】
上述したように、本発明のナノ粒子は、相対的に狭いサイズの分布を有し、すなわち、それらは、相対的に狭い範囲のサイズで製造される。実際、粒子サイズの標準偏差(シグマ)は、通常、25%未満である。いくつかの実施例においては、粒子サイズの偏差は、15%未満である。ナノ粒子が細長部(ナノロッド)である場合、1つの集合の長さのシグマは35%未満であり、幅のシグマは15%未満である。
【0058】
狭いサイズ分布は、1又はそれ以上の以下の利点を有するナノ粒子の同一性集合の設計を可能にする:
a)上記集合を使用する光触媒反応の再現性、
b)アレイにおける簡素化された配列およびアッセンブリ、および/または、
c)太陽エネルギを利用するのに最適化された吸収、および、皮下触媒活性を最適化するバンドアライメントを含む電子特性を調整する能力。
【0059】
いくつかの実施例においては、ナノ粒子の集合は、当該集合が相対的に同一サイズおよび/または形状のナノ粒子を具えるような同一性がある。
【0060】
他の実施例においては、ナノ粒子の集合は、2またはそれ以上の異なる集合のブレンドであり、各々は、異なるサイズ(またはサイズ分布)および/または形状のナノ粒子を有する。
【0061】
所定の用途に関して、集合を構成するナノ粒子のサイズおよび形状を変化させるだけでなく、ナノ粒子の化学的組成およびナノ粒子に亘って半導体および金属/金属合金領域の配列を変化させるのが望ましい。従って、いくつかの実施例においては、ナノ粒子の集合は、1又はそれ以上の以下の種類/グループのナノ粒子のブレンドである:
1)所定のサイズ分布のナノ粒子;
2)所定の形状のナノ粒子;
3)1つの金属/金属合金領域および1つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上のサブ領域を有する)を有するナノ粒子;
4)少なくとも2つの金属/金属合金領域および1つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上のサブ領域を有する)を有するナノ粒子;
5)1つの金属/金属合金領域および少なくとも2つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上の各々のサブ領域を有する)を有するナノ粒子;
6)少なくとも2つの金属/金属合金領域および少なくとも2つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上のサブ領域を有する)を有するナノ粒子;
7)少なくとも2つの金属/金属合金領域および少なくとも2つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料からなる1又はそれ以上のサブ領域を有する)を有するナノ粒子であって、ナノ構造に亘った領域またはサブ領域の配列(シークエンス)は、1つの集団と別の集団では異なる;
8)特定の波長においてのみ、または、所定の波長または波長の範囲においてのみ、光触媒活性されるナノ粒子;
9)本明細書に記載されるように、光活性化を受けないナノ粒子。
【0062】
ナノ粒子の集合は、1又はそれ以上の上記タイプのナノ粒子を混合することによって得ることができる。代替としては、ヘテロ集合は、例えば、非化学量論的な開催材料などを使用することによって調製可能である。各々のグループのナノ粒子は別々に製造され、将来使用するために保存できる。当分野の当業者であれば理解されるように、ナノ粒子の上記群の各々は、実質的に均一または同一性のある状態で調製可能である。しかしながら、例えば、製造プロセス、開始材料の純度および他の因子などと関連のあるランダムな欠陥によって、サイズ、形状、化学的組成および他のパラメータにおける欠陥を有するナノ粒子の程度は、各々の上記タイプのナノ粒子で見つけることができる。上記欠陥の存在は、本明細書で開示される特徴の1つ、特に、その光触媒活性に必ずしも影響を与えないことを理解されたい。
【0063】
ナノ粒子の集合は、ナノ粒子の周知の所定の比率において、上記種類の1又はそれ以上のナノ粒子のブレンドを具えるか、あるいは、上記ナノ粒子のランダム混合物を具えることができる。非限定的な例においては、ナノ粒子の集合は、サイズおよび形状の大きな多様性を有し、1つの金属/金属合金領域および2つの半導体領域(選択的に、異なる半導体材料の1又はそれ以上のサブ領域を有する)から構成されるナノ粒子を具える。別の実施例においては、ナノ粒子の集合は、異なる形状および異なる化学組成のナノ粒子を具えてもよい。さらに別の実施例においては、集合は、細長構造の一端又はその両端で、少なくとも1つの金属/金属合金領域を有するナノロッド、および/または、細長ナノ構造の中心非末端部分の少なくとも1つの金属/金属合金領域のブレンドを具える。
【0064】
さらに、本発明による、あるいは、本発明の1つの方法で使用される1つのナノ粒子、および、本出願の範囲外の少なくとも1つのタイプのナノ粒子、を具えるナノ粒子集合が、さらに、本明細書で提供される。本明細書に記載されるようにナノ粒子および当分野で周知なナノ粒子の上記混合集合は、本明細書で開示される1つの用途に適した有利な効果を有することができる。
【0065】
以下でさらに検討しているように、異なるナノ粒子集合のブレンドを提供する能力を有することによって、材料の光学特性を調整することができ、従って、効果的に全範囲の波長を使用することができる。金属組成物およびサイズに関する代替(alternation)は、Fermi準位エネルギおよびナノ構造の酸化還元ポテンシャルを微調整することができる。異なる形態は、多種多様なデバイスの制御および設計を可能にする。
【0066】
以下でさらに 示すように、本発明のナノ粒子は、本明細書で「ナノネット」と呼ぶネット状配列を形成することができ、例えば、図11b、11cおよび11dに示すように、個々のナノ粒子は、1つのネット状構造を形成するように互いに協力に相互作用することができる。ナノネット構造において、半導体セグメントは、共有結合で融合され、セグメント間において、強力な結合が生じ、面は、金属アイランドで装飾(decorate)される。
【0067】
ナノネット構造は、ナノ粒子の単なるランダム集合またはコレクションを意味しない構造となることが強調される。このようなナノ粒子のランダム集合またはコレクションは、3次元構造のランダム集合に起因して、個々のナノ粒子の表面積のブロッキング(一部または全体)に起因する低い全面積を有するものとして特徴付けられる。上記集合は、より小さな集合または個々のナノ粒子に対してより厳しさの低い条件下で、安定性が低く、分解される。
【0068】
ナノ粒子のランダム集合またはコレクションとは違い、本発明のナノネット構造は、より多孔性であり、相互接続(融合)ナノ構造から構成されるより暴露した高表面積構造を有する。実際に、本発明のナノネットが検査されるとき、例えば、この構造を調整するのに使用されたナノロッドまたは球状粒子など、もともとのナノ粒子間での接触ポイントを区別するのはほぼ不可能である。
【0069】
実験が示しているように、典型的な集合において、光触媒活性は、低減されるか、または、消失してもよい。本発明のナノネットは、光触媒活性を示し、基質または膜構造上で容易に静止可能であり、光触媒反応溶液から分離されるので、光触媒についての望ましい形態である。
【0070】
従って、本発明は、ナノ粒子に由来するナノネットも提供する。ネット「アーム」の直径は、通常、1−50nmである。束になったナノネットの範囲は、数十ナノメートルスケールから数マイクロメートルまで変化可能である。
【0071】
ナノ粒子の異種性集合と同様に、ナノネットも異種性、すなわち、各種サイズ、形状、化学的組成物などのナノ粒子から構成される。
【0072】
他の実施例においては、ナノネットは、最初はナノロッドから調整される。
【0073】
さらなる実施例においては、ナノロッドは、化学的組成および/またはサイズに基づいて同一性または異種性である。
【0074】
上述したように、本発明によるナノ粒子、これらを含む集合、または、そのナノ構造は、多様な光誘導反応における光触媒として使用可能である。上記の光誘導反応は、水分解;例えば、汚染の分解を介して汚染からの水および空気の浄化;脱臭;工業的廃棄物および排気の処理;毒性の低いより環境に優しい安全な物質への染料産業からの残さなど有機汚染物の化学的変換;抗菌用途;抗雲(anti−clouding)用途、および、所望の中間体または目的生成物を生成するための、あるいは、有害汚染物質を除去するための酸化還元反応を含む化学反応、のうちの1又はそれ以上でもよい。
【0075】
一実施例においては、光誘導反応は水分解である。
【0076】
他の実施例においては、水分解反応が日光によって誘導される。
【0077】
光触媒を得るために、ナノ粒子を、適宜な条件下で、少なくとも1の電荷キャリアアクセプタ(酸化還元カップリング、電極、電極/酸化還元カップリング)と接触させ、酸化還元カップリングは、溶液(例えば、液体、ゲル、ポリマなど)中の衝突を介して電荷を受け、電極への接触は、フィルム形態、または、有効な接触を保証する他の自己アッセンブル状態となる。電荷キャリアアクセプタとの接触において、ナノ粒子を含有する媒体および少なくとも1の電荷キャリアアクセプタは、紫外/可視/近赤外領域において光で照射される。ナノ粒子は、可視から近IR領域において、および選択的にUV領域においても吸収開始を有する半導体から構成されるので、照射する際の金属−半導体境界面での電荷分離は、好ましくは、可視または近赤外光でなされる。このような光は太陽光に豊富にあり、大半の省エネおよびグリーンイルミネーションは、通常の幅広いスペクトルの太陽光で直接提供可能である。
【0078】
本発明のナノ粒子は、いくつかの実施例においては、電荷の保持が可能であり、次いで、継続的な照射のない酸化還元反応において、電子アクセプタに電子を送ることができる。すなわち、ナノ粒子は、予め照射されてもよく、すなわち、1種類のみの電荷アクセプタの存在下で、反対の電荷キャリアタイプのアクセプタと接触する前に照射され、従って、励起され、電子−正孔対を形成する。次いで、キャリアの1つは、例えば、正孔アクセプタなどのアクセプタに対して伝達され、例えば、電子など反対の電荷を光触媒の特定のセグメントの上に置く。このような過剰な電荷は、十分な時間保持可能である。荷電されたナノ粒子を第2のタイプの電荷キャリアアクセプタと接触させるとき、アクセプタ分子の還元は、可視またはNIR光がないところ、また、暗所でさえも生じる可能性がある。
【0079】
CdSeナノロッドおよび金ナノ粒子のブレンドの例示的な場合において、電荷は、溶液中に金ナノ粒子に保持され、励起したCdSeナノロッドから生産的衝突を介して送られる。ストークス−アインシュタインの関係を用いて、金ナノ粒子とCdSeナノロッドとの平均的な衝突時間は、CdSeナノロッド(約10ナノ秒)中の励起時間よりも大幅に長い約1ミリ秒と推定される。しかしながら、照射溶液における有意な量のフラクションにおける正孔スカベンジャ、または、他の正孔アクセプタとしてのエタノールの存在下で、励起CdSeナノロッドからの正孔移動が可能となり、衝突中に金ナノ粒子にその過剰な電子を送る負に荷電されたナノロッドが残る。NDBsの一般的な構造を有する細長構造の場合、細長構造の両端で、金の上のよりいっそう効果的な電荷保持は、中心CdSeおよび金領域間の迅速な電荷分離に割り当てられ、特定の実施例におけるエタノールなど、正孔アクセプタによる正孔スカベンジングによってなされ、電荷キャリアの再結合を阻止する。光触媒の注意深い設計は、より効果的な活性を可能とする。
【0080】
理論に拘束されず、さらなる理解のために、NDBあたり保持電子の数を、還元されたアクセプタ分子の量および吸光度スペクトルを用いてNDB量の推定から大まかに推定したことを示した。これによって、実験した最も長い前照射(prer−irradiation)時間でのNDBあたり約50電子の平均保持を得た。このような大きな数は、電子の付加を用いて、金のチップ(tip)のエネルギを荷電する際の変化を推定することによって有理化(rationalize)可能である。金チップの電荷の蓄積は、結果的に、金属のFermi準位平衡へとなり、半導体部品は、さらに電荷分離を抑制する。
【0081】
従って、光触媒作用に関する以下の方法の1または組み合わせにおいて、NDBsなどの本発明のナノ粒子を使用することができる:
1)直接光触媒作用、すなわち、本明細書に詳述するように、酸化還元反応を直接行うための、ナノ粒子および荷電キャリアアクセプタおよびドナーを含む媒体の同時照射、および/または、
2)光のない状態(または、少なくともさらなる照射を必要としない状態)で電荷キャリアアクセプタと接触する、前照射されたナノ粒子を用いること(1種類の電荷キャリアアクセプタがあり、反対の電荷キャリアアクセプタがないとき、光に故意的に露光させることによって照射され、従って、電荷保持を示す)。
【0082】
これらの方法は、本発明の一般的な方法を使用して、光電気化学電池および光電池など、デバイスの構成要素に使用されてもよい。
【0083】
従って、本発明は、光誘導電荷分離および電荷キャリアの電荷アクセプタへの移動に関する別の側面も提供し、前記発明は、
1)本明細書に開示されるように、少なくとも1つのナノ粒子を提供するステップと、
2)前記少なくとも1つのナノ粒子を、媒体において、少なくとも1の電子アクセプタおよび少なくとも1の電子ドナー(例えば、正孔アクセプタ)と接触させるステップと、および、
3)選択的に、可視および/またはIR領域、選択的にUV領域の放射を用いて、前記少なくとも1つのナノ粒子、少なくとも1の電子アクセプタおよび少なくとも1の電子ドナーを含む媒体を照射するステップと、を含み;
これにより、少なくとも1つのナノ粒子の金属/半導体境界面における電子−正孔対の形成、続く電荷分離、前記少なくとも1の電子アクセプタおよび前記少なくとも1の電子ドナーの各々への、電子および正孔の移動を可能とする。
【0084】
この方法によって、光の存在下での電子−正孔対の形成(可視および/または近赤外および選択的に紫外も)、および、ナノ粒子中の電子−正孔対(本明細書において「電荷キャリア」と呼ぶ)の各々のアクセプタ部分に移動する電荷への分離、を可能にし:電子アクセプタに対する電子(本明細書において「電子アクセプタ」と呼ぶ)、および、正孔アクセプタに対する正孔(本明細書において「電子ドナー」または「正孔アクセプタ」と呼ぶ)。電子アクセプタ分子は、非限定的な態様において、メチレンブルー、アズールBおよびチオニンなどのアクセプタ染料;酸素;硝酸;鉄(III)化合物;マンガン(IV)化合物;硫酸塩;二酸化炭素;テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、ジクロロエテン(DCE)、および、ビニル塩化物(VC)などの塩化化合物;水;メタノールおよびエタノールなどのアルコール、および、分子のLUMO(最低未占分子軌道)がハイブリッドナノ構造のFermi準位よりも低いその他の酸化分子から選択される。
【0085】
電子ドナー分子は、非限定的な態様において、メタノールおよびエタノールなどのアルコール、水、S2−、例えばNa2S、Se2−イオンなどから提供され、例えばNa2Se、SO32−イオンから提供され、例えばNa2SO3、SeO32−イオンなどから提供され、例えばNa2SeO3などから提供されるか、あるいは、分子のHOMO(最高被占分子軌道)がハイブリッドナノ構造のFermi準位よりも高い他の還元分子から選択される。
【0086】
電子および正孔の各々のアクセプタへの移動によって、電子アクセプタ分子は還元され、電子ドナー分子は酸化され、化学的トランスフォーメーションがアクセプタまたはドナー分子で起き、その他の適用可能な利点を得る。この還元および酸化反応は、還元−酸化が必要とされる少なくとも2つの有機または無機化合物の同時に還元および酸化する反応に使用されるか、または、その他の還元および酸化を受ける犠牲用添加物の存在下で、上記化合物の少なくとも1つの還元または酸化に使用される。
【0087】
従って、本発明は、その別の態様において、第1の有機または無機化合物の少なくとも一方を還元する方法および/または第2の有機または無機化合物の少なくとも一方を酸化する方法を提供し、前記方法は、
1)本明細書に開示されるように、少なくとも1つのナノ粒子を提供するステップと、
2)前記少なくとも1つのナノ粒子を前記第1の有機または無機化合物(電子アクセプタである)の少なくとも一方、および、前記第2の有機または無機化合物(電子ドナーである)の少なくとも一方と、媒体中において、接触させるステップと、
3)選択的に、可視および/または近IR領域および選択的にUV領域における放射を用いて前記媒体(前記少なくとも1つのナノ粒子、前記第1の有機または無機化合物の少なくとも一方、および、前記第2の有機または無機化合物の少なくとも一方を含有する)を照射するステップと、を含み;
これにより、前記第1の有機または無機化合物の少なくとも一方の還元、および/または、前記第2の有機または無機化合物の少なくとも一方の酸化が可能となる。
【0088】
本発明の別の態様において、水素を光触媒的に生成する方法が提供され、当該方法は、本明細書に開示されるように、少なくとも1つのナノ粒子を含む水性媒体、および選択的に、少なくとも1つの他の電荷キャリアアクセプタを、可視および/または近IR領域、および選択的にUV領域における光を用いて照射するステップを具え、前記光は選択的に太陽光であり、水分解後に水素を得る。
【0089】
さらに、水または空気における少なくとも1の汚染物質を分解する方法が提供され、当該方法は、
1)少なくとも1つの汚染物質を含有する媒体に、規定されるように少なくとも1つのナノ粒子を誘導するステップと、
2)可視および/または近IR領域および選択的にUV領域における光で前記媒体を照射するステップと、を含み、これにより、前記少なくとも1つの汚染物質に還元または酸化を生じさせる。
【0090】
半導体CdS粒子、金属(Pt)で堆積されたものの統計的に10%のみを使用するBao et al[6]によって報告される光触媒方法とは異なり、本発明の方法は、少なくとも1つの金属/金属合金領域と、可視(400−700nm、いくつかの実施例において、420、450、500nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)における吸収開始を有する半導体材料から構成された少なくとも1つの半導体領域と、の少なくとも2成分構造を有するハイブリッドナノ粒子を使用する。
【0091】
さらに、Bao粒子[6]と対照的に、本発明の方法によって使用されるナノ粒子は、高い化学的処理可能性を示し、上述したように所定の分布で製造され、非ナノワイヤ配列においてさえ光活性がある。さらに、本出願は、可視範囲およびそれを超えて照射可能にする一方で、Baoは、500、好ましくは450nm(青色)より短い波長の光についてのCdS限定バンドギャップに限定される。
【0092】
本発明の方法によって使用されるナノ粒子は、可視および/またはNIR領域における放射を用いて照射するときに、金属/半導体境界面での電子−正孔対を形成することができ、これに続いて、電荷分離が生じる。細長ロッド様形状などの例は、参照することで組み込まれる国際特許出願公開公報WO05/075339[15]に開示されている。
【0093】
いくつかの実施例においては、少なくとも1つのナノ粒子は、細長形状である。他の実施例においては、少なくとも1つナノ粒子は細長ではない。
【0094】
いくつかの実施例においては、使用される少なくとも1つのナノ粒子は、少なくとも1つの半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、前記2つの金属/金属合金領域の各々は、異なるまたは同一の金属/金属合金材料である(すなわち、異なるまたは同一のFermiポテンシャルをそれぞれ有する)。
【0095】
いくつかの実施例においては、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々は、異なる金属/金属合金領域(異なるFermiポテンシャルを有する)である。
【0096】
いくつかの実施例においては、2つの金属/金属合金は、同一の金属/金属合金材料である。
【0097】
他の実施例においては、本発明の1つの方法によって使用されるナノ粒子は、少なくとも2つの半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々は、異なるまたは同一の金属/金属合金材料(すなわち、異なるまたは同一のFermiポテンシャルをそれぞれ有する)であり、前記少なくとも2つの半導体領域の各々は、異なるエネルギギャップおよび異なるエネルギバンド位置を有する。
【0098】
いくつかの実施例においては、前記少なくとも2つの半導体領域は、少なくとも1つの金属/金属合金領域によって離間される。
【0099】
他の実施例においては、前記少なくとも2つの半導体領域の各々は、異なる半導体材料であり、前記領域は、金属/金属合金領域によって離間されない。
【0100】
本発明の方法のいくつかの実施例においては、前記少なくとも1つのナノ粒子はナノロッドである。
【0101】
さらなる実施例においては、ナノロッドは第1の金属/金属合金領域をその端部の1つ、および、他の端部に第2の金属/金属合金領域を有するNDB形状であり、第1および第2の金属/金属合金領域は、化学的組成が互いに異なり、すなわち、Fermiポテンシャルが異なる。
【0102】
さらなる実施例においては、NDBは、ナノ構造の細長セグメントにおいて、少なくとも1つの付加的な金属/金属合金領域を有する。
【0103】
いくつかの実施例においては、少なくとも1つのナノ粒子は、粒子の集合である。
【0104】
いくつかの他の実施例においては、ナノ粒子の集合は、同一性があり、すなわち、1つの種類のナノ粒子を含むか、あるいは、異種性があり、すなわち、ナノ粒子のブレンドを含む。
【0105】
さらなる実施例においては、規定されるようにナノ粒子の集合を、水性、有機またはこれらの混合物でもよい媒体において、前記少なくとも1の電荷キャリアアクセプタまたは少なくとも1の電荷キャリアドナーと接触させる。いくつかの実施例においては、本発明の方法は、少なくとも1の電子ドナー分子を具える水溶液で行われる。
【0106】
電子および正孔のそれぞれのアクセプタに対する各々の移動について、ナノ粒子、集合(aggregate)、ナノネットまたはその他のこれらの集合を、媒体において、電子および正孔アクセプタと接触させなければならない。本発明の文脈において、用語「接触」またはその言語的変形は、前記少なくとも1のナノ粒子と前記少なくとも1のアクセプタ分子との間における電荷移動を可能にするように、前記少なくとも1のアクセプタ分子および前記少なくとも1のナノ粒子を集めることを意味し、これによって、アクセプタ分子(電子アクセプタまたは正孔アクセプタ)の還元または酸化を確実になされる。1またはそれ以上のナノ粒子と、1又はそれ以上のアクセプタ分子との接触は、溶液に溶解されたアクセプタ分子と、電極(バイアスあり、または、なし)の一部として構成されるナノ粒子と、なされ、マトリックス中に固定され、モノ−またはマルチ層状のフィルムに堆積し、および/または、媒体に自由に分布する。いくつかの用途に関して、アクセプタ分子およびナノ粒子は、同じ物理または化学環境であり、すなわち、例えば、マトリックス中に固定され、層として堆積される。
【0107】
他の実施例においては、本発明は、使用されるナノ粒子集合や、得られる化学的トランスフォーメーションと無関係に、日光の下で実施される。
【0108】
本明細書で提供される開示によって当分野の当業者が理解されるように、ハイブリッドナノ粒子は、多様な光誘導化学トランスフォーメーションにおいて光触媒として使用可能である。先行技術より優れた光触媒として本発明のハイブリッドナノ粒子を使用する利点がいくつかある。
【0109】
第1に、ナノ粒子の集合は、特定の光誘導プロセス[13]を必要とされるので、そのバンドギャップおよびバンド−オフセットを調整(tune)するように半導体を選択することによって、適応させることができる。量子閉じ込め効果は、半導体領域のサイズを調整することによって使用可能であり、ギャップおよびバンド位置をシフトして特定の光触媒プロセスに適合させることができる。これによって、広いスペクトル範囲が、太陽エネルギを効率的に利用可能となり、粒子、金属(または金属合金)および酸化還元カップリング間のバンドオフセットを調整可能となる。さらに、ヘテロ構造ナノ粒子およびロッドを調整することができ、電荷分離に有用なエネルギ構成(landscape)を提供し、競合再結合プロセスを制限する。
【0110】
第2に、金属/金属合金は、触媒活性を促進し、エネルギレベル位置を調整し、光誘導プロセスを可能とするように、選択され、使用されることができる。
【0111】
第3に、ナノメートル粒子は多くの反応中心を提示する高表面積を有し、従って、その効率を潜在的に増大させる。
【0112】
第4に、ナノ粒子は、表面操作およびリガンド交換[14]を介して、化学的に利用可能であり、水を含む有機溶液または極性溶液に可溶化可能であり、モノ−あるいはマルチ−層状フィルムとして堆積されるか、あるいは、例えば、電極における表面に結合され、光触媒の用途および上述の他の用途において、幅広いフレキシビリティを提供する。
【0113】
本発明のナノ粒子によって触媒化される光触媒反応の非限定的な例は、水分解、汚染物質からの水および空気の浄化、染料工業からの残さを毒性の低い環境に優しい物質にするなど有機汚染物質の化学トランスフォーメーション、および、所望の中間体または目的生成物の生成、あるいは、有害汚染物質の除去についての酸化還元反応を含むその他の一般的な化学反応、である。本発明のナノ粒子を使用する光触媒反応の種類は、ナノ粒子またはナノ粒子集団(同一性/異種性)および使用される酸化還元カップリングに依存している。半導体の伝導帯および価電子帯のエネルギバンドアライメントおよび金属のFermiエネルギは、使用可能な酸化還元カップリングの特異的なウィンドウを決定する。
【0114】
いくつかの実施例においては、本発明の方法は、水分解プロセスにおいて水素ガスを生成する光触媒の方法として使用される。このような実施例においては、本発明の方法は、光電気化学電池で実施されてもよく、電荷キャリアアクセプタは、電極および酸化還元カップリングの形態である。
【0115】
さらなる実施例においては、本発明の方法は、電極の形態において電荷キャリアを使用する所定の実施例において、光−電圧生成に使用される。このような実施例においては、本発明の方法は、太陽電池デバイスで実施可能である。
【0116】
更なる実施例においては、本発明の方法は、回路に電流を生成するのに使用されるか、または、例えば、バッテリに貯蔵可能な電気エネルギを生成するのに使用される。これらの実施例においては、本発明の方法は、光電気化学電池において実施可能であり、電荷キャリアアクセプタは、電極および酸化還元カップリングの形態である。
【0117】
本発明は、その別の側面において、本発明による少なくとも1のナノ粒子を具えるデバイスを提供する。デバイスなどの非限定的な例は、太陽電池、光電気化学太陽電池、汚染物質の光触媒処理用デバイス、および、化学反応に関する光触媒用デバイスである。これらのデバイスは、1つの電池またはそのアレイとして使用可能である。
【0118】
本発明のデバイスは、本明細書に定義されるように、ナノ粒子の集合を具えてもよい。
【0119】
一実施例においては、本発明のデバイスは、例えば、I−/I3−など、電極間に挟まれた電解質液を有する構成として提供される場合、負極および正極、および選択的にゲート電極を具える1つの特定構造における電極配列を含む光電気化学電池である。このような構成においては、本明細書に開示されるように複数のナノ粒子が、例えば、負極など2つの電極の一方に堆積され、各々の前記ナノ粒子の少なくとも1の金属/金属合金領域は、前記電極と接触し、半導体領域は、電解質に晒される。電池、または、ナノ粒子を堆積した電極コンポーネントの照射に際し、ナノ粒子は、本明細書に開示されているように、一連のイベントを受け、負極および正極に亘って起電力を生成する。
【0120】
いくつかの実施例においては、前記電極の一方または両方はITOである。他の実施例においては、前記電極の一方または両方は透明電極である。
【0121】
光電気化学電池は、化学反応の光電気誘導に使用されてもよい。このような電池は、汚染物質分解の光電気誘導、1又はそれ以上の有機および/または無機化合物の還元および/または酸化、少なくとも1つの犠牲化合物があるとき、または、ないときの水分解、および、他の化学トランスフォーメーションに使用される。
【0122】
別の実施例においては、本発明のデバイスは、特定の構成において、2つの電極間に配置されたハイブリッドナノ粒子の自己アッセンブル層を有する2つの電極を含む光電池であり、層のナノ粒子の各々の異なる領域は、異なる電極、すなわち、一方の電極に対する金属/金属合金領域、および、他方の電極に対する半導体領域と接触させられる。光吸収後、電荷分離は、一連のイベントに続いて起こり、2つの電極間に電流を形成する。
【0123】
いくつかの実施例においては、前記電極の一方または両方はITOである。他の実施例においては、前記電極の一方または両方は透明電極である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
本発明を理解し、実際にどのように本発明が実施されるかをみるために、ここで、特定の実施例を、添付の図面を参照しながら非限定的な例として記載する。
【図1】図1は、ナノダンベルとして構成される本発明のナノ粒子による光吸収を一般的に示す。図示されるように、電極および正孔対は、例えば、金属領域に対する電子、および、半導体領域に対する正孔対あるいはその逆など、ナノ粒子の異なる領域を分け、有機または無機化合物の酸化還元を可能にする。
【図2A】図2Aは、光生成された電子−正孔対が分かれているナノダンベルにおける光誘導電荷分離機構を概略的に示している本発明の実施例であり、電子は、金チップに存在し、正孔はCdSeナノロッドに存在する。さらに、このスキームは、スカベンジャに対する正孔の移動、および、金チップからの電子移動における、例示的な分子、メチレンブルー、MBの還元を表している。挿入図は、CdSeと金の間のエネルギバンドアライメントを示している。
【図2B】図2Bは、水溶液中で合成されたCdSe−AuハイブリッドナノダンベルのTEM画像を示す。
【図3】図3は、水溶液中に成長した金チップに対する約22×4nmナノダンベルについての金チップのサイズ分布を示す。
【図4】図4は、励起ピークが維持されている、クロロホルム溶液中のCdSeロッド(約38×4nm)(一番下の線)、水溶液中の同一のナノロッド(真ん中の線)の吸光度スペクトル、および、励起特徴部はなくなっている(スペクトルは、簡略化のため、垂直方向にシフトされている)、水溶液中でそれらの上で金チップを成長させた後の吸光度スペクトル(一番上の線)を示している。
【図5】図5は、真っ暗な条件において、成長したナノダンベルのTEM画像を示す。金の成長は、光がなくてもみられる。この分析に使用されるTEMグリッドを、疎水性炭素コーティンググリッドであり、結果として、ナノダンベルは、堆積および溶媒蒸発の際、集合した。
【図6】図6は、金の還元に際し、CdSeの犠牲的なエッチングによりロッド長が明らかに短縮している、同一ナノロッドからのCdSe−Auナノダンベル、および、水溶液中のCdSeナノロッドテンプレートの長さ分布を示す。
【図7】図7は、CdSe−Auナノダンベル(約40×4nm)のTEM画像を示す:532nmレーザを用いた照射30分前の図7A、および、照射後30分の図7Bは、照射後の粒子の同様の形態を示している。緩衝液の存在は、TEMグリッド上で集合を生じさせ、低減したコントラストを生じさせる。
【図8A】図8Aは、MBの二重ピーク吸光度特徴部がはっきりしているMB−ナノダンベル溶液の吸光度スペクトルセットを示しており、各々スペクトルは、MBの添加前、532nmの粒子溶液における異なる前照射時間に対応している。
【図8B】図8Bは、前照射時間に対するCdSeナノロッド−金ナノ粒子混合体(オープン青色三角形)およびハイブリッドCdSe−Auナノダンベル溶液(オープン黒色四角形)によって還元される、MB染料の標準化濃度を示している。ナノ粒子における高効率の電荷保持が示されており、MB還元に対する活性につながる。
【図9】図9は、473nmで照射されたナノ粒子の光触媒作についての同時照射実験を要約している。4nmの金ナノ粒子とのMB混合物におけるMB染料の標準化濃度の(赤色の線)、6nmの金ナノ粒子(緑色の線)、CdSeナノロッド(青色の線)およびCdSe−Auナノ粒子(ドットおよび黒色ガイドライン)のタイムトレース。同一時間帯において、ナノ粒子は有意な光還元活性を示した(染料の61%が還元した)。
【図10A】図10Aは、MBを用いた同時照射実験であるコントロールに使用される金ナノ粒子のTEM画像を示する。図9Aは、4nm粒子であり、図9Bは6nm粒子である。
【図10B】図10Bは、MBを用いた同時照射実験であるコントロールに使用される金ナノ粒子のTEM画像を示する。図9Aは、4nm粒子であり、図9Bは6nm粒子である。
【図11A】図11A−Fは、異なるpH条件での水溶液中におけるCdSeナノロッド上でのPt成長のTEM画像を示す(スケールバー50nm)。図11Aは、pH10でのPt成長後、単離されたナノロッド。挿入図は、70×8nmの次元のもともとのロッドサンプルを示す。
【図11B】図11Bは、中間状態は、pH7で得られる。
【図11C】図11Cは、pH4は、ナノネット表面に亘ってPtが成長するナノ構造を生成する。
【図11D】図11Dは、pH4は、ナノネット表面に亘ってPtが成長するナノ構造を生成する。
【図11E】図11Eは、極めて強い酸性条件、例えばpH1で、あきらかなPt成長のない、ネットのみが形成される。
【図11F】図11Fは、異なるpH条件で成長したCdSe−Ptハイブリッドの吸収スペクトル。底部から頂部まで:水中のナノロッド、および、pH10、pH7、pH4およびpH1での白金の成長後のナノロッド。スペクトルは、明確化のために、垂直方向にオフセットされている。pH10でのハイブリッドの吸光度は、いくぶんかの励起構造を示している。
【図12】図12Aおよび12Bは、70×8nmのCdSeナノロッド状の白金ドットのサイズ分布を示す。Ptドットの平均サイズは、pH10および4で、それぞれ3.3±1.1nm、1.9±0.5nmである。図12Cおよび図12Dは、Ptドット間の最も近い隣接距離のヒストグラムを示す。平均の最も近い隣接距離は、pH10およびpH4で、それぞれ5.3±2.0nmおよび3.3±0.7nmである。200以上のナノロッドが、各ヒストグラムについて試験されている。
【図13】図13は、Pt成長の前(1)および後(2)のCdSeロッドの粉末X線回析スペクトルを示す。バルクCdSeおよびPtピークがマークされている。Ptの(111)面が分解可能である。
【図14A】図14Aは、pH10で成長した1つのCdSe−PtハイブリッドのHRTEM画像を示している。ロッドのCdSeラチスがみられる。挿入図、FFTアルゴリズムを使用し、Ptナノ結晶の(111)面が決定された。
【図14B】図14Bは、HRTEMを示している。
【図14C】図14Cは、ナノネットを形成するpH4でのCdSe−PtハイブリッドのHAADF−STEM画像を示す。
【図15A】図15A−Dは、CdSe−Ptハイブリッドの光触媒を示す。図15Aは、CdSe−Ptナノロッドにおける光誘導電荷分離プロセスの概略図であり、金属アイランドをその表面に有するナノロッド形状ナノ粒子上の光触媒活性が続く。
【図15B】図15Bは、照射の60分前および後のMBおよびCdSe−Ptナノネット混合物の吸光度スペクトルを示す。ピークは、照射後、減少している。
【図15C】図15Cは、両方ともpH7で測定されたCdSe−Ptナノネットの溶液中、および、単離されたCdSe−PtにおけるMB染料の標準化濃度のタイムトレースを示している。これらのプロットは、同様の特性を有するいくつかの異なる実験についての結果の平均を示している。ナノネットは、単離されたCdSe−Pt(25%の染料が還元される)よりもより反応性がたかい(46%の染料が還元される)。黒色の線は、MB染料、CdSeナノロッドおよびPtドット(2nm直径)の結果であり、5%の染料が還元されることを示している。
【図15D】図15Dは、ナノネットサンプルの照射中、各時間でのMBの3つのインジェクションを示す(第2および第3はハーフバスである)CdSe−Ptナノネットの連続的な光触媒実験を示す。
【図16】図16は、本発明による例示的な光電池の図である。
【図17】図17は、本発明による例示的な光電気化学電池の図である。
【発明を実施するための形態】
【0125】
可視光光触媒は、太陽エネルギを化学エネルギに変換する有望な経路である。半導体または金属−半導体ハイブリッド材料は、水素を生成する光化学水分解、光電気化学電池、および、有機汚染物質および細菌解毒の光化学的浄化における光触媒として研究されている。従来では、半導体/金属ハイブリッド触媒は、太陽スペクトルの5%未満からなるUV範囲への適用可能性を制限する幅広ギャップの半導体にほとんど基づいていた。さらに、それらは、半導体粒子、金属アイランドサイズ、形状および位置の面から、あまり制御されず、従って、その理解及び制御された改善は制限されていた。
【0126】
本発明の発明者らは、より高度に制御可能なハイブリッド金チップCdSeナノロッド(本明細書では、ナノダンベル(NDB)と呼ぶ)の可視領域光触媒活性を示している。上述したように、光吸収の後、迅速な電荷分離が、金属/半導体境界面で行われ、分離された電荷は、水分解のケースについての図1、および、モデルアクセプタ化合物を用いた別の特異的な例についての図2A、に概略的に示されるように、多様な形態の酸化還元化学を実行可能である。さらに、ナノダンベルは、酸化還元反応に後程使用するために、照射中、電荷を保持できる。
【0127】
半導体を有する光触媒について、光吸収後に形成される電子−正孔対の再結合を抑制する必要がある。TiO2およびZnOなど大きなギャップ酸化物半導体において、上記構造に堆積された金属アイランドは、電荷分離を促進するように作用し、さらに、電荷保持を示した。近年、3つのコンポーネント、CdS−Au−TiO2ナノジャンクションシステムが開発され、ベクトル電子移動を達成し電荷再結合が抑制されたが、依然として、スペクトル適用範囲は制限されていた。さらに、CdS−Ptハイブリッド材料は、水分解に関する可視光光触媒を示した。本発明につながる研究において、サイズ調整可能可視光領域を有するCdSeシステムが、光触媒のベースとして使用され、球状、ロッド−およびテトラポッド状粒子の生成を可能にする高度に発展した合成の利点を得た。CdSeナノ粒子の電荷分離は、分子複合体または半導体ポリマを使用して以前に示されていた。ここで、CdSeロッド上のAuチップの十分に制御された成長が、電荷を分離するように使用された。AuおよびCdSe間のバンドオフセット分析は、CdSeの伝導帯からAuチップへの迅速な電子移動が可能であり、これにより電荷分離が生じることを示している(図2Aの挿入図)。
【0128】
ハイブリッドCdSe−Auナノダンベルの合成がいくつかの方法でなされた。第1に、有機リガンド(トリ−オクチルホスホン酸化物TOPOと、テトラデシルホスホン酸TDPAなどのホスホン酸との化合)でキャップされた半導体ナノロッド(例えば、長さ40nm、直径4nm)を、公開された工程[16]に基づいて有機媒体中で合成した。ナノロッドのチップ上の金属の成長は、有機溶液[19]または水溶液中で得られた。
【0129】
光触媒作用は、ほとんどの場合、水溶液が適切である。得られているように、適宜なリガンド交換を介して有機相から水相へとNDBの可溶性を変える可能性がある一方で、この方法は、時間を消費し、大きな容量について実現するのは困難である。その代わりに、水溶液中で直接NDBを合成する新規な方法を、本明細書で紹介する。この方法は、利用可能な水溶性金属イオン前駆体の幅広い選択を用いて、半導体ナノ粒子上のAuとは別に、付加的な金属の成長に容易に拡張される。金属チップ材料の制御は、このシステムの光触媒活性を調整するように、本質的で強力なノブ(knob)と考えられる。
【0130】
この新規なアプローチにおいて、CdSeナノロッド(約38×4nm)は、既に報告されているように[16]、トリオクチルホスフィン酸化物とホスホン酸の混合物を含む配位性溶媒において、適宜な前駆体の高温熱分化によって成長した。CdSeナノロッドは、リガンド交換によって水溶液に移動される[17、18、20]。調製された(約20mg)これらのナノロッドは、過剰量のメルカプトウンデカンサン(MUA,約4mg)の存在下において、約4mlのクロロホルムで溶解された。pH13で、3回蒸留水(TDW)中の3mlのKOH溶液は、クロロホルム溶液とともにバイアルに加えられ、浸透され、乳状の茶色溶液を得た。次に、溶液は、6000RPMで30秒間遠心分離され、2相、下部有機相および上部有色非スキャット(non−scat)水相を得て、これは、水相へのナノロッド十分な移行を示している。水相を分離し、ナノロッドを析出させ、TDW対メタノール比が1:3のメタノールを加えることによって洗浄した。さらに、洗浄したロッドを4mlのTDWに再分散させ、その濃度を吸光度測定で測定し、おおよそ3×10−7Mとなった。
【0131】
次のステージにおいて、AuCl3を秤量し、CdSeナノロッドあたり約8000金原子の濃度とし、2mlのTDWに溶解した。金の溶液を、すぐに、勢いよく撹拌したナノロッド水溶液に加え、透明な褐色溶液から濃い黒色溶液への瞬間的な色の変化が観察された。この懸濁液を1分間、6000RPMで遠心分離し、沈殿物を乾燥した。沈殿物を選択した濃度になるようにTDWに再分散させた。これは、さらなる試験や複数の用途に使用されるハイブリッドAu−CdSe光触媒ナノ粒子生成物を構成した。
【0132】
金(III)塩化物は、ナノロッド対金原子の比が約1:8000で秤量され、4mlのTDW(3回蒸留水)に溶解した。すぐに金の溶液を、勢いよく撹拌し、周囲光の下で、ナノロッド溶液に加えた。黒色析出物が30分以内に出現し、そのまま2時間撹拌し、その後、黒色析出物(ナノダンベル)を遠心分離を用いて回収し、乾燥させた。これは、過剰なイオンに対する浄化工程としても作用した。析出物を20分のソニケーション後、pH7のTDW緩衝液で完全に再分散させた。中性pHで、透明で安定な溶液を得たが、より酸性条件では、表面からのMUA基の除去(abstraction)により、十分に溶解しなかった。
【0133】
図2Bは、上述のように調製したCdSe−Auハイブリッドナノダンベルの透過型電子顕微鏡(TEM)を示す。有機溶液において既になされていたことと同様に、両方のロッドチップでAuの選択的成長が観察された。平均Au粒子サイズは3.5(±0.6)nmだった(図3)。前述の研究と同様に、Auの成長は、もともとのCdSeナノロッドの励起吸収特性を消失させた(図4)。
【0134】
理論に拘束されなければ、成長機構は、いくつかの可能性のある機構によって説明可能である。考え得る可能性のある第1機構は、半導体ロッドの光吸収後に生成された電子による金の光還元である。暗条件で行われたコントロール実験は、同様の金の成長を示した(図5)。ナノダンベルのより詳しい試験によって、もともとのナノロッドと比べて大幅に短いことがわかった。平均長さは、水中のロッドについての38nmからNDBにおける22nmまで短縮した(図6)。ロッドからのSe2−は、ロッド短縮と一致するロッドエッチングによってなされるAu3+を還元した。
【0135】
2種類の実験を行って、電荷分離を証明し、NDBの光触媒活性を示した。メチレンブルー(MB)、異なる形状の吸光度スペクトルを有する優れた電子アクセプタをモデル光触媒化化合物として使用した。2つの電子による還元に際し、MBは、可視スペクトルで透明である白色メチレンブルー(leucomethylene blue:MBH)に変換され、MB還元についての明らかなスペクトルシグニチャを提供する。
【0136】
「前照射(pre−irradation)実験」と命名された1つの実験セットにおいて、NDB溶液をまず照射し、次いで、さらに照射せずにMBのみを加えた。5×10−8Mの典型的な濃度を有するNDBの水溶液(pH7)と、犠牲的正孔スカベンジャとしてのエタノールを、エタノール対緩衝溶液の比を1:4にして調製した。暗室で調製したサンプルを気密性キュベットにおいて乾燥窒素ガスで泡立て(bubble)、酸素によって蓄積された電子のスカベンジングを阻止した。TDWにMB結晶(Sigma−Aldrich)を溶解することでメチレンブルー溶液を調製し、667nmでのMBの主な吸収ピークで、1の光密度を用いて溶液を受けた。各々の実験について、撹拌しながら可変時間の間、532nmのCWレーザおよび27mWの電力で2mlのNDB水溶液を前照射した。この照射スキームは、CdSeが十分に定義された可視波長で光を効率的に吸収するように選択され、吸収された光子の定量化が可能である。照射後、1mlの脱気MB染料溶液をキュベットに加えた。NDBは構造または形態学的変化を示さなかった(図7)。
【0137】
図8Aは、MBナノダンベル水溶液の一連の吸光度スペクトルを示しており、MBの二重ピーク特性(609nmおよび667nm)が明確にみられる。吸光度スペクトルは、吸収プロファイルの時間トレースに続いて変化するので、暗所で30分間混合したサンプルを撹拌させた後に得て、反応を完了させた。MBの還元は、測定準備の具体的な制限である数十秒よりも早い。NDBはMBからMBHに還元されるので、明らかにみられるように、二重ピーク吸収特性は消失し、より長い前照射(pre−irradiation)は、還元が全体的増加にし、このことは、より多くの電荷がNDBに保持されることを示唆している。図8Bは、比率が1:2、および、NDB溶液に対する同様の濃度のもともとのCdSeナノロッドと直径5nmのAuナノ粒子との混合物のコントロール溶液(三角)についての結果とともに、NDBと前照射時間の還元活性の相関をプロットしている。これらのハイブリッドNDBは、120分間の前照射後、MB染料の64%を還元し、全く同一条件下で、上記混合物は、MB染料を13%のみ還元した。
【0138】
さらなるコントロール実験は、CdSeナノロッドまたは金ナノ粒子の溶液が、前照射後に光触媒還元効果を示さず、従って、電荷保持も示さなかった。このように、NDBは、既に観察されている光ルミネセンス急冷と一致する可視光下における電荷分離を示すと結論づけられる;さらに、NDBは、イルミネーションが消された後でさえ、正孔スカベンジャが正の電荷を除去するように使用される場合、長時間励起した電荷分離状態を保持する能力を有する。電荷保持しているNDBsは、それらの電子を、光の存在しない酸化還元反応において、電子アクセプタに移動可能である。
【0139】
CdSeナノロッドおよび金ナノ粒子混合物の場合、電荷は、溶液中の金ナノ粒子上に保持され、励起したCdSeナノロッドからの生産的衝突を介して移動された。ストークス−アインシュタインの関係を用いて、金ナノ粒子とCdSeナノロッドとの間の平均衝突時間は、CdSeナノロッド(約10ナノ秒)の励起寿命よりも大幅に長い約1ミリ秒と推定された。しかしながら、照射された溶液において、有意な容量フラクションの正孔スカベンジャとしてのエタノールの存在によって、励起したCdSeナノロッドから正孔を移動可能であり、衝突中に金ナノ粒子に過剰な電子を移動した負の電荷ロッドが残された。NDBの場合、金の上でのもっとより有効な電荷保持が、電荷キャリアの再結合を阻止したエタノールによる正孔スカベンジングによってなされるとともに、CdSe部分と金部分との間において迅速な電荷分離に割り当てられた。従って、光触媒の注意深い設計によって、より大幅な効果的な活性が可能となった。
【0140】
NDBにつき保持される電子の数は、吸光度スペクトルを用いて、還元したMB量およびNDB量の推定値からおおまかに推定可能である。これによって、実験された最も長い前照射時間での1NDBあたり約50電子の平均保持量(average retention)を得た。
【0141】
MB還元の直接光触媒用にNDBを使用することも可能である。同時照射と命名された第2の実験セットにおいて、473nmの30mW CWレーザでサンプルを照射しつつ、MBナノダンベル水溶液中のMBの吸収(667nm)が行われた。この波長は、MBがこの領域において最小吸光度を有するので選択され、直接の光脱色を最小限にする。正孔アクセプタとしてのエタノールおよびMBを加え、上述したようにサンプルを調製した。
【0142】
図9においては、照射されたMBナノダンベル溶液、MB−CdSeナノロッドコントロール溶液、および、MB−金ナノ粒子のコントロール溶液の吸光度の標準化タイムトレースが示されており、直径4(±1.3)nmおよび6(±1)nmからなるMUAコーティングAu粒子が使用されている(図10およびサポート情報の調製情報)。照射30分後、MB−ナノダンベル溶液は、61%のMB染料の還元を示した。コントロールのAu溶液は、4および6nm粒子の両方に対してMBの還元はほとんど示さなかったが、コントロールのCdSe溶液は、15%のMBの還元を示した。別のコントロール実験において、MB溶液のみを、照射下で染料の光退色(photobleach)量を推定するのに使用した。30分の照射後、約5%のみの染料が光退色した。MB−ナノダンベル溶液におけるMB染料吸収の大幅な減少は、従って、NDBの存在によって生じる光触媒効果に起因する可能性がある。
【0143】
これらの結果は、十分に定義されたハイブリッドナノ構造において光還元反応を活性化するための可視光の使用、ならびに、照射を停止した後でさえ、還元反応において、後で使用するための電荷を保持できる可能性、を示している。ほとんどの従来のナノ光触媒システムは、プローブ分子の直接的な光退色を生じさせる可能性があるUV照射を使用し、より重要なことには、半導体は、可視領域の太陽スペクトルを効率的に吸収することができない可能性がある。本発明のシステムは、光触媒特性を超える高度な制御を提供し、付加的なハイブリッド金属−半導体ナノ粒子は、将来的可能性があり、光触媒として使用可能である。
【0144】
本発明の方法および材料に関するさらなる実施例については、室温は、水溶液中のCdSeナノロッド上の白金触媒の成長に接近することが本明細書に開示されている。新規ハイブリッドナノ結晶の化学的および物理的特性が試験され、Au−CdSeケースについて開示されているように、モデルアクセプタMBの還元を再度使用して、その光触媒特性が開示されている。
【0145】
CdSeナノロッド(70×8nm)を開示されているように合成した。合成後、CdSeナノロッドを、アルキル−ホスフィン表面リガンドとメルカプト−ウンデカン酸(MUA)とを交換することによって水溶液に移動した。白金成長については、PtCl4を水に溶解し、室温で二日間、CdSeナノロッド水溶液と十分に混合した。暗褐色/黒色の析出物が形成され、遠心分離を用いて回収し、CdSe−Ptハイブリッド粒子を得た。個別のナノ結晶を乾燥させ、光触媒における使用および特性化(characterization)のために、三回蒸留水(TDW)に再溶解した。
【0146】
図11に示すように、異なるpHでのCdSeナノロッド状のPtの成長パターンにおいて、ある種の変化が観察されることもある。塩基性条件(pH10)での反応において、金属はロッド表面で成長する。TEM観察は、成長中の溶液および離間した状態のロッドにおいて、融合または集合が生じないことを示した(図11A)。pH7で、有意なナノロッド融合は観察されなかったが、ナノロッドのクラスタリングはTEMグリッドで観察されることもあり(図11B)、このことは、溶液におけるハイブリッドナノ結晶間に存在する強力な引力と一致する。pH4では、Ptの成長もナノロッド表面で生じ;成長中に同時に、ナノロッドは、集合および融合を開始し、連結されたCdSe−Ptハイブリッドナノ構造から構成される多孔質の高表面積「ナノネット」構造を形成する(図11C−D)。強力な酸性条件(pH1)での反応は、ナノロッド表面のPt成長を示さず、広がっただけのナノロッド集合(図11E)、および、ナノロッド集合を囲む付着していない小さなPtナノ結晶の存在を示した。
【0147】
異なるpH条件での成長パターンの差は、ハイブリッドナノ構造の吸光度スペクトルにみることができる(図11F)。pH10では、第1の励起ピークが広がり、赤色に向けてのテール部が発展しているが、CdSe−Ptハイブリッドナノロッドの吸光度は、もともとのCdSeナノロッドシード(seeds)のいくつかの励起子構造を示している。このようなパターンも、CdSeナノロッド上のAuナノ結晶の成長中にみられ、核があることおよび小さな金属ナノ結晶の成長の指標として現れる。pHがより酸性になると、CdSe−Ptナノロッドの吸収特性は消失し、可視スペクトルの吸光度は、赤色までさらに広がる。この効果は、ナノネットを形成するハイブリッドナノ結晶の融合により生じている可能性があり、これにより、より大きなコロイドの存在に起因して溶液散乱において増加することとなる。
【0148】
成長中の溶液のpHも、CdSeナノロッド上で成長するPtナノ結晶の特性化に影響を与える。サイズの分布と、pH4およびpH10の成長条件についての200Ptドットを超える最も近い隣接距離は、図12に示されている。塩基性条件下で成長するPtドットの平均直径は、3.3±1.1nm(図12A)であり、酸性条件において、Ptナノ結晶サイズは、1.9±0.5nmである(図12B)。塩基性条件下で成長するPtドットの平均の最も近い隣接距離は、5.3±2.0nm(図12C)であり、酸性条件下で成長するPtドットの距離、3.1±0.7nmと比較してほぼ2倍の大きさである(図12D)。
【0149】
CdSe−Ptハイブリッドナノ結晶の構造および化学組成を試験した。約1μm領域以上、pH4で調製したCdSe−Ptハイブリッド粒子に関してHRTEMで得たエネルギ分散的X線(EDX)スペクトル(図示せず)は、期待したCd、SeおよびPtピークを示した。Cd:Se原子比は、1:1.07であり、CdSeナノロッドの期待される比率1:1に近かった。CdSeとPtとの比は、約2.4:1だった。Pt成長前後での(pH10)、70×8nmのCdSeナノロッドについての粉末X線回析(XRD)が図13に示されている。Pt成長後の小さなPt(111)ピークの様相は、結晶Ptが存在するという付加的な証拠を提示している。小さなPt粒子サイズの場合、広くて弱いピークが期待される。
【0150】
Ptがナノロッド表面に直接結合するのを確認するために、高解像度TEM(HRTEM)および高角度散乱暗視野TEM画像(HAADF−STEM)技術を使用した。図14Aは、pH10で成長した1つのCdSe−Ptナノロッドの画像を示す。ロッドのCdSe(002)ラチスを十分に識別可能であるが、Ptドットは、極めて小さく(平均直径が3.3±1.1nm)、そのラチス構造の直接間接を難しくしている。TEMマイクログラフにおいて、選択されたナノ結晶の高速フーリエ変換(FFT)を計算し、目で的確に決定するのには難しいラチス構造を識別するために使用した(図14Aの挿入図)。Ptナノ結晶の(111)面を決定した。図14B−Cは、pH4でのPt成長のHRTEMおよびHAADF−STEM特性化を示す;上述したように、このような条件下では、ナノロッドは、Pt成長中に融合し、ナノロッドを形成する傾向にある。この方法が、より重いPt原子が強力に散乱する原子番号コントラスト(Zコントラスト画像)を提供するとき、HADDF−STEMにおける明るい白色のドット(図14C)は、灰色ナノロッドの表面上の白金ドットである。
【0151】
可視光光触媒におけるCdSe−Ptハイブリッドナノ粒子の融合は、次に示す。上述したように、光触媒用の金属−半導体ハイブリッドの使用は、半導体における迅速な電子−正孔再結合と効果的に競合する可能性がある、金属/半導体境界面での電荷分離に依存している。可視光光触媒および電荷保持は、上述したCdSe−Auナノダンベル(NDB)で観察され、同様のことは、CdSe−Ptシステムについて拡張された。
【0152】
この目的について、前述したように、MBを電子アクセプタとして使用し、正孔スカベンジャとしてエタノールを使用した。電荷分離および酸化還元反応に関する提案したスキームは、図15Aに例示している;ハイブリッド粒子において、サンプル照射および光誘導電荷キャリアの形成後、電子および正孔は、システムにおいて最低エネルギレベルに緩和され、電子は白金ドットにあり、正孔はCdSeナノロッドにある。このような状態において、例としては、正孔をエタノールに移動させ、電子をMBに移動させてもよい。2つの電子を加えると同時に、MBは還元され、無色(colorless)の白色メチレンブルー(MBH)を形成する。
【0153】
MB還元の光触媒に続いて、ナノロッドのみ励起する(MB染料を直接はしない)ように、473nm、30mWのCW青色レーザでサンプルを継続して照射している間、MBの主吸収ピークの減少(667nm)を所定の時間に亘りモニタした。CdSe−Ptのサンプルを1:4のエタノール対水の比を用いて再懸濁し、これらの溶液のpHを緩衝液を用いて7に設定した。次いで、数分間、密閉キュベットで乾燥窒素ガスをバブリングすることによって脱気して、水に溶解したMBの添加を行った。図15Bは、時間0、照射後60分での溶液の吸光度を示している。MB主ピークの減少は、相当の還元を示した。図15Cは、MBの主吸光度ピーク、667nmでのサンプルの吸光度の標準化タイムトレース(C/C0、ここで、C0は時間0でのMB濃度である)を示す。これらのプロットは、同様の特性を有するいくつかの異なる実験の平均結果を示している。
【0154】
塩基性(ナノロッド)および酸性(ナノネット)で成長したCdSe−Ptの光触媒活性を比較した。照射後60分で、MB/CdSe−Ptナノネット(図15C)は、46%のMB染料の還元を示し、MB/CdSe−Pt独立ナノロッドは、25%のMBの還元を示した。粒子を含まずMBとエタノールを含む溶液の照射は、2%のみの直接光退色を示した。CdSeナノロッドを混合物に加え、10%還元した。Ptドット(2nm、トルエンで成長し、MUAを用いて水に移動した)は、4%の還元を示した。比が1:20の、CdSeナノロッドとPtドットの混合物(Pt−CdSeナノロッドの比を反映)は、MBの5%還元を示した。明らかに、CdSe−Ptハイブリッドは重要な光触媒活性を示している。これは、金属半導体境界面で行われる電荷分離に割り当てられ、エタノールによる正孔スカンベンジングおよびMBの還元が続く。Ptが効果的な触媒金属であることは周知である。
【0155】
さらに、光触媒活性の改善を、ナノロッドと比較してナノネットで観察した。これは、酸性pHでのPtドットのより小さい平均寸法と一致し、反応性を増大させることとなる場合がある。さらに、酸性条件においては、Ptドットでのロッド表面被覆範囲は、塩基性条件よりも密度が高く、CdSe−Ptナノロッドと比較してCdSe−Ptナノネット上においてより多くの触媒部位を提供する。従って、理論に束縛されなければ、電荷分離は、ナノネットにおいてより効率的であってもよい。
【0156】
CdSe−Ptハイブリッドについての光触媒効果をさらに示すために、各々がオリジナルのMB量の半分と考えられる2つのインジェクションにおいて、さらなるMB量が加えられる一方で、照射は、60分継続される。これは、pH4で調製されたCdSe−Ptナノネットのサンプルについて行われた。図15Dにみられるように、このシステムは、さらなるインジェクションに際して染料を依然として還元し、活性が同様に保たれていることを示す。
【0157】
本発明の方法は、溶液中でフリー、または、電極表面に層として堆積される複数のナノ粒子を含む電気化学電池において実行されてもよい。一つの例示的で一般的な設定において、図16において例示のために示されるように、光電池は、電池の電極間に配置されたナノ粒子の自己アッセンブル層から構成される。この実施例においては、一つの電極は、ITO、または、光が電池に入ることができる透明電極である。この設定においては、各ナノ粒子の異なる領域は、電池の異なる電極に接触している。光吸収後、電荷分離が行われる。
【0158】
光電池と同様に、図17に示される例示的な構成の光電気化学電池が、構成されてもよい。図示されるように、各電極と接触するようにナノ粒子を配列するかわりに、電極溶液は、一般的には、一つの電極と接触しているナノ粒子の金属領域を用いて、中間媒体として使用される。酸化還元反応は、電荷がナノ粒子から電極へ移動可能である水性媒体で行われ、これにより、電流を生成する。
【0159】
当分野の当業者であれば理解されるように、本明細書に記載される実施例は、本発明のある種特定の実施例のみである。ナノ粒子、方法、使用および装置の他の実施例は、開示し、請求している本発明の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光誘導電荷分離および電荷キャリの電荷アクセプタへの移動方法において:
a)可視(400−700nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)において吸収開始がある、少なくとも1つの金属/金属合金量と、少なくとも1の半導体領域とを有する少なくとも1のナノ粒子を提供するステップと;
b)前記媒体において、前記少なくとも1のナノ粒子を少なくとも1の電子アクセプタおよび少なくとも1の電子ドナーに接触させるステップと;
c)選択的に、前記少なくとも1のナノ粒子、少なくとも1の電子アクセプタおよび少なくとも1の電子ドナーを含む媒体に、可視および/または近IR領域および選択的にUV領域の放射を用いて照射するステップと;を具え、
これにより、前記少なくとも1のナノ粒子の金属/半導体境界面において電子−正孔対の形成し、それに続く電荷分離と、電子および正孔の前記少なくとも1の電子アクセプタおよび前記少なくとも電子ドナーそれぞれへの移動とが可能となることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1のナノ粒子が、少なくとも1の半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々が、異なるまたは同一の金属/金属合金材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2の金属/金属合金領域は異なる金属/金属合金材料であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2の金属/金属合金が、同一の金属/金属合金材料であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1のナノ粒子が、少なくとも2の半導体領域によって離間される少なくとも2の金属/金属合金領域を具え、前記少なくとも2の金属/金属合金領域の各々は、異なるまたは同一の金属/金属合金材料であり、前記少なくとも2の半導体領域の各々は、異なるエネルギギャップおよび/または異なるエネルギバンド位置を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2の半導体領域は、少なくとも1の金属/金属合金領域によって離間されていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2の半導体領域の各々は、異なる半導体材料であり、前記領域は、金属/金属合金領域によって離間されていないことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1のナノ粒子が細長形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1のナノ粒子がナノロッドであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノロッドがナノダンベル(NDB)の形状であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記NDBがその一端で、第1の金属/金属合金領域、および、その他端で、第2の金属/金属合金領域を有し、前記第1および第2の金属/金属合金領域が、その化学組成物において互いに異なることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記NDBが、ナノ構造の細長セグメントにおいて、少なくとも1の付加的な金属/金属合金領域を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1のナノ粒子が、その表面に少なくとも1の金属/金属合金材料の少なくとも1の領域を有するナノロッドの形態であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノロッドが、その表面に、同一または異なる金属/金属合金材料からなる、複数の離間した金属/金属合金領域を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1のナノ粒子は、細長形状、ロッド様形状、丸い(球)形状、楕円形状、ピラミッド型形状、ディスク様形状、分岐型および不規則型形状から選択される形状を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1のナノ粒子は、1乃至20nmの少なくとも1の次元を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1の金属/金属合金領域は、Cu、Ag、Au、Pt、Co、Pd、Ni、Ru、Rh、Mn、Cr、Fe、Ti、Zn、Ir、W、Moおよびこれらの合金から選択される少なくとも1の金属であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記金属が、Au、Pd、Ptおよびこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1の半導体領域は、群II−VI、群III−V、群IV−VI、群III−VI、群IV半導体の原子およびこれらの混合物から選択される半導体材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1の半導体は、群II−VIであり、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdZnSeおよびさらにこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1の半導体が、群III−VIであり、InAs、InP、GaAs、GaP、InN、GaN、InSb、GaSb、AlP、AlAs、AlSb、InAsP、CdSeTe、ZnCdSe、InGaAsおよびさらにこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1の半導体が群IV−VIであり、PbSe、PbTe、PbSおよびこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1の半導体が、群III−VIであり、InSe、InTe、InS、GaSe、InGaSe、InSeSおよびさらにこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1の半導体が、群IVであり、Si、Geおよびこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1の半導体領域が、CdS、CdSeまたはCdTeであり、前記少なくとも1の金属/金属合金領域が、Au、PtまたはPdあるいはこれらの合金であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1のナノ粒子が粒子集合であることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1のナノ粒子がナノネット構造であることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記媒体が、水性媒体または非水性媒体、ゲル、ポリマ、フィルム、電極あるいは表面であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記媒体が水または水を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1のナノ粒子が、溶液中でフリー、ポリマまたはフィルムに埋め込まれている、あるいは、電極に堆積されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1の電子アクセプタは、前記ナノ粒子の少なくとも1の領域のFermi準位よりも低いLUMO(最低未占分子軌道)を有する少なくとも1の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1の化合物が、水;アクセプタ染料;酸素;硝酸;鉄(III)化合物;マンガン(IV)化合物;硫酸;二酸化炭素;塩素化化合物;テトラクロロエチレン(PCE);トリクロロエチレン(TCE);ジクロロエチレン(DCE);塩化ビニル(VC);アルコール;および他の酸化分子から選択されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1の電子ドナーが、前記ナノ粒子の少なくとも1の領域のFermi準位よりも高いHOMO(最高被占分子軌道)を有する少なくとも1の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1の化合物が、アルコール、水、S2−、Se2−、SO32−、SeO32−イオンを含むいずれかの塩から選択されることを特徴とする請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
前記放射が太陽放射であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1の有機または無機化合物の還元または酸化を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1の第1の有機または無機化合物の還元と、同時に、少なくとも1の第2の有機または無機化合物の酸化を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項38】
水分解から水素を得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1の有機または無機化合物を光分化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物が、水および/または空気に存在する汚染物質であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1の第1の有機または無機化合物を還元し、および/または、少なくとも1の第2の有機または無機化合物を酸化する方法において:
a)請求項1乃至27に記載のいずれか一項に規定される、少なくとも1のナノ粒子を提供するステップと;
b)媒体において、電子アクセプタである前記少なくとも1の第1の有機または無機化合物、および、少なくとも1の第2の有機または無機化合物に前記少なくとも1のナノ粒子を接触させるステップと;
c)選択的に、可視および/または近IR領域および選択的にUV領域において放射を用いて前記媒体を照射するステップと;
これにより、前記少なくとも1の第1の有機または無機化合物の還元、および/または前記少なくとも1の第2の有機または無機化合物の酸化が可能になることを特徴とする方法。
【請求項42】
水素の光触媒生成に関する方法において、請求項1乃至27のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を含む水性媒体を、可視および/または近IR領域および選択的にUV領域における放射を用いて照射し、水分解後に水素を得るステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項43】
前記光が太陽光であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記水性媒体が水であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記水性媒体が、水を具える媒体であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項46】
水または空気中の少なくとも1つの汚染物質を分解する方法において:
a)請求項1乃至27のいずれか一項に規定される少なくとも1のナノ粒子を、少なくとも1の汚染物質を含む媒体に導入するステップと;
b)可視および/または近IR領域および選択的にUV領域における光を用いて前記媒体を照射し、これにより、前記少なくとも1の汚染物質の還元または酸化を生じさせることを特徴とする方法。
【請求項47】
前記少なくとも1のナノ粒子が、前記媒体のナノ粒子の集合であることを特徴とする請求項41乃至46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1のナノ粒子が、前記媒体におけるナノ粒子の集合であることを特徴とする請求項41乃至46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1のな粒子が、バイアスありまたはなしで、電極に堆積されることを特徴とする請求項41乃至46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
反応の光触媒作用にあわせて、前記可視(400−700nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)における吸収開始を有する、少なくとも1の金属/金属合金領域および少なくとも1の半導体領域を具える少なくとも1のナノ粒子の使用。
【請求項51】
前記吸収開始が420nm以上であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記吸収開始が450nm以上であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項53】
前記吸収開始が500nm以上であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項54】
前記反応が、少なくとも1の有機または無機化合物の還元または酸化であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項55】
前記反応が、少なくとも1の有機または無機化合物の還元または酸化であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項56】
前記反応が水分解であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項57】
反応の前記光触媒作用が、太陽電池で行われることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項58】
請求項1乃至57のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を具える太陽電池装置。
【請求項59】
請求項1乃至58のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を具える汚染物質の光触媒処理装置。
【請求項60】
請求項1乃至59のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を具える化学反応の光触媒装置。
【請求項61】
請求項1乃至60のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を具える光電池。
【請求項62】
太陽電池、光電気化学電池および光電池から選択される電池配列。
【請求項63】
少なくとも2の半導体領域によって離間される少なくとも2の金属/金属合金領域を有するナノ粒子において、前記少なくとも2の金属/金属合金領域の各々が、異なるまたは同一の金属/金属合金材料であり、前記少なくとも2の半導体領域の各々が、異なるエネルギギャップおよび/または異なるエネルギバンド位置を有することを特徴とするナノ粒子。
【請求項64】
前記少なくとも2の半導体領域が、少なくとも1の金属/金属合金領域によって離間されていることを特徴とする請求項63に記載のナノ粒子。
【請求項65】
前記少なくとも2の半導体領域の各々が、異なる半導体材料であり、前記領域が、金属/金属合金領域によって離間されていないことを特徴とする請求項64に記載のナノ粒子。
【請求項66】
細長形状、ロッド様形状、丸い(球)形状、楕円形状、ピラミッド型形状、ディスク様形状、分岐型およびあらゆる不規則な形状から選択される形状を有する請求項63乃至65のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項67】
請求項50乃至57のいずれか一項に記載の使用において、請求項1乃至49のいずれか一項に記載の方法において、あるいは、請求項58乃至62のいずれか一項に記載のデバイスにおける、請求項63乃至65のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項1】
光誘導電荷分離および電荷キャリの電荷アクセプタへの移動方法において:
a)可視(400−700nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)において吸収開始がある、少なくとも1つの金属/金属合金量と、少なくとも1の半導体領域とを有する少なくとも1のナノ粒子を提供するステップと;
b)前記媒体において、前記少なくとも1のナノ粒子を少なくとも1の電子アクセプタおよび少なくとも1の電子ドナーに接触させるステップと;
c)選択的に、前記少なくとも1のナノ粒子、少なくとも1の電子アクセプタおよび少なくとも1の電子ドナーを含む媒体に、可視および/または近IR領域および選択的にUV領域の放射を用いて照射するステップと;を具え、
これにより、前記少なくとも1のナノ粒子の金属/半導体境界面において電子−正孔対の形成し、それに続く電荷分離と、電子および正孔の前記少なくとも1の電子アクセプタおよび前記少なくとも電子ドナーそれぞれへの移動とが可能となることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1のナノ粒子が、少なくとも1の半導体領域によって離間される少なくとも2つの金属/金属合金領域を具え、前記少なくとも2つの金属/金属合金領域の各々が、異なるまたは同一の金属/金属合金材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2の金属/金属合金領域は異なる金属/金属合金材料であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2の金属/金属合金が、同一の金属/金属合金材料であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1のナノ粒子が、少なくとも2の半導体領域によって離間される少なくとも2の金属/金属合金領域を具え、前記少なくとも2の金属/金属合金領域の各々は、異なるまたは同一の金属/金属合金材料であり、前記少なくとも2の半導体領域の各々は、異なるエネルギギャップおよび/または異なるエネルギバンド位置を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2の半導体領域は、少なくとも1の金属/金属合金領域によって離間されていることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2の半導体領域の各々は、異なる半導体材料であり、前記領域は、金属/金属合金領域によって離間されていないことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1のナノ粒子が細長形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1のナノ粒子がナノロッドであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノロッドがナノダンベル(NDB)の形状であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記NDBがその一端で、第1の金属/金属合金領域、および、その他端で、第2の金属/金属合金領域を有し、前記第1および第2の金属/金属合金領域が、その化学組成物において互いに異なることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記NDBが、ナノ構造の細長セグメントにおいて、少なくとも1の付加的な金属/金属合金領域を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1のナノ粒子が、その表面に少なくとも1の金属/金属合金材料の少なくとも1の領域を有するナノロッドの形態であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノロッドが、その表面に、同一または異なる金属/金属合金材料からなる、複数の離間した金属/金属合金領域を有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1のナノ粒子は、細長形状、ロッド様形状、丸い(球)形状、楕円形状、ピラミッド型形状、ディスク様形状、分岐型および不規則型形状から選択される形状を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1のナノ粒子は、1乃至20nmの少なくとも1の次元を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1の金属/金属合金領域は、Cu、Ag、Au、Pt、Co、Pd、Ni、Ru、Rh、Mn、Cr、Fe、Ti、Zn、Ir、W、Moおよびこれらの合金から選択される少なくとも1の金属であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記金属が、Au、Pd、Ptおよびこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1の半導体領域は、群II−VI、群III−V、群IV−VI、群III−VI、群IV半導体の原子およびこれらの混合物から選択される半導体材料であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1の半導体は、群II−VIであり、CdSe、CdS、CdTe、ZnSe、ZnS、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdZnSeおよびさらにこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1の半導体が、群III−VIであり、InAs、InP、GaAs、GaP、InN、GaN、InSb、GaSb、AlP、AlAs、AlSb、InAsP、CdSeTe、ZnCdSe、InGaAsおよびさらにこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1の半導体が群IV−VIであり、PbSe、PbTe、PbSおよびこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1の半導体が、群III−VIであり、InSe、InTe、InS、GaSe、InGaSe、InSeSおよびさらにこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1の半導体が、群IVであり、Si、Geおよびこれらの合金から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1の半導体領域が、CdS、CdSeまたはCdTeであり、前記少なくとも1の金属/金属合金領域が、Au、PtまたはPdあるいはこれらの合金であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1のナノ粒子が粒子集合であることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1のナノ粒子がナノネット構造であることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記媒体が、水性媒体または非水性媒体、ゲル、ポリマ、フィルム、電極あるいは表面であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記媒体が水または水を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1のナノ粒子が、溶液中でフリー、ポリマまたはフィルムに埋め込まれている、あるいは、電極に堆積されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1の電子アクセプタは、前記ナノ粒子の少なくとも1の領域のFermi準位よりも低いLUMO(最低未占分子軌道)を有する少なくとも1の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1の化合物が、水;アクセプタ染料;酸素;硝酸;鉄(III)化合物;マンガン(IV)化合物;硫酸;二酸化炭素;塩素化化合物;テトラクロロエチレン(PCE);トリクロロエチレン(TCE);ジクロロエチレン(DCE);塩化ビニル(VC);アルコール;および他の酸化分子から選択されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1の電子ドナーが、前記ナノ粒子の少なくとも1の領域のFermi準位よりも高いHOMO(最高被占分子軌道)を有する少なくとも1の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1の化合物が、アルコール、水、S2−、Se2−、SO32−、SeO32−イオンを含むいずれかの塩から選択されることを特徴とする請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
前記放射が太陽放射であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1の有機または無機化合物の還元または酸化を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1の第1の有機または無機化合物の還元と、同時に、少なくとも1の第2の有機または無機化合物の酸化を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項38】
水分解から水素を得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1の有機または無機化合物を光分化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物が、水および/または空気に存在する汚染物質であることを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1の第1の有機または無機化合物を還元し、および/または、少なくとも1の第2の有機または無機化合物を酸化する方法において:
a)請求項1乃至27に記載のいずれか一項に規定される、少なくとも1のナノ粒子を提供するステップと;
b)媒体において、電子アクセプタである前記少なくとも1の第1の有機または無機化合物、および、少なくとも1の第2の有機または無機化合物に前記少なくとも1のナノ粒子を接触させるステップと;
c)選択的に、可視および/または近IR領域および選択的にUV領域において放射を用いて前記媒体を照射するステップと;
これにより、前記少なくとも1の第1の有機または無機化合物の還元、および/または前記少なくとも1の第2の有機または無機化合物の酸化が可能になることを特徴とする方法。
【請求項42】
水素の光触媒生成に関する方法において、請求項1乃至27のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を含む水性媒体を、可視および/または近IR領域および選択的にUV領域における放射を用いて照射し、水分解後に水素を得るステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項43】
前記光が太陽光であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記水性媒体が水であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記水性媒体が、水を具える媒体であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項46】
水または空気中の少なくとも1つの汚染物質を分解する方法において:
a)請求項1乃至27のいずれか一項に規定される少なくとも1のナノ粒子を、少なくとも1の汚染物質を含む媒体に導入するステップと;
b)可視および/または近IR領域および選択的にUV領域における光を用いて前記媒体を照射し、これにより、前記少なくとも1の汚染物質の還元または酸化を生じさせることを特徴とする方法。
【請求項47】
前記少なくとも1のナノ粒子が、前記媒体のナノ粒子の集合であることを特徴とする請求項41乃至46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1のナノ粒子が、前記媒体におけるナノ粒子の集合であることを特徴とする請求項41乃至46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1のな粒子が、バイアスありまたはなしで、電極に堆積されることを特徴とする請求項41乃至46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
反応の光触媒作用にあわせて、前記可視(400−700nm)から近赤外(NIR)領域(0.7−3μm)における吸収開始を有する、少なくとも1の金属/金属合金領域および少なくとも1の半導体領域を具える少なくとも1のナノ粒子の使用。
【請求項51】
前記吸収開始が420nm以上であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項52】
前記吸収開始が450nm以上であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項53】
前記吸収開始が500nm以上であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項54】
前記反応が、少なくとも1の有機または無機化合物の還元または酸化であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項55】
前記反応が、少なくとも1の有機または無機化合物の還元または酸化であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項56】
前記反応が水分解であることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項57】
反応の前記光触媒作用が、太陽電池で行われることを特徴とする請求項50に記載の使用。
【請求項58】
請求項1乃至57のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を具える太陽電池装置。
【請求項59】
請求項1乃至58のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を具える汚染物質の光触媒処理装置。
【請求項60】
請求項1乃至59のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を具える化学反応の光触媒装置。
【請求項61】
請求項1乃至60のいずれか一項に記載される少なくとも1のナノ粒子を具える光電池。
【請求項62】
太陽電池、光電気化学電池および光電池から選択される電池配列。
【請求項63】
少なくとも2の半導体領域によって離間される少なくとも2の金属/金属合金領域を有するナノ粒子において、前記少なくとも2の金属/金属合金領域の各々が、異なるまたは同一の金属/金属合金材料であり、前記少なくとも2の半導体領域の各々が、異なるエネルギギャップおよび/または異なるエネルギバンド位置を有することを特徴とするナノ粒子。
【請求項64】
前記少なくとも2の半導体領域が、少なくとも1の金属/金属合金領域によって離間されていることを特徴とする請求項63に記載のナノ粒子。
【請求項65】
前記少なくとも2の半導体領域の各々が、異なる半導体材料であり、前記領域が、金属/金属合金領域によって離間されていないことを特徴とする請求項64に記載のナノ粒子。
【請求項66】
細長形状、ロッド様形状、丸い(球)形状、楕円形状、ピラミッド型形状、ディスク様形状、分岐型およびあらゆる不規則な形状から選択される形状を有する請求項63乃至65のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項67】
請求項50乃至57のいずれか一項に記載の使用において、請求項1乃至49のいずれか一項に記載の方法において、あるいは、請求項58乃至62のいずれか一項に記載のデバイスにおける、請求項63乃至65のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16】
【図17】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図11F】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−519057(P2010−519057A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549890(P2009−549890)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000220
【国際公開番号】WO2008/102351
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(310001816)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティー オブ エルサレム,リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000220
【国際公開番号】WO2008/102351
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(310001816)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティー オブ エルサレム,リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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