説明

ハイブリッド駆動系

【課題】特に,エネルギ消費および,またはスポーティなドライブスタイルに関して,ハイブリッド車の特性を改善するハイブリッド駆動系を提供する。
【解決手段】本発明は,内燃機関(2)と,電気機械(30)と,クラッチ装置(10)と,トランスミッション入力シャフト(13)を出力シャフト(6)に連結することができ,遊星歯車機構(33)を有する可変速トランスミッション(5)とを有するハイブリッド駆動系に関する。特に,エネルギ消費および/またはスポーティなドライブスタイルに関して,ハイブリッド駆動系を有するハイブリッド車の特性を改善するために,電気機械(30)は,遊星歯車機構(33)を介して,トランスミッション入力シャフト(13)および出力シャフト(6)に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内燃機関と,電気機械と,クラッチ装置と,トランスミッション入力シャフトを出力シャフトに連結でき,遊星歯車機構を有する可変速トランスミッションとを有するハイブリッド駆動系に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は,駆動機械,手動トランスミッション,および遊星歯車機構を有する電気力学的駆動システムを開示しており,遊星歯車機構の第1の要素は手動トランスミッションに連結され,遊星歯車機構の第2の要素は駆動機械に連結され,遊星歯車機構の第3の要素は,少なくとも1つの電気機械に連結されている。この場合に,クラッチは,遊星歯車機構を介さないように,遊星歯車キャリアと太陽歯車との間を回転可能に固定して連結する第1のシフト位置と,遊星歯車キャリアと太陽歯車との間の連結を切る第2のシフト位置とを有する。さらなる駆動系が,例えば,特許文献2〜9などの文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,719,655 B2号明細書
【特許文献2】米国特許第7,410,436 B2号明細書
【特許文献3】米国特許第6,634,247 B2号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0318728 A1号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0314661 A1号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2 088 045 A1号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第2 088 046 A1号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第10 2006 036 758 A1号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第10 2007 051 991 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は,特に,エネルギ消費および,またはスポーティなドライブスタイルに関して,請求項1の前掲部分によるハイブリッド駆動系を有するハイブリッド車の特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は,内燃機関と,電気機械と,クラッチ装置と,トランスミッション入力シャフトを出力シャフトに連結でき,遊星歯車機構を有する可変速トランスミッションとを有するハイブリッド駆動系において,電気機械が,遊星歯車機構を介してトランスミッション入力シャフトおよび出力シャフトと連結されることで達成される。その結果,内燃機関,電気機械,および出力シャフトの間の回転数比を単純な方法で変えることができる。さらに,電気機械を使用して,内燃機関の低温始動が単純な方法で可能になる。電気走行を基本として内燃機関を始動させるために,クラッチ装置がつながれる。電気機械は,好ましくは,遊星歯車機構を介してトランスミッション入力シャフトに永続的に連結されるのが好ましい。
【0006】
ハイブリッド駆動系の1つの好ましい例示的な実施形態は,遊星歯車機構の遊星歯車キャリアが,電気機械の出力シャフトに,それに対して回転しないように連結されることを特徴とする。好ましくは,複数の遊星歯車が遊星歯車キャリアに回転可能に取り付けられ,前記遊星歯車は,太陽歯車および内歯歯車と係合する。
【0007】
ハイブリッド駆動系のさらに好ましい例示的な実施形態は,遊星歯車機構の遊星歯車キャリアが,出力シャフトに連結されることを特徴とする。この場合に,その連結は,出力シャフトに,それに対して回転しないように連結され,遊星歯車キャリア上の歯車装置(toothing arrangement)と係合する少なくとも1つのギヤホイールを用いて行われるのが好ましい。
【0008】
ハイブリッド駆動系のさらに好ましい例示的な実施形態は,遊星歯車機構の太陽歯車が,可変速トランスミッションのトランスミッション入力シャフトに連結されることを特徴とする。この場合に,その連結は,例えば,2つのギヤホイールを用いて行われ,それらのギヤホイールの一方は,遊星歯車機構の太陽歯車に,それに対して回転しないように連結されて,別のギヤホイールと噛み合い,この別のギヤホイールは,トランスミッション入力シャフトに,それに対して回転しないように連結される。
【0009】
ハイブリッド駆動系のさらに好ましい例示的な実施形態は,遊星歯車機構の遊星歯車キャリアが,可変速トランスミッションの副軸に連結されることを特徴とする。遊星歯車キャリアは,例えば,ギヤホイールを使用して,副軸を介してトランスミッション入力シャフトに連結される。
【0010】
ハイブリッド駆動系のさらに好ましい例示的な実施形態は,遊星歯車機構の太陽歯車が,出力シャフトに連結されることを特徴とする。出力シャフトへの連結は,例えば,ギヤホイールを用いて行われ,ギヤホイールの1つは,遊星歯車機構の太陽歯車に,それに対して回転しないように連結されて,別のギヤホイールと係合し,この別のギヤホイールは,出力シャフトに,それに対して回転しないように連結される。
【0011】
ハイブリッド駆動系のさらに好ましい例示的な実施形態は,クラッチが,遊星歯車機構の太陽歯車と出力シャフトとの間に配置されることを特徴とする。遊星歯車機構の太陽歯車と出力シャフトとの間の回転可能に固定された連結は,クラッチを使用して,必要に応じて確立するか,または切り離すことができる。
【0012】
ハイブリッド駆動系のさらに好ましい例示的な実施形態は,さらなる電気機械が,出力シャフトに連結されることを特徴とする。さらなる電気機械は,クラッチを介在させた連結でもって,遊星歯車機構の太陽歯車を介して出力シャフトに連結されるのが好ましい。さらなる電気機械およびクラッチにより,さらなる電気機械を用いたランニングスタート(running start)が容易に可能になる。
【0013】
ハイブリッド駆動系のさらに好ましい例示的な実施形態は,クラッチ装置がダブルクラッチとして具現化され,可変速トランスミッションがダブルクラッチトランスミッションとして具現化されることを特徴とする。
【0014】
可変速トランスミッションの副軸が,例えば,ギヤホイールを介して出力シャフトに連結される。
【0015】
本発明のさらなる利点,特徴,および詳細が,図面を参照して2つの例示的な実施形態を説明した以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】電気機械を有する,第1の例示的な実施形態によるハイブリッド駆動系の概略図を示している。
【図2】さらなる電気機械を有する,図1と同様の例示的な実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2はそれぞれ,2つの異なる例示的な実施形態による,内燃機関2を有するハイブリッド駆動系1,41を示している。同じ参照符号を使用して同一のまたは同様の部品を示している。以下の文中では,2つのハイブリッド駆動系1,41の共通の特徴が最初に説明される。次いで,2つの例示的な実施形態の違いが詳細に説明される。
【0018】
内燃機関2は,象徴的に示された駆動トルク4を出力し,この駆動トルクはトランスミッション5で変換され,象徴的に8で示すように,出力シャフト6を介して自動車の駆動ホイールに伝動される。トランスミッション5は,可変速トランスミッション,特にダブルクラッチトランスミッションとして具現化されている。
【0019】
内燃機関2は,第2のトランスミッション入力シャフト14に,それに対して回転しないように,第2のクラッチ12を介して連結することができ,前記トランスミッションシャフト14は中空シャフトとして具現化されている。トランスミッション5はまた,結合ギヤホイール16,17を介して出力シャフト6に連結された副軸15を含む。
【0020】
クラッチ装置10は,内燃機関2とトランスミッション5との間に連結されている。クラッチ装置10は,第1のクラッチ11および第2のクラッチ12のダブルクラッチとして具現化されている。内燃機関2は,トランスミッション5の第1のトランスミッション入力シャフト13に,それに対して回転しないように,第1のクラッチ11を介して連結することができる。
【0021】
内燃機関2と出力シャフト6との間の様々な変速比を可能にするために,ギヤホイール対21,22,23,24を使用して,可変速トランスミッション5の4つの異なるギヤ段が形成されている。第1のトランスミッション入力シャフト13は,2つのギヤホイール対21,23を介して副軸15に連結することができる。第2のトランスミッション入力シャフト14は,2つのギヤホイール対22,24を介して副軸15に連結することができる。
【0022】
さらに,図1に示したハイブリッド駆動系1は,駆動シャフト31を有する電気機械30を含む。電気機械30の駆動シャフト31は,遊星歯車機構33の遊星歯車キャリア32に,それに対して回転しないように連結されている。遊星歯車は,遊星歯車キャリア32に回転可能に取り付けられ,内歯歯車(図示せず)および太陽歯車35の両方と係合している。太陽歯車35は,ギヤホイール37に,それに対して回転しないように,連結シャフト36を介して永続的に連結され,前記ギヤホイール37は,第1のトランスミッション入力シャフト13に,それに対して回転しないように連結されたさらなるギヤホイール38と噛み合っている。遊星歯車キャリア32は,ギヤホイール59を介して出力シャフト6に永続的に連結されている。
【0023】
図1に示したハイブリッド駆動系1では,電気機械30は,遊星歯車機構33を介して第1のトランスミッションシャフト13および出力シャフト6に機能上永続的に連結されている。これは,内燃機関2の低温始動を単純な方法で可能にする。
【0024】
さらに,内燃機関2,電気機械30,および出力シャフト6の間の回転数比を単純な方法で可変にすることができる。
【0025】
図2に示したハイブリッド駆動系41は電気機械50を含み,中空シャフトとして具現化された駆動シャフト51が,その電気機械から延びている。電気機械50の駆動シャフト51は,遊星歯車機構53の遊星歯車キャリア52に,それに対して回転しないように連結されている。遊星歯車は,遊星歯車キャリア52に回転可能に取り付けられ,内歯歯車(図示せず)および太陽歯車55と係合している。太陽歯車55は,2つのギヤホイール57,58を介して,また,クラッチ56を使用して,出力シャフト6に連結することができる。遊星歯車キャリア52は,歯車対23を構成するギヤホイール39,40を介して,第1のトランスミッション入力シャフト13に永続的に連結されている。
【0026】
ハイブリッド駆動系41は,駆動シャフト61がそこから突出するさらなる電気機械60を含み,前記駆動シャフト61は,中空シャフトとして具現化された,電気機械50の駆動シャフト51を貫通し,遊星歯車機構53の太陽歯車55は,駆動シャフト61に,それに対して回転しないように取り付けられている。さらなる電気機械60の駆動シャフト61は,クラッチ56および2つのギヤホイール57,58を介して,出力シャフト6に連結することができる。
【0027】
クラッチ56がギヤホイール57,58を介してつながると,さらなる電気機械60を使用して,自動車の駆動ホイールを駆動することができる。これは,特に,ランニングスタート,すなわち,クラッチ56がつながる前に,内燃機関2の回転数を上げることを可能にする。代替案として,またはこれに追加して,内燃機関2に機能上連結されたさらなる電気機械(図示せず)を設けて,内燃機関を始動させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ハイブリッド駆動系
2 内燃機関
5 可変速トランスミッション
6 出力シャフト
10 クラッチ装置
13 トランスミッション入力シャフト
30 電気機械
33 遊星歯車機構
41 ハイブリッド駆動系
50 電気機械
53 遊星歯車機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)と,電気機械(30,50)と,クラッチ装置(10)と,トランスミッション入力シャフト(13)を出力シャフト(6)に連結することができ,遊星歯車機構(33,53)を有する可変速トランスミッション(5)とを有するハイブリッド駆動系であって,前記電気機械(30,50)が,前記遊星歯車機構(33,53)を介して,前記トランミッション入力シャフト(13)および前記出力シャフト(6)に連結されていることを特徴とするハイブリッド駆動系。
【請求項2】
前記遊星歯車機構の遊星歯車キャリア(32,52)が,前記電気機械(30,50)の駆動シャフト(31,51)に,それに対して回転しないように連結されていることを特徴とする,請求項1に記載のハイブリッド駆動系。
【請求項3】
前記遊星歯車機構(33)の前記遊星歯車キャリア(32)が,前記出力シャフト(6)に連結されていることを特徴とする,請求項2に記載のハイブリッド駆動系。
【請求項4】
前記遊星歯車機構(33)の太陽歯車(35)が,前記可変速トランスミッション(5)の前記トランスミッション入力シャフト(13)に連結されていることを特徴とする,請求項3に記載のハイブリッド駆動系。
【請求項5】
前記遊星歯車機構(53)の前記遊星歯車キャリア(52)が,前記可変速トランスミッション(5)の副軸(15)に連結されていることを特徴とする,請求項2に記載のハイブリッド駆動系。
【請求項6】
前記遊星歯車機構(53)の太陽歯車(55)が,前記出力シャフト(6)に連結されていることを特徴とする,請求項5に記載のハイブリッド駆動系。
【請求項7】
クラッチ(56)が,前記遊星歯車機構(53)の前記太陽歯車(55)と前記出力シャフト(6)との間に配置されていることを特徴とする,請求項6に記載のハイブリッド駆動系。
【請求項8】
さらなる電気機械(60)が,前記出力シャフト(6)に連結されていることを特徴とする,請求項1〜7のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動系。
【請求項9】
さらなる電気機械が,前記内燃機関(2)に連結されていることを特徴とする,請求項1〜8のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動系。
【請求項10】
前記クラッチ装置(10)は,ダブルクラッチとして具現化され,前記可変速トランスミッション(5)は,ダブルクラッチトランスミッションとして具現化されることを特徴とする,請求項1〜9のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動系。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−157061(P2011−157061A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−1957(P2011−1957)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】