説明

ハウス内張り用二重膜フィルム

【課題】農業用ハウス内でのハウス内張りに用いられる農業用二重膜フィルム、特に好ましくは断熱性、通気性及び収束性に優れた農業用フィルムを提供する。
【解決手段】防曇性を有する合成樹脂製フィルムと棘部を有する有棘形状の微細孔を設けた防曇性を有する合成樹脂製フィルムとが重ねられ、少なくとも両側長手方向端辺が接着により閉じられてなる二重膜フィルムであって、該二重膜フィルムが送風口を有し、該送風口から送風した際に膨らむことを特徴とする、ハウス内張り用二重膜フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内でのカーテン用途、特にハウス天井部のカーテン用途に用いられる農業用ハウス内張り用二重膜フィルム、特に好ましくは断熱性並びに通気性に優れた農業用ハウス内張り用二重膜フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、農業用ハウスにおいて、暖房能力の向上を目的として、色々な試みが提案されている。ハウス内の温度、湿度等は作物の成長に大きな影響を与えるため、気候に応じた調整が必要である。特に近年大型化したハウス栽培では、ハウス骨組みに固定展張する外張り用農業フィルムのほかに、ハウス内に、いわゆるカーテン材として、又は作物を更に被覆する形のベタがけ材として、内張り用農業フィルムを用いる方法が行われてきている。また一方で、ハウスの構造全体を二重のフィルムにして、内部に送風機で空気を送り込み、断熱性を向上させた二重膜構造のハウスも提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、単純に二枚のフィルムを縫合して 作製した二重膜フィルムに送風すると、過度にフィルムが膨張した場合、端畝部に掛かかるため、条件によっては作物生育が悪くなる、作業性が劣るなどの問題があった。また、送風機から出る空気中の湿度が凝縮し、二重膜フィルム内部に水が溜まってフィルムが破れる等の問題があった。
【0004】
また、その水滴凝縮防止を目的として、通水孔を設けた農業フィルムもいくつか提案されており、合成樹脂製フィルムに直径2.3mmの小孔を10cm間隔で設けた有孔フィルムをハウス内側となる側に使用した内張りカーテンやトンネルに用いる二重膜フィルムが記載されている(引用文献2)。
【0005】
しかしながら、従来の孔あけフィルムを用いた二重膜フィルムでは、防水及び保温性を図るためには孔の大きさを小さくする必要があるが、その反面十分な通気が行われないという欠点があり、逆に通気性を確保するために通気孔の大きさを大きくすると、今度は断熱効果が損なわれ、また空気の流出が大きく、二重膜としての機能が発揮出来ないという問題があった。
【0006】
また、冬場や曇天時等のハウス内への太陽光の 照射が少ないときや、ハウス内の換気が必要となるときには、ハウス内天井部などに展張した内張りカーテンを開く必要があるが、二重膜フィルムを内張りカーテンに使用すると、二重膜フィルムの内側面同士がべたつくためフィルムをコンパクトなサイズに折り畳むことが困難であり、折り畳んだフィルムがかさばるとハウス内での作業性に支障をきたす。この場合、無理に折り畳めばある程度の狭い幅にまで収束させることは可能ではあるが、カーテンを閉じるときにフィルムの内側面同士がべたつくため作業者に大きな労力の負担がかかる。
更に、ハウス内天井部用内張りカーテンとして使用する場合、ワイヤー線をハウス内に敷設し、その上に内張りカーテンを載せ、開閉作業を実施するのが一般的であるが、フィルムの強度が不足していると、ワイヤー線とフィルムが擦れて破れるという問題がある。特に、二重膜構造を有した場合は、開閉時の抵抗が大きくなるため、その問題が大きくなる。
【0007】
【特許文献1】特開2004−141017
【特許文献2】特開2005−333932
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかして、本発明の目的は、ハウス内の断熱性を犠牲にすることなく、適性な通気送風性並びに、フィルムの均一膨張性及び水抜け性を有し、耐擦れ性も良好であり、カーテンを開くときにもコンパクトな幅にまで折り畳むことが容易である(良好な収束性を有する)ことを特徴とするハウス内天井部などで用いられる内張りカーテン用二重膜フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、防曇性合成樹脂製フィルムにニードル等で特殊な形状の孔空け加工を行って得られる、特定形状の微細孔を複数有する防曇性有孔合成樹脂製フィルムと該特定形状の微細孔を有さない防曇性合成樹脂製フィルムとが重ねられて、少なくとも長手方向両端部が接着により閉じられてなる、送風した際に膨らむことを特徴とする二重膜フィルムをハウス内張り用に使用することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二重膜フィルムによれば、従来のカーテンにくらべて、ハウス内の断熱保温効果を飛躍的に向上させ、且つ適度な通風性を発揮することで、ハウス内の空気を循環させ、温湿度のムラを無くすことが出来、作物生育性を向上させることが出来、また暖房費用の節減が可能である。また、本発明の二重膜フィルムの下側のフィルムに特殊な微細孔フィルムを使用することにより、二重膜フィルムをハウスサイド部まで折り畳む(収束させる)場合には二重膜フィルムの内側面同士のべたつきが小さいためフィルムを容易にコンパクトな幅にまで収束させることができ、また、微細孔から出る空気の対流効果によりハウス内の温湿度環境を均一にすることができ、その結果、ハウス内作物の生育を均一にすることができる。更に、本発明の二重膜フィルムの下側のフィルムに特殊な微細孔フィルムを使用することにより、二重膜を膨張させる空気の湿気を微細孔から逃し、二重膜内に水が滞留するのを防ぎ、フィルムの破れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の二重膜フィルムに使用する防曇性を有する合成樹脂製フィルムとしては、合成樹脂製フィルムに防曇剤を配合したもの(以下、「練り込み防曇フィルム」ともいう。)、あるいは防曇性の被膜を有するもの(以下、「塗布防曇フィルム」ともいう。)が挙げられる。
【0013】
合成樹脂製フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、フッ素樹脂などの、従来農業用フィルム、透湿性フィルム、防曇性フィルムの材料として知られている任意の公知の熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。中でも、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを用いることが、柔軟性が良好となるので好ましい。
【0014】
また、合成樹脂製フィルムとしては、防塵性や柔軟性及び強度などの点から積層フィルムを用いるのが好ましく、より好適にはポリオレフィン系樹脂からなる積層フィルムが使用される。ポリオレフィン系樹脂からなる積層フィルムにおいて、各層のポリオレフィン系樹脂の含有量は50〜100重量%であるのが好ましい。ポリオレフィン系樹脂からなる積層フィルムの好適な例としては、ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−α−共重合体又は酢酸ビニル含有量10重量%未満のエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する層と、酢酸ビニル含有量10〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する層とから少なくともなる積層フィルムがあげられる。
上記のメタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられ、特に炭素原子数4〜8のα−オレフィンが好ましい。
【0015】
上記のメタロセン触媒成分としては、例えば、特開平6−9724号公報、特開平6−136195号公報などに記載されているメタロセン触媒成分を含む、いわゆるメタロセン系オレフィン重合用触媒が用いられる。斯かる重合用触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも一個を有する周期律表第IVB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)などから形成される。
【0016】
メタロセン触媒成分存在下にエチレンと上記のαオレフィンとを共重合させることによって得られたエチレン−αオレフィン共重合体樹脂は、従来汎用的なチーグラー系触媒合成のエチレン−αオレフィン共重合体樹脂と比較して、樹脂としての分子量分布が極めて狭く、組成分布が極めて狭い分子構造を有している。そのため、同じ密度の樹脂組成で比較した場合、メタロセン触媒合成のエチレン−αオレフィン共重合体樹脂を用いたフィルムは、卓越した強度、透明性、耐ブロッキング性を有する。
【0017】
前記のメタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−αオレフィン共重合体の密度は、要求される透光性、防塵性、強度、耐融着性、耐久性、耐ベタツキ性、柔軟性などの物性の観点から、通常0.89〜0.93g/cmの範囲であり、好ましくは0.90〜0.93g/cm、より好ましくは0.91〜0.93g/cmの範囲である。密度が0.89g/cm未満では、強度、耐融着性、耐ベタツキ性などの物性が劣るため好ましくなく、一方、密度が0.93g/cmを超える場合は、透光性、柔軟性などの物性が劣るため好ましくない。上記の密度はASTM D1505に準拠した方法で測定した値である。
また、本発明における上面のポリオレフィン系積層フィルムの伸長率は1.5以下であることが好ましい。
【0018】
また、前記のメタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−αオレフィン共重合体のMFRは、特に制限されないが、通常0.2〜20g/10分、好ましくは0.5〜5g/10分の範囲である。MFRが0.2g/10分未満では、フィルム成形性、透光性などの物性が劣るため好ましくなく、一方、20g/10分を超えると、フィルム成形性、強度などの物性が劣るため好ましくない。上記のMFRはASTM D1238に準拠した方法で測定した値である。
【0019】
前記のメタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−αオレフィン共重合体を他のオレフィン系樹脂との組成物として使用する場合、メタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−αオレフィン共重合体の含有量は、50重量%以上であるが、好ましくは60重量%以上である。メタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−αオレフィン共重合体の含有量が50重量%未満では、透光性、防塵性、耐擦れ性等の強度、耐融着性、耐久性などの物性が農業用空気膜構造ハウスの被覆材として要求されるレベルには至らない恐れがあり、好ましくない。なお、この場合、他のオレフィン系樹脂としては、従来汎用のチーグラー系触媒合成のエチレン−αオレフィン共重合体樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、低圧法中高密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂、プロピレン−αオレフィン共重合体樹脂、ポリブテン樹脂などが挙げられる。
【0020】
本発明におけるポリオレフィン系積層フィルムの好ましい態様として、展張時に外側となる外層、中間層、内層の少なくとも3層以上からなり、外層、又は外層と内層の樹脂成分として、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を50重量%以上100重量%以下、好ましくは55重量%以上95重量%以下含有する樹脂組成物を用いるのが好ましい。中間層又は、中間層と内層に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を50重量%以上100重量%以下、好ましくは55重量%以上98重量%以下含有する樹脂組成物を用いることができる。外層、又は外層と内層の樹脂成分として、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−αオレフィン共重合体樹脂の含有量が50重量%未満では、透光性、防塵性、強度、耐融着性、耐久性などの物性が農業用空気膜構造ハウスの被覆材として要求されるレベルには至らない恐れがあり、好ましくない。また、本発明においては、外層、中間層、及び内層の樹脂成分として、メタロセン触媒で共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合樹脂を50重量%以上100重量%以下、好ましくは55重量%以上95重量%以下含有する樹脂組成物を用いることもできる。
【0021】
多層構成の樹脂フィルムの製造方法としては、特に限定されずに公知の製造方法を使用することができ、多層構成の層厚さ比は特に限定されないが、例えば3層構成の場合には、成形性や透明性及び強度の点から1/0.5/1〜1/5/1の範囲が好ましく、1/2/1〜1/4/1の範囲がより好ましい。また、外層と内層の比率としては、特に規定されるものではないが、得られるフィルムのカール性から同程度の比率とするのが好ましい。
【0022】
本発明に用いる合成樹脂製フィルムには、その他、その用途に応じて任意の公知の添加剤を配合することが可能である。このような添加剤としては例えば、可塑剤、紫外線防止剤、光安定剤、保温剤、滑剤その他種々の添加剤が挙げられる。
【0023】
合成樹脂製フィルムの厚さは、10〜1000μm、好ましくは20〜200μmであることが好ましい。薄すぎると、孔空け後のフィルムの強度が不十分となりやすい。一方、厚すぎると、孔空け加工が難しくなるので好ましくない。
【0024】
前記防曇剤としては、農業用フィルムに通常配合される一般的なものが使用可能である。このようなものとしては例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられるが、特に好ましいものとして、炭素数が14〜22の脂肪酸と、ソルビタン、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールとのエステル或いはそのアルキレンオキサイド付加物を主ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は1種或いは2種以上を混合して使用することが可能である。配合量としては、合成樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部が好ましい。
【0025】
防曇性の被膜としては、既に公知の農業用フィルムに用いることが出来る防曇性被膜を適用することが出来る。このようなものとしては、好ましくは無機コロイド物質と親水性有機化合物を主成分とした防曇被膜や無機コロイド物質とアクリル系樹脂を主成分とする防曇被膜を用いることが出来る。
【0026】
本発明の二重膜フィルムにおいては、ハウス内部で展張したときに、ハウス内部の下側に位置するフィルム(以下、「下側フィルム」ともいう。)に塗布防曇フィルムを用い、ハウス内部の上側に位置するフィルム(以下、「上側フィルム」ともいう)に練り込み防曇フィルムを用いると、下側フィルムと上側フィルムの接着がし易いので好ましく、またフィルムの防曇性と防曇持続性とが両立するので好ましい。この際、下側フィルムはハウスの下側に防曇被膜側が位置するようにするとよい。(図1を参照。)
【0027】
本発明の二重膜フィルムは一方の防曇性を有する合成樹脂製フィルムに棘部を有する有棘形状の微細孔が設けられている。
【0028】
該微細孔は、例えば、主に不織布や織物、人工皮革の風合い加工用として使用される機械であるニードルプリッカー加工法を応用した、特殊な針による穿孔法により設けることができる。
【0029】
具体的には、図2a及びbに概略図を示すように、針の外周部に1以上の微少な棘1cを有する特殊形状のニードル1を合成樹脂製フィルムに突き刺すことにより得られる。
【0030】
図2a及びbは、ニードル1の拡大図であり、図2aは正面図、図2bは側面図を示す。ニードル1は、基部1aから先端部に向けて、尖っており、その先端部には微少幅(W)の切刃1bがある。この先端部の微少幅は、フィルムに形成される孔の基本部分の大きさに関係するため、好ましくは、10μm〜300μm、更に好ましくは30μm〜150μmであると良い。
【0031】
また、本発明に用いる特殊なニードル1は、先端近くのニードル外周の一部、好ましくはニードル側方部に、微少な棘1cを1以上、好ましくは2以上設けている。棘は、ニードルの軸に対し略直角の方向に突き出しており、棘の形状も基から先端に向けて尖った形をしていればよく、棘1cは、例えばニードルの先端部から300〜1000μmの位置に一つと、800〜2000μmの位置に設けられることが好ましい。棘1c自体の長さは、1μm〜300μmの範囲が好ましい。
【0032】
これらの棘を有するニードル1は、図3に示すように、好ましくはロール体2に複数取付けられたニードルロール2を形成し、平面上若しくは、他のロール体に巻きつけられた被加工用のフィルム3に対し、そのニードルロールを押付け回転することにより、複数の微細孔をフィルムに形成することが可能となる。なお、必要な微細孔の数や間隔に応じて、フィルム3に対して複数のニードルロールによる加工を行なったり、フィルムを複数回ニードルロールに押し当て加工する方法を採用してもよい。
【0033】
該微細孔の直径は、細孔の最大直径が少なくとも500μm以下、好ましくは200μm以下、また最小直径が10μm以上、好ましくは20μm以上であることが好ましい。更に棘状切欠き部の長さは好ましくは50μm以下〜0.05μm以上、更に好ましくは20μm以下〜0.1μm以上あるとよい。
【0034】
また、棘を有するニードルは、フィルムに突き刺し引き抜く際に、棘が切欠き部の周りの片を引っ掛けて、引き抜き側に引っ張る作用も有する。従って、この特殊なニードル穿孔法により得られる微細孔は、その断面を見た場合、穴の周囲に棘を有する有棘形状となる。
【0035】
すなわち、本発明の下側フィルムに設けられた微細孔の横断面図の概略イメージ図を図5に示すが、フィルム3のうち、微細孔の周囲の一部4cは、ニードル1を突き刺した側に若干突出した形状を有する。
【0036】
棘部を有する有棘形状の微細孔を設けることによって、棘部が開閉弁の役割を果たし、二重膜フィルムが送風により膨れた際に、該膨れを保ちながらも、適度な通気性と水抜き性が発揮される。
【0037】
本発明において下側フィルムを用いる際には、基本的にはこの微細孔を設けたフィルムのどちらの面をハウスの下側にして利用してもよい。
【0038】
本発明の合成樹脂製フィルムに設けられる複数の微細孔の単位面積当たりの数としては、設ける孔の面積にもより異なるが、好ましい防曇性及び透湿性を示しかつ他の物性を満たすために、1平方インチ(6.45cm)あたり800〜8000個(即ち、1cmあたり125〜1250個)の範囲、更に好ましくは1平方インチあたり1500〜6000個(1cmあたり230〜930個)設けることが好ましい。
【0039】
本発明の二重膜フィルムは、防曇性を有する合成樹脂製フィルムと棘部を有する有棘形状の微細孔を設けた防曇性を有する合成樹脂製フィルムとが重ねられ、少なくとも両側長手方向端辺が接着により閉じられているが、更に両側幅方向端辺が閉じられているのが好ましい。なお、送風機による送風のための送風口は幅方向端辺に設けるのが好ましい。また、図6に示したように二重膜フィルムが、幅方向に好ましくは5〜100cm、より好ましくは10〜60cmの間隔で長手方向に接着により閉じられ、幅方向にチューブ状に区分けされていると、送風口から送風し、二重膜フィルムを膨らませた際、フィルムの膨みは十分であり、膨らました二重膜フィルムの厚みが全体的に概均一になり好ましい。該間隔が狭過ぎると、送風時にフィルムが十分に膨張せず、本来の効果である断熱保温性が損なわれる恐れがある。更に各区分け接着部に、少なくとも1箇所の未接着部分を設けることにより、区分け部分間を空気が循環しやすくなり、より温湿度ムラを無くすことができる。間隔が広過ぎると、断熱保温性は問題ないが、過膨張により、接着部に応力が集中して、フィルムが破損する恐れがある。
接着方法としては、一般に、高周波ミシン、高周波ウエルダー、熱溶着機による溶着方法が挙げられるが、送風、膨張の際に接着間が剥離しなければ、使用する合成樹脂に合った方法を選択することが出来る。
【0040】
本発明の二重膜フィルムにおいては、下側フィルムとして塗布防曇フィルムに棘部を有する有棘形状の微細孔が設けられているものを用い、上側フィルムとして練り込み防曇フィルムを用いると、下側フィルムと上側フィルムの接着がし易く、またフィルムの防曇性と防曇持続性とが両立するので最も好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
<実施例1〜4>
(1)防曇性合成樹脂製フィルム
練り込み防曇フィルムであるMKVドリーム(株)が市販しているPOムテキ(0.05mm厚み)を用いた。
【0042】
(2)棘部を有する有棘形状の微細孔を設けた防曇性を有する合成樹脂製フィルムの作製
(i)基体フィルムの作製
三層インフレーション成形装置として三層ダイに100mmφ((株)プラ工研製)を用い、押出機は外内層を30mmφ((株)プラ技研製)2台、中間層を40mmφ((株)プラ技研製)として、成形温度160 ℃、ブロー比2.0、引取速度10m/分にて厚さ0.10mmの積層フィルムを得た。尚、使用樹脂は以下の通りである。
内層:メタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン(株)製 カーネルTMKF271(密度0.913g/cm、MFR=2.4g/10分)60重量%、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製 ノバテックTMYF30(密度0.920g/cm、MFR=1.1g/10分)40重量%
中間層:エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン(株)製 ノバテックTMLV430(MFR1.0g/10分、酢酸ビニル含有量15重量%)100重量%
外層:メタロセン触媒を用いて合成されたエチレン−α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン(株)製 カーネルTMKF271(密度0.913g/cm、MFR=2.4g/10分)60重量%、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製 ノバテックTMYF30(密度0.920g/cm、MFR=1.1g/10分)40重量%
【0043】
(ii)防曇剤組成物被膜層の形成
表1に示した主成分とバインダー成分と架橋剤及び液状分散媒とを配合して防曇剤組成物を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
(i)で調製した基体フィルムの片面に(積層フィルムの内層の上に)、上記の防曇剤組成物をテストコーターを用いて塗布した。塗布したフィルムは80℃の乾燥室で1分間乾燥して液状分散媒を揮散させた。
【0046】
(iii)ニードル加工
上記(i)で得られたフィルムに対し、図3に示すようなロール上に複数付けられた図2に示す形状のニードルプリッカー加針による穿孔法により、1平方インチ当たり1200本(実施例1)、2030本(実施例2)、4060本(実施例3)、6190本(実施例4)の孔を形成できるように、穿孔処理を施した。
【0047】
(3)二重膜フィルムの作成
幅(縦)1.6m×長さ(横)9mの上記(1)の防曇性合成樹脂製フィルムを上側フィルムとして用い、幅(縦)1.6m×長さ(横)9mの(2)の棘部を有する有棘状の微細孔を設けた防曇性を有する合成樹脂製フィルムを下側フィルムとして用い、両フィルムを重ね、両側長手方向端辺及び両側幅方向端辺をヒートシーラーにて溶着し、二重膜フィルムを作成した。更に、該二重膜フィルムを幅方向に40cmの間隔で、長手方向にヒートシーラーにて溶着し、チューブ状に区分けした。なお、両側長手方向端辺の一箇所を未溶着とし、送風口とした。また、各チューブ状区分け部の境界部(溶着部)の一箇所を未溶着とし、各チューブ状区分け部間を通気可能とした(図6)。
【0048】
<比較例>
(比較例1)下側フィルムにニードルプリッカーによる穿孔を行わなかったフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして二重膜フィルムを作成した。
(比較例2)下側フィルムに通常の熱溶融針を用いて、2mm径の孔を、10cm×20cmに1つの間隔でスポット的に穿孔したフィルムを用いた以外は実施例1と同様にして二重膜フィルムを作成した。
(比較例3)内張用農業用資材として従来より市販されている不織布(三井化学プラテック社製:商品名「無天露」)を二重膜フィルムの代りに用いた。
【0049】
<評価方法>
三重県松坂市嬉野町の圃場に、間口3m、奥行9m、棟高2mの簡易パイプハウスを構築し、外張り用フィルムを被覆した。そして、図7にあるように、ハウス内の天井部、内張りカーテン設備にそれぞれの二重膜フィルムを設置した。尚、送風に使用する送風機は、定格65W、最大送風量60mの市販送風機を使用した。
尚、ハウス内には30cmの幅で4つの畝を設け、小松菜を栽培し、次のような評価試験を行った。その結果を表1に示す。
【0050】
1.膨張試験
上記送風機にて送風し、二重膜フィルムの空気層形成性(膨張性)を調べた。
【0051】
評価基準は以下の通り。
◎ 空気流出が殆どなく、規定体積の90%以上膨張
○ 若干空気流出はするが、規定体積の70%以上膨張
△ 空気流出が大きく規定体積の50%以下の膨張
× 殆ど膨張しない。
【0052】
2.透明性試験
ハウス天井部の影響を測定するために、ハウス内中心部(高さ0.5m)で、照度計(ミノルタ製デジタル照度計T−1)を用い、午後1時に照度を測定、外界との照度比(外界100とした場合の照度比)を調べた。
【0053】
評価基準は照度比(%)で表示
【0054】
3.水抜け性試験
二重膜空気層内に溜まる水量を定期的に観察した。
評価基準は以下の通り
◎ 水の溜まりが全くない。
○ 水の溜まりがやや認められるが、水滴付着程度。
× 水の溜まりがやや認められる(底に若干滞留)。
△ 水の溜まりが大きく、二重膜フィルム内に大きな水溜りがある。
× 水の溜まりが大きく、二重膜フィルムが破損する。
4.耐擦れ性試験
ワイヤー線を張った上に二重膜フィルムをハウス内天井部に展張し、1日2回水平に開閉を行い、ワイヤー線にて擦れた箇所を下記基準で評価した。
◎ 擦れによるフィルムの傷が全く見られない。
○ 擦れにより、フィルムに傷が発生するが、殆ど目立たない。
△ 擦れにより、フィルムに目立つ傷が発生するが、破れに至らず。
× 擦れにより、フィルムに破れが生ずる。
5.収束性
二重膜フィルムの送風機を停止させ、30分経過後にハウスサイド側に収束させ、収束したフィルムの幅を下記基準で評価した。
◎ 収束したフィルムの幅が、ハウス幅寸法に対して10%以下
○ 収束したフィルムの幅が、ハウス幅寸法に対して11〜20%
△ 収束したフィルムの幅が、ハウス幅寸法に対して21〜30%
× 収束したフィルムの幅が、ハウス幅寸法に対して31%以上
【0055】
6.保温性試験
ハウス内中心部(高さ1.5m)と、ハウスサイド部(サイドより30cm隔てた位置、且つ高さ1.5m 図8参照)にて連続式温度測定器(おんどとり)にて温度を測定、ハウス中心部とサイド部間の平均温度差を調べた。
【0056】
7.生育性試験
該ハウス内で栽培した小松菜の生育性について、中2畝と外2畝間の成長差異を調査
した。
【0057】
生体重差(株平均/区10株) g
【0058】
【表2】

【0059】
表2から、本発明の二重膜フィルム(実施例1〜4)を内張りカーテンに使用すると、膨張性及び水抜け性が良好であることが分かる。また、表2により、本発明の二重膜フィルムを内張りカーテン用途に使用すると、ハウス内において均一な保温性を得ることができ、作物生育性を向上させることが出来ることが示された。また、本発明の二重膜フィルムは比較例に比べて耐擦れ性及び収束性においても優れることが表2から示される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】ハウス内張りカーテン二重膜フィルムの概念図
【図2a】本発明構成の下側フィルムに、微細孔を形成するための棘状突起を有するニードルの正面図を示す概念図
【図2b】本発明構成の下側フィルムに、微細孔を形成するための棘状突起を有するニードルの側面図を示す概念図
【図3】本発明構成の下側フィルムに微細孔を形成するためのニードルによるフィルム加工の概念図
【図4】本発明構成の下側フィルムに形成された微細孔の孔形状を示す概念図
【図5】本発明構成の下側フィルムに形成された微細孔の孔形状の横断面を示す概念図
【図6】本発明構成(二重膜フィルム)の全体構成概念図
【図7】本発明構成(二重膜内張りカーテン)のハウス内使用時の概念図
【図8】本発明構成(二重膜内張りカーテン)のハウス内使用時の温度測定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防曇性を有する合成樹脂製フィルムと棘部を有する有棘形状の微細孔を設けた防曇性を有する合成樹脂製フィルムとが重ねられ、少なくとも両側長手方向端辺が接着により閉じられてなる二重膜フィルムであって、該二重膜フィルムが送風口を有し、該送風口から送風した際に膨らむことを特徴とする、ハウス内張り用二重膜フィルム。
【請求項2】
ハウスへ二重膜フィルムを被覆するときに、棘部を有する有棘形状の微細孔を設けた防曇性を有する合成樹脂製フィルムがハウス内側に向くようにして使用される、請求項1に記載のハウス内張り用二重膜フィルム。
【請求項3】
棘部を有する有棘形状の微細孔を設けた防曇性を有する合成樹脂製フィルムが防曇性の被膜を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のハウス内張り用二重膜フィルム。
【請求項4】
棘部を有する有棘形状の微細孔を設けた防曇性を有する合成樹脂製フィルムがメタロセン触媒を用いて合成された密度が0.89〜0.93g/cmのエチレン−α−オレフィン共重合体を50重量%以上含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハウス内張り用二重膜フィルム。
【請求項5】
二重膜フィルムが幅方向に5〜100cmの間隔で長手方向に接着により閉じられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハウス内張り用二重膜フィルム。
【請求項6】
ハウス内カーテンとして使用される請求項1〜5のいずれか1項に記載のハウス内張り用二重膜フィルム。
【請求項7】
ハウス内天井部において使用される請求項6に記載のハウス内張り用二重膜フィルム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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