説明

ハウス用栽培装置及び同装置を備えたビニルハウス構造

【課題】簡単かつ低コストでビニルハウス内における栽培面積の割合を増大できるハウス用栽培装置及びビニルハウス構造を提供する。
【解決手段】作物を栽培するため栽培器8を、ビニルハウス1内に吊下状態で移動可能に配設したハウス用栽培装置6において、ビニルハウス1内の対向する位置に所定高さで架設された梁材5,5間に、この梁材5,5上を転動可能に掛け渡された移動パイプ7と、この移動パイプ7に、前後所定間隔をあけて係止された一対の吊下具60,60を介して吊下され、前記移動パイプ7の転動に伴って水平移動する栽培器8と、前記吊下具60の下部に取り付けられ、前記移動パイプ7に沿って伸延させたレール材9と、このレール材9に移動自在に吊下された収納箱10とを具備する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビニルハウス内における栽培面積の割合を増大できるようにしたハウス用栽培装置、及び同装置を備えたビニルハウス構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用のビニルハウス内においては、通常、歩行路となる分だけの幅をあけて複数条の畝が形成されて各種作物が栽培されている。作物が苺などであれば、例えば、図7に示すように、スタンド100に指示されたベンチ200に苺などを植えるプランタ300を載置して栽培器500を構成し、この栽培器500を複数列並べて栽培するようにしたものがある。図中、符合400はビニルハウスを示し、410はビニルハウス400を構築するアーチパイプ、420は補強パイプを示す。また、符合600は、隣り合う栽培器500間に設けられた歩行路を示す。
【0003】
かかるビニルハウス400内において、利便性や作業性を向上させるための装置が各種提案されている。例えば、必要な肥料やその他器具などを搬送する際に、前記歩行路を手押し車などを押して通行することが容易でないことから、簡易方式の搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
これは、回転軸が農業用温室の天井部位に設けた梁材の上に転動可能に、かつ棟方向に長く配置され、同回転軸の端部に回転伝達装置が設けられ、この回転伝達装置により回転軸を温室の間口方向へ転がして位置の変更が可能とされたもので、回転軸と同方向に長いレール部材が、回転軸の転がりを許容する構造の複数の吊り下げ部材によってほぼ水平に回転軸から吊り支持され、同レール部材を走行するトロリーが設置されている。したがって、このトロリーから吊り下げられたコンテナ等を温室の棟方向及び間口方向へ搬送することができる。
【特許文献1】特開2004−97166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の搬送装置は、確かに、低コストで実現できるとともに、作業性なども著しく向上するが、畝そのものはビニルハウス内の地上に形成されていたり、あるいは図7で示したように、ビニルハウス400内に複数の栽培器500を配設したりしており、これらの畝や栽培器500の間にはどうしても歩行路600(図7)が必要となっていることから、この歩行路600も複数本設けられることになり、ビニルハウスのサイズで規定されるハウス面積に対する作付面積すなわち栽培面積の割合を増加させることが難しかった。
【0006】
農業従事者からすれば、利便性や作業性の向上に加え、栽培面積(作付面積)の割合を向上させることのできるハウス用装置が望まれるところである。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することのできるハウス用栽培装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明では、作物を栽培するための栽培器を、ビニルハウス内に吊下状態で移動可能に配設したハウス用栽培装置であって、ビニルハウス内の対向する位置に所定高さで架設された梁材間に、この梁材上を転動可能に掛け渡された移動パイプと、この移動パイプに、前後所定間隔をあけて係止された一対の吊下具を介して吊下され、前記移動パイプの転動に伴って水平移動する栽培器と、前記吊下具の下部に取り付けられ、前記移動パイプに沿って伸延させたレール材と、このレール材に移動自在に吊下された収納箱と、を具備するハウス用栽培装置とした。
【0009】
(2)本発明は、上記(1)に記載のハウス用栽培装置において、前記栽培器は、前記一対の吊下具それぞれに、略水平に取り付けられた上部横枠部材と、所定の間隔をあけて並設とした複数のパイプ材からなる載置台部と、この載置台部の前後端部と前記各上部横枠部材とを連結する縦枠部材と、から構成されていることを特徴とする。
【0010】
(3)本発明は、上記(2)に記載のハウス用栽培装置において、前記上部横枠部材の両端に、それぞれ緩衝板を設けたことを特徴とする。
【0011】
(4)本発明は、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のハウス用栽培装置において、前記吊下具は、前記移動パイプに係止されるフックからなり、このフックの内側に前記移動パイプに摺接する複数の転動ローラを配設したことを特徴とする。
【0012】
(5)本発明は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のハウス用栽培装置において、前記レール材に、伸長自在に散液用ホースを這わせたことを特徴とする。
【0013】
(6)本発明では、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のハウス用栽培装置を、ビニルハウス内に複数設け、前記移動パイプを移動させることにより、隣接する栽培器間に歩行路を形成可能としたビニルハウス構造とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所定サイズのビニルハウス内において、簡単な操作で栽培器を水平移動させることにより、必要に応じて歩行路を形成することができるため、ハウスのサイズで規定されるハウス面積に対する作物の栽培面積(作付面積)の割合を大幅に増加させることが可能となる。さらに、栽培器には、収納箱が栽培器の移動方向と著項する方向に移動自在に設けられているため、例えば、収納箱を収獲器として利用して、収獲時には、栽培器で栽培した作物を収納箱に次々に移して行くなど、利便性が大幅に向上する。しかも、構造も簡単なことから大幅なコスト上昇となることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施形態に係るハウス用栽培装置は、作物を栽培するための栽培器を、ビニルハウス内に吊下状態で移動可能に配設したハウス用栽培装置であって、ビニルハウス内の対向する位置に所定高さで架設された梁材間に、この梁材上を転動可能に掛け渡された移動パイプと、この移動パイプに、前後所定間隔をあけて係止された一対の吊下具を介して吊下され、前記移動パイプの転動に伴って水平移動する栽培器と、前記吊下具の下部に取り付けられ、前記移動パイプに沿って伸延させたレール材と、このレール材に移動自在に吊下された収納箱とを具備する構成となっている。
【0016】
すなわち、作物を栽培するための栽培器をビニルハウス内に、移動パイプに係止した前後一対の吊下具を介して吊下した状態で設置しており、栽培器は、移動パイプの転動方向、すなわち回転移動方向に略水平に移動する。なお、栽培器の大きさ(幅、長さ)は、ビニルハウスの大きさに合わせて適宜設定すればよい。
【0017】
また、移動パイプは、梁材間にフリーな状態で横架されているだけなので、栽培器の大きさ(重量)などに拘わらず、例えば、移動パイプの中間や端部にチェーンブロックなどのような構造からなる周知の回転装置を取り付けておくなどの極めて簡単な構成でこれを転動させることができる。
【0018】
また、上記栽培器は、ビニルハウス内に、その移動方向に複数設けることで、前記移動パイプを移動させることによって隣接する栽培器間に歩行路を形成可能としたビニルハウス構造とすることができる。
【0019】
こうした構造とすることにより、所定サイズのビニルハウス内において、ハウスサイズにより規定されるハウス面積に対する作物の栽培面積割合を大幅に増加させることが可能となり、しかも、簡単な操作で栽培器を水平移動させることによって、必要に応じて歩行路を形成することができるため、作業性にも何ら支障を来すことがない。しかも、栽培器の設置高さは吊下する長さを調整するだけで簡単に設定することができるとともに、凸凹(でこぼこ)のある地上に設置するのに比べて、水平な状態で設置することが容易となる。
【0020】
また、栽培器を吊下する吊下具の下部には、移動パイプに沿って伸延させたレール材を配設しており、このレール材に、収獲時には作物を収納することができる収納箱を移動自在に吊下している。レール材から吊下された収納箱は、栽培器の栽培面に臨んでいるため、栽培器を移動させて歩行路を確保した作業者は、歩行路に位置しながら作物を収納箱に次々に移して行くことができるなど、利便性が大幅に向上する。なお、収納箱は、通常時には肥料やその他必要材料を入れておくなどもできるため、収獲時以外においても利用価値は極めて高い。
【0021】
栽培器は、前記一対の吊下具それぞれに、略水平に取り付けられた上部横枠部材と、所定の間隔をあけて並設とした複数のパイプ材からなる載置台部と、この載置台部の前後端部と前記各上部横枠部材とを連結する縦枠部材とから構成することができる。
【0022】
上部横枠部材や縦枠部材についても、載置台部を構成するパイプ材と同様のパイプ材で構成することが好ましく、例えば同一部材を用いれば、材料の種類を減少させ、かつ、部材同士を連結する連結具の共通化などが図れるため、よりコストダウンを図ることが可能となる。なお、載置台部を形成するパイプ材同士の間隔は、作物栽培用のプランタの大きさに合わせるとよい。
【0023】
また、上記上部横枠部材の両端には、それぞれ緩衝板を設けることが好ましい。緩衝板としては、その機能を発揮できるものであればその形状や大きさは何ら限定されないが、上部横枠部材の先端は、載置台部の側縁から所定長さだけ突出させておくことが好ましい。突出する長さとしては、隣り合う栽培器の緩衝板同士が付き合わされたときに、載置台部間に形成される空間が、載置台部からはみ出した作物(実など)の保護空間となるだけの長さとするべきである。
【0024】
例えば、作物が苺の場合、花柄が一定方向に伸びていくため、隣り合うプランタ間で、花柄の先端につく実同士が干渉し合わないように、プランタの載置台部への設置向きを配慮している。したがって、載置台部へプランタを2列に設置する場合は、苺の実は載置台部の外側に向くようにしている。
【0025】
そこで、上部横枠部材の先端は、載置台部の側縁から所定長さだけ突出させておき、緩衝板同士が付き合わされたときに、載置台部間に作物保護空間が形成できるようにしておくのである。
【0026】
ところで、栽培器を移動パイプに吊下するために設けられた前記吊下具は、前記移動パイプに係止されるフックからなり、このフックの内側に前記移動パイプに摺接する複数の転動ローラを配設しておくことが好ましい。
【0027】
すなわち、移動パイプを転動させるときに、移動パイプとこれに係止される吊下具との間には、摩擦抵抗が極力小さく作用するようにしておくことが好ましい。そこで、移動パイプと直接接触するフックの内側に転動ローラを配設しておくのである。なお、転動ローラの数は、移動パイプと安定して接触できるように複数個設けるとよい。
【0028】
さらに、前記収納箱を移動自在に吊下するレール材に、伸長自在に散液用ホースを這わせることもできる。
【0029】
すなわち、栽培器の長さ方向に沿って散液用ホースを伸長収縮させることができるため、作物に散水したり、あるいは薬剤などを散布したりするのに有用となる。このとき、散液用ホースは、レール材に収納箱を吊下するための箱用吊下具を共用することが可能である。
【0030】
以下、本実施形態に係るハウス用栽培装置及び同装置を備えたビニルハウス構造について、添付図面を参照しながらより具体的に説明する。図1は本実施形態に係るハウス用栽培装置を備えたビニルハウスの説明図、図2は同ハウス用栽培装置の正面図、図3は同斜視図、図4は同ハウス用栽培装置の移動状態を示す説明図、図5は収納箱の移動状態を示す説明図である。
【0031】
図1に示すように、ビニルハウス1は、アーチ部材や横パイプや補強材パイプなどからなる所定の骨組材を組み合わせることよって正面視蒲鉾状の形状に組上げられ、かかる骨組材に沿って合成樹脂フィルムからなるシート材(図においては省略)を張設して構築されている。
【0032】
すなわち、屋根を形成する複数のアーチ部材2を、構築するビニルハウス1の棟方向(長手方向)へ所定間隔を隔てて立設するとともに、各アーチ部材2間に、複数の長手状の横パイプ3を連結固定している。
【0033】
本実施形態に係るビニルハウス1のアーチ部材2は、曲率の異なる内側アーチパイプ20と外側アーチパイプ21とが、曲率半径方向に所定間隔を維持するように連結具22を介して連結された構成としており、1本のアーチパイプからなる構成よりも堅固な作りとしている。
【0034】
また、図1において符合4が示すものは、内側アーチパイプ20と外側アーチパイプ21とのうち、前記横パイプ3とを交差状態で連結した固定部を跨ぐように設けた面視略二等辺三角形状の補強連結具であり、これにより、アーチ部材2のねじれを防止している。この補強連結具4は、例えば、内側アーチパイプ20と横パイプ3とが連結固定されている場合は、外側アーチパイプ21を平面視略U字状の包持部40で抱持する一方、同包持部40を頂点として伸延する腕部41,41を内側アーチパイプ20と横パイプ3とが連結された固定部を跨ぐように配設される。
【0035】
すなわち、内側アーチパイプ20と外側アーチパイプ21とからなるアーチ部材2は、前記連結具22によって連結方向の強度は十分であるが、内側アーチパイプ20と外側アーチパイプ21とのねじれ方向への力には耐性が不十分である傾向があるため、上記補強連結具4を用いることで、ねじれにも強い、より堅固な作りとすることができる。
【0036】
また、ビニルハウス1の妻面方向に沿って、複数の梁材5がそれぞれ所定の同じ高さに横架されている。本実施形態では、かかる梁材5を、ビニルハウス1の棟方向に所定間隔をあけて複数本配設しているが、例えばビニルハウス1の前後の妻面側にそれぞれ設けるだけでもよい。
【0037】
上述したような構成の骨組材で構築されたビニルハウス1内に、本実施形態の要部をなすハウス用栽培装置6が複数配設されている。なお、図1においては、複数配設したハウス用栽培装置6のうちの一部のみを示してあるが、図4に示すように、ハウス用栽培装置6は、ビニルハウス1内に複数列配設されている。
【0038】
本実施形態に係るハウス用栽培装置6は、作物を栽培するため栽培器8を、ビニルハウス1内に吊下状態で移動可能に配設したものであり、図1に示すように、栽培器8は、前述したビニルハウス1内の対向する位置に所定高さで架設された梁材5,5間に掛け渡されて、この梁材5,5上を転動可能とした移動パイプ7に吊下されている。
【0039】
すなわち、図2及び図3に示すように、ハウス用栽培装置6は、前記梁材5,5間に掛け渡された移動パイプ7に、前後所定間隔をあけて係止された一対の吊下具60を介して吊下され、前記移動パイプ7の転動に伴って水平移動する栽培器8と、前記吊下具60の下部に取り付けられ、前記移動パイプ7に沿って伸延させたレール材9と、このレール材9に移動自在に吊下された収納箱10とを具備する構成となっている。なお、栽培器8のサイズ(幅、長さ)は、ビニルハウス1のサイズに合わせて適宜設定することができる。
【0040】
かかる構成により、例えば苺のような作物Aを栽培するための栽培器8は、移動パイプ7に係止した前後一対の吊下具60,60を介して吊下した状態で、移動パイプ7を回転させると、その転動方向、すなわち移動パイプ7の回転移動方向に略水平に移動させることができる(図4参照)。
【0041】
このように、ビニルハウス1内に、ハウス用栽培装置6をその移動方向に複数設けたビニルハウス構造とすることで、必要に応じて移動パイプ7を回転させて移動させることにより、図4に示すように、隣接する栽培器8,8間に歩行路Cが形成可能となる。
【0042】
したがって、従来のように、畝と畝の間毎に歩行路を設ける必要がないため、ハウスサイズで規定されるハウス面積に対する作物の栽培面積の割合を大幅に増加させることが可能となる。
【0043】
また、栽培器8は吊下されているため、凹凸のある地上に立設するよりも水平に位置させることが容易である。
【0044】
なお、移動パイプ7が掛け渡される梁材5は、所望する強度が得られ、かつ移動パイプ7が転動しやすいように、移動パイプ7が接する面を平面とした矩形チャンネル状に形成されている。一方、移動パイプ7は、転動自在となるように、当然ながら丸パイプで形成され、しかも、この移動パイプ7は、梁材5,5間にフリーな状態で横架されているだけなので、栽培器8の大きさ(重量)などには拘わらず、容易に転動する。例えば、移動パイプ7の中間や端部にチェーンブロックなどのような構造からなる周知の回転装置B1,B2(図1、図5参照)を取り付けておけば、作業者により容易に転動させることができる。
【0045】
図1に示した回転装置B1はチェーンB10を引き上げ、引き下げることで移動パイプ7に回転力を伝達する構成としたものであり、図5に示した回転装置B2は操作桿B20を回動させることで移動パイプ7に回転力を伝達する構成としたもので、いずれも周知のものである。また、本実施形態で示した構成に限らず、いかなる構成の回転装置を用いても構わない。さらに、回転装置を取り付ける位置としても、移動パイプ7の中間であっても端部であっても構わないが、移動パイプ7が長尺であれば、中間に取付けた方が、移動パイプ7が転動したときの両端側での移動距離の誤差が少なくなると考えられる。
【0046】
また、本実施形態に係るハウス用栽培装置6は、前述したように収納箱10を備えている。すなわち、図2及び図5に示すように、栽培器8を吊下する吊下具60の下部に、移動パイプ7に沿って伸延させたレール材9を配設しており、このレール材9に、収獲時には作物を収納することができる収納箱10を移動自在に吊下している。
【0047】
図2に示すように、レール材9は、下面にスリットが形成された断面四角形状に形成され、内部に転動輪10aを転動自在に収容している。そして、この転動輪10aに連結した紐体10bを介して収納箱10が吊支されている。図2中、10dで示したものは転動輪10aの下端に取付けられた紐体連結具である。
【0048】
こうして、レール材9から吊下された収納箱10は、図示するように、栽培器8の栽培面、すなわち実った作物A(例えば苺)に臨んでいるため、栽培器8を移動させて歩行路Cを確保した作業者は、歩行路Cに位置しながら作物Aを収納箱10に次々に移して行くことができる。なお、収納箱10は、通常時には肥料やその他必要材料を入れておくなどもできるため、収獲時以外においても利用価値は極めて高く、その利便性が大幅に向上する。
【0049】
ここで、栽培器8の構成について具体的に説明する。
栽培器8は、その前端及び後端近傍にパイプ材からなる上部横枠部材80,80を備えており、この上部横枠部材80が吊下具60に略水平に取り付けられている。また、この上部横枠部材から下方に、やなりパイプ材からなる左右の縦枠部材81を垂下させ、この縦枠部材81に作物Aを植えるためのプランタPを載置可能な載置台部82を連結している。
【0050】
載置台部82は、プランタPをセットできるだけの間隔をあけて並設とした複数の長尺パイプ材82aと、各長尺パイプ材82aを長手方向に所定間隔をあけて連結した複数の短尺パイプ材82bとからなり、短尺パイプ材82bの左右端部に前記縦枠部材81は連結されている。
【0051】
このように、栽培器8は、実質的には殆どが同一のパイプ材で構成され、その長さ寸法が異なるだけなので、材料の種類も少なく、部材同士を連結する連結具の共通化も図れるため、低コストで製造可能となっている。
【0052】
また、栽培器8は吊下されているため、前述したように、凹凸のある地上に立設するよりも水平に位置させることが容易であり、なおかつ高さ設定も、パイプ材の長さを調整することで簡単に行うことができる。
【0053】
ところで、上部横枠部材80の両端には、それぞれ緩衝板83が設けられている。本実施形態では、緩衝板83は樹脂製の円板状としており、ボルトなどによって上部横枠部材80の端部に連結固定している。
【0054】
上部横枠部材80の左右先端は、図2に示すように、載置台部82の側縁から所定長さだけ突出させており、この突出長さは、図4に示すように、隣り合う栽培器8の緩衝板83,83同士が付き合わされたときに、載置台部82,82間に作物Aの保護空間Dが形成されるだけの長さとしている。
【0055】
例えば、作物Aが、本実施形態で示すように苺である場合、花柄が一定方向に伸びていくため、載置台部82へプランタを2列に設置する場合は、隣り合うプランタP,P間で、花柄の先端につく実同士が干渉し合わないように、苺の実が載置台部82の外側に向くようにしている。
【0056】
そこで、上部横枠部材80の先端を、載置台部82の側縁よりも所定長さだけ突出させておき、緩衝板83,83同士が付き合わされたときに、載置台部82,82間に作物保護空間Dが形成できるようにしているのである。
【0057】
さらに、回転装置B1あるいは回転装置B2を用いて移動パイプ7を梁材5上で転動させたとき、移動パイプ7が前側と後側で移動度合いが異なってくることも考えられるが、栽培器8にこの緩衝板83を設けることで、緩衝板83、83同士が当接するまで回転装置B1(あるいは回転装置B2)を操作すれば、自然に移動パイプ7の姿勢が整えられることになる。
【0058】
栽培器8を移動パイプ7に吊下するために設けられた吊下具60は、移動パイプ7に係止されるフック体からなり、このフック体の内側には、移動パイプ7に摺接する複数の転動ローラ61を配設しておくことが好ましい。
【0059】
すなわち、移動パイプ7を梁材5上で転動させるときに、移動パイプ7とこれに係止される吊下具60との間に作用する摩擦抵抗は極力小さい方が望ましい。そこで、移動パイプ7と直接接触するフック体の内側に複数の転動ローラ61を配設しておくのである。なお、本実施形態では、移動パイプ7の周面に沿って接触するように5個の転動ローラ61を設け、移動パイプ7の回転が円滑に行われ、かつこの移動パイプ7の移動に吊下具60が円滑に追従できるようにしている。
【0060】
本実施形態の他の形態として、図6に示すように、収納箱10を移動自在に吊下するレール材9に、伸長自在に散液用ホースHを這わせることもできる。なお、図6においては収納箱10については省略している。
【0061】
すなわち、図示するように、収納箱10を吊支する転動輪10aと紐体連結具10dとを利用して、栽培器8の長さ方向に沿って、先端にシャワーヘッドH1を取り付けた散液用ホースHを伸長収縮自在に取り付けるのである。このようにすれば、作物に散水したり、あるいは薬剤などを散布したりするのに有用となる。
【0062】
なお、参考例として、散液用ホースHの先端を閉塞しておく一方、ホース中途に適宜間隔をあけて放水孔を設け、散液用ホースHを常時栽培器8に上方に這わせた状態にしておき、複数の栽培器8の作物Aに、同時に散水することもできる。
【0063】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、所定サイズのビニルハウス1内において、ハウスサイズにより規定されるハウス面積に対する作物の栽培面積割合を大幅に増加させることが可能となり、しかも、簡単な操作で栽培器8を水平移動させ、必要に応じて歩行路Cを形成することができるため、作業性にも何ら支障を来すことがない。しかも、栽培器8の設置高さは吊下する長さを調整するだけで簡単に設定することができるとともに、凸凹のある地上に設置するのに比べて、水平な状態で設置することが容易となる。
【0064】
上述してきた実施形態より、作物を栽培するため栽培器8を、ビニルハウス1内に吊下状態で移動可能に配設したハウス用栽培装置6において、以下の構成のものが実現できる。
【0065】
すなわち、ビニルハウス1内の対向する位置に所定高さで架設された梁材5,5間に、この梁材5,5上を転動可能に掛け渡された移動パイプ7と、この移動パイプ7に、前後所定間隔をあけて係止された一対の吊下具60,60を介して吊下され、前記移動パイプ7の転動に伴って水平移動する栽培器8と、前記吊下具60の下部に取り付けられ、前記移動パイプ7に沿って伸延させたレール材9と、このレール材9に移動自在に吊下された収納箱10とを具備するハウス用栽培装置6。
【0066】
前記栽培器8は、前記一対の吊下具60,60それぞれに、略水平に取り付けられた上部横枠部材80と、所定の間隔をあけて並設とした複数のパイプ材(例えば、長尺パイプ材82a)からなる載置台部82と、この載置台部82の前後端部と前記各上部横枠部材80とを連結する縦枠部材81とから構成されているハウス用栽培装置6。
【0067】
前記上部横枠部材80の両端に、それぞれ緩衝板83を設けたハウス用栽培装置6。
【0068】
前記吊下具60は、前記移動パイプ7に係止されるフック体からなり、このフック体の内側に前記移動パイプ7に摺接する複数の転動ローラ61を配設したハウス用栽培装置6。
【0069】
前記レール材9に、伸長自在に散液用ホースHを這わせたハウス用栽培装置6。
【0070】
また、上述した実施形態から、上述したハウス用栽培装置6を、ビニルハウス1内に複数設け、前記移動パイプ7を移動させることにより、隣接する栽培器8,8間に歩行路Cを形成可能としたビニルハウス構造が実現できる。
【0071】
また、ビニルハウス構造において、前記上部横枠部材80の両端に、それぞれ緩衝板83を設けたハウス用栽培装置6を用いることにより、隣り合う栽培器8の緩衝板83,83同士が付き合わされたときに、載置台部82,82間に作物Aの保護空間Dが形成されるビニルハウス構造が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態に係るハウス用栽培装置を備えたビニルハウスの説明図である。
【図2】同ハウス用栽培装置の正面図である。
【図3】同斜視図である。
【図4】同ハウス用栽培装置の移動状態を示す説明図である。
【図5】収納箱の移動状態を示す説明図である。
【図6】ハウス用栽培装置の他の実施形態を示す説明図である。
【図7】従来のビニルハウス構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0073】
A 作物
B1,B2 回転装置
C 歩行路
H 散液用ホース
P プランタ
5 梁材
6 ハウス用栽培装置
7 移動パイプ
8 栽培器
9 レール材
10 収納箱
60 連結具
61 転動ローラ
80 上部横枠部材
81 縦枠部材
82 載置台部
82a パイプ材
83 緩衝板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を栽培するための栽培器を、ビニルハウス内に吊下状態で移動可能に配設したハウス用栽培装置であって、
ビニルハウス内の対向する位置に所定高さで架設された梁材間に、この梁材上を転動可能に掛け渡された移動パイプと、
この移動パイプに、前後所定間隔をあけて係止された一対の吊下具を介して吊下され、前記移動パイプの転動に伴って水平移動する栽培器と、
前記吊下具の下部に取り付けられ、前記移動パイプに沿って伸延させたレール材と、
このレール材に移動自在に吊下された収納箱と、
を具備することを特徴とするハウス用栽培装置。
【請求項2】
前記栽培器は、
前記一対の吊下具それぞれに、略水平に取り付けられた上部横枠部材と、
所定の間隔をあけて並設とした複数のパイプ材からなる載置台部と、
この載置台部の前後端部と前記各上部横枠部材とを連結する縦枠部材と、
から構成されていることを特徴とする請求項1記載のハウス用栽培装置。
【請求項3】
前記上部横枠部材の両端に、それぞれ緩衝板を設けたことを特徴とする請求項2記載のハウス用栽培装置。
【請求項4】
前記吊下具は、前記移動パイプに係止されるフックからなり、このフックの内側に前記移動パイプに摺接する複数の転動ローラを配設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハウス用栽培装置。
【請求項5】
前記レール材に、伸長自在に散液用ホースを這わせたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハウス用栽培装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のハウス用栽培装置を、ビニルハウス内に複数設け、前記移動パイプを移動させることにより、隣接する栽培器間に歩行路を形成可能としたことを特徴とするビニルハウス構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22219(P2010−22219A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184130(P2008−184130)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(597088591)佐藤産業株式会社 (30)
【出願人】(503423317)
【Fターム(参考)】