説明

ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む抗アレルギー剤

本発明は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む、抗アレルギー剤、抗アレルギー用食品添加剤および抗アレルギー食品に関する。抗アレルギー剤、抗アレルギー用食品添加剤および抗アレルギー用食品は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを有効成分として含むことにより、花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の改善、治療を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ハス(Nelumbo nucifera)の破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む、抗アレルギー剤、抗アレルギー用食品添加剤および抗アレルギー用食品に関する。
【背景技術】
今日、多くの先進国では、花粉症、気管支喘息あるいはアトピー性皮膚炎などのI型アレルギー反応による疾患が増加しており、社会問題となっている。
I型アレルギー反応には、人間の持つ5種類の抗体の中で、特にIgEと称される抗体が深く関与しており、アレルギー体質の者はこの抗体をアレルギー体質でない正常人よりも多く産生する傾向がある。IgEの産生は、タイプ2のヘルパーTリンパ球(Th2)に由来するインターロイキン4(IL−4)やインターロイキン13(IL−13)によって促進されるが、近年、タイプIのヘルパーTリンパ球(Th1)に由来するインターロイキン2(IL−2)やインターフェロン−γ(IFN−γ)によってこれが抑制されることが報告されている。従って、アレルギー体質を改善するには、IgE産生を抑制し、IL−4やIL−13の産生を抑制すること、またはIL−2やIFN−γの産生を促すことが重要である。また、I型アレルギー反応にはTNF(腫瘍壊死因子)も関与しているので、TNFの産生を抑制することも炎症反応の抑制に有効である。
上述のようなI型アレルギー反応による疾患を改善するために、医薬品として、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ステロイド剤などが開発され使用されている。これらの薬品は、長期投与による症状悪化(リバウンド現象)、中枢神経に作用することによる眠気、経皮吸収による内分泌系への影響、などの副作用を伴う場合がある。
一方で、副作用がなく安全に上記疾患を改善することを目的として、従来食されている食品から、抗アレルギー作用を有するものが探索されている(特開昭61−291524、特開平1−121217、特開平7−215884等参照)。また、すでに上市されており、広く認知されているものとしては、甜茶(Rubussuavissimus)の茶葉から熱水抽出された甜茶エキス、シソ(erilla frutescens)の葉から熱水抽出された、シソ葉エキスなどがある。また、乳酸菌もプロバイオティクスという観点から、Th1細胞を誘導する作用があるため、抗アレルギー素材として検討されている。
しかし、医薬品として使用されている化合物は、上述のように副作用を有する場合が多いという問題がある。また、甜茶エキス、シソ葉エキスのように食品由来の抗アレルギー素材もあるが、これらとは異なる作用機序、より有効な薬効、および/または経済的優位性といった観点から、これら以外の食品に由来する抗アレルギー素材が求められている。さらに、乳酸菌による抗アレルギー作用については、乳酸菌単独ではその作用が弱いという問題がある。
【発明の開示】
本発明者らは、レンコンの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む組成物が抗アレルギー作用を有することを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む、抗アレルギー剤、抗アレルギー用食品添加剤および抗アレルギー食品を提供する。
また、本発明は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む、花粉症改善剤、花粉症改善用食品添加剤および花粉症改善用食品を提供する。
さらに、本発明は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む、血清中IgE濃度低下剤、血清中IgE濃度低下用食品添加剤および血清中IgE濃度低下用食品を提供する。
また、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む、IL−4産生抑制剤、IL−4産生抑制用食品添加剤およびIL−4産生抑制用食品を提供する。
さらに、また、本発明は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む、TNF産生抑制剤、TNF産生抑制用食品添加剤およびTNF産生抑制用食品を提供する。
本発明において、「ハス」とは、スイレン科(Nymphaeaceae)、ハス亜科(Nelumboideae)に属するNelumbo nuciferをいう。当該ハスの地下茎は、一般に「レンコン」と称され市販されている。
また、本発明において破砕物または抽出物とされるハスとしては、ハスの植物体の任意の部分を使用することができ、例えば、ハスの地下茎(レンコン)、茎、葉、根、実等またはこれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは、破砕物または抽出物として使用されるハスは、ハスの地下茎、茎、葉もしくは根、またはこれらの組み合わせであり、より好ましくはハスの地下茎、茎もしくは葉、またはこれらの組み合わせであり、さらにより好ましくはハスの地下茎である。
ハスの破砕物は、ミキサー、破砕機をはじめとする任意の装置を用いた任意の方法で、ハスを破砕処理することにより調製することができる。破砕処理は、水などの溶媒を添加して行っても良いし、ハスのみが破砕処理されるような態様であっても良い。本発明におけるハスの破砕物は、ハスを破砕処理して得られるそのものであっても良いし、破砕処理の前に、破砕処理と同時にもしくは破砕処理の後に、加熱および/または脱水処理されたものであっても良い。なお、加熱および/または脱水処理の有無は問わない。
好ましくは、ハスの破砕物は、ハスを破砕処理した後に加熱処理し、さらに乾燥処理することにより得られるもの、ハスを乾燥処理した後に破砕処理して得られるもの、ハスを加熱処理した後に破砕処理して得られるもの、ハスを加熱および乾燥処理(この加熱と乾燥の順序は問わない)した後に破砕処理して得られるものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ハスを生のままフリーズドライまたは遠赤外線乾燥をはじめとする乾燥処理方法で乾燥した後に破砕するような態様でも良い。
また、ハスの破砕物は、ハスの水分を部分的に除去した濃縮物であっても良く、この場合、ハスの破砕物の調製において濃縮処理が行われる態様としては、上述の乾燥処理に準じる態様が挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、破砕物は、ペースト、固体、粒状物、粉体、液体状(溶液、懸濁液など任意の状態を含む)など任意の形状であることができ、これらの形状を有する破砕物は、任意の公知の方法を用いて製造することができる。例えば、ハスから直接に、破砕物がこれらの形状となるように製造しても良いし、上述のように、一旦乾燥処理して得られた乾燥状態の破砕物を、これらの形状になるように調製することも可能である。
ハスの破砕物の調製において乾燥または濃縮処理が行われる場合には、乾燥または濃縮処理方法としては、任意の、公知の方法を使用することが可能であり、例えば、フリーズドライ法(減圧乾燥法)、減圧濃縮法、マイクロ波減圧乾燥法、マイクロ波常圧乾燥法、並びに遠赤外線乾燥、近赤外線乾燥をはじめとする加熱乾燥法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、乾燥または濃縮処理方法はフリーズドライ法、減圧濃縮法または遠赤外線乾燥法である。
また、ハスの破砕物の調製において乾燥または濃縮処理が行われる場合の処理温度は、使用される方法により異なるが、好ましくは、−50℃〜100℃であり、より好ましくは、−30℃〜70℃、さらにより好ましくは、−30℃〜60℃である。
さらに、ハスの破砕物の調製において、乾燥または濃縮処理で行われることがある加熱の他に、目的は限定されないが、たとえば殺菌などを目的とした加熱処理が行われてもよい。この場合の加熱温度は、好ましくは100℃以下である。すなわち、ハスからハスの破砕物が調製される過程において、100℃より高い温度が適用されないのが好ましい。
本発明に使用されるハスの破砕物の好ましい1態様として、1)レンコンを破砕し、得られたレンコン破砕物をフリーズドライまたは遠赤外線乾燥する工程、または2)レンコンをフリーズドライまたは遠赤外線乾燥し、続いて乾燥されたレンコンを破砕する工程、のいずれかを含む方法により調製された、フリーズドライまたは遠赤外線乾燥されたレンコン破砕物が挙げられる。
本発明においてハスの抽出物とは、ハス中の成分を溶媒に移行させて抽出物を得るといった、いわゆる溶媒を用いた抽出処理により得られる抽出物に限定されるものではなく、ハスを圧搾して得られた絞り汁をはじめとする、ハス中の任意の成分を溶媒等を使用することなく直接的に取出して得られたものも本発明にいう抽出物である。また、抽出物は室温で調製されても良いし、加熱下で調製されても良い。例えば、ハスの抽出物の例としては、ハスの細切物または破砕物を圧搾して得られた絞り汁、ハスの細切物または破砕物を加熱圧搾して得られた絞り汁、ハスの細切物または破砕物を加熱下または非加熱下で溶媒抽出して得られた抽出物等が挙げられる。溶媒抽出する場合に使用可能な溶媒としては水、エタノール、プロピレングリコール、n−ブタノール、酢酸エチルおよびクロロホルムなどの1種または2種以上の単独あるいは混合溶媒などが挙げられる。好ましくは、抽出に使用される溶媒は水である。また、抽出物は必要に応じて濃縮あるいは濃縮乾固することができる。抽出物は、ペースト、固体、粒状物、粉体、液体状(溶液、懸濁液など任意の状態を含む)など任意の形状であることができ、これらの形状を有する抽出物は、任意の公知の方法を用いて製造することができる。
ハスの抽出物の調製において乾燥または濃縮処理が行われる場合には、乾燥または濃縮処理方法としては、任意の、公知の方法を使用することが可能であり、例えば、フリーズドライ法(減圧乾燥法)、減圧濃縮法、マイクロ波減圧乾燥法、マイクロ波常圧乾燥法、並びに遠赤外線乾燥、近赤外線乾燥をはじめとする加熱乾燥法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。好ましくは、乾燥または濃縮処理方法はフリーズドライ法、減圧濃縮法または遠赤外線乾燥法である。
また、ハスの抽出物の調製において乾燥または濃縮処理が行われる場合の処理温度は、使用される方法により異なるが、好ましくは、−50℃〜100℃であり、より好ましくは、−30℃〜70℃、さらにより好ましくは、−30℃〜60℃である。
さらに、ハスの抽出物の調製において、乾燥または濃縮処理で行われることがある加熱の他に、目的は限定されないが、たとえば殺菌などを目的とした加熱処理が行われてもよい。この場合の加熱温度は、好ましくは100℃以下である。すなわち、ハスからハスの抽出物が調製される過程において、100℃より高い温度が適用されないのが好ましい。
本発明に使用されるハスの抽出物の好ましい1態様として、レンコンに対して抽出操作を行い、得られたレンコン抽出物をフリーズドライまたは遠赤外線乾燥する工程を含む方法により調製された、フリーズドライまたは遠赤外線乾燥されたレンコン抽出物が挙げられる。また、他の態様としては、レンコン抽出物を減圧濃縮する工程を含む方法により調製された、減圧濃縮されたレンコン抽出物が挙げられる。
本発明における、組成物、薬剤、食品添加剤及び食品においては、ハスの破砕物と抽出物はそれぞれ単独で含まれていても良いし、これら両方が含まれていても良い。
本発明において使用される乳酸菌としては、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、バシラス(Bacillus)属に属する乳酸菌が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。経口摂取した場合に乳酸菌が生きたまま腸に到達し易いとの観点から、乳酸菌としては有胞子性乳酸菌が好ましい。有胞子性乳酸菌は、特に限定されるものではないが、例えば、Bacillus coagulans等が挙げられる。
本発明の1態様は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む抗アレルギー剤であるが、ここでの抗アレルギー剤は、アレルギー反応に起因する疾患を改善、治療するための薬剤であり、好ましくは、I型アレルギー反応に起因する疾患を改善、治療するための薬剤である。より好ましくは、本発明の抗アレルギー剤は、花粉症(本発明において、花粉症とは、花粉によるアレルギー反応による症状をいい、主たる症状としては、例えば、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ、咽のかゆみ等が挙げられるが、これに限定されるものではない。)、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚炎、もしくは気管支喘息、またはこれらの組み合わせを改善、治療するための薬剤、すなわち花粉症改善剤、皮膚炎改善剤、アトピー性皮膚炎改善剤または気管支喘息改善剤である。さらにより好ましくは、本発明の抗アレルギー剤は花粉症改善剤である。また、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー剤は、血清中のIgE濃度を低下させるための血清中IgE濃度低下剤である。さらに、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー剤はIL−4産生抑制剤である。また、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー剤はTNF産生抑制剤である。
本発明における抗アレルギー剤は経口投与、または筋肉内、皮内、皮下、静脈内、下部体腔、皮膚、鼻腔内、経口もしくは経鼻吸引投与などの非経口投与により投与され得る。本発明の薬剤は、薬剤として許容可能な構成成分を含むことができ、当該構成成分については当業者が認識できる事項であり、特に限定されるものではない。本発明の抗アレルギー剤を製剤化するためには、製剤の技術分野における任意の通常の方法で製剤化することが可能であり、例えば、経口投与の場合には、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤などの剤型が採用されうる。また、経皮投与の場合には、軟膏剤、貼付剤、ローション剤、エアゾール剤などが挙げられる。すなわち、経口用固型製剤を調製する場合は、ハスの破砕物もしくは抽出物、またはこれらの組み合わせに賦形剤、さらに必要に応じて結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、トローチ剤、糖衣錠剤などとすることができる。
本発明の薬剤のヒトに対する投与量は、ハスの破砕物および/または抽出物の乾燥重量として、経口投与で、成人、1日あたり、破砕物の場合には、好ましくは、1g〜100g、より好ましくは、2g〜40gである。また、抽出物の場合には、好ましくは、0.5g〜50g、より好ましくは、1g〜20gである。また、乳酸菌の菌数として、経口投与で、成人、1日あたり、好ましくは、50万〜50億個(菌数)、より好ましくは、500万〜10億個(菌数)である。
本発明の他の態様は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む抗アレルギー用食品添加剤である。本発明における食品添加剤とは、食品に添加されるものであれば良く、その目的は問わない。ここでの抗アレルギー用食品添加剤は、当該食品添加剤を含む食品を摂取した者に対して、アレルギー反応に起因する疾患を改善、治療するための食品添加剤であり、好ましくは、I型アレルギー反応に起因する疾患を改善、治療するための食品添加剤である。より好ましくは、本発明の抗アレルギー用食品添加剤は、花粉症、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚炎、もしくは気管支喘息、またはこれらの組み合わせを改善、治療するための食品添加剤、すなわち花粉症改善用食品添加剤、皮膚炎改善様食品添加剤、アトピー性皮膚炎改善用食品添加剤または気管支喘息改善用食品添加剤である。さらにより好ましくは、本発明の抗アレルギー用食品添加剤は花粉症改善用食品添加剤である。また、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー用食品添加剤は、血清中のIgE濃度を低下させるための血清中IgE濃度低下用食品添加剤である。さらに、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー用食品添加剤はIL−4産生抑制用食品添加剤である。また、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー用食品添加剤はTNF産生抑制用食品添加剤である。
本発明における食品添加剤とは、食品に添加されるものであれば良く、その目的は問わない。本発明の食品添加剤を製造するためには、食品添加剤の技術分野における通常の方法で固体、顆粒、粉体、カプセル、溶液、懸濁物等の形態に製造することが可能である。また、本発明の食品添加剤は、食品添加剤として許容可能な他の成分を含むことができ、当該他の成分については当業者が認識している事項であり、特に限定されるものではない。
本発明の食品添加剤に含まれるハスの破砕物および/または抽出物の量、乳酸菌の量、およびこれらの含有比率は、食品に添加される当該食品添加剤の量、食品の種類などに応じて変化するものであり、特に限定されるものではない。
本発明の他の態様は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む抗アレルギー用食品であるが、ここでの抗アレルギー用食品は、アレルギー反応に起因する疾患を改善、治療するための食品であり、好ましくは、I型アレルギー反応に起因する疾患を改善、治療するための食品である。より好ましくは、本発明の抗アレルギー用食品は、花粉症、アトピー性皮膚炎等の皮膚炎、もしくは気管支喘息、またはこれらの組み合わせを改善、治療するための食品、すなわち花粉症改善用食品、皮膚炎改善用食品、アトピー性皮膚炎改善用食品または気管支喘息改善用食品である。さらにより好ましくは、本発明の抗アレルギー用食品は花粉症改善用食品である。また、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー用食品は、血清中のIgE濃度を低下させるための血清中IgE濃度低下用食品である。さらに、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー用食品はIL−4産生抑制用食品である。また、他の好ましい態様は、本発明の抗アレルギー用食品はTNF産生抑制用食品である。
本発明における食品としては、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含んでいるのであれば特に限定されるものではない。また、食品の種類としては、通常食品として摂取されるものであれば特に限定されるものではなく、いわゆる健康食品、サプリメント、栄養補助食品と呼ばれるような、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの形状を有する食品だけでなく、うどん、そば、パスタ、ラーメン等をはじめとする麺類、小麦粉、そば粉、片栗粉、米の粉等の粉類、菓子パン、食パンなどのパン類、ケーキ、クッキー、せんべい、あんこ、ようかん、もち、団子、ゼリーなどの菓子類、ジュース、お茶などの飲料、即席麺、即席みそ汁、即席スープなどの即席食品などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。好ましくは、本発明の食品はハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む粉類、例えば、小麦粉、そば粉、片栗粉、米の粉等から製造されるパン、ケーキ、クッキー、せんべいなどの食品である。より好ましくは、本発明の食品は、粉体状にされたハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む粉類、例えば、小麦粉、そば粉、片栗粉、米の粉等から製造されるパン、ケーキ、クッキー、せんべいなどの食品である。また、他の好ましい態様としては、本発明の食品は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含むヨーグルトである。なお、ここでのヨーグルトとは、半固形状の通常のヨーグルトだけでなく、ヨーグルト飲料などのような液体状のヨーグルトも含む。ここで、上述の本発明の食品の製造については、任意の公知の方法、材料を使用することが可能である。
本発明の食品に含まれるハスの破砕物および/または抽出物と乳酸菌の量、およびこれらの含有比率は、本発明の食品が効果を奏する限りは特に限定されるものではない。
本発明の食品は、ヒト成人が1日あたり、ハスの破砕物および/または抽出物の乾燥重量として、破砕物の場合には、好ましくは、1g〜100g、より好ましくは、2g〜40gを摂取することとなる食品形態のものであり、また、抽出物の場合には、好ましくは、0.5g〜50g、より好ましくは、1g〜20gを摂取することとなる食品形態のものである。また、乳酸菌の菌数として、経口投与で、成人、1日あたり、好ましくは、50万〜50億個(菌数)、より好ましくは、500万〜10億個(菌数)を摂取することとなる食品形態のものである。
本発明の食品は、当該食品を構成する原料に、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを添加して製造することができ、また当該食品を構成する原料に、本発明の食品添加剤を添加して製造することも可能である。また、食品の種類によっては、製造された食品に、本発明の食品添加剤を添加して、本発明の食品とするような態様も可能である。
理論に拘束されるのを望むものではないが、ハスの破砕物および/または抽出物をヒトを含む哺乳類に経口投与した場合の抗アレルギー作用のメカニズムの1つは、当該抗アレルギー剤の経口投与による、生体内におけるタイプ2のヘルパーTリンパ球(Th2)によるインターロイキン4(IL−4)の産生抑制、およびこれによるB細胞でのIgEの産生抑制に起因しているものと考えられる。また、他のメカニズムとしては、当該抗アレルギー剤の経口投与による、生体内でのTNF、好ましくは、TNF−αの産生抑制による、炎症反応の抑制に起因しているものと考えられる。これらの作用メカニズムについての可能性については、PCT/03/09208号に詳述されている。なお、ハスの破砕物および/または抽出物の作用メカニズムとして上述の例を挙げたが、これは、他の作用メカニズムを排除するものではない。
また、理論に拘束されるのを望むものではないが、乳酸菌を人を含む哺乳類に経口投与した場合の抗アレルギー作用のメカニズムについては、完全に解明されているわけではないが、いわゆる乳酸菌のプロバイオティクスという観点から、Th1細胞を誘導する効果によるものと考えられている。
本発明の抗アレルギー剤、抗アレルギー用食品添加剤および抗アレルギー用食品は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを有効成分として含むことにより、ハスの破砕物および/または抽出物、乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合と比較して、顕著に相乗的に、花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎等の皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の改善、治療を可能にするという有利な効果を有する。
また、本発明の薬剤、食品添加剤および食品は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを有効成分として含むことにより、ハスの破砕物および/または抽出物、乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合と比較して、顕著に相乗的に、血清中IgE濃度を低下できるという有利な効果を有する。
さらに、本発明の薬剤、食品添加剤および食品は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを有効成分として含むことにより、ハスの破砕物および/または抽出物、乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合と比較して、顕著に相乗的に、生体内でのIL−4産生を抑制できるという有利な効果を有する。
また、本発明の薬剤、食品添加剤および食品は、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを有効成分として含むことにより、ハスの破砕物および/または抽出物、乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合と比較して、顕著に相乗的に、生体内でのTNF産生を抑制できるという有利な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例】
以下の実施例1および2、並びに比較例1〜4においては、各薬剤の連続的摂取がヒトの花粉体質改善に及ぼす影響について検討した。
以下の各実施例1および2、並びに比較例1〜4において、対象とされた花粉体質の被験者(20〜50代の男性または女性)は、各群21人(男性9名、女性12名)とした。
被験者による抗アレルギー剤の摂取は、約3ヶ月の間(12月上旬から3月上旬まで)、1日1回、10粒を水または湯で飲用することとした。また、試験期間中は花粉体質改善のための他の薬剤の摂取は行わなかった。
花粉症の症状の改善度は、本試験期間中のアレルギーの症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、なみだ目、眼異物感、まぶた違和感、その他顔のほてり、頭痛、皮膚のかゆみ、咽頭のかゆみ、口のかゆみ、呼吸異常音など)について、本試験が行われる前年度の症状に対する改善度を4段階(改善無し;軽度の改善;中程度の改善;著しい改善)で被験者が自己申告するものとした。
【実施例1】
レンコン抽出物と乳酸菌を含む薬剤
1)レンコン抽出物の調製方法
市販のレンコン100kgの皮をむき、水洗後5〜10mm厚さにスライスした。水260Lを加え、水およびレンコンをニーダーに投入し98℃に昇温して撹拌した。99℃に昇温後30分間煮沸した。次いで、煮沸物をニーダーから取り出し、サラシでろ過して得られたろ液をフリーズドライ法により粉末にした。この操作により、3.0kgのレンコン抽出物粉末を得た。
2)抗アレルギー剤の調製方法
レンコン抽出物(粉末):食品用有胞子性乳酸菌粉末(1gあたり、Bacillus coagulansを50億個(菌数)以上含有、賦形剤として乳糖含有):麦芽糖水あめ=70:1:29の比率でこれらを混合し、混合物を直径8mmの丸形の錠剤(約320mg/粒)に成形し、この錠剤を抗アレルギー剤とした。
3)抗アレルギー剤の投与による花粉症症状の改善度
当該抗アレルギー剤を3ヶ月摂取した結果、21名の被験者のうち、12名(女性9名;男性3名)に顕著な改善が認められ、6名(女性3名;男性3名)に中程度の改善、さらに3名(男性3名)に軽度の改善が認められた。すなわち、レンコン抽出物と乳酸菌とを含む本願発明の抗アレルギー剤は、花粉体質の被験者の100%において、軽度の改善以上の効果が認められた。
【実施例2】
レンコン破砕物と乳酸菌を含む薬剤
1)レンコン破砕物の調製方法
市販のレンコンの皮をむき、水洗後5〜10mm厚さにスライスした。レトルト機を用いて加圧下で110℃で15分加熱した。加熱処理後のレンコンを細切し、細切したレンコンを50〜60℃で15時間熱風乾燥した。次いで、1mmのスクリーンを用いてアトマイザーで粉砕しレンコン破砕物(粉末)を得た。
2)抗アレルギー剤の調製方法
レンコン破砕物(粉末):食品用有胞子性乳酸菌粉末:麦芽糖水あめ=70:1:29の比率でこれらを混合し、混合物を直径8mmの丸形の錠剤(約320mg/粒)に成形し、この錠剤を抗アレルギー剤とした。
3)抗アレルギー剤の投与による花粉症症状の改善度
当該抗アレルギー剤を3ヶ月摂取した結果、21名の被験者のうち、9名(女性6名;男性3名)に顕著な改善が認められ、6名(女性2名;男性4名)に中程度の改善が認めら、6名(女性4名;男性2名)に軽度の改善が認められた。すなわち、レンコン破砕物と乳酸菌とを含む本願発明の抗アレルギー剤は、花粉体質の被験者の100%において、中程度の改善以上の効果が認められた。
比較例1
レンコン抽出物のみを含む薬剤
抗アレルギー剤の組成が、実施例1で調製されたレンコン抽出物を含むが、乳酸菌を含まないことを除き、実施例1と同様に錠剤が調製された。
すなわち、比較例1においては、実施例1で調製されたレンコン抽出物:麦芽糖水あめ=70:30の比率でこれらを混合し、混合物を直径8mmの丸形の錠剤(約320mg/粒)に成形し、この錠剤を抗アレルギー剤とした。
当該抗アレルギー剤を3ヶ月摂取した結果、21名の被験者のうち、3名(女性2名;男性1名)に顕著な改善が認められ、3名(女性3名)に中程度の改善、さらに6名(女性2名;男性4名)に軽度の改善が認められ、残りの9名(女性5名;男性4名)については改善は認められなかった。すなわち、レンコン抽出物のみを含む抗アレルギー剤は、花粉体質の被験者の57%に、軽度の改善以上の効果が認められた。
比較例2
レンコン抽出物のみを含む薬剤の2倍量摂取
比較例1で調製された、レンコン抽出物を含むが、乳酸菌を含まない抗アレルギー剤を使用し、被験者による抗アレルギー剤の摂取量を、1日1回、20粒と、比較例1の2倍量にした。
当該抗アレルギー剤を3ヶ月摂取した結果、21名の被験者のうち、6名(女性4名;男性2名)に顕著な改善が認められ、3名(女性1名;男性2名)に中程度の改善、さらに6名(女性2名;男性4名)に軽度の改善が認められ、残りの6名(女性5名;男性1名)については改善は認められなかった。すなわち、レンコン抽出物のみを含む抗アレルギー剤の2倍量摂取は、花粉体質の被験者の71%に、軽度の改善以上の効果が認められた。
比較例3
乳酸菌のみを含む薬剤
抗アレルギー剤の組成が、乳酸菌を含むが、レンコン抽出物を含まないことを除き、実施例1と同様に錠剤が調製された。
すなわち、比較例3においては、食品用有胞子性乳酸菌粉末:麦芽糖水あめ=1:99の比率でこれらを混合し、混合物を直径8mmの丸形の錠剤(約320mg/粒)に成形し、この錠剤を抗アレルギー剤とした。
当該抗アレルギー剤を3ヶ月摂取した結果、21名の被験者のうち、顕著な改善が認められたものはなく、3名(女性2名;男性1名)に中程度の改善、さらに3名(女性1名;男性2名)に軽度の改善が認められた。残りの15名(女性9名;男性6名)については改善は認められなかった。すなわち、レンコン抽出物のみを含む抗アレルギー剤は、花粉体質の被験者の29%に、軽度の改善以上の効果が認められた。
比較例4
乳酸菌のみを含む薬剤の2倍量摂取
比較例3で調製された、乳酸菌を含むが、レンコン抽出物を含まない抗アレルギー剤を使用し、被験者による抗アレルギー剤の摂取量を、1日1回、20粒と、比較例3の2倍量にした。
当該抗アレルギー剤を3ヶ月摂取した結果、21名の被験者のうち、3名(女性1名;男性2名)に顕著な改善が認められ、3名(女性3名)に中程度の改善、さらに3名(女性2名;男性1名)に軽度の改善が認められ、残りの12名(女性6名;男性6名)については改善は認められなかった。すなわち、レンコン抽出物のみを含む抗アレルギー剤の2倍量摂取は、花粉体質の被験者の43%に、軽度の改善以上の効果が認められた。
上述した、実施例1および2、並びに比較例1〜4における花粉症の症状の改善度の結果を以下の表1に示す。なお、表1中に示される「改善率(%)」は、各群における全被験者数に対する、軽度の改善以上の改善が認められた被験者数の割合をパーセントで示したものである。

表1に示された結果から明らかなように、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む本願発明の抗アレルギー剤(実施例1および2)は、それぞれを単独で使用した場合(比較例1および3)と比較して優れた花粉症改善の効果を奏するだけでなく、それぞれを2倍量で使用した場合(比較例2および4)よりも顕著に優れた花粉症改善の効果を奏していた。このことは、本願発明の抗アレルギー剤は、ハスの破砕物および/または抽出物、或いは乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合の単なる相加的な効果を超える、相乗的な効果を奏することが明らかとなった。
実施例3:本発明の抗アレルギー剤の連続的摂取がヒト免疫系に及ぼす影響
実施例1および2、並びに比較例1〜4の各被験者に対して、各薬剤の連続的摂取開始前および3ヶ月の連続摂取終了時に、以下の方法で、血清とリンパ球を採取し、実験に用いた。なお、操作は全て無菌的に行い、器具も滅菌済みの器具を使用した。
1)血清とリンパ球の採取
a)静脈血を10ml採血し、血清分離用採血管に2ml、残りを抗凝固剤(クエン酸ナトリウム)の入った2本の採血管に4mlずつ分注した。
b)血清分離用採血管を37℃、1時間放置後、3000rpm、15分の遠心操作を行い、得られた血清をマイクロチューブに取り、使用するまで−80℃下に冷凍保存した。
c)末梢血中からリンパ球を得るために、抗凝固剤入りの採血管に採取された血液をPBS(pH7.2)で2倍希釈した。これを比重1.077のヒトリンパ球分離液(LSM)に重層して1600rpm、20分の冷却遠心を行い、界面の総リンパ球を得た。
d)リンパ球を小試験管に集め、PBSにて1400rpm、10分の冷却遠心操作を2回行い、洗浄した。なお、赤血球が混在した場合には、ろ過滅菌したトリス塩化アンモニウムを用いて37℃、10分間放置して、赤血球を完全に溶血させた。
e)上清を除去し、20μg/ml濃度のコンカナバリンA(ConA)を含むRPMI1640培養液を1ml入れ、良く混和後、タタイ式血算板にて細胞数を求めた。細胞数は2×10cell/mlに調整された。その後、培養用8穴プレートを用いて、リンパ球浮遊液を37℃、48時間培養した。
f)培養後、上清をマイクロチューブに取り、6000rpm、5分間遠心後、その上清を別のマイクロチューブに移して実験日まで−80℃下に冷凍保存した。
2)血清IgEのELISAによる測定
被験者の血清中に存在するIgE抗体の定量を以下のELISAによって行った。
a)炭酸ナトリウム緩衝液で100倍希釈した抗IgE抗体をELISA用96穴プレートのウェルに100μL入れ、室温、60分間固相化した。
b)洗浄液で2回洗浄後、post−coat用緩衝液を200μL入れ、37℃、30分間インキュベートした。
c)洗浄液で2回洗浄後、被験者血清並びにIgE標準液(1.87;3.75;7.5;15;30ng/ml)を100μL入れ、37℃、60分間反応させた。
d)洗浄液で2回洗浄後、2000倍希釈したペルオキシダーゼ(HRP)標準抗体を100μL入れ、37℃、60分間反応させた。
e)洗浄液で3回洗浄後、発色液(o−フェニレンジアミン液;OPD液)を100μL入れ、室温、30分間反応させた。
f)発色後、停止液(3M硫酸)を100μL入れ、ELISAリーダーにて490nmでの吸光度を測定した。
g)標準曲線より、被験者の血清中のIgE濃度を算出した。
各群(21被験者)における、抗アレルギー剤の摂取開始前と摂取3ヶ月後での、血清中IgE濃度の平均値、およびその平均値の差が表2に示される。

表2に示された結果から明らかなように、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む本願発明の抗アレルギー剤(実施例1および2)は、それぞれを単独で使用した場合(比較例1および3)と比較して、血清中IgE濃度の低下が認められただけでなく、それぞれを2倍量で使用した場合(比較例2および4)と比較しても、血清中IgE濃度の低下が認められた。このことは、血清中IgE濃度の低下という点で、本願発明の抗アレルギー剤は、ハスの破砕物および/または抽出物、或いは乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合の単なる相加的な効果を超える、相乗的な効果を奏することが明らかとなった。
3)血清IgGのSRID法による測定
被験者の血清中に存在するIgG抗体の定量を、以下のSRID法によって行った。
a)生理的食塩水で良く洗浄したマイクロシリンジを用いて、標準IgG血清(543、1604、3053mg/dL)並びに被験者血清を正確に4μLずつ、MBLヒトIgG定量用アガロースプレート(医学生物学研究所)の各ウェルに入れた。プレートカバーをして、室温、24時間インキュベートした。
b)反応後、生じた沈降リングの直径を測定し、標準曲線から被験者の血清中のIgG濃度を算出した。
各群(21被験者)における、抗アレルギー剤の摂取開始前と摂取3ヶ月後での、血清中IgG濃度の平均値、およびその平均値の差が表3に示される。

表3に示された結果から明らかなように、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む本願発明の抗アレルギー剤(実施例1および2)は、それぞれを単独で使用した場合(比較例1および3)と比較して、血清中IgG濃度の上昇が認められただけでなく、それぞれを2倍量で使用した場合(比較例2および4)と比較しても、血清中IgG濃度の上昇が認められた。このことは、血清中IgG濃度の上昇という点で、本願発明の抗アレルギー剤は、ハスの破砕物および/または抽出物、或いは乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合の単なる相加的な効果を超える、相乗的な効果を奏することが明らかとなった。
4)リンパ球培養上清中のIL−2のELISAによる測定
48時間培養された末梢血中リンパ球から分泌されるIL−2の定量は、以下のELISAによって行った。
a)ELISA用96穴プレートのウェルに被験者血清並びにIL−2標準液(31、25、62.5、125、250、500、1000pg/ml)を100μL入れた。
b)ビオチン化抗体(抗IL−2)を50μL入れ、室温、1時間インキュベートした。
c)3回洗浄後、ストレプトアビジン−HRPを100μL入れ、室温、30分間反応させた。
d)3回洗浄後、発色液(TMB)を100μL入れ、遮光して室温、10〜15分間反応させた。
e)停止液(硫酸)を100μL入れ、ELISAリーダーにて450nmでの吸光度を測定した。
f)標準曲線より被験者リンパ球培養上清中のIL−2濃度を算出した。
各群(21被験者)における、抗アレルギー剤の摂取開始前と摂取3ヶ月後での、リンパ球培養上清中のIL−2濃度の平均値、およびその平均値の差が表4に示される。

表4に示された結果から明らかなように、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む本願発明の抗アレルギー剤(実施例1および2)は、それぞれを単独で使用した場合(比較例1および3)と比較して、末梢血中リンパ球におけるIL−2の産生促進が認められただけでなく、それぞれを2倍量で使用した場合(比較例2および4)と比較しても、末梢血中リンパ球におけるIL−2の産生促進が認められた。このことは、末梢血中リンパ球におけるIL−2の産生促進という点で、本願発明の抗アレルギー剤は、ハスの破砕物および/または抽出物、或いは乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合の単なる相加的な効果を超える、相乗的な効果を奏することが明らかとなった。
5)リンパ球培養上清中のIL−4のELISAによる測定
48時間培養された末梢血中リンパ球から分泌されるIL−4の定量は、以下のELISAによって行った。
a)ELISA用96穴プレートのウェルに被験者血清並びにIL−4標準液(1.21、4.4、8.75、17.5、35pg/ml)を100μL入れ、室温、2時間インキュベートした。
b)3回洗浄後、ビオチン化抗体(抗IL−4)を50μL入れ、室温、1時間インキュベートした。
c)3回洗浄後、ストレプトアビジン−HRPを100μL入れ、室温、30分間反応させた。
d)3回洗浄後、発色液(TMB)を100μL入れ、遮光して室温、15〜20分間反応させた。
e)停止液(硫酸)を100μL入れ、ELISAリーダーにて450nmでの吸光度を測定した。
f)標準曲線より被験者リンパ球培養上清中のIL−4濃度を算出した。
各群(21被験者)における、抗アレルギー剤の摂取開始前と摂取3ヶ月後での、リンパ球培養上清中のIL−4濃度の平均値、およびその平均値の差が表5に示される。

表5に示された結果から明らかなように、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む本願発明の抗アレルギー剤(実施例1および2)は、それぞれを単独で使用した場合(比較例1および3)と比較して、末梢血中リンパ球におけるIL−4の産生抑制が認められただけでなく、それぞれを2倍量で使用した場合(比較例2および4)と比較しても、末梢血中リンパ球におけるIL−4の産生抑制が認められた。このことは、末梢血中リンパ球におけるIL−4の産生抑制という点で、本願発明の抗アレルギー剤は、ハスの破砕物および/または抽出物、或いは乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合の単なる相加的な効果を超える、相乗的な効果を奏することが明らかとなった。
実施例3の結果から、本願発明の抗アレルギー剤を経口摂取することにより、生体内でのIL−2の産生が促進される一方、生体内でのIL−4の産生が抑制され、これにより血清中のIgEが低減され、これにより抗アレルギー作用が生じ得ることが推察される。
実施例4および5、並びに比較例5〜9
スギ花粉投与マウスに対する本願発明の抗アレルギー剤の影響
1)抗アレルギー剤の調製方法
実施例4として、実施例1で使用した薬剤5gを粉砕し、これに蒸留水100mlを加え懸濁したものを投与用薬剤とした。
実施例5として、実施例2で使用した薬剤5gを粉砕し、これに蒸留水100mlを加え懸濁したものを投与用薬剤とした。
比較例5として、比較例1で使用した薬剤5gを粉砕し、これに蒸留水100mlを加え懸濁したものを投与用薬剤とした。
比較例6として、比較例1で使用した薬剤10gを粉砕し、これに蒸留水100mlを加え懸濁したものを投与用薬剤とした。
比較例7として、比較例3で使用した薬剤5gを粉砕し、これに蒸留水100mlを加え懸濁したものを投与用薬剤とした。
比較例8として、比較例3で使用した薬剤10gを粉砕し、これに蒸留水100mlを加え懸濁したものを投与用薬剤とした。
2)薬剤の経口投与法とスギ花粉エキスの経鼻投与法
スギ花粉エキスを投与する7日前から、マウス(BALB/c;メス、3週齢)にゾンデを用いて、1個体あたり上記投与用薬剤を1日1回0.5ml経口投与した(前投与)。なお、マウスは飼料(一般市販の固形飼料)、水道水を自由に摂取できるようにして、12時間点灯−12時間消灯のサイクルで飼育を行った。
上記前投与を7日間行った後、さらに14日間、1日1回抗アレルギー剤(実施例1もしくは2、または比較例1〜4)を経口投与する(本投与)と共に、並行してスギ花粉エキス(鳥居薬品;スギ花粉スクラッチ用アレルゲン)をマイクロピペットでマウスの鼻腔内に25μL滴下して、スギ花粉感作マウスを人為的に作出した。
なお、比較例9として、投与用薬剤の代わりに蒸留水を同量投与したものをコントロール群とした。なお、実験には各群9匹のマウスを使用した。
3)血清の採取法
14日間の本投与の最後の投与の4時間後に、エーテル麻酔し、肝動脈より1mlシリンジを用いて採血し、37℃、60分放置後、血清を分離した。
4)SRID法(平板内単純免疫拡散法)による血清IgG測定
SRID法で血清中のIgG濃度を測定した。測定は、上述の方法に準じて行った。
5)ELISA法(酵素免疫測定法)による血清IgE測定
ELISA法で血清中のIgE濃度を測定した。測定は、上述の方法に準じて行った。
6)腹腔マクロファージの培養とTNF−α産生の測定
腹腔マクロファージ採取2日前に、腹腔内にチオグリコレートを1ml注入した。実験当日採血前に、3〜5mlの冷MEMを注入してよくもみ、マクロファージを採取した(3〜4回繰り返して行った)。
細胞濃度を2×10cell/mlに調整し、10μg LPS(大腸菌由来)を含むMEMに浮遊させ、1mlずつ12穴プレートのウェルに入れて37℃で24時間培養した。この培養上清を採取して、測定まで−80℃に保存した。
TNF−αは和光純薬製のキットを用いて、ELISA法によって測定した。
7)脾臓細胞の培養、並びにIL−2およびIL−4産生の測定
採血時に、脾臓を無菌的に取り出し、RPMI1640培養液を2ml入れた小型シャーレに細胞用200メッシュの金属フィルターを置き、当該フィルター上に摘出した脾臓を置き、5ml用の注射器のピストンのプッシュ面を用いて脾臓から脾臓細胞を取り出した。
得られた脾臓細胞を最終的に10% FBS、20μg ConA(コンカナバリンA)を含むRPMI1640に、1×10cell/mlとなるように調整して浮遊させた。次いで、12穴プレートに細胞浮遊液を1mlずつ入れ、5%CO存在下で48時間培養した。この培養上清を測定まで−80℃に保存した。
IL−2とIL−4の測定はELISA法で行った。測定は、上述の方法に準じて行った。
各測定結果については、表6に示される。

表6の結果から明らかなように、ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む本願発明の抗アレルギー剤(実施例4および5)は、それぞれを単独で使用した場合(比較例5および7)だけでなく、それぞれを2倍量で使用した場合(比較例6および8)と比較しても、顕著なマクロファージのTNF−α産生抑制が認められた。このことは、マクロファージのTNF−α産生抑制という点で、本願発明の抗アレルギー剤は、ハスの破砕物および/または抽出物、或いは乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合の単なる相加的な効果を超える、相乗的な効果を奏することが明らかとなった。
また、血清中のIgGを上昇させると共に、血清中のIgEを低減できるという点、並びに脾臓細胞のIL−2産生亢進およびIL−4産生抑制という点でも、本願発明の抗アレルギー剤は、ハスの破砕物および/または抽出物、或いは乳酸菌のいずれかを単独で使用する場合の単なる相加的な効果を超える、相乗的な効果を奏することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
本発明の薬剤、食品添加剤および食品は、抗アレルギー、花粉症改善、血清中IgE濃度低下、IL−4産生抑制、TNF産生抑制のために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む抗アレルギー剤。
【請求項2】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む抗アレルギー用食品。
【請求項3】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む抗アレルギー用食品添加剤。
【請求項4】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む花粉症改善剤。
【請求項5】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む花粉症改善用食品。
【請求項6】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む花粉症改善用食品添加剤。
【請求項7】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む血清中IgE濃度低下剤。
【請求項8】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む血清中IgE濃度低下用食品。
【請求項9】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含む血清中IgE濃度低下用食品添加剤。
【請求項10】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含むIL−4産生抑制剤。
【請求項11】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含むIL−4産生抑制用食品。
【請求項12】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含むIL−4産生抑制用食品添加剤。
【請求項13】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含むTNF産生抑制剤。
【請求項14】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含むTNF産生抑制用食品。
【請求項15】
ハスの破砕物および/または抽出物と、乳酸菌とを含むTNF産生抑制用食品添加剤。

【国際公開番号】WO2005/053722
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511270(P2005−511270)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015611
【国際出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(503036357)株式会社トーヨー技術研究所 (5)
【出願人】(503036368)株式会社日本アレルギー応用研究所 (4)
【Fターム(参考)】