説明

ハニカムフィルタの欠陥の検査方法及び検査装置並びにハニカムフィルタの製造方法

【課題】サイズが比較的大きいハニカムフィルタであっても十分に高い精度の検査が可能な検査方法及び検査装置、当該検査方法による欠陥の検出工程を備えたハニカムフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】ハニカムフィルタ100の欠陥の検査方法であって、粒子Pを含むガスをハニカムフィルタ100の一端面110bに供給する供給工程と、ハニカムフィルタ100の他端面110tから排出されるガスに、他端面110tに沿うように広がる第1レーザーシートLSを照射し、第1レーザーシートLSにおけるハニカムフィルタ100の一端面と対向する部分を含む第一画像を取得する第1の画像取得工程と、第2レーザーシートLSを第1レーザーシートと異なる向きから照射することの他は第1の画像取得工程と同様にする第2の画像取得工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタの欠陥の検査方法及び検査装置並びにハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルパティキュレートフィルタとして用いられるハニカムフィルタの欠陥検査方法が知られている。例えば、特許文献1には、粒子を含むガス流をハニカムフィルタの入口端面に提供し、このハニカムフィルタの出口端面から出るガス流にレーザを照射し、粒子を照らすことが開示されている。特許文献1の図2Aでは、回転する多面ミラー608等といった光学要素と協働して、平面状の光のシート606をガス流に照射していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−503508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、検査精度が十分では無かった。特に、サイズが比較的大きいハニカムフィルタ(例えば、直径70mm以上)を検査対象とした場合、実際は欠陥がないにも関わらず、誤って欠陥を検出してしまう傾向にあり、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、サイズが比較的大きいハニカムフィルタであっても十分に高い精度の検査が可能な検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。また、本発明は、当該検査方法による欠陥の検出工程を備えたハニカムフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハニカムフィルタの欠陥の検査方法は、
粒子を含むガスをハニカムフィルタの一端面に供給する供給工程と、
ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに当該他端面に沿うように広がる第1レーザーシートが照射された状態下、前記ハニカムフィルタの他端面を含む第一画像を取得する第1の画像取得工程と、
前記第一の検出工程の後に、ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに、当該他端面に沿うように広がる第2レーザーシートが第1レーザーシートと異なる向きに照射された状態下、前記ハニカムフィルタの前記他端面を含む第2画像を取得する第2の画像取得工程と、を備える。
【0007】
本発明者らの観察によると、サイズが比較的大きいハニカムフィルタの端面に沿ってレーザ光を照射すると、ハニカムフィルタの端面の周縁部であってレーザ光の光源から離れた箇所が明るく光り、実際は欠陥がないにも関わらず、誤って欠陥を検出してしまうことがあった。このような過剰検出の主因について、本発明者らはハニカムフィルタの端面の上方に存在する粒子によってレーザ光が散乱し、粒子を含むガスが光源となってハニカムフィルタの上記周縁部を照らすことによるものと推察する。従来の検査方法にあっては、一箇所からレーザ光を照射して検査を行っていた。照射されたレーザ光は、照射対象までの距離が長くなると拡散しやすく、特に粒子を含むガスに照射されるとより一層拡散しやすいため、ハニカムフィルタのサイズ(端面のサイズ)が大きくなるに従って、レーザ光の光源から離れた箇所の検査精度が不十分となる。
【0008】
上記のような課題に対し、ハニカムフィルタの他端面に沿うように広がるレーザーシートを2つ以上の向きから照射してガス中の粒子の濃度分布をそれぞれ検出する。各向きのレーザーシートから得られた各濃度分布データのうち、レーザーシートの光源からの距離が近い箇所のデータをそれぞれ採用し、これらをコンピュータで合成することにより全体として精度の高い濃度分布データが得られる。なお、必ずしもコンピュータでデータを合成する必要はなく、複数の画像データを目視により観察して欠陥箇所を特定してもよい。
【0009】
ハニカムフィルタに対して2つ以上の向きからレーザーシートを照射するには、例えば、レーザーシートの光源を2つ以上有する検査装置を準備し、これらの光源から順次レーザーシートを照射して検出工程を実施すればよい。すなわち、第1の光源から第1レーザーシートを照射して第1の検出工程を実施した後、ハニカムフィルタに対する向きが第1の光源と異なる第2の光源から第2レーザーシートを照射して第2の検出工程を実施すればよい。あるいは、ハニカムフィルタを回転させる機構を有する検査装置を準備し、1回目の検出工程を実施した後、ハニカムフィルタを回転させて2回目の検出工程を実施すればよい。すなわち、光源から第1レーザーシートを照射して第1の検出工程を実施した後、ハニカムフィルタに対する当該光源からの第2レーザーシートの向きが第1の検出工程の第1レーザーシートと異なる向きとなるようにハニカムフィルタを回転させ、当該光源からレーザーシートを照射して第2の検出工程を実施してもよい。
すなわち、第1の光源から第1レーザーシートが照射され、第1の光源と異なる第2の光源から第2レーザーシートが照射されることができる。
また、ひとつの光源から第1レーザーシート及び第2レーザーシートが照射され、上記方法は、さらに、第2レーザーシートの向きが第1レーザーシートの向きと異なるように第1の画像取得工程の後、第2の画像取得工程の前にハニカムフィルタを回転させる工程を備えることもできる。
また、この方法は、第1画像及び第2画像に基づいて、ハニカムフィルタの欠陥の有無を判断する判断工程をさらに有することができる。
また、判断工程では、第1画像における、レーザーシートの光源に近い第1部分を抽出し、第2画像における、レーザーシートの光源に近い第2部分を抽出し、第1部分と第2部分とに基づいてハニカムフィルタの欠陥の有無を判断することができる。
第2の発明は、ハニカムフィルタの欠陥の検査方法であって、粒子を含むガスをハニカムフィルタの一端面に供給する供給工程と、
前記ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに、前記他端面に沿うように広がる第1レーザーシート及び前記他端面に沿うように広がる第2レーザーシートが、前記第1レーザーシートの向きと前記第2レーザーシートの向きが互いに異なるように照射された状態下、前記ハニカムフィルタの前記他端面を含む画像を取得する画像取得工程と、を備える。
本方法によれば、ガス漏れ部分から排出される粒子が互いに異なる2つのレーザーシートを散乱するため、ガス漏れ部分から排出される粒子の明るさが非常に強くなるため、精度を高くできる。
【0010】
より十分に高い精度の検査を行うためには、第1レーザーシートの向きと第2レーザーシートの向きとのなす角度は160〜200°であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、液体及び気体を二流体ノズルに供給することにより前記粒子を生成してもよいし、水とドライアイスとの混合により前記粒子を生成してもよい。前記ハニカムフィルタの隔壁は多孔質であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るハニカムフィルタの欠陥の検査装置の一態様は、
ハニカムフィルタを保持する保持部と、
粒子を含むガスをハニカムフィルタの一端面に供給する供給路と、
ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに向けて当該他端面に沿うように広がる第1レーザーシートを照射する第1の光源と、
ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに向けて当該他端面に沿うように広がる第1レーザーシートを、第1レーザーシートと異なる向きに照射する第2の光源と、
ハニカムフィルタの他端面を含む画像を取得するカメラと、を備える。
上述の各装置は、カメラが取得した複数の画像に基づいて、ハニカムフィルタの欠陥の有無を検出する検出部をさらに備えることができる。
【0013】
本発明に係るハニカムフィルタの欠陥の検査装置の他の態様は、
ハニカムフィルタを保持すると共に、ハニカムフィルタの中心軸を中心としてハニカムフィルタを回転させる回転機構と、
粒子を含むガスをハニカムフィルタの一端面に供給する供給路と、
ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに向けて当該他端面に沿うように広がるレーザーシートを照射する光源と、
ハニカムフィルタの他端面を含む画像を取得するカメラと、を備える。
【0014】
本発明に係るハニカムフィルタの製造方法は、
上記検査方法により、ハニカムフィルタの欠陥を検出する検出工程と、
検出工程において欠陥が検出されないハニカムフィルタを選別する選別工程と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サイズが比較的大きいハニカムフィルタであっても十分に高い精度で検査が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1の(a)は検査対象となるハニカムフィルタ100の斜視図、図1の(b)は(a)のIb−Ib矢視図である。
【図2】図2は、ハニカムフィルタ100の欠陥の検査装置400の概略断面図である。
【図3】図3(a)は第1の光源210AからレーザーシートLSを照射している状態を示す上面図、図3(b)は第2の光源210BからレーザーシートLSを照射している状態を示す上面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は第1及び第2の光源210A,210Bの使用時に得られる画像をそれぞれ模式的に示す図、図4(c)は2つの画像データを合成した画像を模式的に示す図である。
【図5】図5は、ハニカムフィルタ100の欠陥の検査装置500の概略断面図である。
【図6】図6(a)は第1の光源210A及び第2の光源210AからレーザーシートLS1及びレーザーシートLS2を照射している状態を示す上面図、図6(b)は図6(a)の工程で得られる画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態で検査対象となるハニカムフィルタ100について説明する。このハニカムフィルタ100は、例えば、ディーゼルパティキュレートフィルタとして用いることのできるものである。
【0018】
本実施形態において対象となるハニカムフィルタ100は、図1の(a)及び(b)に示すように、互いに平行に伸びる複数の流路110を形成する隔壁112、及び、複数の流路110の内の一部の一端(図1の(b)の左端)、及び、複数の流路110の内の残部の他端(図1の(b)の右端)を閉鎖する封口部114を有する円柱体である。
【0019】
ハニカムフィルタ100の流路110が延びる方向の長さは特に限定されないが、例えば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカムフィルタ100の外径も特に限定されないが、例えば、100〜320mmとすることできる。流路110の断面のサイズは、例えば、正方形の場合一辺0.8〜2.5mmとすることができる。隔壁112の厚みは、0.05〜0.5mmとすることができる。
【0020】
なお、強度の高いレーザ光を採用したり、ガス中の粒子濃度(ミストの濃度)を調整したりすることで、従来の検査方法であってもある程度は検査精度の向上を図れるかもしれない。しかし、ハニカムフィルタ100の外径(レーザ光の光源側の周縁部から反対側の周縁部までの距離)が70mm以上(より好ましくは100mm以上)であると、従来の検査方法では十分な精度で検査を実施できず、本実施形態に係る検査方法が特に有用である。
【0021】
ハニカムフィルタ100の隔壁112の材質は、多孔性セラミクス(焼成体)である。セラミクスは特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。
【0022】
上述のように、ハニカムフィルタ100の複数の流路110のうちの一部の左端が封口部114により封口され、ハニカムフィルタ100の複数の流路110のうちの残部の右端が封口部114により封口されている。封口部114の材質としては、ハニカムフィルタ100と同様のセラミクス材料を用いることができる。上述の「複数の流路110のうちの一部」と「複数の流路110のうちの残部」とは、好ましくは、図1の(a)に示すように、端面側から見て行列状に配列された複数の流路の内の、縦方向及び横方向それぞれ1つおきに選択された流路の組合せである。
【0023】
ハニカムフィルタ100は、多孔質の隔壁112を有することにより、図1の(b)において、流路110の左端から供給されたガスは、隔壁112を通過して隣の流路110に到達し、流路110の右端から排出される。このとき、流入したガス中の粒子が、隔壁112によって除去されてフィルタとして機能する。
【0024】
このようなハニカムフィルタ100は例えば以下のようにして製造することができる。まず、無機化合物源粉末と、有機バインダと、溶媒と、必要に応じて添加される添加物を用意する。そして、これらを混練機等により混合して原料混合物を調製し、この原料混合物を隔壁の形状に対応する出口開口を有する押出機から押し出し(押出工程)、所望の長さに切断後、公知の方法で乾燥することにより、グリーンハニカム成形体を得る。グリーンハニカム成形体の流路の端部を公知の方法によって封口材で封口し(封口工程)、その後、グリーンハニカム成形体を焼成してハニカムフィルタ100を得る(焼成工程)。あるいは、グリーンハニカム成形体の焼成を先に実施し、その後、公知の方法によって流路の端部を封口してハニカムフィルタ100を得てもよい。
【0025】
<第1実施形態>
図2〜4を参照して、ハニカムフィルタ100の検査装置について説明する。検査装置400は、ハニカムフィルタ100を保持する保持部53と、ミスト(粒子)Pを含むガスをハニカムフィルタ100の複数の流路110の一端(図2の下端)に導くミスト供給路54と、粒子濃度検出部200とを備える。
【0026】
保持部53は、ハニカムフィルタ100を固定すると共に、ミスト供給路54から供給されるガスがハニカムフィルタ100の周囲から漏れないようにシールするためのものである。保持部53はミスト供給路54の先端に設けられており、ハニカムフィルタ100の軸方向(複数の流路110の軸方向)の一端部(図2では下端部)を外側から包囲してシールする筒状シール部51と、複数の流路110の下端110bと対向する部分に逆円錐状の空間Vを形成する空間形成部52とを有する。
【0027】
ミスト供給路54は、ミストPを含むガスをハニカムフィルタ100の一方面100bに供給するためのものである。ハニカムフィルタ100に対して供給するガスの流量は特に限定されないが、例えば、100〜500L/minとすることができる。
【0028】
ミストPを含むガスを予め準備し、このガスをミスト供給路54を通じてハニカムフィルタ100に供給してもよいが、ミスト濃度の均一性が高いガスを得る観点から、図2に示すように、ミスト供給路54の途中に、二流体ノズル20及び混合器40等を設置することが好ましい。
【0029】
二流体ノズル20は、タンク10から供給される液体を、ポンプ12を介して受け入れると共に、ガス源14から供給されるガス、例えば、空気をバルブV1及びラインL2を介して受入、ミストを含むガスを生成する。二流体ノズルの形態は特に限定されない。また、ミストの径は特に限定されないが、例えば、0.1〜10μm程度とすることができる。
液体としては、検査後の除去の容易さを考えると、揮発性の液体が好ましく、特に、水が好ましい。
【0030】
混合器40は、ミストPを含むガスと他のガスを十分混合するためのものである。混合器40の形状は特に限定されないが、例えば、容器内に、他のガスを高い速度(例えば、1〜10m/s)で流入させる形式のものや、容器内に攪拌翼を有するもの、スタティックミキサーのように容器内に設けた内装物により流れの乱れを起こすものなど種々のものが利用できる。
【0031】
混合器40には、ガス源24から、ガス(例えば、空気)を、バルブV2を介して供給する。混合後の混合ガス中のミスト濃度は、0.0001〜0.01g/Lが好ましい。
【0032】
ガス供給源14,24のガスは特に限定されないが、経済性の点で、空気が好ましい。ガス供給源14,24のガスは互いに同一でもよいが異なっていてもよい。
また、ガス供給源14,24のガスの温度は0〜50℃であることが好ましく、0〜30℃であることがより好ましい。
【0033】
粒子濃度検出部200は、ハニカムフィルタ100の複数の流路110の他端(図2の上端)から排出されるガスに向けてレーザーシート(レーザ光)LSを照射する第1の光源210Aと、ハニカムフィルタ100に対する向きが第1の光源210Aと異なるレーザーシート(レーザ光)を照射する第2の光源210Bとを有し、さらに、レーザーシートLSを撮影するカメラ220、カメラ220が取得した画像を解析するコンピュータ230を備える。
【0034】
第1の光源210Aからのレーザーシート(第1レーザーシート)LSは、図2,3に示すように、ハニカムフィルタ100の複数の流路110が伸びるZ方向に垂直な方向であるXY平面に平行であり且つ図3(a)の左方向(Xのマイナス方向)に向けて照射される。他方、第2の光源210Bからのレーザーシート(第2レーザーシート)LSは、XY平面に平行であり且つ図3(b)の右方向(Xのプラス方向)に向けて照射される。図3(a)は第1の光源210AからレーザーシートLSを照射している状態を示し、図3(b)は第2の光源210BからレーザーシートLSを照射している状態を示す。XY平面は、ハニカムフィルタ100の他端100tと平行な面であり、各レーザーシートLSは、他端100tに沿うように広がる。
【0035】
ここでは、図3に示すように、第1の光源210A及び第2の光源210Bが互いに対向する位置に設けられた場合、すなわち、これらの光源からのレーザーシートの向きのなす角度が180°である場合を例示したが、第1の光源210Aの照射方向と、第2の光源210Bの照射方向のなす角度は、レーザーシートLSに対して垂直なZ軸方向から見て、160〜200°の範囲とすることができる。なお、図3に示すように、レーザーシートLSが扇状に照射される光源を使用する場合は、「レーザーシートの向き」とは、レーザーシートの中心(軸)の向き(図3の矢印Da,Db参照)を意味する。
【0036】
カメラ220は、レーザーシートLSに対して垂直な方向(Z方向)から、レーザーシートLSの内のハニカムフィルタ100の上端面110tとの対向部を撮影する。カメラ220が撮影する画像の視野FVを図3に示す。カメラ220の撮影タイミングや、光源210A,210Bの点灯/消灯のタイミングは、カメラ及び光源210A,210Bに接続されたコントローラにより行うことができる。
【0037】
コンピュータ230は、カメラ220が撮影した画像を画像解析し、粒子が排出されている部分を検出する。例えば、画像から所定のしきい値に比べて明るい部分を抽出し、この部分を粒子が排出された場所とすればよい。ただし、ハニカムフィルタ100の外径が比較的大きい場合、第1の光源210Aの使用時には図4の(a)に示すように、ハニカムフィルタ100の他端面110tの周縁部であって第1の光源210Aから離れた箇所Raがミストの発光によって明るく照らされ、欠陥箇所と誤認識されやすい。他方、第2の光源210Bの使用時には図4の(b)に示すように、ハニカムフィルタ100の他端面110tの周縁部であって第2の光源210Bから離れた箇所Rbがミストの発光によって明るく照らされ、欠陥箇所と誤認識されやすい。
【0038】
コンピュータ230は、第1の光源210Aの使用時に取得した画像(第1画像)及び第2の光源210Bの使用時に取得した画像(第2画像)を合成することにより全体として精度の高い画像データ(濃度分布データ)を取得する。より具体的には、各画像データのうち、レーザ光の光源からの距離が近い箇所(図4(a)における領域(第1部分)Ta及び図4(b)における領域(第2部分)Tb)のデータをそれぞれ採用し、これらを合成することにより全体として精度の高い画像データが得られる(図4(c)参照)。
【0039】
なお、本装置からは、ミストを含むガスが排出されるため、これらのガスを捕集して、外部に排気する排気手段を設けることが好ましい。
【0040】
続いて、上述の検査装置400を使用したハニカムフィルタ100の検査方法について説明する。ここでは、一例として、図2に示すように、ハニカムフィルタ100の隔壁112には、欠陥として、上端が封口された流路110xと、下端が封口された流路110yとを連通させる孔hがあるものとする。
【0041】
まず、保持部53をハニカムフィルタ100の下部に装着する。そして、バルブV1を開放すると共に、ポンプP12を駆動して、二流体ノズル20から、ミストを含むガスを発生させる。発生したミストを含むガスは、配管30を介して混合器40に供給される。続いて、バルブV2を調節して、ガス源24からのガスを、ラインL3を介して混合器40に供給する。これにより、混合器40内で、配管30からのミストを含むガスと、ラインL3からのガスとが混合し、ミストの濃度の均一性の高い混合ガスが得られる。そして、この混合ガスは、ミスト供給路54を介してハニカムフィルタ100に供給される(供給工程)。これにより、ハニカムフィルタ100の複数の流路110の上端110tからガスが流出する。このとき、ハニカムフィルタ100の複数の流路110の上端110tの近傍においては、雰囲気ガスの流れが殆ど無い状態、例えば、流速1m/s以下としておくことが好ましい。また、実験の容易さから、雰囲気ガスの温度は0〜30℃であることが好ましい。雰囲気ガスは空気であることが好ましい。
【0042】
そして、流路110間に図2に示すような孔hが存在する場合、流路110x、孔h、及び、流路110yによって複数の流路110の上端110tと下端110bとを結ぶ流路が形成されるため、矢印Gに示すように、当該欠陥がある流路110yの上端から、ミストを含む混合ガスが他の流路110に比べて高い流量や流速で集中的に流出する。封口部114が欠落している場合や、封口部114と流路110との間に隙間が生じている等の欠陥がある場合も同様にミストを含む混合ガスが集中的に流出する。したがって、このような流路110yの上方では、他の部分と比べて、ミストの濃度が相対的に高くなる。
【0043】
次に、第1の光源210Aからレーザーシート(第1レーザーシート)LSを照射し、照射した状態下でハニカムフィルタ100の他端面110tを含む画像を取得する(第1の画像取得工程)。ハニカムフィルタ100の上端から流出するガスにミストの濃度の不均一がある場合、第1の光源210Aから照射されたレーザーシートLSは濃度の高い部分を通過する際に散乱し、カメラ220が撮影する画像において相対的に明るい領域R1(図4の(a)参照)となって現れる。この明るい部分の有無により、粒子の濃度のムラを検出する。
【0044】
ただし、ハニカムフィルタ100の外径が比較的大きい場合、欠陥のある箇所が第1の光源210Aから比較的離れているため、領域R1は十分に明るくない場合がある。また、上述のとおり、図4の(a)に示すように、第1の光源210Aの使用時にはハニカムフィルタ100の他端面110tの周縁部であって第1の光源210Aから離れた箇所Raが明るく光り、欠陥箇所と誤認識されやすい。
【0045】
続いて、第1の光源210AからレーザーシートLSを照射するのを停止し、次に第2の光源210Bからレーザーシート(第2レーザーシート)LSを照射し、上述と同様にしてカメラ220でハニカムフィルタ100の他端面110tを含む画像を取得する(第2の画像取得工程)。また、上述と同様にして、レーザ光の散乱による明るい部分の有無により、粒子の濃度のムラを検出する。欠陥のある箇所が第2の光源210Bに比較的近いため、第1の光源210Aによる領域R1と比較して領域R2はより明るい光として観測される。ただし、図4(b)に示すように、第2の光源210Bの使用時にはハニカムフィルタ100の他端面110tの周縁部であって第2の光源210Bから離れた箇所Rbが明るく光り、欠陥箇所と誤認識されやすい。
【0046】
上記のようにして得られた2つの画像データ(図4(a)及び(b))をコンピュータ230で処理する(データ処理工程)。データ処理工程を実施することにより精度の高い画像データ(図4(c))が得られる。これにより、図4(c)に示すように、合成された画像において、明るく光る領域R2に欠陥があり、その他の箇所には欠陥がないと判断することができる。
【0047】
なお、流路110間を連通する等の欠陥が無い場合には、図2の矢印Hに示すように、混合ガスは多孔体である隔壁112をそれぞれ通過して上端出口から流出する。この際、混合ガス中のミストは、ミストの径や隔壁112の空孔のサイズ等に応じて、全部捕集されたり、一部が捕集されたり、まったく捕集されない場合があるが、いずれにしても、各流路110の上端から流出するガスの流速や流量は互いにほぼ均一であり、したがって、流路110の上端110tの上でミストの濃度の不均一は起こりにくい。
【0048】
本実施形態によれば、流路110から流出するガス中の粒子の濃度分布を検出することにより、流路の欠陥の有無や場所を容易に検出できる。特に、本実施形態では、2つの光源210A,210Bを用いて2つの画像データを取得できるため、これらの画像データを合成することにより、より精度の高い検査を行うことができる。検査の精度をさらに向上させるため、第1の検出工程及び第2の検出工程の組み合わせを複数回実施してもよいし、複数回の第1の検査工程を実施した後、複数回の第2の検査工程を実施してもよい。
【0049】
本実施形態に係る検査方法をハニカムフィルタ100の製造過程に組み込んでもよい。すなわち、ハニカムフィルタ100の製造方法は、上述の押出工程、封口工程及び焼成工程に加え、さらに、本実施形態に係る検査方法によりハニカムフィルタの欠陥を検出する検出工程、及び、検出工程において欠陥が検出されないハニカムフィルタを選別する選別工程を備えてもよい。選別工程を実施することで、欠陥が検出されないハニカムフィルタを次工程に送出したり、最終製品としたりすることができる。
【0050】
<第2実施形態>
上記実施形態においては、2つの光源210A,210Bを用いる場合を例示したが、ハニカムフィルタ100をXY平面と平行な面上で回転させる機構を採用すれば、レーザ光源が1つであっても同様に精度の高い検査を実施できる。以下、第2実施形態については、上記第1実施形態と相違する点について主に説明する。
【0051】
図5に示す検査装置500は、第2の光源210Bを具備しない代わりに、ミスト供給路54の途中にジョイント部(回転機構)54aが設けられており、ジョイント部54aよりも上方のミスト供給路54及び保持部53がハニカムフィルタ100と共に回転するようになっている。図5に示すように、ハニカムフィルタ100はZ方向と平行な中心軸、すなわち、ハニカムフィルタの軸を中心にして自在に回転する。なお、ミスト供給路54をフレキシブルなチューブで構成した場合、必ずしもジョイント部54aを設けなくてもよい。本実施形態は、ハニカムフィルタ100を、ジョイント部54aを軸として回転させるモータを有することができる。
【0052】
検査装置500を用いてハニカムフィルタ100の欠陥を検査するには、上述の検査装置400と同様、供給工程及び光源210Aからレーザーシート(第1レーザーシート)LSを照射し、他端面110tの画像を取得して第1の画像取得工程を実施した後、ハニカムフィルタ100に対する光源210Aからのレーザ光の向きが第1の検出工程と異なる向きとなるようにハニカムフィルタ100を180°回転させ、再度、光源210Aからレーザーシート(第2レーザーシート)LSを照射し、他端面110tの画像を撮影して第2の画像取得工程を実施すればよい。なお、ハニカムフィルタ100を回転させる角度は160〜200°の範囲であればよい。カメラ220の撮影タイミング、光源210Aの点灯/消灯のタイミング、及び、モータの駆動タイミングは、これらに接続されたコントローラにより行うことができる。
【0053】
本実施形態では、ハニカムフィルタ100を回転させることで、1つの光源210Aを用いて複数の画像データを取得できる。これらの画像データを合成することにより、より精度の高い検査を行うことができる。上述の第1実施形態と同様、本実施形態に係る検査方法をハニカムフィルタ100の製造過程に組み込んでもよい。
<第3実施形態>
続いて、本発明の第3実施形態にかかる方法を、図6を参照して説明する。本実施形態が、第1実施形態と異なる点は、図6の(a)に示すように、粒子を含むガスをハニカムフィルタの一端面に供給した後、ハニカムフィルタ100の他端面から排出されるガスに、第1レーザーシートLS1及び第2レーザーシートLS2が照射された状態下、ハニカムフィルタの他端面110tを含む画像を取得する点である。
第1レーザーシートLS1は、第1の光源210Aから照射され、他端面に沿うように広がる。第2レーザーシートは、第2の光源210Bから照射され、他端面に沿うように広がる。第1レーザーシートLS1の向きと前記第2レーザーシートLS2の向きは互いに異なる。
レーザーシートLS1及びLS2を照射した状態下でのカメラの撮影は、光源210A、210B及びカメラを制御するコントローラなどにより自動的に行うことができる。
本実施形態によれば、得られた画像においては、図6の(b)に示すように、2つのレーザーシートLS1,LS2によって散乱を受けるため、欠陥hなどの存在により粒子が漏れている領域R3は特に明るい光として観測される。従って、この領域R3は、概ね1つのレーザーシートにより散乱されたRa及びRbから容易に判別できる。したがって、本実施形態でも、欠陥部分を精度良く判断でできる。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されずさまざまな変形態様が可能である。
例えば、上記実施形態では、ミストの生成方法として二流体ノズルを採用しているがこれに限られず、例えば、他のノズルを使用してもよいし、また、水とドライアイスとを混合することによりミストを生成してもよく、グリコール系アルコール(例えば、プロピレングリコール)のミストを使用してもよい。また、上記実施形態では、粒子としてミスト、すなわち、液体の粒子を採用しているがこれに限定されず、カーボンブラック等の固体粒子を用いても実施は可能である。
【0055】
また、レーザーシートの方向や、カメラの方向も、上記実施形態の態様に限定されるものではない。
【0056】
また、上記実施形態では、雰囲気ガスが空気であるが、他のガスを雰囲気ガスとしてもよいことは言うまでも無い。
【0057】
また、上記実施形態では、ハニカムフィルタ100の流路110が上下方向に配置されているが、水平方向等、いずれの方向を向いても実施可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、流路110の断面形状は、略正方形であるがこれに限定されず、矩形、円形、楕円形、3角形、6角形、8角形等にすることができる。また、流路110には、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在してもよい。また、流路の配置も、図1では正方形配置であるが、これに限定されず、断面において流路の中心軸が正三角形の頂点に配置される正三角形配置、流路の断面が矩形や正方形の場合には千鳥配置等にすることができる。さらに、ハニカムフィルタの外形も、円柱に限られず、例えば、楕円柱、3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等とすることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、ハニカムフィルタは、隔壁が多孔質である焼成体であるが、焼成前であり非多孔質のグリーン体でも実施は可能である。この場合、欠陥の無い流路からのガスの流出は無い。
【0060】
また、上記実施形態では、カメラ220により得られた画像に基づいて、コンピュータによって、粒子の有無を判断しているが、人手によって明るい点の有無や位置を判断してもよい。
【符号の説明】
【0061】
53…保持部、54…ミスト供給路、54a…ジョイント部(回転機構)、100…ハニカムフィルタ、100b…ハニカムフィルタの一方面、100t…ハニカムフィルタの他端面、110b…ハニカムフィルタの下端(一端面)、110t…上端(他端面)、200…粒子濃度検出部、210A…第1の光源、210B…第2の光源、400,500…検査装置、LS…レーザーシート(レーザ光)、P…ミスト(粒子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムフィルタの欠陥の検査方法であって、
粒子を含むガスをハニカムフィルタの一端面に供給する供給工程と、
前記ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに当該他端面に沿うように広がる第1レーザーシートが照射された状態下、前記ハニカムフィルタの前記他端面を含む第1画像を取得する第1の画像取得工程と、
前記第1の画像取得工程の後に、前記ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに当該他端面に沿うように広がる第2レーザーシートが前記第1レーザーシートと異なる向きに照射された状態下、前記ハニカムフィルタの前記他端面を含む第2画像を取得する第2の画像取得工程と、を備える検査方法。
【請求項2】
第1の光源から前記第1レーザーシートが照射され、前記第1の光源と異なる第2の光源から前記第2レーザーシートが照射される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つの光源から前記第1レーザーシート及び第2レーザーシートが照射され、
前記方法は、さらに、前記第2レーザーシートの向きが前記第1レーザーシートの向きと異なる向きとなるように前記第1の画像取得工程の後、前記第2の画像取得工程の前に前記ハニカムフィルタを回転させる工程を、備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1画像及び前記第2画像に基づいて、前記ハニカムフィルタの欠陥の有無を判断する判断工程をさらに有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記判断工程では、前記第1画像における、前記第1レーザーシートの光源に近い第1部分を抽出し、前記第2画像における、前記第2レーザーシートの光源に近い第2部分を抽出し、前記第1部分と前記第2部分とに基づいて前記ハニカムフィルタの欠陥の有無を判断する請求項4記載の方法。
【請求項6】
ハニカムフィルタの欠陥の検査方法であって、
粒子を含むガスをハニカムフィルタの一端面に供給する供給工程と、
前記ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに、前記他端面に沿うように広がる第1レーザーシート及び前記他端面に沿うように広がる第2レーザーシートが、前記第1レーザーシートの向きと前記第2レーザーシートの向きが互いに異なるように照射された状態下、前記ハニカムフィルタの前記他端面を含む画像を取得する画像取得工程と、を備える検査方法。
【請求項7】
前記第1レーザーシートの向きと前記第2レーザーシートの向きとのなす角度は160〜200°である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
液体及び気体を二流体ノズルに供給することにより前記粒子を生成する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
水とドライアイスとの混合により前記粒子を生成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ハニカムフィルタの隔壁は多孔質である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ハニカムフィルタの欠陥の検査装置であって、
ハニカムフィルタを保持する保持部と、
粒子を含むガスを前記ハニカムフィルタの一端面に供給する供給路と、
前記ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに向けて当該他端面に沿うように広がる第1レーザーシートを照射する第1の光源と、
前記ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに向けて当該他端面に沿うように広がる第2レーザーシートを、前記第1レーザーシートと異なる向きに照射する第2の光源と、
前記ハニカムフィルタの前記他端面を含む画像を取得するカメラと、を備える検査装置。
【請求項12】
ハニカムフィルタの欠陥の検査装置であって、
ハニカムフィルタを保持すると共に、前記ハニカムフィルタの中心軸を中心として前記ハニカムフィルタを回転させる回転機構と、
粒子を含むガスをハニカムフィルタの一端面に供給する供給路と、
前記ハニカムフィルタの他端面から排出されるガスに向けて当該他端面に沿うように広がるレーザーシートを照射する光源と、
前記ハニカムフィルタの前記他端面を含む画像を取得するカメラと、を備える検査装置。
【請求項13】
前記カメラが取得した複数の画像に基づいて、前記ハニカムフィルタの欠陥の有無を検出する検出部をさらに備える請求項11又は12項記載の装置。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法により、ハニカムフィルタの欠陥を検出する検出工程と、
前記検出工程において欠陥が検出されないハニカムフィルタを選別する選別工程と、を備えるハニカムフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−36989(P2013−36989A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−155788(P2012−155788)
【出願日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)