ハニカムフィルタ製造装置
【課題】多孔質体からなる基材の表面に、漏れなく均一な厚さの捕集層を形成してなる、品質の優れたハニカムフィルタを、高い生産性、高い歩留まりで作製可能な手段を提供すること。
【解決手段】ハニカムフィルタの製造に使用する装置であって、ハニカムフィルタの基材(ワーク11)を固定するためのワーク固定部10と、そのワーク固定部10の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部20と、その粉体搬送部20とワーク固定部10の間に設けられ、粉体搬送部20から気流に乗って搬送された粉体を他の気体と更に混合して装置使用時にワーク固定部10に固定される基材(ワーク11)へ導入する導入部40と、ワーク固定部10の他の側に配設され、吸引手段を用いて、ワーク固定部10の他の側をワーク固定部10の一の側に対して減圧にして、ワーク固定部10に固定される基材(ワーク11)を通過した気体を吸引する吸引部30と、を有するハニカムフィルタ製造装置1の提供による。
【解決手段】ハニカムフィルタの製造に使用する装置であって、ハニカムフィルタの基材(ワーク11)を固定するためのワーク固定部10と、そのワーク固定部10の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部20と、その粉体搬送部20とワーク固定部10の間に設けられ、粉体搬送部20から気流に乗って搬送された粉体を他の気体と更に混合して装置使用時にワーク固定部10に固定される基材(ワーク11)へ導入する導入部40と、ワーク固定部10の他の側に配設され、吸引手段を用いて、ワーク固定部10の他の側をワーク固定部10の一の側に対して減圧にして、ワーク固定部10に固定される基材(ワーク11)を通過した気体を吸引する吸引部30と、を有するハニカムフィルタ製造装置1の提供による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体からなる基材と、その基材の表面に設けられた、微粒子を捕集するための捕集層と、を有するハニカムフィルタを製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスには、スート(黒鉛)を主体とする粒子状物質(パティキュレートマター(PM))が、多量に含まれている。このPMがそのまま大気中に放出されると、環境汚染を引き起こすため、排出ガスの流路には、PMを捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備えたフィルタ装置が搭載される。
【0003】
このようなフィルタ装置の中心となるそのDPF(エレメント)として、例えば、ハニカム構造を有するハニカムフィルタが知られている。このハニカムフィルタは、多数の細孔を有するセラミックの多孔質体からなる隔壁によって区画された、ガスの流路となる複数のセルを有し(ハニカム構造を呈し)、隣接する複数のセルの、一方の開口端と他方の開口端とを、互い違いに目封止してなるものである。このハニカムフィルタをキャニングし、一のセルの開口端から排出ガスを流入させると、排出ガスは、隔壁を通過して隣接するセルの他方の開口端から流出し、その際にPMが隔壁に捕集され除去されて、浄化される。
【0004】
しかし、このようなハニカムフィルタでは、PMが堆積することに伴って、圧力損失が急激に増加し易い。そこで、圧力損失の抑制を図るべく、例えば、特許文献1〜3には、新たな構造のハニカムフィルタが開示されている。これらのハニカムフィルタに共通する特徴は、多孔質体であるハニカム構造体をハニカムフィルタの基材(支持体)とし、その基材の表面に、PMを捕集するための捕集層を設けたところにあり、特許文献1〜3には、その新たなハニカムフィルタの製造方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−249124号公報
【特許文献2】特開2006−685号公報
【特許文献3】特開平10−263340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景の下でなされたものであり、その課題とするところは、多孔質体からなる基材の表面に、漏れなく均一な厚さの捕集層を形成してなる、品質の優れたハニカムフィルタを、高い生産性、高い歩留まりで作製可能な手段を提供することである。研究が重ねられた結果、以下の手段によって、この課題が解決されることが見出され、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、先ず、本発明によれば、ハニカムフィルタの製造に使用する装置であって、ハニカムフィルタの基材を固定するためのワーク固定部と、そのワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、その粉体搬送部とワーク固定部の間に設けられ、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体と更に混合して上記装置使用時に上記ワーク固定部に固定される基材へ導入する導入部と、上記ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて、上記ワーク固定部の他の側を上記ワーク固定部の一の側に対して減圧にして、上記ワーク固定部に固定される基材を通過した気体を吸引する吸引部と、を有するハニカムフィルタ製造装置が提供される。
【0008】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の製造対象であるハニカムフィルタは、外形が周面と2つの端面とからなる柱状(好ましくは円柱状又は四角柱状)を呈する基材を備え、その基材は、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有し、流体の流路となるそのセルは多孔質体からなる隔壁によって区画され、隣接する複数のセルは、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止されているとともに、その基材の内表面に捕集層が形成されてなるものである。
【0009】
ワーク固定部のワークとは、処理の対象であり、本明細書においては、ハニカムフィルタの基材(多孔質体)のことを指す。ワーク固定部とは、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の使用時に、ワークが(ハニカムフィルタの基材が)固定される部分である。ワークであるハニカムフィルタの基材において、捕集層が形成される基材の内表面は、基材の表面のうち、セルを形成する表面であり、これをセル内面ともいう。セルを形成する基材の部分を、隔壁又はセル壁とよぶ。基材の内表面、セル内面、隔壁の表面、及びセル壁の表面は、何れも同じ部分を指す。又、粉体搬送部が配設されるワーク固定部の一の側を入口側ともいい、吸引部が配設されるワーク固定部の他の側を出口側ともいう。
【0010】
導入部は、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体(気流)と更に混合しワーク固定部に固定される基材へ導入する部分であり、これは閉じていない空間である。即ち、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部と、そのワーク固定部の一の側に配設される粉体搬送部と、を備え、それら粉体搬送部とワーク固定部の間に、開放された空間(即ち、導入部)を有する、と表現することも出来る。導入部の寸法は、換言すれば、ワーク固定部と粉体搬送部との距離(厳密にはワーク固定部に固定した基材と粉体搬送部との距離)は、粉体搬送部の側における基材の端面の、粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円の、直径以上であることが好ましく、直径の3倍以上であればより好ましい。尚、粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円とは、粉体搬送部の側における基材の端面の形状が円形である場合は、その端面の形状・寸法と合致する円(その端面の直径と同一の直径を持つ円)であり、粉体搬送部の側における基材の端面の形状が非円形である場合(例えば多角形である場合)は、図12に示されるような、粉体搬送部の側における基材の端面11aに外接する、最小の円80である。そして、直径は、円80の直径rである。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置において、1つの導入部に対し、2つ以上の粉体搬送部を設けてもよい。
【0011】
分散した粉体を含む気体、及び粉体を分散させる加圧気体は、何れも通常は空気であればよい。加圧気体の圧力は、特に制限されないが、1.5〜5気圧程度の圧力を、好ましく用いることが出来る。
【0012】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、この基材の内表面に捕集層が形成されてなるハニカムフィルタを製造する装置である。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、気体中に分散した粉体(エアロゾルともいう)を用いて対象物(基材)に製膜可能であるから、乾式の製膜装置ということが出来る。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気流に乗せて粉体搬送部から噴射し、導入部において他の気体と混合し、その混合した気体(混合気体ともいう)を、基材のセルに送り込み、基材の反対側から吸引する。このとき、気体は基材の隔壁を通過するが、粉体は通過せず、その通過しない粉体がセル内面に(基材の内表面に)堆積し、その後の熱処理によって基材と粉体とを結合させ、捕集層となる。
【0013】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部が、加圧気体を用いた粉体分散手段を備えることが好ましい。粉体分散手段としては、エジェクタやエアロゾル化室を挙げることが出来るが、粉体分散手段は、エジェクタであることが特に好ましい。そのエジェクタは、粉体を気流によって吸引し、加圧気体とともに粉体を排出して、気体中へ分散するものであることが好ましい。即ち、この場合、エジェクタは、粉体を気体中に分散させ、気流に乗せて(気体とともに)噴射する機器であり、加圧気体による高速の気流によって生じた負圧を利用して粉体を吸引し、これを加圧気体とともに気体中へ噴射するもの、ということが出来る。このエジェクタは、1つだけ備わっていてもよく、2以上備わっていてもよい。加えて、そのエジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行であることが好ましい。
【0014】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備えることが好ましい。エジェクタを備える場合には、そのエジェクタの粉体吸引側に、複数の粉体供給手段を設けてもよい。
【0015】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記導入部が、粉体を、ワーク固定部に固定される基材へ案内するガイド部材を有することが好ましい。このガイド部材の形状は、基材が柱状である場合に、基材(ワーク)の外形(特に端面の形状)に合わせたものとすればよい。ガイド部材の形状は、基材の外形(特に端面の形状)とほぼ相似な断面をもつ筒状であるのが好ましく、円筒状や角パイプ状であってもよい。基材が円柱状である場合には、基材の端面を内包する最小の円の直径とほぼ同じ径、あるいは、その直径より大きな径を持つ円筒形であることが好ましい。ガイド部材の長さは、粉体搬送部の側における基材の端面の、基材の端面を内包する最小の円の直径以上、より好ましくは、その直径の3倍以上、の長さである。このガイド部材は、ワーク固定部とは反対側が、開放されているものである。又、ワーク固定部の側は、ワーク固定部に固定したときの基材の端面あるいは外周と近接していることが好ましく、それらと接触してシールされていることが、より好ましい。
【0016】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置がガイド部材を有する場合においては、粉体がガイド部材の内周面に付着することを防止する観点から、ガイド部材が、筒状の多孔質体であることが好ましい。又、同様の観点から、ガイド部材が、筒状の外筒部と、その内側に所定の間隔を置いて配置された、多数の孔を有する筒状の内筒部とからなるものであるとともに、導入部が、前記外筒部と前記内筒部との間の空隙に気体を供給する気体供給手段を有することが好ましい。更に、同様の観点から、ガイド部材が、筒状を呈するものであるとともに、導入部が、ガイド部材の内周面近傍に気体を吐出する吐出ノズルを有することが好ましい。
【0017】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を旋回させてその速度を調整する速度調整手段が、上記導入部に備わることが好ましい。その速度とは、粉体を搬送する気流の速度であり、粉体の速度にも等しい。速度調整手段としては、例えば、2つの開口の大きさの異なる、円筒部材を挙げることが出来る。このような円筒部材は、例えば一方の開口がテーパー状に狭められた円筒部材である。その円筒部材の軸方向に対して、概ね垂直な方向から、粉体を搬送する気流が入ると、その気流は旋回し、速度は調整される(速度が低下する)。
【0018】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ハニカムフィルタの基材は柱状を呈し、使用時において、ワーク固定部に固定される基材の軸方向が、略鉛直であり、気流が下から上へ流れるものが好ましい。即ち、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、使用時に、基材を縦置きにして、気流を基材の下から基材を通し基材の上へ通り抜けさせるものが好ましい。基材の軸方向が略鉛直とは、重力の方向から30度以内に収まる範囲をいう。重力の方向から15度以内に収めることが、より好ましい。この態様は、換言すれば、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の好ましい使用方法ということが出来るが、装置としても、基材を縦置きにして使用出来るようになっていることが好ましい、ということである。
【0019】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部又は導入部に、(粉体の)分級手段を備えることが好ましい。分級手段としては、例えば、遠心分級、重力分級等が好ましく用いられる。当該部において、管径を太くしたり、曲線部分を形成してもよいし、気流が下から上へ流れる部分を設けてもよい。
【0020】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部が、基材の側面を覆うカバーを備えることが好ましい。カバーの形状は、基材の外形に合わせたものとすればよい。又、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、吸引部が、流量計を備えることが好ましい。吸引対象は、粉体が(セル内面に付着して)抜けた気体であるので、流量計の代わりに風速計を用いることが出来る。更に、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、吸引部が、整流板を備えることが好ましい。
【0021】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部に基材を固定したときに、その基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)までの距離dとが、r<dの関係を満たすことが好ましい。又、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部に基材を固定したときに、基材の粉体搬送部の側における端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dと、ガイド部材の長さLとが、0.5d<Lの関係を満たすことが好ましい。
【0022】
次に、本発明によれば、上記した何れかのハニカムフィルタ製造装置を用い、吸引部が吸引する気体aの流量A、粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、導入部において気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、ハニカムフィルタの基材の内表面に、粉体を堆積させる過程を有するハニカムフィルタの製造方法が提供される。
【0023】
例えば、粉体搬送部から噴射される気体の流量Bを一定にして、その流量Bより、吸引部が吸引する流量Aを、流量Cだけ多くすればよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて他の側を一の側に対して減圧にする吸引部と、を有し、吸引部によって基材を通過した気体が吸引されるので、気流が整流される。そして、その整流された気流の軌道に乗って、粉体は、基材が有する多数のセルへ、均一且つ安定に、供給される。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置によれば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、そして、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。又、整流されることによって、粉体が周りに飛散し難くなり、良好な作業環境が保持される。
【0025】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気流に乗せて粉体搬送部から噴射し、導入部において他の気体と混合し、その混合した気体(気流)を基材のセルに送り込むので、混合の過程で粉体が拡散するため、その粉体が、基材の端面の一部だけでなく全体に広がってセル内に導入されるようになるので、製膜分布の均一性が向上する。加えて、基材を通過する気流の流速と、粉体搬送部を流れる気流の流速と、を独立に制御可能となる。捕集層の微構造や製膜量分布は、セル内に導入する混合気体に含まれる粉体の密度や気体の流速によって変化することが、研究によって明らかとなってきた。これらは、吸引部からの吸引流量や、粉体搬送部から供給する混合気体中の粉体の密度によって、制御することが出来る。一方、粉体搬送部にて粉体を気中に分散させるために必要な流速がある。従って、これらを両立させるには、2つの流速を独立に制御可能なことが、極めて有効である。
【0026】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気体中に分散させるに際し、加圧気体を用いているので、流速を大きくし速度勾配を形成することが出来、粉体に十分な衝撃力やせん断力を与えることが出来る。そのため、粉体が均一に気体中に分散する。粒子径が概ね20μm以下の微粉体は、静置した状態では凝集して、それより大きな粒子を形成している場合があり、それによって、粉体が均一に気体中に分散し難くなるおそれがあるが、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、加圧気体によって解砕されるので、このような問題は生じない。
【0027】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、既述の通り、乾式の製膜装置ということが出来、堆積させる粉体は、乾燥した状態で、セル内面(隔壁の表面)に供給されるので、水やバインダ等の添加剤を使用する場合に必要となる乾燥工程や脱脂工程は必要なく、基材(隔壁)の上に、欠陥のない良好な捕集層を形成することが出来る。
【0028】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部が加圧気体を用いた粉体分散手段を備え、それがエジェクタであるので、時間あたりに大量の粉体を気体に分散させ、噴射することが出来る。例えば、0.1m3/分の気体に対し50g/分の粉体を分散し噴射することが可能である。又、所定の量の粉体を、粗粒子を解砕しながら搬送することが出来、それをセルへ送り込むことが可能である。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置によれば、短時間で、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、そして、短時間で、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。粉体搬送部が複数のエジェクタを備えている場合にも、基材を通過する気体の流量を制御し易いので、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが出来る。更に、エジェクタが発生する負圧で吸引する気流を形成し、粉体を吸引するように用いることで、エジェクタへの粉の供給も気流に乗せて行うことが出来る。こうすることで、エジェクタに加圧気体を供給していない間(負圧の発生しない間、従って吸引する気流の形成されていない間)は、管路に粉が触れないようにすることが出来る。これにより、粉が管路に堆積して粗大粒子の発生源となったり、ブリッジによる供給不良が発生することを防止することが可能である。
【0029】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部に基材を固定したときに、その基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dとが、r<dの関係を満たすので、基材の径方向に均一に、粉体がセル内面に堆積する。噴射された粉体は、無駄なく、基材のセルの全面に、均一に入り込む。加えて、装置のサイズも大きくならない。この関係を満たす場合に比して、端面と粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)とが近ければ(距離dが小さければ)、エジェクタから噴射された粉体が基材のセルの一部にしか入らず、遠ければ(距離dが大きければ)、基材のセルに到達せず別の部材に付着したり落下する。何れにしても、無駄が多くなる。基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)までの距離dとは、3r<dの関係を満たすことが、より好ましい。
【0030】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、導入部が、エアロゾルを基材に案内するガイド部材を有するので、エアロゾルの広がり、拡散が抑えられ、気流は整流され、収率が向上する。又、例えば、周辺環境からの気流流入等の外乱や、基材の外周形状の状態等の影響を受け難くなる。そして、基材の最外周のセルも含め、基材の径方向の全面にわたって均一に、粉体がセル内面に堆積する。
【0031】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ガイド部材は、ワーク固定部とは反対側が開放されているので、その開放部分は、基材を通過する(エジェクタから噴射されるエアロゾル以外の)気体を吸引するための開口として機能する。又、その開放部分は、基材に付着しなかった粉体を排出する開口としても機能する。
【0032】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部に基材を固定したときに、基材の粉体搬送部の側における端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dと、ガイド部材の長さLとが、0.5d<Lの関係を満たすので、十分に、上記効果を発現する。即ち、エアロゾルの広がり、拡散が十分に抑えられ、気流の整流効果は大きい。加えて、装置のサイズも抑制される。この関係を満たす場合に比して、基材の粉体搬送部の側における端面と粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)とが近ければ(距離dが小さければ)、上記効果は十分に発現せず、遠ければ(距離dが大きければ)、装置が大きくなってしまう。
【0033】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備えるので、定量(一定質量)の粉体をエジェクタから吸引させて、容易にエアロゾルの密度を制御することが可能であり、エアロゾルの密度を一定にすることが出来る。そして、そのような密度一定のエアロゾルをセルへ送り込めば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、更には、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能となる。
【0034】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部が、基材の側面を覆うカバーを備えるので、基材が、その側面(外周)に気孔を有するハニカム構造体である場合でも、最外周のセルも含めて、基材の径方向の全面にわたって均一に、粉体をセル内面に堆積させることが出来る。基材の側面に気孔が有ると、その外周の気孔から最外のセルに気体が流入する結果、正常に端面の開口からセルに流入するエアロゾルが減少してしまい、セル内面に付着する粉体が減少するおそれがあるが、基材の側面を覆うカバーがあれば、そのようなおそれは排除される。側面からの気体の流入は防止され、所望の気流を実現することが出来る。
【0035】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、吸引部が、流量計を備えるので、基材を通過する気体の流速を制御することが出来、その結果、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、更には、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能となる。
【0036】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、吸引部が、整流板を備えるので、基材に多数のセルがある場合にも、そこを通過する流量を、整流版が無い場合に比して、より均一化することが出来る。
【0037】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、エジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行であるので、エジェクタにおける気流の方向変化が殆どなく、そうしない場合より大量の粉体を供給することが出来る。又、エジェクタの磨耗が少ない。更には、ブリッジ(アーチ)やラットホールが抑制され、粉体不供給という問題が生じ難くなる。
【0038】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を旋回させてその速度を調整する速度調整手段が、上記導入部に備わるので、粉体の解砕効果を維持しつつ、粉体を搬送する気流の速度を、任意に調整する(低下させる)ことが出来る。そして、粉体を搬送する気流の速度の調整によって、粉体が分級され、粗大粒子のワークへの導入を抑制する。又、粉体を搬送する気流の速度を低下させることによって、基材(ワーク)を通過する気流の速度が遅くなり、粉体を基材の表面付近に付着させることが可能となる。即ち、捕集層用の基材の細孔内部に粉体が入ることなく、基材表面において、ブリッジ状に、粉体を付着させることが出来る。又、気孔率や平均細孔径の異なる基材(ワーク)へ製膜する場合に、気流の速度調整によって、この効果が最適に得られるようになる。
【0039】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置において、装置使用時にワーク固定部に固定されるハニカムフィルタの基材は、好ましくは、柱状を呈し、使用時において、ワーク固定部に固定される基材の軸方向が、略鉛直であり、気流が下から上へ流れる(即ち、使用時に、基材が縦置きになり、その状態で、気流が基材の下から上に向けて通過する)ので、先ず、導入部が分布均一性のある重力分級機能を備えるようになり、製膜分布の均一性が向上する。横置きにすると(即ち、使用時においてワーク固定部に固定される基材の軸方向が略水平であると)、粉体が重力の影響を受け、セル内で下側になった隔壁表面に、上側になった隔壁表面より、多くの粉体が付着してしまう。このことは、気流の流速が遅い場合に顕著である。次に、使用時に基材を縦置きにすることによって、製膜不良を引き起こす粗大粒子が、セル内へ流入することを抑制出来る。仮に、粗大粒子が、一旦、セル内に入っても、重力の効果によって、気流に乗らない粗大粒子は失速して落下するため、隔壁表面に付着せず、製品不良を防止出来る場合がある。横置きの場合には、粗大粒子のセル内へ流入抑制を図るには、導入部の寸法を大きくする(ワーク固定部と粉体搬送部の距離を長くする)必要があるとともに、粗大粒子が、一旦、セル内に入ってしまえば、製膜不良は避けられない。又、適切な大きさであってもセル内面に付着しなかった粒子は、導入部に戻り、再び、気流と混合され、再度、セル内へ導入される。よって、収率が向上する。更には、縦置きによれば、未付着粉体の回収が容易である。例えば、製品の直下に、受け台を設けておけば、容易に粉体を回収することが出来る。ガイド部材を設ける場合は、ガイド部材の開口を未付着粉の排出口とすることによって、ガイド部材がない場合より、容易に粉体を回収可能である。横置きでは、ガイド部材があっても、ガイド部材に粉体が堆積してしまい、回収に手間がかかるし、気流によって粉体が、再度、飛散し、予期せずに、製品に飛び込んでしまい、製品不良が発生するおそれがある。
【0040】
上記のような縦置きの効果によって、品質を確保可能な制御範囲が広く取れるため、装置が複雑になることなく、高品質で安定した製膜が可能となる。又、縦置きの効果は、複数の種類の粉体を供給する場合に、より顕著となる。
【0041】
尚、使用時に、柱状の基材を縦置きにする場合、基材の軸方向と、導入部で形成する気流の方向とは、概ね同方向とするのが好ましい。これら方向が異なっていると、粉体が一方向に偏って堆積してしまうおそれがある。
【0042】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部又は導入部に、分級手段を備えるので、粗大粒子を除外することが出来、製膜不良の発生が抑制される。尚、本明細書において、粗大粒子とは、粉体の粒子のうち、解砕されずに大きな粒子のままのものや、管内に付着、凝集したものが剥離して搬送されたもの等を指す。
【0043】
本発明に係るハニカムフィルタ製造方法は、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用い、吸引部が吸引する気体aの流量A、粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、導入部において気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、ハニカムフィルタの基材の内表面に、粉体を堆積させる過程を有するので、基材を通過する気体へ、エジェクタで気体と混合された粉体を、良好に分散させることが可能であり、基材のセルへ、粉体を均一に送り込むことが出来る。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造方法によれば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。気体aの流量Aに対する気体bの流量Bの比(=B/A)は、1より小さくする。この比は、好ましくは、1/3以下、より好ましくは1/10以下である。粉体搬送部から噴射される気流は、大量の粉の搬送に伴い脈動を生じる場合があるが、この比を1/3以下にすると、ワークを通過する気流の流速分布に対し、その影響を小さくすることが出来る。尚、本明細書において、流量A〜流量Cは時間あたりの流量であり、即ち流速のことである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の一の実施形態を示す模式図である。
【図1B】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図1C】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図1D】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図5A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図5B】図5Aに示されるハニカムフィルタ製造装置において、ワーク固定部へワークを固定する様子を表した模式図である。
【図6A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図6B】図6Aに示されるハニカムフィルタ製造装置において、ワーク固定部へワークを固定する様子を表した模式図である。
【図7A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図7B】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図7C】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図7D】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図8】図7C及び図7Dに示されるハニカムフィルタ製造装置において使用される吐出ノズルを示す斜視図である。
【図9A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造されるハニカムフィルタの利点を説明する図であり、(表面)捕集層が設けられていないハニカムフィルタの1/4を切り取って内部を表した斜視図である。
【図9B】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造されるハニカムフィルタの利点を説明する図であり、(表面)捕集層が設けられていないハニカムフィルタの一部分(隔壁とセル)を拡大して表した断面図である。
【図10】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図11】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の効果を説明するための図であり、(表面)捕集層が設けられていないハニカムフィルタの一部分(隔壁とセル)を拡大して表した断面図である。
【図12】基材(ワーク)の端面を表す図であり、粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0046】
先ず、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造される、捕集層が形成された(製膜された)ハニカムフィルタの利点について、図9A及び図9Bを参照しながら説明する。ハニカムフィルタを、PM除去用のフィルタとして使用した場合、捕集層の設けられていないハニカムフィルタ201であっても、PM205を含む排出ガス206は、一のセル203a内へ導入され、ハニカムフィルタ201の隔壁204を通過して、隣接するセル203bの他方の開口端から流出する。その際にPM205は、隔壁204に捕集され、排出ガス206は浄化されるのである(図9A、図9Bを参照)。しかし、このとき、隔壁204の表面に捕集層がないと、PM205が隔壁204(基材)の細孔内へ侵入し、細孔を閉塞させるので、初期に圧損が急上昇してしまう。捕集層があれば、PM205が隔壁204(基材)の細孔内へ侵入することを防止出来るので、細孔がPM205で閉塞することはなく、従って、初期に圧損が上昇することもなく、圧損の低減が図れる。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、このような優れた(捕集層の付いた)ハニカムフィルタを製造する手段である。
【0047】
次に、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置について、その構成と材料を説明する。図1Aに示されるハニカムフィルタ製造装置1は、ワーク固定部10、粉体搬送部20、吸引部30、及び導入部40を有する。図1Aは模式図であり、この図1Aでは、ワーク固定部10の周辺は断面図として描かれ、ワーク11である基材(ハニカムフィルタ前駆体)が表されている。ハニカムフィルタ前駆体とは、製膜することによって捕集層が設けられたハニカムフィルタとなるハニカムフィルタ用の基材である。図1Aは、製膜時の状態を表しており、図1Aに示される矢印は、粉体、エアロゾル、気体(空気)の流れを示している。これらのことは、後述の図1B〜図4、図5A、図6Aにおいても同様である。
【0048】
ハニカムフィルタ製造装置1のワーク固定部10は、ワーク11(基材)を固定する部分であり、ワーク11であるハニカムフィルタ前駆体は、セラミック製の目封止ハニカム構造体である。即ち、ワーク11は、その外形が、周面と2つの端面とからなる略円柱状を呈しており、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有し、そのセルは、多数の細孔を有するセラミックの多孔質体からなる隔壁によって区画されていて、ハニカム構造を呈している。セルは、ガス(流体)の流路となるものである。そして、ワーク11は、その隣接する複数のセルが、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止されていて、一の端面と他の端面を見ると、ともに千鳥模様ないし市松模様のようになっている。
【0049】
ハニカムフィルタ製造装置1において、ワーク固定部10は、ワークチャック13(13b)を有する。図示しない支柱、枠体等に支持されたワークチャック13(13b)が、ワーク11を把持することによって、ワーク11は固定される。ワークチャック13(13b)は、ウレタンゴムやシリコンゴム等の柔軟な材料からなるパッキン14(シール材)を介して、ワーク11の周面の端を締め付け固定するとともに、ワーク11の一方の端面と周面とを遮断する。
【0050】
粉体搬送部20は、ワーク固定部10の一の側に配設され、ワーク11に捕集層を形成するための粉体を用いて、これを気体中に分散させてエアロゾルを作製し、そのエアロゾルをワーク11へ導く部分である。ここでエアロゾルを作製するのであるから、ワーク固定部10からみて、エアロゾルの入口側となる。この粉体搬送部20は、主に、エジェクタ21、定量の粉体を供給するための粉体供給装置24で構成される。ワーク11(基材)の粉体搬送部20の側における端面から、エジェクタ21(粉体搬送部20)の噴射端までは、距離dだけ離れている。
【0051】
エジェクタ21は、気流とともに粉体を噴射させる装置である。好ましくは、高速の気流によって生じた負圧を利用して、粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有するものである。即ち、先ず、このエジェクタ21で、エアロゾルが作製される。高速の気流は、図1Aには具体的に示されない加圧気体供給機23(コンプレッサ等)から、流量計26及び調節弁27が設けられた配管28を通して、所定の流量で、エジェクタ21へ供給される。粉体は、重量計25(質量計)が付属した粉体供給装置24によって、チューブ29を介し、所定の送り量で、エジェクタ21へ供給される。図1Aに示されるように、エジェクタ21は、粉体を吸引していることが好ましい。配管やエジェクタ内でのブリッジ(アーチ)やラットホールが抑制され、粉体不供給という問題が生じ難くなるからである。捕集層を形成する(セラミック)粉体は、微粒子であり、凝集し易い性質があり、このような粉体を、セル内面に確実に付着させるとともに、その反対に気流で搬送される間は配管等に付着させないことが必要であるが、エジェクタ21は、これらに対し効果的なものである。又、粉体の吸引方向とエアロゾルの排出方向とが略平行であることが、更に好ましい。
【0052】
エジェクタ21は、粉体との接触のよる摩擦で磨耗するのを低減するために、粉体と接する面に、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)、炭窒化珪素(SiCN)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(SiN)や超硬材料、又はこれらの合金や組合せからなる材料が用いられていることも好ましく、コーティング、メッキ、ライニング等によって形成してもよい。
【0053】
エジェクタ21として市販されているものを用い、その本体に配管を接続して、噴射端を延ばしてもよい。又、噴射時の流速を低減させるため、噴射端自体あるいは接続した配管の径を、大きくしてもよい。粉体から粗大粒子を除去するために、エジェクタ21本体又は接続する配管との間に、分離機能を付与することも好ましい。その分離機能は、具体的には、接続する配管を部分的に太くしたり、渦流を形成したり、配管を縦にして下から上への気流を形成したり、スクリーンメッシュを挿入することによって、実現される。
【0054】
粉体供給装置24は、エジェクタ21における粉体の吸引側に粉体を落下させて、エジェクタ21へ粉体を供給する装置であり、定量の粉体を供給することを可能とする自動供給装置である。粉体供給装置24には、重量計25(質量計)が付属しているのが望ましく、重量計の代わりに容積計を用いることも可能である。粉体供給装置24の供給機構は、例えばスクリュー式であるが、他にロータリー式、振動式、テーブル式、ベルト式等の機構のものを採用することが出来る。粉体供給装置24は、タイムスケジュールに合わせた自動供給や、供給重量(質量)の変更等が可能なものであり、更に、供給速度(供給量/供給時間)の制御も容易に行うことが出来るものである。
【0055】
吸引部30は、ワーク固定部10の他の側に配設され、エジェクタ21から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されたエアロゾルをワーク11(ハニカムフィルタ前駆体)へ吸引する部分である。エアロゾルをワーク11へ吸引するのであるから、ワーク固定部10からみて、ワーク11の出口側となる。
【0056】
この吸引部30は、主に、吸引機33とダクト34で構成される。ダクト34は、ワークチャック13bと接続されている。吸引機33は(例えば)ファンであるが、他にブロワ、集塵機を用いることが出来る。吸引部30として、吸引流量を制御可能であることが好ましい。例えば、吸引機33にかかる電動機の回転数を可変とし、あるいは、バルブ等でダクト34(流路)の径を調整して、吸引流量を制御することが可能である。好ましい吸引流量は、ワーク11が、例えば自動車に搭載されるDPFとして使用されるハニカムフィルタ前駆体である場合には、0.1〜400m3/min程度である。
【0057】
吸引部30のダクト34(流路)には、風速計32が設けられ、吸引流量を監視するとともに、制御のためのデータを提供する。風速計32は熱線式のものであるが、他に機械式、ピトー管式等のものを採用することが出来る。ワーク11を通過してしまった粉体から保護するために、フィルタを前置してもよい。又、エアロゾルが導入されている間は、保護のためのカバーを設けたり、ダクト34内から退避させる機構を設けてもよい。更に風速計32に付着した粉体を取り除くためのブローノズルを配置してもよい。
【0058】
ハニカムフィルタ製造装置1では、粉体搬送部20が下側に位置し、吸引部30が上側に位置する。即ち、エアロゾルがワーク11へ導入される側が下であり、排出される側が上であり、気流の方向は下から上である。そのため、付着しなかった粉体は下へ落下し、セル内面に付着しなかった粉体の回収が容易である。
【0059】
ハニカムフィルタ製造装置1においては、導入部40は、粉体搬送部20とワーク固定部10の間に、開放された空間である。この導入部40において、粉体搬送部20から気流に乗って搬送された粉体は、他の気体と更に混合され、ワーク固定部10に固定されたワーク11へ導入される。
【0060】
次に、図1Bに示されるハニカムフィルタ製造装置110について説明する。これは、既述のハニカムフィルタ製造装置1と同様に、ワーク固定部10、粉体搬送部20、吸引部30、及び導入部40を有するものであるが、ワーク固定部10と導入部40の態様が異なる。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置1と同様な構成である(説明を省略する)。
【0061】
ハニカムフィルタ製造装置110において、ワーク固定部10は、ワークチャック13a,13b、及びカバー12を有する。ハニカムフィルタ製造装置1に準じて、図示しない支柱、枠体等に支持されたワークチャック13a,13bが、ワーク11を把持することによって、ワーク11は固定される。カバー12は、ワーク11の周面(側面)を覆い、ワーク11の外周側から気体が侵入することを防止する。カバー12の形状は、略円柱状のワーク11に合わせて、略円筒状である。カバー12の材料としては特に限定はなく、好適なものは、金属、樹脂等である。
【0062】
ワークチャック13a,13bは、ウレタンゴムやシリコンゴム等の柔軟な材料からなるパッキン14(シール材)を介して、ワーク11の周面の端を締め付け固定するとともに、ワーク11の両端面と周面とを遮断する。これによって、ワーク11の外周まで(全ての端面で)、気流が安定する。パッキン14を用いる代わりに、空気圧でバルーンを膨らます方法で遮断してもよい。又、捕集層を形成すべきセルがワーク11の端面から見て中央部分のみである場合には、ドーナツ状のステージ部材を用いることによって、ワーク11の両端面で把持し、併せてワーク11の両端面と周面とを遮断することも可能である。尚、吸引によって気流を形成していることから、シールが完全でない場合であっても、粉体が外部に漏れて環境を害することなく、気流に対する影響、捕集層の形成に対する影響も、小さい。
【0063】
導入部40に設けられたガイド部材42は、略円柱状のワーク11に合わせて、略円筒状であり、この長さLのガイド部材42は、ワーク固定部10に取り付けられ、ワークチャック13a,13bを用いる場合には、それに接続される。そして、ガイド部材42は、エジェクタ21から噴射されたエアロゾルを、無駄なくワーク11へ導く役割を果たす。一方、ガイド部材42のワーク固定部10とは反対側は、開放されており、ここから、エジェクタ21を通過する気体とは別に、気体が吸引される。即ち、エジェクタ21から噴射されるエアロゾルに、新たな気体(空気)が混合されて新たなエアロゾルになり、この新たなエアロゾルがワーク11のセル内へ導入される。
【0064】
ガイド部材42の材料として好適なものは、カバー12と同様に、金属、樹脂である。具体的には、アルミニウム、ステンレス、真鍮、鉄、アクリル、塩化ビニル、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ベークライト(フェノール樹脂)等を挙げることが出来る。ガイド部材42の材料として導電性を有するものを用い、ガイド部材42をアースしておくことが、特に好ましい。又、エジェクタと同様に、粉体との接触のよる摩擦で磨耗するを低減するために、粉体と接する面に、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、TiN、TiCN、SiCN、又はこれらの合金や組合せからなる材料を用いて、コーティング、メッキ、ライニングを施すことも好ましく、更に、粉体と接する部分の材料として、SiCや所謂超硬材料を用いることも好ましい。
【0065】
次に、図1Cに示されるハニカムフィルタ製造装置120について説明する。これは、既述のハニカムフィルタ製造装置110において、エジェクタ21か1台であるのに対し、粉体搬送部20に粉体供給装置24を2台(あるいは3台以上)設けた態様である。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置110と同様な構成である(説明を省略する)。こうすると、予め混合されていない2種の(あるいは3種以上の)粉体を供給して、エジェクタ21で混合し、ワーク11へ導入することが可能である。
【0066】
次に、図1Dに示されるハニカムフィルタ製造装置130について説明する。これは、既述のハニカムフィルタ製造装置110において、エジェクタ21及び粉体供給装置24の代わりに、エアロゾル化室125を設けた態様である。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置110と同様な構成である(説明を省略する)。エアロゾル化室125は、主に、撹拌用ビーズ126と粉体を収めた容器124で構成され、そこでは、図1Dには具体的に示されない加圧気体供給機123(コンプレッサ等)から、配管を通して、加圧気体が吹き込まれ撹拌されることによって、粉体が気体中に浮遊し分散して、エアロゾルが形成される。そして、そのエアロゾルは、チューブ29を介し、吸引部30の吸引力によって、ワーク11へ導入される。
【0067】
次に、図2〜図4、及び図10に示されるハニカムフィルタ製造装置について、その構成と材料を、順次、説明する。これらのハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部、粉体搬送部、吸引部、及び導入部を有し、ハニカムフィルタ製造装置1に準ずる装置であるので、既述のハニカムフィルタ製造装置1に準ずる構成要素については、説明を省略する。
【0068】
図2に示されるハニカムフィルタ製造装置300は、ワーク固定部310、粉体搬送部320、吸引部330、及び導入部340を有する。ハニカムフィルタ製造装置300のワーク固定部310は、ワーク311(基材)を固定する部分であり、ワークチャック313a,313bによって、ワーク311を固定する。ワーク311であるハニカムフィルタ前駆体は、(例えば)円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントである。
【0069】
粉体搬送部320は、主に、エジェクタ321と、粉体を収める容器324で構成される。エジェクタ321は、高速の気流によって生じた負圧を利用して、粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有する。即ち、先ず、このエジェクタ321で、エアロゾルが作製される。高速の気流は、図2には具体的に示されない加圧気体供給機323から、エジェクタ321へ供給される。粉体は、容器324から、チューブ329を介し、エジェクタ321へ供給される。
【0070】
容器324には、所望の質量の粉体が計量されて収められ、その粉体は全てエジェクタ321で吸引される。チューブ329を動かして走査することによって、又は、容器324を動かして走査することによって、粉体を吸引する構成としてもよい。この走査はマニュアルでもよいし、自動ステージを設けてもよい。走査速度を制御して、粉体の供給速度を可変としてもよい。
【0071】
導入部340におけるガイド部材342は、径が大きい円柱状のワーク311に合わせて、略円筒状である。ガイド部材342は、ワーク固定部310に取り付けられ、ワークチャック313a,313bを用いる場合には、それに接続される。絞られてはいても、ガイド部材342のワーク固定部310とは反対側は、開放されており、ここから、エジェクタ321を通過する気体とは別に、気体が吸引される。即ち、エジェクタ321から噴射されるエアロゾルに、新たな気体(空気)が混合されて新たなエアロゾルになり、この新たなエアロゾルがワーク311のセル内へ導入される。
【0072】
吸引部330は、主に、(図2では省略されているが)吸引機333、ダクト334、及び整流板331で構成される。円柱状のワーク311に合わせて略円筒状のダクト334は、ワーク固定部310に取り付けられ、ワークチャック313bを用いる場合には、それに接続される。整流板331は、ダクト334の中で、気流に対し垂直に、設けられる。この整流板331は、ワーク311の出口側の端面において全てのセルを通過する流量を、これを設けない場合より均一化する役割を果たす。整流板331は、パンチングメタルからなるものであるが、他にスクリーンメッシュ等を用いてもよい。
【0073】
図3に示されるハニカムフィルタ製造装置500は、ワーク固定部510、粉体搬送部520、吸引部530、及び導入部540を有する。ハニカムフィルタ製造装置500のワーク固定部510は、ワーク511(基材)を固定する部分であり、ワークチャック513a,513bによって、ワーク511を固定する。ワーク511であるハニカムフィルタ前駆体は、既述のワーク311と同様に、(例えば)円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントであり、軸方向(セルの長さ方向)に比して、径が大きい。
【0074】
粉体搬送部520は、主に、2つのエジェクタ521a,521bと、2つの粉体供給装置524a,524bで構成される。エジェクタ521a,521bは、高速の気流によって生じた負圧を利用して、それぞれの粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有する。即ち、エジェクタ521a,521bで、2つのエアロゾルが作製される。高速の気流は、図5には具体的に示されない加圧気体供給機523a,523bから、それぞれ、エジェクタ521a,5212bへ供給される。それぞれの粉体は、粉体供給装置524a,524bによって、それぞれ、ラッパ口(投入口)の付いたチューブ529a,529bを介し、エジェクタ521a,521bへ供給される。このように、2つのエジェクタ521a,521bと、2つの粉体供給装置524a,524bを用いれば、異なるセラミック材料からなる粉体を供給する際に、偏析や粒度分布時間変化等の不具合を防止することが出来る。又、2つの粉体供給装置524a,524bからの供給速度を互いに時間的に変化させ、割合を制御することも可能である。又、1つのエジェクタと粉体供給装置を用いる場合より、短時間に、多くの粉体を供給することが可能である。尚、既述のように、一つの投入口へ、2つの粉体供給装置から、粉体を供給するようにしてもよい。
【0075】
導入部540におけるガイド部材542は、円柱状のワーク511に合わせて、略円筒状である。ガイド部材542は、ワーク固定部510に取り付けられる。ガイド部材542のワーク固定部510とは反対側は、開放されており、ここから、エジェクタ521a,521bを通過する気体とは別に、気体が吸引される。即ち、エジェクタ521a,521bのそれぞれから噴射されるエアロゾルが混合され、更に新たな気体(空気)が混合されて、新たなエアロゾル502になり、この新たなエアロゾル502がワーク511のセル内へ導入される。尚、図3及び図4では、図中にエアロゾルを表しているが、他の図では省略している。
【0076】
吸引部530は、主に、吸引機533とダクト534で構成される。ダクト534は、ワーク固定部510(ワークチャック513b)に取り付けられる。このダクト534は、ワーク固定部510に取り付けられる部分では、円柱状のワーク511に合わせた大きさの略円筒状を呈する。
【0077】
図4に示されるハニカムフィルタ製造装置600は、ワーク固定部610、粉体搬送部620、吸引部630、及び導入部640を有する。ハニカムフィルタ製造装置600のワーク固定部610は、ワーク611(基材)を固定する部分であり、ワークチャック613a,613bによって、ワーク611を固定する。ワーク611であるハニカムフィルタ前駆体は、(例えば)角柱状でSiC製の目封止ハニカムセグメントである。
【0078】
粉体搬送部620は、主に、エジェクタ621と、粉体供給装置624で構成される。エジェクタ621は、高速の気流によって生じた負圧を利用して粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有する。即ち、エジェクタ621でエアロゾルが作製される。高速の気流は、図4には具体的に示されない加圧気体供給機623から、エジェクタ621へ供給される。粉体は、粉体供給装置624によって、ラッパ口の付いたチューブ629を介し、エジェクタ621へ供給される。
【0079】
導入部640におけるガイド部材642は、角柱状のワーク611に合わせて、略角筒状である。ガイド部材642は、ワーク固定部610に取り付けられる。ガイド部材642のワーク固定部610とは反対側は、粉体回収容器643が取り付けられ、その横面に空気取入口641が設けられている。エジェクタ621を通過する気体とは別の気体は、空気取込口641から吸引される。即ち、エジェクタ621から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されて、新たなエアロゾル602になり、この新たなエアロゾル602がワーク611のセル内へ導入される。そして、ワーク611に付着しなかった粉体は、粉体回収容器643で回収される。空気取込口641には、例えばバルブ等の、気体の流量を制御する機構や流量の測定器を備えていてもよい。
【0080】
吸引部630は、主に、(図示しない)吸引機633と、ダクト634で、構成される。ダクト634は、ワーク固定部610に(ワークチャック613bで)取り付けられる。
【0081】
図10に示されるハニカムフィルタ製造装置400は、ワーク固定部410、粉体搬送部420、吸引部430、及び導入部440を有する。ハニカムフィルタ製造装置400のワーク固定部410は、ワーク411(基材)を固定する部分であり、ワークチャック413a,413bによって、ワーク411を固定する。ワーク411であるハニカムフィルタ前駆体は、既述のワーク311,511と同様に、(例えば)円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントである。
【0082】
粉体搬送部420は、主に、エジェクタ421と、粉体供給装置424で構成される。エジェクタ421は、高速の気流によって生じた負圧を利用して粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有する。即ち、エジェクタ421でエアロゾルが作製される。高速の気流は、図10には具体的に示されない加圧気体供給機423から、エジェクタ421へ供給される。粉体は、粉体供給装置424によって、ラッパ口の付いたチューブ429を介し、エジェクタ421へ供給される。
【0083】
導入部440におけるガイド部材442は、円柱状のワーク411に合わせて、略円筒状である。ガイド部材442は、(ワークチャック413bによって)ワーク固定部410に取り付けられる。ガイド部材442の内側には、速度調整筒443(速度調整手段)が設けられている。この速度調整筒443は、一方の開口(図10における下側の開口)がテーパー状に狭められた円筒部材である。そして、速度調整筒443の軸方向に対して、概ね垂直な方向から(図10における横方向から)粉体を搬送する気流が入るように、速度調整筒443とエジェクタ421とが、接続される。こうすると、エジェクタ621から噴射されるエアロゾル(粉体を搬送する気流)は、速度調整筒443内で旋回し、その速度が調整される(低下する)。この速度調整によって、粉体は分級され、粗大粒子は落下して分離される。一方、エジェクタ421を通過する気体とは別の気体は、ガイド部材442の開口(図10における下側)から吸引され、エジェクタ421から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されて、新たなエアロゾルになり、この新たなエアロゾルがワーク411のセル内へ導入される。
【0084】
上記のように、エアロゾル(粉体を搬送する気流)の速度が低下すると、ワーク411を通過する気流の速度も遅くなる。そして、この気流の速度の調整(低下の程度)によって、図11に示されるように、ワーク411(基材)の隔壁1204に形成された細孔1207の内部に粉体1208が入ることなく、(図11において)細孔1207の上方で隔壁1204の表面と表面とを架け渡すように(即ちブリッジ状に)、粉体1208が付着するようになる。
【0085】
吸引部430は、主に、(図示しない)吸引機433とダクト434で構成される。ダクト434は、ワーク固定部410に(ワークチャック413bで)取り付けられる。
【0086】
以上説明した図1A〜図4、及び図10に示されるハニカムフィルタ製造装置において、使用時にワークをワーク固定部に固定する手段としては、手作業による取付、ロボットハンドによる自動移載、移送装置をワーク固定部に組み込んだ態様による連続自動移載等を挙げることが出来る。
【0087】
例えば、既述のハニカムフィルタ製造装置110においては、ワークチャック13a,13bを緩めて、ワーク11を組み込んだ後、ワークチャック13a,13bを締めて、固定することで、手作業による取付を行うことが出来る。又、ハニカムフィルタ製造装置110においては、ワークチャック13a,13bは、支柱、枠体等に支持されているものとしたが、これらワーク固定部10を構成するワークチャック13a,13bは、吸引部30及び導入部40に取付られていてもよい。ワークチャック13aを取り付けた導入部40と、ワークチャック13bを取り付けた吸引部30とが、互いに離隔して空間を形成し、そこへワーク11を置いた後に、ワークチャック13aを取り付けた導入部40と、ワークチャック13bを取り付けた吸引部30とを、互いに接近させれば、ワークチャック13a,13bによってワーク11を固定することが出来る。
【0088】
以下、図5A〜図6Bを参照して、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置にかかり、ロボットハンドによる自動移載、移送装置をワーク固定部に組み込んだ態様による連続自動移載について、具体的に説明する。尚、図5A〜図6Bに示されるハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部、粉体搬送部、吸引部、及び導入部を有し、既述のハニカムフィルタ製造装置110に準ずる装置である。
【0089】
図5A、図5Bに示されるハニカムフィルタ製造装置700は、ワーク固定部710、粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740を有する。図5Bは、ロボットハンドによる自動移載を表した図である。ハニカムフィルタ製造装置700の粉体搬送部720は、主に、エジェクタ721、粉体供給装置724で構成される。高速の気流が、加圧気体供給機723(コンプレッサ等)から、調節弁727が設けられた配管728を通して、所定の流量で、エジェクタ721へ供給され、一方、粉体が、粉体供給装置724によって、チューブ729を介して、所定の送り量で、エジェクタ721へ供給され、そして、エジェクタ21から、気流とともに粉体が噴射される。吸引部730は、主に、吸引機733、ダクト734で構成され、エジェクタ721から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されたエアロゾルをワーク711(ハニカムフィルタ前駆体)へ吸引する。導入部740は、ガイド部材で構成される。
【0090】
ハニカムフィルタ製造装置700のワーク固定部710は、ワーク711(基材)を固定する部分であり、ワーク置台771に載置されて製膜の順番を待っているワーク711は、順次、ロボットハンド772によって把持され、ワーク固定部710に移載され、そこで、導入部740に取り付けられたワークチャック713aが下から上昇し、吸引部730に取り付けられたワークチャック713bが上から降下することによって、ワーク711は固定される(図5Bを参照)。ワーク711であるハニカムフィルタ前駆体は、円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントである。
【0091】
図6A、図6Bに示されるハニカムフィルタ製造装置800は、ワーク固定部810と、ハニカムフィルタ製造装置700と同様の粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740と、を有する。図6Bは、移送装置をワーク固定部に組み込んだ態様による連続自動移載を表した図である。
【0092】
ハニカムフィルタ製造装置800のワーク固定部810は、ワーク811(基材)を固定する部分であり、移送装置871の上で並んで載置されて製膜の順番を待っている複数のワーク811は、順次、移送装置871によって、ワーク固定部810に移動する。移送装置871の上には、パレット872が設けられ、そのパレット872にワークチャック813aが取り付けられている。そして、移送装置871の上のワーク811は、予めワークチャック813aで把持されている。ハニカムフィルタ製造装置800では、製膜対象となるワーク811がワーク固定部810に入ったところで、移送装置871が停止し、吸引部730に取り付けられたワークチャック813bが上から降りてきて、ワークチャック813a,813bによってワーク811が固定される。製膜が終ったら、ワークチャック813bは上へ上昇し(戻り)、移送装置871が動作して、製膜を行うべく、次のワーク811をワーク固定部810に移動させる(これらが繰り返される)。移送装置は、例えばコンベアであり、他にレールと台車の組み合せであってもよい。ワーク811であるハニカムフィルタ前駆体は、円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントである。
【0093】
本発明のハニカムフィルタ製造装置において、導入部が筒状のガイド部材を有する場合、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材の内周面に付着しないような対策を施すことが好ましい。捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材の内周面に付着すると、それが製膜中に意図しないタイミングで剥離してワークに吸引され、ワーク毎の製膜量(粉体の堆積量)にバラツキが生じるおそれが有る。又、本来、ワークのセル内面(隔壁の表面)に付着(堆積)させるべき粉体が、ガイド部材の内周面に付着してしまうことにより、原料収率が低下したり、ワーク毎の原料収率にバラツキが生じたりする。
【0094】
図7A〜図7Dに示すハニカムフィルタ製造装置は、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材の内周面に付着するのを防止する対策を施した実施形態である。以下、これらの実施形態について、順次、説明する。
【0095】
図7Aに示すハニカムフィルタ製造装置900は、図6A、6Bに示される既述のハニカムフィルタ製造装置800と同様に、ワーク固定部810、粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740を有するものであるが、導入部740のガイド部材842として、筒状の多孔質体を用いている。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置800と同様な構成である(説明を省略する)。
【0096】
このハニカムフィルタ製造装置900のように、導入部740が筒状のガイド部材を有する場合において、そのガイド部材842が多孔質体であると、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材の内周面に付着するのを効果的に防止することが可能となる。具体的には、このハニカムフィルタ製造装置900を用いて、捕集層を形成するための粉体を、ワーク811のセル内面(隔壁の表面)に堆積させる工程において、ガイド部材842の外部からガイド部材842の外周面に微量の気体(空気等)を吹き付ける。ガイド部材842は多孔質体であるので、その外周面に吹き付けられた気体の一部は、ガイド部材842の細孔を通ってガイド部材842の内周面から内部に吐出する。こうして、ガイド部材842の内周面から内部に吐出した気体によって、捕集層を形成するための粉体(エジェクタ721から噴射されたエアロゾル中の粉体)は、ガイド部材842の内周面に付着することを妨げられる。
【0097】
このように、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材842の内周面に付着することを防止することにより、ワーク毎の製膜量のバラツキを抑えるとともに、原料収率を向上させることが出来る。
【0098】
尚、ガイド部材842の内周面から内部に吐出した気体は、エジェクタ721から噴射されたエアロゾルと混合されて新たなエアロゾル702となり、ワーク811に吸引される。このハニカムフィルタ製造装置900において、筒状の多孔質体であるガイド部材842を構成する材料としては、炭化珪素等のセラミックスが好適なものとして挙げられる。
【0099】
図7Bに示すハニカムフィルタ製造装置910は、図6A、6Bに示される既述のハニカムフィルタ製造装置800と同様に、ワーク固定部810、粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740を有するものであるが、導入部740のガイド部材942が、筒状の外筒部942aと、その内側に所定の間隔を置いて配置された、多数の孔875を有する筒状の内筒部942bとからなるものであるとともに、導入部740が、ガイド部材942の外部から外筒部942aと内筒部942bとの間の空隙873に気体(空気等)を供給する気体供給手段を有する態様となっている。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置800と同様な構成である(説明を省略する)。
【0100】
このハニカムフィルタ製造装置910において、気体供給手段は、ガイド部材942の外部からガイド部材942を構成する外筒部942aと内筒部942bとの間の空隙873に通じる配管828と、その配管828を通じて、ガイド部材942の外部から空隙873に気体を送り込むためのポンプ874とを備える。
【0101】
このハニカムフィルタ製造装置910を用いて、捕集層を形成するための粉体を、ワーク811のセル内面(隔壁の表面)に堆積させる工程において、ポンプ874の駆動により、配管828を通じて、ガイド部材942の外部から空隙873に微量の気体を供給すると、供給された気体は、内筒部942bの多数の孔875から、ガイド部材942の内部に吐出する。こうして、ガイド部材942の内部に吐出した気体によって、捕集層を形成するための粉体(エジェクタ721から噴射されたエアロゾル中の粉体)は、ガイド部材942の内周面(内筒部942bの内周面)に付着することを妨げられる。
【0102】
このように、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材942の内周面に付着することを防止することにより、ワーク毎の製膜量のバラツキを抑えるとともに、原料収率を向上させることが出来る。
【0103】
尚、内筒部942bの孔875からガイド部材942の内部に吐出した気体は、エジェクタ721から噴射されたエアロゾルと混合されて新たなエアロゾル702となり、ワーク811に吸引される。このハニカムフィルタ製造装置910において、ガイド部材942の外筒部942aを構成する材料としては、金属、樹脂等が好適なものとして挙げられる。又、ガイド部材942の内筒部942bは、パンチングメタル、スクリーンメッシュ等の多数の孔を有する材料を用いて形成することが好ましい。
【0104】
図7Cに示すハニカムフィルタ製造装置920は、図6A、6Bに示される既述のハニカムフィルタ製造装置800と同様に、ワーク固定部810、粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740を有するものであるが、追加の構成要素として、更に、導入部740が、ガイド部材742の内周面近傍に気体(空気等)を吐出する吐出ノズル876を有する。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置800と同様な構成である(説明を省略する)。
【0105】
このハニカムフィルタ製造装置920において、吐出ノズル876は、図8に示すように複数のノズル孔878が環状に配置されたものである。図7Cに示すように、この吐出ノズル876は、ガイド部材742の下側(ワーク固定部810とは反対側)の開口端に、ノズル孔878の軸線がガイド部材742の内周面と平行になるように配設されている。
【0106】
このハニカムフィルタ製造装置920を用いて、捕集層を形成するための粉体を、ワーク811のセル内面(隔壁の表面)に堆積させる工程において、吐出ノズル876に外部から気体を供給すると、供給された気体は、環状に配置されたノズル孔878からガイド部材742の内周面近傍に吐出され、その際の吐出力と吸引部730の吸引力とにより、ガイド部材742の内周面に沿って内周面と平行に上昇する上昇流となる。この上昇流によって、捕集層を形成するための粉体(エジェクタ721から噴射されたエアロゾル中の粉体)は、ガイド部材742の内周面に付着することを妨げられる。
【0107】
このように、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材742の内周面に付着することを防止することにより、ワーク毎の製膜量のバラツキを抑えるとともに、原料収率を向上させることが出来る。尚、吐出ノズル876から吐出された気体は、エジェクタ721から噴射されたエアロゾルと混合されて新たなエアロゾル702となり、ワーク811に吸引される。
【0108】
図7Dに示すハニカムフィルタ製造装置930は、図7Cに示される既述のハニカムフィルタ製造装置920において、吐出ノズル876に加え、更に別個の吐出ノズル877を有する。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置920と同様な構成である(説明を省略する)。
【0109】
このハニカムフィルタ製造装置930において、吐出ノズル877は、ガイド部材742の下側(ワーク固定部810とは反対側)の開口端に、そのノズル孔の軸線がガイド部材742の内周面に対し傾斜するように配設されている。
【0110】
このハニカムフィルタ製造装置930を用いて、捕集層を形成するための粉体を、ワーク811のセル内面(隔壁の表面)に堆積させる工程において、吐出ノズル876と吐出ノズル877とに外部から気体を供給すると、吐出ノズル876からガイド部材742の内周面と平行に吐出された気体と、吐出ノズル877からガイド部材742の内周面に対し傾斜して吐出された気体とが合わさり、更にそれらの気体に、吸引部730の吸引力が作用して、ガイド部材742の内周面に沿って旋回しながら上昇する旋回流が生じる。この旋回流によって、捕集層を形成するための粉体(エジェクタ721から噴射されたエアロゾル中の粉体)は、ガイド部材742の内周面(内筒部942bの内周面)に付着することを妨げられる。
【0111】
このように、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材742の内周面に付着することを防止することにより、ワーク毎の製膜量のバラツキを抑えるとともに、原料収率を向上させることが出来る。尚、吐出ノズル876と吐出ノズル877とから吐出された気体は、エジェクタ721から噴射されたエアロゾルと混合されて新たなエアロゾル702となり、ワーク811に吸引される。
【0112】
以上、種々のハニカムフィルタ製造装置の構成と材料について説明したが、これらの本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、市販の機器や部品を利用し、市販の材料を加工して、適宜、組み合せることによって、作製することが出来る。
【0113】
次に、本発明に係るハニカムフィルタ製造方法について、説明する。本発明に係るハニカムフィルタ製造方法は、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用いて、外形が略柱状の多孔質体からなる基材を備え、その基材が、一の端面から他の端面まで延びるセルを有するとともに、その基材の内表面に、捕集層が形成されてなるハニカムフィルタを製造する方法である。
【0114】
先ず、セラミック原料を含有する成形原料を押出成形することによって、外形が略柱状であって流体の流路となる一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有する成形体を得る。より詳細には、好ましくは、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、又は窒化珪素のうちの何れかからなる骨材粒子、水、有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、ニーダ、真空土練機等を用いて混練することによって坏土を得て、その坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を備えた押出成形機を用いて、押出成形して、所望の形状に成形し、その後、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥することによって、成形体を得る。
【0115】
次いで、その成形体の隣接する複数のセルに対し、成形体の一の端面と他の端面を見ると、ともに千鳥模様ないし市松模様のようになるように、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止し、その後、焼成して、基材を得る。より詳細には、好ましくは上記骨材粒子と同じ材料からなる目封止用のスラリーを、容器に貯留しておき、成形体の一方の端面において、千鳥模様ないし市松模様のようになるように、概ね半数のセルをマスクし、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。成形体の他方の端面については、一方の端面において目封止されたセルについてマスクを施し(当然に千鳥模様ないし市松模様のようになる)、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。こうすると、一方の端面において目封止されていないセルは、他方の端面において目封止され、他方の端面において目封止されていないセルは、一方の端面において目封止され、両端面において千鳥模様ないし市松模様のようにセルが交互に塞がれた構造となる。そして、目封止された成形体を仮焼きして脱脂し、その後、焼成(本焼成)を行えば、基材が得られる。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の温度は200〜1000℃程度とすればよい。焼成温度は、骨材粒子の原料により異なるため、それに応じて適当な条件を選択すればよい。一般に、1400〜1500℃程度である。
【0116】
次に、得られた基材を、好ましくは分解能10mg以下の計量器を用いて計量し(製膜前計量工程)、その後、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用いて、基材のセル内へエアロゾルを導入し、基材のセル内面に粉体を堆積させる(製膜工程)。粉体(粒子)の平均粒径は、隔壁の平均細孔径によって異なるが、1〜15μmであることが好ましい。粉体の材料として、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、チタン酸アルミニウム、等が、好ましく用いられる。特に好ましい材料は、(基材の)上記骨材粒子と同じ材料である。
【0117】
粉体は、より詳細には、上記材料を分粒した後、ジェットミル(乾式)、ポットミル(湿式)によって、粗粒子を更に粉砕し、微粒、且つシャープな粒子径分布を持つ粉砕粒子として、得ることが出来る。尚、粉体として、基材における隔壁の平均細孔径より小さいものを用いても、粉体は、隔壁の表面(厳密には表層(隔壁の厚さ方向において隔壁の表面から20%までの範囲))に堆積する。これは、隔壁の細孔よりも粉体(粒子)の方が小さいが、粉体を含むエアロゾルが隔壁を通過する際に、粉体の拡散やさえぎりの粒子捕集メカニズムによって気流の流線に乗らず、隔壁の表面(表層)に堆積するためと考えられる。
【0118】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用いて、基材の隔壁に、粉体を付着させ堆積させるに際しては、基材(ワーク)をワーク固定部に固定し、粉体搬送部で、供給すべき粉体の量、及び加圧気体供給機からの気流(空気)の流量を、それぞれ所定の値に設定するとともに、吸引部における吸引流量を所定の値に設定する。この吸引部の吸引流量の設定に際しては、セル内面(隔壁の表面)に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積させるために、エジェクタを通過する流量より、基材(の隔壁)を通過する流量が、多くなるようにすることが肝要である。
【0119】
基材の隔壁に、粉体を付着させ堆積させたら、その後、エアノズル等を用いて、基材の、エアロゾルが導入された側(入口側)の端面に残存した粉体を除去する(清掃工程)。そして、粉体が堆積した(製膜された)基材を、好ましくは分解能10mg以下の計量器を用いて計量し(製膜後計量工程)、製膜の成否を確認する。
【0120】
最後に、焼成して、セル内面に堆積させた粉体を焼結させ安定させれば、ハニカムフィルタが得られる。このときの焼成温度は、基材を得た際の焼成温度よりも低いことが好ましい。粉体を焼結固定させるために必要な温度が加熱されればよい。粉体の材料によって異なるが、一般に、焼成温度は1250〜1350℃であることが好ましい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)骨材粒子として炭化珪素を用い、四角柱状の目封止ハニカム構造体を作製し、その目封止ハニカム構造体について、図1Bに示されるハニカムフィルタ製造装置110を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部10に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ21の噴射端までの距離は290mmであり、ガイド部材42の長さは300mm、内寸は50mm角である。又、四角柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさは36.2mm×36.2mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部30が吸引する気体の流量を0.4m3/minとし、粉体搬送部20から噴射される気体の流量を0.1m3/minとし、導入部40において新たに混合される気体の流量を0.3m3/minとした。又、粉体の供給量を1.2gとし、供給時間を3秒とし、供給速度を24g/minとした。そして、目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を求めたところ、89%であった。尚、付着量[g]は、製膜前計量工程での重量と製膜後計量工程での重量との差により求め、供給量[g]は、粉体供給装置からの供給量によって求めた。
【0123】
(実施例2)骨材粒子としてコージェライト(コージェライト化材料)を用い、円柱状の目封止ハニカム構造体を作製し、その目封止ハニカム構造体について、図2に示されるハニカムフィルタ製造装置300を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部310に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ321の噴射端までの距離は800mmであり、ガイド部材342の長さは750mm、内径は240mmである。円柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさはφ144mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部330が吸引する気体の流量を2.8m3/minとし、粉体搬送部320から噴射される気体の流量を0.1m3/minとし、導入部40において新たに混合される気体の流量を2.7m3/minとした。又、粉体の供給量を28gとし、供給時間を56秒とし、供給速度を30g/minとした。そして、目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を、実施例1と同様にして求めたところ、73%であった。尚、目封止ハニカム構造体への付着量は、20.4gであった。
【0124】
(実施例3)骨材粒子としてコージェライト(コージェライト化材料)を用い、円柱状の目封止ハニカム構造体を5個作製し、それらの目封止ハニカム構造体について、図7Bに示されるハニカムフィルタ製造装置910を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部810に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ721の噴射端までの距離は800mmであり、ガイド部材942の長さは750mm、外筒部942aの内径は240mm、内筒部942bの内径は210mmである。円柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさはφ144mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部730が吸引する気体の流量を2.8m3/minとし、粉体搬送部720から噴射される気体の流量を0.1m3/minとし、導入部740において新たに混合される気体の流量を2.7m3/minとした。又、粉体の供給量を30gとし、供給時間を60秒とし、供給速度を30g/minとした。又、ポンプ874により、配管828を通じて、ガイド部材942の外部から空隙873に空気を供給した。この空気の供給は、内筒部942bの孔875から、ガイド部材942の内部に吐出する空気の流速が5m/secとなるように調整して行った。そして、目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を、実施例1と同様にして求めたところ、90〜95%であった。尚、各目封止ハニカム構造体への粉体の付着量(製膜量)は、27〜28.5gであり、付着量のバラツキは±10%であった。
【0125】
(実施例4)骨材粒子としてコージェライト(コージェライト化材料)を用い、円柱状の目封止ハニカム構造体を10個作製し、それらの目封止ハニカム構造体について、図7Dに示されるハニカムフィルタ製造装置930を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部810に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ721の噴射端までの距離は800mmであり、ガイド部材742の長さは750mm、内径は240mmである。円柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさはφ144mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部730が吸引する気体の流量を2.8m3/minとし、粉体搬送部720から噴射される気体の流量を0.1m3/minとし、導入部740において新たに混合される気体の流量を2.7m3/minとした。又、粉体の供給量を30gとし、供給時間を60秒とし、供給速度を30g/minとした。又、吐出ノズル876と吐出ノズル877とに外部から空気を供給し、それら吐出ノズルから吐出された空気が、ガイド部材742の内周面に沿って上昇する旋回流となるようにした。そして、目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を、実施例1と同様にして求めたところ、80%であった。尚、各目封止ハニカム構造体への粉体の付着量(製膜量)は、24.0〜25.3gであり、付着量のバラツキは±10%であった。
【0126】
(実施例5)実施例1〜4により製膜した目封止ハニカム構造体を焼成して、捕集層が形成された目封止ハニカム構造体を得た。得られた各目封止ハニカム構造体について、PMを堆積させた状態で圧力損失を測定したところ、捕集層のない場合と比較して、圧力損失が低下しており、捕集層の効果が確認された。更に、これらの目封止ハニカム構造体に対し、中央付近(中心軸を含む部分)と外周付近とから、それぞれ同じ大きさで切り出し、それぞれの圧力損失を測定したところ、両者に有意な差異は認められなかった。更に、それぞれの捕集層(セル内面)を走査型電子顕微鏡で観察したところ、両者の捕集層に外観上の差異はなく、未製膜部分も認められなかった。以上によって、均一な捕集層が形成されていることが確認出来た。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、DPFとして用いられるハニカムフィルタを製造する手段として、好適に利用される。DPFは、ディーゼルエンジンをはじめとする内燃機関や、各種燃焼装置から排出されるガス中に含まれるパティキュレートを捕集し、ガスを浄化するために使用されるフィルタである。
【符号の説明】
【0128】
1,110,120,130,300,400,500,600,700,800,900,910,920,930:ハニカムフィルタ製造装置
10,310,410,510,610,710,810:ワーク固定部
11,311,411,511,611,711,811:ワーク
11a:粉体搬送部の側における基材(ワーク)の端面
12:カバー
13,13a,13b,313a,313b,413a,413b,513a,513b,613a,613b,713a,713b,813a,813b:ワークチャック
14:パッキン
20,320,420,520,620,720:粉体搬送部
21,321,421,521a,521b,621,721:エジェクタ
23,123,323,423,523a,523b,623,723:加圧気体供給機
24,424,524a,524b,624,724:粉体供給装置
25:重量計
26:流量計
27,727:調節弁
28,728,828:配管
29,329,429,529a,529b,629,729:チューブ
30,330,430,530,630,730:吸引部
32:風速計
33,333,433,533,633,733:吸引機
34,334,434,534,634,734:ダクト
40,340,440,540,640,740:導入部
42,342,442,542,642,742,842,942:ガイド部材
80:粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円
124:容器
125:エアロゾル化室
126:撹拌用ビーズ
201:ハニカムフィルタ
203a,203b,1203a,1203b:セル
204,1204:隔壁
205:PM(パティキュレートマター、粒子状物質)
206:(PMを含む)排出ガス
324:容器
331:整流板
443:速度調整筒
502,602,702:エアロゾル
643:粉体回収容器
771:ワーク置台
772:ロボットハンド
871:移送装置
872:パレット
873:空隙
874:ポンプ
875:孔
876,877:吐出ノズル
878:ノズル孔
1207:細孔
1208:粉体
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体からなる基材と、その基材の表面に設けられた、微粒子を捕集するための捕集層と、を有するハニカムフィルタを製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関や各種の燃焼装置等から排出されるガスには、スート(黒鉛)を主体とする粒子状物質(パティキュレートマター(PM))が、多量に含まれている。このPMがそのまま大気中に放出されると、環境汚染を引き起こすため、排出ガスの流路には、PMを捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)を備えたフィルタ装置が搭載される。
【0003】
このようなフィルタ装置の中心となるそのDPF(エレメント)として、例えば、ハニカム構造を有するハニカムフィルタが知られている。このハニカムフィルタは、多数の細孔を有するセラミックの多孔質体からなる隔壁によって区画された、ガスの流路となる複数のセルを有し(ハニカム構造を呈し)、隣接する複数のセルの、一方の開口端と他方の開口端とを、互い違いに目封止してなるものである。このハニカムフィルタをキャニングし、一のセルの開口端から排出ガスを流入させると、排出ガスは、隔壁を通過して隣接するセルの他方の開口端から流出し、その際にPMが隔壁に捕集され除去されて、浄化される。
【0004】
しかし、このようなハニカムフィルタでは、PMが堆積することに伴って、圧力損失が急激に増加し易い。そこで、圧力損失の抑制を図るべく、例えば、特許文献1〜3には、新たな構造のハニカムフィルタが開示されている。これらのハニカムフィルタに共通する特徴は、多孔質体であるハニカム構造体をハニカムフィルタの基材(支持体)とし、その基材の表面に、PMを捕集するための捕集層を設けたところにあり、特許文献1〜3には、その新たなハニカムフィルタの製造方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−249124号公報
【特許文献2】特開2006−685号公報
【特許文献3】特開平10−263340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景の下でなされたものであり、その課題とするところは、多孔質体からなる基材の表面に、漏れなく均一な厚さの捕集層を形成してなる、品質の優れたハニカムフィルタを、高い生産性、高い歩留まりで作製可能な手段を提供することである。研究が重ねられた結果、以下の手段によって、この課題が解決されることが見出され、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、先ず、本発明によれば、ハニカムフィルタの製造に使用する装置であって、ハニカムフィルタの基材を固定するためのワーク固定部と、そのワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、その粉体搬送部とワーク固定部の間に設けられ、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体と更に混合して上記装置使用時に上記ワーク固定部に固定される基材へ導入する導入部と、上記ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて、上記ワーク固定部の他の側を上記ワーク固定部の一の側に対して減圧にして、上記ワーク固定部に固定される基材を通過した気体を吸引する吸引部と、を有するハニカムフィルタ製造装置が提供される。
【0008】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の製造対象であるハニカムフィルタは、外形が周面と2つの端面とからなる柱状(好ましくは円柱状又は四角柱状)を呈する基材を備え、その基材は、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有し、流体の流路となるそのセルは多孔質体からなる隔壁によって区画され、隣接する複数のセルは、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止されているとともに、その基材の内表面に捕集層が形成されてなるものである。
【0009】
ワーク固定部のワークとは、処理の対象であり、本明細書においては、ハニカムフィルタの基材(多孔質体)のことを指す。ワーク固定部とは、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の使用時に、ワークが(ハニカムフィルタの基材が)固定される部分である。ワークであるハニカムフィルタの基材において、捕集層が形成される基材の内表面は、基材の表面のうち、セルを形成する表面であり、これをセル内面ともいう。セルを形成する基材の部分を、隔壁又はセル壁とよぶ。基材の内表面、セル内面、隔壁の表面、及びセル壁の表面は、何れも同じ部分を指す。又、粉体搬送部が配設されるワーク固定部の一の側を入口側ともいい、吸引部が配設されるワーク固定部の他の側を出口側ともいう。
【0010】
導入部は、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体(気流)と更に混合しワーク固定部に固定される基材へ導入する部分であり、これは閉じていない空間である。即ち、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部と、そのワーク固定部の一の側に配設される粉体搬送部と、を備え、それら粉体搬送部とワーク固定部の間に、開放された空間(即ち、導入部)を有する、と表現することも出来る。導入部の寸法は、換言すれば、ワーク固定部と粉体搬送部との距離(厳密にはワーク固定部に固定した基材と粉体搬送部との距離)は、粉体搬送部の側における基材の端面の、粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円の、直径以上であることが好ましく、直径の3倍以上であればより好ましい。尚、粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円とは、粉体搬送部の側における基材の端面の形状が円形である場合は、その端面の形状・寸法と合致する円(その端面の直径と同一の直径を持つ円)であり、粉体搬送部の側における基材の端面の形状が非円形である場合(例えば多角形である場合)は、図12に示されるような、粉体搬送部の側における基材の端面11aに外接する、最小の円80である。そして、直径は、円80の直径rである。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置において、1つの導入部に対し、2つ以上の粉体搬送部を設けてもよい。
【0011】
分散した粉体を含む気体、及び粉体を分散させる加圧気体は、何れも通常は空気であればよい。加圧気体の圧力は、特に制限されないが、1.5〜5気圧程度の圧力を、好ましく用いることが出来る。
【0012】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、この基材の内表面に捕集層が形成されてなるハニカムフィルタを製造する装置である。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、気体中に分散した粉体(エアロゾルともいう)を用いて対象物(基材)に製膜可能であるから、乾式の製膜装置ということが出来る。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気流に乗せて粉体搬送部から噴射し、導入部において他の気体と混合し、その混合した気体(混合気体ともいう)を、基材のセルに送り込み、基材の反対側から吸引する。このとき、気体は基材の隔壁を通過するが、粉体は通過せず、その通過しない粉体がセル内面に(基材の内表面に)堆積し、その後の熱処理によって基材と粉体とを結合させ、捕集層となる。
【0013】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部が、加圧気体を用いた粉体分散手段を備えることが好ましい。粉体分散手段としては、エジェクタやエアロゾル化室を挙げることが出来るが、粉体分散手段は、エジェクタであることが特に好ましい。そのエジェクタは、粉体を気流によって吸引し、加圧気体とともに粉体を排出して、気体中へ分散するものであることが好ましい。即ち、この場合、エジェクタは、粉体を気体中に分散させ、気流に乗せて(気体とともに)噴射する機器であり、加圧気体による高速の気流によって生じた負圧を利用して粉体を吸引し、これを加圧気体とともに気体中へ噴射するもの、ということが出来る。このエジェクタは、1つだけ備わっていてもよく、2以上備わっていてもよい。加えて、そのエジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行であることが好ましい。
【0014】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備えることが好ましい。エジェクタを備える場合には、そのエジェクタの粉体吸引側に、複数の粉体供給手段を設けてもよい。
【0015】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記導入部が、粉体を、ワーク固定部に固定される基材へ案内するガイド部材を有することが好ましい。このガイド部材の形状は、基材が柱状である場合に、基材(ワーク)の外形(特に端面の形状)に合わせたものとすればよい。ガイド部材の形状は、基材の外形(特に端面の形状)とほぼ相似な断面をもつ筒状であるのが好ましく、円筒状や角パイプ状であってもよい。基材が円柱状である場合には、基材の端面を内包する最小の円の直径とほぼ同じ径、あるいは、その直径より大きな径を持つ円筒形であることが好ましい。ガイド部材の長さは、粉体搬送部の側における基材の端面の、基材の端面を内包する最小の円の直径以上、より好ましくは、その直径の3倍以上、の長さである。このガイド部材は、ワーク固定部とは反対側が、開放されているものである。又、ワーク固定部の側は、ワーク固定部に固定したときの基材の端面あるいは外周と近接していることが好ましく、それらと接触してシールされていることが、より好ましい。
【0016】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置がガイド部材を有する場合においては、粉体がガイド部材の内周面に付着することを防止する観点から、ガイド部材が、筒状の多孔質体であることが好ましい。又、同様の観点から、ガイド部材が、筒状の外筒部と、その内側に所定の間隔を置いて配置された、多数の孔を有する筒状の内筒部とからなるものであるとともに、導入部が、前記外筒部と前記内筒部との間の空隙に気体を供給する気体供給手段を有することが好ましい。更に、同様の観点から、ガイド部材が、筒状を呈するものであるとともに、導入部が、ガイド部材の内周面近傍に気体を吐出する吐出ノズルを有することが好ましい。
【0017】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を旋回させてその速度を調整する速度調整手段が、上記導入部に備わることが好ましい。その速度とは、粉体を搬送する気流の速度であり、粉体の速度にも等しい。速度調整手段としては、例えば、2つの開口の大きさの異なる、円筒部材を挙げることが出来る。このような円筒部材は、例えば一方の開口がテーパー状に狭められた円筒部材である。その円筒部材の軸方向に対して、概ね垂直な方向から、粉体を搬送する気流が入ると、その気流は旋回し、速度は調整される(速度が低下する)。
【0018】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ハニカムフィルタの基材は柱状を呈し、使用時において、ワーク固定部に固定される基材の軸方向が、略鉛直であり、気流が下から上へ流れるものが好ましい。即ち、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、使用時に、基材を縦置きにして、気流を基材の下から基材を通し基材の上へ通り抜けさせるものが好ましい。基材の軸方向が略鉛直とは、重力の方向から30度以内に収まる範囲をいう。重力の方向から15度以内に収めることが、より好ましい。この態様は、換言すれば、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の好ましい使用方法ということが出来るが、装置としても、基材を縦置きにして使用出来るようになっていることが好ましい、ということである。
【0019】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、上記粉体搬送部又は導入部に、(粉体の)分級手段を備えることが好ましい。分級手段としては、例えば、遠心分級、重力分級等が好ましく用いられる。当該部において、管径を太くしたり、曲線部分を形成してもよいし、気流が下から上へ流れる部分を設けてもよい。
【0020】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部が、基材の側面を覆うカバーを備えることが好ましい。カバーの形状は、基材の外形に合わせたものとすればよい。又、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、吸引部が、流量計を備えることが好ましい。吸引対象は、粉体が(セル内面に付着して)抜けた気体であるので、流量計の代わりに風速計を用いることが出来る。更に、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、吸引部が、整流板を備えることが好ましい。
【0021】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部に基材を固定したときに、その基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)までの距離dとが、r<dの関係を満たすことが好ましい。又、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置においては、ワーク固定部に基材を固定したときに、基材の粉体搬送部の側における端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dと、ガイド部材の長さLとが、0.5d<Lの関係を満たすことが好ましい。
【0022】
次に、本発明によれば、上記した何れかのハニカムフィルタ製造装置を用い、吸引部が吸引する気体aの流量A、粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、導入部において気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、ハニカムフィルタの基材の内表面に、粉体を堆積させる過程を有するハニカムフィルタの製造方法が提供される。
【0023】
例えば、粉体搬送部から噴射される気体の流量Bを一定にして、その流量Bより、吸引部が吸引する流量Aを、流量Cだけ多くすればよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて他の側を一の側に対して減圧にする吸引部と、を有し、吸引部によって基材を通過した気体が吸引されるので、気流が整流される。そして、その整流された気流の軌道に乗って、粉体は、基材が有する多数のセルへ、均一且つ安定に、供給される。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置によれば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、そして、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。又、整流されることによって、粉体が周りに飛散し難くなり、良好な作業環境が保持される。
【0025】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気流に乗せて粉体搬送部から噴射し、導入部において他の気体と混合し、その混合した気体(気流)を基材のセルに送り込むので、混合の過程で粉体が拡散するため、その粉体が、基材の端面の一部だけでなく全体に広がってセル内に導入されるようになるので、製膜分布の均一性が向上する。加えて、基材を通過する気流の流速と、粉体搬送部を流れる気流の流速と、を独立に制御可能となる。捕集層の微構造や製膜量分布は、セル内に導入する混合気体に含まれる粉体の密度や気体の流速によって変化することが、研究によって明らかとなってきた。これらは、吸引部からの吸引流量や、粉体搬送部から供給する混合気体中の粉体の密度によって、制御することが出来る。一方、粉体搬送部にて粉体を気中に分散させるために必要な流速がある。従って、これらを両立させるには、2つの流速を独立に制御可能なことが、極めて有効である。
【0026】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、粉体を気体中に分散させるに際し、加圧気体を用いているので、流速を大きくし速度勾配を形成することが出来、粉体に十分な衝撃力やせん断力を与えることが出来る。そのため、粉体が均一に気体中に分散する。粒子径が概ね20μm以下の微粉体は、静置した状態では凝集して、それより大きな粒子を形成している場合があり、それによって、粉体が均一に気体中に分散し難くなるおそれがあるが、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置では、加圧気体によって解砕されるので、このような問題は生じない。
【0027】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、既述の通り、乾式の製膜装置ということが出来、堆積させる粉体は、乾燥した状態で、セル内面(隔壁の表面)に供給されるので、水やバインダ等の添加剤を使用する場合に必要となる乾燥工程や脱脂工程は必要なく、基材(隔壁)の上に、欠陥のない良好な捕集層を形成することが出来る。
【0028】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部が加圧気体を用いた粉体分散手段を備え、それがエジェクタであるので、時間あたりに大量の粉体を気体に分散させ、噴射することが出来る。例えば、0.1m3/分の気体に対し50g/分の粉体を分散し噴射することが可能である。又、所定の量の粉体を、粗粒子を解砕しながら搬送することが出来、それをセルへ送り込むことが可能である。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置によれば、短時間で、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、そして、短時間で、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。粉体搬送部が複数のエジェクタを備えている場合にも、基材を通過する気体の流量を制御し易いので、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが出来る。更に、エジェクタが発生する負圧で吸引する気流を形成し、粉体を吸引するように用いることで、エジェクタへの粉の供給も気流に乗せて行うことが出来る。こうすることで、エジェクタに加圧気体を供給していない間(負圧の発生しない間、従って吸引する気流の形成されていない間)は、管路に粉が触れないようにすることが出来る。これにより、粉が管路に堆積して粗大粒子の発生源となったり、ブリッジによる供給不良が発生することを防止することが可能である。
【0029】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部に基材を固定したときに、その基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dとが、r<dの関係を満たすので、基材の径方向に均一に、粉体がセル内面に堆積する。噴射された粉体は、無駄なく、基材のセルの全面に、均一に入り込む。加えて、装置のサイズも大きくならない。この関係を満たす場合に比して、端面と粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)とが近ければ(距離dが小さければ)、エジェクタから噴射された粉体が基材のセルの一部にしか入らず、遠ければ(距離dが大きければ)、基材のセルに到達せず別の部材に付着したり落下する。何れにしても、無駄が多くなる。基材の粉体搬送部の側における端面を内包する最小の円の直径rと、その端面から粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)までの距離dとは、3r<dの関係を満たすことが、より好ましい。
【0030】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、導入部が、エアロゾルを基材に案内するガイド部材を有するので、エアロゾルの広がり、拡散が抑えられ、気流は整流され、収率が向上する。又、例えば、周辺環境からの気流流入等の外乱や、基材の外周形状の状態等の影響を受け難くなる。そして、基材の最外周のセルも含め、基材の径方向の全面にわたって均一に、粉体がセル内面に堆積する。
【0031】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ガイド部材は、ワーク固定部とは反対側が開放されているので、その開放部分は、基材を通過する(エジェクタから噴射されるエアロゾル以外の)気体を吸引するための開口として機能する。又、その開放部分は、基材に付着しなかった粉体を排出する開口としても機能する。
【0032】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部に基材を固定したときに、基材の粉体搬送部の側における端面から粉体搬送部の噴射端までの距離dと、ガイド部材の長さLとが、0.5d<Lの関係を満たすので、十分に、上記効果を発現する。即ち、エアロゾルの広がり、拡散が十分に抑えられ、気流の整流効果は大きい。加えて、装置のサイズも抑制される。この関係を満たす場合に比して、基材の粉体搬送部の側における端面と粉体搬送部の噴射端(エジェクタの噴射端)とが近ければ(距離dが小さければ)、上記効果は十分に発現せず、遠ければ(距離dが大きければ)、装置が大きくなってしまう。
【0033】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備えるので、定量(一定質量)の粉体をエジェクタから吸引させて、容易にエアロゾルの密度を制御することが可能であり、エアロゾルの密度を一定にすることが出来る。そして、そのような密度一定のエアロゾルをセルへ送り込めば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、更には、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能となる。
【0034】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、ワーク固定部が、基材の側面を覆うカバーを備えるので、基材が、その側面(外周)に気孔を有するハニカム構造体である場合でも、最外周のセルも含めて、基材の径方向の全面にわたって均一に、粉体をセル内面に堆積させることが出来る。基材の側面に気孔が有ると、その外周の気孔から最外のセルに気体が流入する結果、正常に端面の開口からセルに流入するエアロゾルが減少してしまい、セル内面に付着する粉体が減少するおそれがあるが、基材の側面を覆うカバーがあれば、そのようなおそれは排除される。側面からの気体の流入は防止され、所望の気流を実現することが出来る。
【0035】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、吸引部が、流量計を備えるので、基材を通過する気体の流速を制御することが出来、その結果、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、更には、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能となる。
【0036】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、吸引部が、整流板を備えるので、基材に多数のセルがある場合にも、そこを通過する流量を、整流版が無い場合に比して、より均一化することが出来る。
【0037】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、エジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行であるので、エジェクタにおける気流の方向変化が殆どなく、そうしない場合より大量の粉体を供給することが出来る。又、エジェクタの磨耗が少ない。更には、ブリッジ(アーチ)やラットホールが抑制され、粉体不供給という問題が生じ難くなる。
【0038】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を旋回させてその速度を調整する速度調整手段が、上記導入部に備わるので、粉体の解砕効果を維持しつつ、粉体を搬送する気流の速度を、任意に調整する(低下させる)ことが出来る。そして、粉体を搬送する気流の速度の調整によって、粉体が分級され、粗大粒子のワークへの導入を抑制する。又、粉体を搬送する気流の速度を低下させることによって、基材(ワーク)を通過する気流の速度が遅くなり、粉体を基材の表面付近に付着させることが可能となる。即ち、捕集層用の基材の細孔内部に粉体が入ることなく、基材表面において、ブリッジ状に、粉体を付着させることが出来る。又、気孔率や平均細孔径の異なる基材(ワーク)へ製膜する場合に、気流の速度調整によって、この効果が最適に得られるようになる。
【0039】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置において、装置使用時にワーク固定部に固定されるハニカムフィルタの基材は、好ましくは、柱状を呈し、使用時において、ワーク固定部に固定される基材の軸方向が、略鉛直であり、気流が下から上へ流れる(即ち、使用時に、基材が縦置きになり、その状態で、気流が基材の下から上に向けて通過する)ので、先ず、導入部が分布均一性のある重力分級機能を備えるようになり、製膜分布の均一性が向上する。横置きにすると(即ち、使用時においてワーク固定部に固定される基材の軸方向が略水平であると)、粉体が重力の影響を受け、セル内で下側になった隔壁表面に、上側になった隔壁表面より、多くの粉体が付着してしまう。このことは、気流の流速が遅い場合に顕著である。次に、使用時に基材を縦置きにすることによって、製膜不良を引き起こす粗大粒子が、セル内へ流入することを抑制出来る。仮に、粗大粒子が、一旦、セル内に入っても、重力の効果によって、気流に乗らない粗大粒子は失速して落下するため、隔壁表面に付着せず、製品不良を防止出来る場合がある。横置きの場合には、粗大粒子のセル内へ流入抑制を図るには、導入部の寸法を大きくする(ワーク固定部と粉体搬送部の距離を長くする)必要があるとともに、粗大粒子が、一旦、セル内に入ってしまえば、製膜不良は避けられない。又、適切な大きさであってもセル内面に付着しなかった粒子は、導入部に戻り、再び、気流と混合され、再度、セル内へ導入される。よって、収率が向上する。更には、縦置きによれば、未付着粉体の回収が容易である。例えば、製品の直下に、受け台を設けておけば、容易に粉体を回収することが出来る。ガイド部材を設ける場合は、ガイド部材の開口を未付着粉の排出口とすることによって、ガイド部材がない場合より、容易に粉体を回収可能である。横置きでは、ガイド部材があっても、ガイド部材に粉体が堆積してしまい、回収に手間がかかるし、気流によって粉体が、再度、飛散し、予期せずに、製品に飛び込んでしまい、製品不良が発生するおそれがある。
【0040】
上記のような縦置きの効果によって、品質を確保可能な制御範囲が広く取れるため、装置が複雑になることなく、高品質で安定した製膜が可能となる。又、縦置きの効果は、複数の種類の粉体を供給する場合に、より顕著となる。
【0041】
尚、使用時に、柱状の基材を縦置きにする場合、基材の軸方向と、導入部で形成する気流の方向とは、概ね同方向とするのが好ましい。これら方向が異なっていると、粉体が一方向に偏って堆積してしまうおそれがある。
【0042】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、その好ましい態様において、粉体搬送部又は導入部に、分級手段を備えるので、粗大粒子を除外することが出来、製膜不良の発生が抑制される。尚、本明細書において、粗大粒子とは、粉体の粒子のうち、解砕されずに大きな粒子のままのものや、管内に付着、凝集したものが剥離して搬送されたもの等を指す。
【0043】
本発明に係るハニカムフィルタ製造方法は、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用い、吸引部が吸引する気体aの流量A、粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、導入部において気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、ハニカムフィルタの基材の内表面に、粉体を堆積させる過程を有するので、基材を通過する気体へ、エジェクタで気体と混合された粉体を、良好に分散させることが可能であり、基材のセルへ、粉体を均一に送り込むことが出来る。従って、本発明に係るハニカムフィルタ製造方法によれば、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積することが出来、セル内面に、漏れなく、均一の厚さで、捕集層を形成することが可能である。気体aの流量Aに対する気体bの流量Bの比(=B/A)は、1より小さくする。この比は、好ましくは、1/3以下、より好ましくは1/10以下である。粉体搬送部から噴射される気流は、大量の粉の搬送に伴い脈動を生じる場合があるが、この比を1/3以下にすると、ワークを通過する気流の流速分布に対し、その影響を小さくすることが出来る。尚、本明細書において、流量A〜流量Cは時間あたりの流量であり、即ち流速のことである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の一の実施形態を示す模式図である。
【図1B】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図1C】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図1D】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図5A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図5B】図5Aに示されるハニカムフィルタ製造装置において、ワーク固定部へワークを固定する様子を表した模式図である。
【図6A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図6B】図6Aに示されるハニカムフィルタ製造装置において、ワーク固定部へワークを固定する様子を表した模式図である。
【図7A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図7B】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図7C】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図7D】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図8】図7C及び図7Dに示されるハニカムフィルタ製造装置において使用される吐出ノズルを示す斜視図である。
【図9A】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造されるハニカムフィルタの利点を説明する図であり、(表面)捕集層が設けられていないハニカムフィルタの1/4を切り取って内部を表した斜視図である。
【図9B】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造されるハニカムフィルタの利点を説明する図であり、(表面)捕集層が設けられていないハニカムフィルタの一部分(隔壁とセル)を拡大して表した断面図である。
【図10】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図11】本発明に係るハニカムフィルタ製造装置の効果を説明するための図であり、(表面)捕集層が設けられていないハニカムフィルタの一部分(隔壁とセル)を拡大して表した断面図である。
【図12】基材(ワーク)の端面を表す図であり、粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について、適宜、図面を参酌しながら説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明の実施の形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は以下に記述される手段である。
【0046】
先ず、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置で製造される、捕集層が形成された(製膜された)ハニカムフィルタの利点について、図9A及び図9Bを参照しながら説明する。ハニカムフィルタを、PM除去用のフィルタとして使用した場合、捕集層の設けられていないハニカムフィルタ201であっても、PM205を含む排出ガス206は、一のセル203a内へ導入され、ハニカムフィルタ201の隔壁204を通過して、隣接するセル203bの他方の開口端から流出する。その際にPM205は、隔壁204に捕集され、排出ガス206は浄化されるのである(図9A、図9Bを参照)。しかし、このとき、隔壁204の表面に捕集層がないと、PM205が隔壁204(基材)の細孔内へ侵入し、細孔を閉塞させるので、初期に圧損が急上昇してしまう。捕集層があれば、PM205が隔壁204(基材)の細孔内へ侵入することを防止出来るので、細孔がPM205で閉塞することはなく、従って、初期に圧損が上昇することもなく、圧損の低減が図れる。本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、このような優れた(捕集層の付いた)ハニカムフィルタを製造する手段である。
【0047】
次に、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置について、その構成と材料を説明する。図1Aに示されるハニカムフィルタ製造装置1は、ワーク固定部10、粉体搬送部20、吸引部30、及び導入部40を有する。図1Aは模式図であり、この図1Aでは、ワーク固定部10の周辺は断面図として描かれ、ワーク11である基材(ハニカムフィルタ前駆体)が表されている。ハニカムフィルタ前駆体とは、製膜することによって捕集層が設けられたハニカムフィルタとなるハニカムフィルタ用の基材である。図1Aは、製膜時の状態を表しており、図1Aに示される矢印は、粉体、エアロゾル、気体(空気)の流れを示している。これらのことは、後述の図1B〜図4、図5A、図6Aにおいても同様である。
【0048】
ハニカムフィルタ製造装置1のワーク固定部10は、ワーク11(基材)を固定する部分であり、ワーク11であるハニカムフィルタ前駆体は、セラミック製の目封止ハニカム構造体である。即ち、ワーク11は、その外形が、周面と2つの端面とからなる略円柱状を呈しており、一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有し、そのセルは、多数の細孔を有するセラミックの多孔質体からなる隔壁によって区画されていて、ハニカム構造を呈している。セルは、ガス(流体)の流路となるものである。そして、ワーク11は、その隣接する複数のセルが、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止されていて、一の端面と他の端面を見ると、ともに千鳥模様ないし市松模様のようになっている。
【0049】
ハニカムフィルタ製造装置1において、ワーク固定部10は、ワークチャック13(13b)を有する。図示しない支柱、枠体等に支持されたワークチャック13(13b)が、ワーク11を把持することによって、ワーク11は固定される。ワークチャック13(13b)は、ウレタンゴムやシリコンゴム等の柔軟な材料からなるパッキン14(シール材)を介して、ワーク11の周面の端を締め付け固定するとともに、ワーク11の一方の端面と周面とを遮断する。
【0050】
粉体搬送部20は、ワーク固定部10の一の側に配設され、ワーク11に捕集層を形成するための粉体を用いて、これを気体中に分散させてエアロゾルを作製し、そのエアロゾルをワーク11へ導く部分である。ここでエアロゾルを作製するのであるから、ワーク固定部10からみて、エアロゾルの入口側となる。この粉体搬送部20は、主に、エジェクタ21、定量の粉体を供給するための粉体供給装置24で構成される。ワーク11(基材)の粉体搬送部20の側における端面から、エジェクタ21(粉体搬送部20)の噴射端までは、距離dだけ離れている。
【0051】
エジェクタ21は、気流とともに粉体を噴射させる装置である。好ましくは、高速の気流によって生じた負圧を利用して、粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有するものである。即ち、先ず、このエジェクタ21で、エアロゾルが作製される。高速の気流は、図1Aには具体的に示されない加圧気体供給機23(コンプレッサ等)から、流量計26及び調節弁27が設けられた配管28を通して、所定の流量で、エジェクタ21へ供給される。粉体は、重量計25(質量計)が付属した粉体供給装置24によって、チューブ29を介し、所定の送り量で、エジェクタ21へ供給される。図1Aに示されるように、エジェクタ21は、粉体を吸引していることが好ましい。配管やエジェクタ内でのブリッジ(アーチ)やラットホールが抑制され、粉体不供給という問題が生じ難くなるからである。捕集層を形成する(セラミック)粉体は、微粒子であり、凝集し易い性質があり、このような粉体を、セル内面に確実に付着させるとともに、その反対に気流で搬送される間は配管等に付着させないことが必要であるが、エジェクタ21は、これらに対し効果的なものである。又、粉体の吸引方向とエアロゾルの排出方向とが略平行であることが、更に好ましい。
【0052】
エジェクタ21は、粉体との接触のよる摩擦で磨耗するのを低減するために、粉体と接する面に、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)、炭窒化珪素(SiCN)、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(SiN)や超硬材料、又はこれらの合金や組合せからなる材料が用いられていることも好ましく、コーティング、メッキ、ライニング等によって形成してもよい。
【0053】
エジェクタ21として市販されているものを用い、その本体に配管を接続して、噴射端を延ばしてもよい。又、噴射時の流速を低減させるため、噴射端自体あるいは接続した配管の径を、大きくしてもよい。粉体から粗大粒子を除去するために、エジェクタ21本体又は接続する配管との間に、分離機能を付与することも好ましい。その分離機能は、具体的には、接続する配管を部分的に太くしたり、渦流を形成したり、配管を縦にして下から上への気流を形成したり、スクリーンメッシュを挿入することによって、実現される。
【0054】
粉体供給装置24は、エジェクタ21における粉体の吸引側に粉体を落下させて、エジェクタ21へ粉体を供給する装置であり、定量の粉体を供給することを可能とする自動供給装置である。粉体供給装置24には、重量計25(質量計)が付属しているのが望ましく、重量計の代わりに容積計を用いることも可能である。粉体供給装置24の供給機構は、例えばスクリュー式であるが、他にロータリー式、振動式、テーブル式、ベルト式等の機構のものを採用することが出来る。粉体供給装置24は、タイムスケジュールに合わせた自動供給や、供給重量(質量)の変更等が可能なものであり、更に、供給速度(供給量/供給時間)の制御も容易に行うことが出来るものである。
【0055】
吸引部30は、ワーク固定部10の他の側に配設され、エジェクタ21から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されたエアロゾルをワーク11(ハニカムフィルタ前駆体)へ吸引する部分である。エアロゾルをワーク11へ吸引するのであるから、ワーク固定部10からみて、ワーク11の出口側となる。
【0056】
この吸引部30は、主に、吸引機33とダクト34で構成される。ダクト34は、ワークチャック13bと接続されている。吸引機33は(例えば)ファンであるが、他にブロワ、集塵機を用いることが出来る。吸引部30として、吸引流量を制御可能であることが好ましい。例えば、吸引機33にかかる電動機の回転数を可変とし、あるいは、バルブ等でダクト34(流路)の径を調整して、吸引流量を制御することが可能である。好ましい吸引流量は、ワーク11が、例えば自動車に搭載されるDPFとして使用されるハニカムフィルタ前駆体である場合には、0.1〜400m3/min程度である。
【0057】
吸引部30のダクト34(流路)には、風速計32が設けられ、吸引流量を監視するとともに、制御のためのデータを提供する。風速計32は熱線式のものであるが、他に機械式、ピトー管式等のものを採用することが出来る。ワーク11を通過してしまった粉体から保護するために、フィルタを前置してもよい。又、エアロゾルが導入されている間は、保護のためのカバーを設けたり、ダクト34内から退避させる機構を設けてもよい。更に風速計32に付着した粉体を取り除くためのブローノズルを配置してもよい。
【0058】
ハニカムフィルタ製造装置1では、粉体搬送部20が下側に位置し、吸引部30が上側に位置する。即ち、エアロゾルがワーク11へ導入される側が下であり、排出される側が上であり、気流の方向は下から上である。そのため、付着しなかった粉体は下へ落下し、セル内面に付着しなかった粉体の回収が容易である。
【0059】
ハニカムフィルタ製造装置1においては、導入部40は、粉体搬送部20とワーク固定部10の間に、開放された空間である。この導入部40において、粉体搬送部20から気流に乗って搬送された粉体は、他の気体と更に混合され、ワーク固定部10に固定されたワーク11へ導入される。
【0060】
次に、図1Bに示されるハニカムフィルタ製造装置110について説明する。これは、既述のハニカムフィルタ製造装置1と同様に、ワーク固定部10、粉体搬送部20、吸引部30、及び導入部40を有するものであるが、ワーク固定部10と導入部40の態様が異なる。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置1と同様な構成である(説明を省略する)。
【0061】
ハニカムフィルタ製造装置110において、ワーク固定部10は、ワークチャック13a,13b、及びカバー12を有する。ハニカムフィルタ製造装置1に準じて、図示しない支柱、枠体等に支持されたワークチャック13a,13bが、ワーク11を把持することによって、ワーク11は固定される。カバー12は、ワーク11の周面(側面)を覆い、ワーク11の外周側から気体が侵入することを防止する。カバー12の形状は、略円柱状のワーク11に合わせて、略円筒状である。カバー12の材料としては特に限定はなく、好適なものは、金属、樹脂等である。
【0062】
ワークチャック13a,13bは、ウレタンゴムやシリコンゴム等の柔軟な材料からなるパッキン14(シール材)を介して、ワーク11の周面の端を締め付け固定するとともに、ワーク11の両端面と周面とを遮断する。これによって、ワーク11の外周まで(全ての端面で)、気流が安定する。パッキン14を用いる代わりに、空気圧でバルーンを膨らます方法で遮断してもよい。又、捕集層を形成すべきセルがワーク11の端面から見て中央部分のみである場合には、ドーナツ状のステージ部材を用いることによって、ワーク11の両端面で把持し、併せてワーク11の両端面と周面とを遮断することも可能である。尚、吸引によって気流を形成していることから、シールが完全でない場合であっても、粉体が外部に漏れて環境を害することなく、気流に対する影響、捕集層の形成に対する影響も、小さい。
【0063】
導入部40に設けられたガイド部材42は、略円柱状のワーク11に合わせて、略円筒状であり、この長さLのガイド部材42は、ワーク固定部10に取り付けられ、ワークチャック13a,13bを用いる場合には、それに接続される。そして、ガイド部材42は、エジェクタ21から噴射されたエアロゾルを、無駄なくワーク11へ導く役割を果たす。一方、ガイド部材42のワーク固定部10とは反対側は、開放されており、ここから、エジェクタ21を通過する気体とは別に、気体が吸引される。即ち、エジェクタ21から噴射されるエアロゾルに、新たな気体(空気)が混合されて新たなエアロゾルになり、この新たなエアロゾルがワーク11のセル内へ導入される。
【0064】
ガイド部材42の材料として好適なものは、カバー12と同様に、金属、樹脂である。具体的には、アルミニウム、ステンレス、真鍮、鉄、アクリル、塩化ビニル、ナイロン(ポリアミド樹脂)、ベークライト(フェノール樹脂)等を挙げることが出来る。ガイド部材42の材料として導電性を有するものを用い、ガイド部材42をアースしておくことが、特に好ましい。又、エジェクタと同様に、粉体との接触のよる摩擦で磨耗するを低減するために、粉体と接する面に、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、TiN、TiCN、SiCN、又はこれらの合金や組合せからなる材料を用いて、コーティング、メッキ、ライニングを施すことも好ましく、更に、粉体と接する部分の材料として、SiCや所謂超硬材料を用いることも好ましい。
【0065】
次に、図1Cに示されるハニカムフィルタ製造装置120について説明する。これは、既述のハニカムフィルタ製造装置110において、エジェクタ21か1台であるのに対し、粉体搬送部20に粉体供給装置24を2台(あるいは3台以上)設けた態様である。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置110と同様な構成である(説明を省略する)。こうすると、予め混合されていない2種の(あるいは3種以上の)粉体を供給して、エジェクタ21で混合し、ワーク11へ導入することが可能である。
【0066】
次に、図1Dに示されるハニカムフィルタ製造装置130について説明する。これは、既述のハニカムフィルタ製造装置110において、エジェクタ21及び粉体供給装置24の代わりに、エアロゾル化室125を設けた態様である。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置110と同様な構成である(説明を省略する)。エアロゾル化室125は、主に、撹拌用ビーズ126と粉体を収めた容器124で構成され、そこでは、図1Dには具体的に示されない加圧気体供給機123(コンプレッサ等)から、配管を通して、加圧気体が吹き込まれ撹拌されることによって、粉体が気体中に浮遊し分散して、エアロゾルが形成される。そして、そのエアロゾルは、チューブ29を介し、吸引部30の吸引力によって、ワーク11へ導入される。
【0067】
次に、図2〜図4、及び図10に示されるハニカムフィルタ製造装置について、その構成と材料を、順次、説明する。これらのハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部、粉体搬送部、吸引部、及び導入部を有し、ハニカムフィルタ製造装置1に準ずる装置であるので、既述のハニカムフィルタ製造装置1に準ずる構成要素については、説明を省略する。
【0068】
図2に示されるハニカムフィルタ製造装置300は、ワーク固定部310、粉体搬送部320、吸引部330、及び導入部340を有する。ハニカムフィルタ製造装置300のワーク固定部310は、ワーク311(基材)を固定する部分であり、ワークチャック313a,313bによって、ワーク311を固定する。ワーク311であるハニカムフィルタ前駆体は、(例えば)円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントである。
【0069】
粉体搬送部320は、主に、エジェクタ321と、粉体を収める容器324で構成される。エジェクタ321は、高速の気流によって生じた負圧を利用して、粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有する。即ち、先ず、このエジェクタ321で、エアロゾルが作製される。高速の気流は、図2には具体的に示されない加圧気体供給機323から、エジェクタ321へ供給される。粉体は、容器324から、チューブ329を介し、エジェクタ321へ供給される。
【0070】
容器324には、所望の質量の粉体が計量されて収められ、その粉体は全てエジェクタ321で吸引される。チューブ329を動かして走査することによって、又は、容器324を動かして走査することによって、粉体を吸引する構成としてもよい。この走査はマニュアルでもよいし、自動ステージを設けてもよい。走査速度を制御して、粉体の供給速度を可変としてもよい。
【0071】
導入部340におけるガイド部材342は、径が大きい円柱状のワーク311に合わせて、略円筒状である。ガイド部材342は、ワーク固定部310に取り付けられ、ワークチャック313a,313bを用いる場合には、それに接続される。絞られてはいても、ガイド部材342のワーク固定部310とは反対側は、開放されており、ここから、エジェクタ321を通過する気体とは別に、気体が吸引される。即ち、エジェクタ321から噴射されるエアロゾルに、新たな気体(空気)が混合されて新たなエアロゾルになり、この新たなエアロゾルがワーク311のセル内へ導入される。
【0072】
吸引部330は、主に、(図2では省略されているが)吸引機333、ダクト334、及び整流板331で構成される。円柱状のワーク311に合わせて略円筒状のダクト334は、ワーク固定部310に取り付けられ、ワークチャック313bを用いる場合には、それに接続される。整流板331は、ダクト334の中で、気流に対し垂直に、設けられる。この整流板331は、ワーク311の出口側の端面において全てのセルを通過する流量を、これを設けない場合より均一化する役割を果たす。整流板331は、パンチングメタルからなるものであるが、他にスクリーンメッシュ等を用いてもよい。
【0073】
図3に示されるハニカムフィルタ製造装置500は、ワーク固定部510、粉体搬送部520、吸引部530、及び導入部540を有する。ハニカムフィルタ製造装置500のワーク固定部510は、ワーク511(基材)を固定する部分であり、ワークチャック513a,513bによって、ワーク511を固定する。ワーク511であるハニカムフィルタ前駆体は、既述のワーク311と同様に、(例えば)円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントであり、軸方向(セルの長さ方向)に比して、径が大きい。
【0074】
粉体搬送部520は、主に、2つのエジェクタ521a,521bと、2つの粉体供給装置524a,524bで構成される。エジェクタ521a,521bは、高速の気流によって生じた負圧を利用して、それぞれの粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有する。即ち、エジェクタ521a,521bで、2つのエアロゾルが作製される。高速の気流は、図5には具体的に示されない加圧気体供給機523a,523bから、それぞれ、エジェクタ521a,5212bへ供給される。それぞれの粉体は、粉体供給装置524a,524bによって、それぞれ、ラッパ口(投入口)の付いたチューブ529a,529bを介し、エジェクタ521a,521bへ供給される。このように、2つのエジェクタ521a,521bと、2つの粉体供給装置524a,524bを用いれば、異なるセラミック材料からなる粉体を供給する際に、偏析や粒度分布時間変化等の不具合を防止することが出来る。又、2つの粉体供給装置524a,524bからの供給速度を互いに時間的に変化させ、割合を制御することも可能である。又、1つのエジェクタと粉体供給装置を用いる場合より、短時間に、多くの粉体を供給することが可能である。尚、既述のように、一つの投入口へ、2つの粉体供給装置から、粉体を供給するようにしてもよい。
【0075】
導入部540におけるガイド部材542は、円柱状のワーク511に合わせて、略円筒状である。ガイド部材542は、ワーク固定部510に取り付けられる。ガイド部材542のワーク固定部510とは反対側は、開放されており、ここから、エジェクタ521a,521bを通過する気体とは別に、気体が吸引される。即ち、エジェクタ521a,521bのそれぞれから噴射されるエアロゾルが混合され、更に新たな気体(空気)が混合されて、新たなエアロゾル502になり、この新たなエアロゾル502がワーク511のセル内へ導入される。尚、図3及び図4では、図中にエアロゾルを表しているが、他の図では省略している。
【0076】
吸引部530は、主に、吸引機533とダクト534で構成される。ダクト534は、ワーク固定部510(ワークチャック513b)に取り付けられる。このダクト534は、ワーク固定部510に取り付けられる部分では、円柱状のワーク511に合わせた大きさの略円筒状を呈する。
【0077】
図4に示されるハニカムフィルタ製造装置600は、ワーク固定部610、粉体搬送部620、吸引部630、及び導入部640を有する。ハニカムフィルタ製造装置600のワーク固定部610は、ワーク611(基材)を固定する部分であり、ワークチャック613a,613bによって、ワーク611を固定する。ワーク611であるハニカムフィルタ前駆体は、(例えば)角柱状でSiC製の目封止ハニカムセグメントである。
【0078】
粉体搬送部620は、主に、エジェクタ621と、粉体供給装置624で構成される。エジェクタ621は、高速の気流によって生じた負圧を利用して粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有する。即ち、エジェクタ621でエアロゾルが作製される。高速の気流は、図4には具体的に示されない加圧気体供給機623から、エジェクタ621へ供給される。粉体は、粉体供給装置624によって、ラッパ口の付いたチューブ629を介し、エジェクタ621へ供給される。
【0079】
導入部640におけるガイド部材642は、角柱状のワーク611に合わせて、略角筒状である。ガイド部材642は、ワーク固定部610に取り付けられる。ガイド部材642のワーク固定部610とは反対側は、粉体回収容器643が取り付けられ、その横面に空気取入口641が設けられている。エジェクタ621を通過する気体とは別の気体は、空気取込口641から吸引される。即ち、エジェクタ621から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されて、新たなエアロゾル602になり、この新たなエアロゾル602がワーク611のセル内へ導入される。そして、ワーク611に付着しなかった粉体は、粉体回収容器643で回収される。空気取込口641には、例えばバルブ等の、気体の流量を制御する機構や流量の測定器を備えていてもよい。
【0080】
吸引部630は、主に、(図示しない)吸引機633と、ダクト634で、構成される。ダクト634は、ワーク固定部610に(ワークチャック613bで)取り付けられる。
【0081】
図10に示されるハニカムフィルタ製造装置400は、ワーク固定部410、粉体搬送部420、吸引部430、及び導入部440を有する。ハニカムフィルタ製造装置400のワーク固定部410は、ワーク411(基材)を固定する部分であり、ワークチャック413a,413bによって、ワーク411を固定する。ワーク411であるハニカムフィルタ前駆体は、既述のワーク311,511と同様に、(例えば)円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントである。
【0082】
粉体搬送部420は、主に、エジェクタ421と、粉体供給装置424で構成される。エジェクタ421は、高速の気流によって生じた負圧を利用して粉体を吸引し、気流とともに、排出する機構を有する。即ち、エジェクタ421でエアロゾルが作製される。高速の気流は、図10には具体的に示されない加圧気体供給機423から、エジェクタ421へ供給される。粉体は、粉体供給装置424によって、ラッパ口の付いたチューブ429を介し、エジェクタ421へ供給される。
【0083】
導入部440におけるガイド部材442は、円柱状のワーク411に合わせて、略円筒状である。ガイド部材442は、(ワークチャック413bによって)ワーク固定部410に取り付けられる。ガイド部材442の内側には、速度調整筒443(速度調整手段)が設けられている。この速度調整筒443は、一方の開口(図10における下側の開口)がテーパー状に狭められた円筒部材である。そして、速度調整筒443の軸方向に対して、概ね垂直な方向から(図10における横方向から)粉体を搬送する気流が入るように、速度調整筒443とエジェクタ421とが、接続される。こうすると、エジェクタ621から噴射されるエアロゾル(粉体を搬送する気流)は、速度調整筒443内で旋回し、その速度が調整される(低下する)。この速度調整によって、粉体は分級され、粗大粒子は落下して分離される。一方、エジェクタ421を通過する気体とは別の気体は、ガイド部材442の開口(図10における下側)から吸引され、エジェクタ421から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されて、新たなエアロゾルになり、この新たなエアロゾルがワーク411のセル内へ導入される。
【0084】
上記のように、エアロゾル(粉体を搬送する気流)の速度が低下すると、ワーク411を通過する気流の速度も遅くなる。そして、この気流の速度の調整(低下の程度)によって、図11に示されるように、ワーク411(基材)の隔壁1204に形成された細孔1207の内部に粉体1208が入ることなく、(図11において)細孔1207の上方で隔壁1204の表面と表面とを架け渡すように(即ちブリッジ状に)、粉体1208が付着するようになる。
【0085】
吸引部430は、主に、(図示しない)吸引機433とダクト434で構成される。ダクト434は、ワーク固定部410に(ワークチャック413bで)取り付けられる。
【0086】
以上説明した図1A〜図4、及び図10に示されるハニカムフィルタ製造装置において、使用時にワークをワーク固定部に固定する手段としては、手作業による取付、ロボットハンドによる自動移載、移送装置をワーク固定部に組み込んだ態様による連続自動移載等を挙げることが出来る。
【0087】
例えば、既述のハニカムフィルタ製造装置110においては、ワークチャック13a,13bを緩めて、ワーク11を組み込んだ後、ワークチャック13a,13bを締めて、固定することで、手作業による取付を行うことが出来る。又、ハニカムフィルタ製造装置110においては、ワークチャック13a,13bは、支柱、枠体等に支持されているものとしたが、これらワーク固定部10を構成するワークチャック13a,13bは、吸引部30及び導入部40に取付られていてもよい。ワークチャック13aを取り付けた導入部40と、ワークチャック13bを取り付けた吸引部30とが、互いに離隔して空間を形成し、そこへワーク11を置いた後に、ワークチャック13aを取り付けた導入部40と、ワークチャック13bを取り付けた吸引部30とを、互いに接近させれば、ワークチャック13a,13bによってワーク11を固定することが出来る。
【0088】
以下、図5A〜図6Bを参照して、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置にかかり、ロボットハンドによる自動移載、移送装置をワーク固定部に組み込んだ態様による連続自動移載について、具体的に説明する。尚、図5A〜図6Bに示されるハニカムフィルタ製造装置は、ワーク固定部、粉体搬送部、吸引部、及び導入部を有し、既述のハニカムフィルタ製造装置110に準ずる装置である。
【0089】
図5A、図5Bに示されるハニカムフィルタ製造装置700は、ワーク固定部710、粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740を有する。図5Bは、ロボットハンドによる自動移載を表した図である。ハニカムフィルタ製造装置700の粉体搬送部720は、主に、エジェクタ721、粉体供給装置724で構成される。高速の気流が、加圧気体供給機723(コンプレッサ等)から、調節弁727が設けられた配管728を通して、所定の流量で、エジェクタ721へ供給され、一方、粉体が、粉体供給装置724によって、チューブ729を介して、所定の送り量で、エジェクタ721へ供給され、そして、エジェクタ21から、気流とともに粉体が噴射される。吸引部730は、主に、吸引機733、ダクト734で構成され、エジェクタ721から噴射されるエアロゾルに新たな気体(空気)が混合されたエアロゾルをワーク711(ハニカムフィルタ前駆体)へ吸引する。導入部740は、ガイド部材で構成される。
【0090】
ハニカムフィルタ製造装置700のワーク固定部710は、ワーク711(基材)を固定する部分であり、ワーク置台771に載置されて製膜の順番を待っているワーク711は、順次、ロボットハンド772によって把持され、ワーク固定部710に移載され、そこで、導入部740に取り付けられたワークチャック713aが下から上昇し、吸引部730に取り付けられたワークチャック713bが上から降下することによって、ワーク711は固定される(図5Bを参照)。ワーク711であるハニカムフィルタ前駆体は、円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントである。
【0091】
図6A、図6Bに示されるハニカムフィルタ製造装置800は、ワーク固定部810と、ハニカムフィルタ製造装置700と同様の粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740と、を有する。図6Bは、移送装置をワーク固定部に組み込んだ態様による連続自動移載を表した図である。
【0092】
ハニカムフィルタ製造装置800のワーク固定部810は、ワーク811(基材)を固定する部分であり、移送装置871の上で並んで載置されて製膜の順番を待っている複数のワーク811は、順次、移送装置871によって、ワーク固定部810に移動する。移送装置871の上には、パレット872が設けられ、そのパレット872にワークチャック813aが取り付けられている。そして、移送装置871の上のワーク811は、予めワークチャック813aで把持されている。ハニカムフィルタ製造装置800では、製膜対象となるワーク811がワーク固定部810に入ったところで、移送装置871が停止し、吸引部730に取り付けられたワークチャック813bが上から降りてきて、ワークチャック813a,813bによってワーク811が固定される。製膜が終ったら、ワークチャック813bは上へ上昇し(戻り)、移送装置871が動作して、製膜を行うべく、次のワーク811をワーク固定部810に移動させる(これらが繰り返される)。移送装置は、例えばコンベアであり、他にレールと台車の組み合せであってもよい。ワーク811であるハニカムフィルタ前駆体は、円柱状でコージェライト製の目封止ハニカムセグメントである。
【0093】
本発明のハニカムフィルタ製造装置において、導入部が筒状のガイド部材を有する場合、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材の内周面に付着しないような対策を施すことが好ましい。捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材の内周面に付着すると、それが製膜中に意図しないタイミングで剥離してワークに吸引され、ワーク毎の製膜量(粉体の堆積量)にバラツキが生じるおそれが有る。又、本来、ワークのセル内面(隔壁の表面)に付着(堆積)させるべき粉体が、ガイド部材の内周面に付着してしまうことにより、原料収率が低下したり、ワーク毎の原料収率にバラツキが生じたりする。
【0094】
図7A〜図7Dに示すハニカムフィルタ製造装置は、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材の内周面に付着するのを防止する対策を施した実施形態である。以下、これらの実施形態について、順次、説明する。
【0095】
図7Aに示すハニカムフィルタ製造装置900は、図6A、6Bに示される既述のハニカムフィルタ製造装置800と同様に、ワーク固定部810、粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740を有するものであるが、導入部740のガイド部材842として、筒状の多孔質体を用いている。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置800と同様な構成である(説明を省略する)。
【0096】
このハニカムフィルタ製造装置900のように、導入部740が筒状のガイド部材を有する場合において、そのガイド部材842が多孔質体であると、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材の内周面に付着するのを効果的に防止することが可能となる。具体的には、このハニカムフィルタ製造装置900を用いて、捕集層を形成するための粉体を、ワーク811のセル内面(隔壁の表面)に堆積させる工程において、ガイド部材842の外部からガイド部材842の外周面に微量の気体(空気等)を吹き付ける。ガイド部材842は多孔質体であるので、その外周面に吹き付けられた気体の一部は、ガイド部材842の細孔を通ってガイド部材842の内周面から内部に吐出する。こうして、ガイド部材842の内周面から内部に吐出した気体によって、捕集層を形成するための粉体(エジェクタ721から噴射されたエアロゾル中の粉体)は、ガイド部材842の内周面に付着することを妨げられる。
【0097】
このように、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材842の内周面に付着することを防止することにより、ワーク毎の製膜量のバラツキを抑えるとともに、原料収率を向上させることが出来る。
【0098】
尚、ガイド部材842の内周面から内部に吐出した気体は、エジェクタ721から噴射されたエアロゾルと混合されて新たなエアロゾル702となり、ワーク811に吸引される。このハニカムフィルタ製造装置900において、筒状の多孔質体であるガイド部材842を構成する材料としては、炭化珪素等のセラミックスが好適なものとして挙げられる。
【0099】
図7Bに示すハニカムフィルタ製造装置910は、図6A、6Bに示される既述のハニカムフィルタ製造装置800と同様に、ワーク固定部810、粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740を有するものであるが、導入部740のガイド部材942が、筒状の外筒部942aと、その内側に所定の間隔を置いて配置された、多数の孔875を有する筒状の内筒部942bとからなるものであるとともに、導入部740が、ガイド部材942の外部から外筒部942aと内筒部942bとの間の空隙873に気体(空気等)を供給する気体供給手段を有する態様となっている。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置800と同様な構成である(説明を省略する)。
【0100】
このハニカムフィルタ製造装置910において、気体供給手段は、ガイド部材942の外部からガイド部材942を構成する外筒部942aと内筒部942bとの間の空隙873に通じる配管828と、その配管828を通じて、ガイド部材942の外部から空隙873に気体を送り込むためのポンプ874とを備える。
【0101】
このハニカムフィルタ製造装置910を用いて、捕集層を形成するための粉体を、ワーク811のセル内面(隔壁の表面)に堆積させる工程において、ポンプ874の駆動により、配管828を通じて、ガイド部材942の外部から空隙873に微量の気体を供給すると、供給された気体は、内筒部942bの多数の孔875から、ガイド部材942の内部に吐出する。こうして、ガイド部材942の内部に吐出した気体によって、捕集層を形成するための粉体(エジェクタ721から噴射されたエアロゾル中の粉体)は、ガイド部材942の内周面(内筒部942bの内周面)に付着することを妨げられる。
【0102】
このように、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材942の内周面に付着することを防止することにより、ワーク毎の製膜量のバラツキを抑えるとともに、原料収率を向上させることが出来る。
【0103】
尚、内筒部942bの孔875からガイド部材942の内部に吐出した気体は、エジェクタ721から噴射されたエアロゾルと混合されて新たなエアロゾル702となり、ワーク811に吸引される。このハニカムフィルタ製造装置910において、ガイド部材942の外筒部942aを構成する材料としては、金属、樹脂等が好適なものとして挙げられる。又、ガイド部材942の内筒部942bは、パンチングメタル、スクリーンメッシュ等の多数の孔を有する材料を用いて形成することが好ましい。
【0104】
図7Cに示すハニカムフィルタ製造装置920は、図6A、6Bに示される既述のハニカムフィルタ製造装置800と同様に、ワーク固定部810、粉体搬送部720、吸引部730、及び導入部740を有するものであるが、追加の構成要素として、更に、導入部740が、ガイド部材742の内周面近傍に気体(空気等)を吐出する吐出ノズル876を有する。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置800と同様な構成である(説明を省略する)。
【0105】
このハニカムフィルタ製造装置920において、吐出ノズル876は、図8に示すように複数のノズル孔878が環状に配置されたものである。図7Cに示すように、この吐出ノズル876は、ガイド部材742の下側(ワーク固定部810とは反対側)の開口端に、ノズル孔878の軸線がガイド部材742の内周面と平行になるように配設されている。
【0106】
このハニカムフィルタ製造装置920を用いて、捕集層を形成するための粉体を、ワーク811のセル内面(隔壁の表面)に堆積させる工程において、吐出ノズル876に外部から気体を供給すると、供給された気体は、環状に配置されたノズル孔878からガイド部材742の内周面近傍に吐出され、その際の吐出力と吸引部730の吸引力とにより、ガイド部材742の内周面に沿って内周面と平行に上昇する上昇流となる。この上昇流によって、捕集層を形成するための粉体(エジェクタ721から噴射されたエアロゾル中の粉体)は、ガイド部材742の内周面に付着することを妨げられる。
【0107】
このように、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材742の内周面に付着することを防止することにより、ワーク毎の製膜量のバラツキを抑えるとともに、原料収率を向上させることが出来る。尚、吐出ノズル876から吐出された気体は、エジェクタ721から噴射されたエアロゾルと混合されて新たなエアロゾル702となり、ワーク811に吸引される。
【0108】
図7Dに示すハニカムフィルタ製造装置930は、図7Cに示される既述のハニカムフィルタ製造装置920において、吐出ノズル876に加え、更に別個の吐出ノズル877を有する。それ以外は、ハニカムフィルタ製造装置920と同様な構成である(説明を省略する)。
【0109】
このハニカムフィルタ製造装置930において、吐出ノズル877は、ガイド部材742の下側(ワーク固定部810とは反対側)の開口端に、そのノズル孔の軸線がガイド部材742の内周面に対し傾斜するように配設されている。
【0110】
このハニカムフィルタ製造装置930を用いて、捕集層を形成するための粉体を、ワーク811のセル内面(隔壁の表面)に堆積させる工程において、吐出ノズル876と吐出ノズル877とに外部から気体を供給すると、吐出ノズル876からガイド部材742の内周面と平行に吐出された気体と、吐出ノズル877からガイド部材742の内周面に対し傾斜して吐出された気体とが合わさり、更にそれらの気体に、吸引部730の吸引力が作用して、ガイド部材742の内周面に沿って旋回しながら上昇する旋回流が生じる。この旋回流によって、捕集層を形成するための粉体(エジェクタ721から噴射されたエアロゾル中の粉体)は、ガイド部材742の内周面(内筒部942bの内周面)に付着することを妨げられる。
【0111】
このように、捕集層を形成するための粉体が、ガイド部材742の内周面に付着することを防止することにより、ワーク毎の製膜量のバラツキを抑えるとともに、原料収率を向上させることが出来る。尚、吐出ノズル876と吐出ノズル877とから吐出された気体は、エジェクタ721から噴射されたエアロゾルと混合されて新たなエアロゾル702となり、ワーク811に吸引される。
【0112】
以上、種々のハニカムフィルタ製造装置の構成と材料について説明したが、これらの本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、市販の機器や部品を利用し、市販の材料を加工して、適宜、組み合せることによって、作製することが出来る。
【0113】
次に、本発明に係るハニカムフィルタ製造方法について、説明する。本発明に係るハニカムフィルタ製造方法は、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用いて、外形が略柱状の多孔質体からなる基材を備え、その基材が、一の端面から他の端面まで延びるセルを有するとともに、その基材の内表面に、捕集層が形成されてなるハニカムフィルタを製造する方法である。
【0114】
先ず、セラミック原料を含有する成形原料を押出成形することによって、外形が略柱状であって流体の流路となる一の端面から他の端面まで延びる複数のセルを有する成形体を得る。より詳細には、好ましくは、コージェライト、炭化珪素、アルミナ、ムライト、チタン酸アルミニウム、又は窒化珪素のうちの何れかからなる骨材粒子、水、有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、ニーダ、真空土練機等を用いて混練することによって坏土を得て、その坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を備えた押出成形機を用いて、押出成形して、所望の形状に成形し、その後、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥することによって、成形体を得る。
【0115】
次いで、その成形体の隣接する複数のセルに対し、成形体の一の端面と他の端面を見ると、ともに千鳥模様ないし市松模様のようになるように、一方の開口端と他方の開口端とを互い違いに目封止し、その後、焼成して、基材を得る。より詳細には、好ましくは上記骨材粒子と同じ材料からなる目封止用のスラリーを、容器に貯留しておき、成形体の一方の端面において、千鳥模様ないし市松模様のようになるように、概ね半数のセルをマスクし、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。成形体の他方の端面については、一方の端面において目封止されたセルについてマスクを施し(当然に千鳥模様ないし市松模様のようになる)、その側を、容器中に浸漬して、マスクしていないセルの開口にスラリーを充填して、目封止する。こうすると、一方の端面において目封止されていないセルは、他方の端面において目封止され、他方の端面において目封止されていないセルは、一方の端面において目封止され、両端面において千鳥模様ないし市松模様のようにセルが交互に塞がれた構造となる。そして、目封止された成形体を仮焼きして脱脂し、その後、焼成(本焼成)を行えば、基材が得られる。有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の温度は200〜1000℃程度とすればよい。焼成温度は、骨材粒子の原料により異なるため、それに応じて適当な条件を選択すればよい。一般に、1400〜1500℃程度である。
【0116】
次に、得られた基材を、好ましくは分解能10mg以下の計量器を用いて計量し(製膜前計量工程)、その後、本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用いて、基材のセル内へエアロゾルを導入し、基材のセル内面に粉体を堆積させる(製膜工程)。粉体(粒子)の平均粒径は、隔壁の平均細孔径によって異なるが、1〜15μmであることが好ましい。粉体の材料として、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、チタン酸アルミニウム、等が、好ましく用いられる。特に好ましい材料は、(基材の)上記骨材粒子と同じ材料である。
【0117】
粉体は、より詳細には、上記材料を分粒した後、ジェットミル(乾式)、ポットミル(湿式)によって、粗粒子を更に粉砕し、微粒、且つシャープな粒子径分布を持つ粉砕粒子として、得ることが出来る。尚、粉体として、基材における隔壁の平均細孔径より小さいものを用いても、粉体は、隔壁の表面(厳密には表層(隔壁の厚さ方向において隔壁の表面から20%までの範囲))に堆積する。これは、隔壁の細孔よりも粉体(粒子)の方が小さいが、粉体を含むエアロゾルが隔壁を通過する際に、粉体の拡散やさえぎりの粒子捕集メカニズムによって気流の流線に乗らず、隔壁の表面(表層)に堆積するためと考えられる。
【0118】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置を用いて、基材の隔壁に、粉体を付着させ堆積させるに際しては、基材(ワーク)をワーク固定部に固定し、粉体搬送部で、供給すべき粉体の量、及び加圧気体供給機からの気流(空気)の流量を、それぞれ所定の値に設定するとともに、吸引部における吸引流量を所定の値に設定する。この吸引部の吸引流量の設定に際しては、セル内面(隔壁の表面)に、漏れなく、均一の厚さで、粉体を堆積させるために、エジェクタを通過する流量より、基材(の隔壁)を通過する流量が、多くなるようにすることが肝要である。
【0119】
基材の隔壁に、粉体を付着させ堆積させたら、その後、エアノズル等を用いて、基材の、エアロゾルが導入された側(入口側)の端面に残存した粉体を除去する(清掃工程)。そして、粉体が堆積した(製膜された)基材を、好ましくは分解能10mg以下の計量器を用いて計量し(製膜後計量工程)、製膜の成否を確認する。
【0120】
最後に、焼成して、セル内面に堆積させた粉体を焼結させ安定させれば、ハニカムフィルタが得られる。このときの焼成温度は、基材を得た際の焼成温度よりも低いことが好ましい。粉体を焼結固定させるために必要な温度が加熱されればよい。粉体の材料によって異なるが、一般に、焼成温度は1250〜1350℃であることが好ましい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)骨材粒子として炭化珪素を用い、四角柱状の目封止ハニカム構造体を作製し、その目封止ハニカム構造体について、図1Bに示されるハニカムフィルタ製造装置110を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部10に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ21の噴射端までの距離は290mmであり、ガイド部材42の長さは300mm、内寸は50mm角である。又、四角柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさは36.2mm×36.2mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部30が吸引する気体の流量を0.4m3/minとし、粉体搬送部20から噴射される気体の流量を0.1m3/minとし、導入部40において新たに混合される気体の流量を0.3m3/minとした。又、粉体の供給量を1.2gとし、供給時間を3秒とし、供給速度を24g/minとした。そして、目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を求めたところ、89%であった。尚、付着量[g]は、製膜前計量工程での重量と製膜後計量工程での重量との差により求め、供給量[g]は、粉体供給装置からの供給量によって求めた。
【0123】
(実施例2)骨材粒子としてコージェライト(コージェライト化材料)を用い、円柱状の目封止ハニカム構造体を作製し、その目封止ハニカム構造体について、図2に示されるハニカムフィルタ製造装置300を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部310に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ321の噴射端までの距離は800mmであり、ガイド部材342の長さは750mm、内径は240mmである。円柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさはφ144mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部330が吸引する気体の流量を2.8m3/minとし、粉体搬送部320から噴射される気体の流量を0.1m3/minとし、導入部40において新たに混合される気体の流量を2.7m3/minとした。又、粉体の供給量を28gとし、供給時間を56秒とし、供給速度を30g/minとした。そして、目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を、実施例1と同様にして求めたところ、73%であった。尚、目封止ハニカム構造体への付着量は、20.4gであった。
【0124】
(実施例3)骨材粒子としてコージェライト(コージェライト化材料)を用い、円柱状の目封止ハニカム構造体を5個作製し、それらの目封止ハニカム構造体について、図7Bに示されるハニカムフィルタ製造装置910を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部810に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ721の噴射端までの距離は800mmであり、ガイド部材942の長さは750mm、外筒部942aの内径は240mm、内筒部942bの内径は210mmである。円柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさはφ144mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部730が吸引する気体の流量を2.8m3/minとし、粉体搬送部720から噴射される気体の流量を0.1m3/minとし、導入部740において新たに混合される気体の流量を2.7m3/minとした。又、粉体の供給量を30gとし、供給時間を60秒とし、供給速度を30g/minとした。又、ポンプ874により、配管828を通じて、ガイド部材942の外部から空隙873に空気を供給した。この空気の供給は、内筒部942bの孔875から、ガイド部材942の内部に吐出する空気の流速が5m/secとなるように調整して行った。そして、目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を、実施例1と同様にして求めたところ、90〜95%であった。尚、各目封止ハニカム構造体への粉体の付着量(製膜量)は、27〜28.5gであり、付着量のバラツキは±10%であった。
【0125】
(実施例4)骨材粒子としてコージェライト(コージェライト化材料)を用い、円柱状の目封止ハニカム構造体を10個作製し、それらの目封止ハニカム構造体について、図7Dに示されるハニカムフィルタ製造装置930を使用して、目封止ハニカム構造体(基材)のセル内面に粉体を堆積させた。ワーク固定部810に目封止ハニカム構造体を固定したときに、目封止ハニカム構造体の端面からエジェクタ721の噴射端までの距離は800mmであり、ガイド部材742の長さは750mm、内径は240mmである。円柱状の目封止ハニカム構造体の軸長は152.4mm、軸に垂直な断面の大きさはφ144mmであり、セル密度は300cpsi(セル/平方インチ)、隔壁の厚さは12ミル(1ミルは約0.0254mm)である。吸引部730が吸引する気体の流量を2.8m3/minとし、粉体搬送部720から噴射される気体の流量を0.1m3/minとし、導入部740において新たに混合される気体の流量を2.7m3/minとした。又、粉体の供給量を30gとし、供給時間を60秒とし、供給速度を30g/minとした。又、吐出ノズル876と吐出ノズル877とに外部から空気を供給し、それら吐出ノズルから吐出された空気が、ガイド部材742の内周面に沿って上昇する旋回流となるようにした。そして、目封止ハニカム構造体への、粉体の付着量/供給量によって収率を、実施例1と同様にして求めたところ、80%であった。尚、各目封止ハニカム構造体への粉体の付着量(製膜量)は、24.0〜25.3gであり、付着量のバラツキは±10%であった。
【0126】
(実施例5)実施例1〜4により製膜した目封止ハニカム構造体を焼成して、捕集層が形成された目封止ハニカム構造体を得た。得られた各目封止ハニカム構造体について、PMを堆積させた状態で圧力損失を測定したところ、捕集層のない場合と比較して、圧力損失が低下しており、捕集層の効果が確認された。更に、これらの目封止ハニカム構造体に対し、中央付近(中心軸を含む部分)と外周付近とから、それぞれ同じ大きさで切り出し、それぞれの圧力損失を測定したところ、両者に有意な差異は認められなかった。更に、それぞれの捕集層(セル内面)を走査型電子顕微鏡で観察したところ、両者の捕集層に外観上の差異はなく、未製膜部分も認められなかった。以上によって、均一な捕集層が形成されていることが確認出来た。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明に係るハニカムフィルタ製造装置は、DPFとして用いられるハニカムフィルタを製造する手段として、好適に利用される。DPFは、ディーゼルエンジンをはじめとする内燃機関や、各種燃焼装置から排出されるガス中に含まれるパティキュレートを捕集し、ガスを浄化するために使用されるフィルタである。
【符号の説明】
【0128】
1,110,120,130,300,400,500,600,700,800,900,910,920,930:ハニカムフィルタ製造装置
10,310,410,510,610,710,810:ワーク固定部
11,311,411,511,611,711,811:ワーク
11a:粉体搬送部の側における基材(ワーク)の端面
12:カバー
13,13a,13b,313a,313b,413a,413b,513a,513b,613a,613b,713a,713b,813a,813b:ワークチャック
14:パッキン
20,320,420,520,620,720:粉体搬送部
21,321,421,521a,521b,621,721:エジェクタ
23,123,323,423,523a,523b,623,723:加圧気体供給機
24,424,524a,524b,624,724:粉体供給装置
25:重量計
26:流量計
27,727:調節弁
28,728,828:配管
29,329,429,529a,529b,629,729:チューブ
30,330,430,530,630,730:吸引部
32:風速計
33,333,433,533,633,733:吸引機
34,334,434,534,634,734:ダクト
40,340,440,540,640,740:導入部
42,342,442,542,642,742,842,942:ガイド部材
80:粉体搬送部の側における基材の端面を内包する最小の円
124:容器
125:エアロゾル化室
126:撹拌用ビーズ
201:ハニカムフィルタ
203a,203b,1203a,1203b:セル
204,1204:隔壁
205:PM(パティキュレートマター、粒子状物質)
206:(PMを含む)排出ガス
324:容器
331:整流板
443:速度調整筒
502,602,702:エアロゾル
643:粉体回収容器
771:ワーク置台
772:ロボットハンド
871:移送装置
872:パレット
873:空隙
874:ポンプ
875:孔
876,877:吐出ノズル
878:ノズル孔
1207:細孔
1208:粉体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムフィルタの製造に使用する装置であって、
ハニカムフィルタの基材を固定するためのワーク固定部と、
そのワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、
その粉体搬送部と前記ワーク固定部の間に設けられ、前記粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体と更に混合して前記装置使用時に前記ワーク固定部に固定される基材へ導入する導入部と、
前記ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて、前記ワーク固定部の他の側を前記ワーク固定部の一の側に対して減圧にして、前記ワーク固定部に固定される基材を通過した気体を吸引する吸引部と、
を有するハニカムフィルタ製造装置。
【請求項2】
前記粉体搬送部が、加圧気体を用いた粉体分散手段を備える請求項1に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項3】
前記粉体分散手段は、エジェクタである請求項2に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項4】
前記エジェクタは、粉体を気流によって吸引し、加圧気体とともに粉体を排出して、気体中へ分散する請求項3に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項5】
前記エジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行である請求項4に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項6】
前記粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備える請求項1〜5の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項7】
前記導入部が、前記粉体を、前記ワーク固定部に固定される基材へ案内するガイド部材を有する請求項1〜6の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項8】
前記ガイド部材が、筒状の多孔質体である請求項7に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項9】
前記ガイド部材が、筒状の外筒部と、その内側に所定の間隔を置いて配置された、多数の孔を有する筒状の内筒部とからなるものであるとともに、前記導入部が、前記外筒部と前記内筒部との間の空隙に気体を供給する気体供給手段を有する請求項7に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項10】
前記ガイド部材が、筒状を呈するものであるとともに、前記導入部が、前記ガイド部材の内周面近傍に気体を吐出する吐出ノズルを有する請求項7に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項11】
前記粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を旋回させてその速度を調整する速度調整手段が、前記導入部に備わる請求項1〜10の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項12】
前記装置使用時にワーク固定部に固定されるハニカムフィルタの基材は、柱状を呈し、使用時において、ワーク固定部に固定される基材の軸方向が、略鉛直であり、前記気流が下から上へ流れる請求項1〜11の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項13】
前記粉体搬送部又は導入部に、分級手段を備える請求項1〜12の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置を用い、前記吸引部が吸引する気体aの流量A、前記粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、前記導入部において前記気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、
ハニカムフィルタの基材の内表面に、前記粉体を堆積させる過程を有するハニカムフィルタの製造方法。
【請求項1】
ハニカムフィルタの製造に使用する装置であって、
ハニカムフィルタの基材を固定するためのワーク固定部と、
そのワーク固定部の一の側に配設され、加圧気体を用いて粉体を気流に乗せて搬送する粉体搬送部と、
その粉体搬送部と前記ワーク固定部の間に設けられ、前記粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を他の気体と更に混合して前記装置使用時に前記ワーク固定部に固定される基材へ導入する導入部と、
前記ワーク固定部の他の側に配設され、吸引手段を用いて、前記ワーク固定部の他の側を前記ワーク固定部の一の側に対して減圧にして、前記ワーク固定部に固定される基材を通過した気体を吸引する吸引部と、
を有するハニカムフィルタ製造装置。
【請求項2】
前記粉体搬送部が、加圧気体を用いた粉体分散手段を備える請求項1に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項3】
前記粉体分散手段は、エジェクタである請求項2に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項4】
前記エジェクタは、粉体を気流によって吸引し、加圧気体とともに粉体を排出して、気体中へ分散する請求項3に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項5】
前記エジェクタにおける粉体の吸引方向と排出方向とが、略平行である請求項4に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項6】
前記粉体搬送部が、定量の粉体を供給するための粉体供給手段を備える請求項1〜5の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項7】
前記導入部が、前記粉体を、前記ワーク固定部に固定される基材へ案内するガイド部材を有する請求項1〜6の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項8】
前記ガイド部材が、筒状の多孔質体である請求項7に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項9】
前記ガイド部材が、筒状の外筒部と、その内側に所定の間隔を置いて配置された、多数の孔を有する筒状の内筒部とからなるものであるとともに、前記導入部が、前記外筒部と前記内筒部との間の空隙に気体を供給する気体供給手段を有する請求項7に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項10】
前記ガイド部材が、筒状を呈するものであるとともに、前記導入部が、前記ガイド部材の内周面近傍に気体を吐出する吐出ノズルを有する請求項7に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項11】
前記粉体搬送部から気流に乗って搬送された粉体を旋回させてその速度を調整する速度調整手段が、前記導入部に備わる請求項1〜10の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項12】
前記装置使用時にワーク固定部に固定されるハニカムフィルタの基材は、柱状を呈し、使用時において、ワーク固定部に固定される基材の軸方向が、略鉛直であり、前記気流が下から上へ流れる請求項1〜11の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項13】
前記粉体搬送部又は導入部に、分級手段を備える請求項1〜12の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載のハニカムフィルタ製造装置を用い、前記吸引部が吸引する気体aの流量A、前記粉体搬送部から噴射される気体bの流量B、前記導入部において前記気体bと混合される気体cの流量Cが、A=B+C、且つ、C>0の関係を満たすように流量を調節して、
ハニカムフィルタの基材の内表面に、前記粉体を堆積させる過程を有するハニカムフィルタの製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−157855(P2012−157855A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53964(P2011−53964)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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