説明

ハニカムフィルタ

【課題】熱膨張率を低減しつつ微細粒子の捕集効率を向上させることが可能なハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】ハニカムフィルタ100は、チタン酸アルミニウムを含む多孔質のセラミックスから構成されると共に、隔壁112により仕切られた互いに略平行な複数の流路110a、110bを有し、一端面100aにおいて流路110aの一端が封口部114により封口されており、他端面100bにおいて流路110bの他端が封口部114により封口されており、隔壁112の平均細孔径が10μm以上であり、隔壁112の気孔率が30〜50体積%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスに含まれる微細粒子(PM)やNOを除去するフィルタとして、隔壁により仕切られた互いに略平行な複数の流路を有するフィルタが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。特に、微細粒子を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)用のフィルタとしては、複数の流路のうちの一部の一端及び複数の流路のうちの残部の他端を、隣接する流路において交互に封口したハニカムフィルタが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−52750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DPF用のハニカムフィルタは、微細粒子(スス成分)の燃焼時やフィルタの製造時等において急激な温度変化が生じる場合がある。そのため、ハニカムフィルタに対しては、熱衝撃に対して優れた耐性を有していることが望まれており、ハニカムフィルタの熱膨張率を低減することが求められている。また、ハニカムフィルタに対しては、ハニカムフィルタを通過した排気ガス中における微細粒子の残存量を低減することが望まれており、排気ガスの浄化効率を向上させることが求められている。しかしながら、従来のハニカムフィルタにおいては、熱膨張率を充分に低減することが困難であることから、ハニカムフィルタにおける微細粒子の堆積量を低減し、微細粒子の燃焼によって生じる発熱量を低減すること等が提案されている。一方、この場合には、微細粒子の除去効率が低下して排気ガスの浄化効率が低下することとなる。このように、従来のハニカムフィルタにおいては、熱膨張率を低減しつつ排気ガスの浄化効率を向上させることが困難である。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、熱膨張率を低減しつつ排気ガスの浄化効率を向上させることが可能なハニカムフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、チタン酸アルミニウムを含む多孔質のセラミックスから構成されるハニカムフィルタにおいて、隔壁の平均細孔径及び気孔率を所定範囲に調整することで、上記目的が達成されることを見出した。すなわち、本発明は、チタン酸アルミニウムを含む多孔質のセラミックスから構成されると共に、隔壁により仕切られた互いに略平行な複数の流路を有し、複数の流路のうちの一部の一端及び複数の流路のうちの残部の他端が封口されており、隔壁の平均細孔径が10μm以上であり、隔壁の気孔率が30〜50体積%であるハニカムフィルタを提供する。
【0007】
本発明では、チタン酸アルミニウムを含む多孔質のセラミックスから構成されるハニカムフィルタにおいて、隔壁の平均細孔径が10μm以上であり、隔壁の気孔率が30〜50体積%である。これにより、ハニカムフィルタ内で生じた熱が除熱され易く、局部的な蓄熱によるハニカムフィルタの熱膨張を抑制可能であり、ハニカムフィルタの熱膨張率を低減することができる。そして、この場合、発熱量の低減する観点からハニカムフィルタにおける微細粒子の堆積量を低減する必要がないため、微細粒子の除去効率を向上させることができる。以上により、本発明では、ハニカムフィルタの熱膨張率を低減しつつ排気ガスの浄化効率を向上させることができる。
【0008】
本発明において、隔壁の平均厚みが0.1〜0.35mmであり、かつ、隔壁の平均ピッチが0.5〜2.0mmであることが好ましい。この場合、ハニカムフィルタ内で生じた熱が更に除熱され易く、局部的な蓄熱によるハニカムフィルタの熱膨張を更に抑制可能であると共に、排気ガスの浄化効率を更に向上させることができる。
【0009】
流路内における隔壁の表面には、γ−アルミナ又はその前駆体の少なくとも一方を含む塗膜が形成されていることが好ましい。この場合、塗膜上にNO成分を吸着することが可能であると共にこのNO成分が微細粒子の酸化剤となり、微細粒子及びNOを効率的に除去することが可能であるため、排気ガスの浄化効率を更に向上させることができる。
【0010】
上記塗膜には、貴金属触媒が担持されていることが好ましい。この場合、隔壁に捕集された微細粒子の燃焼が促進されるため、排気ガスの浄化効率を更に向上させることができる。
【0011】
貴金属触媒は、白金又はパラジウムの少なくとも一方であることが好ましい。この場合、微細粒子の燃焼が更に促進されるため、排気ガスの浄化効率を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱膨張率を低減しつつ排気ガスの浄化効率を向上させることが可能なハニカムフィルタを提供できる。本発明では、熱膨張率を低減することで、熱衝撃によってハニカムフィルタが破損することを抑制することができる。本発明では、排気ガスの浄化効率を向上させることで、ハニカムフィルタを通過した排気ガスにおける微細粒子の残存量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係るハニカムフィルタを示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、寸法の比率は図面に示すものに限定されない。
【0015】
<ハニカムフィルタ>
本実施形態に係るハニカムフィルタ100は、図1(a)、(b)に示すように、互いに略平行に配置された複数の流路110a,110bを有する円柱体である。流路110a,110bは、ハニカムフィルタ100の中心軸に略平行に伸びる隔壁112により仕切られている。ハニカムフィルタ100に形成された複数の流路のうちの一部を構成する流路110aの一端は、ハニカムフィルタ100の一端面100aにおいて封口部114により封口されており、流路110aの他端は、ハニカムフィルタ100の他端面100bにおいて開口している。一方、ハニカムフィルタ100に形成された複数の流路のうちの残部を構成する流路110bの一端は、一端面100aにおいて開口しており、流路110bの他端は、他端面100bにおいて封口部114により封口されている。ハニカムフィルタ100において、流路110bの一端はガス流入口として開口しており、流路110aの他端はガス流出口として開口している。
【0016】
ハニカムフィルタ100では、隣接する流路において流路110aと流路110bとが交互に配置されて格子構造が形成されている。複数の流路110a,110bは、ハニカムフィルタ100の両端面に垂直であり、端面から見て正方形配置、すなわち、流路110a,110bの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。流路110a,110bの断面形状は、例えば正方形である。
【0017】
ハニカムフィルタ100が円柱体である場合、流路の長手方向におけるハニカムフィルタ100の長さは、例えば40〜350mmであり、ハニカムフィルタ100の外径は、例えば100〜320mmである。また、流路110a,110bの長手方向に垂直な断面の内径(正方形の一辺の長さ)は、例えば0.8〜2.5mmである。
【0018】
ハニカムフィルタ100において、隔壁112の平均厚みが0.1〜0.35mmであり、かつ、隔壁112の平均ピッチが0.5〜2.0mmであることが好ましい。後述するように隔壁112の気孔率が比較的低いハニカムフィルタ100では、隔壁112の平均厚みが0.1mm未満であると、隔壁112内のガス流通経路が短く、スス漏れが起こり易くなると共に、ハニカムフィルタ100の強度が低下する傾向がある。隔壁112の平均厚みが0.35mmを超えると、隔壁112内のガス流通経路が長くなり、圧力損失が大きくなりすぎて浄化効率が低下する傾向がある。隔壁112の平均厚みは、0.15mm以上がより好ましく、0.20mm以上が更に好ましい。また、隔壁112の平均厚みは、0.33mm以下がより好ましく、0.30mm以下が更に好ましい。なお、隔壁112の「平均厚み」とは、隣接する一対の流路を任意に10箇所選択し、それぞれの流路間における隔壁112の厚みの平均値をいう。
【0019】
隔壁112の平均ピッチが0.5mm未満であると、ハニカムフィルタ100の各流路110a,110bの断面積が小さくなるため圧力損失が大きくなり、浄化効率が低下する傾向があり、2.0mmを超えると、ハニカムフィルタ100の各流路110a,110bの断面積が大きくなるためハニカムフィルタ100全体での単位容積当たりの濾過面積が減少し、浄化効率が低下する傾向がある。隔壁112の平均ピッチは、1.0mm以上がより好ましく、1.2mm以上が更に好ましい。また、隔壁112の平均ピッチは、1.8mm以下がより好ましく、1.6mm以下が更に好ましい。なお、「平均ピッチ」とは、ハニカムフィルタ100において流路がいずれも略等間隔に配置されている場合には、一つの配列方向において連続する10箇所の隔壁112を任意に選択し、隣接した隔壁112の厚み方向の中心間距離(ピッチ)の平均値をいう。ハニカムフィルタ100において隔壁112のピッチが配列方向毎に異なる場合には、略等間隔に配置された場合の上記定義に従うピッチの平均値が、少なくともひとつの配列方向において満たされていることが好ましい。
【0020】
隔壁112の平均細孔径は、10μm以上であり、12μm以上が好ましい。隔壁112の平均細孔径が10μm未満であると、微細粒子の堆積により細孔が容易に閉塞して圧力損失が急激に大きくなり、浄化効率が低下する。一方、隔壁112の平均細孔径は、捕集されずに隔壁112を通過してしまう微細粒子を低減する観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、16μm以下が更に好ましい。隔壁112の平均細孔径は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、焼成条件により調整可能であり、例えば水銀圧入法により測定することができる。
【0021】
隔壁112の気孔率は、30体積%以上であり、35体積%以上が好ましく、40体積%以上がより好ましい。隔壁112の気孔率が30体積%未満であると、隔壁112をガスが流通しにくくなって圧力損失が大きくなり、浄化効率が低下する。隔壁112の気孔率は、50体積%以下であり、46体積%以下が好ましい。隔壁112の気孔率が50体積%を超えると、スス漏れが激しくなってスス堆積量が減少するため、スス燃焼時の発熱量が低下してハニカムフィルタ100の熱膨張は抑制されるが、浄化効率は低下する。隔壁112の気孔率は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0022】
ハニカムフィルタ100は、チタン酸アルミニウムを含む多孔質のセラミックス焼結体から構成され、例えば多孔質のチタン酸アルミニウム焼結体である。このような材料により構成されるハニカムフィルタ100は、熱膨張係数を小さくすることが可能であり、熱膨張係数を例えば1.0×10−7〜1.0×10−5/Kとすることができる。
【0023】
ハニカムフィルタ100は、マグネシウムやケイ素を含有してもよく、特にチタン酸アルミニウムマグネシウム焼結体からなる場合には、熱膨張係数が更に小さく、融点が高く、再生時の耐熱衝撃性に更に優れ、微細粒子の限界堆積量が大きい点において優れている。また、ハニカムフィルタ100は、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウム(AlTiO)やチタン酸アルミニウムマグネシウム(Al2(1−x)MgTi(1+x))の結晶パターンのほか、アルミナ、チタニア等の結晶パターンを含んでいてもよい。
【0024】
ハニカムフィルタ100におけるアルミニウムの含有率は、例えば、酸化アルミニウム換算で45〜60モル%である。ハニカムフィルタ100におけるチタンの含有率は、例えば、酸化チタン換算で35〜55モル%である。なお、ハニカムフィルタ100の組成は、原料混合物の組成により適宜調整することができる。ハニカムフィルタ100は、上記の成分以外に、原料に由来する成分又は製造工程において不可避的に仕掛品に混入する微量の成分を含有し得る。
【0025】
図1(b)に示すように、流路110b内における隔壁112の表面には、触媒が担持された触媒下塗り塗膜116が形成されている。隔壁112は、多孔質セラミックス焼結体から構成されており、隔壁112内には多数の微細孔が形成されている。触媒下塗り塗膜116は、隔壁112の表面と共に、隔壁112内における微細孔の表面に更に形成されていてもよい。
【0026】
ここで、ハニカムフィルタ100は、内燃機関の排気ガス通路内に配置され、内燃機関から排出される排気ガスは、例えば、ハニカムフィルタ100において矢印G(図1(b))に沿って移動する。すなわち、排気ガスは、一端面100aから流路110bに流入した後、隔壁112内のガス流通経路(連通気孔)を通過して流路110aに移動し、他端面100bから外部へ流出する。排気ガス中の微細粒子は、排気ガスが流路110bから流路110aへ移動するに際して、隔壁112の表面や、隔壁112の表面に形成された触媒下塗り塗膜116に主に捕集される。そして、触媒下塗り塗膜116に触媒が担持されている場合には、捕集された微細粒子は当該触媒の作用により燃焼・除去される。このように、ハニカムフィルタ100に流入した排気ガスは、ハニカムフィルタ100内の移動に伴い微細粒子が除去され、浄化された状態でハニカムフィルタ100から流出する。
【0027】
触媒下塗り塗膜116は、γ−アルミナ又はその前駆体の少なくとも一方のアルミニウム成分を含有していることが好ましい。γ−アルミナは、α−アルミナよりも大きい表面積(例えば比表面積100〜300m/g)を有しており、触媒下塗り塗膜116上に触媒を担持させやすい。γ−アルミナの前駆体としては、例えばベーマイト、アルミナゾル、擬ベーマイト、硝酸アルミニウムが挙げられる。これらの前駆体を焼成するとγ−アルミナが生成し、さらに、γ−アルミナを焼成するとα−アルミナが生成する。触媒下塗り塗膜116は、上記アルミニウム成分を除いた残部として、例えばシリカ、酸化バリウム、酸化ランタンを含有している。なお、触媒下塗り塗膜116は、アルミニウム成分を含有していなくてもよく、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア等の酸化物を含有していてもよい。
【0028】
アルミニウム成分の含有量は、触媒下塗り塗膜100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましい。なお、γ−アルミナ及びその前駆体がいずれも触媒下塗り塗膜116に担持されている場合には、γ−アルミナ及びその前駆体の合計量が上記範囲にあることが好ましい。なお、アルミニウム成分の含有量は、触媒下塗り塗膜116の原料スラリーの組成により適宜調整することができる。
【0029】
触媒下塗り塗膜116の被覆量は、ハニカムフィルタ100の全量を基準として0.1〜20質量%が好ましい。触媒下塗り塗膜116の被覆量が0.1質量%以上であると、微細粒子の捕集効率を向上させることが可能であり、排気ガスの浄化効率を更に向上させることができる。触媒下塗り塗膜116の被覆量が20質量%以下であると、流路110bが目詰まりすることが抑制され、排気ガスの浄化効率を更に向上させることができる。なお、触媒下塗り塗膜116の被覆量には、触媒下塗り塗膜116に担持される触媒の質量は含まれないものとする。
【0030】
触媒下塗り塗膜116に担持される触媒としては、貴金属触媒が好ましい。貴金属触媒としては、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ニッケル及びこれらの合金が挙げられ、白金又はパラジウムの少なくとも一方が好ましい。貴金属触媒の担持量は、触媒下塗り塗膜の全量を基準として0.01〜1質量%が好ましい。触媒下塗り塗膜116には、セリアやジルコニア等の助触媒が担持されていてもよい。
【0031】
ところで、内燃機関の燃料や潤滑油には、硫黄、リン、カルシウム、亜鉛等の成分が含有されており、これらの成分に由来する炭酸カルシウムやリン酸カルシウム等の化合物が生成し、当該化合物がアッシュとして凝集する場合がある。本実施形態において触媒下塗り塗膜116は、これらのアッシュを捕捉する補足材を含有していてもよい。捕捉材としては、例えばガラス質材料や無機化合物フラックス材料が挙げられる。
【0032】
本実施形態に係るハニカムフィルタ100はDPFとして好適であり、内燃機関の排気ガス通路内に配置され、排気ガス中の炭素粒子等の微細粒子(PM)を捕集することができる。但し、ハニカムフィルタの用途はDPFに限定されない。ハニカムフィルタ100は、内燃機関の排気ガス通路内に配置され、排気ガス中に含まれるその他の有害物質を除去することもできる。例えば、上記貴金属触媒の存在下において、排気ガス中の窒素酸化物を還元除去すると共に、一酸化炭素を酸化除去することができる。なお、これらの有害物質を除去するため、上記貴金属触媒とは異なる触媒を触媒下塗り塗膜116に別途担持してもよい。
【0033】
<ハニカムフィルタの製造方法>
ハニカムフィルタ100は、両端面において全ての流路が開口している点を除いてハニカムフィルタ100と略同一の形状を有するグリーン成形体を形成した後、流路の封口、グリーン成形体の仮焼き・焼成、触媒下塗り塗膜の形成、触媒の担持を行って得ることができる。
【0034】
[グリーン成形体の形成]
グリーン成形体は、無機化合物粉末、有機バインダ及び溶媒等を混練機により混合して調製される原料混合物を成形することで得ることができる。原料混合物の成形には、隔壁112の形状に対応する出口開口を有する押出成形機を用いる。なお、グリーン成形体を形成した後に、研削加工等により、所望の形状に加工してもよい。
【0035】
{無機化合物粉末}
無機化合物粉末は、アルミニウム源粉末及びチタニウム源粉末を少なくとも含み、マグネシウム源粉末及びケイ素源粉末等を更に含んでもよい。
【0036】
(アルミニウム源)
アルミニウム源は、ハニカムフィルタ100を構成するアルミニウム成分となる化合物である。アルミニウム源としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)が挙げられる。
【0037】
アルミニウム源は、単独で空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムが挙げられる。
【0038】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩としては、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウム等のアルミニウム硝酸塩、炭酸アンモニウムアルミニウム等のアルミニウム炭酸塩が挙げられる。アルミニウム有機塩としては、例えば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムが挙げられる。
【0039】
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドが挙げられる。
【0040】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型が挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0041】
アルミニウム源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、アルミニウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。アルミニウム源粉末の粒子径は、例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当する粒子径(D50)が20〜60μmとすることができる。
【0042】
(チタニウム源)
チタニウム源は、ハニカムフィルタ100を構成するチタン成分となる化合物であり、かかる化合物としては、例えば酸化チタンが挙げられる。酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)が挙げられ、なかでも酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型等が挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0043】
チタニウム源は、単独で空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えば、チタン塩、チタンアルコキシド、水酸化チタン、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属が挙げられる。
【0044】
チタン塩としては、例えば三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)が挙げられる。チタンアルコキシドとしては、例えばチタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、及び、これらのキレート化物が挙げられる。
【0045】
チタニウム源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、チタニウム源、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。チタニウム源粉末の粒子径は、例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当する粒子径(D50)が0.5〜25μmとすることができる。
【0046】
(マグネシウム源)
原料混合物は、マグネシウム源を更に含有していてもよい。マグネシウム源を含む原料混合物から製造されたハニカムフィルタ100は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶の焼結体である。
【0047】
マグネシウム源としては、マグネシア(酸化マグネシウム)のほか、単独で空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物が挙げられる。かかる化合物としては、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムが挙げられる。
【0048】
マグネシウム塩としては、例えば塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムが挙げられる。マグネシウムアルコキシドとしては、例えばマグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドが挙げられる。
【0049】
マグネシウム源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、マグネシウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。マグネシウム源粉末の粒子径は、例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当する粒子径(D50)が0.5〜30μmとすることができる。
【0050】
(ケイ素源)
原料混合物は、ケイ素源を更に含有していてもよい。ケイ素源は、シリコン成分となってハニカムフィルタ100に含まれる化合物である。ケイ素源を含有することにより、耐熱性が向上したハニカムフィルタ100を得ることが可能となる。ケイ素源としては、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素等の酸化ケイ素(シリカ)が挙げられる。
【0051】
ケイ素源は、単独で空気中で焼成することによりシリカに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットが挙げられる。
【0052】
ケイ素源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、ケイ素源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。ケイ素源粉末の粒子径は、例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当する粒子径(D50)が0.5〜30μmとすることができる。
【0053】
また、原料混合物は、アルミニウム、チタン、マグネシウム及びケイ素のうち2つ以上の金属元素を含有する化合物を含んでもよい。かかる化合物としては、チタン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウムマグネシウム、マグネシアスピネル(MgAl)等の複合酸化物が挙げられる。
【0054】
{有機バインダ}
有機バインダとしては、水溶性の有機バインダが好ましい。水溶性の有機バインダとしては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコール等のアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の塩が挙げられる。有機バインダの添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して、通常0.1〜20質量部である。
【0055】
{溶媒}
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類、及び水等の極性溶媒を用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点でイオン交換水がより好ましい。溶媒の添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して、通常10〜100質量部である。なお、溶媒として非極性溶媒を用いてもよい。
【0056】
{その他の添加物}
原料混合物は、有機バインダ以外の有機添加物を含むことができる。その他の有機添加物としては、例えば造孔剤、潤滑剤、可塑剤、分散剤が挙げられる。
【0057】
造孔剤としては、例えば、グラファイト等の炭素材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類、でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーン等の植物材料、氷、及びドライアイスが挙げられる。造孔剤の添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して通常0〜40質量部である。焼成時に造孔剤が焼失することにより、焼結体において造孔剤が存在していた箇所に微細孔が形成される。この微細孔の孔径はディーゼル燃料に由来する微細粒子の粒子径よりも小さい。したがって、気体は微細孔中を通過できるが、微細粒子は通過できない。
【0058】
潤滑剤及び可塑剤としては、例えば、グリセリン等のアルコール類、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩が挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して通常0〜10質量部である。
【0059】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の界面活性剤が挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物粉末の100質量部に対して通常0〜20質量部である。
【0060】
[封口工程]
封口工程では、公知の方法によりグリーン成形体の流路の端部を封口する。封口材としては、無機化合物粉末(セラミックス材料、セラミックスの原料粉末又はそれらの混合物)、有機バインダ、潤滑剤、造孔剤及び溶媒等の混合物を用いればよい。無機化合物粉末の組成は、グリーン成形体を形成するための無機化合物粉末の組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
[グリーン成形体の仮焼き及び焼成]
グリーン成形体を仮焼き(脱脂)し、かつ焼成することにより得られる焼成体は、主にチタン酸アルミニウムの結晶粒子の焼結体から構成される。仮焼(脱脂)は、グリーン成形体中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を焼失、分解等により除去するための工程である。典型的な仮焼き工程は、焼成工程の初期段階、すなわちグリーン成形体が焼成温度に至るまでの昇温段階(例えば、300〜900℃の温度範囲)に相当する。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0062】
グリーン成形体の焼成温度は、通常1300〜1650℃である。この温度範囲でグリーン成形体を焼成することにより、グリーン成形体中の無機化合物粉末が確実に焼結する。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常1〜500℃/時間である。
【0063】
焼成は、通常大気中で行なわれるが、用いる原料粉末の種類や使用量によっては、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガス等のような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成してもよい。
【0064】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉等の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0065】
焼成に要する時間は、グリーン成形体がチタン酸アルミニウム結晶に遷移するのに充分な時間であればよく、グリーン成形体の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気等により異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0066】
なお、グリーン成形体の仮焼きと焼成を個別に行ってもよい。仮焼き工程では、有機バインダその他の有機添加物の熱分解温度以上であり、かつ、無機化合物粉末の焼結温度よりも低い温度でグリーン成形体を加熱すればよい。焼成工程では、仮焼き工程後のグリーン成形体を無機化合物粉末の焼結温度以上の温度で加熱すればよい。
【0067】
グリーン成形体を焼成することにより、成形直後のグリーン成形体の形状をほぼ維持した焼成体を得ると共に、封口材が焼結して各流路の端部に封口部114が形成される。なお、焼成体を得た後に、研削加工等により焼成体を所望の形状に加工することもできる。
【0068】
[触媒下塗り塗膜の形成]
焼成体の流路内における隔壁112の表面等に触媒下塗り塗膜116を形成する。触媒下塗り塗膜116の形成方法としては、浸漬法、真空溶浸法等により、流路内における隔壁112の表面にスラリーを付着させた後、スラリーを乾燥・焼成する公知の方法を用いることができる。これにより、流路内における隔壁112の表面や、隔壁112内の微細孔の表面に触媒下塗り塗膜116が形成される。
【0069】
触媒下塗り塗膜116の形成に用いるスラリーは、例えばアルミニウム源、ケイ素源、セリウム源、ジルコニウム源、チタニウム源を含む。アルミニウム源としては、例えば硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、γ−アルミナ、η−アルミナ、χ−アルミナ、θ−アルミナ、α−アルミナが挙げられる。また、触媒下塗り塗膜116がアッシュに対する捕捉材を含む場合には、スラリーに捕捉材が添加される。
【0070】
[触媒の担持]
触媒下塗り塗膜116を形成した後に、貴金属触媒や助触媒等を触媒下塗り塗膜116上に担持する。担持方法としては、浸漬法、真空溶浸法、沈殿法、イオン交換法等により触媒下塗り塗膜116の表面にスラリーを付着させた後、スラリーを乾燥・焼成する公知の方法を用いることができる。貴金属触媒を担持する場合、貴金属源としては、例えばジニトロアンミン白金硝酸塩、塩化白金酸、塩化パラジウム、ジニトロアンミンパラジウム、塩化ルテニウム、塩化ロジウム、塩化ニッケルが挙げられる。
【0071】
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0072】
例えば、ハニカムフィルタ100の形状は、円柱体に限定されず、用途に応じて任意の形状(例えば、多角柱や楕円柱)とすることができる。また、流路110a,110bの断面の形状は、正方形に限定されず、例えば、三角形、長方形、六角形、八角形、円形等でもよく、また、複数の形状の組み合わせでもよい。
【0073】
上記実施形態では、触媒下塗り塗膜116は、流路110a,110bのうち流路110bのみに形成されているが、流路110a及び流路110bの両方に形成されていてもよい。また、触媒下塗り塗膜116は、流路内における隔壁112の表面全体を被覆する塗膜であってもよく、表面の一部を被覆せず断片的な塗膜であってもよい。
【0074】
上記実施形態では、グリーン成形体を焼成する前に封口工程を行っているが、グリーン成形体を焼成した後に封口工程を行ってもよい。また、上記実施形態では、グリーン成形体の焼成や封口工程の後に触媒下塗り塗膜の形成や触媒の担持を行っているが、グリーン成形体の焼成や封口工程に先立って触媒下塗り塗膜の形成や触媒の担持を行ってもよい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
(グリーン成形体の作製)
下記の無機化合物粉末(アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末)、造孔剤、有機バインダ、可塑剤、潤滑剤、分散剤及び溶媒を含む原料混合物を混練して押出成形することにより、図1に示すハニカムフィルタを形成するためのグリーン成形体として、両端が開口した複数の流路を有する成形体を作製した。
アルミニウム源粉末:α−アルミナ粉末(住友化学製、商品名「A−21」) 33.7質量部
チタニウム源粉末:ルチル型チタニア粉末(クロノス社製、商品名「Cronos3025」) 38.9質量部
マグネシウム源粉末:酸化マグネシウム粉末((株)宇部マテリアルズ製、商品名「UC−95S」) 3.7質量部
ケイ素源粉末:ガラスフリット(タカラスタンダード社製、商品名「CK0832」) 3.2質量部
造孔剤:コーンスターチ 13.3質量部
有機バインダ:メチルセルロース(信越化学工業(株)製、商品名「メトローズ 90SH−30000、2質量%の水溶液の粘度が30000mPa・s) 5.1質量部
可塑剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ニチユ製、商品名「ユニルーブ50MB−72」) 4.6質量部
潤滑剤:グリセリン 1.0質量部
溶媒:水 28.3質量部
【0077】
(封口)
一端が封口された流路と他端が封口された流路とが交互に配置されるように、各流路に封口材を導入した。封口材としては、セラミック粉末、造孔剤、有機バインダ、可塑剤、溶媒の混合物を用いた。
【0078】
(グリーン成形体の仮焼き及び焼成)
グリーン成形体を100℃で5時間保持して乾燥し、次いで、大気雰囲気下でバインダを除去する仮焼(脱脂)工程を含む焼成を行ってチタン酸アルミニウムマグネシウム多孔質焼成体を得た。焼成時の最高温度は、1450℃とし、最高温度での保持時間は5時間とした。
【0079】
(触媒下塗り塗膜の作製)
焼成体の各流路内に触媒下塗り塗膜を以下のように形成した。すなわち、焼成体の一端面において開口した流路に対して、アルミニウム成分としてγ−アルミナを540質量部と、ベーマイトゲルを60質量部と、硝酸水溶液を1000質量部とを含有するスラリーを導入した。次に、焼成体を大気雰囲気下、500℃で焼成した。これにより、焼成体の一端面において開口した流路について、γ−アルミナを含有する触媒下塗り塗膜が隔壁の表面に形成された。
【0080】
(貴金属触媒の担持)
各流路内の触媒下塗り塗膜上に貴金属触媒(白金)を以下のように担持した。すなわち、ジニトロアンミン白金酸溶液(白金含有量:1質量%)に、γ−アルミナを含有する下塗り塗膜が隔壁の表面に形成された焼成体を浸漬した。次に、焼成体を大気雰囲気下、500℃で焼成した。これにより、各流路内の触媒下塗り塗膜上に白金が担持され、ハニカムフィルタが得られた。触媒下塗り塗膜の被覆量は、ハニカムフィルタの全量を基準として0.3質量%であった。
【0081】
(ハニカムフィルタの評価)
実施例1で作製したハニカムフィルタについて、各種評価を行ったところ下記結果が得られた。なお、ハニカムフィルタにおいて、各流路の中心軸は、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されており、流路の断面形状は正方形とした。
長さ(流路の長手方向):153.2mm
外径:142.9mm
隔壁の平均厚み:0.28mm
隔壁の平均ピッチ:1.56mm
流路の数(セル密度):0.41個/mm
流路の内径(正方形の一辺の長さ):1.28mm
隔壁の平均細孔径:15μm
隔壁の気孔率:45体積%
熱膨張係数:1.3×10−6/K
【0082】
なお、隔壁の平均細孔径は、オートポアIII9420(MICROMERITICS社製)を用いて水銀圧入法により測定した。隔壁の気孔率は、オートポアIII9420(MICROMERITICS社製)を用いて水銀圧入法により測定した。熱膨張係数は、TMA/SS6300(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて測定した。
【0083】
また、実施例1で作製したハニカムフィルタについて、排気ガスの浄化効率を測定したところ99%であった。排気ガスの浄化効率の測定は以下のようにして行った。すなわち、粒子発生装置(GFG−1000:PALAS社製)でススを発生させ、フィルタ入口と出口のスス濃度を粒子計測器(EEPS3090:TSI社製)で測定し、下記式で浄化効率を算出した。
浄化効率=(入口濃度―出口濃度)×100/入口濃度
【符号の説明】
【0084】
100…ハニカムフィルタ、100a…一端面、100b…他端面、110a,110b…流路、112…隔壁、114…封口部、116…触媒下塗り塗膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸アルミニウムを含む多孔質のセラミックスから構成されると共に、隔壁により仕切られた互いに略平行な複数の流路を有し、
前記複数の流路のうちの一部の一端及び前記複数の流路のうちの残部の他端が封口されており、
前記隔壁の平均細孔径が10μm以上であり、
前記隔壁の気孔率が30〜50体積%である、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記隔壁の平均厚みが0.1〜0.35mmであり、前記隔壁の平均ピッチが0.5〜2.0mmである、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記流路内における前記隔壁の表面には、γ−アルミナ又はその前駆体の少なくとも一方を含む塗膜が形成されている、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記塗膜に貴金属触媒が担持されている、請求項3に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記貴金属触媒が、白金又はパラジウムの少なくとも一方である、請求項4に記載のハニカムフィルタ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−55802(P2012−55802A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199252(P2010−199252)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】