説明

ハニカム成形体及びその製造方法

【課題】水硬性組成物を用いて、ひび割れ等がなく、表面の雰囲気は微生物が固着・生息するのに適した弱アルカリ環境であり、また多量の微生物が固着できるように多孔質である、水硬性組成物を用いたハニカム成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水硬性組成物20〜70重量部、増粘剤を1〜10重量部、ゼオライトを30〜80重量部及び水を混練してハニカム形状に押出し、得られたハニカム硬化体を水中に浸漬し、該水中に二酸化炭素を吹き込むことにより、該ハニカム体の表面を炭酸化処理してその表面のpHを6〜10とし、かつ多孔質とした、ハニカム成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム成形体及びその製造方法に関し、特にセメント質等の水硬性組成物を用い、微生物を担持させることが可能なハニカム成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地域環境や地球環境の保護の点から、汚水処理の浄化や汚染された空気の浄化が求められている。
従来より、汚水や空気の浄化にはこれらの汚染物質の吸着材として、ゼオライトや粘土鉱物が用いられており、そのハニカム構造のものも使用されている。
【0003】
例えば、特許第3753429号公報(特許文献1)には、汚泥を、ゼオライト層を通過させることによりストレプトマイセス属に属する放線菌を含む微生物群を有効成分として含む汚泥分解剤と接触させ、前記汚泥の分解を行い、分解した汚泥を固形分と液体分とに分離し、前記液体分から再利用水を生成する工程を含む、汚泥の再利用処理方法において、前記ゼオライト層は積層多層構造を有し、その表面に該汚泥分解剤が付着しており、好気性雰囲気と嫌気性雰囲気との間歇的雰囲気中で分解を行なうことを特徴とする、汚泥の再利用処理方法が開示されている。
【0004】
また、特開2007−63083号公報(特許文献2)には、ゼオライトと、カルシウム成分、シリカ成分からなり、ゼオライトの微細な気孔を保持していることを特徴とする多孔質固化体が、また、特開平05−023528号公報(特許文献3)には、水分吸着特性を有するゼオライト粉末と無機繊維と無機結合剤とを含有する組成物をハニカム状に押出成形し焼成してなる吸着性ハニカム状セラミック体が開示されている。
【0005】
しかし、上記文献では、ゼオライトと微生物との組み合わせが開示されているが、ゼオライトは層状をなしており、汚水や汚染空気を通過させたときの圧損が多い等の欠点がある。
また、ゼオライトのハニカム構造体の場合には、製造時に乾燥工程や焼成工程等が必要となり、製造が煩雑で熱エネルギーの面からも不利になってしまう。
更に、ゼオライトをコロイダルシリカ等で成形し、高温に加熱することはゼオライトが熱変性するおそれがあった。
【0006】
また、セメントを用いたハニカム構造体は、ひび割れ等を発生しやすく、また、ゼオライトの広い比表面積を有効に活用して、微生物が固着できる環境を有する、水硬性組成物を用いたハニカム成形体は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3753429号公報
【特許文献2】特開2007−63083号公報
【特許文献3】特開平05−023528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ひび割れ等がなく、表面の雰囲気は微生物が固着・生息するのに適した弱酸性〜中性〜弱アルカリ性(例えばpH6〜10)環境であり、また多量の微生物が固着できるように多孔質である、水硬性組成物を用いハニカム成形体を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記本発明の水硬性組成物を用いたハニカム成形体を効率用よく、成形性も良好に、かつ簡便に製造することができる、ハニカム成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のハニカム成形体は、水硬性組成物を20〜70重量部、増粘剤を1〜10重量部、ゼオライトを30〜80重量部含み、表面のpHが6〜10でかつ多孔質であることを特徴とする、ハニカム成形体である。
好適には、本発明のハニカム成形体は、前記ハニカム成形体において、該水硬性組成物は水硬性粉体及び、前記水硬性組成物中50重量%以下の非水硬性粉体を含むことを特徴とする、ハニカム成形体である。
【0010】
本発明の上記ハニカム成形体の製造方法は、水硬性組成物20〜70重量部、増粘剤を1〜10重量部、ゼオライトを30〜80重量部及び水を混練してハニカム形状に押出し、得られたハニカム硬化体を水中に浸漬し、該水中に二酸化炭素を吹き込むことにより、該ハニカム体の表面を炭酸化処理してその表面のpHを6〜10とすることを特徴とする、ハニカム成形体の製造方法である。
好適には、本発明の前記ハニカム成形体の製造方法において、ハニカム形状に押出した後、常温で硬化させて、該ハニカム硬化体を得ることを特徴とする、ハニカム成形体の製造方法である。
ここで、本発明において炭酸化とは、ハニカム硬化体に含まれる水酸化カルシウムなどのアルカリ源を二酸化炭素によって消費することで、硬化体のpHを下げることを意味するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハニカム成形体は、優れた多孔質性を有するため、多量に微生物を固着させることができるとともに、薄いセル壁であっても、ひび割れ等がない、成形性が良好なハニカム成形体である。
また本発明のハニカム成形体は、ゼオライトの塊状体や粒状物と比較して、汚水や汚染空気が通過しやすく、またゼオライトが吸着した汚染物質も微生物が分解するため、浄化用材料として長期間の使用が可能となる。
【0012】
本発明のハニカム成形体の製造方法は、上記本発明のハニカム成形体を効率よく簡便に、焼成工程等を必要とすることなく、製造することができる方法である。即ち、水硬性組成物を用いていることにより、常温でも硬化させて簡便にハニカム成形体を得ることができる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一例のハニカム成形体の正面図である。
【図2】本発明の一例のハニカム構造体の斜視図である。
【図3】本発明の一例のハニカム成形体等の細孔径分布を示す、積算容積分布図である。
【図4】本発明の一例のハニカム成形体等の細孔分布を示す、差分細孔容積分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のハニカム成形体及びその製造方法について以下に詳細に説明する。
本発明のハニカム成形体は、水硬性組成物を20〜70重量部、増粘剤を1〜10重量部、ゼオライトを30〜80重量部含み、表面のpHが6〜10でかつ多孔質である、ハニカム成形体である。
【0015】
このような構成により、ハニカム成形体のセル壁の薄さが薄いものでも、ひび割れや欠損を生じることがなく、微生物を多く固着させることができる。また、微生物固着用ハニカム成形体とすることが可能で、汚水や汚染された気相の浄化に用いることができることとなる。
【0016】
本発明のハニカム成形体に用いられる水硬性組成物は、水硬性粉体を含有するものである。
水硬性粉体とは、水と接触して硬化する粉体を意味し、例えばポルトランドセメント、珪酸カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、リン酸カルシウム、半水又は無水石膏及び、自硬性を有する生石灰の粉体からなる群より選ばれた少なくとも一種類の粉体を挙げることができ、セメントを好適に用いることができる。
【0017】
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、高炉スラグセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、特殊セメント等の任意のセメントを例示することができるが、好ましくは、安価な普通ポルトランドセメントを使用できる。
【0018】
前記水硬性粉体の粒径は特に制限されないが、成形時の可使時間並びに得られる成形体の強度の点から、平均粒径10〜50μm程度のものが好ましく、特に20〜40μmのものが好ましい。粒径を大きくすることにより、得られる硬化体の空隙率が大きくなる。また、硬化体の強度を確保する上より、ブレーン比表面積が2500cm/g以上であることが好ましい。
【0019】
上記水硬性組成物には、上記水硬性粉体のほかに、非水硬性粉体を含有してなることもできる。
非水硬性粉体とは、単体では水と接触しても硬化することのない粉体を意味するが、アルカリ性若しくは酸性状態、あるいは高圧蒸気雰囲気においてその成分が溶出し、他の既溶出成分と反応して生成物を形成する粉体も含む意である。
非水硬性粉体としては、二水石膏粉末、炭酸カルシウム、スラグ、フライアッシュ、珪石粉末、粘土粉末、シリカフューム粉末、フュームドシリカ粉末等からなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体を用いることができる。
これらの非水硬性粉体は、ポゾラン反応もしくはマイクロフィラー効果により、強度を
増進する機能を有する。
【0020】
非水硬性粉体の配合割合は、水硬性組成物中50重量%以下であることが好ましい。50重量%以下とすることで安定した水和生成物が得られ、ひび割れや欠けを発生することもなく、寸法安定性に優れることとなるからである。
【0021】
かかる水硬性組成物は、ハニカム成形体中、20〜70重量部含まれ、好ましくは20〜50重量部含まれる。
かかる範囲で水硬性組成物を用いることで、ハニカム成形体がひび割れ等を発生することがなく強度を維持できるとともに該成形体の寸法安定を良好にし、アルカリ源である水硬性組成物の量を一定の範囲として、得られるハニカム成形体のpHを6〜10に容易にし、微生物の固着を可能とすることができる。
水硬性組成物を用いることで、ハニカム体を水のみで、常温で硬化させることができ、硬化させるための、特別な焼成装置等の装置やエネルギーを必要としない。
また、得られるハニカム成形体が水硬性組成物を上記配合割合で硬化体であるため、耐水性があり、例えば微生物を固着した後に、特別な処理をせずとも水中で使用することが可能となる。
【0022】
さらに好ましくは、本発明のハニカム成形体には、必要に応じて、成形改良剤を含むことができる。
当該成形性改良剤は、水硬性組成物を成形する際に、押出成形を利用する場合には、型枠と成形体との滑り性を向上させ、さらに品質を安定化させる作用を有する材料である。
【0023】
かかる成形改良剤としては、例えばタルク(含水珪酸マグネシウム)、マイカ等の無機質板状物質が使用できる。この無機質板状物質は配向性に優れ、成形体表面に滑り性を付与し、ダイスとの抵抗が低減されることにより品質の安定化が図れる。
成形改良剤の配合量は、水硬性組成物100重量部に対して、0〜20重量部とすることが好ましく、5〜10重量部とすることがより好ましい。成形改良剤の配合量が上記範囲より少なすぎる場合には、成形体の滑り性が低下して、成形型枠との抵抗が増大し、成形装置に負担がかかる場合があり、一方、配合量が上記範囲より多くなる場合には、成形品の異方性が大きくなり、機械的強度、寸法安定性等に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0024】
さらに、本発明のハニカム成形体には、公知の配合剤や添加剤、例えば減水材、凝結遅延剤、反応促進剤等の粉体を添加することができ、モルタルの練りあがり性状を施工に好ましい状態にさせることができる。
更には、本発明のハニカム成形体には、公知の補強繊維(パルプ繊維、ポリプロピレン繊維、鋼繊維、炭素繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、麻繊維など)も添加することができ、これにより得られるハニカム成形体の強度を更に向上させることが可能となる。
【0025】
本発明のハニカム成形体に使用されるゼオライトは、天然あるいは合成品のいずれのものも使用することができ、その配合量は、30〜80重量部、好ましくは40〜70重量部である。
ゼオライトは、上記水硬性組成物により、得られるハニカム成形体中で良好に保持され、汚染物質を吸着する作用を有する。
ゼオライトを、ハニカム成形体に上記配合割合で含有させることにより、得られる成形体の表面に細孔を形成して、表面をポーラス状にすることができるとともに、ハニカム成形体にひび割れ等を発生させることなく強度を維持することができる。
また、ゼオライトの多孔質性状により、ハニカム成形体に微生物を多くまた良好に付着させることが可能となるとともに、汚染物質を吸着することが可能となる。
【0026】
また、本発明のハニカム成形体中にゼオライトを含有させることにより、ポゾラン反応による長期強度の増進、水密性の向上などが得られ、またイオン交換によるアルカリ骨材反応の抑制効果も期待できる。
【0027】
また、本発明のハニカム成形体に使用される増粘剤としては、公知のセルロースエーテル、特に水溶性のセルロースエーテルを使用することができ、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等が例示できる。
その配合量は、ハニカム成形体中、1〜10重量部、好ましくは4〜6重量部である。
【0028】
増粘剤の配合量が少なすぎる場合には、押出成形時にハニカム押出体の端部のひび割れ、表面の平滑性等の成形性に悪影響を及ぼし、また多すぎると、硬化後の収縮量の増大等のハニカム成形体の寸法安定性を低下させやすく、好ましくない。
かかる増粘剤は押出成形に使用され、水に溶解することによって粘着性を発現する機能を有し、水硬性粉体、非水硬性粉体の粒子間の結合力を高め、成形後のハニカム成形体の形状維持、保水性の確保に有効な成分である。
従って、特にかかる配合で増粘剤をハニカム成形体に配合することにより、例えば厚みが1mm以下で孔径が7mm以下のハニカム形状の成形体を押出成形する際に、ハニカム表面に亀裂が発生したり、型崩れを発生させることがなく、良好なハニカム成形体を得ることができる。
【0029】
本発明のハニカム成形体は、その表面のpHが6〜10、好ましくは8〜9である。
一般には、セメント等の水硬性組成物を主成分とした成形体の場合には、かかるセメント等の水硬性組成物により強アルカリ性を示すため、得られる成形体に微生物を付着させることは困難であったが、本発明のハニカム成形体はその表面のpHが上記範囲であり、弱アルカリ性〜中性〜弱酸性(pH10〜6)となっているため、微生物を付着させて生存させることが可能となる。
本発明のハニカム成形体に付着させることができる微生物としては、嫌気性微生物、好気性微生物、通性嫌気性微生物等が例示でき、これらの微生物を付着させたハニカム成形体を汚水、汚染された気相と接触させて浄化用成形体として適用することができる。
例えば、固着微生物はストレプトマイセス属その他の放線菌としてストレプトマイセス、その他の放線菌として、サーモアクチノマイセス、グラム陽性菌として、バチルス・サブチルス、アルトロバクター、マイコバクテリウム、グラム陰性菌として、シュードモナス、コマモナス、スフィンゴモナス、アシネトバクター、ニトロソモナス、ニトロバクター、光合成細菌類が例示される。
【0030】
次に本発明のハニカム成形体の製造方法について説明する。
本発明のハニカム成形体の製造方法は、水硬性組成物20〜70重量部、増粘剤を1〜10重量部、ゼオライトを30〜80重量部及び水を混練してハニカム形状に押出し、得られたハニカム硬化体を水中に浸漬し、該水中に二酸化炭素を吹き込むことにより、該ハニカム体の表面を炭酸化処理してその表面のpHを6〜10、好ましくは8〜9とする工程を有するものである。
【0031】
具体的には、上記水硬性組成物、上記増粘剤、上記ゼオライト、必要に応じて上記成形改良剤や補強繊維等の添加材を、前記配合割合で均一に混練して、ハニカム成形体用組成物を調製する。
混練方法に特に限定はなく、上記材料を均一に混合できればよいが、例えばニーダー等を用いて混練することができる。
また、成形時の混合物のハンドリングを良好にするために、混練後、成形する形状に適した大きさに造粒してもよい。造粒方法としては、転動造粒物、圧縮粒粒法、撹拌造粒法等の公知の方法を採用すればよい。
【0032】
ゼオライトを上記配合割合で含むことにより、得られるハニカム成形体の表面を多孔質とすることが可能となる。
次いで、該混練物を押出成形によりハニカム状に押出し、得られたハニカム押出体を養生硬化させる。
押出し方法の一例としては、ニーダー等で混合、混練した上記材料を押出機に投入し、真空ポンプで材料を脱気しながら、押出圧力30〜100kg/cmで、ハニカム形状に押出成形することができる。
【0033】
本発明においては、水硬性組成物を用いていることで、焼成工程を必要とすることなく、常温で、該ハニカム押出体を硬化させることができるものである。
従って、硬化させるための、特別な焼成装置等の装置やエネルギーを必要とせず、簡便に製造することができる。
【0034】
その後、硬化した前記ハニカム硬化体を水中に浸漬させて、二酸化炭素を該水中に吹き込む。
その手段は特に限定されず、二酸化炭素ガスを該水中で十分にエアレーションでき、水中のハニカム体の表面を炭酸化することができれば任意の方法、手段を用いることができる。
これにより、上記水硬性組成物を用いたハニカム成形体の表面のpHが12〜13であったものが、6〜10、好ましくは8〜9となり、弱アルカリ性〜中性〜弱酸性を呈することとなり、微生物の固着が可能となる。
かかる二酸化炭素の吹き込みは、該ハニカム成形体の表面を炭酸化することとなり、上記した微生物の固着、生存を可能とする。
【0035】
本発明のハニカム成形体の製造方法により、詳細は不明ではあるが、二酸化炭素を水中に吹込んで炭酸水溶液中で炭酸化処理をすることで、ゼオライトを表面に多く露出させ、また炭酸水溶液中に溶出したカルシウムが、二酸化炭素と結合して、ハニカム成形体状に新たな多孔質部分を形成し、細孔を増加させることが可能となる。
【0036】
このようにして得られた本発明のハニカム成形体は、比表面積等が大きく優れた多孔質性を有するため、吸着された汚染物質を固着されている微生物が分解することができ、長期の使用が可能となるものである。
【実施例】
【0037】
本発明を次の実施例、比較例及び試験例により説明する。
(原料)
以下の原料を用いて、ハニカム成形体用組成物を調製した。
・普通ポルトランドセメント:住友大阪セメント株式会社製
・天然ゼオライト:株式会社ロッシュ製 モルデナイト系天然ゼオライト
・シリカ粉 :住友大阪セメント株式会社製 珪石粉
・増粘剤 :松本油脂製薬株式会社 マーポローズME−300000
(セルロースエーテル)
・水 :水道水
【0038】
(実施例1〜5、比較例1〜2)
上記各原料を用いて、下記表1に示す配合割合で、ニーダーで混練し、得られた混練物を真空押出成形機(製品名:MV−200、宮崎鉄工株式会社製)にて、図1及び図2のハニカム形状に押出成形した。
【0039】
【表1】

【0040】
得られたハニカム押出体を常温にて7日間、大気中で養生し、硬化させて、ハニカム硬化体を得た。但し、各例において、それぞれ10個のハニカム硬化体を製造した。
ハニカム硬化体は、外寸150×150mm、長さ50mm、セルの大きさ6mm×6mm、リブの厚さ1.5mmとした。
【0041】
得られたハニカム硬化体の成形性についての評価を表2に示す。但し、評価は以下の基準でおこなった。
可 :ハニカム形状がひび割れ等がなく良好に得られた。
不可:成形物の表面にささくれやひび割れが発生し良好な形状を得られなかった。
比較例2のものは、ハニカム硬化体の表面にささくれやひび割れ等が発生し、所望する形状のハニカム成形体を得ることができなかった。
【0042】
また、得られたハニカム硬化体の表面を水で濡らし、pH試験紙(アドバンテック東洋株式会社製 ユニバーサルタイプpH試験紙)をその表面に押し当てて、各ハニカム硬化体のpHを測定した。
その結果も表2に示す。但し、表2中の値は、各例、10個のハニカム硬化体で測定したpHの平均値を表す。
【0043】
得られた上記実施例1〜5および比較例1の各ハニカム硬化体を水温15℃の水中に
24時間浸漬させて、その状態を評価し、表2に示す。
比較例1のハニカム硬化体は、水中で崩壊し、その形状を維持することができなかった。
【0044】
上記各実施例1〜5のハニカム硬化体を水中に浸漬したまま、二酸化炭素ガスを水中に吹き込むことで、ハニカム体の炭酸化をおこなった。
具体的には、75リットルのポリバケツに50リットルの水道水を入れ、上記各実施例1〜5のハニカム体のサンプルをそれぞれ10個を準備して、前記水中に投入し、二酸化炭素ガス(エア・ウォーター炭酸株式会社製の溶接用炭酸ガス(30kgボンベ))を、約0.5リットル/分の流量で1週間吹き込んだ。
【0045】
このようにして炭酸化を行ったハニカム体を水中から取り出して、大気中、常温で乾燥させて、本発明のハニカム成形体1を得た。
得られたハニカム成形体1は、外寸150×150mm、長さ50mm、セル2の大きさ6mm×6mm、リブ3の厚さ1.5mmであった。
【0046】
得られたハニカム成形体の表面を水で濡らし、pH試験紙(アドバンテック東洋株式会社製 ユニバーサルタイプpH試験紙)をその表面に押し当てて、各ハニカム成形体のpHを測定した。
その結果を表2に示す。但し、表2中の値は、各例、10個のハニカム成形体で測定したpHの平均値を表す。
【0047】
【表2】

【0048】
(比較例3〜7)
実施例1〜5と同様にして、それぞれハニカム硬化体を製造した。但し、各例において、10個のハニカム硬化体を製造した。
得られた各ハニカム硬化体を、気中で二酸化炭素ガスにさらすことで、各ハニカム硬化体の炭酸化をおこなった。
具体的には、100リットルのテドラーバッグに、霧吹きで表面を軽く水湿しした上記各ハニカム硬化体を入れ、バッグを軽く押さえて内部の空気を抜いたのち、注入口からバッグが軽く膨らむ程度に二酸化炭素ガス(エア・ウォーター炭酸株式会社製の溶接用炭酸ガス(30kgボンベ))を充填し、注入口を閉じた。
3分経過した付近より、各ハニカム硬化体の表面に白華が目視確認され、該各ハニカム硬化体の温度が約60℃まで上昇した。該温度はエーアンドデー社製の赤外線放射温度計AD−5611Aにより測定した。
その後、更に1〜3分経過後、ハニカム硬化体の表面にひび割れ(クラック)が多数発生する現象が確認された。
【0049】
上記ゼオライト粉末(株式会社ロッシュ製 モルデナイト系天然ゼオライト)、実施例1の炭酸化処理前のハニカム硬化体、及び、実施例1の炭酸化処理後の本発明のハニカム成形体の細孔径分布測定をおこない、その結果を図3及び図4に示す。
但し、細孔径分布測定は、MICROMERITICS社製のAUTOPORE II9220を使用し、JIS R 1655:2003「ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布試験方法」に準じて、水銀圧入法により測定した。水銀と各ハニカム体の接触角を130度、水銀の表面張力を485dyn/cmとして、細孔径を算出した。
【0050】
図3は、細孔径(μm)と積算細孔容積値(ml/g)の関係示す、積算容積分布を表した図、図4は、細孔径(μm)と、細孔容積の差分値(ml/g)の関係示す、差分細孔容積分布を表した図である。
【0051】
図3及び図4より、本発明のハニカム成形体は炭酸化処理を行っているため、0.1μm以下に主要な細孔径のピークを有した炭酸化処理前のハニカム硬化体が、炭酸化処理後にはゼオライト自身が持つ細孔径のピーク付近にも細孔を有するようになることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のハニカム成形体は、特に微生物固着用の汚染物質浄化材料として好適に適用され、また、汚水処理、汚染空気の浄化に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ハニカム成形体
2 セル
3 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性組成物を20〜70重量部、増粘剤を1〜10重量部、ゼオライトを30〜80重量部含み、表面のpHが6〜10でかつ多孔質であることを特徴とする、ハニカム成形体。
【請求項2】
請求項1記載のハニカム成形体において、水硬性組成物は水硬性粉体及び、前記水硬性組成物中50重量%以下の非水硬性粉体を含むことを特徴とする、ハニカム成形体。
【請求項3】
水硬性組成物20〜70重量部、増粘剤を1〜10重量部、ゼオライトを30〜80重量部及び水を混練してハニカム形状に押出し、得られたハニカム硬化体を水中に浸漬し、該水中に二酸化炭素を吹き込むことにより、該ハニカム体の表面を炭酸化処理してその表面のpHを6〜10とすることを特徴とする、ハニカム成形体の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のハニカム成形体の製造方法において、ハニカム形状に押出した後、常温で硬化させて、該ハニカム硬化体を得ることを特徴とする、ハニカム成形体の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−254488(P2010−254488A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103441(P2009−103441)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(502411942)株式会社ロッシュ (2)
【出願人】(509110286)
【Fターム(参考)】