ハニカム構造体、及びハニカム触媒体
【課題】排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いられるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】セル2を区画形成する隔壁1に、気孔径が14μm未満の小気孔16と、気孔径が14μm以上の大気孔15と、が形成され、隔壁1の気孔率が50〜70%であり、且つ、隔壁1の大気孔15の気孔率が30%以上であり、大気孔15の総容積に対する、小気孔16の総容積の比率が20%以上であり、隔壁1の気孔径分布を示すグラフにおいて、大気孔15の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmであり、且つ、小気孔16の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmであり、更に、大気孔15の気孔率の値(%)を、隔壁1の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上であるハニカム構造体100。
【解決手段】セル2を区画形成する隔壁1に、気孔径が14μm未満の小気孔16と、気孔径が14μm以上の大気孔15と、が形成され、隔壁1の気孔率が50〜70%であり、且つ、隔壁1の大気孔15の気孔率が30%以上であり、大気孔15の総容積に対する、小気孔16の総容積の比率が20%以上であり、隔壁1の気孔径分布を示すグラフにおいて、大気孔15の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmであり、且つ、小気孔16の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmであり、更に、大気孔15の気孔率の値(%)を、隔壁1の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上であるハニカム構造体100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体、及びハニカム触媒体に関する。更に詳しくは、排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いられるハニカム構造体、及びこのようなハニカム構造体に触媒を担持したハニカム触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、窒素酸化物(NOX)が含まれている。地球環境影響等の観点から、排ガスに含まれる窒素酸化物の浄化が求められている。例えば、窒素酸化物(NOX)の浄化には、SCR触媒を用いた浄化方法が有効である。このため、エンジン等から排出される排ガスの浄化(具体的には、排ガスに含まれる窒素酸化物の浄化)に、SCR触媒が広く使用されている。「SCR」とは、「Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元」の略である。「SCR触媒」とは、還元反応によって被浄化成分を選択還元する触媒のことを意味する。特に、SCR触媒としては、窒素酸化物を選択還元する触媒を挙げることができる。
【0003】
SCR触媒を排ガスの浄化に使用する際には、SCR触媒が触媒担体に担持されて、触媒体として用いられることがある。触媒担体としては、例えば、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を備えたハニカム構造体を挙げることができる。このようなハニカム構造体の隔壁に触媒を担持することを、触媒コートということがある。
【0004】
このようなハニカム触媒体を備えたガス処理装置として、例えば、流通基材と複合触媒を含むガス処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。上記流通基材は、入口軸端、出口軸端、入口軸端から出口軸端までの間で伸びる長さを有する壁要素、及び該壁要素によって規定され、軸方向に囲まれ、端部が開放されている複数の通路を有するものである。即ち、上記流通基材が、上述したハニカム構造体となる。複合触媒は、平均粒子径が約3ミクロンを超える粒子を含み、実質的に壁要素内に堆積したワッシュコートの状態のものである。特許文献1のガス処理装置は、壁要素の表面の平均粗さが、壁内に触媒を積載する前から実質的に変化しないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−516466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
窒素酸化物等の浄化を行うためのSCR触媒においては、そのSCR触媒の量が浄化性能に非常に大きな影響を与える。このため、SCR触媒による浄化性能を高めるためには、多量の触媒が必要となる。例えば、ハニカム構造体の隔壁にSCR触媒を担持したハニカム触媒体においては、多量の触媒コートが必要である。しかしながら、多量の触媒コートを行うと、ハニカム触媒体の圧損が増加してしまうという問題があった。
【0007】
また、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持したハニカム触媒体においては、触媒コートによる層の厚みによってセルの開口面積が減少して、ハニカム構造体の開口率が減少する。このため、更に、圧損の増加を招くという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献1には、隔壁の気孔に触媒を充填する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、十分な量の触媒を、隔壁の気孔内に充填することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いられるハニカム構造体、及びこのようなハニカム構造体に触媒を担持したハニカム触媒体を提供する。特に、ハニカム触媒体に熱が加えられた際に、触媒が活性化する温度まで素早く昇温するハニカム触媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体、及びハニカム触媒体が提供される。
【0011】
[1] 一方の端面から他方の端面に延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記隔壁には、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、一の分布を示し且つその気孔径が14μm未満の小気孔と、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、他の分布を示し且つその気孔径が14μm以上の大気孔と、が形成され、前記隔壁の気孔率が、50〜70%であり、且つ、前記隔壁の前記大気孔の気孔率が30%以上であり、前記隔壁に形成された前記大気孔の総容積に対する、前記隔壁に形成された前記小気孔の総容積の比率が20%以上であり、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、前記大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmであり、前記隔壁の前記気孔径分布を示す前記グラフにおいて、前記小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmであり、前記大気孔の気孔率の値(%)を、前記隔壁の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上であるハニカム構造体。
【0012】
[2] 前記隔壁の厚さが、50.8〜254μmである前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[3] 前記ハニカム構造体のセル密度が、15.5〜108.5個/cm2である前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0014】
[4] 前記隔壁の材質が、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、及びムライトからなる群より選択される少なくとも一種を含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体と、被浄化成分を選択還元するSCR触媒と、を備えたハニカム触媒体。
【0016】
[6] 前記SCR触媒が、窒素酸化物を選択還元する触媒である前記[5]に記載のハニカム触媒体。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体は、一方の端面から他方の端面に延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたものである。隔壁には、その隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、一の分布を示し且つその気孔径が14μm未満の小気孔と、上記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、他の分布を示し且つその気孔径が14μm以上の大気孔と、が形成されている。即ち、上記隔壁には、大きく分けて、大きさの異なる2種類の気孔が形成されている。本発明のハニカム構造体においては、隔壁の気孔率が、50〜70%であり、且つ、隔壁の大気孔の気孔率が30%以上である。また、隔壁に形成された大気孔の総容積に対する、隔壁に形成された小気孔の総容積の比率が20%以上である。また、隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmである。また、隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmである。更に、大気孔の気孔率の値(%)を、隔壁の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上である。
【0018】
本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いることができる。ハニカム構造体を上記構成とすることにより、隔壁の気孔内に、多くの触媒を充填することができる。
【0019】
例えば、触媒担体としてのハニカム構造体に、触媒を担持する際には、触媒成分を含む触媒スラリーを触媒コートすることによって行われる。本発明のハニカム構造体においては、触媒スラリーが大気孔に導入された際に、触媒スラリー中の水分が、小気孔によって吸収される。これにより、隔壁の大気孔内が、触媒スラリー中の固形成分、換言すれば、触媒成分によって、より多く満たされることとなる。
【0020】
また、隔壁の気孔径分布を示すグラフにおける、各気孔の最大ピーク値における気孔径を上記数値範囲とすることで、触媒スラリー中の水分の吸収を促進することができる。即ち、小気孔の気孔径を小さくすることで、毛細管現象により水分を吸収し易くすることができる。また、大気孔の気孔径を大きくすることで、固形成分を含む触媒スラリーが、大気孔により進入し易くなる。更に、大気孔の気孔率の値(%)を、隔壁の厚さの値(μm)で除した値を0.2以上とすることで、大気孔が連なって形成され易くなる。即ち、大気孔が連なって連続的に形成されることにより、連続した大気孔の一部が、隔壁の表面にて開口部を形成し、上記触媒スラリーの導入を促進することができる。
【0021】
また、本発明のハニカム触媒体は、上述した本発明のハニカム構造体に触媒を担持した触媒担持体である。本発明のハニカム構造体を触媒担体として用いているため、隔壁の気孔内に、より多くの触媒が充填されている。このため、本発明のハニカム触媒体によれば、良好な浄化性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図4】図3中のAに示す領域を拡大した模式図である。
【図5】図4の一部を更に拡大した模式図である。
【図6】図5に示す隔壁の気孔内に触媒スラリーを充填する状態を示す模式図である。
【図7】図5に示す隔壁の気孔内に触媒スラリーを充填する状態を示す模式図である。
【図8】本発明のハニカム構造体の一実施形態における、隔壁の気孔径分布の一例を示すグラフである。
【図9】本発明のハニカム構造体の一実施形態における、累積気孔率と気孔径との関係を示すグラフである。
【図10】本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図11】本発明のハニカム触媒体の一実施形態の一方の端面側を模式的に示す平面図である。
【図12】本発明のハニカム触媒体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図13】図12中のB−B’断面を模式的に示す断面図である。
【図14】図12中のCに示す領域を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0024】
(1)ハニカム構造体:
まず、本発明のハニカム構造体の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体は、図1〜図5に示すようなハニカム構造体100である。本実施形態のハニカム構造体100は、一方の端面11から他方の端面12に延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を備えたものである。隔壁1には、大気孔15と小気孔16とが形成されている。図1〜図3に示すハニカム構造体100は、最外周に位置する外周壁3を更に備えたものである。ハニカム構造体100は、上記隔壁1及び外周壁3を備えた筒状のものである。
【0025】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を模式的に示す平面図である。図3は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。図4は、図3中のAに示す領域を拡大した模式図である。図5は、図4の一部を更に拡大した模式図である。
【0026】
本実施形態のハニカム構造体100は、排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いることができる。本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の大気孔15内に、多くの触媒を充填することができる。以下、本実施形態のハニカム構造体100の構成を説明しつつ、隔壁1の大気孔15内に、多くの触媒を充填することができる理由についても説明する。
【0027】
本実施形態のハニカム構造体100の隔壁1には、大きく分けて、大きさの異なる2種類の気孔14が形成されている。即ち、隔壁1には、気孔径の小さい「小気孔16」と、小気孔16よりも気孔径の大きな「大気孔15」とが形成されている。小気孔16は、気孔径が14μm未満の気孔である。小気孔16は、隔壁1の気孔径分布を示すグラフにおいて、一の分布を示すものである。大気孔15は、気孔径が14μm以上の気孔である。大気孔15は、隔壁1の気孔径分布を示すグラフにおいて、上記一の分布とは異なる他の分布を示すものである。
【0028】
例えば、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の気孔径分布をグラフに示した場合に、図8に示すような、二峰性分布を示すグラフとなる。ここで、図8は、本発明のハニカム構造体の一実施形態における、隔壁の気孔径分布の一例を示すグラフである。気孔径分布は、細孔径分布とも称される。気孔径分布は、水銀圧入法によって測定することができる。
【0029】
本発明における気孔径分布とは、水銀圧入法により測定された隔壁の気孔径を常用対数で示したときの気孔径分布のことである。例えば、横軸を気孔径(常用対数:μm)とし、縦軸をlog微分気孔容積(cc/g)としたグラフにより示すことができる。
【0030】
図8に示す気孔径分布において、気孔径が小さい側にピークを持つ分布が、小気孔を示す分布である。一方、図8に示す気孔径分布において、気孔径が大きい側にピークを持つ分布が、大気孔を示す分布である。
【0031】
図5に示すように、本実施形態のハニカム構造体100においては、小気孔16が隔壁1の全域に形成されている。そして、この小気孔16が形成された隔壁1に対して、気孔径がより大きな大気孔15が更に形成されている。即ち、本実施形態のハニカム構造体100においては、大気孔15の周りを、小気孔16が形成された領域が囲むような細孔構造を有している。この細孔構造は、別言すれば、気孔径が極めて小さい微細孔(即ち、気孔径が14μm未満の小気孔)が形成された隔壁の基材中に、上記微細孔と比較して気孔径が明らかに大きな大気孔が形成された構造ということができる。
【0032】
例えば、触媒担体としてのハニカム構造体に、触媒を担持する際には、触媒成分を含む触媒スラリーを触媒コートすることによって行われる。図6に示すように、本実施形態のハニカム構造体においては、触媒スラリー21が大気孔15に導入された際に、触媒スラリー21中の水分22が、小気孔16によって吸収される。これにより、図7に示すように、隔壁1の大気孔15内が、触媒スラリー21中の固形成分23、換言すれば、触媒成分によって、より多く満たされることとなる。
【0033】
ここで、図6及び図7は、図5に示す隔壁の気孔内に触媒スラリーを充填する状態を示す模式図である。図6においては、符号22に示す矢印により、触媒スラリー21中の水分22が小気孔16に吸収される状態を示している。触媒スラリー21中の固形成分23が、乾燥又は焼成されて、触媒となる。触媒スラリー21中の固形成分23が、隔壁1の表面に堆積して、触媒の層を形成することもある。隔壁の気孔の内部に触媒を充填すること、及び、隔壁の表面に触媒を配設することを総称して、「隔壁に触媒を担持する」ということがある。
【0034】
図1〜図7に示すような本実施形態のハニカム構造体100においては、大気孔15内に、多くの量の触媒スラリー21を導入することができる。更に、大気孔15の周りに形成された小気孔16の毛細管現象によって、大気孔15内の触媒スラリー21中の水分が、小気孔16が形成された領域へと吸収される。
【0035】
図1〜図5に示すような本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の気孔率が、50〜70%である。また、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の大気孔15の気孔率が30%以上である。各気孔率は、水銀圧入方法によって測定された値である。例えば、隔壁1の気孔率は、水銀ポロシメータで測定することができる。水銀ポロシメータとしては、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500を挙げることができる。
【0036】
「隔壁1の気孔率」とは、隔壁1に形成された小気孔16及び大気孔15の全てを含む気孔14の容積から求められる気孔率のことを意味する。「隔壁1の大気孔15の気孔率」とは、隔壁1に形成された大気孔15の容積から求められる気孔率のことを意味する。本発明においては、水銀ポロシメータによって、全ての気孔径の気孔を対象として測定された気孔率を「隔壁の気孔率」とする。また、本発明においては、水銀ポロシメータによって、14μm以上の気孔径の気孔を対象として測定された気孔率を「隔壁の大気孔の気孔率」とする。
【0037】
更に、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1に形成された大気孔15の総容積に対する、隔壁1に形成された小気孔16の総容積の比率が20%以上である。大気孔15の総容積、及び小気孔16の総容積は、水銀圧入方法によって測定された値である。水銀ポロシメータとしては、気孔率の測定に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0038】
本発明においては、水銀ポロシメータによって、14μm以上の気孔径の気孔を対象とした測定された気孔容積の総和を「大気孔15の総容積」とする。また、本発明においては、水銀ポロシメータによって、14μm未満の気孔径の気孔を対象とした測定された気孔容積の総和を「小気孔16の総容積」とする。「大気孔15の総容積」及び「小気孔16の総容積」を総称して、単に「気孔の総容積」ということがある。また、「隔壁に形成された大気孔の総容積に対する、隔壁に形成された小気孔の総容積の比率」のことを、単に「気孔の総容積の比率」ということがある。
【0039】
「隔壁1の大気孔15の気孔率」及び「大気孔15の総容積」を、上記数値範囲とすることにより、大気孔15内に、十分な量の触媒スラリーを導入することができる。これにより、ハニカム構造体100を触媒担体としたハニカム触媒体において、高い浄化性能を実現することができる。
【0040】
更に、「隔壁1の気孔率」及び「小気孔16の総容積」を、上記数値範囲とすることで、触媒スラリーの導入時において、小気孔により、大気孔15内の触媒スラリー中の水分を良好に吸収(換言すれば、排出)することができる。触媒スラリー中の水分を良好に吸収することで、大気孔15内への触媒スラリーの導入がより促進され、最終的に大気孔15内に残る触媒成分がより多くなる。
【0041】
また、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の気孔径分布を示すグラフ(例えば、図8参照)において、大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmである。また、上記隔壁1の気孔径分布を示すグラフにおいて、小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmである。
【0042】
「大気孔の分布」とは、二峰性分布を示す気孔径分布のうち、気孔径がより大きい側の分布(換言すれば、二山の分布のうちの気孔径がより大きい側の分布)のことを意味する。「小気孔の分布」とは、二峰性分布を示す気孔径分布のうち、気孔径がより小さい側の分布(換言すれば、二山の分布のうちの気孔径がより小さい側の分布)のことを意味する。
【0043】
「大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値」は、二峰性分布を示す気孔径分布のうち、気孔径がより大きい側の分布において、気孔容積が最大値を示す分布の頂点の値のことを意味する。「小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値」は、二峰性分布を示す気孔径分布のうち、気孔径がより小さい側の分布において、気孔容積が最大値を示す分布の頂点の値のことを意味する。
【0044】
「最大ピーク値における気孔径」とは、気孔容積が最大値を示す分布の頂点における、気孔径の値のことを意味する。即ち、横軸を気孔径とし、縦軸をlog微分気孔容積とした気孔径分布を示すグラフの、log微分気孔容積が最大値を示す分布の頂点における、気孔径の値のことを意味する。以下、「大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径」のことを、「大気孔の最大ピーク値の気孔径」ということがある。また、「小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径」のことを、「小気孔の最大ピーク値の気孔径」ということがある。
【0045】
各気孔の最大ピーク値における気孔径を上記数値範囲とすることで、触媒スラリー中の水分の吸収を促進することができる。即ち、小気孔の気孔径を小さくすることで、毛細管現象により水分を吸収し易くすることができる。また、大気孔の気孔径を大きくすることで、固形成分を含む触媒スラリーが、大気孔により進入し易くなる。
【0046】
更に、本実施形態のハニカム構造体100においては、大気孔15の気孔率の値(%)を、隔壁の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上である。即ち、大気孔15の気孔率の値を「P(%)」、隔壁の厚さの値を「t(μm)」とした場合に、「P/t」の値が、0.2以上である。このように構成することによって、ハニカム構造体100の隔壁1に、大気孔15が連なって形成され易くなる。例えば、図4に示すような、球状或いは楕円体状を呈する複数個の大気孔15が、互いに重なり合うようにして、隔壁1中に形成され易くなる。これにより、複数個の大気孔15の連続性が確保され、一の大気孔15内に導入された触媒スラリーが、大気孔15相互間で移動し、他の大気孔15内へと導入される。その結果、隔壁1の厚さ方向の中央付近に形成されている大気孔15内にも、触媒スラリーが良好に導入されるようになる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の大気孔15内に、多くの触媒を充填することができる。即ち、本実施形態のハニカム構造体100においては、これまでに説明した気孔の総容積の比率等の各構成により奏されるそれぞれの効果が相俟って、気孔14内に多くの触媒を充填することが可能となる。本実施形態のハニカム構造体100を触媒担体としたハニカム触媒体において、高い浄化性能を実現することができる。
【0048】
なお、本実施形態のハニカム構造体は、累積気孔率と気孔径との関係を示すグラフにおいて、以下のような関係を示すものである。ここで、図9は、本発明のハニカム構造体の一実施形態における、累積気孔率と気孔径との関係を示すグラフである。図9のグラフにおいて、横軸が、気孔径(μm)を示す。図9のグラフにおいて、縦軸が、累積気孔率(%)を示す。図9のグラフにおいて、縦軸の「ε1」が、「隔壁の小気孔の気孔率」となる。図9のグラフにおいて、縦軸の「ε2」が、「隔壁の気孔率」となる。従って、「ε2−ε1」の値が、「隔壁の大気孔の気孔率」となる。図9において、累積気孔率及び気孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。
【0049】
本実施形態のハニカム構造体は、図9に示すグラフより、以下の式(1)〜(3)の関係を満たすものである。
50%≦ε2≦70% ・・・ (1)
30%≦ε2−ε1 ・・・ (2)
20%≦ε1/(ε2−ε1) ・・・ (3)
【0050】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の気孔率が、50〜70%であるが、隔壁の気孔率が、55〜65%であることが好ましく、60〜65%であることが更に好ましい。隔壁の気孔率が高すぎると、ハニカム構造体の強度が低下することがある。一方、隔壁の気孔率が低すぎると、触媒を充填可能な気孔の容積が極めて少なくなってしまう。特に、窒素酸化物等の浄化を行うためのSCR触媒においては、SCR触媒の量が浄化性能に非常に大きな影響を与える。隔壁の気孔率が低すぎると、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持した際に、十分な浄化性能を実現することが困難になる。
【0051】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の大気孔の気孔率が30%以上である。本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の大気孔の気孔率が、35〜45%であることが好ましく、35〜40%であることが更に好ましい。隔壁の大気孔の気孔率が低すぎると、大気孔内に充填可能な触媒の量が極めて少なくなる。例えば、触媒スラリーの触媒成分が充填され難い小気孔が多く形成されていても、良好な触媒スラリーの導入は困難である。なお、隔壁の大気孔の気孔率の上限値については、気孔の総容積の比率によって特定することができる。
【0052】
本実施形態のハニカム構造体においては、大気孔の総容積に対する、小気孔の総容積の比率が20%以上である。本実施形態のハニカム構造体においては、大気孔の総容積に対する、小気孔の総容積の比率が20〜50%であることが好ましく、25〜40%であることが更に好ましい。上述した気孔の総容積の比率が低すぎると、大気孔内から、触媒スラリー中の水分を排出する流路が少なくなる。このため、大気孔内への触媒スラリーの導入が促進され難くなる。
【0053】
本実施形態のハニカム構造体においては、気孔径が14μm以上の気孔を大気孔とする。そして、その大気孔の最大ピーク値の気孔径が、20〜200μmである。本実施形態のハニカム構造体においては、上記大気孔の最大ピーク値の気孔径が、25〜150μmであることが好ましく、30〜120μmであることが更に好ましい。大気孔の最大ピーク値の気孔径が大きすぎると、以下のような問題を生じることがある。ハニカム構造体の隔壁に触媒スラリーをコートする際には、触媒スラリーをコートした後に、余剰のスラリーをエアーで吹き飛ばすことが行われる。大気孔の最大ピーク値の気孔径が大きすぎると、余剰のスラリーをエアーで吹き飛ばす工程において、大気孔内に導入された触媒スラリーまで吹き飛ばされてしまうことがある。このため、かえって大気孔への触媒の充填率が低下してしまうことがある。一方、大気孔の最大ピーク値の気孔径が小さすぎると、触媒スラリーが大気孔に進入し難くなる。また、大気孔の気孔径は、隔壁の平均気孔径の1.5倍以上であることが好ましい。
【0054】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、気孔径が14μm未満の気孔を小気孔とする。そして、その小気孔の最大ピーク値の気孔径が、0.1〜8μmである。本実施形態のハニカム構造体においては、上記小気孔の最大ピーク値の気孔径が、0.5〜6μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることが更に好ましい。上述した数値範囲の気孔径とすることで、小気孔の毛細管現象により、触媒スラリー中の水分を良好に吸収することができる。また、小気孔の気孔径は、隔壁の平均気孔径の1.5分の1以下であることが好ましい。
【0055】
本実施形態のハニカム構造体においては、大気孔の気孔率の値P(%)を、隔壁の厚さの値t(μm)で除した値「P/t」が、0.2以上である。本実施形態のハニカム構造体においては、上記「P/tの値」が、0.25〜0.7であることが好ましく、0.3〜0.7であることが更に好ましい。上記「P/tの値」が0.2未満であると、隔壁中に、大気孔が単独で形成され易くなる。即ち、複数個の大気孔に対する連続性が得られ難い。例えば、小気孔を経由して隔壁の表面と通じているような大気孔には、触媒スラリーが導入され難い。一方、隔壁の表面に開口部を有する大気孔には、触媒スラリーが良好に導入される。このような隔壁の表面に開口部を有する大気孔から、複数個の大気孔が連続して形成されることで、大気孔同士を経由して、各大気孔内に触媒スラリーが導入されることとなる。これにより、大気孔内への触媒スラリーの導入が促進される。「P/tの値」の上限値については、0.7であることが好ましい。「P/tの値」が0.7を超えると、上述した余剰のスラリーをエアーで吹き飛ばす工程において、大気孔内に導入された触媒スラリーまで吹き飛ばされてしまうことがある。このため、「P/tの値」が0.7を超えると、かえって大気孔への触媒の充填率が低下してしまうことがある。
【0056】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の厚さが、50.8〜254μmであることが好ましく、50.8〜150μmであることが更に好ましく、50.8〜125μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さを上記数値範囲とすることにより、ハニカム構造体の隔壁に、上記大気孔と小気孔とを良好に形成することができる。また、隔壁の強度を維持しつつ、圧損を低減することもできる。
【0057】
「隔壁の厚さ」とは、ハニカム構造体をセルの延びる方向に垂直に切断した断面における、隣接する二つのセルを区画する壁(隔壁)の厚さのことを意味する。「隔壁の厚さ」は、例えば、画像解析装置(ニコン社製、商品名「NEXIV、VMR−1515」)によって測定することができる。
【0058】
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム構造体のセル密度が、15.5〜108.5個/cm2であることが好ましい。セル密度を上記数値範囲とすることで、圧損の増大を有効に防止することができる。また、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持した際に、高い浄化性能を得ることができる。ハニカム構造体のセル密度とは、セルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数のことを意味する。ハニカム構造体のセル密度が、46.5〜77.5個/cm2であることが更に好ましく、46.5〜70個/cm2であることが特に好ましい。
【0059】
また、ハニカム構造体の隔壁の材質が、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、及びムライトからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。特に、ハニカム構造体の隔壁が、上記群より選択される少なくとも一種を主成分として含むものであることがより好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の熱膨張を小さくし、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。主成分以外の成分としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ガラス等を挙げることができる。
【0060】
本明細書において、「主成分」とは、その構成材料中に含まれる成分が90質量%以上の成分のことを意味する。隔壁が、上記群より選択される少なくとも一種を、95質量%以上含む材料からなることが更に好ましく、98質量%以上含む材料からなることが特に好ましい。
【0061】
ハニカム構造体の形状については特に制限はない。例えば、ハニカム構造体の形状としては、ハニカム構造体の端面が円形の筒状(円筒形状)、上記端面がオーバル形状の筒状、上記端面が多角形の筒状の形状を挙げることができる。多角形としては、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等を挙げることができる。図1〜図4においては、ハニカム構造体の形状が、端面が円形の筒状である場合の例を示す。
【0062】
セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状としては、四角形、六角形、八角形、円形、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。四角形の中でも、正方形、長方形が好ましい。
【0063】
図1に示すハニカム構造体100は、最外周に位置する外周壁3を更に備えたものである。本実施形態のハニカム構造体100は、このような外周壁3を有していないものであってもよい。外周壁3は、ハニカム構造体100を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁1とともに形成されたものであってもよい。また、押出成形時には外周壁を形成しなくともよい。例えば、セル2を区画形成する隔壁1の外周部分に、セラミック材料を塗工して外周壁3を形成することもできる。
【0064】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法としては、坏土調製工程と、成形工程と、焼成工程と、を備えた製造方法を挙げることができる。
【0065】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、上記坏土調製工程において、成形原料に添加する造孔材の粒子径を調整する。このように構成することによって、隔壁に大気孔と小気孔とが形成された本実施形態のハニカム構造体を製造することができる。以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法を、各工程毎に説明する。
【0066】
(2−1)坏土調製工程:
まず、本実施形態のハニカム構造体を製造する際には、セラミック原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る(坏土調製工程)。セラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、及びムライト等を用いることができる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0067】
また、成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、造孔材、有機バインダ、無機バインダ、界面活性剤等を更に混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0068】
本実施形態のハニカム構造体を製造する際には、例えば、以下のような方法により、隔壁に、大気孔と小気孔との2種類の気孔を形成することが好ましい。小気孔を形成する方法としては、まず、上記セラミック原料として、粒子径の小さい細かい粒子を用いて、セラミック原料自体により形成される気孔を極力小さくする。セラミック原料としては、セラミック原料自体によって形成される気孔の気孔率が5%以下となるような原料であることが好ましい。
【0069】
そして、粒子径が小さく、且つ粒子径の揃った小気孔用の造孔材を、上記成形原料に加える。このようにして、隔壁に小気孔を形成することができる。小気孔用の造孔材は、坏土を成形した成形体を焼成した際に、本実施形態のハニカム構造体における小気孔を形成し得るものとする。
【0070】
小気孔用の造孔材の粒子径は、得られるハニカム構造体における小気孔の気孔径に応じて適宜選択することができる。また、小気孔用の造孔材の添加量は、得られるハニカム構造体における小気孔の気孔率等に応じて適宜選択することができる。小気孔用の造孔材は、粒径が比較的に揃ったものであることが好ましい。例えば、小気孔用の造孔材は、粒子径分布がシャープな分布となるものであることが好ましい。
【0071】
大気孔を形成する方法としては、小気孔用の造孔材とは別に、大気孔を形成するための大気孔用の造孔材を、成形原料に加える方法を挙げることができる。このようにして、隔壁に大気孔を形成することができる。大気孔用の造孔材は、坏土を成形した成形体を焼成した際に、本実施形態のハニカム構造体における大気孔を形成し得るものとする。大気孔用の造孔材の粒子径は、得られるハニカム構造体における大気孔の気孔径に応じて適宜選択することができる。例えば、平均粒子径が20μm以上の造孔材を用いることが好ましい。大気孔用の造孔材としては、樹脂粒子、カーボン、デンプン等を挙げることができる。また、大気孔用の造孔材の添加量は、得られるハニカム構造体における大気孔の気孔率等に応じて適宜選択することができる。
【0072】
分散媒としては、水を用いることができる。分散媒の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。
【0073】
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、有機バインダの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、3〜8質量部が好ましい。
【0074】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.2〜0.5質量部が好ましい。
【0075】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0076】
(2−2)成形工程:
次に、得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を得る(成形工程)。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はない。ハニカム成形体を形成する方法として、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を挙げることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0077】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の筒形状等が好ましい。
【0078】
(2−3)焼成工程:
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体を得る(焼成工程)。これまでに説明したように、本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、2種類の造孔材を坏土に加えることにより、大気孔と小気孔とが隔壁に形成されたハニカム構造体を製造することができる。
【0079】
乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
【0080】
ハニカム成形体を焼成する前には、このハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼は、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)の少なくとも一部を除去することができるものであればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度である。このため、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度の温度で、10〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0081】
ハニカム成形体の焼成は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化するためのものである。このような焼成により、隔壁が所定の強度を有するものとなる。焼成条件については、成形原料の種類により適宜選択することができる。即ち、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等は、成形原料の種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度が1350〜1440℃であることが好ましい。また、焼成時間としては、最高温度でのキープ時間が3〜10時間であることが好ましい。仮焼、本焼成を行う装置については、特に制限はない。仮焼、本焼成を行う装置としては、例えば、電気炉、ガス炉等を挙げることができる。
【0082】
(3)ハニカム触媒体:
次に、本発明のハニカム触媒体の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム触媒体は、図10〜図14に示すようなハニカム触媒体200である。本実施形態のハニカム触媒体200は、これまでに説明した本発明のハニカム構造体100と、被浄化成分を選択還元するSCR触媒60と、を備えたものである。ハニカム構造体100は、ハニカム触媒体200における触媒担体である。
【0083】
ここで、図10は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図11は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態の一方の端面側を模式的に示す平面図である。図12は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。図13は、図12中のB−B’断面を模式的に示す断面図である。図14は、図12中のCに示す領域を拡大した模式図である。
【0084】
ハニカム構造体100は、一方の端面11から他方の端面12に延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するものである。図10〜図13に示すハニカム構造体100は、最外周に位置する外周壁3を更に備えたものである。ハニカム構造体100は、上記隔壁1及び外周壁3を備えた筒状のものである。ハニカム構造体100の構成については、本発明のハニカム構造体の実施形態にて説明した通りである。
【0085】
図10〜図14に示す本実施形態のハニカム触媒体200においては、ハニカム構造体100の隔壁1に形成された気孔14内に、SCR触媒60が充填されている。特に、隔壁1に形成された大気孔15内に、SCR触媒60が多く充填されている。勿論、隔壁1に形成された小気孔16内にも、SCR触媒60が充填されていてもよい。また、図示は省略するが、SCR触媒60が、隔壁1の表面に配置されていてもよい。以下、「隔壁1の気孔14内にSCR触媒60が充填されていること」、及び「隔壁1の表面にSCR触媒60が配設されていること」を総称して、「隔壁1にSCR触媒60が担持されている」ということがある。
【0086】
SCR触媒は、被浄化成分を選択還元する触媒である。特に、本実施形態のハニカム触媒体においては、SCR触媒が、排ガス中の窒素酸化物(NOX)を選択還元するNOX選択還元用SCR触媒であることが好ましい。NOX選択還元用SCR触媒としては、ディーゼルエンジンの排ガス中のNOXを選択還元して浄化する触媒を好適例として挙げることができる。
【0087】
SCR触媒としては、金属置換されたゼオライトを挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、鉄(Fe)、銅(Cu)を挙げることができる。ゼオライトとしては、ベータゼオライトを好適例として挙げることができる。
【0088】
また、SCR触媒が、バナジウム、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種を主たる成分として含有する触媒であってもよい。SCR触媒中のバナジウム、及びチタニアの含有量は、60質量%以上であることが好ましい。
【0089】
SCR触媒を隔壁に担持する量については、特に制限はない。以下、SCR触媒を隔壁に担持する量のことを、「担持量」ということがある。ハニカム構造体の単位体積当りの担持量(g/L)が、200g/L以上であることが好ましい。このように構成することによって、被浄化成分を良好に浄化することができる。SCR触媒の担持量(g/L)の上限については、例えば、400g/Lとすることが好ましい。SCR触媒の担持量が400g/L超であると、SCR触媒の量が多すぎて、圧損が増大することがある。このため、SCR触媒の担持量が、200〜350g/Lであることがより好ましく、200〜300g/Lであることが特に好ましい。
【0090】
これまでにも説明したように、本実施形態のハニカム触媒体に用いられるハニカム構造体の隔壁には、小気孔と大気孔とが形成されている。ハニカム構造体の隔壁に、SCR触媒を担持する際には、触媒成分を含む触媒スラリーを触媒コートすることによって行われる。触媒スラリーが大気孔に導入された際に、触媒スラリー中の水分が、小気孔の毛細管現象によって吸収される。このため、本実施形態のハニカム触媒体においては、従来のハニカム触媒体に比して、気孔内に、より多くのSCR触媒が充填されることとなる。即ち、ハニカム構造体にSCR触媒を担持する条件が同じであった場合に、本実施形態のハニカム触媒体においては、気孔内に充填されるSCR触媒の量が多くなる。
【0091】
従って、本実施形態のハニカム触媒体においては、従来のハニカム触媒体とSCR触媒の担持量が同じ場合に、隔壁表面に配設されるSCR触媒の層の厚さを薄くすることができる。上記SCR触媒の層の厚さが厚くなると、ハニカム触媒体の開口率が低下して、ハニカム触媒体の圧損が増大してしまう。本実施形態のハニカム触媒体においては、SCR触媒の層の厚さを薄くすることにより、圧損の増大を抑制することができる。
【0092】
本実施形態のハニカム触媒体の製造方法については以下の通りである。まず、SCR触媒を担持するための触媒担体となるハニカム構造体を作製する。次に、得られたハニカム構造体の隔壁に、SCR触媒を担持して、ハニカム触媒体を作製する。ハニカム構造体を作製する方法については、上述した本発明のハニカム構造体の一の実施形態を製造する方法に準じて行うことができる。
【0093】
ハニカム構造体に、SCR触媒を担持してハニカム触媒体を作製する方法については、従来のハニカム触媒体の製造方法における、SCR触媒を担持する方法に準じて行うことができる。即ち、隔壁に大気孔と小気孔とが形成されたハニカム構造体を触媒担体として用いることで、大気孔内への触媒スラリーの導入が促進される。このため、仮に、SCR触媒を担持する方法として特別な方法を用いずとも、気孔内に、より多くのSCR触媒が充填されたハニカム触媒体を製造することができる。
【0094】
SCR触媒を担持する方法としては、以下のような方法を挙げることができる。まず、SCR触媒を含む触媒スラリーを調製する。この触媒スラリーを、ハニカム構造体の隔壁にコートすることによって、ハニカム構造体の隔壁にSCR触媒を担持する。ハニカム構造体の隔壁に触媒スラリーをコートすることによって、隔壁の気孔内に触媒スラリーが充填される。
【0095】
本実施形態のハニカム触媒体を作製する際には、隔壁の気孔内に、SCR触媒をより多く充填することが好ましい。これにより、隔壁の気孔の残存空隙を少なくすることができる。これにより、相対的には、隔壁表面のSCR触媒の層の厚さを薄くすることができる。
【0096】
隔壁の気孔内に、SCR触媒をより多く充填する方法としては、触媒スラリーの粘度を低くする方法を挙げることができる。触媒スラリー粘度は、触媒スラリー中の水分の比率を調整することによってコントロールすることができる。触媒スラリー粘度は、8mPa・s以下であることが好ましく、7〜5mPa・sであることが更に好ましく、7〜6mPa・sであることが特に好ましい。
【0097】
また、隔壁の気孔内に、SCR触媒をより多く充填する別の方法としては、触媒スラリーに含まれるSCR触媒の粒子径を小さくする方法を挙げることができる。触媒スラリーに含まれるSCR触媒の粒子径は、10μm以下であることが好ましく、3〜5μmであることが更に好ましく、4〜5μmであることが特に好ましい。
【0098】
また、触媒スラリーを、ハニカム構造体の隔壁にコートする際には、ハニカム構造体を容器に収納し、この容器内に、触媒スラリーを導入することが好ましい。触媒スラリーを容器内に導入する前に、ハニカム構造体を収納する容器内を真空引きすることが更に好ましい。容器内を真空引きすることにより、隔壁の気孔内に触媒スラリーがより多く充填される。
【0099】
ハニカム構造体の隔壁に触媒スラリーをコートした後、触媒スラリーを乾燥する。更に、乾燥した触媒スラリーを焼成してもよい。このようにして、本実施形態のハニカム触媒体を製造することができる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
まず、ハニカム触媒体に用いるハニカム構造体を作製した。ハニカム構造体を作製するセラミック原料としては、コージェライト化原料を用いた。コージェライト化原料に、造孔材、分散媒、有機バインダ、及び分散剤を添加して、成形用の坏土を調製した。分散媒の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、30質量部とした。有機バインダの添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、1質量部とした。
【0102】
コージェライト化原料としては、タルクを38.9質量部、カオリンを40.7質量部、及びアルミナを5.9質量部、含むものを用いた。タルクの平均粒子径は3μmであった。カオリンの平均粒子径は1μmであった。アルミナの平均粒子径は0.3μmであった。上記平均粒子径は、各原料粒子の粒子径分布におけるメジアン径(d50)のことである。上記コージェライト化原料の各原料粒子としては、粒子径が比較的に小さく、且つ粒子径の揃ったものを用いた。
【0103】
造孔材としては、小気孔用の造孔材として、平均粒子径が3μmのデンプンを用いた。また、大気孔用の造孔材として、平均粒子径が45μmの中空樹脂粒子を用いた。小気孔用の造孔材の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部とした。大気孔用の造孔材の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部とした。
【0104】
分散媒としては、水を用いた。有機バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた。分散剤としては、エチレングリコールを用いた。
【0105】
次に、得られた坏土を、ハニカム成形体を成形するための金型を用いて押出成形した。このようにして、ハニカム成形体を作製した。そして、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥した。乾燥したハニカム成形体の両端面を切断して、所定の寸法に整えた。その後、熱風乾燥機で更にハニカム成形体を乾燥した。
【0106】
乾燥したハニカム成形体を、1445℃で、5時間焼成した。このようにしてハニカム構造体を作製した。ハニカム構造体の隔壁厚さは、139.7μmであった。ハニカム構造体のセル密度は、46.5個/cm2であった。ハニカム構造体の気孔率は、50%であった。気孔率は、マイクロメリティクス社(Micromeritics社)製の「オートポアIII 9420(商品名)」によって測定した値である。
【0107】
また、隔壁の気孔径分布を測定したところ、気孔径分布が二峰性分布を示すものであった。即ち、得られたハニカム構造体の隔壁には、大気孔と小気孔とが形成されていた。隔壁の大気孔の気孔率が、30%であった。隔壁の小気孔の気孔率が、7%であった。
【0108】
また、隔壁に形成された大気孔の総容積に対する、隔壁に形成された小気孔の総容積の比率が、23%であった。表1において、「隔壁に形成された大気孔の総容積に対する、隔壁に形成された小気孔の総容積の比率」を、「気孔の総容積の比率」と示す。
【0109】
また、隔壁の気孔径分布において、「大気孔の最大ピーク値の気孔径」が、50μmであった。隔壁の気孔径分布において、「小気孔の最大ピーク値の気孔径」が、0.1μmであった。
【0110】
また、隔壁厚さの値を「t(μm)」、大気孔の気孔率の値を「P(%)」とした場合に、「P/t」の値が、0.21であった。各測定結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
次に、得られたハニカム構造体にSCR触媒を担持して、ハニカム触媒体を作製した。SCR触媒としては、Cu置換ゼオライトを用いた。SCR触媒を担持する方法としては、浸漬法を用いた。実施例1のハニカム触媒体においては、SCR触媒の担持量を220g/Lとした。SCR触媒の担持量(g/L)を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
次に、得られたハニカム触媒体について、以下の方法で、強度、圧損、及び浄化率の評価を行った。また、得られた評価結果より、ハニカム触媒体についての総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
[強度]
ハニカム触媒体の強度を測定した。強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)M505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器にハニカム触媒体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。即ち、アイソスタティック破壊強度試験は、コンバータの缶体にハニカム触媒体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。アイソスタティック破壊強度は、ハニカム触媒体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。アイソスタティック強度(加圧圧力値)が、2.0MPa以上の場合を「○(合格)」とし、2.0MPa未満の場合を「×(不合格)」とした。
【0116】
[圧損]
ハニカム触媒体に、室温条件下、10m3/minの流速でエアーを流通させ、ハニカム触媒体の入口側における圧力と、出口側における圧力とを測定した。入口側における圧力と、出口側における圧力との圧力差を圧力損失(圧損(kPa))とした。圧損(kPa)が、8kPa未満の場合を「○(合格)」とした。圧損(kPa)が、8kPa以上の場合を「×(不合格)」とした。
【0117】
[浄化率]
作製したハニカム触媒体を、排気量2リッターのガソリンエンジン搭載車両の排気系に搭載した。米国規制(FTP)の規制運転モード(LA−4)を行って、炭化水素エミッションの測定を行った。触媒体無しでのエミッションとの比から浄化率を算出した。浄化率(%)が、90%以上の場合を「○(合格)」とした。浄化率(%)が、90%未満の場合を「×(不合格)」とした。
【0118】
[総合評価]
強度、圧損及び浄化率の評価において、全ての評価結果が「○(合格)」である場合に、総合評価を「○(合格)」とした。圧損及び浄化率の評価において、少なくとも1つの評価結果が「×(不合格)」である場合に、総合評価を「×(不合格)」とした。
【0119】
(実施例2〜10、比較例1〜7)
実施例2〜10、及び比較例1〜7においては、まず、表1に示すようなハニカム構造体を作製した。次に、得られたハニカム構造体に、SCR触媒を担持してハニカム触媒体を作製した。実施例2〜10、及び比較例1〜7のハニカム触媒体のSCR触媒の担持量については、実施例1と同様の220g/Lとした。また、ハニカム構造体の気孔率の調整は、小気孔用の造孔材の平均粒子径とその添加量、及び大気孔用の造孔材の平均粒子径とその添加量を調整することによって行った。
【0120】
(結果)
表2に示すように、実施例1〜10のハニカム触媒体は、全ての評価について良好な結果を示すものであった。
【0121】
比較例1のハニカム触媒体は、隔壁の気孔率が低いために、圧損の高いものとなっていた。比較例2のハニカム触媒体は、隔壁の気孔率が高いために、強度が低いものとなっていた。
【0122】
比較例3のハニカム触媒体は、隔壁の大気孔の気孔率が低いために、圧損の高いものとなっていた。「P/t」の値も0.18であり、大気孔同士の連続性も確保されていなかった。比較例3においては、SCR触媒の大気孔への充填性が悪化して、隔壁の表面の触媒層の厚さが過大になっていた。その結果、ハニカム触媒体のセルの水力直径が小さくなりすぎて、圧損が増大する結果となった。
【0123】
比較例4のハニカム触媒体は、小気孔の最大ピーク値の気孔径が小さすぎたため、圧損の高いものとなっていた。また、比較例4のハニカム触媒体は、浄化率も悪いものであった。比較例4においては、触媒担持時において、小気孔からの触媒スラリー中の水分の排出が十分に行われなかった。このため、SCR触媒の大気孔への充填性が悪化して、隔壁の表面の触媒層の厚さが過大になっていた。その結果、ハニカム触媒体のセルの水力直径が小さくなりすぎて、圧損が増大する結果となった。更に、比較例4のハニカム触媒体は、ガス拡散が不十分であるため、浄化率が低くなってしまった。
【0124】
比較例5のハニカム触媒体は、小気孔の最大ピーク値の気孔径が大きすぎたため、圧損の高いものとなっていた。また、比較例5のハニカム触媒体は、浄化率も悪いものであった。比較例5においては、小気孔の気孔径が大きすぎて、毛細管現象による水分の排出が十分に行われなかった。このため、SCR触媒の大気孔への充填性が悪化して、触媒の担持状態が、比較例4のハニカム触媒体と同じようになってしまった。
【0125】
比較例6のハニカム触媒体は、大気孔の最大ピーク値の気孔径が小さすぎたため、圧損の高いものとなっていた。また、比較例6のハニカム触媒体は、浄化率も悪いものであった。比較例6においては、触媒担持時において、大気孔に触媒スラリーの導入が十分に行われなかった。このため、SCR触媒の大気孔への充填性が悪化して、隔壁の表面の触媒層の厚さが過大になっていた。その結果、ハニカム触媒体のセルの水力直径が小さくなりすぎて、圧損が増大する結果となった。更に、比較例6のハニカム触媒体は、ガス拡散が不十分であるため、浄化率が低くなってしまった。
【0126】
比較例7のハニカム触媒体は、大気孔の最大ピーク値の気孔径が大きすぎたため、浄化率の悪いものであった。比較例7においては、大気孔の気孔径が大きすぎるため、ガスと触媒との接触面積が低下し、浄化率が低くなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒を担持する触媒担体として利用することができる。本発明のハニカム触媒体は、排ガスの浄化に利用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、11:一方の端面、12:他方の端面、14:気孔、15:大気孔、16:小気孔、21:触媒スラリー、22:水分(触媒スラリー中の水分)、23:固形成分(触媒スラリー中の固形成分)、60:SCR触媒、100:ハニカム構造体、200:ハニカム触媒体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体、及びハニカム触媒体に関する。更に詳しくは、排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いられるハニカム構造体、及びこのようなハニカム構造体に触媒を担持したハニカム触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジン等の内燃機関から排出される排ガスには、窒素酸化物(NOX)が含まれている。地球環境影響等の観点から、排ガスに含まれる窒素酸化物の浄化が求められている。例えば、窒素酸化物(NOX)の浄化には、SCR触媒を用いた浄化方法が有効である。このため、エンジン等から排出される排ガスの浄化(具体的には、排ガスに含まれる窒素酸化物の浄化)に、SCR触媒が広く使用されている。「SCR」とは、「Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元」の略である。「SCR触媒」とは、還元反応によって被浄化成分を選択還元する触媒のことを意味する。特に、SCR触媒としては、窒素酸化物を選択還元する触媒を挙げることができる。
【0003】
SCR触媒を排ガスの浄化に使用する際には、SCR触媒が触媒担体に担持されて、触媒体として用いられることがある。触媒担体としては、例えば、流体の流路となるセルを区画形成する隔壁を備えたハニカム構造体を挙げることができる。このようなハニカム構造体の隔壁に触媒を担持することを、触媒コートということがある。
【0004】
このようなハニカム触媒体を備えたガス処理装置として、例えば、流通基材と複合触媒を含むガス処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。上記流通基材は、入口軸端、出口軸端、入口軸端から出口軸端までの間で伸びる長さを有する壁要素、及び該壁要素によって規定され、軸方向に囲まれ、端部が開放されている複数の通路を有するものである。即ち、上記流通基材が、上述したハニカム構造体となる。複合触媒は、平均粒子径が約3ミクロンを超える粒子を含み、実質的に壁要素内に堆積したワッシュコートの状態のものである。特許文献1のガス処理装置は、壁要素の表面の平均粗さが、壁内に触媒を積載する前から実質的に変化しないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−516466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
窒素酸化物等の浄化を行うためのSCR触媒においては、そのSCR触媒の量が浄化性能に非常に大きな影響を与える。このため、SCR触媒による浄化性能を高めるためには、多量の触媒が必要となる。例えば、ハニカム構造体の隔壁にSCR触媒を担持したハニカム触媒体においては、多量の触媒コートが必要である。しかしながら、多量の触媒コートを行うと、ハニカム触媒体の圧損が増加してしまうという問題があった。
【0007】
また、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持したハニカム触媒体においては、触媒コートによる層の厚みによってセルの開口面積が減少して、ハニカム構造体の開口率が減少する。このため、更に、圧損の増加を招くという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献1には、隔壁の気孔に触媒を充填する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法では、十分な量の触媒を、隔壁の気孔内に充填することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いられるハニカム構造体、及びこのようなハニカム構造体に触媒を担持したハニカム触媒体を提供する。特に、ハニカム触媒体に熱が加えられた際に、触媒が活性化する温度まで素早く昇温するハニカム触媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体、及びハニカム触媒体が提供される。
【0011】
[1] 一方の端面から他方の端面に延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、前記隔壁には、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、一の分布を示し且つその気孔径が14μm未満の小気孔と、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、他の分布を示し且つその気孔径が14μm以上の大気孔と、が形成され、前記隔壁の気孔率が、50〜70%であり、且つ、前記隔壁の前記大気孔の気孔率が30%以上であり、前記隔壁に形成された前記大気孔の総容積に対する、前記隔壁に形成された前記小気孔の総容積の比率が20%以上であり、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、前記大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmであり、前記隔壁の前記気孔径分布を示す前記グラフにおいて、前記小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmであり、前記大気孔の気孔率の値(%)を、前記隔壁の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上であるハニカム構造体。
【0012】
[2] 前記隔壁の厚さが、50.8〜254μmである前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0013】
[3] 前記ハニカム構造体のセル密度が、15.5〜108.5個/cm2である前記[1]又は[2]に記載のハニカム構造体。
【0014】
[4] 前記隔壁の材質が、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、及びムライトからなる群より選択される少なくとも一種を含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体と、被浄化成分を選択還元するSCR触媒と、を備えたハニカム触媒体。
【0016】
[6] 前記SCR触媒が、窒素酸化物を選択還元する触媒である前記[5]に記載のハニカム触媒体。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体は、一方の端面から他方の端面に延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたものである。隔壁には、その隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、一の分布を示し且つその気孔径が14μm未満の小気孔と、上記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、他の分布を示し且つその気孔径が14μm以上の大気孔と、が形成されている。即ち、上記隔壁には、大きく分けて、大きさの異なる2種類の気孔が形成されている。本発明のハニカム構造体においては、隔壁の気孔率が、50〜70%であり、且つ、隔壁の大気孔の気孔率が30%以上である。また、隔壁に形成された大気孔の総容積に対する、隔壁に形成された小気孔の総容積の比率が20%以上である。また、隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmである。また、隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmである。更に、大気孔の気孔率の値(%)を、隔壁の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上である。
【0018】
本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いることができる。ハニカム構造体を上記構成とすることにより、隔壁の気孔内に、多くの触媒を充填することができる。
【0019】
例えば、触媒担体としてのハニカム構造体に、触媒を担持する際には、触媒成分を含む触媒スラリーを触媒コートすることによって行われる。本発明のハニカム構造体においては、触媒スラリーが大気孔に導入された際に、触媒スラリー中の水分が、小気孔によって吸収される。これにより、隔壁の大気孔内が、触媒スラリー中の固形成分、換言すれば、触媒成分によって、より多く満たされることとなる。
【0020】
また、隔壁の気孔径分布を示すグラフにおける、各気孔の最大ピーク値における気孔径を上記数値範囲とすることで、触媒スラリー中の水分の吸収を促進することができる。即ち、小気孔の気孔径を小さくすることで、毛細管現象により水分を吸収し易くすることができる。また、大気孔の気孔径を大きくすることで、固形成分を含む触媒スラリーが、大気孔により進入し易くなる。更に、大気孔の気孔率の値(%)を、隔壁の厚さの値(μm)で除した値を0.2以上とすることで、大気孔が連なって形成され易くなる。即ち、大気孔が連なって連続的に形成されることにより、連続した大気孔の一部が、隔壁の表面にて開口部を形成し、上記触媒スラリーの導入を促進することができる。
【0021】
また、本発明のハニカム触媒体は、上述した本発明のハニカム構造体に触媒を担持した触媒担持体である。本発明のハニカム構造体を触媒担体として用いているため、隔壁の気孔内に、より多くの触媒が充填されている。このため、本発明のハニカム触媒体によれば、良好な浄化性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図4】図3中のAに示す領域を拡大した模式図である。
【図5】図4の一部を更に拡大した模式図である。
【図6】図5に示す隔壁の気孔内に触媒スラリーを充填する状態を示す模式図である。
【図7】図5に示す隔壁の気孔内に触媒スラリーを充填する状態を示す模式図である。
【図8】本発明のハニカム構造体の一実施形態における、隔壁の気孔径分布の一例を示すグラフである。
【図9】本発明のハニカム構造体の一実施形態における、累積気孔率と気孔径との関係を示すグラフである。
【図10】本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図11】本発明のハニカム触媒体の一実施形態の一方の端面側を模式的に示す平面図である。
【図12】本発明のハニカム触媒体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図13】図12中のB−B’断面を模式的に示す断面図である。
【図14】図12中のCに示す領域を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0024】
(1)ハニカム構造体:
まず、本発明のハニカム構造体の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体は、図1〜図5に示すようなハニカム構造体100である。本実施形態のハニカム構造体100は、一方の端面11から他方の端面12に延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を備えたものである。隔壁1には、大気孔15と小気孔16とが形成されている。図1〜図3に示すハニカム構造体100は、最外周に位置する外周壁3を更に備えたものである。ハニカム構造体100は、上記隔壁1及び外周壁3を備えた筒状のものである。
【0025】
ここで、図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の一方の端面側を模式的に示す平面図である。図3は、本発明のハニカム構造体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。図4は、図3中のAに示す領域を拡大した模式図である。図5は、図4の一部を更に拡大した模式図である。
【0026】
本実施形態のハニカム構造体100は、排ガス浄化用の触媒担体として好適に用いることができる。本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の大気孔15内に、多くの触媒を充填することができる。以下、本実施形態のハニカム構造体100の構成を説明しつつ、隔壁1の大気孔15内に、多くの触媒を充填することができる理由についても説明する。
【0027】
本実施形態のハニカム構造体100の隔壁1には、大きく分けて、大きさの異なる2種類の気孔14が形成されている。即ち、隔壁1には、気孔径の小さい「小気孔16」と、小気孔16よりも気孔径の大きな「大気孔15」とが形成されている。小気孔16は、気孔径が14μm未満の気孔である。小気孔16は、隔壁1の気孔径分布を示すグラフにおいて、一の分布を示すものである。大気孔15は、気孔径が14μm以上の気孔である。大気孔15は、隔壁1の気孔径分布を示すグラフにおいて、上記一の分布とは異なる他の分布を示すものである。
【0028】
例えば、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の気孔径分布をグラフに示した場合に、図8に示すような、二峰性分布を示すグラフとなる。ここで、図8は、本発明のハニカム構造体の一実施形態における、隔壁の気孔径分布の一例を示すグラフである。気孔径分布は、細孔径分布とも称される。気孔径分布は、水銀圧入法によって測定することができる。
【0029】
本発明における気孔径分布とは、水銀圧入法により測定された隔壁の気孔径を常用対数で示したときの気孔径分布のことである。例えば、横軸を気孔径(常用対数:μm)とし、縦軸をlog微分気孔容積(cc/g)としたグラフにより示すことができる。
【0030】
図8に示す気孔径分布において、気孔径が小さい側にピークを持つ分布が、小気孔を示す分布である。一方、図8に示す気孔径分布において、気孔径が大きい側にピークを持つ分布が、大気孔を示す分布である。
【0031】
図5に示すように、本実施形態のハニカム構造体100においては、小気孔16が隔壁1の全域に形成されている。そして、この小気孔16が形成された隔壁1に対して、気孔径がより大きな大気孔15が更に形成されている。即ち、本実施形態のハニカム構造体100においては、大気孔15の周りを、小気孔16が形成された領域が囲むような細孔構造を有している。この細孔構造は、別言すれば、気孔径が極めて小さい微細孔(即ち、気孔径が14μm未満の小気孔)が形成された隔壁の基材中に、上記微細孔と比較して気孔径が明らかに大きな大気孔が形成された構造ということができる。
【0032】
例えば、触媒担体としてのハニカム構造体に、触媒を担持する際には、触媒成分を含む触媒スラリーを触媒コートすることによって行われる。図6に示すように、本実施形態のハニカム構造体においては、触媒スラリー21が大気孔15に導入された際に、触媒スラリー21中の水分22が、小気孔16によって吸収される。これにより、図7に示すように、隔壁1の大気孔15内が、触媒スラリー21中の固形成分23、換言すれば、触媒成分によって、より多く満たされることとなる。
【0033】
ここで、図6及び図7は、図5に示す隔壁の気孔内に触媒スラリーを充填する状態を示す模式図である。図6においては、符号22に示す矢印により、触媒スラリー21中の水分22が小気孔16に吸収される状態を示している。触媒スラリー21中の固形成分23が、乾燥又は焼成されて、触媒となる。触媒スラリー21中の固形成分23が、隔壁1の表面に堆積して、触媒の層を形成することもある。隔壁の気孔の内部に触媒を充填すること、及び、隔壁の表面に触媒を配設することを総称して、「隔壁に触媒を担持する」ということがある。
【0034】
図1〜図7に示すような本実施形態のハニカム構造体100においては、大気孔15内に、多くの量の触媒スラリー21を導入することができる。更に、大気孔15の周りに形成された小気孔16の毛細管現象によって、大気孔15内の触媒スラリー21中の水分が、小気孔16が形成された領域へと吸収される。
【0035】
図1〜図5に示すような本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の気孔率が、50〜70%である。また、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の大気孔15の気孔率が30%以上である。各気孔率は、水銀圧入方法によって測定された値である。例えば、隔壁1の気孔率は、水銀ポロシメータで測定することができる。水銀ポロシメータとしては、Micromeritics社製、商品名:Autopore 9500を挙げることができる。
【0036】
「隔壁1の気孔率」とは、隔壁1に形成された小気孔16及び大気孔15の全てを含む気孔14の容積から求められる気孔率のことを意味する。「隔壁1の大気孔15の気孔率」とは、隔壁1に形成された大気孔15の容積から求められる気孔率のことを意味する。本発明においては、水銀ポロシメータによって、全ての気孔径の気孔を対象として測定された気孔率を「隔壁の気孔率」とする。また、本発明においては、水銀ポロシメータによって、14μm以上の気孔径の気孔を対象として測定された気孔率を「隔壁の大気孔の気孔率」とする。
【0037】
更に、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1に形成された大気孔15の総容積に対する、隔壁1に形成された小気孔16の総容積の比率が20%以上である。大気孔15の総容積、及び小気孔16の総容積は、水銀圧入方法によって測定された値である。水銀ポロシメータとしては、気孔率の測定に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0038】
本発明においては、水銀ポロシメータによって、14μm以上の気孔径の気孔を対象とした測定された気孔容積の総和を「大気孔15の総容積」とする。また、本発明においては、水銀ポロシメータによって、14μm未満の気孔径の気孔を対象とした測定された気孔容積の総和を「小気孔16の総容積」とする。「大気孔15の総容積」及び「小気孔16の総容積」を総称して、単に「気孔の総容積」ということがある。また、「隔壁に形成された大気孔の総容積に対する、隔壁に形成された小気孔の総容積の比率」のことを、単に「気孔の総容積の比率」ということがある。
【0039】
「隔壁1の大気孔15の気孔率」及び「大気孔15の総容積」を、上記数値範囲とすることにより、大気孔15内に、十分な量の触媒スラリーを導入することができる。これにより、ハニカム構造体100を触媒担体としたハニカム触媒体において、高い浄化性能を実現することができる。
【0040】
更に、「隔壁1の気孔率」及び「小気孔16の総容積」を、上記数値範囲とすることで、触媒スラリーの導入時において、小気孔により、大気孔15内の触媒スラリー中の水分を良好に吸収(換言すれば、排出)することができる。触媒スラリー中の水分を良好に吸収することで、大気孔15内への触媒スラリーの導入がより促進され、最終的に大気孔15内に残る触媒成分がより多くなる。
【0041】
また、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の気孔径分布を示すグラフ(例えば、図8参照)において、大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmである。また、上記隔壁1の気孔径分布を示すグラフにおいて、小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmである。
【0042】
「大気孔の分布」とは、二峰性分布を示す気孔径分布のうち、気孔径がより大きい側の分布(換言すれば、二山の分布のうちの気孔径がより大きい側の分布)のことを意味する。「小気孔の分布」とは、二峰性分布を示す気孔径分布のうち、気孔径がより小さい側の分布(換言すれば、二山の分布のうちの気孔径がより小さい側の分布)のことを意味する。
【0043】
「大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値」は、二峰性分布を示す気孔径分布のうち、気孔径がより大きい側の分布において、気孔容積が最大値を示す分布の頂点の値のことを意味する。「小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値」は、二峰性分布を示す気孔径分布のうち、気孔径がより小さい側の分布において、気孔容積が最大値を示す分布の頂点の値のことを意味する。
【0044】
「最大ピーク値における気孔径」とは、気孔容積が最大値を示す分布の頂点における、気孔径の値のことを意味する。即ち、横軸を気孔径とし、縦軸をlog微分気孔容積とした気孔径分布を示すグラフの、log微分気孔容積が最大値を示す分布の頂点における、気孔径の値のことを意味する。以下、「大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径」のことを、「大気孔の最大ピーク値の気孔径」ということがある。また、「小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径」のことを、「小気孔の最大ピーク値の気孔径」ということがある。
【0045】
各気孔の最大ピーク値における気孔径を上記数値範囲とすることで、触媒スラリー中の水分の吸収を促進することができる。即ち、小気孔の気孔径を小さくすることで、毛細管現象により水分を吸収し易くすることができる。また、大気孔の気孔径を大きくすることで、固形成分を含む触媒スラリーが、大気孔により進入し易くなる。
【0046】
更に、本実施形態のハニカム構造体100においては、大気孔15の気孔率の値(%)を、隔壁の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上である。即ち、大気孔15の気孔率の値を「P(%)」、隔壁の厚さの値を「t(μm)」とした場合に、「P/t」の値が、0.2以上である。このように構成することによって、ハニカム構造体100の隔壁1に、大気孔15が連なって形成され易くなる。例えば、図4に示すような、球状或いは楕円体状を呈する複数個の大気孔15が、互いに重なり合うようにして、隔壁1中に形成され易くなる。これにより、複数個の大気孔15の連続性が確保され、一の大気孔15内に導入された触媒スラリーが、大気孔15相互間で移動し、他の大気孔15内へと導入される。その結果、隔壁1の厚さ方向の中央付近に形成されている大気孔15内にも、触媒スラリーが良好に導入されるようになる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1の大気孔15内に、多くの触媒を充填することができる。即ち、本実施形態のハニカム構造体100においては、これまでに説明した気孔の総容積の比率等の各構成により奏されるそれぞれの効果が相俟って、気孔14内に多くの触媒を充填することが可能となる。本実施形態のハニカム構造体100を触媒担体としたハニカム触媒体において、高い浄化性能を実現することができる。
【0048】
なお、本実施形態のハニカム構造体は、累積気孔率と気孔径との関係を示すグラフにおいて、以下のような関係を示すものである。ここで、図9は、本発明のハニカム構造体の一実施形態における、累積気孔率と気孔径との関係を示すグラフである。図9のグラフにおいて、横軸が、気孔径(μm)を示す。図9のグラフにおいて、縦軸が、累積気孔率(%)を示す。図9のグラフにおいて、縦軸の「ε1」が、「隔壁の小気孔の気孔率」となる。図9のグラフにおいて、縦軸の「ε2」が、「隔壁の気孔率」となる。従って、「ε2−ε1」の値が、「隔壁の大気孔の気孔率」となる。図9において、累積気孔率及び気孔径は、水銀圧入法によって測定された値である。
【0049】
本実施形態のハニカム構造体は、図9に示すグラフより、以下の式(1)〜(3)の関係を満たすものである。
50%≦ε2≦70% ・・・ (1)
30%≦ε2−ε1 ・・・ (2)
20%≦ε1/(ε2−ε1) ・・・ (3)
【0050】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の気孔率が、50〜70%であるが、隔壁の気孔率が、55〜65%であることが好ましく、60〜65%であることが更に好ましい。隔壁の気孔率が高すぎると、ハニカム構造体の強度が低下することがある。一方、隔壁の気孔率が低すぎると、触媒を充填可能な気孔の容積が極めて少なくなってしまう。特に、窒素酸化物等の浄化を行うためのSCR触媒においては、SCR触媒の量が浄化性能に非常に大きな影響を与える。隔壁の気孔率が低すぎると、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持した際に、十分な浄化性能を実現することが困難になる。
【0051】
本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の大気孔の気孔率が30%以上である。本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の大気孔の気孔率が、35〜45%であることが好ましく、35〜40%であることが更に好ましい。隔壁の大気孔の気孔率が低すぎると、大気孔内に充填可能な触媒の量が極めて少なくなる。例えば、触媒スラリーの触媒成分が充填され難い小気孔が多く形成されていても、良好な触媒スラリーの導入は困難である。なお、隔壁の大気孔の気孔率の上限値については、気孔の総容積の比率によって特定することができる。
【0052】
本実施形態のハニカム構造体においては、大気孔の総容積に対する、小気孔の総容積の比率が20%以上である。本実施形態のハニカム構造体においては、大気孔の総容積に対する、小気孔の総容積の比率が20〜50%であることが好ましく、25〜40%であることが更に好ましい。上述した気孔の総容積の比率が低すぎると、大気孔内から、触媒スラリー中の水分を排出する流路が少なくなる。このため、大気孔内への触媒スラリーの導入が促進され難くなる。
【0053】
本実施形態のハニカム構造体においては、気孔径が14μm以上の気孔を大気孔とする。そして、その大気孔の最大ピーク値の気孔径が、20〜200μmである。本実施形態のハニカム構造体においては、上記大気孔の最大ピーク値の気孔径が、25〜150μmであることが好ましく、30〜120μmであることが更に好ましい。大気孔の最大ピーク値の気孔径が大きすぎると、以下のような問題を生じることがある。ハニカム構造体の隔壁に触媒スラリーをコートする際には、触媒スラリーをコートした後に、余剰のスラリーをエアーで吹き飛ばすことが行われる。大気孔の最大ピーク値の気孔径が大きすぎると、余剰のスラリーをエアーで吹き飛ばす工程において、大気孔内に導入された触媒スラリーまで吹き飛ばされてしまうことがある。このため、かえって大気孔への触媒の充填率が低下してしまうことがある。一方、大気孔の最大ピーク値の気孔径が小さすぎると、触媒スラリーが大気孔に進入し難くなる。また、大気孔の気孔径は、隔壁の平均気孔径の1.5倍以上であることが好ましい。
【0054】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、気孔径が14μm未満の気孔を小気孔とする。そして、その小気孔の最大ピーク値の気孔径が、0.1〜8μmである。本実施形態のハニカム構造体においては、上記小気孔の最大ピーク値の気孔径が、0.5〜6μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることが更に好ましい。上述した数値範囲の気孔径とすることで、小気孔の毛細管現象により、触媒スラリー中の水分を良好に吸収することができる。また、小気孔の気孔径は、隔壁の平均気孔径の1.5分の1以下であることが好ましい。
【0055】
本実施形態のハニカム構造体においては、大気孔の気孔率の値P(%)を、隔壁の厚さの値t(μm)で除した値「P/t」が、0.2以上である。本実施形態のハニカム構造体においては、上記「P/tの値」が、0.25〜0.7であることが好ましく、0.3〜0.7であることが更に好ましい。上記「P/tの値」が0.2未満であると、隔壁中に、大気孔が単独で形成され易くなる。即ち、複数個の大気孔に対する連続性が得られ難い。例えば、小気孔を経由して隔壁の表面と通じているような大気孔には、触媒スラリーが導入され難い。一方、隔壁の表面に開口部を有する大気孔には、触媒スラリーが良好に導入される。このような隔壁の表面に開口部を有する大気孔から、複数個の大気孔が連続して形成されることで、大気孔同士を経由して、各大気孔内に触媒スラリーが導入されることとなる。これにより、大気孔内への触媒スラリーの導入が促進される。「P/tの値」の上限値については、0.7であることが好ましい。「P/tの値」が0.7を超えると、上述した余剰のスラリーをエアーで吹き飛ばす工程において、大気孔内に導入された触媒スラリーまで吹き飛ばされてしまうことがある。このため、「P/tの値」が0.7を超えると、かえって大気孔への触媒の充填率が低下してしまうことがある。
【0056】
また、本実施形態のハニカム構造体においては、隔壁の厚さが、50.8〜254μmであることが好ましく、50.8〜150μmであることが更に好ましく、50.8〜125μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さを上記数値範囲とすることにより、ハニカム構造体の隔壁に、上記大気孔と小気孔とを良好に形成することができる。また、隔壁の強度を維持しつつ、圧損を低減することもできる。
【0057】
「隔壁の厚さ」とは、ハニカム構造体をセルの延びる方向に垂直に切断した断面における、隣接する二つのセルを区画する壁(隔壁)の厚さのことを意味する。「隔壁の厚さ」は、例えば、画像解析装置(ニコン社製、商品名「NEXIV、VMR−1515」)によって測定することができる。
【0058】
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム構造体のセル密度が、15.5〜108.5個/cm2であることが好ましい。セル密度を上記数値範囲とすることで、圧損の増大を有効に防止することができる。また、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持した際に、高い浄化性能を得ることができる。ハニカム構造体のセル密度とは、セルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数のことを意味する。ハニカム構造体のセル密度が、46.5〜77.5個/cm2であることが更に好ましく、46.5〜70個/cm2であることが特に好ましい。
【0059】
また、ハニカム構造体の隔壁の材質が、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、及びムライトからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。特に、ハニカム構造体の隔壁が、上記群より選択される少なくとも一種を主成分として含むものであることがより好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体の熱膨張を小さくし、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を向上させることができる。主成分以外の成分としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ガラス等を挙げることができる。
【0060】
本明細書において、「主成分」とは、その構成材料中に含まれる成分が90質量%以上の成分のことを意味する。隔壁が、上記群より選択される少なくとも一種を、95質量%以上含む材料からなることが更に好ましく、98質量%以上含む材料からなることが特に好ましい。
【0061】
ハニカム構造体の形状については特に制限はない。例えば、ハニカム構造体の形状としては、ハニカム構造体の端面が円形の筒状(円筒形状)、上記端面がオーバル形状の筒状、上記端面が多角形の筒状の形状を挙げることができる。多角形としては、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等を挙げることができる。図1〜図4においては、ハニカム構造体の形状が、端面が円形の筒状である場合の例を示す。
【0062】
セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状としては、四角形、六角形、八角形、円形、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。四角形の中でも、正方形、長方形が好ましい。
【0063】
図1に示すハニカム構造体100は、最外周に位置する外周壁3を更に備えたものである。本実施形態のハニカム構造体100は、このような外周壁3を有していないものであってもよい。外周壁3は、ハニカム構造体100を作製する過程において、ハニカム成形体を押出成形する際に、隔壁1とともに形成されたものであってもよい。また、押出成形時には外周壁を形成しなくともよい。例えば、セル2を区画形成する隔壁1の外周部分に、セラミック材料を塗工して外周壁3を形成することもできる。
【0064】
(2)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本実施形態のハニカム構造体を製造する方法について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法としては、坏土調製工程と、成形工程と、焼成工程と、を備えた製造方法を挙げることができる。
【0065】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、上記坏土調製工程において、成形原料に添加する造孔材の粒子径を調整する。このように構成することによって、隔壁に大気孔と小気孔とが形成された本実施形態のハニカム構造体を製造することができる。以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法を、各工程毎に説明する。
【0066】
(2−1)坏土調製工程:
まず、本実施形態のハニカム構造体を製造する際には、セラミック原料を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る(坏土調製工程)。セラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、及びムライト等を用いることができる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0067】
また、成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、造孔材、有機バインダ、無機バインダ、界面活性剤等を更に混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0068】
本実施形態のハニカム構造体を製造する際には、例えば、以下のような方法により、隔壁に、大気孔と小気孔との2種類の気孔を形成することが好ましい。小気孔を形成する方法としては、まず、上記セラミック原料として、粒子径の小さい細かい粒子を用いて、セラミック原料自体により形成される気孔を極力小さくする。セラミック原料としては、セラミック原料自体によって形成される気孔の気孔率が5%以下となるような原料であることが好ましい。
【0069】
そして、粒子径が小さく、且つ粒子径の揃った小気孔用の造孔材を、上記成形原料に加える。このようにして、隔壁に小気孔を形成することができる。小気孔用の造孔材は、坏土を成形した成形体を焼成した際に、本実施形態のハニカム構造体における小気孔を形成し得るものとする。
【0070】
小気孔用の造孔材の粒子径は、得られるハニカム構造体における小気孔の気孔径に応じて適宜選択することができる。また、小気孔用の造孔材の添加量は、得られるハニカム構造体における小気孔の気孔率等に応じて適宜選択することができる。小気孔用の造孔材は、粒径が比較的に揃ったものであることが好ましい。例えば、小気孔用の造孔材は、粒子径分布がシャープな分布となるものであることが好ましい。
【0071】
大気孔を形成する方法としては、小気孔用の造孔材とは別に、大気孔を形成するための大気孔用の造孔材を、成形原料に加える方法を挙げることができる。このようにして、隔壁に大気孔を形成することができる。大気孔用の造孔材は、坏土を成形した成形体を焼成した際に、本実施形態のハニカム構造体における大気孔を形成し得るものとする。大気孔用の造孔材の粒子径は、得られるハニカム構造体における大気孔の気孔径に応じて適宜選択することができる。例えば、平均粒子径が20μm以上の造孔材を用いることが好ましい。大気孔用の造孔材としては、樹脂粒子、カーボン、デンプン等を挙げることができる。また、大気孔用の造孔材の添加量は、得られるハニカム構造体における大気孔の気孔率等に応じて適宜選択することができる。
【0072】
分散媒としては、水を用いることができる。分散媒の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。
【0073】
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、又はこれらを組み合わせたものとすることが好ましい。また、有機バインダの添加量は、セラミック原料100質量部に対して、3〜8質量部が好ましい。
【0074】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.2〜0.5質量部が好ましい。
【0075】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0076】
(2−2)成形工程:
次に、得られた坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を得る(成形工程)。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はない。ハニカム成形体を形成する方法として、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を挙げることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0077】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の筒形状等が好ましい。
【0078】
(2−3)焼成工程:
次に、得られたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたハニカム構造体を得る(焼成工程)。これまでに説明したように、本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、2種類の造孔材を坏土に加えることにより、大気孔と小気孔とが隔壁に形成されたハニカム構造体を製造することができる。
【0079】
乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組み合わせて行うことが好ましい。
【0080】
ハニカム成形体を焼成する前には、このハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。仮焼は、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)の少なくとも一部を除去することができるものであればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度である。このため、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度の温度で、10〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0081】
ハニカム成形体の焼成は、仮焼した成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化するためのものである。このような焼成により、隔壁が所定の強度を有するものとなる。焼成条件については、成形原料の種類により適宜選択することができる。即ち、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等は、成形原料の種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度が1350〜1440℃であることが好ましい。また、焼成時間としては、最高温度でのキープ時間が3〜10時間であることが好ましい。仮焼、本焼成を行う装置については、特に制限はない。仮焼、本焼成を行う装置としては、例えば、電気炉、ガス炉等を挙げることができる。
【0082】
(3)ハニカム触媒体:
次に、本発明のハニカム触媒体の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム触媒体は、図10〜図14に示すようなハニカム触媒体200である。本実施形態のハニカム触媒体200は、これまでに説明した本発明のハニカム構造体100と、被浄化成分を選択還元するSCR触媒60と、を備えたものである。ハニカム構造体100は、ハニカム触媒体200における触媒担体である。
【0083】
ここで、図10は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図11は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態の一方の端面側を模式的に示す平面図である。図12は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を模式的に示す断面図である。図13は、図12中のB−B’断面を模式的に示す断面図である。図14は、図12中のCに示す領域を拡大した模式図である。
【0084】
ハニカム構造体100は、一方の端面11から他方の端面12に延びる流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するものである。図10〜図13に示すハニカム構造体100は、最外周に位置する外周壁3を更に備えたものである。ハニカム構造体100は、上記隔壁1及び外周壁3を備えた筒状のものである。ハニカム構造体100の構成については、本発明のハニカム構造体の実施形態にて説明した通りである。
【0085】
図10〜図14に示す本実施形態のハニカム触媒体200においては、ハニカム構造体100の隔壁1に形成された気孔14内に、SCR触媒60が充填されている。特に、隔壁1に形成された大気孔15内に、SCR触媒60が多く充填されている。勿論、隔壁1に形成された小気孔16内にも、SCR触媒60が充填されていてもよい。また、図示は省略するが、SCR触媒60が、隔壁1の表面に配置されていてもよい。以下、「隔壁1の気孔14内にSCR触媒60が充填されていること」、及び「隔壁1の表面にSCR触媒60が配設されていること」を総称して、「隔壁1にSCR触媒60が担持されている」ということがある。
【0086】
SCR触媒は、被浄化成分を選択還元する触媒である。特に、本実施形態のハニカム触媒体においては、SCR触媒が、排ガス中の窒素酸化物(NOX)を選択還元するNOX選択還元用SCR触媒であることが好ましい。NOX選択還元用SCR触媒としては、ディーゼルエンジンの排ガス中のNOXを選択還元して浄化する触媒を好適例として挙げることができる。
【0087】
SCR触媒としては、金属置換されたゼオライトを挙げることができる。ゼオライトを金属置換する金属としては、鉄(Fe)、銅(Cu)を挙げることができる。ゼオライトとしては、ベータゼオライトを好適例として挙げることができる。
【0088】
また、SCR触媒が、バナジウム、及びチタニアからなる群より選択される少なくとも1種を主たる成分として含有する触媒であってもよい。SCR触媒中のバナジウム、及びチタニアの含有量は、60質量%以上であることが好ましい。
【0089】
SCR触媒を隔壁に担持する量については、特に制限はない。以下、SCR触媒を隔壁に担持する量のことを、「担持量」ということがある。ハニカム構造体の単位体積当りの担持量(g/L)が、200g/L以上であることが好ましい。このように構成することによって、被浄化成分を良好に浄化することができる。SCR触媒の担持量(g/L)の上限については、例えば、400g/Lとすることが好ましい。SCR触媒の担持量が400g/L超であると、SCR触媒の量が多すぎて、圧損が増大することがある。このため、SCR触媒の担持量が、200〜350g/Lであることがより好ましく、200〜300g/Lであることが特に好ましい。
【0090】
これまでにも説明したように、本実施形態のハニカム触媒体に用いられるハニカム構造体の隔壁には、小気孔と大気孔とが形成されている。ハニカム構造体の隔壁に、SCR触媒を担持する際には、触媒成分を含む触媒スラリーを触媒コートすることによって行われる。触媒スラリーが大気孔に導入された際に、触媒スラリー中の水分が、小気孔の毛細管現象によって吸収される。このため、本実施形態のハニカム触媒体においては、従来のハニカム触媒体に比して、気孔内に、より多くのSCR触媒が充填されることとなる。即ち、ハニカム構造体にSCR触媒を担持する条件が同じであった場合に、本実施形態のハニカム触媒体においては、気孔内に充填されるSCR触媒の量が多くなる。
【0091】
従って、本実施形態のハニカム触媒体においては、従来のハニカム触媒体とSCR触媒の担持量が同じ場合に、隔壁表面に配設されるSCR触媒の層の厚さを薄くすることができる。上記SCR触媒の層の厚さが厚くなると、ハニカム触媒体の開口率が低下して、ハニカム触媒体の圧損が増大してしまう。本実施形態のハニカム触媒体においては、SCR触媒の層の厚さを薄くすることにより、圧損の増大を抑制することができる。
【0092】
本実施形態のハニカム触媒体の製造方法については以下の通りである。まず、SCR触媒を担持するための触媒担体となるハニカム構造体を作製する。次に、得られたハニカム構造体の隔壁に、SCR触媒を担持して、ハニカム触媒体を作製する。ハニカム構造体を作製する方法については、上述した本発明のハニカム構造体の一の実施形態を製造する方法に準じて行うことができる。
【0093】
ハニカム構造体に、SCR触媒を担持してハニカム触媒体を作製する方法については、従来のハニカム触媒体の製造方法における、SCR触媒を担持する方法に準じて行うことができる。即ち、隔壁に大気孔と小気孔とが形成されたハニカム構造体を触媒担体として用いることで、大気孔内への触媒スラリーの導入が促進される。このため、仮に、SCR触媒を担持する方法として特別な方法を用いずとも、気孔内に、より多くのSCR触媒が充填されたハニカム触媒体を製造することができる。
【0094】
SCR触媒を担持する方法としては、以下のような方法を挙げることができる。まず、SCR触媒を含む触媒スラリーを調製する。この触媒スラリーを、ハニカム構造体の隔壁にコートすることによって、ハニカム構造体の隔壁にSCR触媒を担持する。ハニカム構造体の隔壁に触媒スラリーをコートすることによって、隔壁の気孔内に触媒スラリーが充填される。
【0095】
本実施形態のハニカム触媒体を作製する際には、隔壁の気孔内に、SCR触媒をより多く充填することが好ましい。これにより、隔壁の気孔の残存空隙を少なくすることができる。これにより、相対的には、隔壁表面のSCR触媒の層の厚さを薄くすることができる。
【0096】
隔壁の気孔内に、SCR触媒をより多く充填する方法としては、触媒スラリーの粘度を低くする方法を挙げることができる。触媒スラリー粘度は、触媒スラリー中の水分の比率を調整することによってコントロールすることができる。触媒スラリー粘度は、8mPa・s以下であることが好ましく、7〜5mPa・sであることが更に好ましく、7〜6mPa・sであることが特に好ましい。
【0097】
また、隔壁の気孔内に、SCR触媒をより多く充填する別の方法としては、触媒スラリーに含まれるSCR触媒の粒子径を小さくする方法を挙げることができる。触媒スラリーに含まれるSCR触媒の粒子径は、10μm以下であることが好ましく、3〜5μmであることが更に好ましく、4〜5μmであることが特に好ましい。
【0098】
また、触媒スラリーを、ハニカム構造体の隔壁にコートする際には、ハニカム構造体を容器に収納し、この容器内に、触媒スラリーを導入することが好ましい。触媒スラリーを容器内に導入する前に、ハニカム構造体を収納する容器内を真空引きすることが更に好ましい。容器内を真空引きすることにより、隔壁の気孔内に触媒スラリーがより多く充填される。
【0099】
ハニカム構造体の隔壁に触媒スラリーをコートした後、触媒スラリーを乾燥する。更に、乾燥した触媒スラリーを焼成してもよい。このようにして、本実施形態のハニカム触媒体を製造することができる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0101】
(実施例1)
まず、ハニカム触媒体に用いるハニカム構造体を作製した。ハニカム構造体を作製するセラミック原料としては、コージェライト化原料を用いた。コージェライト化原料に、造孔材、分散媒、有機バインダ、及び分散剤を添加して、成形用の坏土を調製した。分散媒の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、30質量部とした。有機バインダの添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、1質量部とした。
【0102】
コージェライト化原料としては、タルクを38.9質量部、カオリンを40.7質量部、及びアルミナを5.9質量部、含むものを用いた。タルクの平均粒子径は3μmであった。カオリンの平均粒子径は1μmであった。アルミナの平均粒子径は0.3μmであった。上記平均粒子径は、各原料粒子の粒子径分布におけるメジアン径(d50)のことである。上記コージェライト化原料の各原料粒子としては、粒子径が比較的に小さく、且つ粒子径の揃ったものを用いた。
【0103】
造孔材としては、小気孔用の造孔材として、平均粒子径が3μmのデンプンを用いた。また、大気孔用の造孔材として、平均粒子径が45μmの中空樹脂粒子を用いた。小気孔用の造孔材の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部とした。大気孔用の造孔材の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部とした。
【0104】
分散媒としては、水を用いた。有機バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた。分散剤としては、エチレングリコールを用いた。
【0105】
次に、得られた坏土を、ハニカム成形体を成形するための金型を用いて押出成形した。このようにして、ハニカム成形体を作製した。そして、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥した。乾燥したハニカム成形体の両端面を切断して、所定の寸法に整えた。その後、熱風乾燥機で更にハニカム成形体を乾燥した。
【0106】
乾燥したハニカム成形体を、1445℃で、5時間焼成した。このようにしてハニカム構造体を作製した。ハニカム構造体の隔壁厚さは、139.7μmであった。ハニカム構造体のセル密度は、46.5個/cm2であった。ハニカム構造体の気孔率は、50%であった。気孔率は、マイクロメリティクス社(Micromeritics社)製の「オートポアIII 9420(商品名)」によって測定した値である。
【0107】
また、隔壁の気孔径分布を測定したところ、気孔径分布が二峰性分布を示すものであった。即ち、得られたハニカム構造体の隔壁には、大気孔と小気孔とが形成されていた。隔壁の大気孔の気孔率が、30%であった。隔壁の小気孔の気孔率が、7%であった。
【0108】
また、隔壁に形成された大気孔の総容積に対する、隔壁に形成された小気孔の総容積の比率が、23%であった。表1において、「隔壁に形成された大気孔の総容積に対する、隔壁に形成された小気孔の総容積の比率」を、「気孔の総容積の比率」と示す。
【0109】
また、隔壁の気孔径分布において、「大気孔の最大ピーク値の気孔径」が、50μmであった。隔壁の気孔径分布において、「小気孔の最大ピーク値の気孔径」が、0.1μmであった。
【0110】
また、隔壁厚さの値を「t(μm)」、大気孔の気孔率の値を「P(%)」とした場合に、「P/t」の値が、0.21であった。各測定結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
次に、得られたハニカム構造体にSCR触媒を担持して、ハニカム触媒体を作製した。SCR触媒としては、Cu置換ゼオライトを用いた。SCR触媒を担持する方法としては、浸漬法を用いた。実施例1のハニカム触媒体においては、SCR触媒の担持量を220g/Lとした。SCR触媒の担持量(g/L)を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
次に、得られたハニカム触媒体について、以下の方法で、強度、圧損、及び浄化率の評価を行った。また、得られた評価結果より、ハニカム触媒体についての総合評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
[強度]
ハニカム触媒体の強度を測定した。強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)M505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器にハニカム触媒体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。即ち、アイソスタティック破壊強度試験は、コンバータの缶体にハニカム触媒体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。アイソスタティック破壊強度は、ハニカム触媒体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。アイソスタティック強度(加圧圧力値)が、2.0MPa以上の場合を「○(合格)」とし、2.0MPa未満の場合を「×(不合格)」とした。
【0116】
[圧損]
ハニカム触媒体に、室温条件下、10m3/minの流速でエアーを流通させ、ハニカム触媒体の入口側における圧力と、出口側における圧力とを測定した。入口側における圧力と、出口側における圧力との圧力差を圧力損失(圧損(kPa))とした。圧損(kPa)が、8kPa未満の場合を「○(合格)」とした。圧損(kPa)が、8kPa以上の場合を「×(不合格)」とした。
【0117】
[浄化率]
作製したハニカム触媒体を、排気量2リッターのガソリンエンジン搭載車両の排気系に搭載した。米国規制(FTP)の規制運転モード(LA−4)を行って、炭化水素エミッションの測定を行った。触媒体無しでのエミッションとの比から浄化率を算出した。浄化率(%)が、90%以上の場合を「○(合格)」とした。浄化率(%)が、90%未満の場合を「×(不合格)」とした。
【0118】
[総合評価]
強度、圧損及び浄化率の評価において、全ての評価結果が「○(合格)」である場合に、総合評価を「○(合格)」とした。圧損及び浄化率の評価において、少なくとも1つの評価結果が「×(不合格)」である場合に、総合評価を「×(不合格)」とした。
【0119】
(実施例2〜10、比較例1〜7)
実施例2〜10、及び比較例1〜7においては、まず、表1に示すようなハニカム構造体を作製した。次に、得られたハニカム構造体に、SCR触媒を担持してハニカム触媒体を作製した。実施例2〜10、及び比較例1〜7のハニカム触媒体のSCR触媒の担持量については、実施例1と同様の220g/Lとした。また、ハニカム構造体の気孔率の調整は、小気孔用の造孔材の平均粒子径とその添加量、及び大気孔用の造孔材の平均粒子径とその添加量を調整することによって行った。
【0120】
(結果)
表2に示すように、実施例1〜10のハニカム触媒体は、全ての評価について良好な結果を示すものであった。
【0121】
比較例1のハニカム触媒体は、隔壁の気孔率が低いために、圧損の高いものとなっていた。比較例2のハニカム触媒体は、隔壁の気孔率が高いために、強度が低いものとなっていた。
【0122】
比較例3のハニカム触媒体は、隔壁の大気孔の気孔率が低いために、圧損の高いものとなっていた。「P/t」の値も0.18であり、大気孔同士の連続性も確保されていなかった。比較例3においては、SCR触媒の大気孔への充填性が悪化して、隔壁の表面の触媒層の厚さが過大になっていた。その結果、ハニカム触媒体のセルの水力直径が小さくなりすぎて、圧損が増大する結果となった。
【0123】
比較例4のハニカム触媒体は、小気孔の最大ピーク値の気孔径が小さすぎたため、圧損の高いものとなっていた。また、比較例4のハニカム触媒体は、浄化率も悪いものであった。比較例4においては、触媒担持時において、小気孔からの触媒スラリー中の水分の排出が十分に行われなかった。このため、SCR触媒の大気孔への充填性が悪化して、隔壁の表面の触媒層の厚さが過大になっていた。その結果、ハニカム触媒体のセルの水力直径が小さくなりすぎて、圧損が増大する結果となった。更に、比較例4のハニカム触媒体は、ガス拡散が不十分であるため、浄化率が低くなってしまった。
【0124】
比較例5のハニカム触媒体は、小気孔の最大ピーク値の気孔径が大きすぎたため、圧損の高いものとなっていた。また、比較例5のハニカム触媒体は、浄化率も悪いものであった。比較例5においては、小気孔の気孔径が大きすぎて、毛細管現象による水分の排出が十分に行われなかった。このため、SCR触媒の大気孔への充填性が悪化して、触媒の担持状態が、比較例4のハニカム触媒体と同じようになってしまった。
【0125】
比較例6のハニカム触媒体は、大気孔の最大ピーク値の気孔径が小さすぎたため、圧損の高いものとなっていた。また、比較例6のハニカム触媒体は、浄化率も悪いものであった。比較例6においては、触媒担持時において、大気孔に触媒スラリーの導入が十分に行われなかった。このため、SCR触媒の大気孔への充填性が悪化して、隔壁の表面の触媒層の厚さが過大になっていた。その結果、ハニカム触媒体のセルの水力直径が小さくなりすぎて、圧損が増大する結果となった。更に、比較例6のハニカム触媒体は、ガス拡散が不十分であるため、浄化率が低くなってしまった。
【0126】
比較例7のハニカム触媒体は、大気孔の最大ピーク値の気孔径が大きすぎたため、浄化率の悪いものであった。比較例7においては、大気孔の気孔径が大きすぎるため、ガスと触媒との接触面積が低下し、浄化率が低くなってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のハニカム構造体は、排ガス浄化用の触媒を担持する触媒担体として利用することができる。本発明のハニカム触媒体は、排ガスの浄化に利用することができる。
【符号の説明】
【0128】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、11:一方の端面、12:他方の端面、14:気孔、15:大気孔、16:小気孔、21:触媒スラリー、22:水分(触媒スラリー中の水分)、23:固形成分(触媒スラリー中の固形成分)、60:SCR触媒、100:ハニカム構造体、200:ハニカム触媒体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端面から他方の端面に延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、
前記隔壁には、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、一の分布を示し且つその気孔径が14μm未満の小気孔と、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、他の分布を示し且つその気孔径が14μm以上の大気孔と、が形成され、
前記隔壁の気孔率が、50〜70%であり、且つ、前記隔壁の前記大気孔の気孔率が30%以上であり、
前記隔壁に形成された前記大気孔の総容積に対する、前記隔壁に形成された前記小気孔の総容積の比率が20%以上であり、
前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、前記大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmであり、前記隔壁の前記気孔径分布を示す前記グラフにおいて、前記小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmであり、
前記大気孔の気孔率の値(%)を、前記隔壁の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上であるハニカム構造体。
【請求項2】
前記隔壁の厚さが、50.8〜254μmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造体のセル密度が、15.5〜108.5個/cm2である請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁の材質が、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、及びムライトからなる群より選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体と、
被浄化成分を選択還元するSCR触媒と、を備えたハニカム触媒体。
【請求項6】
前記SCR触媒が、窒素酸化物を選択還元する触媒である請求項5に記載のハニカム触媒体。
【請求項1】
一方の端面から他方の端面に延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備え、
前記隔壁には、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、一の分布を示し且つその気孔径が14μm未満の小気孔と、前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、他の分布を示し且つその気孔径が14μm以上の大気孔と、が形成され、
前記隔壁の気孔率が、50〜70%であり、且つ、前記隔壁の前記大気孔の気孔率が30%以上であり、
前記隔壁に形成された前記大気孔の総容積に対する、前記隔壁に形成された前記小気孔の総容積の比率が20%以上であり、
前記隔壁の気孔径分布を示すグラフにおいて、前記大気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、20〜200μmであり、前記隔壁の前記気孔径分布を示す前記グラフにおいて、前記小気孔の分布における気孔容積の最大ピーク値における気孔径が、0.1〜8μmであり、
前記大気孔の気孔率の値(%)を、前記隔壁の厚さの値(μm)で除した値が、0.2以上であるハニカム構造体。
【請求項2】
前記隔壁の厚さが、50.8〜254μmである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記ハニカム構造体のセル密度が、15.5〜108.5個/cm2である請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁の材質が、コージェライト、アルミニウムチタネート、炭化珪素、及びムライトからなる群より選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体と、
被浄化成分を選択還元するSCR触媒と、を備えたハニカム触媒体。
【請求項6】
前記SCR触媒が、窒素酸化物を選択還元する触媒である請求項5に記載のハニカム触媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−52367(P2013−52367A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193438(P2011−193438)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]