説明

ハニカム構造体の製造方法

【課題】外周層がより均一な被外周層形成部材を製造する方法を提供する。
【解決手段】セラミック原料を成形して、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製し、上記ハニカム成形体を焼成して得た一又は複数のハニカム焼成体からなる柱状のハニカムブロックの外周面に外周層を形成する外周層形成装置10を用いてハニカム構造体を製造する方法であって、上記外周層形成装置10は、支持部材と、面を持つスキージ612を有する外周層形成ヘッド60と、外周層形成材料を上記外周面に供給する外周層形成材料供給部70とを備えており、上記支持部材が上記ハニカムブロックをその軸が水平方向となるように軸方向の両側から挟むように支持する工程と、上記外周層形成材料供給部70が上記外周面に材料を供給する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バス、トラック等の車両や建設機械等の内燃機関から排出される排ガス中のスス等のパティキュレートが、環境や人体に害を及ぼすことが近年問題となっている。そこで、多孔質セラミックからなるハニカム構造体を用いることにより、排ガス中のパティキュレートを捕集し、排ガスを浄化するパティキュレートフィルタが種々提案されている。また、担持した触媒と排ガスとを接触させることにより、排ガス中の窒素酸化物等の改質をするハニカム構造体も知られている。
【0003】
このようなハニカム構造体の外周には、排ガスの漏れ防止や、ハニカム構造体の機械的な強度の向上を目的として外周層が形成される場合がある。
特許文献1には、外周層を形成する外周層形成装置が開示されている。この外周層形成装置は、被外周層形成部材であるハニカム構造体の外周に供給される外周層形成材料をスキージが均すことにより、均一な外周層を形成している。
【0004】
これによると、外周層形成時のかすれ、剥れを防止するとともに、乾燥時のクラックの発生を防止することにより、欠陥のない外周層を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−141708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の外周層形成装置では、柱状のハニカム構造体の軸(長手方向)が鉛直となるように配置されるため、外周層形成直後に均一であった外周層がペースト状の外周層形成材料の重力による偏りによって不均一となる不具合があった。
また、ペースト状の外周層形成材料が落下し易いという不具合もあった。例えば、落下した外周層形成材料が外周層形成装置の回転軸に付着した場合には、回転不良などの不具合を引き起こす場合がある。このような事態を防止するためには、落下した外周層形成材料を頻繁に掃除しなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、外周層がより均一な被外周層形成部材を製造すること、及び外周層形成材料の被外周層形成部材からの落下を低減することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る外周層形成装置は、柱状の被外周層形成部材を、その軸が水平方向となるように軸方向の両側から挟むように支持する支持部材と、軸方向と平行な面を持つスキージを有する外周層形成ヘッドとを備え、被外周層形成部材の外周面上において軸方向と平行な線を含み、かつ外周面に接する仮想面と、スキージの面とは所定の角度をなしており、スキージ及び被外周層形成部材のうち少なくとも一方が、所定の角度を維持するように移動することにより、被外周層形成部材の外周面に外周層を形成している。
【0009】
本発明に係る外周層形成装置によると、被外周層形成部材が水平に支持されるため、被外周層形成部材に形成された外周層が重力により偏ることを防止することができ、特許文献1に比べて外周層の均一性をより向上させることができる。
また、被外周層形成部材が水平に支持されているため、重力による外周層形成材料のハニカム構造体からの落下を防止することができる。それによると、例えば落下した外周層形成材料が外周層形成装置の回転軸等に付着することを防止し、回転軸の回転不良などの不具合の発生を防止することができる。
また、外周層形成材料の被外周層形成部材からの落下が防止される結果、落下した材料を頻繁に掃除する必要がなくなるので、メンテナンスの回数を低減させることができ、ランニングコストの低減も図ることができる。
【0010】
本発明に係る外周層形成装置は、外周層形成材料を被外周層形成部材の外周面に供給する外周層形成材料供給部を備えて、連続的に被外周層形成部材の外周層を形成してもよい。
【0011】
本発明に係る外周層形成装置では、外周層形成材料供給部が被外周層形成部材の外周面に対する外周層形成ヘッドの相対的な進行方向の近傍に外周層形成材料を供給していることが望ましい。
上記の外周層形成装置によると、外周層形成材料供給部が外周面に供給した材料が即外周層形成ヘッド(スキージ)に接触する。このため、より外周面から落下する外周層形成材料を低減することができる。
ところで、特に外周層形成開始直後には、外周層が形成されていない被外周層形成部材の硬質の外周部と外周層形成ヘッド(スキージ)とが接触し、外周層形成ヘッド(スキージ)が破損する場合がある。しかし、上記の外周層形成装置では、外周層形成材料供給部が外周面に供給した材料が即外周形成ヘッドに接触するため、上記の問題も解決することができる。
【0012】
本発明に係る外周層形成装置では、外周層形成ヘッドと外周層形成材料供給部とを一体としていることが望ましい。上記の外周層形成装置によれば、外周層形成ヘッドと外周層形成材料供給部とを最も近接した状態で配置することができる。これにより、上述した材料の落下防止効果及び外周層形成ヘッドの破損防止効果をより発揮することができる。
ところで、外周層形成ヘッドと外周層形成材料供給部とが別体の場合には、両者が接触することが起こり得る。しかし、上記の外周層形成装置のように外周層形成ヘッドと外周層形成材料供給部とを一体とすれば、両者の接触を防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る外周層形成装置では、外周層形成材料供給部を被外周層形成部材の支持状態における被外周層形成部材の上方に配置することが望ましい。この場合、外周層形成材料の落下方向に外周面が位置するため、より外周層形成材料の落下を低減することができる。
【0014】
本発明に係る外周層形成装置は、支持部材の軸方向への移動、軸の軸径方向への移動及び軸の軸周方向を回転方向とする回転運動のうち、少なくとも1つを制御可能な第一の駆動機構を備えていることが望ましい。また、本発明に係る外周層形成装置は、外周層形成ヘッドの軸方向への移動、軸の軸径方向への移動及び軸の軸周方向を回転方向とする回転運動のうち、少なくとも1つを制御可能な第二の駆動機構を備えていることが望ましい。
上記の外周層形成装置によれば、具体的に被外周層形成部材の外周面に外周層を形成することができる。
【0015】
本発明に係る外周層形成装置では、第一の駆動機構及び第二の駆動機構の少なくとも一方は、電気信号が入力されることにより作動し、電気信号を出力することにより第一の駆動機構及び第二の駆動機構の少なくとも一方の作動を制御する電子制御手段を備えていることが望ましい。
【0016】
ところで、特許文献1に記載の外周形成装置は、カムを用いてスキージの作動を制御している。このため、煩雑な工程を有するカムの入れ替え無しでは、異なる外周形状を有する被外周層形成部材の外周層を形成することができなかった。しかし、上記の外周層形成装置では、電子制御手段が第一の駆動機構及び第二の駆動機の少なくとも一方の作動を制御するため、同一構成の外周形成装置を用いて多種多様の外周形状を有する被外周層形成部材に外周層を形成することができる。
【0017】
本発明に係る外周層形成装置では、所定の角度を30〜60°とすることが望ましい。この場合、より均一な外周層を形成することができる。外周層が均一となるため、外周層形成後に得られるハニカム構造体からの排ガス漏れを防止することができるとともに、セル壁の欠け等を防止することができ、良好な外観を得ることができる。
【0018】
本発明に係る外周層形成装置では、被外周層形成部材の軸方向に直交する断面の形状が、非円形状の楕円形、長円形、略三角形、凹形状、多角形、又は、略多角形であることが望ましい。この場合、本発明に係る外周層形成装置は、より効果を発揮することができる。
特に、電子制御手段が、支持部材を作動させる第一の駆動機構及び外周層形成ヘッドを作動させる第二の駆動機構の少なくとも一方を制御する場合には、例えば外周形状が変極点を有する多角形状の場合にも、被外周層形成部材の外周形状に対する所定の角度を一定に保つことができる。
また、楕円、長円形のように外周形状の曲率が変化する形状の場合には、その曲率に応じて所定角度を変化させることもできる。これによれば、例えば曲率の大きい部分と小さい部分とで所定厚さの外周層を形成可能な角度が異なる場合であっても、より均一な外周層を形成することができる。
【0019】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、セラミック原料を成形して、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製し、ハニカム成形体を焼成して得た一又は複数のハニカム焼成体からなる柱状のハニカムブロックの外周面に外周層を形成する外周層形成装置を用いてハニカム構造体を製造する方法であって、
外周層形成装置は、支持部材と、面を持つスキージを有する外周層形成ヘッドと、外周層形成材料を外周面に供給する外周層形成材料供給部とを備えており、
支持部材がハニカムブロックをその軸が水平方向となるように軸方向の両側から挟むように支持する工程と、外周層形成材料供給部が外周面に材料を供給工程する工程と、スキージ及びハニカムブロックのうち少なくとも一方がスキージの面と、外周面上において軸方向と平行な線を含み、かつ外周面に接する仮想面とが、所定の角度を維持するように移動することにより、外周面に外周層を形成する工程とを備えている。
【0020】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法によれば、ハニカムブロックが水平に支持されているため、重力による外周層形成材料のハニカムブロックからの落下を防止することができる。それによると、例えば落下した外周層形成材料が外周層形成装置の回転軸等に付着することを防止し、回転軸の回転不良などの不具合の発生を防止することができる。
また、外周層形成材料のハニカムブロックからの落下が防止される結果、落下した材料を頻繁に掃除する必要がなくなるので、メンテナンスの回数を低減させることができ、ランニングコストの低減も図ることができる。
また、ハニカムブロックが水平に支持されるため、ハニカムブロックに形成された外周層が重力により落下して偏りが生じるのを防止することができ、特許文献1に比べて外周層の均一性をより向上させることができる。
【0021】
また、本発明に係るハニカム構造体の製造方法では、外周層形成装置は、支持部材の軸方向への移動、軸の軸径方向への移動及び軸の軸周方向を回転方向とする回転運動のうち、少なくとも1つを制御可能な第一の駆動機構、及び、外周層形成ヘッドの軸方向への移動、軸の軸径方向への移動及び軸の軸周方向を回転方向とする回転運動のうち、少なくとも1つを制御可能な第二の駆動機構のうち、少なくとも一方と、電気信号を出力することにより、第一の駆動機構および第二の駆動機構の少なくとも一方の作動を制御する電子制御手段とを備え、
電子制御手段が、所定の角度を維持するようにハニカムブロックの外周に対してスキージを相対移動させるための理想軌跡を求めるステップと、スキージを相対移動させた時のスキージの実際の移動軌跡を求めるステップと、理想軌跡と実際の移動軌跡とが一致するように第一の駆動機構および第二の駆動機構の少なくとも一方の作動を制御するステップとを含んでいることが望ましい。
【0022】
このハニカム構造体の製造方法によれば、第一の駆動手段及び第二の駆動手段のうち少なくとも一方を電子制御手段が求めた理想軌跡に基づいて制御する。さらに、電子制御手段はスキージの実際の移動軌跡を監視し、理想軌跡と一致するように制御する。その結果、スキージの面と外周面に接する仮想面との所定の角度が維持される。これにより、より均一な外周層を形成することができる。
ところで、特許文献1に記載の外周形成装置は、カムを用いてスキージの作動を制御している。このため、煩雑な工程を有するカムの入れ替え無しでは、異なる外周形状を有するハニカムブロックの外周層を形成することができなかった。しかし、上記のハニカム構造体の製造方法では、電子制御手段が第一の駆動機構及び第二の駆動機の少なくとも一方の作動を制御するため、同一構成の外周形成装置を用いて多種多様の外周形状を有するハニカムブロックに外周層を形成することができる。
【0023】
本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、上記ハニカム焼成体がシール材層を介して複数個接着されたハニカム焼成体の集合体に切削加工を施し、上記ハニカムブロックを作製する工程を含むことが望ましい。
【0024】
また、本発明に係るハニカム構造体の製造方法では、所定の角度を30〜60°とすることが望ましい。この場合、外周層をより均一とすることができる。
【0025】
また、本発明に係るハニカム構造体の製造方法では、ハニカムブロックの軸方向に直交する断面の形状が、楕円形、長円形、略三角形、凹形状、多角形、又は、略多角形であることが望ましい。この場合、本発明に係るハニカム構造体の製造方法は、より効果を発揮することができる。
電子制御手段が、支持部材を作動させる第一の駆動機構及び外周層形成ヘッドを作動させる第二の駆動機構の少なくとも一方を制御する場合には、例えば外周形状が変極点を有する多角形状の場合にも、被外周層形成部材の外周形状に対する所定の角度を一定に保つことができる。
また、楕円、長円形のように外周形状の曲率が変化する形状の場合には、その曲率に応じて所定角度を変化させることもできる。これによれば、例えば曲率の大きい部分と小さい部分とで所定厚さの外周層を形成可能な角度が異なる場合であっても、より均一な外周層を形成することができる。つまり、種々の形状のハニカムブロックを好適に製造することができ、加えて、結果物であるハニカムブロックの仕様変更や設計変更にも簡便に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態の外周層形成装置を示す正面図である。
【図2】図1に示した外周層形成装置の側面図である。
【図3】図3(a)は、被外周層形成部材であるハニカムブロックの一例を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、ハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図4】図4(a)は、ハニカム構造体を構成するハニカム焼成体を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、そのα−α線断面図である。
【図5】第一実施形態の外周層形成装置の電気的接続を示したブロック図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る外周層形成装置の作動を示したフローチャートである。
【図7】ハニカムブロックの外周面とスキージとの関係を示す模式図である。
【図8】理想軌跡を算出する演算処理工程を示すフローチャートである。
【図9】図9(a)〜(c)は、被外周層形成部材に外周層を形成するための原理を示す模式図である。
【図10】制御工程を示すフローチャートである。
【図11】排ガス漏れ試験装置の説明図である。
【図12】第二実施形態を示す断面図である。
【図13】図13(a)は、スキージの断面形状の一例を示す模式図であり、図13(b)は、スキージの断面形状の別の一例を示す模式図であり、図13(c)は、スキージの断面形状のさらに別の一例を示す模式図である。
【図14】図14は、スキージの断面形状の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第一実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第一実施形態について図を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第一実施形態の外周層形成装置を示す正面図であり、図2は、図1に示した外周層形成装置の側面半断面図である。
なお、構成の理解を容易にするために図1においては、外周層形成ヘッドなどが省略されている。また、図2においては、図1の右側に位置する支持部材などが省略されている。
【0028】
外周層形成装置10は、支持部材21、22、運動制御機構(第一の駆動機構)20、40、50、外周層形成ヘッド60及び外周層形成材料供給部70を備えている。
【0029】
まず、支持回転制御機構20について説明する。支持回転制御機構20は、ハニカムブロック(被外周層形成部材)100の支持及び軸Oの軸周方向の回転を制御するもので、支持部材21、22、シャフト23、24、シャフト受け25、26、及びθ軸サーボ27などから構成される。
【0030】
支持部材21、22は円板状であり、その外形がハニカムブロック100の断面からはみ出さないような大きさを有している。支持部材21、22の支持面21a、22a(支持部材21、22とハニカムブロック100との接触面)は、平行かつ対向するように配置されている。
【0031】
この支持部材21、22は、断面が楕円形状である柱状のハニカムブロック100を、その軸(楕円の中心軸、図7中、破線O)の軸方向(図7中、矢印Eの方向)の両側から支持する。このハニカムブロック100については後述する。支持面21a、22aは鉛直方向に配置されているため、ハニカムブロック100(被外周層形成部材)はその軸が水平方向となるように支持される。なお、図2に示すハニカムブロック100は、図1においては図面の簡略化のために省略してある。
【0032】
図1中左側に位置する一の支持部材21は、支持面21aと反対側の面の中央付近においてシャフト23の一端に固定されている。シャフト23はシャフト受け25により回転自在に支持されている。また、シャフト23の支持部材21と反対側には、ステッピングモータを備えたθ軸サーボ27が配置されている。つまり、支持部材21とθ軸サーボ27とは、動力経路がつながっているため、θ軸サーボ27の作動により、支持部材21の回転運動を制御することができる。
【0033】
一方、図1中の右側に位置する他の支持部材22は、一の支持部材21と同様にシャフト24に固定され、シャフト受け26に支持されている。この他の支持部材22は、一の支持部材21とは異なり、動力源であるサーボに連結されていないため、単独で回転運動をすることはない。つまり、他の支持部材22は、ハニカムブロック100を支持した状態でのみ、支持部材21の回転運動に追従することができる。なお、他の支持部材22は、サーボ等の動力源に連結されることにより、一の支持部材21と同期して回転運動してもよい。
【0034】
シャフト受け25は、支持面21aと平行に配置された固定板29に固定されている。この固定板29は、支持面21aに垂直に配置された支持板31に固定されている。支持板31、32は、その後方側の面で支持スライダー33、34及び支持レール35を介してスライド可能に基盤41に配置されている。
【0035】
これによると、支持板31、32と一体の支持部材21、22のz軸方向(図1参照)の移動を、支持板31、32の移動により行うことができる。従って、支持面21aと支持面22aとの間の距離、つまりハニカムブロック100の支持動作を支持板31、32のz軸方向への移動により制御することができる。
【0036】
なお、固定板29、30は、基盤41に配置されたエアシリンダ36と接続されている。エアシリンダ36のz軸方向での往復運動により、固定板29、30が基盤41に対し相対的にz軸方向でスライドする。固定板29、30がスライドすることで、支持面21aと支持面22aとの間の距離が変化する。すなわち、エアシリンダ36は、支持面21aを支持面22aに近づけたり遠ざけたりするものである。
【0037】
次に、昇降制御機構40について説明する。昇降制御機構40は、支持部材21、22のy軸方向の移動を制御するもので、基盤41、鉛直スライダー42、ボールネジ43、y軸サーボ44などで構成されている。
【0038】
基盤41は、鉛直スライダー42に取り付けられている。筒状の鉛直スライダー42は、鉛直方向に伸びるボールネジ43とその内部で螺合している。ボールネジ43は、y軸サーボ44のステッピングモータに連結されている。y軸サーボ44は、天板45に固定されている。
【0039】
このような構成の昇降制御機構40では、y軸サーボ44が作動することによりボールネジ43が回転して、この回転とともに鉛直スライダー42がy軸方向に昇降する。従って、鉛直スライダー42と一体の基盤41の鉛直方向への昇降運動をy軸サーボ44に備え付けられたステッピングモータの回転運動により自在に制御することができる。
【0040】
次に、前後運動制御機構50について説明する。前後運動制御機構50は、昇降制御機構40、ひいては支持回転制御機構20の前後(x軸)方向の移動を制御するものであり、水平スライダー51、水平レール52、ボールネジ53、及びx軸サーボ54などで構成されている。
【0041】
昇降制御機構40は、その下部で水平スライダー51と連結されている。水平スライダー51は、水平レール52上にスライド可能に取り付けられている。水平スライダー51は、水平方向(x軸方向)に伸びるボールネジ53と螺合している。ボールネジ53は、x軸サーボ54のステッピングモータに連結されている。
【0042】
このような構成の前後運動制御機構50は、x軸サーボ54が備えるステッピングモータの回転によりボールネジ53が回転し、このボールネジ53の回転によってボールネジ53と螺合する水平スライダー51が、水平レール52に沿ってx軸方向で前後運動する。つまり、水平スライダー51の前後運動をx軸サーボ54によって自在に制御することができる。
【0043】
以上述べた、支持回転制御機構20、昇降制御機構40、前後運動制御機構50が請求項における第一の駆動機構を構成している。
つまり、支持状態のハニカムブロック100の軸Oの軸周方向を回転方向(図7中、矢印Cの方向)とする回転運動を支持回転制御機構20により制御する。また、y軸方向の昇降運動を昇降制御機構40により、x軸方向での前後運動を前後運動制御機構50により制御している。
言い換えると、支持回転制御機構20と昇降制御機構40と前後運動制御機構50とが共同してハニカムブロック100を支持する支持部材21、22のx−z平面における上記軸Oの軸径方向(図7中、矢印Rの方向)への移動、及び、上記軸Oの軸周方向を回転方向とする回転運動を自在に制御することができる。
【0044】
次に、外周層形成ヘッド60について説明する。外周層形成ヘッド60は、ハニカムブロック100との相対的な運動により外周層を形成するためのスキージ61を備えている。
【0045】
スキージ61は、所定の厚さを有する平面視略矩形を有している。このスキージ61は、ジョイント62を介してヘッド台63の上部に固定されている。ジョイント62は、略半円形状のやや大きい連接具62aの両端近傍に、略半円形状のやや小さい連接具62bの両端近傍が内接して、上方の両端近傍同士と下方の両端近傍同士とを貫く止めピンで回動自在に固定されて構成されている。外周層形成ヘッド60では、スキージ61とハニカムブロック100とが近接する面(以下、スキージの近接面ともいう)と反対側の面(以下、スキージの背面ともいう)と、連接具62aとが連接され、一方、連接具62bとヘッド台63の上部とが連接されている。また、止めピンは、y軸方向で存在するように配設されているので、ジョイント62は首振り機構の役割を果たし、このジョイント62を中心としてスキージ61をヘッド台63に対して左右に振ることができる。
【0046】
さらに、スキージ61の背面とヘッド台63との間には、スキージ61と水平面とのなす角度を変えることができる角度調節部材64が取り付けられている。角度調節部材64の長さを変更することにより、スキージ61の近接面と水平面との間の角度を適宜変更することができる。
【0047】
次に、外周層形成材料供給部であるペースト供給装置70について説明する。ペースト供給装置70は、シール材ペースト(外周層形成材料)を貯蔵するペースト貯蔵部71と供給ノズル72とで構成されている。
【0048】
ペースト貯蔵部71は、ヘッド台63の上部に設置されており、ペースト貯蔵部71には、シール材ペーストを外部から連続的又は断続的に供給して貯蔵することができる。ペースト貯蔵部71の側面には、供給ノズル72が接続されており、この供給ノズル72は、ペースト貯蔵部71の側面からスキージ61とハニカムブロック100との近接領域まで延びている。供給ノズル72の供給口は、ハニカムブロック100の上方に配置されている。
【0049】
ペースト供給装置70からのシール材ペーストの供給量は、自動又は手動で増減することができ、ハニカムブロック100の外形状や、外周層を形成する際の作動条件の変更等に応じて供給量を増減することができる。
【0050】
供給ノズル72は、予め決められた位置に固定されて、所定位置にシール材ペーストを供給するように構成されていてもよい。また、ハニカムブロック100に供給されたシール材ペーストを外周層形成ヘッド60により伸ばす際に、ハニカムブロック100のθ軸での回転とともに、ハニカムブロック100の長手方向Fでその先端部分を一定幅で振幅させるように構成されていてもよい。後者の場合には、シール材ペーストは、ハニカムブロック100の長手方向を振幅方向として外周面101で波打ったように供給される。
【0051】
次に、被外周層形成部材であるハニカムブロック100について図3、4を参照しながら説明する。図3(a)は、外周層形成前のハニカムブロック100の一例を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、外周層が形成されたハニカム構造体150の一例を模式的に示す斜視図である。また、図4(a)は、ハニカム構造体150を構成するハニカム焼成体110を模式的に示す斜視図であり、図4(b)は、そのα−α線断面図である。
【0052】
ハニカムブロック100は、ハニカム焼成体110がシール材層(接着剤層)120を介して複数個結束されたハニカム焼成体の集合体の外周部に断面形状が楕円形となるように切削加工を施したものである。また、ハニカム構造体150は、ハニカムブロック100の外周に外周層130を形成することで得られる。
【0053】
ハニカム焼成体110には、長手方向(図4中、矢印Fの方向)に多数のセル111が並設されている。このセル111は、セル壁112によって隔てられている。ハニカム焼成体110に形成されたセル111は、排ガスの入口側又は出口側の端部のいずれかが封止材113により目封じされ、一のセル111に流入した排ガスGは、必ずセル壁112を通過した後、他のセル111から流出するようになっており、排ガスGがこのセル壁112を通過する際、パティキュレートがセル壁112部分で捕捉されることにより、排ガスGが浄化される。すなわち、セル壁112は、フィルタとして機能するようになっている。
【0054】
以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について、工程順に説明する。
ここでは、構成材料の主成分としてセラミック原料である炭化ケイ素粉末を使用した場合のハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0055】
まず、セラミック原料として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末等の無機粉末と有機バインダとを乾式混合して混合粉末を調製するとともに、液状の可塑剤と潤滑剤と水とを混合して混合液体を調製し、続いて、混合粉末と混合液体とを湿式混合機を用いて混合することにより、成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0056】
湿潤混合物は、調製後搬送され、成形機に投入されることとなる。
湿潤混合物を押出成形機に投入すると、湿潤混合物は押出成形により所定の形状のハニカム成形体となる。このハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させ、乾燥させたハニカム成形体とする。
【0057】
次に、切断装置を用いて作製したハニカム成形体の両端を切断する切断工程を行い、ハニカム成形体を所定の長さに切断する。次いで、必要に応じて、入口側セル群の出口側の端部、及び、出口側セル群の入口側の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。このセルの目封じの際には、ハニカム成形体の端面(すなわち切断工程後の切断面)に目封じ用のマスクを当てて、目封じの必要なセルにのみ封止材ペーストを充填する。
【0058】
封止材ペーストの充填は、必要に応じて行えばよく、封止材ペーストを充填した場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体をハニカムフィルタとして好適に使用することができ、封止材ペーストを充填しなかった場合には、例えば、後工程を経て得られたハニカム構造体を触媒担持体として好適に使用することができる。
【0059】
次に、封止材ペーストが充填されたハニカム成形体を脱脂するために、ハニカム成形体を脱脂炉投入装置により脱脂炉に搬送する。脱脂炉投入装置によりハニカム成形体を脱脂炉に投入し、所定の条件で脱脂(例えば、300〜500℃)する。
【0060】
次いで、脱脂処理を施したハニカム成形体を焼成するために焼成炉に搬送する。
焼成により得られたハニカム焼成体の側面に、シール材層(接着剤層)となるシール材ペーストを均一な厚さで塗布してシール材ペースト層を形成し、このシール材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返し、所定の大きさのハニカム焼成体の集合体を作製する。なお、シール材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機繊維及び/又は無機粒子とからなるもの等が挙げられる。
【0061】
次に、このハニカム焼成体の集合体を加熱してシール材ペースト層を乾燥、固化させてシール材層(接着剤層)とする。その後、ダイヤモンドカッター等を用い、ハニカム焼成体がシール材層(接着剤層)を介して複数個接着されたハニカム焼成体の集合体に切削加工を施し、楕円柱形状のハニカムブロックを作製する。このような工程を経て外周層が形成される前のハニカムブロック100となる。
【0062】
次に、被外周層形成部材であるハニカムブロックに外周層を形成する際の外周層形成装置の作動を説明する。本実施形態の外周層形成装置は図5に示した電気的構成を有しており、各構成要素は、図5中の矢印の方向で出入力される電気信号に基づき作動する。
【0063】
電子制御手段(以下ECUと称す)81は、図示しないCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータとその周辺回路にて構成されるものである。ECU81は、演算処理部81aを有している。演算処理部81aは、位置センサ82からの値に基づいて、予め設定されたプログラムに従った演算処理を行ってθ軸サーボ27、y軸サーボ44、x軸サーボ54、及びペースト供給装置70などに制御信号を出力する。
【0064】
位置センサ82は、ハニカムブロック100の外周101と、外周層形成ヘッド60(ひいては、スキージ61)との位置関係を検出するものである。この位置センサ82として、例えば、レーザー、電磁波、超音波などを被計測体(支持部材、外周層形成ヘッド及びハニカムブロックの少なくとも一つ)に照射し、その反射波を受信して座標位置を計測するいわゆる反射型センサを用いることができる。
位置センサ82は、支持部材21、22や外周層形成ヘッド61に一体的に組み込まれた内部スケールセンサであってもよい。また、サーボ27、44、54のステップ数を演算処理部81aが演算することにより位置を検出してもよい。
なお、図5は、位置センサ82が独立して設けられた場合のブロック図を示している。
【0065】
また、ECU81は電気信号を出力することにより、サーボ27、44、54、つまりサーボのステップモータの回転制御、及びペースト供給装置70の材料供給動作の制御を行う。
【0066】
本実施形態の外周層形成装置は、図6に示したフローチャートに従って作動する。本実施形態の外周層形成装置10は、作業者がスタートスイッチを入れること等により動作を開始する。
S10では、作業者がハニカムブロック100を左右の支持部材21、22間に支持させる。具体的には、治具等を用いてハニカムブロック100を支持部材21、22に対して所定位置に位置させ、エアシリンダ36を使用して支持部材22を移動させる事により行う。
【0067】
S20では、ハニカムブロック100の外周面101とスキージ61の先端との位置を所定位置に設定する、0点調整を行う。これにより、サーボ27、44、54のステップ、及び位置センサ82の検出値などが初期値に設定される。
0点調整の方法としては、例えば、支持部材21、22により支持したハニカムブロック100と基準面としての外周層形成ヘッド60とを僅かに接触させて互いの位置を固定し、その時点でリセットボタンを押すことにより0点調整する方法がある。また、突き当て状態において、x軸サーボ、y軸サーボ及びθ軸サーボのステップ変化が無くなる位置を0点とする方法でもよい。上記のように、スキージ61を基準面として用いる場合には、変形をほとんど起こさない鉄板等により構成されたスキージ61を用いればよい。
なお、本実施形態では0点調整は、連続的に(外周層を形成するハニカムブロック1つ毎に)、又は、間欠的に(例えばハニカムブロック10個作成毎に)行えばよい。
【0068】
S30では、演算処理部81aが外周層形成後のハニカムブロック100の形状に基づいて、外周層形成ヘッド70の理想(理論上)の軌跡を計算する。この軌跡の算出は、0点に基づいて、各ハニカムブロック100ごとに行ってもよいし、予め与えられた所定のデータを用いるものであってもよい。
【0069】
S40では、演算処理部81aは、S30で算出した移動用の理想軌跡のデータ等に基づいて外周層形成材料の供給量を算出する。その算出した供給量のデータに応じて、ECU81が制御信号をペースト供給装置70に送ることにより、ハニカムブロック100の外周面101に外周層形成材料が供給される。
【0070】
S50では、外周層形成材料をスキージ61の近接面に供給するのと前後して、又は、供給するのと同時に、上記移動用の軌跡に基づいてハニカムブロック100の上記軸方向への移動、及び、上記軸の軸周方向を回転方向とする回転運動を開始する。
【0071】
ECU81は、ステップS30で算出した理想軌跡のデータに基づいて、θ軸サーボ27、y軸サーボ44、x軸サーボ54へ信号を送る。それにより、ハニカムブロック100の外周面101に対する相対位置を制御して、外周層130を形成する。
これにより、ペースト供給装置70からスキージ61の近接面に供給されたシール材ペーストがハニカムブロック100の外周面101全体に伸ばされて、一定厚さの外周層が形成される。
以上の工程をハニカム構造体の生産計画に基づいた個数(n個)の分、すなわちn回繰り返す。
【0072】
次に、図7、図8及び図9を用いて、外周層を形成する方法について詳述する。図7は、ハニカムブロック100の外周面101とスキージ61との関係を示す模式図である。
スキージ61が持つ面Bは軸方向に延びており、ハニカムブロック100の外周面101上に存在する方向(図3中、矢印Eの方向)と平行な線Lを含んでいる。さらに、面Bは、外周面101に接する仮想面A(以下、単に仮想面ともいう)に対して、所定の角度αをなしている。また、面Bの軸方向Eでの長さ、つまりスキージ61の長さは、ハニカムブロック100の軸方向Eの長さと略同一である。
【0073】
仮想面Aと面Bとがなす所定の角度αは、ハニカムブロック100の外周面101上であれば、いずれの箇所でも成立するので、面Bを持つスキージ61もハニカムブロック100の外周面101上における仮想面Aとの間において所定の関係を保つことができる。また、ハニカムブロック100の外周面101と、スキージ61との距離は、外周面に形成する外周層130の厚さに応じて設定すればよい。
なお、本明細書において、ハニカムブロック100の支持部材21、22との接触面を端面ともいい、それ以外を側面ともいう。
【0074】
上述のように、本実施形態の外周層形成装置10において、スキージの面Bとハニカムブロック100の外周面101上における仮想面Aとは、所定の角度αを形成する関係を有している。この角度αを維持するように、x軸サーボ54、y軸サーボ44及びθ軸サーボ27のそれぞれの運動を制御するためには、ハニカムブロック1を図2中の2点鎖線で示すように移動させる。この時、ハニカムブロック100の中心軸Oは、図2中のz軸から見た位置が振れるように回転している。
このようにハニカムブロック100が回転することにより、ハニカムブロック100がいずれの軌跡の状態にあっても、外周面101上における仮想面Aとスキージ61の面Bとは、仮想面Aと面Bとの間の角度がα(図7参照)が一定となっている。
【0075】
上述のように、スキージ61の面Bと、仮想面Aとが所定の角度αを維持するように、スキージ61を外周面101に対して相対移動させる制御について説明する。
【0076】
ハニカムブロック100を軸方向と直交する方向で切断した際の切断面において、その切断面の外周(以下、単に外周ともいう)を、所定の半径の円の円弧部分が集合して形成された外周として扱い、各円弧が属する円の中心を、ハニカムブロック100の軸方向を中心とした回転の回転中心とするように、円弧長に対する中心角の分だけハニカムブロック100をθ軸サーボ27により回転させる。この原理により、被外周層形成部材としてのハニカムブロックの形状が、楕円柱形状に限定されることなく、他の任意の形状を有するハニカムブロックにも適用することができる。ただし、上記原理では、各円弧が属する円の中心と、ハニカムブロック100を支持する面の中心(支持部材の回転中心。以下、支持中心ともいう。)とは必ずしも一致しないので、以下のような手順を行うことで上記の不一致を修正する。
【0077】
上記不一致の修正は、以下の手順1)〜11)により行うことができる。ここでは、ハニカムブロックの形状が、楕円柱形状である場合の手順を示すが、他の形状であってもこの原理を適宜変更することで適用することができる。
【0078】
まず、ECU81内部で行われる演算処理工程(S30)についての詳細を説明する。図8は、演算処理工程(S30)を示すフローチャートであり、図9(a)〜(c)は、被外周層形成部材に外周層を形成するための原理を示す模式図である。
【0079】
この演算処理工程(S30)は、支持部材21、22がハニカムブロック100を支持したことをセンサが感知し、ECU81に検知信号を出力することなどをきっかけとしてされる。
【0080】
1)図9(a)に示すように楕円状の外周の短軸と長軸とをそれぞれx軸及びy軸に対応させて、ハニカムブロック100の支持中心Oを原点に一致させるようにx−y座標を設定する(ステップS305)。
2)x軸と外周とが交わる点において、スキージ61と外周とを所定角度で接触させ、その交点Aの座標を(a,0)とする(図9(a)を参照)(ステップS310)。このときの交点Aにおける外周の接線はy軸と平行になり、また、交点Aにおける接線とスキージ61との間の角度は、所定の角度αである。
3)外周上の任意の点(以下、外周点Bともいう)を座標(x,y)にとり、この外周点Bにおける接線Hをひき、外周点Bが属する円弧の中心Cを求め、この円弧の中心Cの座標を(e,f)とする(ステップS315)。このときのx軸と線分BCとの間の角度をθとすると、下記式(i)が成り立つ。
θ=arctan((y−f)/(x−e)) (i)
4)外周点B(座標(x,y))を交点A(座標(a,0))の位置まで平行移動させる。これにともなって、外周点Bでの接線Hが交点Aを通るようになり、また、支持中心Oも座標(0,0)から(a−x,−y)まで平行移動することになる(図9(b)を参照)(ステップS320)。
5)そして、外周点B(図9(b)では交点Aと一致している)における接線Hがy軸と平行になるように、交点A(a,0)を中心として、移動後の支持中心O′(座標(a−x,−y))を角度θの分だけ回転させる(図9(b)、(c)を参照)(ステップS325)。交点Aを中心とした支持中心O′の回転の行列式は次式(i)で表される。
【0081】
【数1】

【0082】
ただし、式(ii)では、交点Aを原点とするような回転のための行列変換を行っているので、次式(iii)のように、得られた座標に(a,0)を加えて平行移動させることにより、原点Oを中心とした座標系における回転後の支持中心O′′の座標を得ることができる(ステップS330)。
【0083】
【数2】

【0084】
6)このような座標の移動により、ハニカムブロック100の支持中心Oから支持中心O′′に移動する際に描く軌跡が得られる(図9(c)における実線の矢印)。また、回転後における外周面上における仮想面とスキージ61の面との関係として、図9(c)に示す外周点B(交点Aと重なっている)における接線Hが、スキージ61と所定の角度αをなしている。すなわち、支持中心が上記軌跡を描くことによって、スキージ61の面は、外周面上における仮想面と所定の角度αを維持しながら、交点Aから外周点Bまで外周面に沿って移動することができる。
【0085】
ここでは、説明の便宜のために、回転角度θを大きくして説明したが、実際には、回転角度θを微小角度にして、ハニカムブロック100の外周面の全外周にわたるように多数点において上記回転の行列変換を行って(ステップS335)、ハニカムブロック1の支持中心が描く理想軌跡を求めることになる(ステップS340)。
なお、ステップS335において、ハニカムブロック100の外周面の全外周にわたって求める回転後の支持中心O′′の点数(n数)の設定については、ハニカムブロック(被外周層形成部材)100の形状に応じ、任意の判断基準に基づいて設定することができる。
以上のステップにより、被外周層形成部材としてのハニカムブロック100を上記所定の角度を維持するように移動させるための理想軌跡を予め求めることができる。
【0086】
7)このようにして求めた理想軌跡に基づき、この理想軌跡を形成する支持中心の座標をx軸成分、y軸成分及びθ軸成分(回転角度θに相当する)に分解し、時間の進行に応じたそれぞれの成分ごとの成分軌跡を求める(ステップS345)。
【0087】
次に、図10を用いて制御工程(S50)について説明する。
8)x軸サーボ、y軸サーボ及びθ軸サーボのそれぞれの動作を制御する制御機構(図示せず)に、ステップS345で求めた成分軌跡を入力する(ステップS505)。
9)支持部材によりハニカムブロック100を支持し、入力した成分軌跡に基づいて、実際に、x軸サーボ、y軸サーボ及びθ軸サーボを作動させるとともに、その際の支持中心の位置データ及び回転角度データを位置センサによりモニタリングしながら支持中心の軌跡を追跡する(ステップS510)。
以上のステップにより、ハニカムブロック100を所定の角度を維持するように移動させたときの軌跡を追跡して実際の追跡軌跡を求めることができる。
【0088】
10)追跡軌跡と計算により求めた理想軌跡との差を求め、追跡軌跡が理想軌跡に可及的に一致するように位置データ及び回転角度データを補正する(ステップS515)。
11)ステップS515で補正した各種データに基づいて、ステップS505〜ステップS515までの手順を所定回数繰り返し、さらに追跡軌跡と理想軌跡との差を許容範囲内に収まるように小さくする(ステップS520)。
以上のステップにより、理想軌跡と追跡軌跡との差を可及的に小さくするように追跡軌跡を補正することができる。
【0089】
追跡軌跡の補正により理想軌跡と追跡軌跡との差が許容範囲内になったら、その補正後の追跡軌跡(移動用の軌跡)に係る成分軌跡を上記制御機構に入力し、外周層形成装置による外周層の形成を開始する(ステップS525)。上記成分軌跡は、例えば、移動用の軌跡を各時間におけるx成分、y成分及びθ成分に分解することにより得られる。
【0090】
これらのステップにより、外周層形成ヘッド60が有するスキージ61とハニカムブロック100の外周面101とは、図7に示した所定の関係を維持しながら相対的に移動することになる。
【0091】
以下、本実施形態の外周層形成装置及び外周形成装置を用いて製造したハニカム構造体の製造方法についての作用効果を列挙する。
(1)支持部材21、22が柱状のハニカムブロック100を、その軸が水平方向となるように軸方向の両側から支持するので、外周層130が重力によって偏ることを防止することができ、外周層の均一性をより向上させることができる。
また、ハニカムブロックから落下するシール材ペーストを低減することできるため、落下したシール材ペーストが外周層形成装置の回転軸等に付着する事態を防止することができ、回転軸の回転不良などの不具合の発生を防止することができる。
これにより、回転軸を頻繁に掃除する必要がなくなるので、メンテナンスの回数を低減させることができ、ランニングコストの低減も図ることができる。
【0092】
(2)シール材ペーストをハニカムブロック100の外周面101に供給するペースト供給装置80が備えられており、連続的にハニカム構造体の外周層を形成することができる。また、供給ノズル72がハニカムブロック100の支持状態における上方に配置されているため、外周層形成材料の落下方向に外周面101が位置する。これにより、外周層形成材料の落下を低減することができる。
【0093】
(3)本実施形態の外周層形成装置10は、支持部材21、22の軸方向への移動、軸の軸径方向への移動及び軸の軸周方向を回転方向とする回転運動のうち、少なくとも1つを制御可能な運動制御機構20、40、50を備えている。これにより、上記所定角度αを維持しながら、スキージに対して被外周層形成部材を移動させることができ、ハニカムブロック100の外形状に関わらず、所定の厚さで効率的に外周層130を形成することができる。
【0094】
(4)ECU81が運動制御機構20、40、50の作動を制御するため、複雑な機構や煩雑な工程を必要とすることなく、同一構成の外周形成装置を用いて多種多様の外周形状を有するハニカムブロック100に外周層を形成することができる。
【0095】
(5)ハニカムブロック100の外周面とスキージとの間の角度は、所定の角度αで一定であるので、より均一な外周層を形成することができる。外周層が均一となるため、外周層形成後のハニカムブロック(すなわち、ハニカム構造体)からの排ガス漏れを防止することができるとともに、セル壁の欠け等を防止することができ、良好な外観を得ることができる。
【0096】
(6)ハニカムブロック100の軸方向に直交する断面の形状が外周形状の曲率が変化する楕円形状の場合であっても、その曲率に応じて所定角度を対応させることもでき、均一厚さの外周層を形成することができる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明の第一実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。
(実施例1)
平均粒径10μmのα型炭化ケイ素粉末250kgと、平均粒径0.5μmのα型炭化ケイ素粉末100kgと、有機バインダ(メチルセルロース)と30kgとを混合し、混合粉末を調製した。
次に、別途、潤滑剤(日本油脂社製 ユニルーブ)22kgと、可塑剤(グリセリン)5kgと、水65kgとを混合して液体混合物を調製し、この液体混合物と混合粉末とを湿式混合機を用いて混合し、湿潤混合物を調製した。
なお、ここで調製した湿潤混合物の水分含有量は、24重量%であった。
【0098】
次に、搬送装置を用いて、この湿潤混合物を押出成形機に搬送し、押出成形機の原料投入口に投入した。
なお、押出成形機投入直前の湿潤混合物の水分含有量は、23.5重量%であった。
そして、押出成形により、図4に示した形状の成形体を作製した。
【0099】
次に、マイクロ波乾燥機等を用いて上記生成形体を乾燥させた後、上記湿潤混合物と同様の組成の封止材ペーストを所定のセルに充填した。
次いで、再び乾燥機を用いて乾燥させた後、400℃で脱脂し、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間で焼成を行うことにより、気孔率が40%、平均気孔径が11μm、その大きさが34.3mm×34.3mm×250mm、セルの数(セル密度)が46.5個/cm、セル壁の厚さが0.30mmの炭化ケイ素焼結体からなるハニカム焼成体を製造した。
【0100】
平均繊維長30μmのアルミナファイバ30重量%、平均粒径0.6μmの炭化ケイ素粒子32重量%、シリカゾル25重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び、水28.4重量%を含む耐熱性のシール材ペーストを用いてハニカム焼成体を多数接着させ(シール材層(接着剤層)の厚さ1mm)、さらに、130℃で乾燥させた。続いて、乾燥したハニカム焼成体の集合体をダイヤモンドカッターを用いて切断することにより、図3(a)に示すように、その長手方向(図3(a)に示した両矢印Eの方向)に直交する断面が長軸206.4mm、短軸99.4mmの楕円柱状であるハニカムブロック100を作製した。
【0101】
次に、無機繊維としてシリカ−アルミナファイバ(平均繊維長100μm、平均繊維径10μm)23.3重量%、無機粒子として平均粒径0.3μmの炭化ケイ素粉末30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiOの含有率:30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%及び水39重量%を混合、混練してシール材ペーストを調製した。
【0102】
次に、第一実施形態の外周層形成装置10を用いて、上記シール材ペーストによりハニカムブロック100の外周面に外周層130を形成した。外周層形成装置10の具体的な仕様や外周層を形成する手順としては、以下の通りである。
支持面にウレタン層が形成された支持部材21、22により、ハニカムブロック100を200kgの押圧で挟持した。次いで、外周層形成ヘッド60のスキージ61の面と外周面上における仮想面との間の角度αを30°とし(図7参照)、外周面とゴム製のスキージ61とがちょうど接触するように設定した。その後、ハニカムブロック100とスキージ61との間の相対速度がほぼ7m/minとなるように、上記角度αを維持しながらハニカムブロック100をx軸サーボ、y軸サーボ、及び、θ軸サーボの作動により移動させた。この間に、外周層形成材料供給部70から上記シール材ペーストを200g供給した。このようにして、ハニカムブロック100の外周面に厚さ0.3mmの外周層130を形成した。
【0103】
そして、このシール材ペーストを130℃で乾燥することで、断面形状が長軸207mm、短軸100mmの楕円形状であり、長さが254mmであって、シール材ペーストを乾燥させた外周層130が外周面に形成された楕円柱状のハニカム構造体150を作製した。
【0104】
(実施例2)
上記所定の角度αを表1に示す値に設定したこと以外は、実施例1と同様にハニカム構造体を作製した。
【0105】
(実施例3、4)
上記所定の角度αを表1に示す値に設定し、スキージの先端部分(ハニカムブロックとの近接部分)を図14に示したように斜めに切り落としたような形状として、切り落とし角度βを設定したこと以外は、実施例1と同様にハニカム構造体を作製した。
【0106】
(参考例1〜4)
上記所定の角度α、スキージの先端部分の切り落とし加工の有無、及び、切り落とし角度βを表1に示すように設定したこと以外は、実施例1と同様にハニカム構造体を作製した。
【0107】
(比較例1)
ハニカムブロックの外周面とスキージとの間の角度を一定に維持することなく外周層を形成したこと以外は、実施例1と同様にハニカム構造体を搬送した。
上記角度を一定に維持せずに外周層を形成する方法としては、ハニカムブロックの運動を制御しつつ移動させるのに、y軸サーボを作動させずにx軸サーボ及びθ軸サーボのみを作動させて外周層を形成するという手順を採用した。具体的には、ハニカムブロックの両端面をその断面の長軸が水平となるように支持部材21、22で支持し、外周面上における仮想面とスキージの面との間の初期角度が60°となるように外周層形成ヘッド60を配置した。次いで、外周面とスキージ61との最短距離を一定に維持するように、θ軸サーボによる回転とともにx軸サーボによるx軸方向での移動を行う。図9で示す断面の模式図でいうところの原点Oは、y軸方向では移動せずにx軸方向でのみ移動する。この手順では、上記最短距離が一定になるものの、外周面とスキージとの間の角度は一定ではない。
【0108】
実施例1〜4、参考例1〜4、及び、比較例1で作製したハニカム構造体について、それぞれ以下の項目について評価を行った。
【0109】
(目視による外観の評価)
支持部材を支持するシャフトへのシール材ペーストの付着、及び、作製したハニカム構造体について、それらの外観の状態を目視にて調べた。
【0110】
(表面粗さ測定)
JIS B 0601−1982に基づき、ハニカム構造体の側面の最も曲率の小さい箇所において、触針式面粗度測定装置(東京精密社製)を用い、トレース速度0.3mm/s、カットオフ2.5mm、基準長さ2.5mm、縦倍率500倍にて円周方向に走査し、表面粗さ(Rmax)を測定した。
【0111】
(排ガス漏れ試験)
作製したハニカム構造体について、図11に示したような排ガス漏れ試験装置270を用いて排ガス漏れ試験を行った。図11は、排ガス漏れ試験装置の説明図である。
【0112】
この排ガス漏れ試験装置270は、2Lのコモンレール式ディーゼルエンジン276と、エンジン276からの排ガスを流通させる排ガス管277と、排ガス管277に接続されこの排ガス管277の一部を構成する金属ケーシング271と、過剰の排ガスを排出する配管280とで構成されている。金属ケーシング271は、エンジン276から100cmの距離で配置されており、この金属ケーシング271に、厚さ8.5mmのセラミックファイバー製マット272を巻いたハニカム構造体150を固定する。ここで、ハニカム構造体150としては、実施例、参考例及び比較例のそれぞれで作製したハニカム構造体を用いた。
【0113】
排ガス漏れ試験は、エンジン276を回転数が3000min−1、トルクが50Nmで30分間運転し、エンジン276からの排ガスをハニカム構造体150に流通させて、外周層から排ガスが漏れて、マット272へススが付着しているか否かを確認することで行った。
【0114】
(外周層の厚さの測定)
作製したハニカム構造体の外周層について、この外周層を任意の箇所で5等分し、それぞれ等分した外周上の5箇所で、工場顕微鏡TMM(トプコン社製)を用い、外周層においての厚さを測定した。
それぞれの評価の結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
実施例1〜4及び参考例1〜4では、回転軸などへのシール材ペーストの付着が見られず、また、外周層を形成する手順の間の回転運動の不具合等も生じることなく、ハニカムブロックの外周面に外周層を形成することができた。
【0117】
表1から明らかなように、実施例1〜4では、外観に凹凸もなく良好であり、表面粗さも小さく、排ガス漏れ試験でもマット272へのススの付着はほとんど見られなかった。また、外周層130の厚さもばらつきがなく、均一な厚さで形成されていた。参考例1〜4においては、外観にわずかに凹凸が生じ、表面粗さも実施例より若干大きくなり、排ガス漏れ試験ではマット272のごく一部にススが付着しており、かつ外周層の厚さに若干のばらつきがあった。しかしながら、製品としての使用には問題がない程度であり、概ね良好な結果であった。
【0118】
一方、比較例1では、支持部材の回転運動に不具合は生じなかったものの、ハニカム構造体の外周層に欠けが生じており、その欠けに起因してか、排ガス漏れ試験においてもススがマット272において広範囲にわたって付着していた。また、表面粗さも大きく、外周層の厚さにも大きなばらつきが見られ、良好な結果を得ることができなかった。
【0119】
これにより、外周面上における仮想面とスキージの面との間で所定の角度αを維持するように外周層を形成することで、均一な厚さを有する外周層を形成することができると言える。また、上記角度αの値は特に限定されないが、30〜60°の範囲であれば、さらに均一かつ偏りのない外周層を形成しやすくなる。
【0120】
つまり、第一実施形態の外周層形成装置を用いてハニカムブロックの外周面に外周層を形成することにより、支持部材の回転運動の不具合等を生じさせることなく、均一な厚さを有し、排ガスの漏れが低減された外周層を有するハニカム構造体を効率的に製造することができる(作用効果(5))。
また、作用効果(7)として、角度αの値が、30〜60°の範囲であれば、さらに均一かつ偏りのない外周層を形成することができる。
【0121】
(第二実施形態)
図12に示す本実施形態の外周層形成装置は、シール材ペーストをハニカムブロック100の外周面に供給するペースト供給装置70の供給ノズル72が外周層形成ヘッド70と一体に配置されるとともに、スキージ61の進行方向Pに配置されている。
【0122】
この供給ノズル72の先端部分におけるシール材ペーストの供給口の形状は、特に限定されず、円形、正方形、矩形、楕円形、細長い矩形、又は、これらの組み合わせ、その他任意の形状であってもよい。また、一の供給ノズル72の先端部分に一の供給口が形成されていてもよいし、複数の供給口が形成されていてもよい。
【0123】
また、ペースト供給装置70と外周層形成ヘッド60とが一体に構成されている態様としては、例えば、スキージ61の近接面まで供給ノズル72が延びているのではなく、スキージ61の近接面に至るように形成されたスリットを通してシール材ペーストを外周面101に供給する等の態様を例示することができる。
【0124】
ペースト供給装置70が、外周層形成ヘッド60の内部に設置されていると、シール材ペーストの外周面への供給と略同時に、ハニカムブロック100の外周面に外周層が形成される。
【0125】
このような実施形態でも第一実施形態の作用効果(1)〜(6)を有するとともに、外周層形成ヘッドとペースト供給装置とを最も近接した状態で配置することができるので、材料の落下防止効果をより発揮することができる。
また、外周層形成ヘッド60とペースト供給装置70とが別体の場合に生じるような両者の接触という不測の事態を防止するという作用効果を発揮することができる。
【0126】
さらに、特に外周層形成開始直後には、外周層130が形成されていない外周面101とスキージ61とが接触し、スキージ61が破損する場合がある。しかし、本実施形態では供給ノズル72が外周面101に供給した材料が即スキージ61に接触するため、上記の問題も解決することができる。
【0127】
(第三実施形態)
本実施形態では、第一実施形態に加えて、外周面における周速度を制御するような手順を有している。この場合は、下記のように、θ軸サーボによる回転運動の角速度を制御することで、外周面の周速度を制御することができる。簡単には、一定値である理想角速度をωとし、円弧の集合とみなした外周において、各円弧領域が属する円の半径の値で、各円弧領域ごとに理想角速度ωを除する。これにより、一の円弧領域が属する円の半径が、外周を構成する各円弧領域ごとに変化する場合でも、角速度ωをその円の半径により除しているので、その円の円周(すなわち、外周)における周速度は一定となる。
【0128】
このような外周層形成装置では、作用効果(1)〜(6)を発揮することができるとともに、ハニカムブロック100の外周面101における周速度も制御する。そのため、ハニカムブロック100の外周形状の曲率の変化等が生じても、ハニカムブロック100の外周面101と外周層形成ヘッド60との間に生じる応力を一定に保つことができる。その結果、外周面に一定の厚さで外周層を形成することができる。
【0129】
(第四実施形態)
第一実施形態では、支持回転制御機構20、昇降制御機構40、及び前後運動制御機構50がハニカムブロック100を移動させることにより、外周層形成ヘッドとハニカムブロック100の外周面101との相対位置を制御した例を示した。
本実施形態では、支持回転制御機構20、昇降制御機構40、及び前後運動制御機構50に代えて、外周層形成ヘッド60の軸方向Oへの移動、軸Oの軸径方向Rへの移動及び軸Oの軸周方向Cを回転方向とする回転運動のうち、少なくとも1つを制御可能な第二の駆動機構(θ軸サーボ、x軸サーボ、y軸サーボ、図示せず)を備えている。
これによっても、第一実施形態と同様の作動により、ハニカムブロック100に外周層130を形成することができる。
【0130】
したがって、本実施形態においても、第一実施形態で述べた効果(1)〜(6)を発揮できることは当然である。
なお、第一実施形態に追加して、第二の駆動手段を備えれば、ハニカムブロック100及び外周層形成ヘッドの軸Oの軸径方向Rへの移動、及び、軸Oの軸周方向Cを回転方向とする回転運動を制御できる。これにより、より容易に曲率の大きい外周形状を有するハニカムブロック100の外周面101に均一な外周層130を形成することができる。
【0131】
(第五実施形態)
第一実施形態の外周層形成装置は、上記軸の軸径方向の移動のための駆動機構として、x軸サーボ及びy軸サーボを備えているが、さらに、z軸方向への移動を制御することのできるz軸サーボを備えることにより、上記軸方向Eへの移動(図1に示すz軸方向での移動)を制御することもできる。
【0132】
これによると、支持部材21、22がハニカムブロック100を支持する動作も作業者の手によらず自動的に行うことができる。
また、例えば、樽のような軸方向に直交する断面の面積が軸方向に移動するにつれて変化するような外形状を有するハニカムブロックにも外周層を形成することができる。なお、本実施形態においても、第一実施形態の作用効果(1)〜(6)を発揮することができる。
【0133】
(第六実施形態)
第一実施形態では、0点調整を行った例を示したが、ハニカムブロック100を支持部材21、22の所定位置に精確に支持することができれば、0点調整を廃止することができる。ハニカムブロック100を支持部材21、22の所定位置に精確に指示する方法としては、固定治具を使用する方法がある。
上記固定用治具としては特に限定されず、例えば、ハニカムブロックの端面と同形状の凹部を有するウレタン製の固定用治具等が挙げられる。このような固定用治具を用いるには、支持部材21、22のハニカムブロック100の端面との接触面と、上記治具の凹部のハニカムブロック100の端面との接触面とが略同一面となるように支持部材の周囲に取り付ける等すればよい。
これによると、第一実施形態の作用効果(1)〜(6)を発揮することができるとともに、0点調整の煩雑さを減少させることができる。
【0134】
(第七実施形態)
第一実施形態の外周層形成装置を用いてハニカムブロックの外周面に外周層を形成すると、形成した外周層が均一な厚さを有し、偏りなく外周層が形成されている。従って、このような外周層を有するハニカム構造体においては、形成した外周層にクラック等が発生しにくく、外観が良好であり、製品として使用した際の排ガスの漏れを有効に防止することができる。
【0135】
このようにしてハニカムブロックの外周面に外周層を形成した後、必要に応じて、外周層が形成されたハニカムブロック、すなわちハニカム構造体に触媒を担持させる。上記触媒の担持は集合体を作製する前のハニカム焼成体に行ってもよい。
触媒を担持させる場合には、ハニカム構造体の表面に高い比表面積のアルミナ膜を形成し、このアルミナ膜の表面に助触媒、及び、白金等の触媒を付与することが望ましい。
これにより、排ガス中に含まれる有害なガス成分やパティキュレートを分解除去することができる。
【0136】
(第八実施形態)
第一実施形態で説明したハニカムブロック100は、複数のハニカム焼成体がシール材層(接着剤層)を介して結束された構成を有する集合型ハニカム構造体であるが、ハニカムブロックは、1つのハニカム焼成体から構成されている、いわゆる一体型ハニカム構造体であってもよい。
【0137】
このような一体型ハニカム構造体を製造する場合は、まず、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、集合型ハニカム構造体を製造する場合に比べて大きい以外は、集合型ハニカム構造体を製造する場合と同様の方法を用いて、ハニカム成形体を作製する。
【0138】
次に、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、上記ハニカム成形体を、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させる。
次いで、乾燥させたハニカム成形体の両端部を切断する切断工程を行う。
【0139】
次に、入口側セル群の出口側の端部、及び、出口側セル群の入口側の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填し、セルを目封じする。
その後、集合型ハニカム構造体の製造と同様に、脱脂、焼成を行うことにより一のハニカム焼成体からなるハニカムブロックを製造する。そして第一実施形態の外周層形成装置を用いてハニカムブロックの外周面に外周層を形成することにより、外周層が形成された一体型ハニカム構造体を製造することができる。
ここで一体型ハニカム構造体の主な構成材料として、コージェライトやチタン酸アルミニウムを用いることができる。
また、上記一体型ハニカム構造体にも、触媒を担持させてもよい。
本実施形態においても、当然に第一実施形態の作用効果(1)〜(6)を発揮することができる。
【0140】
(第九実施形態)
これまで、第一実施形態のハニカムブロックとして、排ガス中のパティキュレートを補集するためのハニカムフィルタに用いられるハニカムブロックを中心に説明したが、ハニカム焼成体の目封じを行わない場合には、上記ハニカムブロックは、排ガスを浄化する触媒担体(ハニカム触媒)としても好適に使用することができる。
もちろん本実施形態においても、第一実施形態の作用効果(1)〜(6)を発揮することができる。
【0141】
(その他の実施形態)
第一実施形態におけるハニカムブロック100の製造方法は、以下のようにしてもよい。
支持部材の支持面の面積は、被外周層形成部材の支持部材との接触面の面積よりも小さいことが望ましい。
上記支持面の面積が上記接触面の面積よりも大きくても、効率的に外周層を形成することができるが、上記支持面の面積が上記接触面の面積よりも小さいと、スキージの軸方向の長さを被外周層形成部材の軸方向(図7中、矢印Eの方向)の長さにわたるような大きさにすることができ、より効率的かつ均一に外周層を形成することができるので望ましい。
【0142】
スキージの軸方向の長さは、被外周層形成部材の軸方向の長さと同じか、又は、それよりも長い方が望ましい。
スキージの軸方向の長さは、被外周層形成部材の軸方向の長さに対して、同じであっても、長くても、短くてもよい。スキージの軸方向の長さが被外周層形成部材の軸方向の長さより短い場合には、スキージを外周面に沿って移動させた後、外周面において新たに外周層を形成する部分に位置するように、スキージを軸方向にスライドさせて、さらに、外周面に沿って移動させて外周層を形成すればよい。しかし、スキージの軸方向の長さが被外周層形成部材の軸方向の長さより長いと、スキージが被外周層形成部材の外周に沿って移動することにより、外周層形成材料を一回又は複数回の移動により外周面全体に伸ばすことができ、外周層を形成する動作の効率化を図ることができるとともに、より均一な外周層を形成することができる。
【0143】
支持部材の支持面には、合成ゴム、天然ゴム、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、プロピレン樹脂等の弾性材料から構成された緩衝層が設けられていることが望ましい。
支持部材の支持面に上記緩衝層が形成されていると、被外周層形成部材を支持する際の破損を防止することができ、また、緩衝層が滑り止めの役割を果たすことができるので、被外周層形成部材を支持するのに適切な圧力で支持することができる。
【0144】
図13(a)は、第一実施形態のスキージ61の断面形状の一例を示す模式図であり、図13(b)は、スキージ611の断面形状の別の一例を示す模式図であり、図13(c)は、スキージ612の断面形状のさらに別の一例を示す模式図である。また、図14は、スキージ613の断面形状の他の一例を示す模式図である。
外周層形成ヘッド60が有するスキージの断面形状としては、図13(a)に示したスキージ611のように矩形であってもよい。この場合には、ハニカムブロック100の軸方向に垂直な断面における接線(ここでは便宜的に接線Hとする)と矩形の長辺との間の角度が、所定の角度αとなる。
【0145】
また、スキージの断面形状としては、図13(b)に示したように、図13(a)に示した矩形と比較して、下辺が長くなるとともに、平行な一長辺の下部が下辺に向かって湾曲した形状であってもよい。スキージ611が図13(b)に示したような形状を有していると、スキージ611が、湾曲した領域において外周層を形成するのに充分量の外周層形成材料を保持することができるので、ハニカムブロック100の外周面にスムーズに外周層を形成することができる。この場合には、矩形と仮定した場合の長辺と上記接線Lとの間の角度が所定の角度αとなる。
【0146】
上記の他、スキージの断面形状としては、図14に示したように、矩形の一端を切り落とした幅広の台形状であってもよい。この場合は、接線Hと、接線Hとx軸との交点を通る破線Nとの間の角度がβとなっている。角度βの大きさは特に限定されないが、2〜10°の範囲であることが望ましい。角度βが2°未満であると、ハニカムブロック100とスキージ613との最近接点を抜け出た外周層形成材料がスキージから剥離しにくくなり、形成した外周層の厚さが不均一となる場合がある。一方、角度βが10°を超えると、先端部分での切り落とされた面が広くなりすぎてスキージ613と外周層形成材料との間の摩擦が大きくなり、外周層形成材料がハニカムブロック100の外周に移行しにくくなって、外周層の厚さが薄くなりやすいからである。
【0147】
スキージは、ウレタンゴム、シリコンゴム、ブチルゴム、合成ゴム等のゴム、ステンレス、鉄、ニッケル、ニッケル/コバルト等の金属、プラスチック等で構成されていることが望ましく、ゴム材料がより望ましい。
スキージがゴムで構成されていると、外周層を形成する際に被外周層形成部材の外周面における破損を防止しつつ、また、均一な外周層を形成することができる。
【0148】
スキージが上記のようなゴム材料で構成されていると、外周層を形成する際には、スキージ全体が、図13(c)に示すように湾曲する。この場合は、ハニカムブロック100の外周における接線Hと、湾曲したスキージ612のハニカムブロック100に近接する頂点における接線Iとの間の角度が、所定の角度αとなる。
【0149】
スキージの硬度は、50〜90度(JIS K 6031で規定される硬度)が望ましく、60〜80度がより望ましい。
スキージの硬度が50〜90度であると、外周層を形成する際に被外周層形成部材の外周面における欠け等の破損を防止することができるとともに、均一な外周層を形成することができるからである。
【0150】
被外周層形成部材の外周面とスキージとの最短距離は、外周面に形成される外周層の厚さに応じて変更すればよいが、スキージがゴムで構成されている場合の下限としては、上記外周面とスキージとがちょうど接触する距離(すなわち0mm)であればよく、一方、上限としては1mm以下であることが望ましい。
上記最短距離が1mmを超えると、外周層を形成するのに必要な外周層形成材料の量が多くなって不経済となり、また、均一な厚さを有する外周層を形成することが困難となる場合があるからである。
【0151】
上記スキージ及び上記被外周層形成部材のうち少なくとも一方が移動する際の上記スキージと上記被外周層形成部材との間の相対速度は、作業効率等を考慮して設定すればよいが、1〜20m/minであるとことが望ましい。
上記相対速度が1m/min未満であると、外周層の形成に必要な時間が長くなって作業効率が低下する場合があり、一方、20m/minを超えると、形成された外周層の厚さが薄くなりやすいからである。
【0152】
被外周層形成部材を支持するために加えられる支持部材の押圧は、例えば、被外周層形成部材の重量が4kgである場合、100〜300kgであることが望ましい。
上記押圧が100kg未満であると、支持部材により支持した被外周層形成部材が、外周層を形成する間に脱落するおそれがある。一方、上記押圧が300kgを超えると、被外周層形成部材の端面においてヒビや欠け等の破損が生じる場合がある。
【0153】
外周層の形成とともに、被外周層形成部材の外周面に外周層形成材料を供給する際の上記外周層形成材料供給部からの外周層形成材料の供給量としては、50〜300gであることが望ましい。
上記供給量が50g未満であると、外周層を形成するのに充分な量が、被外周層形成部材の外周面に供給されないことになり、外周層を形成する作業の効率性が低下するおそれが生じる。一方、上記供給量が300gを超えると、上記外周面への外周層形成材料の供給量が過剰となり、形成される外周層の厚さの均一化を充分に図ることができない場合がある。
【0154】
ハニカム構造体の構成材料の主成分は、炭化ケイ素に限定されるわけではなく、他のセラミック原料として、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等を用いることができる。
これらのなかでは、非酸化物セラミックが好ましく、炭化ケイ素が特に好ましい。耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。なお、上述したセラミックに金属ケイ素を配合したケイ素含有セラミック、ケイ素やケイ酸塩化合物で結合されたセラミック等のセラミック原料も構成材料として挙げられ、これらのなかでは、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたもの(ケイ素含有炭化ケイ素)が望ましい。
【0155】
湿潤混合物における炭化ケイ素粉末の粒径は特に限定されないが、後の焼成工程で収縮の少ないものが好ましい。例えば、0.3〜50μmの平均粒径を有する粉末100重量部と0.1〜1.0μmの平均粒径を有する粉末5〜65重量部とを組み合わせたものが好ましい。
ハニカム焼成体の気孔径等を調節するためには、焼成温度を調節する必要があるが、無機粉末の粒径を調節することによっても、気孔径を調節することができる。
【0156】
湿潤混合物における有機バインダは特に限定されず、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール等が挙げられる。このなかでは、メチルセルロースが望ましい。有機バインダの配合量は、通常、無機粉末100重量部に対して、1〜10重量部が望ましい。
【0157】
湿潤混合物における可塑剤は、特に限定されず、例えば、グリセリン等が挙げられる。また、潤滑剤は特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系化合物等が挙げられる。
潤滑剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル等が挙げられる。
なお、可塑剤、潤滑剤は、場合によっては、混合原料粉末に含まれていなくてもよい。
【0158】
また、湿潤混合物を調製する際には、分散媒液を使用してもよく、分散媒液としては、例えば、水、ベンゼン等の有機溶媒、メタノール等のアルコール等が挙げられる。
さらに、湿潤混合物中には、成形助剤が添加されていてもよい。
成形助剤としては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0159】
さらに、湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等を挙げることができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【0160】
また、ここで調製した、炭化ケイ素粉末を用いた湿潤混合物は、その温度が28℃以下であることが望ましい。温度が高すぎると、有機バインダがゲル化してしまうことがあるからである。
また、湿潤混合物中の有機分の割合は10重量%以下であることが望ましく、水分の含有量は8.0〜30.0重量%であることが望ましい。
【0161】
セルを封止する封止材ペーストとしては特に限定されないが、後工程を経て製造される封止材の気孔率が30〜75%となるものが望ましく、例えば、湿潤混合物と同様のものを用いることができる。
【0162】
また、セル封止ハニカム成形体の集合体を作製する際には、予めセル封止ハニカム成形体同士をスペーサを介して組み上げておき、その後、セル封止ハニカム焼成体同士の間隙にシール材ペーストを注入することにより、セル封止ハニカム焼成体の集合体を作製してもよい。
【0163】
シール材ペーストにおける無機バインダとしては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機バインダのなかでは、シリカゾルが望ましい。
【0164】
シール材ペーストにおける有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機バインダのなかでは、カルボキシメチルセルロースが望ましい。
【0165】
シール材ペーストにおける無機繊維としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等のセラミックファイバー等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維のなかでは、アルミナファイバーが望ましい。
【0166】
シール材ペーストにおける無機粒子としては、例えば、炭化物、窒化物等を挙げることができ、具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素からなる無機粉末等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子のなかでは、熱伝導性に優れる炭化ケイ素が望ましい。
【0167】
さらに、シール材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等を挙げることができる。これらのなかでは、アルミナバルーンが望ましい。
【符号の説明】
【0168】
10 外周層形成装置、20 支持回転制御機構(第一の駆動機構)
21、22 支持部材、40 昇降制御機構(第一の駆動機構)
50 前後運動制御機構(第一の駆動機構)、60 外周層形成ヘッド
61、611、612 スキージ、70 ペースト供給装置(外周層形成材料供給部)
81 ECU(電子制御手段)
100、200 ハニカムブロック(被外周層形成部材)、101 外周面
110 ハニカム焼成体、111 セル、112 セル壁
130 外周層、150 ハニカム構造体
A ハニカムブロックに接する仮想面、B スキージの面
O 柱状のハニカムブロックの中心軸、E 中心軸Oの軸方向
F ハニカム焼成体の長手方向、R 中心軸Oの軸径方向、C 中心軸Oの軸周方向
α 所定の角度、P 外周面に対する外周層形成ヘッドの相対的な進行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック原料を成形して、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム成形体を作製し、前記ハニカム成形体を焼成して得た一又は複数のハニカム焼成体からなる柱状のハニカムブロックの外周面に外周層を形成する外周層形成装置を用いてハニカム構造体を製造する方法であって、
前記外周層形成装置は、支持部材と、面を持つスキージを有する外周層形成ヘッドと、外周層形成材料を前記外周面に供給する外周層形成材料供給部とを備えており、
前記支持部材が前記ハニカムブロックをその軸が水平方向となるように軸方向の両側から挟むように支持する工程と、
前記外周層形成材料供給部が前記外周面に材料を供給する工程と、
前記スキージ及び前記ハニカムブロックのうち少なくとも一方が前記スキージの面と、前記外周面上において前記軸方向と平行な線を含み、かつ前記外周面に接する仮想面とが、所定の角度を維持するように移動することにより、前記外周面に外周層を形成する工程とを備えるハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記外周層形成装置は、前記支持部材の前記軸方向への移動、前記軸の軸径方向への移動及び前記軸の軸周方向を回転方向とする回転運動の少なくとも1つを制御可能な第一の駆動機構、及び、前記外周層形成ヘッドの前記軸方向への移動、前記軸の軸径方向への移動及び前記軸の軸周方向を回転方向とする回転運動の少なくとも1つを制御可能な第二の駆動機構のうち、少なくとも一方と、
電気信号を出力することにより、前記第一の駆動機構および前記第二の駆動機構の少なくとも一方の作動を制御する電子制御手段とを備え、
前記電子制御手段が、前記所定の角度を維持するように前記ハニカムブロックの外周に対して前記スキージを相対移動させるための理想軌跡を求めるステップと、
前記電子制御手段が、前記スキージを相対移動させた時の前記スキージの実際の移動軌跡を求めるステップと、
前記電子制御手段が、前記理想軌跡と前記実際の移動軌跡とが一致するように前記第一の駆動機構および前記第二の駆動機構の少なくとも一方の作動を制御するステップとを含む請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記ハニカム焼成体がシール材層を介して複数個接着されたハニカム焼成体の集合体に切削加工を施し、前記ハニカムブロックを作製する工程を含む請求項1又は2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記所定の角度は、30〜60°である請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記ハニカムブロックの軸方向に直交する断面の形状が、楕円形、長円形、略三角形、凹形状、多角形、又は、略多角形である請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−32275(P2013−32275A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176297(P2012−176297)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2007−557256(P2007−557256)の分割
【原出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】