説明

ハニカム構造体の製造方法

【課題】焼結後のハニカム構造体の寸法精度を向上させることができるハニカム構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の貫通孔70cを有するハニカム状のグリーン成形体70であって、貫通孔70cのうち一部の貫通孔は入口側端面70aにおいて封口材70eで塞がれ出口側端面70bにおいて開き、他の貫通孔は出口側端面70bにおいて封口材70eで塞がれ入口側端面70aにおいて開いているグリーン成形体70の貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい出口側端面70bを支持しつつグリーン成形体70を焼結する。貫通孔70cが封口材70eにより塞がれている割合が大きく焼結の際に収縮が大きい側である出口側端面70bを支持しつつ焼結することにより、当該側の焼結の際の収縮を抑制し、焼結後のハニカム構造体100の寸法精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関し、特にグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれるカーボン粒子等の微細粒子を捕集するためのセラミックスフィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)として、多孔質のセラミックスからなるハニカム構造体が用いられている。DPFのような用途においては、ハニカム構造体を排管内のような容器に収容して使用する場合が多い。そのため、例えば特許文献1では、ハニカム構造体の外周壁の外周面に凹凸部を設けることにより、ハニカム構造体を容器内に収容した場合に、ハニカム構造体が破損しにくく、かつずれが生じないようにしたハニカム構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−125182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DPFを排管内に押し込むためには、DPF自体の寸法精度が求められている。特に、円柱状のDPFの側面が端面に対して正確に垂直であり、DPFの直径が一方の端面から他方の端面まで一様であることが重要である。ところが、現状では、グリーン成形体を焼結して製造されたハニカム構造体の直径が、一方の端面側で他方の端面側より小さく収縮し、直径が一様でなくなることがあり、改善が望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、焼結後のハニカム構造体の寸法精度を向上させることができるハニカム構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに略平行な複数の貫通孔が形成され、複数の貫通孔を隔てる隔壁を有するハニカム状の柱状体と、貫通孔の一方の端部を塞ぐ封口部とを備え、複数の貫通孔のうち一部の貫通孔は、貫通孔に略直交する柱状体の第1端面及び第2端面のうち第1端面において封口部で塞がれ、第2端面において開き、他の貫通孔は、第2端面において封口部で塞がれ、第1端面において開いているグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を支持しつつグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法。
【0007】
この構成によれば、互いに略平行な複数の貫通孔が形成され、複数の貫通孔を隔てる隔壁を有するハニカム状の柱状体と、貫通孔の一方の端部を塞ぐ封口部とを備え、複数の貫通孔のうち一部の貫通孔は、貫通孔に略直交する柱状体の第1端面及び第2端面のうち第1端面において封口部で塞がれ、第2端面において開き、他の貫通孔は、第2端面において封口部で塞がれ、第1端面において開いているグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を支持しつつグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造する。第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側は、焼結の際に収縮が大きく寸法精度が悪化する恐れがある。そこで、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を支持しつつグリーン成形体を焼結することにより、当該側の焼結の際の収縮を抑制し、焼結後のハニカム構造体の寸法精度を向上させることができる。
【0008】
この場合、焼結炉内で第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を下側にしてグリーン成形体を載置しつつグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造することが好適である。
【0009】
この構成によれば、焼結炉内で第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を下側にしてグリーン成形体を載置しつつグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造する。このため、焼結炉内で第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を下側にしてグリーン成形体を載置するだけの簡単な手法により、当該側の焼結の際の収縮を抑制し、焼結後のハニカム構造体の寸法精度を向上させることができる。
【0010】
あるいは、焼結炉内で第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を支持具により支持しつつグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造することが好適である。
【0011】
この構成によれば、焼結炉内で第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を支持具により支持しつつグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造する。このため、必ずしも焼結炉内で第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側を下側にしなくとも、より自由に焼結炉内でグリーン成形体を配置しつつ、当該側の焼結の際の収縮を抑制し、焼結後のハニカム構造体の寸法精度を向上させることができる。
【0012】
また、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側の温度を貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が小さい側の温度よりも低温としつつグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造することが好適である。
【0013】
この構成によれば、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側の温度を貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が小さい側の温度よりも低温としつつグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造する。第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きく焼結の際に収縮が大きい側の温度を低温とすることにより、当該側の焼結の際の収縮を抑制し、焼結後のハニカム構造体の寸法精度を向上させることができる。
【0014】
また、グリーン成形体は複数の貫通孔を隔てる隔壁が六角形状をなし、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側は封口部同士が隣接しており、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が小さい側は封口部同士が隣接していないことが好適である。
【0015】
この構成によれば、グリーン成形体は複数の貫通孔を隔てる隔壁が六角形状をなし、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が大きい側は封口部同士が隣接しており、第1端面及び第2端面の内で貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合が小さい側は封口部同士が隣接していない。このため、このようなグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造することにより、隔壁により煤を濾し取る効率が高いDPFを製造することができる。また、このような構造のグリーン成形体は、貫通孔の端部が封口部により塞がれている割合の大きい側が焼結により収縮する割合が大きいため、本発明の製造方法により寸法精度の高いハニカム構造体を製造することができる。
【0016】
また、隔壁及び封口部は多孔質のセラミックスから構成されていることが好適である。
【0017】
この構成によれば、隔壁及び封口部は多孔質のセラミックスから構成されている。このため、DPFとして良好な特性を持つものとできる。
【0018】
また、隔壁及び封口部は、マグネシウム及びケイ素を含む多孔質のチタン酸アルミニウムから構成されていることが好適である。
【0019】
この構成によれば、チタン酸アルミニウムマグネシウム焼結体からなるDPFは、SiC、コージェライト又はチタン酸アルミニウム単体からなるDPFに比べて、熱膨張係数が極めて小さく、融点が高く、再生時の耐熱衝撃性に優れ、煤の限界堆積量が大きい点において優れているため、DPFとしてさらに良好な特性を持つものとできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、焼結後のハニカム構造体の寸法精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は、実施形態に係るハニカム構造体のグリーン成形体の斜視図であり、(b)は、(a)の柱状体の入口側端面の正面図である。
【図2】(a)は、実施形態に係るハニカム構造体のグリーン成形体の斜視図であり、(b)は、(a)の柱状体の出口側端面の正面図である。
【図3】図1のIII−III線による断面視である。
【図4】実施形態における炉内の棚板にグリーン成形体を載置する態様を示す斜視図である。
【図5】実施形態における炉内の支持具にグリーン成形体を支持させる態様を示す斜視図である。
【図6】(a)(b)は、炉内の棚板にグリーン成形体を入口側端面を下側にし出口側端面を上側にして載置して焼結した際に、焼結されたハニカム構造体の出口側端面の寸法精度が悪化する現象を示す図である。
【図7】実験例の焼結前のグリーン成形体の測定高さに対する平均直径を示すグラフ図である。
【図8】実験例の焼結後のハニカム構造体の測定高さに対する平均直径を示すグラフ図である。
【図9】比較例の焼結前のグリーン成形体の測定高さに対する平均直径を示すグラフ図である。
【図10】比較例の焼結後のハニカム構造体の測定高さに対する平均直径を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、上下左右の位置関係は図面に示す通りであるが、寸法の比率は図面に示すものに限定されない。
【0023】
<グリーン成形体>
図3に示す本発明の実施形態のハニカム構造体100は、図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示すグリーン成形体70を本実施形態の手法により焼結することにより得られる。なお、グリーン成形体とは、焼結される前の生の成形体を意味する。本実施形態のハニカム構造体100は、自動車の排管内に押し込むことにより設置され、DPFとして用いられる。
【0024】
図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示すように、グリーン成形体70は、ハニカム構造を有する柱状体(円柱体)である。柱状体であるグリーン成形体70は、その中心軸に平行であり、正六角形の複数の隔壁70dを有する。つまり、グリーン成形体70は、その中心軸方向に垂直な断面において正六角形を隙間無く並べたハニカム構造を有する。換言すれば、グリーン成形体70には、同一方向(中心軸方向)に延びる多数の貫通孔70c(流路)が形成されており、隔壁70dが各貫通孔70cを隔てる。各貫通孔70cはグリーン成形体70の入口側端面70a及び出口側端面70bに垂直である。グリーン成形体70は、入口側端面70aから出口側端面70bに到るまで略同一の直径とされている。なお、貫通孔70c及び隔壁70dは、被捕集物を含む流体がガス流入側の流路からガス流出側の流路へ均等に流れ易くなることにより被捕集物の堆積時の圧力損失を低減し易くなる観点から、当該断面を形成する辺の長さが互いに略等しい正六角形状が好ましいが、扁平六角形状であってもよい。
【0025】
図1〜3に示すように、複数の貫通孔70cのうち一部の貫通孔は、貫通孔に直交する入口側端面70aにおいて封口材70eで塞がれている。図1(b)に示すように、入口側端面70aでは、封口材70eで塞がれた貫通孔70cは、封口材70eで塞がれた他の貫通孔70cと隣接せずに、封口材70eで塞がれていない貫通孔70cと隣接している。一方、図2(b)に示すように、出口側端面70bでは、封口材70eで塞がれた6個の貫通孔70c同士は、封口材70eで塞がれていない貫通孔70cを囲繞するように互いに隣接している。このように、複数の貫通孔70cは、入口側端面70a及び出口側端面70bのいずれか一方の端面において封口材70eで塞がれている。これにより、図3に示すように、ハニカム構造体100において、貫通孔70cの一部における入口側端面70aはガスGの流入口として開口しており、入口側端面70aで開口している貫通孔70cに隣接する貫通孔70cの出口側端面70bはガスGの流出口として開口している。
【0026】
グリーン成形体70は、無機化合物粉末、造孔剤、有機バインダ及び溶媒等を混練機等により混合して調製した原料混合物を成形することにより得られる。無機化合物粉末は、チタン酸アルミニウム系セラミックスの原料粉末を含む。なお、セラミックスの原料粉末とは、焼結によりセラミックスになるものである。チタン酸アルミニウム系セラミックスの原料粉末とは、例えば、チタン源粉末及びアルミニウム源粉末である。無機化合物粉末は、更にマグネシウム源粉末及びケイ素源粉末を含んでもよい。原料混合物は、チタン酸アルミニウム系セラミックスそのものを含んでもよい。これにより、焼結に伴うグリーン成形体70の収縮率が低減される。なお、チタン酸アルミニウム系セラミックスとは、例えば、チタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムである。
【0027】
[アルミニウム源]
アルミニウム源は、チタン酸アルミニウム焼結体を構成するアルミニウム成分となる化合物である。アルミニウム源としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム)が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。なかでも、α型のアルミナが好ましく用いられる。
【0028】
アルミニウム源は、単独で空気中で焼結することによりアルミナに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0029】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。具体的なアルミニウム無機塩としては、例えば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩、炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。アルミニウム有機塩としては、例えば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0030】
アルミニウムアルコキシドとして具体的には、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0031】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、例えば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、例えば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0032】
アルミニウム源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記のなかでも、アルミニウム源としては、アルミナが好ましく用いられ、より好ましくは、α型のアルミナである。なお、アルミニウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0033】
アルミニウム源粉末の粒径は、特に限定されない。例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当するアルミニウム源粉末の粒子径は20〜60μmの範囲内であればよい。なお、この粒子径は、D50又は平均粒子径とも呼ばれる。焼結時の収縮率低減の観点からは、D50が30〜60μmの範囲内であるアルミニウム源粉末を用いることが好ましい。
【0034】
原料混合物にはアルミナゾルや後述のシリカゾルを添加することができる。このように、アルミナゾル、シリカゾル等を添加することにより、原料混合物中の微小な粒子同士を吸着させ、グリーン成形体中の粒子径0.1μm以下の粒子の量を、無機化合物粉末(固形分)の100重量部に対して1〜5重量部とすることができ、これにより500℃における脱脂後の成形体の強度を例えば0.2kgf以上とすることができる。
【0035】
アルミナゾルとは、微粒子状のアルミナを分散質とし、液体を分散媒とするコロイドである。アルミナゾルは、単独でアルミニウム源とすることもできるが、他のアルミニウム源と共に併用されることが好ましい。アルミナゾルの分散媒は、例えば、混合時や仮焼時に蒸発等により除去される。
【0036】
アルミナゾルの分散媒としては、水溶液や各種有機溶媒、例えば、塩酸水溶液、酢酸水溶液、硝酸水溶液、アルコール、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。アルミナゾルとしては、平均粒子径が1〜100nmのコロイド状アルミナゾルが好適に用いられる。このような平均粒子径を有するアルミナゾルを用いることにより、原料混合物中の粒子同士を吸着させられるといった利点がある。また、アルミナゾルの市販品としては、例えば、日産化学工業社製「アルミナゾル100」、「アルミナゾル200」、「アルミナゾル520」、シーアイ化成製「NanoTekAl」等が挙げられる。このうち、日産化学工業社製「アルミナゾル200」を用いることが好ましい。
【0037】
アルミナゾルは、無機化合物粉末(固形分)の100重量部に対して固形分で0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部用いることができる。アルミナゾルは、2種以上混合して用いてもよい。
【0038】
[チタン源]
チタン源は、チタン酸アルミニウム焼結体を構成するチタン成分となる化合物であり、かかる化合物としては、例えば酸化チタンが挙げられる。酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、なかでも酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0039】
チタン源は、単独で空気中で焼結することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えば、チタン塩、チタンアルコキシド、水酸化チタン、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
【0040】
チタン塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタンアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0041】
チタン源としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記のなかでも、チタン源としては、酸化チタンが好ましく用いられ、より好ましくは、酸化チタン(IV)である。なお、チタン源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0043】
チタン源粉末の粒径は、特に限定されない。例えば、レーザー回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%に相当するチタン源粉末の粒子径(D50)は0.5〜25μmの範囲内であればよい。十分に低い焼結収縮率の達成のためには、チタン源粉末のD50が1〜20μmの範囲内であることが好ましい。なお、チタン源粉末は、バイモーダルな粒径分布を示すことがあるが、このようなバイモーダルな粒径分布を示すチタン源粉末を用いる場合においては、レーザー回折法により測定される粒径分布における、粒径が大きい方のピークの粒径が20〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0044】
レーザー回折法により測定されるチタン源粉末のモード径は、特に限定されないが、0.3〜60μmの範囲内であればよい。
【0045】
[マグネシウム源]
原料混合物は、マグネシウム源を含有していてもよい。マグネシウム源を含むグリーン成形体100から製造されたハニカム構造体200は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶の焼結体である。
【0046】
マグネシウム源としては、マグネシア(酸化マグネシウム)のほか、単独で空気中で焼結することによりマグネシアに導かれる化合物が挙げられる。後者の例としては、例えば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
【0047】
マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0048】
マグネシウムアルコキシドとして具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。なお、マグネシウム源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0049】
マグネシウム源として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物を用いることもできる。このような化合物としては、例えば、マグネシアスピネル(MgAl)が挙げられる。
【0050】
マグネシウム源として、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。マグネシウム源粉末の粒径は、特に限定されない。例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当するマグネシウム源粉末の粒子径(D50)は0.5〜30μmの範囲内であればよい。焼結時の収縮率低減の観点からは、D50が3〜20μmの範囲内であるマグネシウム源粉末を用いることが好ましい。
【0051】
グリーン成形体中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源のモル量は、Al(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO(チタニア)換算でのチタン源との合計モル量に対して、0.03〜0.15であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。マグネシウム源の含有量をこの範囲内に調整することにより、耐熱性がより向上された、大きい細孔径および開気孔率を有するチタン酸アルミニウム焼結体を比較的容易に得ることができる。
【0052】
[ケイ素源]
原料混合物は、ケイ素源をさらに含有していてもよい。ケイ素源は、シリコン成分となってチタン酸アルミニウム焼結体に含まれる化合物である。ケイ素源の併用により、耐熱性がより向上されたチタン酸アルミニウム焼結体を得ることが可能となる。ケイ素源としては、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)が挙げられる。
【0053】
ケイ素源は、単独で空気中で焼結することによりシリカに導かれる化合物であってもよい。かかる化合物としては、例えば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットなどが挙げられる。なかでも、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。ケイ素源として、長石とガラスフリットとの混合物からなる粉末を用いることもできる。
【0054】
ケイ素源がガラスフリットである場合、得られるチタン酸アルミニウム焼結体の耐熱分解性をより向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analysis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0055】
ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸(SiO)を主成分(全成分中50重量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ(Al)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、酸化カルシウム(CaO)、マグネシア(MgO)等を含んでいてもよい。このようなガラスは、例えば、アルミノシリケートガラスである。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrOを含有していてもよい。
【0056】
ケイ素源として、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
ケイ素源粉末の粒径は、特に限定されない。例えば、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%に相当するケイ素源の粒子径(D50)は0.5〜30μmの範囲内であればよい。グリーン成形体の比重をより向上させ、機械的強度のより高い焼結体を得るためには、ケイ素源のD50が1〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0058】
原料混合物がケイ素源を含む場合、原料混合物中におけるケイ素源の含有量は、Al(アルミナ)換算でのアルミニウム源とTiO(チタニア)換算でのチタン源との合計量100重量部に対して、SiO(シリカ)換算で、通常0.1重量部〜10重量部であり、好ましくは5重量部以下である。また、原料混合物中におけるケイ素源の含有量は、原料混合物中に含まれる無機化合物源中、2重量%以上5重量%以下とすることがより好ましい。ケイ素源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0059】
マグネシアスピネル(MgAl)などの複合酸化物のように、チタン、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物を原料として用いることができる。
【0060】
原料混合物中の無機化合物粉末100重量部における粒子径0.1μm以下の粒子の含有量を1〜5重量部とする場合、上述のように、原料混合物にアルミナゾルおよび/またはシリカゾルを添加して混合することが好ましい。シリカゾルとは、微粒子状のシリカを分散質とし、液体を分散媒とするコロイドである。シリカゾルは、単独でケイ素源とすることもできるが、他のシリカ源と共に併用されることが好ましい。シリカナゾルの分散媒は、例えば、混合時や仮焼時に蒸発等により除去される。
【0061】
シリカゾルの分散媒としては、水溶液や各種有機溶媒、例えば、アンモニア水溶液、アルコール、キシレン、トルエン、トリグリセリドなどが挙げられる。シリカゾルとしては、平均粒子径が1〜100nmのコロイド状シリカゾルが好適に用いられる。このような平均粒子径を有するシリカゾルを用いることにより、原料混合物中の粒子同士を吸着させ、焼結時に融解し結合させることができるといった利点がある。
【0062】
シリカゾルの市販品としては、例えば、日産化学工業社製「スノーテックス20、30、40、50、N、O、S、C、20L、OL、XS、XL、YL、ZL、QAS−40、LSS−35、LSS−45」、旭電化社製「アデライトAT−20、AT−30、AT−40、AT−50、AT−20N、AT−20A、AT−30A、AT−20Q、AT−300、AT−300Q」、触媒化成工業社製「Cataloid S−20L、S−20H、S−30L、S−30H、SI−30、SI−40、SI−50、SI−350、SI−500、SI−45P、SI−80P、SN、SA、SC−30」、デュポン社製「ルドックスHS−40、HS−30、LS、SM−30、TM、AS、AM」等が挙げられる。このうち、中性域でコロイド状態が安定な「スノーテックスC」を用いることが好ましい。
【0063】
原料混合物におけるシリカゾルの含有量は、無機化合物粉末(固形分)の100重量部に対して固形分で0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部であればよい。2種以上のシリカゾルを混合して用いてもよい。
【0064】
[有機バインダ]
有機バインダとしては、水溶性の有機バインダが好ましい。水溶性の有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩などの塩などが挙げられる。
【0065】
有機バインダの量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常20重量部以下であり、好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは6重量部である。また、有機バインダの下限量は、通常0.1重量部、好ましくは3重量部である。
【0066】
[溶媒]
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類、および水などの極性溶媒を用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常、10重量部〜100重量部、好ましくは20重量部〜80重量部である。なお、溶媒として非極性溶媒を用いてもよい。
【0067】
[その他の添加物]
原料混合物は、有機バインダ以外の有機添加物を含むことができる。その他の有機添加物とは、例えば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤である。
【0068】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類、でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料、氷、及びドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の添加量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常、0〜40重量部であり、好ましくは0〜25重量部である。造孔剤はグリーン成形体の焼結時に消失する。したがって、チタン酸アルミニウム焼結体では、造孔剤が存在していた箇所に微細孔が形成される。
【0069】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類、カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸Al等のステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤及び可塑剤の添加量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常、0〜10重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。
【0070】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、無機化合物粉末の100重量部に対して、通常、0〜20重量部であり、好ましくは2〜8重量部である。
【0071】
(封口材)
封口材70bは、チタン酸アルミニウム系セラミックスを含む。セラミックスとは、例えば、チタン酸アルミニウム系セラミックスの粉末又は粒子である。また、封口材70eは、グリーン成形体70と同様に、上記の造孔剤、有機バインダ及び溶媒等を含有する。これらの成分を所定の比率で混合することにより、ペースト状の封口材70eが得られる。なお、ハニカム構造体の製造過程で得られるセラミックスの屑やハニカム構造体の破損品等を粉砕して得たセラミックスの粉末を、封口材70e用のセラミックス粉末として再利用しても良い。これにより、ハニカム構造体の原料コストが削減される。封口材70eは、チタン酸アルミニウム系セラミックスの原料粉末(無機化合物粉末)を含んでもよく、含まなくてもよい。焼結に伴う封口材70eの収縮率を低減するためには、封口材70eがセラミックス粉末を含有し、セラミックスの原料粉末を含有しないことが好ましい。セラミックス粉末の平均粒径は、特に限定されないが、5〜50μm程度であればよい。
【0072】
なお、封口材70eの固液分離を防止するためには、封口材70eを粘調な液状とすることが好ましい。そのためには、封口材70eが含有するセラミックス粉末の質量と造孔剤の質量との合計を100質量部とするとき、封口材70e中のバインダの質量を0.3〜3質量部、潤滑剤の質量を3〜20質量部とし、封口材70eの粘度を20〜200Pa・sとすることが好ましい。
【0073】
<ハニカム構造体>
上記のグリーン成形体70を以下に示す本実施形態の手法により焼結することにより、グリーン成形体70及び封口部70eが含むセラミックス粉末やセラミックスの原料粉末が焼結する。
【0074】
封口材70eは隔壁70dと焼結し、一体化して封口部を形成する。その結果、図3に示すように、多孔質のチタン酸アルミニウム系セラミックスからなるハニカム構造体100(多セル型セラミックモノリス)が得られる。ハニカム構造体100は、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウム(AlTiO)又はチタン酸アルミニウムマグネシウム(Al2(1−x)MgTi(1+x))の結晶パターンのほか、アルミナ、チタニアなどの結晶パターンを含んでいてもよい。ハニカム構造体100はケイ素を含有してもよい。ハニカム構造体100はグリーン成形体70と同様の構造を有し、DPFに好適である。
【0075】
特に、チタン酸アルミニウムマグネシウム焼結体からなるDPFは、SiC、コージェライト又はチタン酸アルミニウム単体からなるDPFに比べて、熱膨張係数が極めて小さく、融点が高く、再生時の耐熱衝撃性に優れ、煤の限界堆積量が大きい点において優れている。DPF用のハニカム構造体100の隔壁表面に、アルミナ等の担体に担持された白金系金属触媒や、セリア又はジルコニア等の助触媒を付着させてもよい。
【0076】
チタン酸アルミニウム系セラミックスにおけるアルミニウムの含有率は、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム換算で40〜60モル%である。チタン酸アルミニウム系セラミックスにおけるチタンの含有率は、特に限定されないが、例えば、酸化チタン換算で35〜55モル%である。チタン酸アルミニウム系セラミックスにおけるマグネシウムの含有率は酸化マグネシウム換算で1〜5質量%であることが好ましい。チタン酸アルミニウム系セラミックスにおけるケイ素の含有率は酸化ケイ素換算で2〜5質量%であることが好ましい。なお、チタン酸アルミニウム系セラミックスの組成は、原料混合物の組成により適宜調整すればよい。チタン酸アルミニウム系セラミックスは、上記の成分以外に、原料に由来する成分又は製造工程において不可避的に仕掛品に混入する微量の成分を含有し得る。
【0077】
貫通孔70cの長手方向におけるハニカム構造体100の長さは、例えば50〜300mmである。ハニカム構造体100の外径は、例えば50〜250mmである。貫通孔70cの密度(セル密度)は、例えば50〜400cpsi(cell per square inch)である。なお、「cpsi」は、1平方インチ当たりの貫通孔70c(セル)の数を表す。入口側端面70a及び出口側端面70bに垂直な断面において、入口側端面70aで開口している貫通孔70cによる流路の断面積の合計は、出口側端面70bで開口している貫通孔70cによる流路の断面積の合計の略6倍となる。
【0078】
正六角形状の貫通孔70cの一辺の長さは、燃焼再生においてハニカム構造体100に生じる熱応力を更に低減する観点から、0.2〜2.0mmが好ましく、0.4〜1.6mmがより好ましい。上記構成単位における隔壁70dの厚み(セル壁厚)は、圧力損失を更に低減する観点から、0.8mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。隔壁70dの厚みは、被捕集物の捕集効率及びハニカム構造体100の強度を高く維持する観点から、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。
【0079】
上記構成単位における隔壁70dの気孔率は、圧力損失を更に低減する観点から、20体積%以上が好ましく、30体積%以上がより好ましい。隔壁70dの気孔率は、燃焼再生においてハニカム構造体100に生じる熱応力を更に低減する観点から、60体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましい。隔壁70dの気孔率は、原料の粒子径、孔形成剤の添加量、孔形成剤の種類、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0080】
上記構成単位における隔壁70dの気孔径(細孔直径)は、5〜30μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。隔壁70dの気孔径は、原料の粒子径、孔形成剤の添加量、孔形成剤の種類、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0081】
ハニカム構造体100の有効濾過面積は、燃焼再生においてハニカム構造体100に生じる熱応力を更に低減すると共に圧力損失を更に低減する観点から、1.1m/L以上が好ましく、1.2m/L以上がより好ましい。「ハニカムフィルタの有効濾過面積」とは、ハニカム構造体100の1L(1リットル=10−3:例えば10cm×10cm×10cmの立方体)あたりのガスGの入口側端面70aで開口した流路(ガス流入側流路)の内壁の面積の合計(封口部に接している部分を除く)を意味し、各ガス流入側流路における、ガス流入側流路の断面を形成する辺のそれぞれと、ガス流入側流路の軸方向におけるガス流入側流路の長さとの積の合計をSとしたときに、ハニカム構造体100の1リットルあたりに含まれる全てのガス流入側流路における上記Sの総和を意味する。なお、有効濾過面積の上限値は、例えば2.0m/Lである
【0082】
<ハニカム構造体の製造方法>
(原料混合物の調製工程及び成形工程)
グリーン成形体70を形成するために、無機化合物粉末、造孔剤、有機バインダ及び溶媒等を混練機等により混合して原料混合物を調製する。格子状の開口を有するダイを備える押出成形機を用いて、原料混合物を成形することにより、グリーン成形体70を形成する。なお、押出成形前の原料混合物を混練してもよい。
【0083】
(封口材の調製工程)
セラミックス粉末を含有させ、成分の配合比を調整すること以外は、グリーン成形体70用の原料混合物と同様の方法で、封口材70eを調製する。
【0084】
(封口工程)
封口工程では、グリーン成形体70において複数の貫通孔70cが開いている入口側端面70aに第一マスクを貼り付ける。第一マスクでは、貫通孔70cと略同様の寸法を有する複数のマスク部と開口部とが互い違いに配置されている。各貫通孔70cと各マスク部及び開口部とが重なるように、グリーン成形体70の入口側端面70aに第一マスクを貼り付ける。また、グリーン成形体70において入口側端面70aとは反対側の出口側端面70bに、第二マスクを貼り付ける。第二マスクが有する開口部とマスク部の配置関係は第一マスクとは真逆である。したがって、入口側端面70a側で第一マスクのマスク部に塞がれた貫通孔70cは、出口側端面70b側で第二マスクの開口部と重なる。出口側端面70b側で第二マスクのマスク部に塞がれた貫通孔70cは、出口側端面70b側で第一マスクの開口部と重なる。したがって、グリーン成形体70に形成された複数の貫通孔70cのいずれも、入口側端面70a又は出口側端面70bのいずれか一方において開き、他方においてマスク部で塞がれる。
【0085】
入口側端面70aに対する封口工程では、第一マスクの開口部と重なる各貫通孔70cの端部内に上記の封口材70eを導入する。なお、貫通孔70cに封口材70eを導入した後、グリーン成形体70全体を振動器により振動させてもよい。これにより、貫通孔70cの端部の隙間に隈なく封口材70eが充填され易くなる。
【0086】
以上の入口側端面70aに対する封口工程後、入口側端面70aに対する封口工程と同様に、第二マスクが貼られた出口側端面70bに対する封口工程を実施する。両端面に封口工程を施した後に、各端面から各マスクを剥がす。これにより、図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示すグリーン成形体100が完成する。
【0087】
(焼結工程)
以上の押出成形、乾燥、切断及び封口を施したグリーン成形体70を、図4に示すように、ガス炉内の棚板200の上に敷いた短いグリーン成形体であるトチ170の上にグリーン成形体70の出口側端面70bが棚板200側になるように置いて焼結する。図4の例では、図中のZ軸が鉛直方向の上向きであり、棚板200の法線はZ軸と平行方向に向いている。
【0088】
この場合、図5に示すように、ガス炉内の支持具300により、出口側端面70bを支持あるいは把持しつつ、焼結するようにしても良い。図5の例では、図中のZ軸が鉛直方向の上向きであり、グリーン成形体70の長手方向はZ軸と垂直方向を向くようにして支持されている。図4及び図5の焼結において、出口側端面70bの焼結温度が入口側端面70aの焼結温度よりも低い条件下で焼結することができる。
【0089】
この場合の温度制御は、(1)邪魔板を使ったガス流の調節、(2)バーナーの追加及びその設置位置の変更、(3)炉内の形状変更により行なうことができる。(1)邪魔板を使ったガス流の調節、(2)バーナーの追加及びその設置位置の変更、又は(3)炉内の形状変更を行なった後に、焼結試験を行なうことにより、グリーン成形体70の出口側端面70bの焼結温度よりも、入口側端面70aの焼結温度が高くなる条件を選択することができる。
【0090】
この場合、上記のようにして焼結温度を調整した炉内で、グリーン成形体70を仮焼き(脱脂)し、且つ焼結することにより、図3に示すハニカム構造体100を得ることができる。仮焼き(脱脂)は、グリーン成形体70中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を、焼失、分解等により除去するための工程である。典型的な仮焼き工程は、焼結工程の初期段階、すなわちグリーン成形体70が焼結温度に至るまでの昇温段階(例えば、100〜900℃の温度範囲)に相当する。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力抑え、かつO濃度を極力抑えることが好ましい。
【0091】
グリーン成形体70の焼結温度は、通常、1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。また、焼結温度は、通常、1650℃以下、好ましくは1550℃以下である。この温度範囲でグリーン成形体70を加熱することにより、グリーン成形体70中の無機化合物粉末やセラミックス粉末が確実に焼結する。焼結温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。
【0092】
焼結は通常、大気中で行なわれるが、用いる原料粉末、すなわちアルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼結してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼結してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼結を行なってもよい。
【0093】
焼結は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼結炉を用いて行なわれる。焼結は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0094】
焼結に要する時間は、グリーン成形体70がチタン酸アルミニウム系結晶に遷移するのに十分な時間であればよく、グリーン成形体70の量、焼結炉の形式、焼結温度、焼結雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。
【0095】
なお、グリーン成形体70の仮焼きと焼結を個別に行ってもよく、連続して行ってもよい。仮焼き工程では、有機バインダその他の有機添加物の熱分解温度以上であり無機化合物粉末の焼結温度よりも低い温度でグリーン成形体70を加熱すればよい。焼結工程では、仮焼き工程後のグリーン成形体70を無機化合物粉末の焼結温度以上の温度で加熱すればよい。
【0096】
<ハニカム構造体の製造方法の作用>
図6(a)に示すように、従来のグリーン成形体70の焼結方法は、入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が小さい側である入口側端面70aを棚板200で支持しつつ、貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい側である出口側端面70bを上側して焼結が行なわれている。そのため、図6(b)に示すように、貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が小さい側である入口側端面70aは焼結による収縮が小さく、一方、貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい側である出口側端面70bは焼結による収縮が大きく、寸法精度が低い傾向がある。下側はエレファントフットと呼ばれる形状となる。このことは、貫通孔70cが正六角形状であり、図1(b)及び図2(b)に示すように入口側端面70aと出口側端面70bとで各々封口の形態が異なるハニカム構造体では顕著である。
【0097】
そこで、本発明者は、出口側端面70bの焼結による収縮を緩和させる手法として、意図的に出口側端面70bを棚板200側に配置して焼結することにより、大幅に寸法精度を改善することができることを見出した。図2(b)に示すように、出口側端面70bでは、封口材70eにより封口されている貫通孔70c同士が隣接しており、互いに収縮し合うために大幅な収縮が起こり得るが、当該出口側端面70bを棚板200で支持することにより、出口側端面70bが棚板200との摩擦で収縮と逆向きに引っ張られるため、収縮を抑えることができる。一方、図1(b)に示すように、入口側端面70aでは、封口材70eにより封口されている貫通孔70c同士が独立しているため、出口側端面70bに比べて棚板200等で支持しなくとも、焼結による急激な収縮は起こり難いと考えられる。
【0098】
特に、本実施形態では、焼結炉内で入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい側である出口側端面70bを下側にして棚板200にグリーン成形体70を載置するだけの簡単な手法により、当該側の焼結の際の収縮を抑制し、焼結後のハニカム構造体100の寸法精度を向上させることができる。
【0099】
あるいは本実施形態によれば、焼結炉内で入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい側である出口側端面70bを支持具300により支持しつつグリーン成形体70を焼結してハニカム構造体100を製造する。このため、必ずしも焼結炉内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい側である出口側端面70bを下側にしなくとも、より自由に焼結炉内でグリーン成形体70を配置しつつ、当該側の焼結の際の収縮を抑制し、焼結後のハニカム構造体100の寸法精度を向上させることができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、焼結炉内で入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい側である出口側端面70b側の温度を貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が小さい側である入口側端面70a側の温度よりも低温としつつグリーン成形体70を焼結してハニカム構造体100を製造することもできる。入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きく焼結の際に収縮が大きい出口側端面70b側の温度を低温とすることにより、当該側の焼結の際の収縮を抑制し、焼結後のハニカム構造体100の寸法精度を向上させることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、グリーン成形体70は複数の貫通孔70cを隔てる隔壁70dが六角形状をなし、入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい側である出口側端面70b側は封口部同士が隣接しており、入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が小さい側である入口側端面70a側は封口部同士が隣接していない。このため、このようなグリーン成形体70を焼結してハニカム構造体100を製造することにより、隔壁70dにより煤を濾し取る効率が高いDPFを製造することができる。また、このような構造のグリーン成形体70は、貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合の大きい側が焼結により収縮する割合が大きいため、本実施形態の製造方法により寸法精度の高いハニカム構造体100を製造することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、製造されたハニカム構造体100の側面において、入口側端面70aから出口側端面70bに到るまでの間にハニカム構造体100の外周径は寸法精度が高いために略一定の直径で変化しない。このため、ハニカム構造体100が収容される排管とハニカム構造体100との間隙を小さくすることができ、シール性が向上する。
【0103】
また、本実施形態によれば、グリーン成形体70は多孔質のセラミックスから構成されており、マグネシウム及びケイ素を含む多孔質のチタン酸アルミニウムから構成されている。チタン酸アルミニウムマグネシウム焼結体からなるDPFは、SiC、コージェライト又はチタン酸アルミニウム単体からなるDPFに比べて、熱膨張係数が極めて小さく、融点が高く、再生時の耐熱衝撃性に優れ、煤の限界堆積量が大きい点において優れているため、DPFとしてさらに良好な特性を持つものとできる。
【0104】
以上、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0105】
例えば、グリーン成形体70や封口材70eは、チタン酸アルミニウム系セラミックスの代わりにコージェライト系セラミックスやシリコンカーバイド等のセラミックスを含んでもよい。またグリーン成形体70や封口材70eは、これらセラミックスの原料粉末を含んでもよい。コージェライト系セラミックスの原料粉末としては、上述したアルミニウム源粉末、シリカ源粉末及びマグネシウム源粉末を用いればよい。ハニカム構造体100の形状は円柱に限定されず、用途に応じて任意の形状をとることができる。例えば、ハニカム構造体100の形状が、多角柱や楕円柱等であってもよい。
【0106】
ハニカム構造体100の用途はDPFに限定されない。ハニカム構造体100は、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルター又は触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分(例えば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素等)を選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルターなどに好適に適用することができる。なかでも、セラミックスフィルターなどとして用いる場合、チタン酸アルミニウム系セラミックスは、高い細孔容積および開気孔率を有することから、良好なフィルター性能を長期にわたって維持することができる。
【実施例1】
【0107】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
(実施例1)
グリーン成形体70を形成するために、チタン酸アルミニウムマグネシウムの原料粉末(Al,TiO,MgO)、アルミノシリケートガラス粉末、チタン酸アルミニウムマグネシウムとアルミナとアルミノシリケートガラスとの複合相をもつセラミックス粉末(仕込み時の組成式:41.4Al−49.9TiO−5.4MgO−3.3SiO、式中の数値はモル比を表す。)、有機バインダ、潤滑剤、造孔剤、可塑剤、分散剤及び水(溶媒)を含む原料混合物を調製した。原料混合物中の主な成分の含有量は下記の値に調整した。
【0109】
[原料混合物の成分]
Al:37.3質量部。
TiO:37.0質量部。
MgO:1.9質量部。
アルミノシリケートガラス粉末:3.0質量部
セラミックス粉末:8.8質量部。
造孔剤:馬鈴薯から得た平均粒径25μmの澱粉12.0質量部。
有機バインダ1:メチルセルロース(三星精密化学社製:MC−40H)5.5質量部。
有機バインダ2:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(三星精密化学社製:PMB−40H)2.4質量部。
【0110】
上記の原料混合物を混練して押出成形することにより、図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示すように、互いに略平行な複数の正六角形状の貫通孔70cが形成され、貫通孔70cを隔てる隔壁70dを有するグリーン成形体70を作製した。セラミックス粉末、造孔剤、有機バインダ、潤滑剤及び溶媒を混合して、実施例1の封口材70bを調製した。このセラミックス粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムとアルミナとアルミノシリケートガラスとの複合相をもつ粉末(仕込み時の組成式:41.4Al−49.9TiO−5.4MgO−3.3SiO、式中の数値はモル比を表す。)であった。封口材70eを用いてグリーン成形体70の入口側端面70aの封口工程を実施した後、出口側端面70bに対する封口工程を実施した。
【0111】
図4に示すように、ガス炉内の棚板200の上に、グリーン成形体70の出口側端面70bが棚板200側になり、入口側端面70aがガス炉の上方側になるように置き、入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が大きい側である出口側端面70bをトチ170の上に置いて棚板200で支持しつつ焼結して、図3に示すハニカム構造体100を複数個製造した。また、比較例として、グリーン成形体70の入口側端面70aが棚板200側になり、出口側端面70bがガス炉の上方側になるように置き、入口側端面70a及び出口側端面70bの内で貫通孔70cの端部が封口材70eにより塞がれている割合が小さい側である出口側端面70aをトチ170の上に置いて棚板200で支持しつつ焼結してハニカム構造体100を複数個製造した。
【0112】
図7〜図10は、それぞれ入口側端面70a(測定高さ0)から出口側端面70bに到るまでの焼結前のグリーン成形体70または焼結後のハニカム構造体100の平均直径を相対的な数値で示す。図7に示す実施例のグリーン成形体70に対して、図8に示す出口側端面70bを棚板200側にして焼結を行なった実施例のハニカム構造体100は、入口側端面70aの側がハニカム構造体100の中央部に比べてわずかに縮径が見られるものの、出口側端面70bではハニカム構造体100の中央部に比べて拡径が抑えられていることが判る。
【0113】
一方、図9に示す比較例のグリーン成形体70に対して、図10に示す入口側端面70aを棚板200側にして焼結を行なった比較例のハニカム構造体100は、入口側端面70aの側がハニカム構造体100の中央部に比べて拡径が見られるとともに、出口側端面70bではハニカム構造体100の中央部に比べて著しく縮径が見られることが判る。以上の測定値を表1にまとめた
【0114】
【表1】



【0115】
表1に示すように、実施例の焼結後のハニカム構造体100において、上側にした入口側端面70aの直径のハニカム構造体100の中央部の直径に対する変化量は、−0.6〜−0.4であり、比較例における出口側端面70bの直径のハニカム構造体100の中央部の直径に対する変化量の約半分から2/3であることが判る。また、下側にした実施例の出口側端面70bの直径のハニカム構造体100の中央部の直径に対する変化量は、−0.3〜0.0と抑制されていることがわかる。つまり、出口側端面70bを下面にした場合、出口側端面70bの大きな収縮率が棚板200により抑制されつつ縮径する傾向を示している。
【0116】
一方、比較例の焼結後のハニカム構造体100において、上側にした出口側端面70bの直径のハニカム構造体100の中央部の直径に対する変化量は、−1.1〜−0.6と大きく、実施例と比べて大きく収縮する傾向を示している。また、下側にした比較例の入口側端面70aの直径のハニカム構造体100の中央部の直径に対する変化量は、+0.3〜+1.0と拡径する傾向を示している。
【符号の説明】
【0117】
70…グリーン成形体、70a…入口側端面、70b…出口側端面、70c…貫通孔、70d…隔壁、70e…封口材、100…ハニカム構造体、170…トチ、200…棚板、300…支持具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略平行な複数の貫通孔が形成され、複数の前記貫通孔を隔てる隔壁を有するハニカム状の柱状体と、前記貫通孔の一方の端部を塞ぐ封口部とを備え、複数の前記貫通孔のうち一部の前記貫通孔は、前記貫通孔に略直交する前記柱状体の第1端面及び第2端面のうち前記第1端面において前記封口部で塞がれ、前記第2端面において開き、他の前記貫通孔は、前記第2端面において前記封口部で塞がれ、前記第1端面において開いているグリーン成形体を焼結してハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法であって、
前記第1端面及び前記第2端面の内で前記貫通孔の端部が前記封口部により塞がれている割合が大きい側を支持しつつ前記グリーン成形体を焼結して前記ハニカム構造体を製造するハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
焼結炉内で前記第1端面及び前記第2端面の内で前記貫通孔の端部が前記封口部により塞がれている割合が大きい側を下側にして前記グリーン成形体を載置しつつ前記グリーン成形体を焼結して前記ハニカム構造体を製造する、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
焼結炉内で前記第1端面及び前記第2端面の内で前記貫通孔の端部が前記封口部により塞がれている割合が大きい側を支持具により支持しつつ前記グリーン成形体を焼結して前記ハニカム構造体を製造する、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1端面及び前記第2端面の内で前記貫通孔の端部が前記封口部により塞がれている割合が大きい側の温度を前記貫通孔の端部が前記封口部により塞がれている割合が小さい側の温度よりも低温としつつ前記グリーン成形体を焼結して前記ハニカム構造体を製造する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記グリーン成形体は複数の前記貫通孔を隔てる前記隔壁が六角形状をなし、前記第1端面及び前記第2端面の内で前記貫通孔の端部が前記封口部により塞がれている割合が大きい側は前記封口部同士が隣接しており、前記第1端面及び前記第2端面の内で前記貫通孔の端部が前記封口部により塞がれている割合が小さい側は前記封口部同士が隣接していない、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記隔壁及び前記封口部は多孔質のセラミックスから構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記隔壁及び前記封口部は、マグネシウム及びケイ素を含む多孔質のチタン酸アルミニウムから構成されている、請求項6に記載のハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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