説明

ハニカム構造体封口用マスクの洗浄方法及び洗浄装置、並びに、ハニカムフィルタの製造方法

【課題】ハニカム構造体封口用マスクを良好に洗浄することが可能な洗浄方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る洗浄方法は、上面1aから下面1bにかけて厚さ方向D1に貫通している複数の貫通孔5を有するマスク1の洗浄方法であって、マスク1を厚さ方向D1に直交する搬送方向D2に搬送する工程と、搬送されるマスク1の洗浄面3(上面1a及び下面1b)に洗浄液14が供給された状態で、洗浄面3と平行かつ搬送方向D2と交差する方向D3に延びる軸回りに回転するローラブラシ12a,12bのブラシ12cを洗浄面3に接触させる洗浄工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体封口用マスクの洗浄方法及び洗浄装置、並びに、ハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカムフィルタは、DPF(Diesel particulate filter)等に用いられることが知られている。ハニカムフィルタは、多数の貫通孔を有するハニカム構造体の一部の貫通孔の一端側を封口材で封じると共に、残りの貫通孔の他端側を封口材で封じた構造を有する。
【0003】
ハニカム構造体の一端側の所望の貫通孔のみを封口材により封じるに際しては、ハニカム構造体の封口すべき貫通孔に対応する箇所に貫通孔が設けられた封口用マスクが使用される。下記特許文献1,2には、封口用マスクを用いてハニカム構造体を封口する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290766号公報
【特許文献2】特開2008−132749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、封口工程で使用された封口用マスクは、当該マスクを繰り返し使用する観点から、マスクに付着した異物(封口工程においてマスクに残存した封口材や、空気中のダスト等)を除去するために洗浄される。しかしながら、従来の封口用マスクの洗浄方法では、異物を充分に除去することが困難であり、封口用マスクを良好に洗浄することが困難である。そのため、封口用マスクの洗浄方法に対しては、従来に比してマスクを良好に洗浄することが求められている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、一方の主面から他方の主面にかけて厚さ方向に貫通している複数の貫通孔を有するハニカム構造体封口用マスクを良好に洗浄することが可能な洗浄方法及び洗浄装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような洗浄方法により洗浄されたマスクを用いるハニカムフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る洗浄方法は、一方の主面から他方の主面にかけて厚さ方向に貫通している複数の貫通孔を有するハニカム構造体封口用マスクの洗浄方法であって、マスクを厚さ方向に直交する方向に搬送する工程と、搬送されるマスクの一方の主面又は他方の主面の少なくとも一方の洗浄面に洗浄液が供給された状態で、洗浄面と平行かつマスクの搬送方向と交差する方向に延びる軸回りに回転するローラブラシのブラシ部を洗浄面に接触させる洗浄工程と、を備える。
【0008】
本発明に係る洗浄方法では、洗浄工程において、厚さ方向に直交する方向に搬送されるマスクの洗浄面に洗浄液が供給された状態で、洗浄面と平行かつマスクの搬送方向と交差する方向に延びる軸回りに回転するローラブラシのブラシ部を洗浄面に接触させる。これにより、洗浄面に付着した異物を充分に除去することが可能であり、マスクを良好に洗浄することができる。
【0009】
本発明に係る洗浄方法では、洗浄工程において、一方の主面及び他方の主面のそれぞれに洗浄液が供給された状態で、ブラシ部を一方の主面及び他方の主面のそれぞれに接触させることが好ましい。この場合、マスクを更に良好に洗浄することができる。
【0010】
ローラブラシは、マスクの厚さ方向に互いに対向するように一対配置されていることが好ましい。この場合、マスクを更に良好に洗浄することができる。
【0011】
一方の主面に接触するブラシ部を有するローラブラシの軸と、他方の主面に接触するブラシ部を有するローラブラシの軸とは、互いに平行に延びていることが好ましい。この場合、マスクを更に良好に洗浄することができる。
【0012】
本発明に係る洗浄方法では、洗浄工程において、洗浄面に接触したブラシ部が搬送方向と反対方向に移動するようにローラブラシを回転させることが好ましい。この場合、マスクを更に良好に洗浄することができる。
【0013】
本発明に係る洗浄方法は、洗浄工程の後に、上記搬送されるマスクの一方の主面又は他方の主面の少なくとも一方に対し貫通孔の軸方向に洗浄液を供給する工程を更に備えることが好ましい。この場合、マスクを更に良好に洗浄することができる。
【0014】
本発明に係るハニカムフィルタの製造方法は、上記洗浄方法によりマスクを洗浄する工程と、洗浄されたマスクを介してハニカム構造体の一部の貫通孔に封口材を供給する工程と、を備える。本発明に係るハニカムフィルタの製造方法では、上記洗浄方法により異物が充分に除去されたマスクを介してハニカム構造体の貫通孔に封口材を供給することができるため、所望の貫通孔が確実に封口されたハニカムフィルタを容易に得ることができる。
【0015】
本発明に係る洗浄装置は、一方の主面から他方の主面にかけて厚さ方向に貫通している複数の貫通孔を有するハニカム構造体封口用マスクの洗浄装置であって、マスクを厚さ方向に直交する方向に搬送する搬送手段と、搬送されるマスクの一方の主面又は他方の主面の少なくとも一方の洗浄面に洗浄液を供給する供給手段と、洗浄液が供給された洗浄面に接触するブラシ部を有すると共に、洗浄面と平行かつマスクの搬送方向と交差する方向に延びる軸回りに回転するローラブラシと、を備える。
【0016】
本発明に係る洗浄装置では、厚さ方向に直交する方向に搬送手段によって搬送されるマスクの洗浄面に供給手段から洗浄液が供給された状態で、洗浄面と平行かつマスクの搬送方向と交差する方向に延びる軸回りに回転するローラブラシのブラシ部を洗浄面に接触させることができる。これにより、洗浄面に付着した異物を充分に除去することが可能であり、マスクを良好に洗浄することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る洗浄方法及び洗浄装置によれば、一方の主面から他方の主面にかけて厚さ方向に貫通している複数の貫通孔を有するハニカム構造体封口用マスクに付着した異物を充分に除去して清浄度を向上させることが可能であり、ハニカム構造体封口用マスクを良好に洗浄することができる。また、本発明に係る洗浄方法及び洗浄装置によれば、ハニカム構造体封口用マスクの洗浄効率を向上させることが可能であり、洗浄時間を短縮することもできる。本発明に係るハニカムフィルタの製造方法によれば、このような洗浄方法により洗浄されたマスクを用いることにより、所望の貫通孔が確実に封口されたハニカムフィルタを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るハニカムフィルタの製造方法で製造されるハニカムフィルタを示す図面である。
【図2】本発明の一実施形態に係るハニカムフィルタの製造方法のフローチャートを示す図面である。
【図3】本発明の一実施形態に係る洗浄方法により洗浄されるマスクを示す図面である。
【図4】本発明の一実施形態に係る洗浄装置を示す図面である。
【図5】本発明の一実施形態に係る洗浄方法の一工程を示す図面である。
【図6】本発明の一実施形態に係る洗浄方法の一工程を示す図面である。
【図7】本発明の一実施形態に係る洗浄方法の一工程を示す図面である。
【図8】本発明の一実施形態に係る洗浄方法の一工程を示す図面である。
【図9】本発明の一実施形態に係る洗浄方法の一工程を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、寸法の比率は図面に示すものに限定されない。
【0020】
(ハニカムフィルタ)
図1は、本実施形態に係るハニカムフィルタの製造方法で製造されるハニカムフィルタを示す図面である。ハニカムフィルタ100は、例えばDPFとして用いることができる。
【0021】
ハニカムフィルタ100は、図1に示すように、互いに平行に配置された複数の流路110a,110bを有する円柱体である。流路110a,110bは、ハニカムフィルタ100の中心軸に平行に延びる隔壁112により仕切られている。流路110aの一端は、ハニカムフィルタ100の一端面100aにおいて封口部114により封口されており、流路110aの他端は、ハニカムフィルタ100の他端面100bにおいてガス流出口として開口している。一方、流路110bの一端は、一端面100aにおいてガス流入口として開口しており、流路110bの他端は、他端面100bにおいて封口部114により封口されている。
【0022】
ハニカムフィルタ100では、流路110aと流路110bとが交互に配置されて格子構造が形成されている。流路110a,110bは、ハニカムフィルタ100の両端面100a,100bに垂直であり、一方の端面側から見て正方形配置、すなわち、流路110a,110bの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。流路110a,110bの断面形状は、例えば略正方形である。
【0023】
ハニカムフィルタ100が円柱体である場合、流路110a,110bの長手方向におけるハニカムフィルタ100の長さは、例えば40〜350mmであり、ハニカムフィルタ100の外径は、例えば100〜320mmである。また、流路110a,110bの長手方向に垂直な断面の内径(断面形状が略正方形の場合は一辺の長さ)は、例えば0.8〜2.5mmである。隔壁112の厚みは、例えば0.05〜0.5mmである。
【0024】
隔壁112は、多孔性セラミクス(焼成体)から形成されている。セラミクスとしては、例えばアルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。封口部114の材質は、隔壁112と同様の材質とすることができる。
【0025】
なお、上記実施形態では、流路110a,110bの断面形状が略正方形であるがこれに限定されず、矩形、円形、楕円形、3角形、6角形、8角形等であってもよい。また、流路110a,110bには、径の異なるもの、断面形状の異なるものが混在していてもよい。また、流路の配置は、図1では正方形配置であるが、これに限定されず、断面において流路の中心軸が正三角形の頂点に配置される正三角形配置、千鳥配置等であってもよい。さらに、ハニカムフィルタ100は、円柱体に限られず、3角柱、4角柱、6角柱、8角柱等であってもよい。
【0026】
ハニカムフィルタ100は、図1(b)に示すように、一端面100aから流路110bに供給されたガスGが隔壁112を通過して隣の流路110aに到達し、他端面100bから排出される。このとき、ガスG中の粒子(例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスに含まれる微細粒子(PM))が隔壁112によって除去されることにより、ハニカムフィルタ100はフィルタとして機能する。
【0027】
図2は、本実施形態に係るハニカムフィルタの製造方法のフローチャートを示す図面である。本実施形態に係るハニカムフィルタ100の製造方法は、ハニカム構造体封口用マスクを洗浄する洗浄工程S100と、ハニカム構造体を準備する準備工程S200と、洗浄されたマスクを用いてハニカム構造体の貫通孔を封口する封口工程S300とを備えている。
【0028】
<洗浄工程S100>
図3は、洗浄工程S100において本実施形態に係る洗浄方法により洗浄されるマスクを示す図面である。マスク1は、互いに対向する上面(一方の主面)1a及び下面(他方の主面)1bを洗浄面3として有しており、例えば円板状を呈している。マスク1の直径は、例えば150〜500mmである。マスク1の厚さは、例えば0.1〜3.0mmである。なお、マスク1の材質は特に限定されず、例えば、金属や樹脂が挙げられる。
【0029】
マスク1は、上面1aから下面1bにかけて厚さ方向に貫通している複数の貫通孔5を有している。貫通孔5は、ハニカム構造体において封口される貫通孔の配列と同様に配列されており、例えば千鳥状に配列されている。貫通孔5の軸方向に垂直な断面形状は、ハニカム構造体において封口される貫通孔と同様の断面形状を有しており、例えば略正方形状である。貫通孔5の内径(断面形状が略正方形の場合は一辺の長さ)は、例えば0.8〜2.5mmである。
【0030】
洗浄工程S100では、封口材等の異物が付着したマスク1に対して洗浄液及び乾燥風を供給することによってマスク1から異物を除去してマスク1を洗浄する。異物は、例えば上面1aや下面1b、貫通孔5の内壁に付着している。洗浄液は、例えば水である。
【0031】
洗浄工程S100は、図2に示すように、水洗工程S110と乾燥工程S120とを備える。水洗工程S110は、マスク1を水洗(前処理)する第1水洗工程S110aと、マスク1を水洗(本洗浄)する第2水洗工程S110bと、マスク1を水洗(後処理、リンス)する第3水洗工程S110cとをこの順に有する。
【0032】
図4は、本実施形態に係る洗浄装置を示す図面であり、洗浄工程S100で用いられる洗浄装置50を示す図面である。なお、図4においては、マスク1における貫通孔5の図示を便宜上省略する。
【0033】
洗浄装置50は、ホイールコンベア(搬送手段)7と、第1水洗工程S110aが実施される前処理部10と、第2水洗工程S110bが実施される洗浄部20と、第3水洗工程S110cが実施される後処理部30と、乾燥工程S120が実施される乾燥部40とを有している。洗浄装置50においてマスク1の供給方式は、例えば枚葉式であり、単一のマスク1が順次搬送される。マスク1は、上面1aが鉛直方向上方を向くと共に下面1bが鉛直方向下方を向いた状態で、ホイールコンベア7によって前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40の順にマスク1の厚さ方向(鉛直方向)D1に直交する搬送方向(水平方向)D2に搬送される(搬送工程)。なお、マスク1の供給方式は、複数のマスク1を一括して搬送し同時に水洗又は乾燥するバッチ式であってもよい。洗浄装置50では、搬送動作が連続的に行われてマスク1が連続的に搬送されてもよく、搬送動作が断続的に行われてマスク1が断続的に搬送されてもよい。
【0034】
前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40において、ホイールコンベア7は、厚さ方向D1に互いに対向するように、搬送されるマスク1の上面1a側及び下面1b側のそれぞれに配置されている。前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40では、図5(a)に示すようにマスク1がホイールコンベア7により厚さ方向D1に挟持された状態で、ホイールコンベア7によりマスク1を搬送方向D2に搬送すると共にマスク1の洗浄面3に対して洗浄液又は乾燥風を供給する。
【0035】
前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40におけるホイールコンベア7は、搬送方向D2に複数配列された一対のホイール7a,7bを有している。ホイール7a,7bは、例えば、回転駆動するコロ式のホイールであり、一対のホイールコンベア7において厚さ方向D1に互いに対向している。一対のホイール7a,7bは、図5(b)に示すように、搬送方向D2に沿って千鳥状に配列されている。例えば、厚さ方向D1及び搬送方向D2に直交する方向(水平方向)D3に一対のホイール7a,7bが3対配列された領域と、方向D3に一対のホイール7a,7bが4対配列された領域とが搬送方向D2に沿って交互に配置されている。
【0036】
前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40では、隣接する貫通孔5の配列方向と搬送方向D2とが一致するようにマスク1を搬送することが好ましい。また、貫通孔5の軸方向に垂直な断面形状が矩形である場合、貫通孔5の長辺方向又は短辺方向の少なくとも一方の搬送方向D2に対する角度は、45°であることが好ましい。これらの場合、貫通孔5の内部を更に良好に水洗及び乾燥することができる。
【0037】
前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40以外の領域(前処理部10へ搬送される前の領域、乾燥部40から搬送された後の領域)において、ホイールコンベア7は、搬送されるマスク1の下方にのみ配置されている(図4参照)。マスク1は、ホイールコンベア7上に載置されて、ホイールの回転に伴い搬送方向D2に搬送される。
【0038】
本実施形態では、前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40において、マスク1がホイールコンベア7により厚さ方向D1に挟持された状態で、搬送方向D2に搬送されるマスク1の洗浄面3に対して洗浄液又は乾燥風が供給されている。これにより、マスク1が洗浄液や乾燥風に押圧されてマスク1の配置位置が変動してしまうことを抑制することができる。また、本実施形態では、マスク1がホイールコンベア7により厚さ方向D1に挟持された状態でマスク1を搬送しているものの、ホイールコンベア7を構成する一対のホイール7a,7bが搬送方向D2に沿って千鳥状に配列されているため、方向D3に延びる長尺状のホイールを有するホイールコンベア等を用いる場合に比して、マスク1とホイールコンベア7との接触領域の面積を低減することができる。これにより、ホイールコンベア7に異物が付着していたとしても、マスク1を搬送している間に当該異物が、洗浄面3における洗浄された領域に対して供給されてしまうことを抑制することができる。以上のような本実施形態によれば、マスク1に付着した異物を除去し易くなり、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0039】
なお、ホイールコンベア7は、上記に限られるものではなく、前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40において、搬送されるマスク1の下方にのみ配置されていてもよい。また、ホイールコンベア7は、前処理部10、洗浄部20、後処理部30及び乾燥部40以外の領域において、厚さ方向D1に対向する一対のコロ式のホイールが搬送方向D2に複数並列してなる形態であってもよい。さらに、ホイールコンベア7は、搬送方向D2に沿って千鳥状に配置されることに限定されるものではなく、方向D3に延びる長尺状のホイールが搬送方向D2に複数並列してなる形態であってもよい。
【0040】
(第1水洗工程S110a)
第1水洗工程S110aでは、異物が付着したマスク1を前処理部10に搬送し、搬送されるマスク1に前処理を施す。前処理部10は、図6に示すように、複数の一対のホイール7a,7bから構成されるホイールコンベア7と、一対のローラブラシ12a,12bと、洗浄液14を供給する一対のスプレーノズル(供給手段)16a,16bとを有している。
【0041】
ローラブラシ12a,12bは、厚さ方向D1に互いに対向するように一対配置されており、ローラブラシ12aは、マスク1の上面1a側に配置されており、ローラブラシ12bは、マスク1の下面1b側に配置されている。ローラブラシ12a,12bは、洗浄面3と平行かつ搬送方向D2と交差する方向に延びる軸回りに回転可能であればよく、本実施形態では、洗浄面3と平行かつ搬送方向D2と直交する方向(本実施形態では方向D3と同一方向)に延びる軸回りに回転する。ローラブラシ12aの回転中心である軸A1と、ローラブラシ12bの回転中心である軸A2とは、互いに平行に方向D3に延びている。ローラブラシ12a,12bは、マスク1を洗浄可能なブラシ(ブラシ部)12cを有していればよく、例えば、方向D3に延びる長尺のホイールの表面にブラシ12cが接続された部材である。ローラブラシ12a,12bは、マスク1に接したブラシ12cが搬送方向D2と反対方向に移動するように回転方向D4に回転することが好ましい。この場合、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0042】
スプレーノズル16a,16bは、ローラブラシ12a,12bを介在させた状態で厚さ方向D1に互いに対向しており、搬送過程において上面1a及び下面1bの中心がスプレーノズル16a,16bの間を通過するように配置されている。スプレーノズル16aは、マスク1の上面1a側に配置されており、貫通孔5の軸方向(鉛直方向、本実施形態では方向D1と同一方向)に洗浄液14を噴霧して上面1aに洗浄液14を供給する。スプレーノズル16bは、マスク1の下面1b側に配置されており、貫通孔5の軸方向に洗浄液14を噴霧して下面1bに洗浄液14を供給する。
【0043】
スプレーノズル16a,16bは、洗浄面3に洗浄液14を供給可能であればよく、例えば一流体ノズルや二流体ノズルであり、洗浄液14の供給源18に接続されている。スプレーノズル16a,16bが二流体ノズルである場合には、スプレーノズル16a,16bは、圧縮空気の供給源(図示せず)に更に接続されており、洗浄液14の微細粒子から構成されるミストを噴霧することができる。スプレーノズル16aの先端(噴霧口)から上面1aまでの距離、及び、スプレーノズル16bの先端(噴霧口)から下面1bまでの距離は、例えば50〜200mmである。洗浄液14の温度は、例えば10〜40℃である。
【0044】
本実施形態では、スプレーノズル16a,16bからローラブラシ12a,12bに対して洗浄液14が噴霧された後、ローラブラシ12a,12bに付着した洗浄液14は、ローラブラシ12a,12bが回転することやローラブラシ12a,12bの表面を流れることにより、洗浄面3とローラブラシ12a,12bとの間に供給されて洗浄面3の洗浄に用いられる。また、本実施形態では、スプレーノズル16a,16bから洗浄面3に供給された洗浄液14が貫通孔5の内部に供給されることにより、貫通孔5の内壁を洗浄することもできる。
【0045】
本実施形態では、第1水洗工程S110aにおいて、ホイールコンベア7によって連続的又は断続的に搬送方向D2に搬送されるマスク1の洗浄面3に洗浄液14が供給された状態で、洗浄面3と平行かつ搬送方向D2と直交する方向D3に延びる軸回りに回転するローラブラシ12a,12bのブラシ12cを搬送方向D2の下流側から上流側に向かって順に洗浄面3に接触させて洗浄面3を洗浄する。これにより、本実施形態では、洗浄面3に付着した異物を充分に除去することが可能であり、マスク1を良好に洗浄することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1水洗工程S110aにおいて、上面1a及び下面1bのそれぞれに洗浄液14が供給された状態で、ブラシ12cを上面1a及び下面1bのそれぞれに接触させて洗浄面3を洗浄している。この場合、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0047】
なお、第1水洗工程S110aは、上記に限られるものではなく、前処理部10は、搬送方向D2に複数配置されたローラブラシやスプレーノズルを有していてもよい。また、前処理部10は、単一のローラブラシやスプレーノズルを有していてもよく、例えば、スプレーノズルが上面1a側及び下面1b側のいずれか一方のみに配置されていると共に、単一のローラブラシが単一のスプレーノズルとマスク1との間に配置されていてもよい。スプレーノズル16a,16bは、ローラブラシ12a,12bを介在させることなく厚さ方向D1に互いに対向していてもよく、搬送方向D2に互いに離間して配置されていてもよい。スプレーノズル16a,16bから洗浄液14を供給する方向は、厚さ方向D1に対して傾斜していてもよい。
【0048】
(第2水洗工程S110b)
第2水洗工程S110bでは、第1水洗工程S110aで前処理が施されたマスク1を洗浄部20に搬送し、マスク1を本洗浄する。洗浄部20は、図7に示すように、複数の一対のホイール7a,7bから構成されるホイールコンベア7と、洗浄液24を供給する一対のスプレーノズル26a,26bとを有している。
【0049】
スプレーノズル26aは、マスク1の上面1a側に配置されており、搬送過程においてスプレーノズル26aの下方を上面1aの中心が通過するように配置されている。スプレーノズル26aは、貫通孔5の軸方向(鉛直方向)に洗浄液24を噴霧して上面1a及び貫通孔5の内部に洗浄液24を供給する。スプレーノズル26bは、マスク1の下面1b側に配置されており、搬送過程においてスプレーノズル26bの上方を下面1bの中心が通過するように配置されている。スプレーノズル26bは、貫通孔5の軸方向に洗浄液24を噴霧して下面1b及び貫通孔5の内部に洗浄液24を供給する。
【0050】
スプレーノズル26a,26bは、搬送方向D2に沿った同一直線上において搬送方向D2に互いに離間して配置されており、スプレーノズル26aは、スプレーノズル26bよりも搬送方向D2の下流側に配置されている。すなわち、上面1aに対して噴霧される洗浄液24の噴霧軸A3と、下面1bに対して噴霧される洗浄液24の噴霧軸A4とは、搬送方向D2において互いに離間しており、噴霧軸A3は、噴霧軸A4よりも搬送方向D2の下流側に位置している。これにより、上面1aにおける洗浄液24の供給位置(洗浄液24が吹き付けられる領域)P1は、下面1bにおける洗浄液24の供給位置P2よりも搬送方向D2の下流側に位置することとなる。
【0051】
スプレーノズル26a,26bは、洗浄面3に洗浄液24を吹き付けることが可能な二流体ノズルであり、洗浄液の供給源28aと、圧縮空気の供給源28bとに接続されている。スプレーノズル26aの先端(噴霧口)から上面1aまでの距離、及び、スプレーノズル26bの先端(噴霧口)から下面1bまでの距離は、例えば10〜200mmである。スプレーノズル26a,26bの噴霧広がり角θ1は、例えば60〜80°である。噴霧圧力は、例えば0.1〜0.7MPaである。噴霧量は、例えば0.2〜4.0リットル/minである。洗浄液24の温度は、例えば10〜40℃である。スプレーノズル26a,26bの噴霧パターンは、例えば膜状、扇状、円錐状であり、比較的均一な流量分布が得られる観点から、膜状が好ましい。スプレーノズル26aの先端とスプレーノズル26bの先端との搬送方向D2における間隔D5は、上面1a側及び下面1b側のそれぞれから同一の貫通孔5の内部に洗浄液24が同時に供給されることが抑制され易くなる観点から、例えば5〜50mmである。
【0052】
第2水洗工程S110bでは、ホイールコンベア7によって連続的又は断続的に搬送方向D2に搬送されるマスク1の上面1a及び下面1bのそれぞれに対してスプレーノズル26a,26bから貫通孔5の軸方向に洗浄液24を噴霧して、搬送方向D2の下流側から上流側に向かって順にマスク1の上面1a及び下面1b並びに貫通孔5の内部を洗浄する。
【0053】
本実施形態では、第2水洗工程S110bにおいて、二流体ノズルであるスプレーノズル26a,26bから洗浄液24を噴霧しているため、洗浄液24の微細粒子から構成されるミストを洗浄面3に供給することが可能であり、マスク1から異物を除去し易い。また、本実施形態では、貫通孔5の軸方向に洗浄液24を噴霧することにより、洗浄液24が貫通孔5の内部に供給され易く、貫通孔5の内部を充分に洗浄することができる。さらに、本実施形態では、上面1aに対して噴霧される洗浄液24の噴霧軸A3と下面1bに対して噴霧される洗浄液24の噴霧軸A4とが、搬送方向D2において互いに離間している。この場合、本実施形態では、上面1a及び下面1bのそれぞれに対して洗浄液24を噴霧しているものの、上面1a側及び下面1b側のそれぞれから同一の貫通孔5の内部に洗浄液24が同時に供給されることが抑制される。これにより、上面1a側及び下面1b側のうちの一方側から供給された洗浄液24による洗浄が、他方側から供給された洗浄液24により妨げられることが抑制される。以上のような本実施形態によれば、マスク1の洗浄面3に付着した異物に加えて貫通孔5の内壁に付着した異物を除去し易くなり、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る洗浄方法は、第1水洗工程S110aの後に第2水洗工程S110bを備えている。この場合、第1水洗工程S110aにおいて前処理としてマスク1を洗浄した後に第2水洗工程S110bにおいてマスク1が本洗浄されるため、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0055】
本実施形態では、第2水洗工程S110bにおいて、上面1aが鉛直方向上方を向くと共に下面1bが鉛直方向下方を向いた状態でマスク1が搬送され、噴霧軸A3が噴霧軸A4よりも搬送方向D2の下流側に位置している。この場合、鉛直方向下方を向いた下面1b側からスプレーノズル26bによって貫通孔5の内部に供給された洗浄液24が、異物を除去しつつ貫通孔5の内部を通過して、鉛直方向上方を向いた上面1aに付着したとしても、搬送方向D2の下流側においてスプレーノズル26aによって供給される洗浄液24により、上面1aに付着した洗浄液24を除去することができる。これにより、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0056】
なお、第2水洗工程S110bは、上記に限られるものではなく、スプレーノズル26aがスプレーノズル26bよりも搬送方向D2の上流側に配置されることにより、噴霧軸A3が噴霧軸A4よりも搬送方向D2の上流側に位置していてもよい。また、洗浄部20は、搬送方向D2に複数配置されたスプレーノズルを有していてもよい。
【0057】
(第3水洗工程S110c)
第3水洗工程S110cでは、第2水洗工程S110bで洗浄されたマスク1を後処理部30に搬送し、マスク1に後処理を施す。後処理部30は、図8に示すように、複数の一対のホイール7a,7bから構成されるホイールコンベア7と、洗浄液34を供給する一対のスプレーノズル36a,36bとを有している。
【0058】
スプレーノズル36a,36bは、厚さ方向D1に互いに対向するように一対配置されており、厚さ方向D1に対して搬送方向D2の上流側に傾斜する方向D6に洗浄液34を供給する。スプレーノズル36aは、マスク1の上面1a側に配置されており、洗浄液34を噴霧して上面1a及び貫通孔5の内部に洗浄液34を供給する。スプレーノズル36bは、マスク1の下面1b側に配置されており、洗浄液34を噴霧して下面1b及び貫通孔5の内部に洗浄液34を供給する。上面1aにおける洗浄液34の供給位置(洗浄液34が吹き付けられる領域)P3と下面1bにおける洗浄液34の供給位置P4とは、厚さ方向D1に互いに対向している。
【0059】
スプレーノズル36a,36bは、洗浄面3に洗浄液34を吹き付けることが可能であればよく、例えば一流体ノズルや二流体ノズルであり、洗浄液34の供給源38に接続されている。スプレーノズル36a,36bが二流体ノズルである場合には、スプレーノズル36a,36bは、圧縮空気の供給源(図示せず)に更に接続されている。
【0060】
スプレーノズル36a,36bにおいて洗浄液34を供給する方向D6の傾斜角度θ2は、厚さ方向D1に対して例えば10〜45°である。スプレーノズル36aの先端(噴霧口)から上面1aまでの最短距離、及び、スプレーノズル36bの先端(噴霧口)から下面1bまでの最短距離は、例えば50〜200mmである。噴霧圧力は、例えば0.1〜2MPaである。噴霧量は、例えば0.2〜15リットル/minである。洗浄液34の温度は、例えば10〜40℃である。スプレーノズル36a,36bの噴霧パターンは、例えば膜状、扇状、円錐状である。
【0061】
本実施形態では、第3水洗工程S110cにおいて、ホイールコンベア7によって連続的又は断続的に搬送方向D2に搬送されるマスク1の洗浄面3に対し、厚さ方向D1に対して搬送方向D2の上流側に傾斜する方向D6に洗浄液34を供給して、搬送方向D2の下流側から上流側に向かって順にマスク1を洗浄する。これにより、異物が洗浄液34によって搬送方向D2の上流側に排除され易くなり、洗浄面3における搬送方向D2の下流側の領域に、マスク1を搬送するに伴い異物が残存することを抑制することができる。したがって、本実施形態では、マスク1に付着した異物を除去し易くなり、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第3水洗工程S110cにおいて上面1a及び下面1bのそれぞれに洗浄液34を供給している。この場合、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る洗浄方法は、第3水洗工程S110cの前に第2水洗工程S110bを備えている。この場合、第2水洗工程S110bにおいてマスク1を本洗浄した後に第3水洗工程S110cにおいて後処理としてマスク1が洗浄されるため、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0064】
なお、第3水洗工程S110cは、上記に限られるものではなく、スプレーノズル36a,36bが搬送方向D2に互いに離間して一対配置されることにより、供給位置P3と供給位置P4とが搬送方向D2において互いに離間していてもよい。また、後処理部30は、搬送方向D2に複数配置されたスプレーノズルを有していてもよく、上面1a側及び下面1b側のいずれか一方のみに単一のスプレーノズルを有していてもよい。
【0065】
(乾燥工程S120)
乾燥工程S120では、第3水洗工程S110cで後処理が施されて洗浄液が付着したマスク1を乾燥部40に搬送し、マスク1に付着した洗浄液を除去する。除去されるべき洗浄液は、例えば、マスク1の上面1aや下面1b、貫通孔5の内壁に付着している。乾燥部40は、図9に示すように、複数の一対のホイール7a,7bから構成されるホイールコンベア7と、第1乾燥工程として乾燥風42aを送風するスプレーノズル44と、第2乾燥工程として乾燥風42bを送風するエアナイフ46a,46bとを有している。
【0066】
スプレーノズル44及びエアナイフ46a,46bは、乾燥風42aや乾燥風42bの供給源48に接続されている。スプレーノズル44は、マスク1を乾燥するための乾燥風42aを貫通孔5の軸方向に送風し、乾燥風42aを洗浄面3に吹き付けることが可能である。エアナイフ46a,46bは、マスク1を乾燥するための乾燥風42bを厚さ方向D1に対して搬送方向D2の上流側に傾斜する方向D7に送風し、マスク1における方向D3の全長にわたって乾燥風42bを洗浄面3に吹き付けることが可能である。
【0067】
乾燥風42aは、上面1a側及び下面1b側のいずれか一方のみからマスク1に対して供給されていることが好ましく、本実施形態では、マスク1の上面1a側のみからスプレーノズル44によってマスク1に対して供給されている。スプレーノズル44は、上面1a側のみに配置されており、搬送過程においてスプレーノズル44の下方を上面1aの中心が通過するように配置されている。スプレーノズル44は、乾燥風42aを送風して上面1a及び貫通孔5の内部に乾燥風42aを供給する。スプレーノズル44の先端(送風面)から上面1aまでの距離は、例えば50〜200mmである。乾燥風42aの圧力は、例えば0.1〜1MPaである。乾燥風42aの供給量は、例えば100〜1000リットル/minである。乾燥風42aは、例えば5〜200℃の風または温風である。
【0068】
乾燥風42bは、上面1a側及び下面1b側のそれぞれからエアナイフ46a,46bによってマスク1に対して供給されている。エアナイフ46a,46bは、マスク1の上面1a側及び下面1b側のそれぞれに配置されており、厚さ方向D1に互いに対向するように一対配置されている。エアナイフ46aは、マスク1の上面1a側に配置されており、乾燥風42bを送風して上面1aに乾燥風42bを供給する。エアナイフ46bは、マスク1の下面1b側に配置されており、乾燥風42bを送風して下面1bに乾燥風42bを供給する。上面1aにおける乾燥風42bの供給位置(乾燥風42bが吹き付けられる位置)P5と下面1bにおける乾燥風42bの供給位置P6とは、厚さ方向D1に互いに対向している。
【0069】
エアナイフ46aの先端(送風面)から上面1aまでの最短距離、及び、エアナイフ46bの先端(送風面)から下面1bまでの最短距離は、例えば1〜200mmである。乾燥風42bの圧力は、例えば0.1〜1MPaである。乾燥風42bの供給量は、例えば100〜5000リットル/minである。乾燥風42bは、例えば5〜200℃の風または温風である。エアナイフ46a,46bにおいて乾燥風42bを供給する方向D7の傾斜角度θ3は、厚さ方向D1に対して例えば10〜45°である。
【0070】
乾燥工程S120では、上面1aにおける乾燥風42aが供給された領域P7に対して乾燥風42bを供給する。具体的には、スプレーノズル44から送風された乾燥風42aが供給された領域P7は、ホイールコンベア7によって連続的又は断続的に搬送方向D2に搬送されるマスク1の移動に伴って搬送方向D2の下流側に移動する。そして、領域P7には、エアナイフ46aから送風された乾燥風42bが供給される。このようにマスク1が搬送方向D2に搬送されつつ上面1aに対して乾燥風42a及び乾燥風42bが供給されることにより、上面1aには、搬送方向D2の下流側から上流側にかけて乾燥風42a及び乾燥風42bが供給されることとなる。
【0071】
本実施形態では、第1乾燥工程として、ホイールコンベア7によって連続的又は断続的に搬送方向D2に搬送されるマスク1の上面1aに対し、搬送方向D2の下流側から上流側に向かって順に、貫通孔5の軸方向にスプレーノズル44から乾燥風42aを供給することにより、洗浄面3に付着した洗浄液に加えて貫通孔5の内部に付着した洗浄液を除去することができる。
【0072】
続いて、第2乾燥工程として、ホイールコンベア7によって連続的又は断続的に搬送方向D2に搬送されるマスク1の上面1a及び下面1bに対し、搬送方向D2の下流側から上流側に向かって順に、厚さ方向D1に対して搬送方向D2の上流側に傾斜する方向D7にエアナイフ46a,46bから乾燥風42bを供給することにより、上面1a及び下面1bに付着した洗浄液を除去することができる。
【0073】
本実施形態では、第1乾燥工程及び第2乾燥工程を行うことにより、洗浄面3に付着した洗浄液、及び、貫通孔5の内部に付着した洗浄液を充分に除去することが可能である。したがって、本実施形態では、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0074】
また、本実施形態では、第1乾燥工程において上面1a側のみからマスク1に対して乾燥風42aを供給している。この場合、貫通孔5の上面1a側から供給された乾燥風42aが下面1b側より排除され易くなる。これにより、貫通孔5の内部に付着した洗浄液を除去し易くなり、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0075】
また、本実施形態では、第2乾燥工程において上面1a側及び下面1b側のそれぞれから乾燥風42bを供給している。この場合、上面1aに付着した洗浄液と共に下面1bに付着した洗浄液を除去することができるため、マスク1を更に良好に洗浄することができる。
【0076】
なお、乾燥工程S120は、上記に限られるものではない。上記実施形態ではマスク1を水平方向に搬送しているが、水平方向から傾斜した方向にマスク1を搬送してもよい。例えば、搬送方向D2の上流側よりも下流側が鉛直方向上方に位置するように傾斜させてマスク1を搬送してもよく、傾斜角度は、水平方向に対して例えば5〜20°である。この場合、マスク1に付着した洗浄液が乾燥風42a,42bにより搬送方向D2の上流側に更に排除され易くなり、洗浄面3における搬送方向D2の下流側の領域に洗浄液が残存することや、乾燥風42a,42bにより排除された洗浄液が洗浄面3における搬送方向D2の下流側の領域に再度付着することを抑制することができる。また、乾燥工程S120では、洗浄面3における搬送方向D2の下流側の領域に洗浄液が残存することや再度付着することを更に抑制する観点から、ドラフト設備や気液分離器を用いてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、上面1aにおける乾燥風42aが供給された領域P7に対して乾燥風42bを供給しているが、エアナイフ46a,46bをスプレーノズル44よりも搬送方向D2の上流側に配置して、上面1aにおける乾燥風42bが供給された領域に対して乾燥風42aを供給してもよい。さらに、上記実施形態では、同一のマスク1の洗浄面3に対して同時に乾燥風42a及び乾燥風42bをそれぞれ供給しているが、洗浄面3の搬送方向D2の全長にわたって乾燥風42aを供給した後に、同一の洗浄面3の搬送方向D2の全長にわたって乾燥風42bを供給してもよい。
【0078】
乾燥部40は、搬送方向D2に複数配列されたスプレーノズル44及びエアナイフ46a,46bを有していてもよい。乾燥部40は、スプレーノズル44に代えて、マスク1における方向D3の全長にわたって乾燥風42aを送風可能なエアナイフを有していてもよい。また、スプレーノズル44がマスク1の上面1a側及び下面1b側のうち下面1b側のみに配置されて、乾燥風42aがマスク1の下面1b側のみからマスク1に対して供給されていてもよい。
【0079】
エアナイフ46a,46bは、搬送方向D2に互いに離間して一対配置されていてもよく、供給位置P5と供給位置P6とは、搬送方向D2において互いに離間していてもよい。この場合、上面1a側及び下面1b側のそれぞれから同一の貫通孔5の内部に乾燥風42bが同時に供給されることが抑制されるため、貫通孔5の内部に付着した洗浄液を更に除去し易くなる。また、エアナイフ46a及びエアナイフ46bのいずれか一方のみが配置されて、乾燥風42bがマスク1の一方側のみからマスク1に対して供給されていてもよい。
【0080】
<準備工程S200>
洗浄工程S100に続く準備工程S200について説明する。準備工程S200では、ハニカム構造体を準備する。例えば、原料混合物を押出成形して、隔壁により区画された複数の貫通孔を有するグリーンハニカム成形体を得た後に、当該グリーンハニカム成形体を焼成してハニカム構造体(未封口ハニカム焼成体)を得る。
【0081】
原料混合物は、セラミクス材料や有機バインダを含有し、必要に応じてその他の添加剤を含有する。ハニカムフィルタ100がチタン酸アルミニウムを含む場合、原料混合物は、セラミクス材料として例えばアルミニウム源粉末やチタニウム源粉末を含有し、必要に応じてマグネシウム源粉末やケイ素源粉末を更に含有する。有機バインダは、例えばメチルセルロースである。添加剤は、例えば造孔剤、潤滑剤、可塑剤、分散剤、溶媒である。
【0082】
<封口工程S300>
封口工程S300では、ハニカム構造体における封口すべき貫通孔に対応する箇所に貫通孔5が設けられたマスク1をハニカム構造体の一端面に密着させ、ハニカム構造体の一部の貫通孔にマスク1を介して封口材を供給する。次に、マスク1をハニカム構造体の他端面に密着させ、ハニカム構造体の一端面側の端部が封口されていない貫通孔にマスク1を介して封口材を供給する。これにより、ハニカム構造体の一端側の端部及び他端側の端部のいずれかが封口された流路が形成される。本実施形態では、図1に示したように、ハニカムフィルタ100の一端面100a側の端部が封口された流路110aと、ハニカムフィルタ100の他端面100b側の端部が封口された流路110bとが交互に配置されるように、ハニカム構造体の貫通孔を封口する。封口材は、ハニカム構造体の貫通孔を封口可能であれば特に限定されず、ハニカム構造体を得るための上記原料混合物と同様の材料を用いることができる。
【0083】
続いて、貫通孔が封口されたハニカム構造体を加熱し、貫通孔内に供給した封口材を硬化させて封口部114を形成する。以上により、図1に示すハニカムフィルタ100を得ることができる。なお、上記実施形態では、準備工程S200においてグリーンハニカム成形体を焼成した後に封口工程S300において貫通孔を封口しているが、準備工程S200において得られたグリーンハニカム成形体の貫通孔を封口した後に焼成してハニカムフィルタ100を得ることもできる。
【符号の説明】
【0084】
1…マスク、1a…上面(一方の主面)、1b…下面(他方の主面)、3…洗浄面、5…貫通孔、7…ホイールコンベア(搬送手段)、12a,12b…ローラブラシ、12c…ブラシ(ブラシ部)、14,24…洗浄液、16a,16b…スプレーノズル(供給手段)、50…洗浄装置、100…ハニカムフィルタ、A1,A2…軸、D1…マスクの厚さ方向、D2…マスクの搬送方向、D3…ローラブラシの軸が延びる方向、S100…洗浄工程、S110a…第1水洗工程、S110b…第2水洗工程、S300…封口工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面から他方の主面にかけて厚さ方向に貫通している複数の貫通孔を有するハニカム構造体封口用マスクの洗浄方法であって、
前記マスクを前記厚さ方向に直交する方向に搬送する工程と、
前記搬送されるマスクの前記一方の主面又は前記他方の主面の少なくとも一方の洗浄面に洗浄液が供給された状態で、前記洗浄面と平行かつ前記マスクの搬送方向と交差する方向に延びる軸回りに回転するローラブラシのブラシ部を前記洗浄面に接触させる洗浄工程と、を備える、洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄工程において、前記一方の主面及び前記他方の主面のそれぞれに前記洗浄液が供給された状態で、前記ブラシ部を前記一方の主面及び前記他方の主面のそれぞれに接触させる、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記ローラブラシが、前記厚さ方向に互いに対向するように一対配置されている、請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記一方の主面に接触する前記ブラシ部を有する前記ローラブラシの軸と、前記他方の主面に接触する前記ブラシ部を有する前記ローラブラシの軸とが互いに平行に延びている、請求項2又は3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄工程において、前記洗浄面に接触した前記ブラシ部が前記搬送方向と反対方向に移動するように前記ローラブラシを回転させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄工程の後に、前記搬送されるマスクの前記一方の主面又は前記他方の主面の少なくとも一方に対し前記貫通孔の軸方向に洗浄液を供給する工程を更に備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の洗浄方法により前記マスクを洗浄する工程と、
前記洗浄されたマスクを介してハニカム構造体の一部の貫通孔に封口材を供給する工程と、を備える、ハニカムフィルタの製造方法。
【請求項8】
一方の主面から他方の主面にかけて厚さ方向に貫通している複数の貫通孔を有するハニカム構造体封口用マスクの洗浄装置であって、
前記マスクを前記厚さ方向に直交する方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送されるマスクの前記一方の主面又は前記他方の主面の少なくとも一方の洗浄面に洗浄液を供給する供給手段と、
前記洗浄液が供給された前記洗浄面に接触するブラシ部を有すると共に、前記洗浄面と平行かつ前記マスクの搬送方向と交差する方向に延びる軸回りに回転するローラブラシと、を備える、洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254413(P2012−254413A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129463(P2011−129463)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】