ハニカム構造体封口用マスク及びこれを用いたハニカム構造体の封口方法
【課題】ハニカム構造体の端面との位置合わせを容易に行うことができ、所定のセルを確実に封口するのに有用なマスク及びこれを用いた封口方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るマスクは、ハニカム構造体のセルの封口に使用されるものであり、マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の第1の貫通孔を有し、他方面における第1の貫通孔の開口面積が一方面における第1の貫通孔の開口面積よりも小さい。
【解決手段】本発明に係るマスクは、ハニカム構造体のセルの封口に使用されるものであり、マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の第1の貫通孔を有し、他方面における第1の貫通孔の開口面積が一方面における第1の貫通孔の開口面積よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の封口に使用されるマスク及びこれを用いたハニカム構造体の封口方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔からなるセル構造の一部のセルの一端側を封口材で封じると共に、残りのセルの他端側を封口材で封じた構造を有する。
【0003】
ハニカム構造体の多数のセルのうち、所定のセルを封口するのにマスクが使用される。このような用途のマスクとして2つのタイプがある。一方は封口すべきセルに対応する箇所に予め貫通孔が設けられているタイプである。他方は貫通孔が予め設けられていないタイプであり、ハニカム構造体の端面に貼り付けた後に封口すべきセルに対応する箇所にレーザー等で貫通孔を設けるものである。下記特許文献1,2には、マスクを用いてハニカム構造体を封口する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290766号公報
【特許文献2】特開2008−132749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、予め貫通孔が設けられているタイプのマスクは、ハニカム構造体との位置合わせが必要である。特に、ハニカム構造体がDPFのように、乾燥工程や焼成工程を経て製造される焼結体又は焼成前のグリーン成形体の場合、製造プロセスにおけるハニカム構造体の収縮や変形により、マスクの貫通孔と封口すべきセルとの位置合わせがより一層困難になる。DPFは、狭いセルピッチ(たとえば1.1〜2.8mm程度)を有するものもあり、ハニカム構造体の端面の一部についてはマスクの貫通孔を適切に配置できても、他の部分ではずれが生じる場合もある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ハニカム構造体の端面との位置合わせを容易に行うことができ、所定のセルを確実に封口するのに有用なマスク及びこれを用いた封口方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマスクは、ハニカム構造体のセルの封口に使用されるものであり、マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の第1の貫通孔を有し、他方面における第1の貫通孔の開口面積が一方面における第1の貫通孔の開口面積よりも小さい。
【0008】
本発明のマスクは、ハニカム構造体の端面に対してマスクの他方面(開口面積が小さい方の面)を当接させた状態で使用される。上記マスクによれば、他方面における第1の貫通孔の開口面積を小さくしたことで、第1の貫通孔の位置とセルの開口の位置が多少ずれても第1の貫通孔を通じて封口材を所定のセル内に供給できる。また、上記マスクは、第1の貫通孔の全体の開口面積が大きいマスクと比較し、十分な剛性を確保しやすいという利点もある。
【0009】
本発明において、第1の貫通孔は、一方面から他方面に向けて開口面積が連続的に縮小するテーパ部を有するものであってもよく、あるいは、一方面から他方面に向けて開口面積が不連続的に縮小する段差部を有するものであってもよい。
【0010】
第1の貫通孔は、他方面における開口面積が0.03mm2以上であり且つ当該第1の貫通孔によって封口すべきハニカム構造体のセルの開口面積の90%未満であることが好ましい。第1の貫通孔の開口面積を、封口すべきセルの開口面積の90%未満とすることで、第1の貫通孔の位置とセルの開口の位置が多少ずれても第1の貫通孔を通じて封口材を所定のセル内により確実に供給できる。第1の貫通孔の開口面積を0.03mm2以上とすることにより、封口材が第1の貫通孔を通過しやすく、所定量の封口材をセル内に供給しやすい。
【0011】
本発明に係るマスクは、使用時においてハニカム構造体の端面と当接する領域のうち、ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、マスクの厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通孔を更に有してもよい。この場合、第2の貫通孔は、ハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ第1の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満であることが好ましい。
【0012】
ハニカム構造体の周縁部は、ハニカム構造体の側面をなす最外層の存在により、セルの形状が他の部分と異なる場合がある。たとえば、最外層の形状が円筒状であり、その内部に断面形状が正方形のセルが設けられたハニカム構造体の場合、断面形状が正方形の完全なセルと、周縁部の不完全なセルとが存在する。
【0013】
上記のような不完全なセル及び必要であればこれに隣接するセルを完全に封口するのに第2の貫通孔が有用である。すなわち、第2の貫通孔の開口面積を第1の貫通孔によって封口すべきセル(完全なセル)の開口面積の60%未満と制限する一方、第2の貫通孔の配置をハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔にしてその数を十分に多くすることで、第2の貫通孔を通じて封口材を封口すべきセル内に適切に供給できる。また、第2の貫通孔の開口面積を0.03mm2以上としたことにより、封口材が第2の貫通孔を通過しやすく、所定量の封口材をセル内に供給しやすい。
【0014】
本発明は上記マスクを用いてハニカム構造体の所定のセルの開口を封じる方法を提供する。すなわち、本発明はハニカム構造体のセルの封口方法であって、
(a)ハニカム構造体の一方の端面上にマスクを配置する工程と、
(b)ハニカム構造体の一方の端面における封口すべきセルの開口にマスクが有する第1の貫通孔を通じて封止材を供給する工程と、
を備え、上記マスクは一方面から他方面にかけて貫通する複数の第1の貫通孔を有し、他方面における第1の貫通孔の開口面積が一方面における第1の貫通孔の開口面積よりも小さく、上記(a)工程において当該マスクの他方面がハニカム構造体の端面に当接するように当該マスクを配置する封口方法を提供する。
【0015】
上記封口方法によれば、ハニカム構造体の端面との位置合わせを容易に行うことができ、従来と比較して所定のセルをより確実に封口できる。
【0016】
ハニカム構造体の周縁部に不完全なセルが存在する場合、上記封口方法は、以下のような構成とすることができる。すなわち、上記マスクはハニカム構造体の一方の端面と当接する領域のうち、ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通孔を更に有し、第2の貫通孔はハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ第1の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満のものとすることができる。そして、上記(b)工程において、ハニカム構造体の端面周縁部における封口すべきセルの開口に当該マスクの第2の貫通孔を通じて封止材を供給する。
【0017】
上記封口方法は、ハニカム構造体の一方の端面を封口処理する工程の後、他方の端面についても封口処理する工程を更に備えてもよい。ハニカム構造体の両方の端面を封口処理した後、必要に応じて乾燥や焼成等の工程を経ることで、ハニカムフィルタ構造体を得ることができる。すなわち、上記封口方法は、
(c)ハニカム構造体の他方の端面上に他のマスクを配置する工程と、
(d)ハニカム構造体の他方の端面における封口すべきセルの開口に上記他のマスクが有する第3の貫通孔を通じて封止材を供給する工程とを更に備えてもよい。この場合、上記他のマスクは、一方面から他方面にかけて貫通する複数の第3の貫通孔を有し、他方面における第3の貫通孔の開口面積が一方面における第3の貫通孔の開口面積よりも小さく、上記(a)工程において当該マスクの他方面がハニカム構造体の端面に当接するように当該マスクを配置する。
【0018】
ハニカム構造体の周縁部に不完全なセルが存在し、他方の端面においても不完全なセルを封口する場合、上記封口方法は、以下のような構成とすることができる。すなわち、上記他のマスクは、ハニカム構造体の他方の端面と当接する領域のうち、ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第4の貫通孔を更に有し、第4の貫通孔はハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ第3の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満であり、上記(d)工程において、ハニカム構造体の端面周縁部における封口すべきセルの開口に当該マスクの第4の貫通孔を通じて封止材を供給する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ハニカム構造体の端面との位置合わせを容易に行うことができ、従来と比較して所定のセルをより確実に封口できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1の(a)は、ハニカム構造体の一例を示す斜視図、図1の(b)は、図1の(a)の部分拡大図である。
【図2】図2の(a)は、本発明に係るマスクの一実施形態を示す斜視図、図2の(b)は、図2の(a)の部分拡大図である。
【図3】図3は、図2の(b)のIII−III線における部分断面図である。
【図4】図4の(a)及び(b)は、本発明に係るマスクが有する第1の貫通孔の他の態様をそれぞれ示す部分断面図である。
【図5】図5は、封口装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】図6は、図5の封口装置のVI−VI矢視図である。
【図7】図7の(a)は、本発明に係るマスクの他の実施形態を示す斜視図、図7の(b)は、図7の(a)の部分拡大図である。
【図8】図8の(a)は、図6の封口装置の動作を説明する部分端面図であり、図8の(b)は、図8の(a)に続く部分断面図である。
【図9】図9の(a)は、図8の(b)に続く部分断面図であり、図9の(b)は、図9の(a)に続く部分断面図である。
【図10】図10の(a)は、図9の(b)に続く部分断面図であり、図10の(b)は、図10の(a)に続く部分断面図である。
【図11】図11の(a)は、図10の(b)に続く部分断面図であり、図11の(b)は、図11の(a)に続く部分断面図である。
【図12】図12は、本発明に係るマスクの第1の貫通孔に弾性板が入り込んでいる状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本発明に係るマスクの説明に先立ち、ハニカム構造体について説明する。
【0022】
(ハニカム構造体)
図1の(a)に示すように、ハニカム構造体1は、多数のセル1aが略平行に配置された円柱体である。セル1aはハニカム構造体1の一方の端面から他方の端面にかけて貫通している。セル1aの断面形状は、図1の(b)に示すように正方形である。これらの複数のセル1aは、ハニカム構造体1において、端面から見て、正方形配置、すなわち、セル1aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。セル1aの断面の正方形のサイズは、たとえば、一辺0.8〜2.5mmとすることができ、その開口面積は0.6〜7.0mm2程度(より好ましくは0.8〜6.0mm2程度)とすることができる。ハニカム構造体1のセルピッチは、1.1〜2.8mmとすることができる。なお、セルピッチとは、隣接する2つのセルの中心間の距離を意味し、ハニカム構造体1にあっては図1の(b)に示す長さLである。
【0023】
ハニカム構造体1は、側面をなす最外層1cの形状が円筒状であり、上述の通り、その内部に断面形状が正方形のセル1a(以下、「完全なセル1a」又は単に「セル1a」という。)を有する。これに加え、ハニカム構造体1は、その周縁部に断面形状が正方形でないセル1b(以下、「不完全なセル1b」又は単に「セル1b」という。)を有する。図1の(b)に示す通り、不完全なセル1bの形状は一定ではなく、場所によって異なっている。
【0024】
ハニカム構造体1のセル1a,1bを構成する貫通孔が延びる方向の長さは特に限定されないが、たとえば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体1の外径も特に限定されないが、たとえば、100〜320mmとすることできる。
【0025】
ハニカム構造体1の材料は特に限定されないが、高温耐性の観点から、セラミクス材料が好ましい。セラミクス材料としては、たとえば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。このような、ハニカム構造体1は通常多孔質である。
【0026】
また、ハニカム構造体1は、後で焼成することにより上述のようなセラミクス材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)であってもよい。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0027】
たとえば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0028】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩が挙げられる。
【0029】
添加物としては、たとえば、造孔剤、潤滑剤、可塑剤、分散剤及び溶媒が挙げられる。
【0030】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;及びドライアイス等などが挙げられる。
【0031】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(POAAE)などが挙げられる。
【0032】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0033】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;及び水などを用いることができる。
【0034】
(ハニカム構造体封口用マスク)
図2に示すマスク5は、図1に示すハニカム構造体1の所定のセルを封口するのに使用されるものである。マスク5は、円形の板状部材であり、厚さ方向に貫通する第1の貫通孔5a及び第2の貫通孔5bを有する。なお、マスク5の材料は特に限定されず、たとえば、金属や樹脂が挙げられる。また、マスク5の貫通孔5aの位置決めを容易にすべく、マスク5には、オリエンテーションフラット5cが形成され、これに対応して図5に示す封口装置100のリング部材25にもオリエンテーションフラット5cに対応する突起25bを設けてもよい(図6参照)。また、マスク5の外径は、封口装置100の本体部10の凹部10dの内径よりも大きくされていることが好ましい。
【0035】
第1の貫通孔5aはハニカム構造体1の完全なセル1aに封止材を供給するためのものである。第1の貫通孔5aは、マスク5の使用時においてハニカム構造体1の端面の中央部(周縁部以外の領域)と当接する部分に設けられている。
【0036】
第1の貫通孔5aの断面形状は、図2の(b)に示すように、ハニカム構造体1のセル1aに対応する正方形である。これらの第1の貫通孔5aは、千鳥配置されており、各第1の貫通孔5aは、図1の(b)の正方配置された複数のセル1aのうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数のセル1aのみに対向して配置される。なお、第1の貫通孔5aの形状は、正方形に限定されるものではないが、ペースト状の封口材の充填性の観点から、セル1aの開口よりもひと回り小さく、その形状と相似形であることが好ましい。
【0037】
第1の貫通孔5aは、図3に示すようにテーパ状になっており、開口面積がマスク5の厚さ方向の位置によって異なっている。すなわち、マスク5の一方の面F1から他方の面F2に向けて開口面積が連続的に縮小している。なお、マスク5は、ハニカム構造体1の端面に対してマスク5の面F2を当接させた状態で使用される。
【0038】
第1の貫通孔5aは、面F2における開口面積が面F1における開口面積よりも小さいものである限り、図3に示すテーパ状に限定されるものではない。たとえば、図4の(a)に示すように、第1の貫通孔5aは、面F1から面F2に向けて開口面積が連続的に縮小するテーパ部6aと、テーパ部6aの面F2側に位置し開口面積が一定の部分6bとによって構成されてもよい。また、図4の(b)に示すように、第1の貫通孔5aは、面F1から面F2に向けて開口面積が不連続的に縮小する段差部6cを有するものであってもよい。
【0039】
第1の貫通孔5aにおけるテーパの角度(図3及び図4の(a)における角度α)は、マスク5の剛性及び封口材のロスの低減等の観点から、10〜70°であることが好ましく、30〜60°であることがより好ましい。
【0040】
第1の貫通孔5aは、面F2における開口面積が0.03mm2以上であり且つ第1の貫通孔5aによって封口すべきセル1aの開口面積の90%未満であることが好ましい。第1の貫通孔5aの面F2における開口面積が0.03mm2未満であると、封口材が第1の貫通孔5aを通過しにくくなり、所定量の封口材をセル1a内に供給しにくくなる。第1の貫通孔5aの上記開口面積は、0.05mm2以上であることがより好ましく、0.07mm2以上であることが更に好ましく、0.2mm2以上であってもよい。
【0041】
他方、第1の貫通孔5aの面F2における開口面積がセル1aの開口面積の90%以上であると、第1の貫通孔5aの位置とセル1aの開口の位置が少しずれただけで、封口すべきでない近傍のセル1aに封口材を供給するおそれがある。第1の貫通孔5aの上記開口面積は、セル1aの開口面積の80%未満であることが好ましく、60%未満であることがより好ましい。
【0042】
第2の貫通孔5bはハニカム構造体1の不完全なセル1bに封止材を供給するためのものである。第2の貫通孔5bは、マスク5の使用時においてハニカム構造体1の端面周縁部と当接する部分に、ハニカム構造体1のセルピッチ(図1の長さL)よりも狭い間隔で設けられていることが好ましい。第2の貫通孔5bの間隔は、全てのセル1bを確実に封口する観点から、L/10〜3L/4であることが好ましく、L/5〜L/2であることがより好ましい。
【0043】
第2の貫通孔5bの形状は、不完全なセル1bの形状に関わらず、限られた領域に多数の貫通孔を設けることができる形状であればよく、第2の貫通孔5bの形状はたとえば円形もしくは矩形であってもよいが、好ましくは円形である。図2の(a)に示すように、マスク5には多数の第2の貫通孔5bからなる環状の帯が形成されている。
【0044】
第2の貫通孔5bは、面F2における開口面積が0.03mm2以上であり且つ第1の貫通孔5aによって封口すべきセル1aの開口面積の60%未満であることが好ましい。第2の貫通孔5bの面F2における開口面積が0.03mm2未満であると、封口材が第2の貫通孔5bを通過しにくくなり、所定量の封口材をセル1b内に供給しにくくなる。第2の貫通孔5bの上記開口面積は、0.04mm2以上であることがより好ましく、0.05mm2以上であることが更に好ましく、0.2mm2以上であってもよい。
【0045】
他方、第2の貫通孔5bの面F2における開口面積が完全なセル1aの開口面積の60%以上であると、マスク5の剛性が不十分となりやすく、またマスク5のわずかなズレで封口すべきでない近傍のセル1aに封口材を供給するおそれ、あるいは、図1の(b)に示す最外層1cの外側に封口材が漏れ出しやすくなるおそれがある。第2の貫通孔5bの上記開口面積は、完全なセル1aの開口面積の50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0046】
第2の貫通孔5bの開口面積は、マスク5の厚さ方向の全範囲にわたって一定であってもよいし、図3,4に示す第1の貫通孔5aと同様、マスク5の厚さ方向の位置によって異なっていてもよい。
【0047】
マスク5によれば、ハニカム構造体1の端面に当接する面F2における第1の貫通孔5aの開口面積を小さくしたことで、第1の貫通孔5aの位置とセル1aの開口の位置が多少ずれても第1の貫通孔5aを通じて封口材を所定のセル1a内に供給できる。また、マスク5は、第1の貫通孔5aの全体の開口面積を大きくした場合と比較し、十分な剛性を確保しやすいという利点もある。更に、マスク5に多数の第2の貫通孔5bを設けたことで、不完全なセル1bをより確実に封口できる。
【0048】
(封口装置)
マスク5を用いてハニカム構造体1の封口を実施するのに好適な封口装置について説明する。図5に示す封口装置100は、主として、本体部10、弾性板20、ポンプ50及び保持部80を備える。
【0049】
本体部10は、剛性材料から形成されている。剛性材料としては、ステンレス等の金属や、繊維強化プラスチック等のポリマー材料が挙げられる。本体部10の上面10aには、凹部10dが形成されている。本実施形態では、凹部10dの形状は、図5及び図6に示すように、円柱状とされている。そして、本体部10の上面10aに対して、凹部10dの側面10bが垂直、かつ、底面10cが平行とされている。凹部10dの直径は、たとえば、100〜320mmとすることができる。凹部10dの深さは、たとえば、0.2〜20mmとすることができる。なお、本体部10には、超音波振動器等の加振器140が設けられていることが好ましい。
【0050】
弾性板20は、凹部10dの開口面を覆うように、本体部10の上面10a上に、配置されている。弾性板20は、弾性を有し、容易に変形しうる。弾性板20としては、ゴム板が好ましい。ゴムとしては、天然ゴムや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ふっ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが挙げられる。弾性板20の厚みは特に限定されないが、たとえば、0.3〜3.0mmとすることができる。
【0051】
弾性板20は、リング部材25、及び、ボルト31により本体部10に固定されている。リング部材25は、本体部10の凹部10dに対応する位置に開口25aを有し、これにより環状形状をなしている。そして、リング部材25は、弾性板20における中央部(凹部10dとの対向部)が露出するように弾性板20上に配置されている。これにより、弾性板20の周辺部が、本体部10とリング部材25とにより挟まれている。リング部材25及び弾性板20には貫通孔hがそれぞれ形成され、本体部10には、これら貫通孔hに対応するねじ孔jが形成されており、ボルト31がこれらの貫通孔hを貫通して配置され、ねじ孔jにねじ込まれて固定されることにより、本体部10の上面10aにおける凹部10dのまわりの部分に、弾性板20の周辺部が密着して固定されている。
【0052】
図5及び図6に示すように、リング部材25の開口25aの内径は、本体部10の凹部10dの内径よりも大きくされていることが好ましい。
【0053】
本体部10は、さらに、凹部10dの底面10cに開口する連通路10eを有している。なお、本実施形態では、連通路10eは凹部10dの底面10cに開口しているが、凹部10dの内面に開口していればよく、たとえば、凹部10dの側面10bに開口していてもよい。また、連通路10eの開口の形状や数も特に限定されない。
【0054】
連通路10eには、接続パイプ14を介してポンプ50が接続されている。
【0055】
ポンプ50は、シリンダ51、シリンダ51内に配置されたピストン53、及び、ピストン53に接続されたピストンロッド54を備える。ピストンロッド54には、ピストンロッド54を軸方向に往復移動させるモータ55が接続されている。なお、ピストンロッド54を手動で動かしてもよい。
【0056】
本実施形態では、弾性板20と、ピストン53と、の間には、本体部10、接続パイプ14、及び、シリンダ51により形成される閉鎖空間Vが形成され、閉鎖空間V内には、流体FLが充填されている。流体FLは特に限定されず、空気等の気体でもよいが液体が好ましく、特に、スピンドルオイル等が好ましい。そして、ピストン53を移動させることにより、本体部10の凹部10d内から流体FLを排出することができ、また、凹部10d内に流体FLを供給することができる。
【0057】
本体部10の上には、保持部80が設けられている。保持部80は、ハニカム構造体1を保持する保持具81、及び保持具81が接続された空気圧シリンダ82を有する。
【0058】
保持具81は、ハニカム構造体1を、図5に示すように、一方の端面が弾性板20及び凹部10dと対向するように保持する。
【0059】
空気圧シリンダ82は、上下方向に延びるシリンダ82aと、シリンダ82a内に設けられたピストン82bとを有し、外部からの供給する圧力を調整することによりピストン82bの上下両側での圧力を調節可能となっている。そして、これにより空気圧シリンダ82は、保持具81を、ハニカム構造体1と弾性板20とが近づく方向及びこれらが互いに離れる方向にそれぞれ移動可能である。また、空気圧シリンダ82は、ピストン82bの前後のガスの供給圧力に応じて保持具81を下方に所定の力で押圧することにより、ハニカム構造体1をマスク5に対して密着させることができる。さらに、空気圧シリンダ82は、ピストンの前後の圧力を開放することにより、保持具81が上下方向に自由に移動することを許可することもできる。すなわち、保持部80は、保持具81が保持したハニカム構造体1を上方向に自由に移動可能とする状態と、ハニカム構造体1を本体部10に対して固定する状態とを切替え可能である。
【0060】
(ハニカム構造体の封口方法)
本実施形態に係る封口方法は、マスク5を用いてハニカム構造体1の所定のセルの開口を封止するためのものである。より具体的には、この封口方法は以下の工程を備える:
(a)ハニカム構造体1の一方の端面上に、マスク5の面F2がハニカム構造体1の端面に当接するようにマスク5を配置する工程;及び
(b)ハニカム構造体1の一方の端面における封口すべきセルの開口にマスク5の第1の貫通孔5aを通じて封止材を供給する工程。
【0061】
この封口方法によれば、ハニカム構造体5の端面との位置合わせを容易に行うことができ、従来と比較して所定のセルをより確実に封口できる。
【0062】
ハニカム構造体1は周縁部に図1の(b)に示すように不完全なセル1bが存在する。このため、上記(b)工程において、不完全なセル1bの開口にマスク5の第2の貫通孔5bを通じて封止材を供給する。
【0063】
ハニカムフィルタ構造体を作製するには、ハニカム構造体1の一方の端面についてセルの封口処理を施した後、他方の端面に対しても同様の封口処理を施す。すなわち、上記(b)工程後、
(c)ハニカム構造体1の他方の端面上に、マスク5´の面F2´を配置する工程;及び
(d)ハニカム構造体1の他方の端面における封口すべきセルの開口にマスク5´の第3の貫通孔5a´を通じて封止材を供給する工程;
を順次実施する。
【0064】
なお、図7に示すように、マスク5´は、マスク5の第1及び第2の貫通孔5a,5bにそれぞれ相当する第3及び第4の貫通孔5a´,5b´を有する。貫通孔5a´,5b´はいずれもマスク5´一方の面F1から他方の面F2にかけて貫通している。マスク5´は貫通孔5a´の配置がマスク5の貫通孔5aの配置と正反対の千鳥配置であることの他は、マスク5と同様の構成である(図3,4参照)。ハニカム構造体1の他の端面における不完全なセル1bを封口するには、上記(d)工程において、不完全なセル1bの開口にマスク5´の第4の貫通孔5b´を通じて封止材を供給する。
【0065】
以下、上述の封口装置100及びマスク5を使用してハニカム構造体1を封口する方法について説明する。まず、図5の状態から、予め、空気圧シリンダ82を駆動して、ハニカム構造体1を保持する保持具81上方に引き上げておくと共に、マスク5を弾性板20上から外しておく。次に、ポンプ50のピストン53を下方に引くことにより、本体部10の凹部10dから流体FLを下方に排出させる。これにより、図8の(a)に示すように、弾性板20が変形して凹部10dの側面10b及び底面10cに密着し、これによって、弾性板20の凹部20dが形成する。
【0066】
続いて、図8の(b)に示すように、弾性板20の凹部20d内に封口材130を供給する。必要に応じて、加振器140を駆動することにより、封口材130の表面の平坦化、脱泡を促す。
【0067】
封口材130は、ハニカム構造体1のセル1a,1bの端部を閉鎖できるものであれば特に限定されないが、液状であることが好ましい。たとえば、封口材として、セラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、潤滑剤と、造孔剤と、溶媒とを含むスラリーが例示できる。
【0068】
セラミクス材料としては、上述のハニカム構造体の構成材料や、その原料が挙げられる。セラミクス材料の使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して50〜85重量部とすることができる。
【0069】
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダが挙げられる。バインダの使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して0〜30重量部とすることができる。
【0070】
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸アルミニウムなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤の使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して0.5〜20重量部とすることができる。
【0071】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;及びドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して0〜20重量部とすることができる。
【0072】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;及び水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して10〜40重量部とすることができる。
【0073】
ハニカム構造体1の一方の端面の封口に使用する封口材の量は、たとえば、3〜5000mLとすることができる。
【0074】
続いて、図9の(a)に示すように、本体部10の凹部10dを覆うように弾性板20上にマスク5をセットする。このとき、マスク5は面F2が上向きになるように配置する。次いで、空気圧シリンダ82により保持具81を下方に移動させてハニカム構造体1をマスク5に接触させる。これにより、ハニカム構造体1の一部のセル1aとマスク5の第1の貫通孔5aとを連通させると共に、ハニカム構造体1のすべての不完全なセル1bとマスク5の第2の貫通孔5bとを連通させる。さらに、空気圧シリンダ82により保持具81を下方に押圧し、ハニカム構造体1をマスク5及び本体部10に対して固定する((a)工程)。あるいは、封口材を導入したいセル1aと第1の貫通孔5aの位置が合うように予めハニカム構造体1の端面にマスク5を配置し、これを封口装置100に装着してもよい。
【0075】
次いで、ポンプ50のピストンを上方に移動させることにより、凹部10d内に流体FLを供給し、これによって、図9の(b)に示すように、弾性板20がマスク5に向かって移動する。この工程は、図10の(a)に示すように、弾性板20がマスク5に接触し、弾性板20の変形が解消するまで行なう。
【0076】
これにより、封口材130がマスク5の貫通孔5a,5bを介して、ハニカム構造体1の一部のセル1a及びすべてのセル1b内に供給され、封口部1pが形成する((b)工程)。
【0077】
続いて、空気圧シリンダ82によるハニカム構造体1の下方向への押圧を停止してハニカム構造体1が上方に自由に移動できるようした後、ピストン53をさらに上昇させ弾性板20と本体部10との間にさらに流体FLを供給する。これにより、図10の(b)に示すように、弾性板20は、上方向に凸状に変形し、マスク5及びハニカム構造体1が上方に移動する。このとき、凸状に変形する弾性板20の周辺部はマスク5から離れるので、これにより、マスク5及びハニカム構造体1を、本体部10から容易に引き離すことができる。
【0078】
続いて、ハニカム構造体1を保持具81から外した後、天地をひっくり返したうえで再びハニカム構造体1を保持具81に保持する。次いで、マスク5と第1の貫通孔5aの配置が正反対の千鳥配置とされたマスク5´を用いて、同様の操作を行なう((c)工程及び(d)工程)。これにより、図11の(a)に示すように、残りのセル1a及びすべての不完全なセル1bの他端側が封口材で封口され、封口部1pが形成する。続いて、上述と同様にして弾性板20を上に凸状に変形させることにより、マスク5´及びハニカム構造体1を容易に本体部10及び弾性板20から引き離すことができる。
【0079】
そしてこのようにして、両端に対して封口処理が施されたハニカム構造体1を乾燥、焼成等することにより、ハニカムフィルタ構造体を製造することができる。
【0080】
マスク5及びマスク5´を使用した上記封口方法によれば、多数の完全なセル1aのうち、封口すべきセル1aのみをより確実に封口できると共に、不完全なセル1bの全てをより確実に封口できる。また、図10の(a)及び図11の(a)に示す弾性板20がマスク5に接触して押圧している状態にあっては、図12に示すように、弾性板20が第1の貫通孔5a内に入り込む。このため、封口材のロスを十分に低減することができる。更に、封口装置100によれば、図10の(b)及び図11の(b)に示す通り、弾性板を凸状に変形させることができるので、封口材130を供給した後のハニカム構造体1に接しているマスク5を本体部10や弾性板20から容易に引き離すことができる。したがって、生産効率を高めることができ、封口されたハニカム構造体を低コスト化で製造することができる。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、第1の貫通孔5a及び第2の貫通孔5bを有するマスク5を例示したが、ハニカム構造体に不完全なセル1bがない場合やマスクを用いてセル1bを封口する必要がない場合などにあっては、第1の貫通孔5aを有するが、第2の貫通孔5bを有しないマスクを使用してもよい。
【0082】
ハニカム構造体1の形状や構造も上述に限定されない。たとえば、ハニカム構造体1の外形形状も円柱でなくてもよく、たとえば、四角柱等の角柱や楕円柱でもよい。また、セルの開口面積が0.6〜7.0mm2程度(より好ましくは0.8〜6.0mm2程度)であれば、セルの断面形状は正方形に限られず、たとえば、略三角形、略四角形、略六角形、略八角形、略円形又はこれらの組み合わせであってもよい。更に、セルの配置もセル1a正方形配置でなくてもよく、たとえば、三角配置、六角配置等でも構わない。
【符号の説明】
【0083】
1…ハニカム構造体、1a…完全なセル、1b…不完全なセル、5,5´…マスク、5a…第1の貫通孔、5b…第2の貫通孔、5a´…第3の貫通孔、5b´…第4の貫通孔、6a…テーパ部、6c…段差部、F1…マスクの面(一方面)、F2…マスクの面(他方面)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の封口に使用されるマスク及びこれを用いたハニカム構造体の封口方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハニカムフィルタ構造体が、DPF(Diesel particulate filter)用等として広く知られている。このハニカムフィルタ構造体は、多数の貫通孔からなるセル構造の一部のセルの一端側を封口材で封じると共に、残りのセルの他端側を封口材で封じた構造を有する。
【0003】
ハニカム構造体の多数のセルのうち、所定のセルを封口するのにマスクが使用される。このような用途のマスクとして2つのタイプがある。一方は封口すべきセルに対応する箇所に予め貫通孔が設けられているタイプである。他方は貫通孔が予め設けられていないタイプであり、ハニカム構造体の端面に貼り付けた後に封口すべきセルに対応する箇所にレーザー等で貫通孔を設けるものである。下記特許文献1,2には、マスクを用いてハニカム構造体を封口する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−290766号公報
【特許文献2】特開2008−132749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、予め貫通孔が設けられているタイプのマスクは、ハニカム構造体との位置合わせが必要である。特に、ハニカム構造体がDPFのように、乾燥工程や焼成工程を経て製造される焼結体又は焼成前のグリーン成形体の場合、製造プロセスにおけるハニカム構造体の収縮や変形により、マスクの貫通孔と封口すべきセルとの位置合わせがより一層困難になる。DPFは、狭いセルピッチ(たとえば1.1〜2.8mm程度)を有するものもあり、ハニカム構造体の端面の一部についてはマスクの貫通孔を適切に配置できても、他の部分ではずれが生じる場合もある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ハニカム構造体の端面との位置合わせを容易に行うことができ、所定のセルを確実に封口するのに有用なマスク及びこれを用いた封口方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマスクは、ハニカム構造体のセルの封口に使用されるものであり、マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の第1の貫通孔を有し、他方面における第1の貫通孔の開口面積が一方面における第1の貫通孔の開口面積よりも小さい。
【0008】
本発明のマスクは、ハニカム構造体の端面に対してマスクの他方面(開口面積が小さい方の面)を当接させた状態で使用される。上記マスクによれば、他方面における第1の貫通孔の開口面積を小さくしたことで、第1の貫通孔の位置とセルの開口の位置が多少ずれても第1の貫通孔を通じて封口材を所定のセル内に供給できる。また、上記マスクは、第1の貫通孔の全体の開口面積が大きいマスクと比較し、十分な剛性を確保しやすいという利点もある。
【0009】
本発明において、第1の貫通孔は、一方面から他方面に向けて開口面積が連続的に縮小するテーパ部を有するものであってもよく、あるいは、一方面から他方面に向けて開口面積が不連続的に縮小する段差部を有するものであってもよい。
【0010】
第1の貫通孔は、他方面における開口面積が0.03mm2以上であり且つ当該第1の貫通孔によって封口すべきハニカム構造体のセルの開口面積の90%未満であることが好ましい。第1の貫通孔の開口面積を、封口すべきセルの開口面積の90%未満とすることで、第1の貫通孔の位置とセルの開口の位置が多少ずれても第1の貫通孔を通じて封口材を所定のセル内により確実に供給できる。第1の貫通孔の開口面積を0.03mm2以上とすることにより、封口材が第1の貫通孔を通過しやすく、所定量の封口材をセル内に供給しやすい。
【0011】
本発明に係るマスクは、使用時においてハニカム構造体の端面と当接する領域のうち、ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、マスクの厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通孔を更に有してもよい。この場合、第2の貫通孔は、ハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ第1の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満であることが好ましい。
【0012】
ハニカム構造体の周縁部は、ハニカム構造体の側面をなす最外層の存在により、セルの形状が他の部分と異なる場合がある。たとえば、最外層の形状が円筒状であり、その内部に断面形状が正方形のセルが設けられたハニカム構造体の場合、断面形状が正方形の完全なセルと、周縁部の不完全なセルとが存在する。
【0013】
上記のような不完全なセル及び必要であればこれに隣接するセルを完全に封口するのに第2の貫通孔が有用である。すなわち、第2の貫通孔の開口面積を第1の貫通孔によって封口すべきセル(完全なセル)の開口面積の60%未満と制限する一方、第2の貫通孔の配置をハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔にしてその数を十分に多くすることで、第2の貫通孔を通じて封口材を封口すべきセル内に適切に供給できる。また、第2の貫通孔の開口面積を0.03mm2以上としたことにより、封口材が第2の貫通孔を通過しやすく、所定量の封口材をセル内に供給しやすい。
【0014】
本発明は上記マスクを用いてハニカム構造体の所定のセルの開口を封じる方法を提供する。すなわち、本発明はハニカム構造体のセルの封口方法であって、
(a)ハニカム構造体の一方の端面上にマスクを配置する工程と、
(b)ハニカム構造体の一方の端面における封口すべきセルの開口にマスクが有する第1の貫通孔を通じて封止材を供給する工程と、
を備え、上記マスクは一方面から他方面にかけて貫通する複数の第1の貫通孔を有し、他方面における第1の貫通孔の開口面積が一方面における第1の貫通孔の開口面積よりも小さく、上記(a)工程において当該マスクの他方面がハニカム構造体の端面に当接するように当該マスクを配置する封口方法を提供する。
【0015】
上記封口方法によれば、ハニカム構造体の端面との位置合わせを容易に行うことができ、従来と比較して所定のセルをより確実に封口できる。
【0016】
ハニカム構造体の周縁部に不完全なセルが存在する場合、上記封口方法は、以下のような構成とすることができる。すなわち、上記マスクはハニカム構造体の一方の端面と当接する領域のうち、ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通孔を更に有し、第2の貫通孔はハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ第1の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満のものとすることができる。そして、上記(b)工程において、ハニカム構造体の端面周縁部における封口すべきセルの開口に当該マスクの第2の貫通孔を通じて封止材を供給する。
【0017】
上記封口方法は、ハニカム構造体の一方の端面を封口処理する工程の後、他方の端面についても封口処理する工程を更に備えてもよい。ハニカム構造体の両方の端面を封口処理した後、必要に応じて乾燥や焼成等の工程を経ることで、ハニカムフィルタ構造体を得ることができる。すなわち、上記封口方法は、
(c)ハニカム構造体の他方の端面上に他のマスクを配置する工程と、
(d)ハニカム構造体の他方の端面における封口すべきセルの開口に上記他のマスクが有する第3の貫通孔を通じて封止材を供給する工程とを更に備えてもよい。この場合、上記他のマスクは、一方面から他方面にかけて貫通する複数の第3の貫通孔を有し、他方面における第3の貫通孔の開口面積が一方面における第3の貫通孔の開口面積よりも小さく、上記(a)工程において当該マスクの他方面がハニカム構造体の端面に当接するように当該マスクを配置する。
【0018】
ハニカム構造体の周縁部に不完全なセルが存在し、他方の端面においても不完全なセルを封口する場合、上記封口方法は、以下のような構成とすることができる。すなわち、上記他のマスクは、ハニカム構造体の他方の端面と当接する領域のうち、ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第4の貫通孔を更に有し、第4の貫通孔はハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ第3の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満であり、上記(d)工程において、ハニカム構造体の端面周縁部における封口すべきセルの開口に当該マスクの第4の貫通孔を通じて封止材を供給する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ハニカム構造体の端面との位置合わせを容易に行うことができ、従来と比較して所定のセルをより確実に封口できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1の(a)は、ハニカム構造体の一例を示す斜視図、図1の(b)は、図1の(a)の部分拡大図である。
【図2】図2の(a)は、本発明に係るマスクの一実施形態を示す斜視図、図2の(b)は、図2の(a)の部分拡大図である。
【図3】図3は、図2の(b)のIII−III線における部分断面図である。
【図4】図4の(a)及び(b)は、本発明に係るマスクが有する第1の貫通孔の他の態様をそれぞれ示す部分断面図である。
【図5】図5は、封口装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】図6は、図5の封口装置のVI−VI矢視図である。
【図7】図7の(a)は、本発明に係るマスクの他の実施形態を示す斜視図、図7の(b)は、図7の(a)の部分拡大図である。
【図8】図8の(a)は、図6の封口装置の動作を説明する部分端面図であり、図8の(b)は、図8の(a)に続く部分断面図である。
【図9】図9の(a)は、図8の(b)に続く部分断面図であり、図9の(b)は、図9の(a)に続く部分断面図である。
【図10】図10の(a)は、図9の(b)に続く部分断面図であり、図10の(b)は、図10の(a)に続く部分断面図である。
【図11】図11の(a)は、図10の(b)に続く部分断面図であり、図11の(b)は、図11の(a)に続く部分断面図である。
【図12】図12は、本発明に係るマスクの第1の貫通孔に弾性板が入り込んでいる状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本発明に係るマスクの説明に先立ち、ハニカム構造体について説明する。
【0022】
(ハニカム構造体)
図1の(a)に示すように、ハニカム構造体1は、多数のセル1aが略平行に配置された円柱体である。セル1aはハニカム構造体1の一方の端面から他方の端面にかけて貫通している。セル1aの断面形状は、図1の(b)に示すように正方形である。これらの複数のセル1aは、ハニカム構造体1において、端面から見て、正方形配置、すなわち、セル1aの中心軸が、正方形の頂点にそれぞれ位置するように配置されている。セル1aの断面の正方形のサイズは、たとえば、一辺0.8〜2.5mmとすることができ、その開口面積は0.6〜7.0mm2程度(より好ましくは0.8〜6.0mm2程度)とすることができる。ハニカム構造体1のセルピッチは、1.1〜2.8mmとすることができる。なお、セルピッチとは、隣接する2つのセルの中心間の距離を意味し、ハニカム構造体1にあっては図1の(b)に示す長さLである。
【0023】
ハニカム構造体1は、側面をなす最外層1cの形状が円筒状であり、上述の通り、その内部に断面形状が正方形のセル1a(以下、「完全なセル1a」又は単に「セル1a」という。)を有する。これに加え、ハニカム構造体1は、その周縁部に断面形状が正方形でないセル1b(以下、「不完全なセル1b」又は単に「セル1b」という。)を有する。図1の(b)に示す通り、不完全なセル1bの形状は一定ではなく、場所によって異なっている。
【0024】
ハニカム構造体1のセル1a,1bを構成する貫通孔が延びる方向の長さは特に限定されないが、たとえば、40〜350mmとすることができる。また、ハニカム構造体1の外径も特に限定されないが、たとえば、100〜320mmとすることできる。
【0025】
ハニカム構造体1の材料は特に限定されないが、高温耐性の観点から、セラミクス材料が好ましい。セラミクス材料としては、たとえば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。このような、ハニカム構造体1は通常多孔質である。
【0026】
また、ハニカム構造体1は、後で焼成することにより上述のようなセラミクス材料となるグリーン成形体(未焼成成形体)であってもよい。グリーン成形体は、セラミクス原料である無機化合物源粉末、及び、メチルセルロース等の有機バインダ、及び、必要に応じて添加される添加剤を含む。
【0027】
たとえば、チタン酸アルミニウムのグリーン成形体の場合、無機化合物源粉末は、αアルミナ粉等のアルミニウム源粉末、及び、アナターゼ型やルチル型のチタニア粉末等のチタニウム源粉末を含み、必要に応じて、さらに、マグネシア粉末やマグネシアスピネル粉末等のマグネシウム源粉末及び/又は、酸化ケイ素粉末やガラスフリット等のケイ素源粉末を含むことができる。
【0028】
有機バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩が挙げられる。
【0029】
添加物としては、たとえば、造孔剤、潤滑剤、可塑剤、分散剤及び溶媒が挙げられる。
【0030】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;及びドライアイス等などが挙げられる。
【0031】
潤滑剤及び可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(POAAE)などが挙げられる。
【0032】
分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0033】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;及び水などを用いることができる。
【0034】
(ハニカム構造体封口用マスク)
図2に示すマスク5は、図1に示すハニカム構造体1の所定のセルを封口するのに使用されるものである。マスク5は、円形の板状部材であり、厚さ方向に貫通する第1の貫通孔5a及び第2の貫通孔5bを有する。なお、マスク5の材料は特に限定されず、たとえば、金属や樹脂が挙げられる。また、マスク5の貫通孔5aの位置決めを容易にすべく、マスク5には、オリエンテーションフラット5cが形成され、これに対応して図5に示す封口装置100のリング部材25にもオリエンテーションフラット5cに対応する突起25bを設けてもよい(図6参照)。また、マスク5の外径は、封口装置100の本体部10の凹部10dの内径よりも大きくされていることが好ましい。
【0035】
第1の貫通孔5aはハニカム構造体1の完全なセル1aに封止材を供給するためのものである。第1の貫通孔5aは、マスク5の使用時においてハニカム構造体1の端面の中央部(周縁部以外の領域)と当接する部分に設けられている。
【0036】
第1の貫通孔5aの断面形状は、図2の(b)に示すように、ハニカム構造体1のセル1aに対応する正方形である。これらの第1の貫通孔5aは、千鳥配置されており、各第1の貫通孔5aは、図1の(b)の正方配置された複数のセル1aのうち、互いに上下左右に隣接しない関係にある複数のセル1aのみに対向して配置される。なお、第1の貫通孔5aの形状は、正方形に限定されるものではないが、ペースト状の封口材の充填性の観点から、セル1aの開口よりもひと回り小さく、その形状と相似形であることが好ましい。
【0037】
第1の貫通孔5aは、図3に示すようにテーパ状になっており、開口面積がマスク5の厚さ方向の位置によって異なっている。すなわち、マスク5の一方の面F1から他方の面F2に向けて開口面積が連続的に縮小している。なお、マスク5は、ハニカム構造体1の端面に対してマスク5の面F2を当接させた状態で使用される。
【0038】
第1の貫通孔5aは、面F2における開口面積が面F1における開口面積よりも小さいものである限り、図3に示すテーパ状に限定されるものではない。たとえば、図4の(a)に示すように、第1の貫通孔5aは、面F1から面F2に向けて開口面積が連続的に縮小するテーパ部6aと、テーパ部6aの面F2側に位置し開口面積が一定の部分6bとによって構成されてもよい。また、図4の(b)に示すように、第1の貫通孔5aは、面F1から面F2に向けて開口面積が不連続的に縮小する段差部6cを有するものであってもよい。
【0039】
第1の貫通孔5aにおけるテーパの角度(図3及び図4の(a)における角度α)は、マスク5の剛性及び封口材のロスの低減等の観点から、10〜70°であることが好ましく、30〜60°であることがより好ましい。
【0040】
第1の貫通孔5aは、面F2における開口面積が0.03mm2以上であり且つ第1の貫通孔5aによって封口すべきセル1aの開口面積の90%未満であることが好ましい。第1の貫通孔5aの面F2における開口面積が0.03mm2未満であると、封口材が第1の貫通孔5aを通過しにくくなり、所定量の封口材をセル1a内に供給しにくくなる。第1の貫通孔5aの上記開口面積は、0.05mm2以上であることがより好ましく、0.07mm2以上であることが更に好ましく、0.2mm2以上であってもよい。
【0041】
他方、第1の貫通孔5aの面F2における開口面積がセル1aの開口面積の90%以上であると、第1の貫通孔5aの位置とセル1aの開口の位置が少しずれただけで、封口すべきでない近傍のセル1aに封口材を供給するおそれがある。第1の貫通孔5aの上記開口面積は、セル1aの開口面積の80%未満であることが好ましく、60%未満であることがより好ましい。
【0042】
第2の貫通孔5bはハニカム構造体1の不完全なセル1bに封止材を供給するためのものである。第2の貫通孔5bは、マスク5の使用時においてハニカム構造体1の端面周縁部と当接する部分に、ハニカム構造体1のセルピッチ(図1の長さL)よりも狭い間隔で設けられていることが好ましい。第2の貫通孔5bの間隔は、全てのセル1bを確実に封口する観点から、L/10〜3L/4であることが好ましく、L/5〜L/2であることがより好ましい。
【0043】
第2の貫通孔5bの形状は、不完全なセル1bの形状に関わらず、限られた領域に多数の貫通孔を設けることができる形状であればよく、第2の貫通孔5bの形状はたとえば円形もしくは矩形であってもよいが、好ましくは円形である。図2の(a)に示すように、マスク5には多数の第2の貫通孔5bからなる環状の帯が形成されている。
【0044】
第2の貫通孔5bは、面F2における開口面積が0.03mm2以上であり且つ第1の貫通孔5aによって封口すべきセル1aの開口面積の60%未満であることが好ましい。第2の貫通孔5bの面F2における開口面積が0.03mm2未満であると、封口材が第2の貫通孔5bを通過しにくくなり、所定量の封口材をセル1b内に供給しにくくなる。第2の貫通孔5bの上記開口面積は、0.04mm2以上であることがより好ましく、0.05mm2以上であることが更に好ましく、0.2mm2以上であってもよい。
【0045】
他方、第2の貫通孔5bの面F2における開口面積が完全なセル1aの開口面積の60%以上であると、マスク5の剛性が不十分となりやすく、またマスク5のわずかなズレで封口すべきでない近傍のセル1aに封口材を供給するおそれ、あるいは、図1の(b)に示す最外層1cの外側に封口材が漏れ出しやすくなるおそれがある。第2の貫通孔5bの上記開口面積は、完全なセル1aの開口面積の50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0046】
第2の貫通孔5bの開口面積は、マスク5の厚さ方向の全範囲にわたって一定であってもよいし、図3,4に示す第1の貫通孔5aと同様、マスク5の厚さ方向の位置によって異なっていてもよい。
【0047】
マスク5によれば、ハニカム構造体1の端面に当接する面F2における第1の貫通孔5aの開口面積を小さくしたことで、第1の貫通孔5aの位置とセル1aの開口の位置が多少ずれても第1の貫通孔5aを通じて封口材を所定のセル1a内に供給できる。また、マスク5は、第1の貫通孔5aの全体の開口面積を大きくした場合と比較し、十分な剛性を確保しやすいという利点もある。更に、マスク5に多数の第2の貫通孔5bを設けたことで、不完全なセル1bをより確実に封口できる。
【0048】
(封口装置)
マスク5を用いてハニカム構造体1の封口を実施するのに好適な封口装置について説明する。図5に示す封口装置100は、主として、本体部10、弾性板20、ポンプ50及び保持部80を備える。
【0049】
本体部10は、剛性材料から形成されている。剛性材料としては、ステンレス等の金属や、繊維強化プラスチック等のポリマー材料が挙げられる。本体部10の上面10aには、凹部10dが形成されている。本実施形態では、凹部10dの形状は、図5及び図6に示すように、円柱状とされている。そして、本体部10の上面10aに対して、凹部10dの側面10bが垂直、かつ、底面10cが平行とされている。凹部10dの直径は、たとえば、100〜320mmとすることができる。凹部10dの深さは、たとえば、0.2〜20mmとすることができる。なお、本体部10には、超音波振動器等の加振器140が設けられていることが好ましい。
【0050】
弾性板20は、凹部10dの開口面を覆うように、本体部10の上面10a上に、配置されている。弾性板20は、弾性を有し、容易に変形しうる。弾性板20としては、ゴム板が好ましい。ゴムとしては、天然ゴムや、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ふっ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが挙げられる。弾性板20の厚みは特に限定されないが、たとえば、0.3〜3.0mmとすることができる。
【0051】
弾性板20は、リング部材25、及び、ボルト31により本体部10に固定されている。リング部材25は、本体部10の凹部10dに対応する位置に開口25aを有し、これにより環状形状をなしている。そして、リング部材25は、弾性板20における中央部(凹部10dとの対向部)が露出するように弾性板20上に配置されている。これにより、弾性板20の周辺部が、本体部10とリング部材25とにより挟まれている。リング部材25及び弾性板20には貫通孔hがそれぞれ形成され、本体部10には、これら貫通孔hに対応するねじ孔jが形成されており、ボルト31がこれらの貫通孔hを貫通して配置され、ねじ孔jにねじ込まれて固定されることにより、本体部10の上面10aにおける凹部10dのまわりの部分に、弾性板20の周辺部が密着して固定されている。
【0052】
図5及び図6に示すように、リング部材25の開口25aの内径は、本体部10の凹部10dの内径よりも大きくされていることが好ましい。
【0053】
本体部10は、さらに、凹部10dの底面10cに開口する連通路10eを有している。なお、本実施形態では、連通路10eは凹部10dの底面10cに開口しているが、凹部10dの内面に開口していればよく、たとえば、凹部10dの側面10bに開口していてもよい。また、連通路10eの開口の形状や数も特に限定されない。
【0054】
連通路10eには、接続パイプ14を介してポンプ50が接続されている。
【0055】
ポンプ50は、シリンダ51、シリンダ51内に配置されたピストン53、及び、ピストン53に接続されたピストンロッド54を備える。ピストンロッド54には、ピストンロッド54を軸方向に往復移動させるモータ55が接続されている。なお、ピストンロッド54を手動で動かしてもよい。
【0056】
本実施形態では、弾性板20と、ピストン53と、の間には、本体部10、接続パイプ14、及び、シリンダ51により形成される閉鎖空間Vが形成され、閉鎖空間V内には、流体FLが充填されている。流体FLは特に限定されず、空気等の気体でもよいが液体が好ましく、特に、スピンドルオイル等が好ましい。そして、ピストン53を移動させることにより、本体部10の凹部10d内から流体FLを排出することができ、また、凹部10d内に流体FLを供給することができる。
【0057】
本体部10の上には、保持部80が設けられている。保持部80は、ハニカム構造体1を保持する保持具81、及び保持具81が接続された空気圧シリンダ82を有する。
【0058】
保持具81は、ハニカム構造体1を、図5に示すように、一方の端面が弾性板20及び凹部10dと対向するように保持する。
【0059】
空気圧シリンダ82は、上下方向に延びるシリンダ82aと、シリンダ82a内に設けられたピストン82bとを有し、外部からの供給する圧力を調整することによりピストン82bの上下両側での圧力を調節可能となっている。そして、これにより空気圧シリンダ82は、保持具81を、ハニカム構造体1と弾性板20とが近づく方向及びこれらが互いに離れる方向にそれぞれ移動可能である。また、空気圧シリンダ82は、ピストン82bの前後のガスの供給圧力に応じて保持具81を下方に所定の力で押圧することにより、ハニカム構造体1をマスク5に対して密着させることができる。さらに、空気圧シリンダ82は、ピストンの前後の圧力を開放することにより、保持具81が上下方向に自由に移動することを許可することもできる。すなわち、保持部80は、保持具81が保持したハニカム構造体1を上方向に自由に移動可能とする状態と、ハニカム構造体1を本体部10に対して固定する状態とを切替え可能である。
【0060】
(ハニカム構造体の封口方法)
本実施形態に係る封口方法は、マスク5を用いてハニカム構造体1の所定のセルの開口を封止するためのものである。より具体的には、この封口方法は以下の工程を備える:
(a)ハニカム構造体1の一方の端面上に、マスク5の面F2がハニカム構造体1の端面に当接するようにマスク5を配置する工程;及び
(b)ハニカム構造体1の一方の端面における封口すべきセルの開口にマスク5の第1の貫通孔5aを通じて封止材を供給する工程。
【0061】
この封口方法によれば、ハニカム構造体5の端面との位置合わせを容易に行うことができ、従来と比較して所定のセルをより確実に封口できる。
【0062】
ハニカム構造体1は周縁部に図1の(b)に示すように不完全なセル1bが存在する。このため、上記(b)工程において、不完全なセル1bの開口にマスク5の第2の貫通孔5bを通じて封止材を供給する。
【0063】
ハニカムフィルタ構造体を作製するには、ハニカム構造体1の一方の端面についてセルの封口処理を施した後、他方の端面に対しても同様の封口処理を施す。すなわち、上記(b)工程後、
(c)ハニカム構造体1の他方の端面上に、マスク5´の面F2´を配置する工程;及び
(d)ハニカム構造体1の他方の端面における封口すべきセルの開口にマスク5´の第3の貫通孔5a´を通じて封止材を供給する工程;
を順次実施する。
【0064】
なお、図7に示すように、マスク5´は、マスク5の第1及び第2の貫通孔5a,5bにそれぞれ相当する第3及び第4の貫通孔5a´,5b´を有する。貫通孔5a´,5b´はいずれもマスク5´一方の面F1から他方の面F2にかけて貫通している。マスク5´は貫通孔5a´の配置がマスク5の貫通孔5aの配置と正反対の千鳥配置であることの他は、マスク5と同様の構成である(図3,4参照)。ハニカム構造体1の他の端面における不完全なセル1bを封口するには、上記(d)工程において、不完全なセル1bの開口にマスク5´の第4の貫通孔5b´を通じて封止材を供給する。
【0065】
以下、上述の封口装置100及びマスク5を使用してハニカム構造体1を封口する方法について説明する。まず、図5の状態から、予め、空気圧シリンダ82を駆動して、ハニカム構造体1を保持する保持具81上方に引き上げておくと共に、マスク5を弾性板20上から外しておく。次に、ポンプ50のピストン53を下方に引くことにより、本体部10の凹部10dから流体FLを下方に排出させる。これにより、図8の(a)に示すように、弾性板20が変形して凹部10dの側面10b及び底面10cに密着し、これによって、弾性板20の凹部20dが形成する。
【0066】
続いて、図8の(b)に示すように、弾性板20の凹部20d内に封口材130を供給する。必要に応じて、加振器140を駆動することにより、封口材130の表面の平坦化、脱泡を促す。
【0067】
封口材130は、ハニカム構造体1のセル1a,1bの端部を閉鎖できるものであれば特に限定されないが、液状であることが好ましい。たとえば、封口材として、セラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、潤滑剤と、造孔剤と、溶媒とを含むスラリーが例示できる。
【0068】
セラミクス材料としては、上述のハニカム構造体の構成材料や、その原料が挙げられる。セラミクス材料の使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して50〜85重量部とすることができる。
【0069】
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダが挙げられる。バインダの使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して0〜30重量部とすることができる。
【0070】
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸アルミニウムなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤の使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して0.5〜20重量部とすることができる。
【0071】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;及びドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して0〜20重量部とすることができる。
【0072】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;及び水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、たとえば、スラリー100重量部に対して10〜40重量部とすることができる。
【0073】
ハニカム構造体1の一方の端面の封口に使用する封口材の量は、たとえば、3〜5000mLとすることができる。
【0074】
続いて、図9の(a)に示すように、本体部10の凹部10dを覆うように弾性板20上にマスク5をセットする。このとき、マスク5は面F2が上向きになるように配置する。次いで、空気圧シリンダ82により保持具81を下方に移動させてハニカム構造体1をマスク5に接触させる。これにより、ハニカム構造体1の一部のセル1aとマスク5の第1の貫通孔5aとを連通させると共に、ハニカム構造体1のすべての不完全なセル1bとマスク5の第2の貫通孔5bとを連通させる。さらに、空気圧シリンダ82により保持具81を下方に押圧し、ハニカム構造体1をマスク5及び本体部10に対して固定する((a)工程)。あるいは、封口材を導入したいセル1aと第1の貫通孔5aの位置が合うように予めハニカム構造体1の端面にマスク5を配置し、これを封口装置100に装着してもよい。
【0075】
次いで、ポンプ50のピストンを上方に移動させることにより、凹部10d内に流体FLを供給し、これによって、図9の(b)に示すように、弾性板20がマスク5に向かって移動する。この工程は、図10の(a)に示すように、弾性板20がマスク5に接触し、弾性板20の変形が解消するまで行なう。
【0076】
これにより、封口材130がマスク5の貫通孔5a,5bを介して、ハニカム構造体1の一部のセル1a及びすべてのセル1b内に供給され、封口部1pが形成する((b)工程)。
【0077】
続いて、空気圧シリンダ82によるハニカム構造体1の下方向への押圧を停止してハニカム構造体1が上方に自由に移動できるようした後、ピストン53をさらに上昇させ弾性板20と本体部10との間にさらに流体FLを供給する。これにより、図10の(b)に示すように、弾性板20は、上方向に凸状に変形し、マスク5及びハニカム構造体1が上方に移動する。このとき、凸状に変形する弾性板20の周辺部はマスク5から離れるので、これにより、マスク5及びハニカム構造体1を、本体部10から容易に引き離すことができる。
【0078】
続いて、ハニカム構造体1を保持具81から外した後、天地をひっくり返したうえで再びハニカム構造体1を保持具81に保持する。次いで、マスク5と第1の貫通孔5aの配置が正反対の千鳥配置とされたマスク5´を用いて、同様の操作を行なう((c)工程及び(d)工程)。これにより、図11の(a)に示すように、残りのセル1a及びすべての不完全なセル1bの他端側が封口材で封口され、封口部1pが形成する。続いて、上述と同様にして弾性板20を上に凸状に変形させることにより、マスク5´及びハニカム構造体1を容易に本体部10及び弾性板20から引き離すことができる。
【0079】
そしてこのようにして、両端に対して封口処理が施されたハニカム構造体1を乾燥、焼成等することにより、ハニカムフィルタ構造体を製造することができる。
【0080】
マスク5及びマスク5´を使用した上記封口方法によれば、多数の完全なセル1aのうち、封口すべきセル1aのみをより確実に封口できると共に、不完全なセル1bの全てをより確実に封口できる。また、図10の(a)及び図11の(a)に示す弾性板20がマスク5に接触して押圧している状態にあっては、図12に示すように、弾性板20が第1の貫通孔5a内に入り込む。このため、封口材のロスを十分に低減することができる。更に、封口装置100によれば、図10の(b)及び図11の(b)に示す通り、弾性板を凸状に変形させることができるので、封口材130を供給した後のハニカム構造体1に接しているマスク5を本体部10や弾性板20から容易に引き離すことができる。したがって、生産効率を高めることができ、封口されたハニカム構造体を低コスト化で製造することができる。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、第1の貫通孔5a及び第2の貫通孔5bを有するマスク5を例示したが、ハニカム構造体に不完全なセル1bがない場合やマスクを用いてセル1bを封口する必要がない場合などにあっては、第1の貫通孔5aを有するが、第2の貫通孔5bを有しないマスクを使用してもよい。
【0082】
ハニカム構造体1の形状や構造も上述に限定されない。たとえば、ハニカム構造体1の外形形状も円柱でなくてもよく、たとえば、四角柱等の角柱や楕円柱でもよい。また、セルの開口面積が0.6〜7.0mm2程度(より好ましくは0.8〜6.0mm2程度)であれば、セルの断面形状は正方形に限られず、たとえば、略三角形、略四角形、略六角形、略八角形、略円形又はこれらの組み合わせであってもよい。更に、セルの配置もセル1a正方形配置でなくてもよく、たとえば、三角配置、六角配置等でも構わない。
【符号の説明】
【0083】
1…ハニカム構造体、1a…完全なセル、1b…不完全なセル、5,5´…マスク、5a…第1の貫通孔、5b…第2の貫通孔、5a´…第3の貫通孔、5b´…第4の貫通孔、6a…テーパ部、6c…段差部、F1…マスクの面(一方面)、F2…マスクの面(他方面)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム構造体のセルの封口に使用されるマスクであって、
当該マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の第1の貫通孔を有し、前記他方面における前記第1の貫通孔の開口面積が前記一方面における前記第1の貫通孔の開口面積よりも小さいマスク。
【請求項2】
前記第1の貫通孔は、前記一方面から前記他方面に向けて開口面積が連続的に縮小するテーパ部を有する、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記第1の貫通孔は、前記一方面から前記他方面に向けて開口面積が不連続的に縮小する段差部を有する、請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記第1の貫通孔は、前記他方面における開口面積が0.03mm2以上であり且つ当該第1の貫通孔によって封口すべき前記ハニカム構造体のセルの開口面積の90%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記第1の貫通孔は、前記他方面における開口面積が0.2mm2以上である、請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
使用時において前記ハニカム構造体の端面と当接する領域のうち、前記ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通孔を更に有し、
前記第2の貫通孔は、前記ハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、前記他方面における開口面積が0.03mm2以上であり且つ前記第1の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記第2の貫通孔は、前記他方面における開口面積が0.2mm2以上である、請求項6に記載のマスク。
【請求項8】
ハニカム構造体のセルの封口方法であって、
(a)前記ハニカム構造体の一方の端面上にマスクを配置する工程と、
(b)前記ハニカム構造体の前記一方の端面における封口すべきセルの開口に前記マスクが有する第1の貫通孔を通じて封止材を供給する工程と、
を備え、
前記マスクは、当該マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の前記第1の貫通孔を有し、前記他方面における前記第1の貫通孔の開口面積が前記一方面における前記第1の貫通孔の開口面積よりも小さく、
(a)工程において当該マスクの前記他方面がハニカム構造体の端面に当接するように当該マスクを配置する封口方法。
【請求項9】
前記マスクは、前記ハニカム構造体の前記一方の端面と当接する領域のうち、前記ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通孔を更に有し、
前記第2の貫通孔は、前記ハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ前記第1の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満であり、
(b)工程において、前記ハニカム構造体の端面周縁部における封口すべきセルの開口に当該マスクの前記第2の貫通孔を通じて封止材を供給する、請求項8に記載の封口方法。
【請求項10】
(c)前記ハニカム構造体の他方の端面上に他のマスクを配置する工程と、
(d)前記ハニカム構造体の前記他方の端面における封口すべきセルの開口に前記他のマスクが有する第3の貫通孔を通じて封止材を供給する工程と、
を更に備え、
前記他のマスクは、当該マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の前記第3の貫通孔を有し、前記他方面における前記第3の貫通孔の開口面積が前記一方面における前記第3の貫通孔の開口面積よりも小さく、
(a)工程において当該マスクの前記他方面が前記ハニカム構造体の端面に当接するように当該マスクを配置する、請求項9に記載の封口方法。
【請求項11】
前記他のマスクは、前記ハニカム構造体の前記他方の端面と当接する領域のうち、前記ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第4の貫通孔を更に有し、
前記第4の貫通孔は、前記ハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ前記第3の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満であり、
(d)工程において、前記ハニカム構造体の端面周縁部における封口すべきセルの開口に当該マスクの前記第4の貫通孔を通じて封止材を供給する、請求項10に記載の封口方法。
【請求項1】
ハニカム構造体のセルの封口に使用されるマスクであって、
当該マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の第1の貫通孔を有し、前記他方面における前記第1の貫通孔の開口面積が前記一方面における前記第1の貫通孔の開口面積よりも小さいマスク。
【請求項2】
前記第1の貫通孔は、前記一方面から前記他方面に向けて開口面積が連続的に縮小するテーパ部を有する、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記第1の貫通孔は、前記一方面から前記他方面に向けて開口面積が不連続的に縮小する段差部を有する、請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記第1の貫通孔は、前記他方面における開口面積が0.03mm2以上であり且つ当該第1の貫通孔によって封口すべき前記ハニカム構造体のセルの開口面積の90%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記第1の貫通孔は、前記他方面における開口面積が0.2mm2以上である、請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
使用時において前記ハニカム構造体の端面と当接する領域のうち、前記ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通孔を更に有し、
前記第2の貫通孔は、前記ハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、前記他方面における開口面積が0.03mm2以上であり且つ前記第1の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記第2の貫通孔は、前記他方面における開口面積が0.2mm2以上である、請求項6に記載のマスク。
【請求項8】
ハニカム構造体のセルの封口方法であって、
(a)前記ハニカム構造体の一方の端面上にマスクを配置する工程と、
(b)前記ハニカム構造体の前記一方の端面における封口すべきセルの開口に前記マスクが有する第1の貫通孔を通じて封止材を供給する工程と、
を備え、
前記マスクは、当該マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の前記第1の貫通孔を有し、前記他方面における前記第1の貫通孔の開口面積が前記一方面における前記第1の貫通孔の開口面積よりも小さく、
(a)工程において当該マスクの前記他方面がハニカム構造体の端面に当接するように当該マスクを配置する封口方法。
【請求項9】
前記マスクは、前記ハニカム構造体の前記一方の端面と当接する領域のうち、前記ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通孔を更に有し、
前記第2の貫通孔は、前記ハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ前記第1の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満であり、
(b)工程において、前記ハニカム構造体の端面周縁部における封口すべきセルの開口に当該マスクの前記第2の貫通孔を通じて封止材を供給する、請求項8に記載の封口方法。
【請求項10】
(c)前記ハニカム構造体の他方の端面上に他のマスクを配置する工程と、
(d)前記ハニカム構造体の前記他方の端面における封口すべきセルの開口に前記他のマスクが有する第3の貫通孔を通じて封止材を供給する工程と、
を更に備え、
前記他のマスクは、当該マスクの一方面から他方面にかけて貫通する複数の前記第3の貫通孔を有し、前記他方面における前記第3の貫通孔の開口面積が前記一方面における前記第3の貫通孔の開口面積よりも小さく、
(a)工程において当該マスクの前記他方面が前記ハニカム構造体の端面に当接するように当該マスクを配置する、請求項9に記載の封口方法。
【請求項11】
前記他のマスクは、前記ハニカム構造体の前記他方の端面と当接する領域のうち、前記ハニカム構造体の端面周縁部と当接する部分に、当該マスクの厚さ方向に貫通する複数の第4の貫通孔を更に有し、
前記第4の貫通孔は、前記ハニカム構造体のセルピッチよりも狭い間隔で設けられていると共に、開口面積が0.03mm2以上であり且つ前記第3の貫通孔によって封口すべきセルの開口面積の60%未満であり、
(d)工程において、前記ハニカム構造体の端面周縁部における封口すべきセルの開口に当該マスクの前記第4の貫通孔を通じて封止材を供給する、請求項10に記載の封口方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−255672(P2011−255672A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103183(P2011−103183)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]