説明

ハニカム状成形体

【課題】本発明の課題は、ハニカム状成形体における多数の小透孔のあらわれた端面部の強度を向上させ、耐磨耗性、繊維毛羽立ちを抑制させたハニカム状成形体を提供することにある。
【解決手段】方波成形体を積層してなり、小透孔のあらわれた端面部にシリコーンアクリル樹脂が塗布されてなるハニカム状成形体において、該樹脂中にコロイダルシリカを含有させたことを特徴とするハニカム状成形体。シリコーンアクリル樹脂とコロイダルシリカの質量比率が90:10から50:50であることが好ましい。該コロイダルシリカの球状粒子径が10nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は端面部が処理された多数の小透孔を有するハニカム状成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平面状シートと波形シートとを貼合わせた片波成形体を多数積層してなるハニカム状成形体はその占有容積に比しシートの展開表面積が著しく広いため、流体の熱交換、流体中の特定成分の収着、流体の化学反応用触媒の担体など広い分野で使用されている。このハニカム状成形体の多数の小透孔のあらわれた端面部は強度が弱く、多少の衝撃により小透孔の端部が変形又は破壊して該小透孔内を通過すべき処理流体の流入に影響を与える。また、該ハニカム状成形体を円筒状のロータとしてケーシング内に装着して駆動回転させる場合には、ロータの端面部とケーシングとの間にシールが設けられるが、このシールとロータ端面部との摺動によって、ロータの端面部及びシールが磨耗し易いという問題がある。
【0003】
平面性と平滑性とが要求されるロータ端面部が磨耗するとロータを通過する処理流体が漏洩して所定の効率が低下する。一方、小透孔のあらわれた端面部に流体中の塵埃その他の微粒子が付着したり、繊維が毛羽立ったりすることによって、ハニカム状成形体の端面部の摩擦係数が増大し、流体の流れの抵抗が増大するという問題が発生する。
【0004】
上記の欠点を改良し、ロータその他ハニカム状成形体の小透孔のあらわれた端面部の耐磨耗性や耐衝撃性その他の強度を改善することを目的として、該端面部に樹脂等を含浸して硬化処理を施すことが従来から行われている(例えば、特許文献1及び2参照)。樹脂の例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂が挙げられている。しかしながら、これらの樹脂では、含浸したハニカム状成形体の端面部の摩擦係数が増大し、特にハニカム状成形体がロータの場合、シールに対して摺動するロータ端面部がシールと共に磨耗し、ロータを通過する処理流体が漏洩して所定の効率が低下するという問題があった。
【0005】
また、ポリテトラフルオロエチレンその他フッ素樹脂で端面部を処理したハニカム状成形体が提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。フッ素樹脂は摩擦係数が小さく、端面部の磨耗を抑制する効果が期待できるが、他物質との接着力が極めて弱いため、ハニカム状成形体の各シートに強力に付着することはできず、摩擦により容易に剥落してしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献4では、フッ素樹脂と共に補強剤として、シリカ、アルミナ、チタニア又はその混合物のゾルを使用しているが、これらの組み合わせではハニカム状成形体の多数の小透孔のあらわれた端面部の強度を改善することが難しく、多少の衝撃により小透孔の端部が変形又は破壊して処理流体の流れが悪くなるほか、ハニカム状成形体とケーシングとの間から処理流体が漏れるなどの問題が発生し、さらに強度アップをするための工夫が必要となるという問題があった。
【0007】
また、特許文献5では、上記の強度問題を解決するためにハニカム状成形体の多数の小透孔のあらわれた端面部にシリコーンアクリル樹脂を塗布する提案がされているが、端面部の強度改善にはなったもののシリコーンアクリル樹脂のみを塗布した場合、ハニカム状成形体とケーシングとの密着性を上げた場合に摩擦抵抗が増加し、摺動のエネルギーが多く必要となるなど、さらに摩擦抵抗を改善する必要があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭57−52520号公報
【特許文献2】特開平10−89878号公報
【特許文献3】実開昭51−12156号公報
【特許文献4】特開平5−131577号公報
【特許文献5】特開2010−105178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ハニカム状成形体における多数の小透孔のあらわれた端面部の強度を向上させ、耐磨耗性、繊維毛羽立ちを抑制させたハニカム状成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、第1に、方波成形体を積層してなり、小透孔のあらわれた端面部に樹脂が塗布されてなるハニカム状成形体において、該樹脂がシリコーンアクリル樹脂であり、該樹脂中にコロイダルシリカを含有させたことを特徴とするハニカム状成形体であり、第2に、シリコーンアクリル樹脂に対するコロイダルシリカの質量比率が90:10から50:50であるハニカム成形体、第3に、コロイダルシリカの球状粒子径が10nm以上100nm以下であるハニカム成形体であり、第4に、第1の発明から第3の発明の何れかのハニカム成形体からなる除湿素子を提供することである。
【発明の効果】
【0011】
シリコーンアクリル樹脂は、密着性が高いアクリルユニットと、摺動性に優れたシリコーンユニットと、摺動性、耐摩擦性に優れたコロイダルシリカを有しているので、シリコーンアクリル樹脂にコロイダルシリカを含有した樹脂を端面部に塗布されたハニカム状成形体は、端面部の強度が向上し、繊維毛羽立ちが抑制され、耐磨耗性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、片波成形体を積層してなり、小透孔のあらわれた端面部にシリコーンアクリル樹脂にコロイダルシリカを含有した樹脂が塗布されてなるハニカム状成形体である。
【0013】
シリコーンアクリル樹脂としては、アクリル樹脂とシリコーン樹脂とのブレンド体、アクリル系モノマーをシリコーンアゾ重合開始剤で重合したブロック共重合体、アクリル系モノマーとシリコーンマクロモノマーとのブロック又はグラフト共重合体、ケイ素含有アクリル系モノマーとケイ素非含有アクリル系モノマーとの共重合体、ケイ素非含有アクリル系モノマーの重合体又はケイ素含有アクリル系モノマーとケイ素非含有アクリル系モノマーとの共重合体をシランカップリング剤で処理してなる重合体などを挙げることができる。
【0014】
アクリル樹脂とシリコーン樹脂とのブレンド体は、シリコーン樹脂とアクリル系モノマーとを主成分として含有する溶液を乳化重合して製造することができる。シリコーン樹脂の原料としては、アルコキシ基,アセトキシ基,クロル原子等の加水分解性基を1個、2個、3個又は4個含有するシラン化合物が使用可能である。例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、
【0015】
(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピル−トリス−(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルブチルジメトキシシラン、δ−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、δ−(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、δ−(メタ)アクリロキシブチル−トリス−(メトキシエトキシ)シラン、
【0016】
ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3−ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルメチルジクロルシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、テトラクロルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの部分加水分解物を用いても良い。
【0017】
加水分解性シラン化合物を加水分解してシリコーン樹脂を得る方法としては、有機溶剤中において加水分解性シラン化合物を加水分解してシリコーン樹脂とする方法、水中で加水分解性シラン化合物を加水分解する方法が挙げられる。
【0018】
得られたシリコーン樹脂とアクリル系モノマーとを主成分とした溶液を乳化重合すると、シリコーン樹脂とアクリル樹脂のブレンド体である水性エマルジョンが得られる。ブレンド体の製造方法としては、例えば、シリコーン樹脂をアクリル系モノマーに溶解し、さらに界面活性剤を加えて乳化重合してブレンド体とする方法、シリコーン樹脂成分を含む水の中にアクリル系モノマーを添加し、さらに界面活性剤を加えて乳化重合しブレンド体とする方法等がある。
【0019】
本発明に用いることができるアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピル−トリス−(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルブチルジメトキシシラン、δ−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、δ−(メタ)アクリロキシブチルメチルジメトキシシラン、δ−(メタ)アクリロキシブチル−トリス−(メトキシエトキシ)シラン等のケイ素含有アクリル系モノマーを挙げることができる。
【0020】
また、ジペンタエスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−オクダデシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート等のケイ素非含有アクリル系モノマーを用いることができる。なお、スチレン系モノマー、酢酸ビニル系モノマーを含んでも良い。
【0021】
アクリル系モノマーをシリコーンアゾ重合開始剤で重合したブロック共重合体において、アクリル系モノマーは上記のケイ素含有アクリル系モノマー、ケイ素非含有アクリル系モノマーの中から適宜選択して用いることができる。シリコーンアゾ重合開始剤はシリコーンユニットとアゾ基とを含有している化合物であり、例えば、和光純薬工業(株)商品名「VPS−1001」、「VPS−0501」等を挙げることができる。
【0022】
アクリル系モノマーとシリコーンマクロモノマーとのブロック又はグラフト共重合体において、アクリル系モノマーは上記のケイ素含有アクリル系モノマー、ケイ素非含有アクリル系モノマーの中から適宜選択して用いることができる。シリコーンマクロモノマーはシリコーンユニットの片末端あるいは両末端に(メタ)アクリロキシ基を有する化合物であり、例えば、チッソ(株)商品名「サイラプレーン(登録商標)」、信越化学工業(株)商品名「X−22−164」、「X−22−164AS」、「X−22−164A」、「X−22−164B」、「X−22−164C」、「X−22−164E」等を挙げることができる。
【0023】
ケイ素含有アクリル系モノマーとケイ素非含有アクリル系モノマーとの共重合体、ケイ素非含有アクリル系モノマーの重合体又はケイ素含有アクリル系モノマーとケイ素非含有アクリル系モノマーとの共重合体をシランカップリング剤で処理してなる重合体において、ケイ素含有アクリル系モノマー、ケイ素非含有アクリル系モノマーとしては上記のモノマーを使用することができる。シランカップリング剤としては上記シリコーン樹脂の原料として挙げたシラン化合物を使用することができる。
【0024】
本発明において、アクリル系モノマー等の重合には、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩類、和光純薬工業(株)商品名「VA−044」、「VA−046B」、「V−50」、「VA−057」、「VA−060」、「VA−061」、「VA−067」、「VA−080」、「VA−086」等の水溶性アゾ重合開始剤、和光純薬工業(株)商品名「V−70」、「V−65」、「V−601」、「V−59」、「V−40」、「VF−096」、「V−30」、「VAm−110」、「VAm−111」等の油溶性アゾ重合開始剤、上述のシリコーンアゾ重合開始剤、和光純薬工業(株)商品名「VPE−0201」、「VPE−0401」、「VPE−0601」等のポリエチレングリコールアゾ重合開始剤等を用いることができる。
【0025】
本発明において、シリコーンアクリル樹脂には、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウムなどの顔料や染料、流動性付与剤、表面調整剤、発泡防止剤、可塑剤、帯電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤などを添加しても良い。
【0026】
シリコーンアクリル樹脂の塗布方法として、ディッピングのほか、ローラーコート、刷毛塗り、スプレー等の手段によって行う。
【0027】
シリコーンアクリル樹脂の塗工面積が大きくなることで、ハニカム状成形体の有効活用面積が小さくなることから、塗工面積としては、ハニカム状成形体の長さに対し、小透孔の深さ方向に両端合わせて5%以下となる面積とすることが望ましい。
【0028】
本発明において、コロイダルシリカは特に限定されるものではない。シリカは、一般的に湿式法の沈降法、ゲル法、ゾル法等により製造される。沈降法は珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシール(登録商標)として、(株)トクヤマからトクシール(登録商標)として市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学工業(株)からミズカシル(登録商標)として、グレースジャパン(株)からサイロジェット(登録商標)として市販されている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、珪酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックス(登録商標)として市販されている。また、その他の方法として、アルコキシド加水分解法などにより、コロイダルシリカはつくられている。
【0029】
本発明で使用するコロイダルシリカの球状粒子径は4〜500nmのものが好ましく、4〜200nmがより好ましく、10〜100nmがより好ましく、40〜60nmがさらに好ましい。球状粒子径が4nm未満になると、シリコーンアクリル樹脂との接触面積が増すため、摩擦係数低減の効果がうまく発現されない場合がある。500nmを超えると、シリコーンアクリル樹脂との結着性が低下し、脱落の原因になる場合がある。本発明において、球状粒子径とは、BET法による比表面積若しくはシアーズ法による比表面積からの換算粒子径又は遠心沈降法で求められる粒子径である。シアーズ法は、アナレティカル・ケミストリー(ANALYTICAL CHEMISTRY)、第28巻、第12号(1956年12月)第1981頁に説明されているように、水酸化ナトリウムを用いた滴定による比表面積から換算される粒子径の測定方法である。
【0030】
本発明のシリコーンアクリル樹脂とコロイダルシリカの比率は、シリコーンアクリル樹脂の比率が多すぎると、摩擦係数低減効果が得られ難く、シリコーンアクリル樹脂の比率が少なすぎると、ロータ端面表面部の強度が低下する場合があることから、シリコーンアクリル樹脂とコロイダルシリカの質量比率は、90:10〜40:60が好ましく、80:20〜50:50がより好ましく、80:20〜60:40がさらに好ましく、70:30〜60:40が特に好ましい。
【0031】
シリコーンアクリル樹脂とコロイダルシリカの合計塗布量が150〜250g/mとなるように均一に塗布することが好ましい。
【実施例】
【0032】
<試験用ハニカム状成形体の作製>
吸着型吸湿剤(商品名;ミズカソーブ(登録商標)S−0、水澤化学工業(株)製、平均細孔径3nm、比表面積820m/g)53質量%、ポリエチレンテレフタレート繊維(商品名;テピルス(登録商標)、帝人ファイバー(株)製、0.11dtex×3mm)23質量%、セルロース系フィブリル化繊維(商品名;セリッシュ(登録商標)KY−100G、ダイセル化学工業(株)製)7質量%、ポリエステル熱融着性芯鞘繊維(商品名;メルティ(登録商標)、ユニチカ(株)製、1.1dtex×3mm)17質量%の抄紙用スラリー(固形分濃度2質量%)を調製した。得られたスラリーに凝集剤(商品名;パーコール(登録商標)57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を固形分に対して0.2質量%添加し、円網型抄紙機で坪量50g/mに抄紙し、(a)多孔質シリカを含有するウェブを得た。
【0033】
ウェブを、25μm厚のポリエチレンフィルムを中央にして両面から貼り合わせ、熱カレンダー処理によって、目付123g/m、厚み180μmの貼り合わせをし、段高2.2mm、波長3.3mmの片段コルゲート加工をして、これを5cm幅にスリットし、さらに円柱状に巻き上げて、直径5cm、長さ5cmの試験用ハニカム状成形体を製造した。
【0034】
<シリコーンアクリル樹脂のエマルジョンの作製>
γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン10質量部、メチルメタクリレート50質量部、n−ブチルアクリレート30質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10質量部、スルホン酸基を有する反応性界面活性剤(商品名;アデカリアソープ(登録商標)SE−10N、(株)ADEKA製)2質量部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル1質量部を、炭酸水素ナトリウム0.2質量部を溶解したイオン交換水100質量部に添加し、ホモミキサーで混合後、ホモジナイザーで分散してエマルジョンを調製した。
【0035】
温度計、攪拌機、冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入口を接続した4ツ口フラスコにイオン交換水40質量部を入れ、窒素ガスを導入すると共に、温度を80℃にした。滴下ロートからモノマー等のエマルジョンを滴下した後、80℃で3時間保持して、ラジカル重合を行った。室温にまで冷却し、シリコーンアクリル樹脂のエマルジョンを得た。
【0036】
実施例1
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XL、平均粒子径:50nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例1のハニカム成形体を得た。
【0037】
実施例2
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン90質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XL、平均粒子径:50nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)10質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例2のハニカム成形体を得た。
【0038】
実施例3
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン80質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XL、平均粒子径:50nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)20質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例3のハニカム成形体を得た。
【0039】
実施例4
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン60質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XL、平均粒子径:50nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)40質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例4のハニカム成形体を得た。
【0040】
実施例5
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン50質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XL、平均粒子径:50nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)50質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例5のハニカム成形体を得た。
【0041】
実施例6
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン40質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XL、平均粒子径:50nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)60質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例6のハニカム成形体を得た。
【0042】
実施例7
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XS、平均粒子径:4nm(球状、シアーズ法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例7のハニカム成形体を得た。
【0043】
実施例8
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−S、平均粒子径:10nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例8のハニカム成形体を得た。
【0044】
実施例9
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−50、平均粒子径:20nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例8のハニカム成形体を得た。
【0045】
実施例10
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−20L、平均粒子径:40nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例8のハニカム成形体を得た。
【0046】
実施例11
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−YL、平均粒子径:60nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例8のハニカム成形体を得た。
【0047】
実施例12
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−ZL、平均粒子径:80nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例9のハニカム成形体を得た。
【0048】
実施例13
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) MP−1040、平均粒子径:100nm(球状、遠心沈降法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例10のハニカム成形体を得た。
【0049】
実施例14
作製したシリコーンアクリル樹脂のエマルジョン70質量部(固形分)と、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) MP−2040、平均粒子径:200nm(球状、遠心沈降法)、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、実施例10のハニカム成形体を得た。
【0050】
比較例1
試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製したシリコーンアクリル樹脂エマルジョンのみを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、比較例1のハニカム成形体を得た。
【0051】
比較例2
試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製したシリコーンアクリル樹脂エマルジョン70質量部(固形分)と、アルミナゾル(商品名;アルミナゾル520、日産化学工業(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、比較例2のハニカム成形体を得た。
【0052】
比較例3
試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製したシリコーンアクリル樹脂エマルジョン70質量部(固形分)と、チタニアゾル(商品名;TKD−701、テイカ(株)製)30質量部(固形分)とを混合撹拌し、樹脂エマルジョンを作製した。試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、作製した樹脂エマルジョンを刷毛塗り法で200g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、比較例3のハニカム成形体を得た。
【0053】
比較例4
試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、コロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XL、平均粒子径:50nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)を刷毛塗り法で100g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、さらにその上層部にポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)(商品名;nanoFLON、Shamrock Technologies社製)を刷毛塗り法で100g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し比較例4のハニカム成形体を得た。
【0054】
比較例5
試験用ハニカム状成形体の両端部各0.125cmに、ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)(商品名;nanoFLON、Shamrock Technologies社製)を刷毛塗り法で100g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し、さらにその上層部にコロイダルシリカ(商品名;スノーテックス(登録商標) ST−XL、平均粒子径:50nm(球状、BET法)、日産化学工業(株)製)を刷毛塗り法で100g/m塗布し、90℃で1時間乾燥し比較例5のハニカム成形体を得た。
【0055】
<評価方法1;スリーワン法>
試験用ハニカム成形体をスリーワンモータ(汎用攪拌機)の撹拌シャフトに取り付け、シャフトの質量を利用してクロロプレンゴムシートに押しつけ、回転速度400rpmにて回転させる。5時間後、回転を止め、クロロプレンゴムシート及びハニカム成形体を目視観察し、粉塵の発生、削れ、割れ、繊維の毛羽立ち、変形等の比較を行った。
【0056】
<スリーワン法の評価基準>
◎:ハニカム成形体の変形、割れ、繊維の毛羽立ち等は見られない
○:ハニカム成形体の表面に若干のキズが見られたが、変形、割れ、繊維の毛羽立ち等は見られない
△:ハニカム成形体の表面にキズ、割れが見られたが、変形、繊維の毛羽立ち等は見られない
×:ハニカム成形体の著しい変形、割れ、繊維の毛羽立ち等が見られた
【0057】
<評価方法2;摩擦係数法>
JIS P8147に準拠した摩擦係数測定装置を使用して、摩擦スピード;10mm/min、チャート速度;120mm/min、移動距離;50mm、加重(質量800gの分銅)し、動摩擦係数の比較を行った。得られた結果から摩擦係数が低いものを5、高いものを1として、5段階評価を行った。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1〜14は、試験用ハニカム成形体の変形、割れ、繊維の毛羽立ち等が見られなかったのに対し、比較例1は、摩擦によりクロロプレンゴムシートから出た粉塵が成形体へ付着していた。さらに、試験用ハニカム状成形体が削られ、繊維の毛羽立ち、欠落が発生していた。
【0060】
比較例2及び3は、ハニカム成形体の表面にキズ、摩擦により樹脂の剥落、試験用ハニカム成形体の強度不足による変形等が見られた。また、比較例4及び5は、ハニカム成形体の変形が激しく見られ、ハニカムのつぶれ、摩擦により樹脂の剥落、試験用ハニカム成形体の強度不足による変形等が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、除湿素子のほか、全熱交換素子、揮発性有機化合物(VOC)濃縮装置用素子等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方波成形体を積層してなり、小透孔のあらわれた端面部に樹脂が塗布されてなるハニカム状成形体において、該樹脂がシリコーンアクリル樹脂であり、該樹脂中にコロイダルシリカを含有させたことを特徴とするハニカム状成形体。
【請求項2】
シリコーンアクリル樹脂とコロイダルシリカの質量比率が90:10から50:50である請求項1記載のハニカム成形体。
【請求項3】
該コロイダルシリカの球状粒子径が10nm以上100nm以下である請求項1又は2記載のハニカム成形体。
【請求項4】
請求項1から3の何れか記載のハニカム成形体からなる除湿素子。

【公開番号】特開2012−187493(P2012−187493A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52545(P2011−52545)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】