説明

ハブ・スピンドル組立体用の静電放電装置

【課題】薄膜ヘッドとディスクの間の電荷の蓄積を阻止することができる、ディスク記憶システムの軸受組立体用の導電性シールを提供すること。
【解決手段】ディスク・ドライブの記憶システム用のハブ・スピンドル組立体に使用される静電放電装置は、スピンドルと、スピンドルに回転可能に取り付けられたハブと、ハブに電気的に連通するように配置することができる導電性材料から少なくとも一部が形成され、導電性流体を保持するように構成されたチャンバを画定するカプセルにして、該カプセルに形成された第1の開口に流体連通する少なくとも1つの毛細管チャネルを画定するカプセルとを有する。第1の開口は、スピンドルの周りでの回転を許すように、また、ハブがスピンドルの周りで回転する際に、開口の近くに導電性流体によって形成されたメニスカスがスピンドルに電気的に接触するのを許すように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ディスク・ドライブのメモリ記憶装置用のハブ及びスピンドルに関し、より詳細には、そのようなハブ・スピンドル組立体用の、固定部と運動部の間の電荷の移動をもたらす静電放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク・ドライブのメモリ・システムは、デジタル情報を記憶するために、コンピュータで長年使用されている。情報は、磁気ディスク媒体の同心のメモリ・トラックに記録され、実際の情報は、媒体内に磁気転移の形で記憶される。ディスク自体は、固定スピンドルに回転可能に取り付けられたハブに取り付けられている。情報は、読取り/書込みヘッドによってアクセスされ、このヘッドは、通常、ディスクの表面上を径方向に移動する旋回アームに配置されている。読取り/書込みヘッド又はトランスデューサは、情報の正確な読取り及び書込みを確実にするために、ディスクの記憶トラックに精確に整合されなければならない。
【0003】
運転中、ディスクは、ディスクを支持するハブの内部に通常配置されるモータによって、密閉された筐体の内部で非常に高速で回転される。一般に使用されるモータの1つのタイプは、イン・ハブ・モータ又はイン・スピンドル・モータとして知られている。そのようなイン・スピンドル・モータは、通常、ハブの中心部に配設された固定モータ・シャフト(スピンドル)に、玉軸受システム又は流体動圧軸受システムによって取り付けられたスピンドルを有する。一般に、そのようなモータは、円形に配置された複数の歯を有する、組立体のベースに形成された固定子を含んでいる。それぞれの歯は、固定子に極性を与えるために順番に励磁することができるコイル又は巻線を支持している。複数の永久磁石が、ハブの内側の縁に、固定子に隣接して、交互の極性で配設される。固定子に配設されたコイルが、交互の極性で順番に励磁されるので、各固定子の、隣接する磁石への磁気吸引力及び反発力により、ハブが回転し、それによりディスクが回転し、情報記憶トラックがヘッドを通過する。
【0004】
ディスク記憶システムで使用されるモータは、玉軸受、及び/又は流体動圧軸受を有するハブ・スピンドル組立体を使用することができる。どちらのタイプの軸受でも、潤滑流体は、液体又は気体の状態でありうる。そのようなドライブ・システムでは、流体動圧軸受の組立体の使用が好まれるようになっている。その理由は、従来の玉軸受のドライブ・システムに比べて、ドライブのサイズ及びノイズの発生を望ましく減少させるからである。流体動圧軸受では、潤滑流体は、スピンドルとハブの間の軸受表面として機能する。そのような軸受は、ジャーナル及びスラストのタイプである。ジャーナル軸受は、ハブがスピンドルの周りで回転するときに、ハブの径方向位置を固定する。スラスト軸受は、ハブが回転するときに、ハブの軸方向位置を拘束する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転するディスクの毎分回転数を上げる、また、ドライブ・モータの電力消費量を少なくするという点に関して、ドライブ・システムのより高い性能への要求が高まっているので、摩擦及び回転抗力をさらに低減するために、より粘性の低い潤滑流体及び/又は潤滑気体を軸受に使用することが魅力的になっている。薄膜のヘッドとディスクとの界面は、摩擦電荷の蓄積から生じる静電放電による損傷に対して非常に敏感であることが知られている。したがって、そのような電荷の蓄積を阻止するために、薄膜ヘッドとディスク表面の間に導電路を設けることが望ましい。玉軸受に基づいたディスク記憶システムでは、軸受の玉と軌道の界面、又はスピンドル・モータの強磁性流体のシールを介して電荷を移動させることができる。流体が液体である流体動圧軸受では、軸受の間隙が適度に小さい場合には、ヘッドとディスクの界面から地面にスピンドル・モータの流体動圧軸受を介して電荷を移動させることができる。しかし、流体が気体の場合、そのような電荷の移動が実質的に妨げられるおそれがある。したがって、スピンドルとハブの間に別の導電路を設けることが望ましい。金属性の粒子を含む強磁性流体が磁力によって位置的に拘束される、強磁性流体のシールを使用することができるが、そのような強磁性流体は、ガス放出する、また、そうでなくともディスク・ドライブを汚染する傾向があり、信頼性が低下する。
【0006】
薄膜ヘッドとディスクの間の電荷の蓄積を阻止することができ、動作寿命が長いが強磁性流体のシールの汚染及び磁場の拘束の要求を受けない、ディスク記憶システムの軸受組立体用の導電性シールを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例は、ディスク・ドライブの記憶システム用のハブ及びスピンドルの軸受組立体に使用される静電放電装置であって、該静電放電装置が、ハブに電気的に連通するように配置することができる導電性材料から少なくとも一部が形成されたカプセルにして、導電性流体を保持するように構成されたチャンバを画定し、カプセルに形成された第1の開口に流体連通する少なくとも1つの毛細管チャネルを画定するカプセルを有し、該第1の開口が、スピンドルの周りでの回転を許すように、また、ハブがスピンドルの周りで回転する際に、開口の近くに導電性流体によって形成されたメニスカスがスピンドルに電気的に接触するのを許すように構成されている静電放電装置である。さらなる実施例では、静電放電装置が、カプセル内に、チャンバを導電性流体で満たすように構成された第2の開口をさらに有している。
【0008】
いくつかの実施例では、少なくとも1つの毛細管チャネルを放射状に構成することができ、他の実施例では、少なくとも1つの毛細管チャネルを螺旋状に構成することができる。これらの2つのタイプの実施例のどちらにおいても、少なくとも1つの毛細管チャネルを、第1の開口に向かって幅が狭くなるように構成することができ、少なくとも1つの毛細管チャネルが、導電性流体、例えば、非導電性の潤滑剤と、導電性、非金属性、非磁性の添加物とを中に含むことができる。
【0009】
いくつかの実施例では、カプセルを、開放中央部を有する少なくとも部分的な環状体として構成することができ、第1の開口が、少なくとも部分的な環状体の開放中央部を画定している。さらなる実施例では、カプセルの少なくとも一部分をハブと一体化することができる。
【0010】
本発明の別の実施例では、ディスク・ドライブの記憶システムが、スピンドルと、該スピンドルに回転可能に取り付けられたハブと、該ハブに電気的に連通するように配置することができる導電性材料から少なくとも一部が形成され、導電性流体を保持するように構成されたチャンバを画定し、カプセルに形成された第1の開口に流体連通する少なくとも1つの毛細管チャネルを画定するカプセルとを有することができ、該第1の開口が、スピンドルの周りでの回転を許すように、また、ハブがスピンドルの周りで回転する際に、開口の近くに導電性流体によって形成されたメニスカスがスピンドルに電気的に接触するのを許すように構成されている。カプセルは、上記実施例に関連して述べたような追加の特徴を有することができる。
【0011】
本発明のさらなる実施例は、スピンドルとハブの軸受組立体を包含するディスク・ドライブの記憶システム内での静電荷の蓄積を阻止する方法であり、該方法が、導電性材料から少なくとも一部が形成されたカプセル内に画定された毛細管チャネル内に含まれる導電性流体に流体連通するメニスカスを、電気的に接触させる工程を有し、カプセルがハブに電気的に接触している。さらなる実施例では、ハブがスピンドルの周りで回転する際に、カプセルがハブに電気的に接触することができ、メニスカスがスピンドルに電気的に接触することができる。さらなる実施例では、導電性流体が、非導電性の潤滑剤と、導電性、非金属性、非磁性の添加物とを含む。
【0012】
本明細書で開示される態様及び実施例を十分に理解するために、以下の説明において添付の図面を参照する。
【実施例】
【0013】
以下の説明は、当業者が本発明の様々な態様を作成し使用することが可能となるように提示される。具体的な材料、技術及び適用例の説明は、単に例として与えられている。本明細書で説明されている実施例に対する様々な変更が、当業者には容易に明らかであろう。また、本明細書で規定される一般的な原理は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、他の実施例及び適用例に適用することができる。例えば、態様及び実施例を、ディスク記憶ドライブに使用されるモータを含めて、様々なモータに利用することができる。ディスク記憶ドライブ用のモータは、いくつもの様式で設計され動作することができる。本明細書で提供される例示的なモータ及び他の例示的な対象物は、様々な態様を示すためのものであり、そのような実施例及び態様が適用されるモータ及び装置の範囲を制限するものではない。
【0014】
図1を簡単に見ていくと、例示的な磁気ディスク・ドライブの記憶システムの平面図が示されている。この例では、記憶システム10は、記憶ディスク16を回転可能に担持するスピンドル・モータ14を有する筐体のベース12を含む。電機子組立体18が、ディスク16の表面を横切るようにトランスデューサ20を動かす。ディスク16が回転する環境は、シール22及びカバー24によって密閉することができる。運転中、ディスク16は、トランスデューサ20がディスク16の表面上の径方向に分化されたトラックのいずれの位置にある間も、高速で回転する。これにより、トランスデューサ20は、ディスク16の表面上の磁気的に暗号化された情報を、選択した位置で読み取り書き込むことができるようになる。ディスク16は、何千回という回転数(RPM)で回転することができる。
【0015】
ディスク16に回転を与えるために、スピンドル・モータ14は、通常、少なくとも1つの回転可能な部分を含む。そして、この少なくとも1つの回転可能な部分は、通常、ジャーナル及び/又はスラストの動圧軸受を形成することができる、1つ又は複数の回転しない表面と相互作用する。動圧軸受は、多くの場合、オイルなどの液体の潤滑剤を、スピンドル・モータ14の回転可能部分と固定部分との間に含んでいる。毛細管シールが、液体潤滑剤を潤滑すべき範囲に閉じ込める助けとなり、また、気化及びこぼれなどによる損失を補償する液体潤滑剤のリザーバを提供する。
【0016】
毛細管シールは、多くの場合、潤滑流体(例えばオイル)をディスク・ドライブ・モータの動圧軸受の表面に保持し、ディスク・ドライブの予想寿命にわたって動圧軸受の表面の潤滑を維持するのに十分な潤滑液体のリザーバを提供するために使用される。
【0017】
典型的な毛細管シールは、ディスク・ドライブ・モータの、同軸上に配設された相対的に回転する部材の、径方向に対向する表面同士の間、例えば、固定シャフトの外側表面とシャフトの周りに配設された回転するハブの内側表面の間に形成される。通常、径方向に対向する表面同士が互いに対して先細になるように、シャフト又はハブのどちらかが機械加工され、それにより、断面積がベント開口から動圧軸受に向かって次第に小さくなる、環状タイプの断面を有する毛細管シールが形成される。
【0018】
このような毛細管シールは、多くの場合、周囲環境にさらされる断面積が比較的大きく、そのため、動作中の衝撃及び/又は気化のために流体を失いがちになりうる。したがって、周囲環境にさらされる断面積の減少、並びにシール及びリザーバの耐衝撃性の増大を含む利点を有しうる、毛管力を使用した毛細管シール及びリザーバが望まれている。
【0019】
2005年5月10日に出願された「COLUMN CAPILLARY SEAL FOR FDB MOTORS」という名称の米国特許出願第11/126,932号は、柱状の毛細管シールを論述しており、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0020】
図2は、本発明の一実施例によるディスク・ドライブ・モータの断面図を示している。ハブ203は、ベース201に取り付けられた固定スピンドル202の周りで回転する。ディスク204がハブ203に結合され、カプセル210として示されている環状の導電性毛細管シール組立体も同じくハブ203に結合されている。永久磁石206A及び206Bが、図示のように、ハブ203の内側の縁に結合されており、ハブ203を、ベース201に結合された固定子磁石207A及び207Bからの交互に入れ替わる磁界に応答して回転させる。いくつかの実施例では、ハブ203とスピンドル202の間のスラスト及びジャーナル軸受の表面界面が、流体動圧軸受(FDB)によって加圧される流体(液相及び/又は気相)によって潤滑される。気相の流体が使用された場合、気相の流体が液相の流体に比べて導電率が低いため、スピンドル202とハブ203が実質的に電気的に絶縁され、その結果、スピンドル202及びハブ203に差動電荷の蓄積が生じる可能性がある。そのような電荷の蓄積は、読取り/書込み薄膜ヘッド(図示せず)とディスク204の近接表面の間に静電放電(ESD)を引き起こす可能性がある。そのようなESDは、読取り/書込み薄膜ヘッド及び/又はディスク204の近接表面に損傷を与える可能性がある。そのような電荷の蓄積を阻止するために、本発明の一実施例では、環状導電性毛細管シール210が設けられている。環状導電性毛細管シール210は、それぞれ結合された第1の部材210B及び第2の部材210Aから成る。第1の部材210Bは、ハブ203に電気的及び機械的に結合されている。環状導電性毛細管シール210の環状内周からの導電性流体212のメニスカスが、スピンドル202の近接表面と流体的及び電気的に接触している。ディスク204がハブ203に機械的及び電気的に結合しており、スピンドル202がベース201に機械的及び電気的に結合しており、ベース201が読取り/書込み薄膜ヘッドに電気的に結合されうるので、ディスク204の表面と読取り/書込み薄膜ヘッドの間の電荷の蓄積を低減することができる。
【0021】
図3A及び図3Bは、それぞれ、環状導電性毛細管シールの上方及び下方斜視図である。中央環状穴301が、シール組立体を貫通し、環状導電性毛細管シールの内側環状表面によって画定されている。導電性流体のメニスカスが、内側環状表面に形成できる。穴302が、環状導電性毛細管シール210の第2の部材210Aにあり、シールを導電性流体で満たすために使用される。
【0022】
次に図4を参照すると、図4Aは、第1の部材210Bの上面図を示し、図4Bは、第1の部材210Bの底面図を示し、図4Cは、第1の部材210Bの断面図を示している。301Bは、第1の部材210Bの中央環状穴部である。外周リップ43が、導電性流体を含む内部キャビティ42を部分的に画定している。導電性流体を供給するために、隆起部分41A〜41Hが、内部キャビティ42内に放射状に並んだ毛細管チャネルを画定しており、毛細管チャネルは、中央環状穴301Bに向かって次第に幅が狭くなっている。いくつかの実施例では、隆起部分41A〜41Hの上部は、外周リップ43と同一平面上にある。第1の部材210Bは、十分な導電率を有し、使用される導電性流体とも適合性のある、機械的に許容可能ないかなる材料から作成してもよい。例えば、第1の部材210Bは、当業者に公知であるような、金属、金属合金、導電性高分子材料、又は、導電性複合材料から作成することができる。外周リップ43及び隆起部分41A〜41Hは、例えば、(i)機械加工、(ii)スタンピング、(iii)化学エッチング、(iv)鋳造、(v)電着、及び(vi)様々なレーザ・アブレーション又は機械的アブレーション技術などであるがそれらに限定されない、当業者に公知の様々な技術を使用して、第1の部材210Bの上面に形成することができる。図4Aには、キャビティ42内に8つの毛細管チャネルを画定するように、8つの隆起部分41が示されているが、本発明の他の実施例では、他の数の隆起部分も使用することができる。さらなる実施例では、以下で論じられるように、放射状ではない幾何形状を毛細管チャネルに使用することもできる。第1及び第2の部材210B及び210Aは、カプセル210用に、完全な環状の形状で示されているが、他の実施例では、少なくとも1つの毛細管チャネルがそこに含まれさえすれば、角度が限定された、部分的に環状の形状のものを含む。いくつかの実施例では、角度が限定された環形部分は、「ワイパ」の形状により似ており、任意の時間に、スピンドルの角度が制限された領域とのメニスカス接触をもたらす。
【0023】
図5は、諸実施例の諸態様による第2の部材210Aの様々な面を示している。図5Aは上面図、図5Bは底面図、そして図5Cは断面図を示している。第1の部材210Bの上部と組み合う、図5Bの表面は、実質的に平坦で、それにより、第1の部材210Bの外周リップ43及び隆起部分41A〜41Hが、第2の部材210Aの底面との実質的に液密なシールを形成している。充填穴302は、第2の部材210Aを貫通して延びており、第1の部材210Bを第2の部材210Aと組み立てたときに、第1の部材210Bのキャビティ42に流体アクセスするために、この穴を使用することができる。
【0024】
第1の部材210Bは、例えば、(i)溶接、(ii)接着剤、(iii)はんだ付け、(iv)適切な機械的変形を伴う圧力ばめ、及び(v)適切なフランジ及び穴の変形を伴う、リベット、ねじ、タッピンねじ、又はナット及びボルトなどであるがそれらに限定されない、当業者に公知の様々な技術を使用して、第2の部材210Aに結合することができる。同様に、第1の部材210Bは、外部のクランプを使用して、第2の部材210Aに結合することもできる。環状導電性毛細管シール201も同様に、当業者に公知の様々な同様の技術を使用して、ハブ203に結合することができる。
【0025】
図6は、図2に示された実施例の拡大詳細図である。いくつかの実施例では、メニスカス212をもたらす環状導電性毛細管シール210の内側環状穴の周囲は、メニスカス212のスピンドル202との軸方向の接触範囲を制限する助けとなるように、軸方向に幅が狭められた部分として形成されうる。これにより、メニスカスを形成する導電性流体の消失を低減することができ、また、流体による軸受の汚染を低減することもできる。
【0026】
図7は、環状導電性毛細管シールのさらなる実施例を示している。第2の部材210Aは、前述の実施例に関連して上記で説明したとおりである。第1の部材710Bは、他の実施例に関連して上記で説明したように、外周リップ73及び中央環状穴301Bを有する。ただし、隆起部分71は、螺旋形状の毛細管チャネルをもたらすように、螺旋状の模様で形成されている。この実施例の利点は、同じ直径の環状導電性毛細管シール組立体に、放射形状の毛細管チャネルよりも長い螺旋形状の毛細管チャネルを形成することができることである。これにより、より低い導電性流体の供給率で、より長い導電性流体の供給寿命がもたらされる。図7には、螺旋形状の毛細管チャネルが4つ示されているが、他の実施例では、他の数の螺旋形状の毛細管チャネルを使用することができる。
【0027】
本発明の一実施例によると、導電性流体は、非導電性の潤滑剤、並びに粘性、耐酸化性、耐食性、及び耐磨耗性能などの望ましい潤滑特性を犠牲にすることなく潤滑剤の導電率を向上させる、導電性、非金属性、非磁性の添加剤を含む。好適なベース潤滑剤には、鉱物ベースの炭化水素、合成炭化水素、エステル、又は、ベース潤滑剤を組み合わせたものが含まれる。鉱物ベースの炭化水素は、高精製度(高純度)のものが好ましい。
【0028】
好適な添加剤には、芳香族及び脂肪族の炭化水素中の、四級化ポリマー性アミノアミドエステル、ニトリルポリマー、クロロベンゼン、及び二塩化エチレンの市販の溶液などの有機ポリマーが含まれる。芳香族及び脂肪族の炭化水素は、添加剤の溶液の残りの成分と比べて、40〜70%の濃度を有する。そのような市販の溶液の一例として、米国ペトロライト社(Petrolite Corporation,U.S.A.)製のTolad 511がある。適切な市販の有機ポリマーの別の例には、溶媒(トルエン、イソプロピルアルコール、及びC9〜C16の他の芳香族の溶媒)、ドデシルベンゼンスルホン酸の溶液が含まれる。他の市販の溶液を使用することもできる。添加剤は、非金属性、非磁性なので、磨耗性能及び粘度性能に悪影響を及ぼすことはない。他の非金属性の添加剤の溶液を使用することもできる。
【0029】
潤滑剤中の添加剤の濃度は、所望の導電率を実現するために、様々に変更することができる。ただし、潤滑剤の全体の粘性が変化しないように、濃度を低く保つことが好ましい。好適な実施例では、添加剤の濃度は、潤滑剤中の100〜5000ppmであり、処理済の潤滑剤は、50MΩ未満の抵抗値を有する。例えば、鉱物ベースの炭化水素中に1000pp(すなわち0.1%)の有機ポリマーを含むものが、適切な性能を与えることが分かっている。これは、強磁性粒子が潤滑剤中に最大で4%の濃度を有する、典型的な強磁性流体の潤滑剤よりも濃度がずっと低い。
【0030】
さらなる例が、米国特許第5,940,246号「DISC DRIVE HYDRO BEARING LUBRICANT WITH ELECTRICALLY CONDUCTIVE NON−METALLIC ADDITIVE」(1999年8月17日)に論述されており、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0031】
本発明の導電性流体は、したがって、ディスクの表面から静電荷を放電する、導電性の経路を提供するとともに、金属性及び磁性の添加物を含む導電性の潤滑剤の耐磨耗性能を大きく向上させる。
【0032】
代替実施例では、潤滑剤は、酸化、腐食、磨耗、粘性などの性能要因を向上させるための、多数の他の混合物又は添加剤を含むことができるが、そのことは、1996年10月25日に出願され、米国特許仮出願第60/008,124号の優先権を主張する、「Disc Drive Spindle Motor Having Hydro Bearing With Optimized Lubricant Viscosity」という名称の米国特許出願第08/737,431号、「Miniature Disc Drive Spindle Motor Having Hydro Bearing With High Shear−Strength Viscosity Index Improved Lubricant」という名称の米国特許出願第08/737,438号、及び「Disc Drive Spindle Motor Having Hydro Bearing With Lubricant Optimized With Disc Drive Compatible Additives」という名称の米国特許出願第08/737,439号に、より詳細に論述されており、これらを参考によって本明細書に援用する。
【0033】
本発明を好適な実施例を参照して説明してきたが、当業者には、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、形式及び詳細に変更を加えてもよいことが理解されよう。本明細書で提供された特定の構造、潤滑剤、及び添加剤は、単なる例に過ぎない。本発明に従って、他のベース潤滑剤、及び非金属性又は非磁性の導電率を高める添加剤も使用することができる。
【0034】
また、導電性の毛細管シールは、ハブに機械的及び電気的に結合され、スピンドルに流体的及び電気的に連通する、環状の形状を有するように説明してきたが、その代わりに、放射形状の導電性毛細管シールを、スピンドルに機械的及び電気的に結合し、ハブに流体的及び電気的に連通することもできる。後者の実施例の潜在的な欠点は、シール組立体の領域が減少し、その結果、導電性流体の貯蔵能力の減少を引き起こす可能性があることである。後者の実施例の潜在的な利点は、毛細管チャネルに貯蔵された導電性流体が、回転するハブによる遠心力を受けないことである。
【0035】
様々なモータ及び毛細管シールの態様を本明細書で図示し説明してきた。いくつかの図では回転するシャフトの設計を示し、他の図では固定シャフトの設計を示した。当業者には、それぞれに関する教示を他の設計に適応させてもよいことが理解されよう。また、本明細書では、ある特定の構成部品を個々に確認してきたが、そうした確認が、そのような構成部品を他の構成部品とは別個に形成しなければならないことを含意しないことが理解されよう。同様に、本明細書で確認した構成部品を、他の設計ではさらに小さい構成部品に分割することができる。さらに、再循環チャネル、軸受表面、ポンプ溝などの特徴を、追加して、又は本明細書の態様で示したものとは異なるやりかたで配設することもできる。
【0036】
提示された例示的態様から、他の変更形態及び変形形態が当業者には明らかであろう。例として、本明細書で説明した様々な例示的方法及びシステムを、単独で、又は様々な流体動圧軸受及び毛細管シールのシステム及び方法と組み合わせて使用することができる。また、特定の実施例を論述し、これらの実施例が関連技術のある特定の欠点にどのように対処すると考えられるかを論述してきた。しかし、この論述は、実際にその欠点に対処する、或いはそれを解決する方法及び/又はシステムの様々な実施例を制限することを意図するものではない。
【0037】
本明細書に参考として援用された刊行物、特許、及び特許出願が、本明細書に含まれる開示と対立する範囲においては、本明細書が、そのような対立する資料に取って代わる、及び/又はそれに優先するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】例示的なディスク・ドライブの平面図である。
【図2】本発明の一実施例によるディスク・ドライブの断面図である。
【図3A】本発明の一実施例による導電性毛細管シールの上方斜視図である。
【図3B】本発明の一実施例による導電性毛細管シールの下方斜視図である。
【図4A】本発明の一実施例による導電性毛細管シールの第1の部材の上面図である。
【図4B】本発明の一実施例による導電性毛細管シールの第1の部材の底面図である。
【図4C】第1の部材の断面図である。
【図5A】本発明の一実施例による導電性毛細管シールの第2の部材の上面図である。
【図5B】本発明の一実施例による導電性毛細管シールの第2の部材の底面図である。
【図5C】第2の部材の断面図である。
【図6】本発明の一実施例の詳細断面図である。
【図7】本発明のさらなる実施例による導電性毛細管シールの分解図である。
【図8】図7の実施例の組立斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
10 記憶システム
12 筐体のベース
14 スピンドル・モータ
16 記憶ディスク
18 電機子組立体
20 トランスデューサ
22 シール
24 カバー
201 ベース
202 固定スピンドル
203 ハブ
204 ディスク
206A、206B 永久磁石
207A、207B 固定子磁石
210 カプセル、環状導電性毛細管シール
210A 第2の部材
210B 第1の部材
212 メニスカス
301 中央環状穴
301B 中央環状穴
302 充填穴
41A〜41H 隆起部分
42 内部キャビティ
43 外周リップ
71 隆起部分
710 第1の部材
73 外周リップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブとスピンドルの軸受組立体に使用される静電放電装置であって、該静電放電装置が、
前記ハブに電気的に連通するような配置で構成された導電性材料から少なくとも一部が形成され、導電性流体を保持するように構成されたチャンバを画定するカプセルにして、該カプセルに形成された第1の開口に流体連通する少なくとも1つの毛細管チャネルを画定するカプセルを有し、前記第1の開口が、前記スピンドルの周りでの回転を許すように、また、前記ハブが前記スピンドルの周りで回転する際に、前記開口の近くに前記導電性流体によって形成されたメニスカスが前記スピンドルに電気的に接触するのを許すように構成されている静電放電装置。
【請求項2】
前記カプセル内に、前記チャンバを前記導電性流体で満たすように構成された第2の開口をさらに有する、請求項1に記載の静電放電装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの毛細管チャネルが、放射状に構成されている、請求項1に記載の静電放電装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの毛細管チャネルが、螺旋状に構成されている、請求項1に記載の静電放電装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの毛細管チャネルが、前記第1の開口に向かって幅が狭くなるように構成されている、請求項1に記載の静電放電装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの毛細管チャネルが、導電性流体を中に含んでいる、請求項1に記載の静電放電装置。
【請求項7】
前記導電性流体が、非導電性の潤滑剤と、導電性、非金属性、非磁性の添加物とを含む、請求項6に記載の静電放電装置。
【請求項8】
前記カプセルの少なくとも一部分が前記ハブと一体化されている、請求項1に記載の静電放電装置。
【請求項9】
前記カプセルが、開放中央部を有する少なくとも部分的な環状体として構成され、前記第1の開口が、前記少なくとも部分的な環状体の前記開放中央部を画定している、請求項1に記載の静電放電装置。
【請求項10】
スピンドルと、
前記スピンドルに回転可能に取り付けられたハブと、
前記ハブに電気的に連通するような配置で構成された導電性材料から少なくとも一部が形成され、導電性流体を保持するように構成されたチャンバを画定するカプセルにして、該カプセルに形成された第1の開口に流体連通する少なくとも1つの毛細管チャネルを画定するカプセルとを有し、
前記第1の開口が、前記スピンドルの周りでの回転を許すように、また、前記ハブが前記スピンドルの周りで回転する際に、前記第1の開口の近くに前記導電性流体によって形成されたメニスカスが前記スピンドルに電気的に接触するのを許すように構成されている、ディスク・ドライブの記憶システム。
【請求項11】
前記カプセル内に、前記チャンバを前記導電性流体で満たすように構成された第2の開口をさらに有する、請求項10に記載の記憶システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの毛細管チャネルが、放射状に構成されている、請求項10に記載の記憶システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの毛細管チャネルが、螺旋状に構成されている、請求項10に記載の記憶システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの毛細管チャネルが、前記第1の開口に向かって幅が狭くなるように構成されている、請求項10に記載の記憶装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの毛細管チャネルが、導電性流体を中に含んでいる、請求項10に記載の記憶装置。
【請求項16】
前記導電性流体が、非導電性の潤滑剤と、導電性、非金属性、非磁性の添加物とを含む、請求項15に記載の記憶システム。
【請求項17】
前記カプセルの少なくとも一部分が前記ハブと一体化されている、請求項10に記載の記憶システム。
【請求項18】
前記カプセルが、開放中央部を有する少なくとも部分的な環状体として構成され、前記第1の開口が、前記少なくとも部分的な環状体の前記開放中央部を画定している、請求項10に記載の記憶装置。
【請求項19】
スピンドルとハブの軸受組立体を有するディスク・ドライブの記憶システム内での静電荷の蓄積を阻止する方法であって、
導電性材料から少なくとも一部が形成されたカプセル内に画定された毛細管チャネル内に含まれる導電性流体に流体連通するメニスカスを、電気的に接触させる工程を有し、前記カプセルが前記ハブに電気的に接触している、静電荷の蓄積を阻止する方法。
【請求項20】
前記ハブが前記スピンドルの周りで回転する際に、前記ハブを前記カプセルに電気的に接触させ、前記メニスカスを前記スピンドルに電気的に接触させる工程をさらに有する、請求項19に記載の静電荷の蓄積を阻止する方法。
【請求項21】
前記導電性流体が、非導電性の潤滑剤と、導電性、非金属性、非磁性の添加物とを有する、請求項20に記載の静電荷の蓄積を阻止する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−211978(P2007−211978A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−28634(P2007−28634)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】