説明

ハプテン化合物および抗体

【課題】BPAを高感度かつ高選択的に認識する抗体を作製するためのハプテン化合物、BPAに対する抗体、ならびに当該抗体を用いた高感度かつ定量性に優れたBPAの測定用キットおよび免疫学的測定方法を提供することにある。
【解決手段】下記式(1):
【化1】



で表わされる構造を有する化合物、前記化合物をハプテンとし、当該ハプテンと高分子化合物との複合体を抗原として用いることにより得られるBPAに対する抗体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p−ボロノフェニルアラニン(BPA)のハプテン化合物、BPAに対する抗体、およびそれを用いる免疫学的測定方法等に関し、特にホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いられる中性子捕捉療法剤の検出、定量に有用である。
【背景技術】
【0002】
近年、放射性アイソトープを利用した新しい癌の治療方法として、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)が注目を集めている。ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素10同位体(10B)を含むホウ素化合物をガン細胞に取り込ませ、低エネルギーの中性子線(たとえば熱中性子)を照射して、細胞内で起こる核反応により局所的にガン細胞を破壊する治療方法である。この治療方法では、10Bを含むホウ素化合物をガン組織の細胞に選択的に蓄積させることが、治療効果を高める上で重要であるため、ガン細胞に選択的に取り込まれるホウ素化合物を開発することが必要となる。
【0003】
従来までに、BNCTに用いる薬剤として基本骨格にホウ素原子またはホウ素原子団を導入したホウ素含有化合物が合成されている。実際の臨床で用いられている薬剤としては、p−ボロノフェニルアラニン(BPA)やメルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)がある。このうち、p−ボロノフェニルアラニンはフェニルアラニン(BPA)のミミックとしてメラニン生合成経路に取り込まれやすく、メラニン生合成が活発な悪性黒色腫の治療に用いられてきた。さらに、近年、脳腫瘍細胞にもよく取り込まれることが明らかとなり、両方の治療に利用されており、特に脳腫瘍の治療については最近、p−ボロノフェニルアラニンとメルカプトウンデカハイドロドデカボレート(BSH)の併用による治療が多く見られる(たとえば、非特許文献1〜8参照)。
【0004】
【非特許文献1】I.M.Wyzlicら、Tetrahedron Lett.,1992,33,7489−7490,
【非特許文献2】W.Tjark,J.Organomet.Chem.,2000,614−615,37−47,
【非特許文献3】K.Imamuraら、Bull.Chem.Soc.Jpn.,1997,70.3103−3110.
【非特許文献4】A.S.Al−Madhornら、J.Med.Chem.,2002,45,4018−4028,
【非特許文献5】F.Compostellaら、Res.Develop.Neutron Capture Ther.,2002,81−84,
【非特許文献6】S.B Kahlら、Progress in Neutron Capture Therapy for Cancer,Plenum Press,New York 1992,223,
【非特許文献7】J.Caiら、J.Med.Chem.,1997,40,3887−3896,
【非特許文献8】H.Limら、Res.Develop.Neutron Capture Ther.,2002,37−42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、BNCTに伴うBPAの生体内挙動、特に細胞表層や細胞のミクロ分布についての詳細は未だ明らかとはなっておらず、BPAの生体内挙動を簡便かつ迅速に定性、定量できる方法の開発が強く望まれている。BPAの検出、定量方法として、免疫学的測定方法が期待されているが、BPAのような低分子無機化合物は、分子量・体積が小さいことや、イオン化し易いといった理由のため抗原性が低く、BPAを高感度で検出しうる抗体はこれまで得られていない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、BPAを高感度かつ高選択的に認識する抗体を作製するためのハプテン化合物、BPAに対する抗体、ならびに当該抗体を用いた高感度かつ定量性に優れたBPAの測定用キットおよび免疫学的測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、BPAをミミックした3−(p−ボロノフェニル)プロピオン酸にリンカーを結合したハプテン化合物に着目して鋭意研究を重ねた結果、以下に示すハプテン化合物、抗体、ハイブリドーマ等が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(1):
【化1】


で表わされる構造を有する化合物に関する。
【0009】
本発明は、前記化合物をハプテンとし、当該ハプテンと高分子化合物との複合体を抗原として用いることにより得られるp−ボロノフェニルアラニン(BPA)に対する抗体に関する。前記抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0010】
本発明は、前記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマに関する。前記ハイブリドーマは、BPH−1(受領番号FERM AP−20943)であることが好ましい。
【0011】
本発明は、前記モノクローナル抗体を含むp−ボロノフェニルアラニン(BPA)の測定キットに関する。
【0012】
また、本発明は、前記モノクローナル抗体または前記キットを用いることを特徴とするp−ボロノフェニルアラニン(BPA)の測定方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物は、BPAハプテンとして好適に用いられるものである。当該ハプテンと高分子化合物との複合体を抗原として用いることにより、動物においてBPAに対する免疫応答を良好に惹起することができ、特異的かつ高感度なBPA抗体を得ることができる。
【0014】
本発明の抗体は、特異的かつ高感度にBPAを検出することができる。当該抗体がモノクローナル抗体の場合、BPAに対して特に高感度であり、交差反応性も低い。本発明のハイブリドーマは、前記モノクローナル抗体を安定して短期間で産生することができ、当該ハイブリドーマを培養することにより、大量のモノクローナル抗体を製造することができる。
【0015】
また、本発明のキットは、本発明のモノクローナル抗体を含むことにより、BPAの免疫学的測定方法に好適に用いられ、BPAを特異的、高感度および簡便に測定することのできる手段を提供することができる。
【0016】
本発明のBPAの測定方法は、本発明のモノクローナル抗体またはキットを用いることにより感度、特異性および操作の簡便性にすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、下記式(1):
【化2】


で表わされる構造を有する化合物を提供する。前記化合物は、3−(p−ボロノフェニル)プロピオン酸−ヘキサン酸であり、BPAハプテンとして好適に使用される。前記式(1)において、カルボキシル基が後述する高分子化合物と共有結合することにより、複合体(結合体)を形成する。
【0018】
前記BPAハプテンの製造は、公知の合成方法により行なうことができ、特に限定されるものではないが、たとえば下記反応式:
【化3】


で示す方法は、各工程において高収率で化合物を得ることから好適に用いられる。前記反応式において、式(2)等の原料化合物はいずれも入手が容易な化合物である。
【0019】
また、前記各工程における詳細な合成方法は、実施例1に記載している。
【0020】
前記BPAハプテンは、牛血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、オボアルブミン(OVA)、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)、チログロブリン(TG)、免疫グロブリン等の高分子化合物(タンパク質)との複合体を形成させた後、免疫原として用いる。
【0021】
複合体の形成方法は、公知の方法により行なうことができ、特に限定されるものではない。たとえば、混合酸無水物法または活性エステル法等により前記BPAハプテンのカルボキシル基と前記高分子化合物の官能基(たとえば、アミノ基等)とを反応させて、複合体を形成することができる。
【0022】
本発明は、前記ハプテンと高分子化合物との複合体を抗原として用いることにより得られるBPAに対する抗体を提供する。
【0023】
本発明でいう「抗体」には、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体が包含され、FabフラグメントやF(ab’)フラグメントなどのように抗原結合性を有する抗体の一部も包含される。これら抗体の中でも、モノクローナル抗体が好ましい。
【0024】
前記抗体の製造方法は、公知であり、本発明の抗体も常法にしたがって製造することができる(Current Protocol in Molecular Biology,Chapter 11.12〜11.13(2000))。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体の場合には、常法にしたがって前記BPAハプテンと高分子化合物との複合体を形成させた後、当該複合体を家兎等の非ヒト動物に免疫し、該免疫動物の血清から常法にしたがって得ることが可能である。
【0025】
一方、モノクローナル抗体の場合には、前記複合体を常法にしたがってマウス等の非ヒト動物に免疫し、得られた脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させて調製したハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを培養することにより得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit.Ausubel et al.(1987)Publish.John Wiley and Sons.Section 11.4〜11.11)。
【0026】
抗体の調製は、限外ろ過、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニテイークロマトグラフィーなどの濃縮・精製法を適宜組み合わせて行うことができる。
【0027】
また、本発明は、前記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを提供する。以下、マウスでのハイブリドーマの作製方法について詳細に説明する。
【0028】
以下、Balb/cマウスを例にして説明する。前記のように調製した抗原(免疫原)を2mg/ml程度になるように生理的リン酸緩衝液に溶解し、アジュバントと等量混合した後、Balb/cマウスに腹腔内に投与する。その後、約2週間毎に追加免疫する。
【0029】
尾血管から採取した血液の血清中の抗体力価が高くなった前記マウスの脾臓を摘出し、DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地)を入れたシャーレ内で前記脾臓から細胞を取り出す。培地を遠沈管に移し、大きな組織片を沈降させ、脾臓細胞が浮遊している上清を静かに取り、単細胞の懸濁液を低速で遠心分離して細胞を集め、脾臓細胞を調製する。
【0030】
マウスのミエローマ細胞(P3×63Ag8.653)を細胞数の比で5:1(ミエローマ細胞:脾臓細胞)になるように混合し、低速で遠心分離して細胞を集める。沈殿細胞をほぐした後、37℃に温めておいた50%ポリエチレングリコール(分子量1,500)溶液1mlをゆっくり加え細胞融合を行う。
【0031】
細胞融合後、DMEM培地9mlを加え、さらに含牛胎児血清DMEM培地40mlを添加する。遠心分離によって集めた細胞に、細胞数が5×10個/mlになるようにHAT培地を加えて懸濁し、細胞懸濁液を96穴プラスチックプレートに250μl/ウェルの量で分注して、37℃、5%炭酸ガス、加湿条件下のインキュベーター中で培養する。
【0032】
1週間後、ウェル中の培地の半量をHAT培地で置換して、10日から14日間培養する。培養液中の抗体の活性をELISAで調べ、目的とする抗体を産生しているウェルの細胞について、限界希釈法によりハイブリドーマのクローニングを行う。クローニングにより、抗BPA抗体を産生している安定なハイブリドーマ株を得る。
【0033】
本発明では、前記方法によりハイブリドーマを作製し、BPH−1等の複数のハイブリドーマ株を樹立した。このうち、BSF−2について、受領番号FERM AP−20943の下、2006年6月26日に独立行政法人 産業技術総合研究所、特許生物寄託センター(郵便番号305−8566、茨城県つくば市東1丁目1番1号)に寄託されている。
【0034】
本発明のハイブリドーマは、培地(たとえば、10%牛胎児血清を含むDMEM)を用いて培養し、その培養液の遠心上清をモノクローナル抗体溶液とすることができる。また、本ハイブリドーマを由来する動物の腹腔に注入することにより、腹水を生成させ、得られた腹水をモノクローナル抗体溶液とすることができる。これらの抗体溶液は、さらに上述のように精製・濃縮することができる。
【0035】
また、本発明は、前記抗体を含むBPAの測定キットに関する。本発明の測定キットは、BPAに特異的に結合する抗体を含むことにより、BPAを簡便に測定することができ、後述のBPAの測定方法に好適に使用することができる。前記キットは、さらに、測定法に応じて、標識された二次抗体もしくは標識されたBPAハプテン(抗原)、緩衝液、検出試薬および/またはBPA標準溶液等を含む。
【0036】
好ましいキットは、下記に示すような間接競合ELISA法または直接競合ELISA法に用いられうるものである。直接競合ELISA法に用いる場合、本キットは、本発明のモノクローナル抗体を固相化した担体をさらに含むことが好ましい。この場合、下記直接競合ELISA法の工程(1)を省略することができる。
【0037】
間接競合ELISA法に用いる場合、本キットは、さらに固相化抗原を含むものが好ましく、当該固相化抗原を固相化した担体を含むことが好ましい。この場合、下記間接競合ELISA法の工程(1)を省略することができる。
【0038】
前記固相化抗原は、本発明の抗体を製造するために用いるハプテンとは異なるハプテンを含むものである。前記固相化抗原のハプテン部分は、BPA−ヘキサン酸であることが好ましい。
【0039】
また、前記固相化抗原は、前記固相化抗原用ハプテンと、牛血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、オボアルブミン(OVA)、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)、チログロブリン(TG)、免疫グロブリン等の高分子化合物(タンパク質)との複合体を形成することにより得られる。
【0040】
前記固相化抗原用のハプテンは、公知の方法により合成することができ、市販品を利用することもできる。複合体の形成方法は、公知の方法により行なうことができ、特に限定されるものではない。たとえば、混合酸無水物法または活性エステル法等により前記固相化抗原用ハプテンのカルボキシル基と前記高分子化合物の官能基(たとえば、アミノ基)とを反応させて、複合体を形成することができる。
【0041】
本発明のキットは、下記間接競合ELISA法に用いる場合、前記固相化抗原、固相化抗原を保持する担体、BPA抗体、酵素標識された二次抗体および検出試薬などを含む。
【0042】
さらに、本発明は、前記抗体またはキットを用いることを特徴とするBPAの測定方法に関する。測定方法としては、通常の抗原−抗体反応を利用する方法であれば特に制限されず、放射性同位元素免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光もしくは発光測定法、凝集法、イムノブロット法、イムノクロマト法等(Meth.Enzymol.,92,147−523(1983),Antibodies Vol.II IRL Press Oxford(1989))があげられるが、感度や簡便性等の点からELISAが好ましい。ELISAに用いる酵素としては、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ等があげられる。
【0043】
ELISAによる測定法は、間接競合ELISAまたは直接競合ELISAなどがあげられる。たとえば、間接競合ELISAは、以下のような手順により行うことができる。
【0044】
(1)固相化抗原を担体に固相化する。
【0045】
用いる担体は、通常のELISAに用いる担体であれば特に制限されないが、96穴、48穴、192穴等のマイクロタイタープレートが好ましい。固相化は、たとえば、固相化用抗原を含む緩衝液を担体上に載せ、インキュベーションすればよい。緩衝液中の抗原の濃度は、通常0.01〜100μg/ml程度である。緩衝液としては、検出手段に応じて公知のものを使用することができる。
【0046】
(2)担体の固相表面へのタンパク質の非特異的吸着を防止するため、固相化用抗原が吸着していない固相表面部分を、抗原と無関係なタンパク質等によりブロッキングする。
【0047】
ブロッキング剤としては、BPAもしくはスキムミルク溶液、または市販のブロックエース(大日本製薬社製)等を使用することができる。ブロッキングは、前記ブロッキング剤を担体に添加し、たとえば、約4℃で一晩インキュベーションした後、洗浄液で洗浄することにより行われる。洗浄液としては特に制限はないが、前記(1)と同じ緩衝液を使用することができる。
【0048】
(3)前記(1)および(2)で処理された固相表面に各種濃度のBPAを含む試料および本発明のモノクローナル抗体溶液を加え、該抗体を前記固相化抗原およびBPAに競合的に反応させて、固相化抗原−抗体複合体およびBPA−抗体複合体を生成させる。
【0049】
反応は、通常4〜37℃で1〜2時間程度で行うことができる。
【0050】
(4)固相化抗原−抗体複合体の量を測定することにより、予め作成した検量線から試料中のBPAの量を決定することができる。
【0051】
固相化抗原−抗体複合体の量は、酵素標識した二次抗体(BPA抗体を認識する抗体)を添加して測定することができる。たとえばBPA抗体としてマウスモノクローナル抗体を用いる場合、酵素標識(たとえば、ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ等)した抗マウス−ヤギ抗体を用いて、担体に結合したBPA抗体と反応させるのが望ましい。反応は、前記(3)と同様の条件下で行えばよい。反応後、緩衝液で洗浄する。
【0052】
(5)担体に結合した二次抗体の標識酵素と反応する発色基質溶液を加え、吸光度を測定することによって検量線からBPAの量を算出することができる。
【0053】
二次抗体に結合する酵素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、たとえば、過酸化水素と、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンまたはo−フェニレンジアミンを含む発色基質溶液を使用することができる。通常、発色基質溶液を加えて室温で約10分程度反応させた後、硫酸を加えることにより酵素反応を停止させる。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを使用する場合、450nmの吸光度を測定する。o−フェニレンジアミンを使用する場合、490nmの吸光度を測定する。なお、バックグランド値を補正するため、630nmの吸光度も同時に測定することが望ましい。
【0054】
二次抗体に結合する酵素としてアルカリホスファターゼを使用する場合には、たとえばp−ニトロフェニルリン酸を基質として発色させ、NaOH溶液を加えて酵素反応を停止し、415nmでの吸光度を測定する方法があげられる。
【0055】
BPAを添加しない反応溶液の吸光度に対して、BPAを添加して抗体と反応させた溶液の吸光度の減少率を阻害率として計算する。既知の濃度のBPAを添加した反応液の阻害率により予め作成しておいた検量線を用いて、試料中のBPAの濃度を算出することができる。
【0056】
別の態様として、BPAの測定は、たとえば以下に述べるような本発明のモノクローナル抗体を用いた直接競合ELISAによって行うこともできる。
【0057】
(1)本発明のモノクローナル抗体を、担体に固相化する。
【0058】
用いる担体は、96穴、48穴、192穴等のマイクロタイタープレートが好ましい。固相化は、たとえば、固相化用抗体を含む緩衝液を担体上に載せ、インキュベーションすればよい。緩衝液中の抗体の濃度は、通常0.01〜100μg/ml程度である。緩衝液としては、検出手段に応じて公知のものを使用することができる。
【0059】
(2)担体の固相表面へのタンパク質の非特異的吸着を防止するため、固相化用抗体が吸着していない固相表面部分を、抗体と無関係なタンパク質等によりブロッキングする。
【0060】
ブロッキング剤としては、BPAもしくはスキムミルク溶液、または市販のブロックエース(大日本製薬社製)等を使用することができる。ブロッキングは、前記ブロッキング剤を担体に添加し、たとえば、約4℃で一晩インキュベーションした後、洗浄液で洗浄することにより行われる。洗浄液としては特に制限はないが、前記(1)と同じ緩衝液を使用することができる。
【0061】
(3)各種濃度のBPAを含む試料に、BPAハプテンと酵素を結合させた酵素結合ハプテンを加えた混合物を調製する。
【0062】
酵素結合ハプテンの調製は、BPAハプテンを酵素に結合する方法であれば特に制限なく、いかなる方法で行ってもよい。
【0063】
(4)工程(3)の混合物を工程(2)で得られた抗体固相化担体と反応させる。
【0064】
BPAと酵素結合ハプテンとの競合阻害反応により、これらと固相化担体との複合体が生成する。反応はたとえば、約25℃で約1時間行う。反応終了後、緩衝液で担体を洗浄し、固相化抗体と結合しなかった酵素結合ハプテンを除去する。
【0065】
固相化抗体−酵素結合ハプテン複合体の量を測定することにより、予め作成した検量線から試料中のBPAの量を決定する。
【0066】
本工程において酵素結合ハプテンの酵素に反応する発色基質溶液を前述の間接競合阻害ELISA法と同様に加え、吸光度を測定することにより検量線からBPAの量を算出することができる。
【0067】
前記本発明の測定方法においては、測定対象物に応じた前処理をして試料とした後、前記間接競合ELISAまたは直接競合ELISAの工程(3)に供せられる。
【0068】
本発明のハイブリドーマBPH−1から産生されるモノクローナル抗体を用いて、BPAの測定方法を実施することができる。本抗体を用いることによって今までイムノアッセイによる測定法のなかったBPAの特異的かつ高感度測定を実施することができる。
【0069】
本発明の別の態様として、免疫染色法に本発明のモノクローナル抗体を使用して、BNCTに伴うBPAの生体内挙動、特に細胞表層や細胞のミクロ分布を調べることができる。
【0070】
また、本発明のハイブリドーマは、前記モノクローナル抗体を安定して短期間で産生することができ、当該ハイブリドーマを培養することにより、BPAを高感度で分子認識するモノクローナル抗体を製造することができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾、変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0072】
下記実施例において、化合物の分析および分離精製には以下の機種や試薬を用いて行った。
・NMRスペクトル:日本電子 JMTC−400/54/SS 400MHz(日本電子社製)。特に明記しない限り、内部標準としてTMSを用いた。また、下記ケミカルシフトはδ値で示した。
・カラムクロマトグラフィー用シリカゲル:BW−200(富士シリシア社製)。
【0073】
〔実施例1(BPAハプテンの合成)〕
(a)3−(p−ボロノフェニル)プロピオン酸(3)の合成
中圧水添用反応容器にBCA(157mg、0.82mmol)のメタノール溶液(3ml)および、10%パラジウム炭素(20mg)を入れ、0.3MPa、常温下で接触還元反応を行った。
・TLC:Rf=0.5(クロロホルム:メタノール=5:1)
H−NMR(CDOD) δ(ppm):2.55(2H,t,7.56)、2.86(2H,t,7.56)、7.16(2H,d,7.07)、7.54(2H,s)。
【0074】
(b)3−(p−ボロノフェニル)プロピオン酸−ヘキサン酸エステル(4)の合成
Methyl 6−aminohexanoate HydrochlorideをDMFに溶解し、4−Methylmorpholineを滴下し中和した。その後、3−(p−boronophenyl)propionic acid、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)、EDCを加え24時間撹拌した。反応溶液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。これを10%クエン酸、10%炭酸水素ナトリウム溶液でそれぞれ1回洗浄した。酢酸エチルを濃縮後、酢酸エチルで再結晶し精製した。
・TLC:Rf=0.5(クロロホルム:メタノール=5:1)
H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm):1.19(2H,m)、1.34(2H,m)、1.49(2H,m)、2.27(2H,t,7.56)、2.34(2H,t,7.31)、2.79(2H,t,7.56)、2.99(2H,m)、3.56(3H,s)、7.14(2H,d,7.80)、7.68(2H,d,7.56)。
【0075】
(c)3−(p−ボロノフェニル)プロピオン酸−ヘキサン酸(5)の合成
3−(p−ボロノフェニル)プロピオン酸−ヘキサン酸をMeOHに溶解し、氷冷下2NのNaOH溶液を加えた後室温に戻し、24時間撹拌した。MeOHを濃縮して除き、残った水槽に水を加えた。塩基性であることを確かめたのち、エーテルで2回洗浄し、1NのHCl溶液を加えpHを約3にした。この酸性の水槽を酢酸エチルで3回抽出し、硫酸マグネシウムにより乾燥させた。酢酸エチルを濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=2:1)により精製した。
・TLC:Rf=0.3(クロロホルム:メタノール=5:1、テーリングした。)
H−NMR(DMSO−d6) δ(ppm):1.21(2H,m)、1.35(2H,m)、1.46(2H,m)、2.18(2H,t,7.32)、2.34(2H,t,7.56)、2.79(2H,t,7.32)、3.00(2H,m)、7.15(2H,d,7.81)、7.68(2H,d,7.81)、11.98(1H,b)。
【0076】
〔実施例2(免疫原の調整)〕
(d)3−(p−ボロノフェニル)プロピオン酸−ヘキサン酸コハク酸イミドエステルの合成
セントチューブに上記(c)で得た化合物(4.6mg、14.9μmol)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(3.4mg、29.8μmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(5.7mg、29.8μmol)、DMF(200μL)を加え、室温で一晩撹拌した(I液)。
【0077】
(e−1)3−(p−ボロノフェニル)プロピオン酸−ヘキサン酸−BSA複合体(7)(BSAを用いた免疫原)の合成
セントチューブにウシ血清アルブミン(10mg、149nmol)およびpH9.4のホウ酸塩緩衝液(ホウ酸5mmol、塩化カリウム5mmol、miliQ水40mL、pH調整用NaOH溶液にてpHを9.4に調整、調整後miliQ水で50mLにfill up)を760μL加え、4℃で24間撹拌した後、DMF(40μL)を加えた(II液)。
【0078】
II液にI液を室温で滴下(10μL/5分)し、室温下で2.5時間撹拌後、4℃で24間撹拌した。これを10%イソプロパノール−リン酸緩衝液で約60時間(緩衝液を6回換える)透析し、BPA−ヘキサン酸−BSA複合体(結合体)を得た。これをICP分析によりホウ素濃度を測定した後、1.5mLのエッペンチューブに移して、4℃で保存した。
【0079】
(e−2)BPA−ヘキサン酸−KLH複合体(8)(KLHを用いた免疫原)の合成
免疫原として、KLHと本発明BPAハプテンとの結合体を、上記(e−1)と同様にして作製した。
【0080】
〔実施例3(ポリクローナル抗体の作製)〕
実施例2で調整したBPAハプテン−KLH結合体をリン酸緩衝溶液(pH7.4)で1mg/mLになるように希釈した。この抗原溶液600μLを等量のRIBIアジュバント(MPL+TDM Adjuvant System, SIGMA M6536)と混合し、2〜3分間ボルテックスすることで十分混合した。これを5匹のBalb/cマウス(8週齢、オス)に腹腔内注射により免疫した(50μg/dose)。これを2週間ごとに行い、3回目の免疫以降は各免疫から1週間後に採血(眼窩採血)を行った。
【0081】
実施例2で調整した抗原(BPAハプテン−BSA結合体)をPBS(pH7.4)で5.0μg/mLになるよう希釈し、ELISA用マイクロプレートに100μLずつ分注し、37℃で1時間静置することで抗原をプレート表面に固定した。
【0082】
その後PBS−Tween溶液(リン酸緩衝液pH7.4、0.05%Tween20)で洗浄し、非特異的吸着を防ぐためにブロッキング溶液(リン酸緩衝液pH7.4、1%Block Ace)を200μLずつ加え、37℃で一時間静置しブロッキングを行った。そして、PBS−Tween溶液で洗浄後、調製したサンプルを100μL加え、再び37℃で1時間静置した。PBS−Tween溶液で洗浄後、二次抗体を50μL加え、37℃で1時間静置し、二次抗体(HRP標識ヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異的))と反応させた。
【0083】
PBS−Tween溶液で洗浄後、事前に調整しておいた基質溶液(リン酸クエン酸緩衝液(pH5.0)、0.04%o−フェニレンジアミン)に過酸化水素水を0.02%になるよう調整したものを200μL加えた。37℃で30分静置し発色させた後、マイクロプレートリーダー(BIO−RAD/Model550)を用いて吸光度を測定した。
【0084】
〔実施例4(ハイブリドーマおよびモノクローナル抗体の作製)〕
(f)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
合成したBPAハプテン−KLH結合体(実施例2)をリン酸緩衝液pH7.4(PBS)(NaCl 137mM、NaHPO・12HO 8.10mM、KCl 2.68mM、KHPO 1.47mM)で500μg/mLになるように希釈した。この抗原溶液2mLを40℃にて10分間加温したRIBIアジュバントシステム(RIBI/MPL(登録商標)+TDM Emulsion,R−700)と混合し、2〜3分間ボルテックスし、十分に混合した。
【0085】
これを5匹のBalb/cマウス(8週齢、オス)に皮下注射により免疫した(50μg/dose)。これを2週間ごとに行い、2回目の免疫以降は各免疫から、1週間後に採血(眼窩採血)を行った。採血した血液は1.5mLチューブに集め、37℃で1時間インキュベートした後、4℃にて一晩静置した。
【0086】
(g)細胞融合
(g−1)DMEM培地の調製
ダルベッコ改変イーグル培地(IWAKI DME/LOW、Lot.99562013)1パック、硫酸ゲンタマイシン(ゲンタマイシン642μg/mg、SIGMA Lot.105H0457)78.4mg、炭酸水素ナトリウム(関東化学、Lot302F1378)2.2gにMilliQを加えて1Lにした後、0.22μmフィルター(MILLIPORE MILLEX(登録商標)−GV、0.22μm フィルター SLGV01352)で滅菌して、DMEM培地を調製した。
【0087】
(g−2)HAT培地およびHT培地の調製
HAT supplement(SIGMA、Lot#61K8934)一瓶に10mLの滅菌したMilliQを加え、瓶内の試薬を完全に溶かした。この溶液をDMEM培地(15%FCS)の1/50量加えて混合し、HAT培地とした。HT supplement(SIGMA、Lot#32K8928)一瓶に10mLの滅菌したMilliQを加え、瓶内の試薬を完全に溶かし、この溶液をDMEM培地(15%FCS)の1/50量加えて混合し、HT培地とした。
【0088】
(g−3)50%PEG培地の調製
20gのPEG6000(PEG♯6000(M.W.7300−9000)、ナカライテスク、Lot M8H2950)を20mLのDMEM培地に加え、ホットスターラーで2時間撹拌して完全に溶かした。その後、40mLにメスアップし、クリーンベンチで0.20μmフィルターを用いて滅菌した。その後、1.8mLずつ分注して凍結し、使用直前に溶解し、200μLのDMSO(SIGMA、Lot#42K2401)を加えて、50%PEG(10%DMSO)溶液を作製した。
【0089】
(g−4)ACK lysis緩衝液の調製
MilliQ90mLに塩化アンモニウム802.3mg、炭酸水素カリウム10.01mg、EDTA3.72mgを加えpH7.2〜7.4に調整し、100mLにメスアップした。これをメディウム瓶に入れ、121℃で20分間オートクレーブし、滅菌して、ACK lysis緩衝液(0.15M塩化アンモニウム、1.0mM炭酸水素カリウム、0.1mMEDTA、pH7.2〜7.4)とした。
【0090】
(h)脾臓細胞の調整
抗体価が飽和に達したマウスに最終免疫(尾静脈注射)を行い、3日後に脾臓を摘出した。摘出した脾臓を氷上のDMEMの入ったシャーレに入れ、クリーンベンチ内に入れた。摘出した脾臓の不要な部分を除き、新しいDMEM培地の入った5mLシャーレに入れた。2本のピンセットを用いて、脾臓細胞をこそぎだし、セルストレーナー(FALCO−N2350、70μmナイロン)でろ過して不要なものを取り除き、通過した細胞をガラス製の遠心管に集め、1000rpmで10分間遠心した。
【0091】
上清を捨て、5mLのACK lysis緩衝液を加えピペッティングにより均一に混合し、室温で5分間静置し、脾臓細胞を洗浄除去した(赤血球の除去)。ここに20mLのDMEM培地を加え、1000rpmで10分間遠心し、上清を除去した。さらに20mLのDMEM培地を加え、ピペッティングにより細胞を洗浄し、1000rpmで10分間遠心した。上清を除去し、DMEM培地を10mL加え、ピペッティングにより混合した後、血球計算盤(Erma Tokyo4062)を用いて、細胞数をカウントした。
【0092】
(i)ミエローマ細胞の調整
ミエローマ細胞(P3X63Ag8U.1)を細胞融合を行う日程にあわせて培養し、使用直前に細胞をガラス製の遠心管に集め1000rpmで10分間遠心した。上清を除去し、DMEM培地を10mL加え、ピペッティングにより混合した後、血球計算盤(Erma Tokyo4062)を用いて、細胞数をカウントした。
【0093】
(j)細胞融合
脾臓細胞:ミエローマ細胞が10:3になるようにミエローマ細胞懸濁液の量を調整し、脾臓細胞懸濁液の遠心管に入れ、ピペッティングによって混合した。これを1000rpmで10分間遠心し上清を除去した後、パスツールピペットを用いて完全に上清を除去した。
【0094】
その後、遠心管をたたいて、細胞を遠心管の壁に広げた。遠心管を手で暖め、回しながら、1mLの50%PEG(10%DMSO)溶液を1分以上かけて、徐々に加えた。遠心管を1分間暖めながらまわし、同様の方法で、2mLのDMEM培地を2分以上かけて加え、さらに8mLのDMEM培地を5分以上かけて加えた。
【0095】
その後、1000rpmで10分間遠心し、上清を捨て、さらに10mLのDMEM培地を加えて細胞を洗浄し、1000rpmで10分間遠心した。上清を除去し、DMEM(15%FCS)培地を細胞密度が2×10個/mLになるように調整し、96穴プレートに100μLずつ分注し、37℃で一晩静置した。
【0096】
(k)HAT選択
96穴プレートに分注した細胞に、2倍程度のHAT培地を100μLずつ分注し、37℃で1週間放置した。その後、100μLのHAT培地を加えた。その後、陽性のウェルのハイブリドーマ細胞を24穴プレートに移し変え、HT培地を用いて全量を1mLにした。3日後、2次スクリーニングを行い、陽性であったウェルを限界希釈法によってクローニングした。
【0097】
(l)限界希釈法を用いたクローニング
2次スクリーニングで陽性であったウェルのハイブリドーマ細胞の細胞数を血球計算盤(Erma Tokyo4062)を用いてカウントして、濃度を求め、クローニング用の培地(DMEM(15%FCS)培地20mL、Briclone 1mL)を用いて、段階希釈することにより10個/mL、5個/mLに調整した。96穴プレートに100μLずつ分注し、1ウェルあたり細胞が1個または0.5個とした。
【0098】
これを37℃で1週間静置し、その後各ウェルに100μLずつクローニング陽の培地を加え、さらに37℃で1週間静置した。陽性であったウェルの細胞を48穴プレートに移し、同様に2回目のクローニングを行い、最終的に単一のハイブリドーマ細胞を得た。
【0099】
(m)無血清培地からの抗体の精製
無血清培地で培養したハイブリドーマ細胞BPH−1培養液を1000rpmで10分間遠心し、細胞上清に対し、60%硫酸アンモニウム濃度になるように硫酸アンモニウムを加え、抗体タンパクを沈殿させた。これを4℃で2時間撹拌し、さらに一晩放置した。その後、4℃、13500rpmで20分遠心し、結合バッファーに溶解させ、結合バッファーで透析した。
【0100】
透析後、8000rpmで10分間遠心して、上清を0.45μmでフィルターろ過してサンプルとした。カラムに5mLの超純水を流速1滴/秒(1〜2mL/分)で送液後、3〜5mLの結合バッファーを流速1滴/秒(1〜2mL/分)で送液し、カラムの平衡化を行った。その後、調整したサンプルを1滴/2秒(1〜2mL/分)で送液し、抗体をカラムに吸着させた。
【0101】
非吸着成分を3〜5mLの結合バッファー(20mMリン酸ナトリウム、0.8M硫酸アンモニウム、pH7.5)を流速1滴/秒で送液することにより除去した後、5mL溶出バッファー(20mMリン酸ナトリウム、pH7.5)を1滴/秒(1〜2mL/分)で送液して抗体を溶出させた。溶出液を0.5mLずつ回収した。
【0102】
全てのフラクションの吸光度(OD=280nm)を測定し、抗体タンパクを含んでいるフラクションをブラッドフォード法により、抗体タンパク濃度を測定した。その後、SDS−PAGEでモノクローナル抗体の純度を確認した。
【0103】
(n)抗体の感度測定と検量線の作成(直接競合ELISA法)
PBS溶液(リン酸緩衝液pH7.4)を用いて5μg/mLに調製したモノクローナル抗体(ハイブリドーマ株(BPH−1から調製)溶液を100μLずつ96穴ELISA用プレートに分注し、37℃で1時間静置することでプレートに抗体を固相化した。反応後、PBS−Tween溶液(リン酸緩衝液(pH7.4)、0.05%Tween20)で洗浄し、非特異的吸着を防ぐためにプレートにブロッキング溶液(リン酸緩衝液(pH7.4)、1%BSA)を加え、室温で1時間または4℃で一晩反応させ、プロッキングを行った。
【0104】
PBS−Tween溶液で洗浄後、HRP標識した競合剤(HRP結合BPA−ヘキサン酸)のPBS溶液(0.5μg/mL)中に、BPAがそれぞれ100〜0.001ppmの濃度になるようにサンプルを調整した。
【0105】
調製したサンプルをそれぞれ100μLずつ96穴ELISA用プレート(IWAKI 3801−096)に加え37℃で1時間反応させた。その後、常法どおりELISA(基礎溶液(50mmolリン酸クエン酸緩衝溶液(pH5.0)、0.04%o−フェニレンジアミン)を行い、マイクロプレートリーダー(BIO−RAD/Model550)を用いて450nmにおける吸光度を測定した。
【0106】
測定結果を図1に示す。X軸はBPA濃度を、Y軸は吸光度を表す。図1が示すように、ハイブリドーマ株BPH−1から調製したモノクローナル抗体を用いてBPAを特異的に検出することができ、BPA濃度が0.001〜1μMの幅広い範囲で吸光度測定によるBPAの濃度測定が可能であった。このように本発明のハイブリドーマおよび抗体を用いることにより、BPAの幅広い濃度範囲で非常に感度の高い定量評価および定性評価等が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のモノクローナル抗体を用いた直接競合ELISA法におけるBPA濃度と吸光度の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】


で表わされる構造を有する化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物をハプテンとし、当該ハプテンと高分子化合物との複合体を抗原として用いることにより得られるp−ボロノフェニルアラニン(BPA)に対する抗体。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体である請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
請求項3に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項5】
前記ハイブリドーマがBPH−1(受領番号FERM AP−20943)である請求項4に記載のハイブリドーマ。
【請求項6】
請求項3に記載のモノクローナル抗体を含むp−ボロノフェニルアラニン(BPA)の測定キット。
【請求項7】
請求項3に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とするp−ボロノフェニルアラニン(BPA)の測定方法。
【請求項8】
請求項6に記載のキットを用いることを特徴とするp−ボロノフェニルアラニン(BPA)の測定方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−94729(P2008−94729A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275362(P2006−275362)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(000162847)ステラケミファ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】