説明

ハリコンドリンB類似体の合成において有用なフロ[3,2−B]ピラン誘導体

一般に、本発明は、エリブリンなどのハリコンドリンB類似体または医薬的に許容されるその塩、例えばエリブリンメシレートの合成にとって有用な化合物を特徴とする。例示的な化合物は、式(I)、(II)または(III)のものである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、ハリコンドリンBの類似体の合成において有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
非タキサン微小管動態力学阻害剤であるエリブリンメシレートは、海洋天然生成物ハリコンドリンBの構造的に簡略化された合成類似体である。エリブリンおよび他のハリコンドリンB類似体の合成方法は、国際公開第2005/118565号および米国特許第6,214,865号に記載されている。ハリコンドリンB類似体、特にエリブリンの合成のための新しい中間体が望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の要旨
一般に、本発明は、エリブリンなど(医薬的に許容されるその塩、例えばエリブリンメシレートを含む)のハリコンドリンB類似体の合成にとって有用な化合物を特徴とする。
【0004】
一態様では、本発明は、式(I)
【化1】


を有する化合物を提供し、式中、Xはハロゲンまたはオキソであり;Zは、脱離基であり;Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、C(R)H(CHOYまたは−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;nは、1または2である。例示的な化合物は、式(Ia)
【化2】


を有する。
【0005】
特定の実施形態では、Qは−(CHOYであり、例えば上式で、Yは、それが結合する酸素と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートまたはエーテルヒドロキシル保護基である。例えば、Yは、ピバロイル、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、o−フタロイル、ベンジル、p−メトキシベンジル、トリフェニルメチル、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリルまたは(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルである。
【0006】
他の実施形態では、Xはハロゲンであり、かつ/またはZはハロゲンもしくは(C1〜C6)アルキルスルホネート(トリフレート、ヨウ化物または臭化物など)である。
【0007】
他の実施形態では、化合物は式(Ib)
【化3】


のものであり、式中、YはH、ピバロイル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、p−メトキシベンゾイル、またはo−フタロイルまたはその塩である。
【0008】
特定の実施形態では、Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、または−C(R)HCHC(O)OYであり;Xは、ブロモ、クロロ、フルオロまたはオキソであり;あるいはZはハロゲン、C1〜C12アルコキシ、C2〜C12アルキルスルホネート、C2〜C12アルケニルスルホネート、炭素環式C6〜C20アリールスルホネート、C4〜C19ヘテロアリールスルホネート、単環式C1〜C6ヘテロアリールスルホネート、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキルスルホネート、(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルスルホネート、(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルスルホネートまたはジアゾニウム;またはその組合せである。
【0009】
他の実施形態では、Qが−(CHOYであり、Zがトリフレートであり、かつ、Xがヨウ化物である場合、Yはピバロイルでなく;Qが−(CHOYであり、Yがピバロイルであり、かつ、Zがトリフレートである場合、Xはヨウ化物でなく;またはQが−(CHOYであり、Yがピバロイルであり、かつ、Xがヨウ化物である場合、Zはトリフレートでない。あるいは、Zがトリフレートであり、かつ、Xがヨウ化物である場合、Qは−(CHOYでない。
【0010】
別の態様では、本発明は、式(II)
【化4】


を有する化合物を特徴とし、式中、Xはハロゲンまたはオキソであり;Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、−C(R)H(CHOYまたは−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;nは、1または2であり;Y、Y、YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;Tは、オキソまたは−OYであり;そして、YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいは、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基である。例示的な化合物は、下記式
【化5】


を有する。
【0011】
特定の実施形態では、Qは−(CHOYである。これらの実施形態では、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートもしくはエーテルヒドロキシル保護基であってよく;YおよびYは、各々独立してかつそれが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートもしくはエーテルヒドロキシル保護基であってよく、またはYおよびYは、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環状カーボネート、環状ボロネート、アセタール、ケタールもしくは環状シリレンヒドロキシル保護基もしくは1,1,3,3−テトライソプロピルシロキサンジイルであってよく;Tは、−OYであってよく;ならびに/または、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートもしくはエーテルヒドロキシル保護基であってよい。これらの実施形態では、Yは、例えば、ピバロイル、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、o−フタロイル、ベンジル、p−メトキシベンジル、トリフェニルメチル、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、または(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルであり;YおよびYは、例えば、各々独立して、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、または(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルであるか、あるいは、YおよびYは、一緒になって、ジ(C1〜C6アルキル)シリレンであり;ならびに/あるいは、Yは、例えば、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイルまたはo−フタロイルである。
【0012】
他の実施形態では、Xはハロゲンである。これらの化合物は、下記式(IIc)
【化6】


をさらに有することができ、式中、YおよびYは以下のとおりである。
【表1】

【0013】
具体的な化合物は、
【化7】


である。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、式(III)
【化8】


を有する化合物を特徴とし、式中、Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、−C(R)H(CHOY、または−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;nは、1または2であり;Y、Y、YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;Uは、ハロゲンまたは−OYであり;YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいはYは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基であり;そして、YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいはYは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基であり、但し、Qが−(CHOYであり、Uが−OYであり、式中−OYは脱離基であり、かつY、YおよびYが保護基である場合、YはHでない。例示的な化合物は、式(IIIa)
【化9】


を有する。
【0015】
特定の実施形態では、Qは−(CHOYである。これらの実施形態では、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、例えば、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートまたはエーテルヒドロキシル保護基であり;YおよびYの各々は、例えば、独立してかつそれが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネート、もしくはエーテルヒドロキシル保護基であるか、またはYおよびYは、それらが結合する酸素原子と一緒になって、例えば、環状カーボネート、環状ボロネート、アセタール、ケタールもしくは環状シリレンヒドロキシル保護基もしくは1,1,3,3−テトライソプロピルシロキサンジイルであり;ならびに/または、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、例えば、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネート、またはエーテルヒドロキシル保護基である。具体例では、Yは、ピバロイル、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、o−フタロイル、ベンジル、p−メトキシベンジル、トリフェニルメチル、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、または(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルであり;YおよびYは、各々独立してトリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、または(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルであるか、あるいは、YおよびYは、一緒になって、ジ(C1〜C6)アルキルシリレンであり;ならびに/あるいは、Yは、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイルまたはo−フタロイルである。
【0016】
他の実施形態では、YはHまたはヒドロキシル保護基であり;Yは、Hであり;あるいは、−OYは、脱離基、例えば(C1〜C6)アルキルスルホネート、(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)スルホネート、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキルスルホネート、または(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルスルホネートである。具体的な脱離基としては、メシレート、トルエンスルホネート、イソプロピルスルホネート、フェニルスルホネートまたはベンジルスルホネートが挙げられる。
【0017】
具体例は、下記式
【化10】


を有する。
【0018】
本発明のさらなる化合物は、本明細書に記載される。
【0019】
本発明は、ER−804028およびエリブリンなどのハリコンドリンBの類似体、または医薬的に許容されるその塩、例えばエリブリンメシレートの製造における、本発明の化合物、例えば化合物E−AMの使用をさらに特徴とする。
【0020】
一態様では、本発明は、ER−804028を合成する方法であって、
(i)式(I)
【化11】


を有する化合物を、式(IV)
【化12】


を有する化合物[式中、YおよびYは各々独立してHまたはヒドロキシル保護基である]とNozaki−Hiyama−Kishi(NHK)カップリング条件下で反応させて式(II)
【化13】


の化合物を生成するステップと、
(ii)ステップ(i)の生成物をVasella断片化条件(Vasella fragmentation condition)下で反応させて式(III)
【化14】


の化合物を生成するステップと、
(iii)ステップ(ii)の生成物を分子内Williamsonエーテル化のための条件下で反応させてER−804028
【化15】


を生成するステップと
によって、ER−804028を合成する方法を特徴とする。
【0021】
別の態様では、本発明は、エリブリンまたは医薬的に許容されるその塩を合成する方法であって、
(i)式(I)
【化16】


を有する化合物を、式(IV)
【化17】


を有する化合物[式中、YおよびYは各々独立してHまたはヒドロキシル保護基である]とNHKカップリング条件下で反応させて式(II)
【化18】


の化合物を生成するステップと、
(ii)ステップ(i)の生成物をVasella断片化条件下で反応させて式(III)
【化19】


の化合物を生成するステップと、
(iii)ステップ(ii)の生成物を分子内Williamsonエーテル化のための条件下で反応させてER−804028
【化20】


を生成するステップと、
(iv)ER−804028をER−803896
【化21】


とER−804029
【化22】


の生成条件下で反応させるステップと、
(v)ER−804029をエリブリンまたは医薬的に許容されるその塩の生成条件下で反応させるステップと
によって、エリブリンまたは医薬的に許容されるその塩を合成する方法を特徴とする。本方法は、エリブリンを塩化して医薬的に許容されるその塩(例えば、エリブリンメシレート)を生成するステップを含むことができる。さらなる中間体および反応条件は、本明細書に記載される。
【0022】
本発明の化合物には、不斉またはキラル中心が存在する。特に明記しない限り、本発明は、化合物の様々な立体異性体およびその混合物を含む。当該分野で周知であるように、本発明の化合物の個々の立体異性体は、不斉またはキラル中心を含む市販の出発物質から合成的に調製されるか、化合物の混合物の調製とその後の分割とによって調製される。これらの分割方法は、キラルクロマトグラフィーカラムでのジアステレオマー混合物の直接分離、またはキラルHPLC法が例である。キラル分離の方法は、以前に記載されている(G.B. Cox(編)Preparative Enantioselective Chromatography、2005、Blackwell Publishingにおいて)。あるいは、キラル化合物は、1つのジアステレオマーの調製を別のものよりも有利にする不斉合成によって調製されてもよい。本発明の化合物において幾何異性体が存在する場合もある。本発明は、ZまたはE立体配置の異性体などの、炭素−炭素二重結合の周囲の置換基の配置から生じる様々な幾何異性体およびその混合物を含む。互変異性型が可能である構造については、特に明記しない限り、1つの互変異性型の記載は両方の記載に等しいことも認識される。特定の実施形態では、本発明の化合物のジアステレオマーは、他のジアステレオマーと比較して、10:1、20:1、30:1、50:1、またはより高い比で混合物中に存在する。
【0023】
本発明で有用な化合物は、同位体標識化合物であってよい。有用な同位体としては、水素、炭素、窒素および酸素(例えば、H、H、13C、14C、15N、18Oおよび17O)が挙げられる。同位体標識化合物は、非同位体標識試薬の代わりに容易に入手できる同位体標識試薬を用いて化合物を合成することによって調製することができる。
【0024】
下記化学的定義のいずれについても、原子記号に続く数字は、特定の化学部分に存在するその元素の全原子数を示す。理解されるように、原子の原子価を満たすために、他の原子、例えば水素原子または本明細書に記載される置換基が必要に応じて存在してよい。例えば、非置換のC2アルキル基は、式−CHCHを有する。本明細書で定義される基で用いられる場合、炭素原子数への言及は、アセタールおよびケタール基の二価炭素を含むが、アシル、エステル、カーボネートまたはカルバメート基のカルボニル炭素を含まない。ヘテロアリール基の酸素、窒素または硫黄原子の数への言及は、複素環の一部を形成する原子を含むだけである。
【0025】
「アセタール」は、>CHR(または−CHR−)を意味し、式中、RはH、アルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルである。
【0026】
「アシル」は、−C(O)Rを意味し、式中、RはH、アルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルである。例示的なアシル基では、Rは、H、C1〜C12アルキル(例えば、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7、C3〜C12およびC3〜C6アルキル)、C2〜C12アルケニル(例えば、C2〜C8、C2〜C6、C2〜C4、C3〜C12およびC3〜C6アルケニル)、C6〜C20アリール(例えば、C6〜C15、C6〜C10、C8〜C20およびC8〜C15アリール)、単環式C1〜C6ヘテロアリール(例えば、単環式C1〜C4およびC2〜C6ヘテロアリール)、C4〜C19ヘテロアリール(例えば、C4〜C10ヘテロアリール)、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルまたは(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルである。本明細書で定義されるように、アシル基に存在するいかなるヘテロアリール基も、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する。
【0027】
「アルキル」は、特に明記しない限り、1〜12個の炭素の直鎖または分枝鎖の飽和環式(すなわち、シクロアルキル)または非環式の炭化水素基を意味する。例示的なアルキル基には、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7、C3〜C12およびC3〜C6アルキルが含まれる。具体例としては、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、2−メチル−1−プロピル、1−ブチル、2−ブチルなどが挙げられる。特に明記しない限り、本明細書でいかなる文脈で用いられるアルキル基も、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、オキソ、アルキルチオ、アルキレンジチオ、アルキルアミノ、[アルケニル]アルキルアミノ、[アリール]アルキルアミノ、[アリールアルキル]アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シリル、スルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシルまたはアジドによって必要により置換される。
【0028】
「アルキルアミノ」は−NHRを意味し、式中、Rはアルキルである。「[アルケニル]アルキルアミノ」は−NRR’を意味し、式中、Rはアルキルであり、R’はアルケニルである。「[アリール]アルキルアミノ」は−NRR’を意味し、式中、Rはアルキルであり、R’はアリールである。「[アリールアルキル]アルキルアミノ」は−NRR’を意味し、式中、Rはアルキルであり、R’はアリールアルキルである。「ジアルキルアミノ」は−NRを意味し、式中、各Rは独立して選択されるアルキルである。
【0029】
「アルキレン」は二価のアルキル基を意味する。本明細書でいかなる文脈で用いられるアルキレン基も、アルキル基と同様に必要により置換される。例えば、C1アルキレン基は−CH−である。
【0030】
「アルキレンジチオ」は−S−アルキレン−S−を意味する。
【0031】
「アルキルチオ」は−SRを意味し、式中、Rはアルキルである。
【0032】
「アルケニル」は、特に明記しない限り、2〜12個の炭素の、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含む、直鎖または分枝鎖の環式または非環式の炭化水素基を意味する。例示的なアルケニル基としては、C2〜C8、C2〜C7、C2〜C6、C2〜C4、C3〜C12およびC3〜C6アルケニルが挙げられる。具体例としては、エテニル(すなわち、ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル(すなわち、アリル)、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル(すなわち、クロチル)などが挙げられる。本明細書でいかなる文脈で用いられるアルケニル基も、アルキル基と同様に必要により置換される。本明細書でいかなる文脈で用いられるアルケニル基も、アリール基で置換されてよい。
【0033】
「アルコキシ」は−ORを意味し、式中、Rはアルキルである。
【0034】
「アリール」は、1つ以上の芳香環を有する単環または多環の環系を意味し、ここで、上記環系は炭素環式であるか複素環式である。複素環式のアリール基は、ヘテロアリール基とも呼ばれる。ヘテロアリール基は、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個の原子を含む。例示的な炭素環式のアリール基としては、C6〜C20、C6〜C15、C6〜C10、C8〜C20およびC8〜C15アリールが挙げられる。好ましいアリール基は、C6〜10アリール基である。炭素環式アリール基の具体例としては、フェニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェナントリル、アントラシルおよびフルオレニルが挙げられる。例示的なヘテロアリール基には、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子ならびに1〜6個の炭素(例えば、C1〜C6、C1〜C4およびC2〜C6)を有する単環式環が含まれる。単環式ヘテロアリール基は、好ましくは5〜9個の環メンバーを含む。他のヘテロアリール基は、好ましくは4〜19個の炭素原子(例えば、C4〜C10)を含む。ヘテロアリール基の具体例としては、ピリジニル、キノリニル、ジヒドロキノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ジヒドロキナゾリルおよびテトラヒドロキナゾリルが挙げられる。特に明記しない限り、本明細書でいかなる文脈で用いられるアリール基も、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、オキソ、アルキルチオ、アルキレンジチオ、アルキルアミノ、[アルケニル]アルキルアミノ、[アリール]アルキルアミノ、[アリールアルキル]アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シリル、スルホニル、シアノ、ニトロ、カルボキシルまたはアジドによって必要により置換される。
【0035】
「アリールアルキル」は−R’R’’を意味し、式中、R’はアルキレンであり、R’’はアリールである。
【0036】
「アリールアルキルオキシ」は−ORを意味し、式中、Rはアリールアルキルである。
【0037】
「アリールオキシ」は−ORを意味し、式中、Rはアリールである。
【0038】
「カルバメート」は−OC(O)NRを意味し、式中、各Rは独立してH、アルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルである。
【0039】
「カーボネート」は−OC(O)ORを意味し、式中、Rはアルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルである。
【0040】
「カルボキシル」は、遊離酸、イオン化または塩の形の−C(O)OHを意味する。
【0041】
「環状ボロネート」は−OBRO−を意味し、式中、Rはアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルコキシまたは2,6−ジアセトアミドフェニルである。
【0042】
「環状カーボネート」は−OC(O)O−を意味する。
【0043】
「環状シリレン」は−OSiRO−を意味し、式中、各Rは独立してアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキルまたはアルコキシである。「ジアルキルシリレン」は環状シリレンを意味し、式中、各Rはアルキルである。
【0044】
「エステル」は−OC(O)Rを意味し、式中、−C(O)Rは、下で定義されるように保護されたヒドロキシルの酸素原子に結合している、本明細書で定義されるアシル基である。
【0045】
「エーテル」は−ORを意味し、式中、Rはアルキル、アルケニル、アリールアルキル、シリルまたは2−テトラヒドロピラニルである。
【0046】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0047】
「ケタール」は>CR(または−CR−)を意味し、式中、各Rは独立してアルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルであるか、両方のR基は、一緒になって、アルキレンである。
【0048】
「オキソ」または(O)は=Oを意味する。
【0049】
「シリル」は−SiRを意味し、式中、Rは独立してアルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルである。シリル基の例としては、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、および(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルが挙げられる。シリル基が2つ以上のアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリールまたはアリールアルキル基を含む場合、これらの基は独立して選択されることが理解されよう。本明細書で定義されるように、シリル基に存在するいかなるヘテロアリール基も、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する。
【0050】
「スルホネート」は−OS(O)Rを意味し、式中、Rはアルキル、アルケニル、アリールまたはアリールアルキルである。例示的なスルホネートでは、Rは、C1〜C12アルキル(例えば、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7、C3〜C12およびC3〜C6アルキル)、C2〜C12アルケニル(例えば、C2〜C8、C2〜C6、C2〜C4、C3〜C12およびC3〜C6アルケニル)、炭素環式C6〜C20アリール(例えば、C6〜C15、C6〜C10、C8〜C20およびC8〜C15アリール)、単環式C1〜C6ヘテロアリール(例えば、C1〜C4およびC2〜C6ヘテロアリール)、C4〜C19ヘテロアリール(例えば、C4〜C10ヘテロアリール)、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキル、(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキル、または(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルである。本明細書で定義されるように、スルホネート基に存在するいかなるヘテロアリール基も、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する。
【0051】
「スルホニル」は−S(O)Rを意味し、式中、Rはアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキルまたはシリルである。スルホニルのための好ましいR基は、スルホネートのための上記のものと同じである。
【0052】
「ヒドロキシル保護基」は、それが結合する酸素原子を反応または結合することから保護することが可能ないかなる基も意味する。ヒドロキシル保護基は、例えば、Wuts, Greene's Protective Groups in Organic Synthesis、Wiley-Interscience、第4版、2006に記載されているように、当該分野で公知である。例示的な保護基(それらが結合する酸素原子と一緒の)は、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートおよびエーテルから独立して選択される。
【0053】
例示的なエステルヒドロキシル保護基では、アシル基のRは、C1〜C12アルキル(例えば、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7、C3〜C12およびC3〜C6アルキル)、C2〜C12アルケニル(例えば、C2〜C8、C2〜C6、C2〜C4、C3〜C12およびC3〜C6アルケニル)、炭素環式C6〜C20アリール(例えば、C6〜C15、C6〜C10、C8〜C20およびC8〜C15アリール)、単環式C1〜C6ヘテロアリール(例えば、C1〜C4およびC2〜C6ヘテロアリール)、C4〜C19ヘテロアリール(例えば、C4〜C10ヘテロアリール)、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキル、(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキル、または(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルである。エステルで用いるためのアシル基の具体例としては、ホルミル、ベンゾイルホルミル、アセチル(例えば、非置換、またはクロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、トリフェニルメトキシアセチルおよびp−クロロフェノキシアセチル)、3−フェニルプロピオニル、4−オキソペンタノイル、4,4−(エチレンジチオ)ペンタノイル、ピバロイル(Piv)、ビニルピバロイル、クロトノイル、4−メトキシ−クロトノイル、ナフトイル(例えば、1−または2−ナフトイル)、ならびにベンゾイル(例えば、非置換または置換、例えばp−メトキシベンゾイル、フタロイル(トリエチルアミンおよびカリウムなどの塩を含む)、p−ブロモベンゾイルおよび2,4,6−トリメチルベンゾイル)が挙げられる。本明細書で定義されるように、エステル基に存在するいかなるヘテロアリール基も、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する。
【0054】
例示的なカーボネートヒドロキシル保護基では、Rは、C1〜C12アルキル(例えば、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7、C3〜C12およびC3〜C6アルキル)、C2〜C12アルケニル(例えば、C2〜C8、C2〜C6、C2〜C4、C3〜C12およびC3〜C6アルケニル)、炭素環式C6〜C20アリール(例えば、C6〜C15、C6〜C10、C8〜C20およびC8〜C15アリール)、単環式C1〜C6ヘテロアリール(例えば、C1〜C4およびC2〜C6ヘテロアリール)、C4〜C19ヘテロアリール(例えば、C4〜C10ヘテロアリール)、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキル、(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキル、または(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルである。具体例としては、メチル、9−フルオレニルメチル、エチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(フェニルスルホニル)エチル、ビニル、アリル、t−ブチル、p−ニトロベンジルおよびベンジルカーボネートが挙げられる。本明細書で定義されるように、カーボネート基に存在するいかなるヘテロアリール基も、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する。
【0055】
例示的なカルバメートヒドロキシル保護基では、各Rは、独立してH、C1〜C12アルキル(例えば、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7、C3〜C12およびC3〜C6アルキル)、C2〜C12アルケニル(例えば、C2〜C8、C2〜C6、C2〜C4、C3〜C12およびC3〜C6アルケニル)、炭素環式C6〜C20アリール(例えば、C6〜C15、C6〜C10、C8〜C20およびC8〜C15アリール)、単環式C1〜C6ヘテロアリール(例えば、C1〜C4およびC2〜C6ヘテロアリール)、C4〜C19ヘテロアリール(例えば、C4〜C10ヘテロアリール)、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキル、(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキル、または(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルである。具体例としては、N−フェニルおよびN−メチル−N−(o−ニトロフェニル)カルバメートが挙げられる。本明細書で定義されるように、カルバメート基に存在するいかなるヘテロアリール基も、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する。
【0056】
例示的なエーテルヒドロキシル保護基としては、C1〜C12アルキルエーテル(例えば、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7、C3〜C12およびC3〜C6アルキル)、C2〜C12アルケニルエーテル(例えば、C2〜C8、C2〜C6、C2〜C4、C3〜C12およびC3〜C6アルケニル)、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキルエーテル、(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルエーテル、(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルエーテル、(C1〜C6)アルコキシ(C1〜C6)アルキルエーテル、(C1〜C6)アルキルチオ(C1〜C6)アルキルエーテル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルコキシ(C1〜C6)アルキルエーテル、ならびにシリルエーテル(例えば、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、および(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリル)が挙げられる。アルキルエーテルの具体例としては、メチルおよびt−ブチルが挙げられ、アルケニルエーテルの例はアリルである。アルコキシアルキルエーテルおよびアルキルチオアルキルエーテルの例としては、メトキシメチル、メチルチオメチル、(2−メトキシエトキシ)メチルおよびβ−(トリメチルシリル)エトキシメチルが挙げられる。アリールアルキルエーテルの例としては、ベンジル、p−メトキシベンジル(MPM)、3,4−ジメトキシベンジル、トリフェニルメチル(トリチル)、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、ナフチルメチルならびに2−および4−ピコリルエーテルが挙げられる。シリルエーテルの具体例としては、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t−ブチルジメチルシリル(TBS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)およびトリフェニルシリル(TPS)エーテルが挙げられる。アリールアルキルオキシアルキルエーテルの例は、ベンジルオキシメチルエーテルである。本明細書で定義されるように、エーテル基に存在するいかなるヘテロアリール基も、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する。
【0057】
隣接したヒドロキシル基は、アセタール(例えば、C1〜C6アルキル)、ケタール(例えば、C2〜C6アルキルまたはC3〜C6シクロアルキル)、環状シリレン、環状カーボネートおよび環状ボロネートなどのジオール保護基で保護することができる。アセタールおよびケタール基の例としては、メチレン、エチリデン、ベンジリデン、イソプロピリデン、シクロヘキシリデンおよびシクロペンチリデンが挙げられる。環状シリレンの例は、ジ−t−ブチルシリレンである。別のジオール保護基は、1,1,3,3−テトライソプロピルシロキサンジイルである。環状ボロネートの例としては、メチル、エチル、フェニルおよび2,6−ジアセトアミドフェニルボロネートが挙げられる。
【0058】
当該分野で公知であるように、保護基は置換されていてもよい;例えば、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはピリジニルなどのアリールおよびアリールアルキル基は、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシルまたはハロゲンで置換することができる。メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、t−ブチル、n−ブチルおよびs−ブチルなどのアルキル基、ならびにビニルおよびアリルなどのアルケニル基も、オキソ、アリールスルホニル、ハロゲンおよびトリアルキルシリル基で置換することができる。好ましい保護基は、TBSおよびPivである。当該分野で公知であるように、異なる条件下で直交性(orthogonal)の保護基は除去される。
【0059】
「脱離基」は、化学反応の間に置換される基を意味する。適切な脱離基は当該分野で周知であり、例えば、Advanced Organic Chemistry、March、第4版、351〜357頁、John Wiley and Sons、N.Y. (1992)を参照されたい。そのような脱離基としては、ハロゲン、C1〜C12アルコキシ(例えば、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7およびC3〜C6アルコキシ)、C1〜C12アルキルスルホネート(例えば、C1〜C8、C1〜C6、C1〜C4、C2〜C7、C3〜C12およびC3〜C6アルキルスルホネート)、C2〜C12アルケニルスルホネート(例えば、C2〜C8、C2〜C6、C2〜C4、C3〜C12およびC3〜C6アルケニルスルホネート)、炭素環式C6〜C20アリールスルホネート(例えば、C6〜C15、C6〜C10、C8〜C20およびC8〜C15アリールスルホネート)、C4〜C19ヘテロアリールスルホネート(例えば、C4〜C10ヘテロアリールスルホネート)、単環式C1〜C6ヘテロアリールスルホネート(例えば、C1〜C4およびC2〜C6ヘテロアリールスルホネート)、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキルスルホネート、(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルスルホネート、(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルスルホネートならびにジアゾニウムが挙げられる。アルキルスルホネート、アルケニルスルホネート、アリールスルホネート、ヘテロアリールスルホネート、アリールアルキルスルホネートおよびヘテロアリールアルキルスルホネートは、ハロゲン(例えば、クロロ、ヨード、ブロモまたはフルオロ)、アルコキシ(例えば、C1〜C6アルコキシ)、アリールオキシ(例えば、C6〜C15アリールオキシ、C4〜C19ヘテロアリールオキシおよびC1〜C6ヘテロアリールオキシ)、オキソ、アルキルチオ(例えば、C1〜C6アルキルチオ)、アルキレンジチオ(例えば、C1〜C6アルキレンジチオ)、アルキルアミノ(例えば、C1〜C6アルキルアミノ)、[アルケニル]アルキルアミノ(例えば、[(C2〜C6)アルケニル](C1〜C6)アルキルアミノ)、[アリール]アルキルアミノ(例えば、[(C6〜C10)アリール](C1〜C6)アルキルアミノ、[(C1〜C6)ヘテロアリール](C1〜C6)アルキルアミノおよび[(C4〜C19)ヘテロアリール](C1〜C6)アルキルアミノ)、[アリールアルキル]アルキルアミノ(例えば、[(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル](C1〜C6)アルキルアミノ、[(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキル](C1〜C6)アルキルアミノ、および[(C4〜C19)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキル](C1〜C6)アルキルアミノ)、ジアルキルアミノ(例えば、ジ(C1〜C6アルキル)アミノ)、シリル(例えば、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、および(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリル)、シアノ、ニトロまたはアジドによって必要により置換されてよい。アルケニルスルホネートは、炭素環式アリール(例えば、C6〜C15アリール)、単環式C1〜C6ヘテロアリールまたはC4〜C19ヘテロアリール(例えば、C4〜C10ヘテロアリール)によって必要により置換されてよい。アリールスルホネートは、アルキル(例えば、C1〜C6アルキル)またはアルケニル(例えばC2〜C6アルケニル)によって必要により置換されてよい。本明細書で定義されるように、脱離基に存在するいかなるヘテロアリール基も、O、NおよびSから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する。
【0060】
適切な脱離基の具体例としては、クロロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、メタンスルホネート(メシレート)、4−トルエンスルホネート(トシレート)、トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート、OTf)、ニトロ−フェニルスルホネート(ノシレート)およびブロモ−フェニルスルホネート(ブロシレート)が挙げられる。当該分野で公知であるように、脱離基はさらに置換されてもよい。
【0061】
「医薬的に許容される塩」は、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などがなく、ヒトおよび動物の組織と接触して用いるのに適し、かつ、理にかなった有益/リスク比に相応する健全な医学判断の範囲内の塩を意味する。医薬的に許容される塩は当該分野で周知である。例えば、医薬的に許容される塩は、以下に記載される:Bergeら、J. Pharmaceutical Sciences 66巻:1〜19頁、1977およびPharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use(P.H. StahlおよびC.G. Wermuth編)、Wiley-VCH、2008。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、硫酸水素塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。好ましい塩は、メシレート塩である。
【0062】
本発明の他の特徴および利点は、以下の記載および特許請求の範囲から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0063】
発明の詳細な説明
本発明は、ハリコンドリンB類似体の合成における化合物およびそれらの使用方法を提供する。特に、それらの化合物はハリコンドリンB類似体のC14〜C35部分(portion)の合成のために有用である。ER−804028は、エリブリンの合成で使用されてきたC14〜C35断片である:
【化23】

【0064】
ハリコンドリンB類似体、例えば、エリブリンまたは医薬的に許容されるその塩は、米国特許第6,214,865号および国際公開第2005/118565号に記載のようにC14〜C35断片から合成することができる。これらの参考文献に記載される1つの例では、分子のC14〜C35部分、例えばER−804028をC1〜C13部分、例えばER−803896にカップリングさせてER−804029を生成し、さらなる反応を実行してエリブリンを生成する(スキーム1):
【化24】

【0065】
C14〜C35スルホン断片のリチオ化、その後のC1〜C13アルデヒド断片とのカップリングによって、ジアステレオマーアルコールの混合物が提供される(ER−804029)。さらなる保護基操作および酸化、その後のスルホニル基の除去および分子内Nozaki−Hiyama−Kishi(NHK)反応は、中間体をもたらし、それは、フッ化テトラブチルアンモニウムで酸化して処理されると、分子内オキシ−Michael閉環を受ける。ピリジニウムp−トルエンスルホネートが媒介するケタール形成および末端アルコールのアミンへの変換によって、エリブリンが提供される。
【0066】
例えば、WO2005/118565(実施例6)に記載されているように、ER−804029:
【化25】


を反応、例えば酸化させて、ER−804030
【化26】


を生成し、ER−804030を反応、例えば脱スルホニル化させてER−118049
【化27】


を生成し、ER−118049を、例えばカップリング条件下で反応させて混合物ER−118047/118048
【化28】


を生成し、この混合物ER−118047/118048を反応、例えば酸化させてER−118046
【化29】


を生成し、ER−118046を反応させてER−811475
【化30】


を生成し、ER−811475を反応させてER−076349
【化31】


を生成し、そして、例えば一級ヒドロキシル基をアミンに変換することによってER−076349を反応させてエリブリンを生成する。
【0067】
エリブリンの医薬的に許容される塩(例えば、エリブリンメシレート)は、当該分野で公知の方法によって、例えば、化合物の最終的な単離および精製の間にin situで、または遊離の塩基の基を適切な有機酸と反応させることによって別々に形成することができる。一例では、エリブリンは、水およびアセトニトリル中のMsOHおよびNHOHの溶液で処理される。混合液を濃縮する。残留物をDCM−ペンタンに溶解し、その溶液を無水ペンタンに加える。スキーム2に示すように、生じる沈殿物を濾過し、高真空下で乾燥させてエリブリンメシレートを提供する。
【化32】

【0068】
C14〜C35断片の1つの例(ER−804028)を生成するためのスキームは、以下の通りである(スキーム3)。
【化33】

【化34】


一般に、国際公開第2009/046308号および国際公開第2005/118565号に記載されるように、(−)−キナ酸はステージ1〜13を通して化合物Aに変換される。スキーム3で概説されるように、酸化、その後の得られたラクトールのHorner−Wadsworth−Emmons(HWE)反応、水素化および保護基の改変によって、化合物EおよびFが提供される。Blaise反応、その後のメチルケトン形成、脱水、エノール化、トリフル化(triflation)、脱シリルおよびヨウ素化は、ヨード−ビニルトリフレート、化合物Oを生成する。化合物OとER−806067とのNHKカップリングは、化合物Pを提供する。アセチル化、その後のVasella断片化、分子内Williamsonエーテル化および保護基の改変によって、C14〜C35断片ER−804028がもたらされる。このスキームは、それがC27で向上した立体選択性、すなわち前の方法において13:1のdrと比較して67:1のdrをもたらすので有利である。このスキームは、このスキームのNHKカップリングのC14〜C26出発物質およびC14〜C35生成物が、前の方法の出発物質および生成物より大きな安定性を示すのでさらに有利である。NHKカップリングのC14〜C26出発物質およびC14〜C35生成物は室温で無期限に安定であり、このことが柔軟な製造スケジュールを可能にする。
【0069】
当業者は、上記のスキームのバリエーションが可能であることも理解するであろう。例えば、特定の反応で使用されるヒドロキシル保護基は変更されてもよい。他のバリエーションでは、使用される脱離基は変えてもよい。例えば、トリフレート基は、ヨウ素または臭素などのハロゲンで置換することができる。
【0070】
さらに、スキームは炭素C14〜C16を有する化合物C以下を表すが、炭素C14およびC15の付加に至る反応は、ER−804028の合成の前のいかなる点で起こってもよい。炭素C14およびC15を加えるための合成ステップは、WO2009/046308に開示されている。具体例では、化合物Aまたは化合物Bはスキーム4に示すように変更することができ、生成物AGおよびAHでスキーム3の化合物EまたはFを置換してよい。
【化35】

【0071】
合成スキームに従って、本発明は下記式
【化36】


を有する化合物(例えば、化合物O、化合物AIおよび化合物AJ)を提供し、
式中、Xはハロゲンまたはオキソであり;Zは、脱離基であり;Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、−C(R)H(CHOYまたは−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;そして、nは1または2である。YおよびYの両方が存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。さらに、YおよびYが隣接した炭素の上にある場合、例えばn=1の場合、それらは二価のヒドロキシル保護基を一緒に形成することができる。この式の化合物には、下記式
【化37】


を有するものが含まれ、式中、YはH、ピバロイル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、p−メトキシベンゾイル、またはo−フタロイルである(トリエチルアミンおよびカリウムなどの塩が含まれる)。
【0072】
本発明は、下記式
【化38】


を有する化合物(例えば、化合物P、化合物AD、化合物AF、化合物AK、化合物ALおよび化合物AM)も提供し、
式中、Xはハロゲンまたはオキソであり;Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、−C(R)H(CHOYまたは−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;nは、1または2であり;Y、Y、YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;Tは、オキソまたは−OYであり;そして、YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいは、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基である。特定の実施形態では、YおよびYは、一緒になって、二価のヒドロキシル保護基である。他の実施形態では、Y、YおよびYは保護基であり、YはYおよびYに直交性(orthogonal)である。さらなる実施形態では、Y、Y、YおよびYは保護基であり;YおよびYは、YおよびYに直交性であり;そして、YはYに直交性である。この式の化合物には、下記式
【化39】


を有するものが含まれ、式中、YおよびYは以下の通りである:
【表2】

【0073】
本発明は、下記式
【化40】


を有する化合物(例えば、化合物AE)も特徴とし、
式中、Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、−C(R)H(CHOY、または−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;nは、1または2であり;Y、Y、YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;Uは、ハロゲンまたは−OYであり;YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいは、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基であり;そして、YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいは、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基であり、但し、Qが−C(R)H(CHOY(例えば、−(CHOY)であり、Uが−OYであって、−OYが脱離基であり、かつY、YおよびYが保護基である場合、YはHでない。特定の実施形態では、YおよびYは、一緒になって、二価のヒドロキシル保護基である。他の実施形態では、Y、YおよびYは保護基であり、YはYおよびYに直交性である。さらなる実施形態では、Y、Y、YおよびYは保護基であり;YおよびYは、YおよびYに直交性であり;そして、YはYに直交性である。
【0074】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、ER−804028、同様に、エリブリンまたは医薬的に許容されるその塩、例えばエリブリンメシレートの合成において用いることができる。
【実施例】
【0075】
実験の手順
化合物D
(−)−キナ酸からの化合物Dの合成は、WO2009/046308に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
化合物E
【化41】


化合物D(3.05g、9.80ミリモル、1等量)を22℃でDMF(6.1ml)に溶解し、イミダゾール(1.00g、14.7ミリモル、1.5等量)を加えた。イミダゾールが完全に溶解した後、混合液を0℃に冷却し、TBSCl(1.55g、10.3ミリモル、1.05等量)を加えた。混合液を0℃で1時間撹拌し、室温まで温め、さらに1時間撹拌した。反応混合液をMTBE(37ml)で希釈し、水(30ml)で洗浄した。有機層を分離し、水(9.2ml)でさらに洗浄し、濃縮して化合物S
【化42】


が無色の油状物(残留溶媒と4.43g、理論上100%の収率を仮定)として得られた。粗生成物は、精製なしで次の反応のために用いた。
【数1】

【0077】
化合物S(4.2g、9.8ミリモル、1等量)をTHF(21ml)に溶解し、0℃に冷却した。LiBH(THF中2.0Mの溶液、12.2ml、24.5ミリモル、2.5等量)を加え、混合液を20℃まで温めた。撹拌は、20〜23℃で一晩継続させた(16時間)。別の反応器に20重量%のクエン酸(水溶液、25g、26ミリモル、2.6等量)およびMTBE(40ml)をチャージし、混合液は0℃に冷却した。T内部(T-internal)を<10℃に保ちながら、予冷クエン酸MTBEに反応混合液を慎重に/ゆっくりと注いだ。完全に添加した後、混合液を0〜5℃で30分間撹拌した。有機層を分離し、1)飽和NaHCO(12g)および2)20重量%のNaCl(12g)で順番に洗浄し、濃縮して粗化合物T
【化43】


が無色の油状物(3.32g、8.3ミリモル、2ステップで85%の収率)として得られた。
【数2】


【0078】
化合物T(2.30g、5.78ミリモル、1等量)をCHCl(12ml)に溶解した。TEA(1.6ml、12ミリモル、2.0等量)を加え、続いてDMAP(71mg、0.58ミリモル、0.10等量)を加えた。混合液を0℃に冷却し、塩化ピバロイル(0.747ml、6.07ミリモル、1.05等量)を加えた。混合液を0℃まで温め、さらに2時間20〜22℃で撹拌を継続した。反応混合液をMTBE(23ml)で希釈し、1)20重量%クエン酸(水溶液、12g、12ミリモル、2.1等量)および2)飽和NaHCO(水溶液、4.6g、5.5ミリモル、0.95等量)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物が淡黄色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)40M(ヘプタン−MTBE 7:3v/v)によって精製して、化合物Eが淡黄色の油状物(2.79g、5.04ミリモル、87%収率)として得られた。
【数3】


【0079】
化合物G
【化44】


亜鉛粉(876mg、13.4ミリモル、10.0等量)をTHF(3.9ml)に懸濁した。MsOH(0.0087ml、0.13ミリモル、0.10等量)を加え、混合液を20分間還流状態で加熱した。THF(2.6ml+1.3ml)中の化合物E(0.645g、1.34ミリモル、1等量)およびブロモ酢酸ベンジル(0.315ml、2.01ミリモル、1.50等量)の混合液を、還流下で加えた。2時間後、ブロモ酢酸ベンジル(0.10ml、0.67ミリモル、0.50等量)を加え、さらに3時間(全体で5時間)加熱を継続した。冷却した後、反応混合液をMTBE(10ml)で希釈し、5℃に冷却した。20重量%クエン酸(水溶液、3.2g、3.4ミリモル、2.5等量)を加え、5〜10℃で激しい撹拌を10分間継続した。セライトのパッド(1.3g)を通して、全混合液を濾過した。有機層を分離し、脇に置いた。水層は、MTBE(10ml)で抽出した。すべての有機層を合わせ、1)飽和NaHCO(水溶液、3.2g)および2)20重量%NaCl(水溶液、3.2g)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物が黄色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 3:1&3:2v/v)によって精製して、化合物Gが淡黄色の油状物(0.627g、0.992ミリモル、74%収率)として得られた。
【数4】


【0080】
化合物L
【化45】


化合物G(0.596g、0.943ミリモル、1等量)をTHF(3.0ml)−水(1.0ml)に溶解して、10℃に冷却した。AcOH(2.0ml、35ミリモル、37等量)を加え、混合液を室温まで温めた。10時間後、反応混合液をNaHCO(4.8g、57ミリモル、60等量)、水(6ml)およびMTBE(20ml)の予冷(0℃)混合液に注いだ。有機層を分離し、水(6ml)で洗浄し、濃縮して粗生成物が得られた。粗原料をトルエン(20ml)と共沸させ、Biotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−EtOAc 9:1v/v)によって精製して化合物U
【化46】


が無色の油状物(0.493g、0.779ミリモル、82%収率)として得られた。
【0081】
不活性のフラスコに10重量%Pd−C(含水型、15mg、0.014ミリモル、0.050等量)をチャージした。EtOAc(3.6ml)中の化合物Uの溶液(0.182g、0.288ミリモル、1等量)を、Nの下で加えた。内部環境をHで置換し、室温で撹拌を2時間継続した。セライトのパッド(1.0g)を通して、混合液を濾過した。反応器および濾過ケーキを、EtOAc(3.6ml)でリンスした。濾液を濃縮して、粗ケト酸化合物Jが無色のフィルムとして得られた。粗化合物Jの一部(10%)を、分析および安定性試験のために確保した。化合物Jの残りの部分(90%)を、トルエン(3.0ml)に溶解した。混合液を95℃で15分間加熱し、次に濃縮して粗生成物が淡黄色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)12M(ヘプタン−EtOAc 95:5v/v)によって精製して、化合物L(110mg、0.220ミリモル、85%の調整収率)が無色の油状物として得られた。
【数5】


【0082】
化合物W
【化47】


化合物L(109mg、0.218ミリモル、1等量)をTHF(1.1ml)に溶解し、PhNTf(117mg、0.328ミリモル、1.50等量)を加えた。PhNTfの完全な溶解の後、混合液を−30℃に冷却した。0.5MのKHMDS(トルエン溶液、0.590ml、0.295ミリモル、1.35等量)を加え、その間はT内部を<−25℃に維持した。添加の完了後、−25℃で撹拌を1時間継続した。T内部を<−20℃に維持しながら、20重量%のNHCl(水溶液、0.33g、12ミリモル、5.6等量)を加え、得られた混合液を0℃まで温めた。混合液を水(0.33g)およびMTBE(2.2ml)で希釈し、次に5分間さらに撹拌した。有機層を分離し、飽和NaHCO(水溶液、0.54g)で洗浄し、濃縮して粗化合物V
【化48】


が得られた。
【0083】
化合物VをMeOH(1.0ml)に溶解し、6MのHCl(2−プロパノール中の溶液、0.25ml、2ミリモル、7等量)で20℃で処理した。1時間後、反応混合液を0℃まで冷却し、飽和NaHCO(1.6g)で中和し、MTBE(6ml)で抽出した。有機層を分離し、20重量%のNaCl(0.54g)で洗浄し、濃縮して粗生成物が淡黄色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)12M(ヘプタン−MTBE 1:1&3:7v/v)で精製して、化合物W(94.1mg、0.182ミリモル、83%収率)が無色の油状物として得られた。
【数6】

【0084】
化合物O
【化49】


化合物W(90.0mg、0.174ミリモル、1等量)をCHClに溶解し、−10℃まで冷却した。ピリジン(0.042ml、0.52ミリモル、3.0等量)を加え、続いてTfO(0.044ml、0.26ミリモル、1.5等量)を加えた(T内部<−3℃)。−5〜0℃で1時間撹拌した後に、DMF(0.45ml)を加え、続いてNaI(78mg、0.52ミリモル、3.0等量)を加えた。撹拌を20〜22℃で3時間継続し、次に、反応混合液をMTBE(2.0ml)および水(2.0ml)の予冷(0℃)混合液に注いだ。有機層を分離し、脇に置いた。水層をMTBE(2.0ml)で抽出した。すべての有機層を合わせ、水(0.4ml)および10重量%のNaSO(0.9g)の混合液で洗浄し、濃縮して粗生成物が黄色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)12M(ヘプタン−MTBE 85:15v/v)によって精製して、化合物O(95.6mg、0.153ミリモル、化合物Wから87%の収率)が無色の油状物として得られた。
【数7】

【0085】
化合物P
【化50】


ER−807363
【化51】


のTHF(34.2ml)中の溶液(4.10g、13.8ミリモル、3.55等量;WO2005/118565)をNで1時間パージし、CrCl(1.70g、13.8ミリモル、3.55等量)をNの下で加えた。混合液を35℃まで加熱し、T内部を<38℃に維持しながらTEA(1.93ml、13.8ミリモル、3.55等量)を加えた。混合液を30〜35℃で1時間加熱し、0℃に冷却した。NiCl(75.7mg、0.15等量)を加え、混合液をNで3分間パージした。化合物O(2.44g、3.89ミリモル、1等量)およびER−806067
【化52】


(2.57g、4.28ミリモル、1.10等量;WO2005/118565)の、THF(17ml)中の予め脱ガスした混合液を加えた。反応体を30分間にわたって22℃まで温め、22〜24℃で撹拌を20時間継続した。反応混合液を0℃に冷却し、ヘプタン(70ml)で希釈した。T内部を<5℃に維持しながら、水(12ml)の中のエチレンジアミン(2.1ml、31ミリモル、8.0等量)の溶液を加えた。得られた混合液を0℃で1時間激しく撹拌し、セライトのパッド(2.4g、12mlのヘプタンでリンスした)を通して濾過した。有機層を分離し、水(12ml)で洗浄し、濃縮して緑色の固体油状物を得、それをヘプタン(20ml)に懸濁し、ER−807363の除去のために濾過し、再濃縮して粗生成物が得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 2:1&1:1)で精製して化合物P(2.64g、2.44ミリモル、62%収率;C27−dr 67:1)が薄黄色の油状物として得られた。
【数8】

【0086】
化合物AF
【化53】


化合物P(620mg、0.574ミリモル、1等量)をピリジン(1.2ml、15ミリモル、27等量)に溶解した。AcO(0.31ml、3.3ミリモル、5.7等量)を加え、続いてDMAP(7.0mg、0.057ミリモル、0.10等量)を加えた。20〜23℃で3時間撹拌した後に、反応混合液をトルエン(12ml)で希釈し、濃縮した。同じ操作をトルエン(12ml×2)で繰り返して粗生成物が得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 7:3v/v)で精製して、化合物AF(541mg、0.482ミリモル、84%収率)が無色の油状物として得られた。
【数9】

【0087】
化合物AE
【化54】


亜鉛粉末(1.54g、23.6ミリモル、50等量)を水(1.1ml)に懸濁させ、0℃に冷却した。AcOH(0.40ml、7.1ミリモル、15等量)を0℃で加えた。THF(2.7ml)中の化合物AF(530mg、0.473ミリモル、1等量)の溶液を0℃で加え、混合液を20℃まで温めた。3時間後、亜鉛粉末の除去のために反応混合液を濾過した。反応器をTHF(1.1ml)および水(1.1ml)の混合液でリンスした。濾液をMTBE(10.6ml)で希釈し、1)20重量%ロッシェル塩(水溶液、2.7g、4.0等量)、2)飽和NaHCO(6.0g)および3)20重量%NaCl(水溶液、2.6g)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物が無色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 1:1v/v)で精製して、化合物AE(393mg、0.394ミリモル、83%収率)が無色の油状物として得られた。
【数10】

【0088】
ER−804028
【化55】


化合物AE(280mg、0.281ミリモル、1等量)をCHClに溶解し、0℃まで冷却した。ピリジン(0.045ml、0.56ミリモル、2.0等量)を加え、続いてMsO(58.8mg、0.338ミリモル、1.20等量)を加えた。反応体を室温まで温め、撹拌をさらに1時間継続した。反応混合液を0℃に冷却し、MTBE(5.6ml)で希釈し、飽和NaHCO(0.84g)で洗浄し、濃縮して粗生成物が無色のフィルムとして得られた。粗原料をヘプタン(3ml×2)で共沸的に乾燥させ、THF(7.0ml)に再溶解した。混合液を0℃に冷却し、25重量%NaOMe(0.13ml)で処理した。10分間の後、反応体を室温まで温め、撹拌をさらに30分間継続した。混合液をさらに25重量%NaOMe(0.045ml)で処理し、撹拌をさらに20分間継続した。反応混合液をヘプタン(7.0ml)で希釈し、水(1.4ml)で洗浄した。有機層を分離し、1)20重量%NHCl(0.84g)および2)20重量%NaCl(3g)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物が褐色がかった油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)12M(ヘプタン−MTBE 2:3v/v)で精製して、ER−804028(209mg、0.245ミリモル、87%)が淡黄色の油状物として得られた。
【数11】

【0089】
化合物Wへの代替経路
化合物F
【化56】


化合物D(0.657g、2.11ミリモル、1等量)をDMF(1.3ml)に溶解し、0℃に冷却した。イミダゾール(0.287g、4.22ミリモル、2.00等量)を加え、続いてTBDPSCl(0.576ml、2.22ミリモル、1.05等量)を加えた。混合液を0〜5℃で1時間撹拌し、室温まで温めた。一晩(16時間)撹拌した後に、反応混合液を水(5.2ml)で希釈し、MTBE(5.2ml)で抽出した。有機層を分離し、脇に置いた。水層をMTBE(5.2ml)で抽出した。すべての有機層を合わせ、水(2.6ml)で洗浄し、濃縮して粗化合物X
【化57】


が淡黄色の油状物として得られた。化合物X(2.11ミリモルを仮定、1等量)をトルエン(4.6ml)に溶解し、−5℃に冷却した。T内部を<0℃に保ちながら、2.0MのLiBH(THF中の溶液、2.43ml、4.85ミリモル、2.30等量)を加えた。MeOH(0.196ml、4.85ミリモル、2.30等量)およびトルエン(0.80ml)の混合液を<0℃で加え、次に、反応体を20〜22℃に温めた。22時間の後、T内部を<10℃に維持しながら、反応混合液を20重量%クエン酸(水溶液、6.0g、6.2ミリモル、3.0等量)およびMTBE(20ml)の予冷(0℃)混合液に慎重に/ゆっくりと注いだ。有機層を分離し、1)飽和NaHCO(3.0g)および2)水(3.0g)で順番に洗浄し、濃縮して粗化合物Y
【化58】


が得られた。化合物Y(2.11ミリモルを仮定、1等量)を室温でCHCl(2.5ml)に溶解した。TEA(0.441ml、3.16ミリモル、1.50等量)を加え、続いてDMAP(26mg、0.21ミリモル、0.10等量)を加えた。混合液を0℃に冷却し、塩化ピバロイル(0.272ml、2.22ミリモル、1.05等量)で処理した。反応体を室温まで温め、撹拌を一晩(16時間)継続した。反応混合液をMTBE(10ml)で希釈し、1)20重量%クエン酸(水溶液、3.0g、1.5等量)および2)飽和NaHCO(水溶液、3.0g)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物がオレンジ色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 7:3v/v)によって精製して、化合物F(0.920g、1.52ミリモル、72%の全体収率)が無色の油状物として得られた。
【0090】
化合物M
【化59】


亜鉛粉(982mg、15.0ミリモル、10.0等量)をTHF(1.8ml)に懸濁し、MsOH(0.0097ml、0.15ミリモル、0.10等量)を加えた。得られた混合液を30分間還流状態で加熱し、次に20℃に冷却した。THF(4.6ml)中の化合物F(910mg、1.50ミリモル、1等量)およびt−ブチルブロモ酢酸(0.222ml、15.0ミリモル、1.00等量)の溶液を加え、混合液を還流状態で加熱した。2時間後、t−ブチルブロモ酢酸(0.222ml、1.50ミリモル、1.00等量)を加え、加熱を4時間継続した。t−ブチルブロモ酢酸(0.111ml、1.50ミリモル、0.50等量)を加え、加熱をさらに6時間継続した。冷却した後、反応混合液をMTBE(14ml)で希釈し、0℃に冷却した。20重量%クエン酸(水溶液、7.2g、7.5ミリモル、5.0等量)を<10℃で加え、激しい撹拌を10分間継続した。Znの除去のために、全二相混合液を濾過した。反応器およびZnをMTBE(9ml)でリンスした。有機層を分離し、1)飽和NaHCO(水溶液、3.8g)および2)20重量%NaCl(2.7g)で順番に洗浄し、濃縮して粗化合物Iが淡黄色の油状物として得られた。化合物I(1.50ミリモルを仮定、1等量)をTHF(2.5ml)−水(1.5ml)に懸濁し、室温においてAcOH(4.5ml、7.9ミリモル)で2時間処理した。反応混合液をトルエン(20ml)で希釈し、濃縮した。
同じ操作をトルエン(20ml×2)で繰り返して粗化合物Z
【化60】


が得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 4:1v/v)によって精製して、無色の油状物として化合物Z(1.062g、1.47ミリモル、97%の収率)が得られた。
【0091】
化合物Z(1.00g、1.38ミリモル、1等量)をCHCl(9.0ml)に溶解し、室温においてTFA(1.00ml、13.0ミリモル)で処理した。4時間後、反応混合液をトルエン(15ml)で希釈し、濃縮した。同じ操作をトルエン(15ml×2)で繰り返して粗化合物Kが得られた。化合物Kをトルエン(10ml)に溶解し、100℃で30分間加熱し、濃縮して粗化合物Mが得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 7:3v/v)によって精製して、化合物M(775mg、1.24ミリモル、90%の収率)が無色の油状物として得られた。
【0092】
化合物W
【化61】


化合物M(745mg、1.20ミリモル、1等量)をTHF(4.5ml)に溶解し、PhNTf(641mg、1.79ミリモル、1.50等量)を20℃で加えた。PhNTfが完全に溶解した後、混合液を−23℃に冷却した。T内部を<−18℃に維持しながら、0.5MのKHMDS(トルエン中の溶液、2.63ml、1.32ミリモル、1.10等量)を加え、混合液を−18〜−20℃で1時間撹拌した。激しい撹拌下、T内部を<−10℃に維持しながら、20重量%のNHCl(水溶液、0.32g)を加え、次に混合液を0℃まで温めた。混合液をMTBE(7.5ml)および水(0.74ml)で希釈し、激しい撹拌を5分間継続した。有機層を分離し、水(1.5ml)で洗浄し、濃縮して粗化合物AA
【化62】


が黄色の固体油状物として得られた。化合物AAをCHCN(9.0ml)に溶解し、室温において49重量%HF(水溶液、3.0g)で20時間処理した。T内部を<10℃に維持しながら、反応混合液をMTBE(40ml)、水(7.5ml)およびNaHCO(8.5g)の予冷(0℃)混合液に慎重に/ゆっくりと注いだ。有機層を分離し、脇に置いた。水層をMTBE(7.5ml)で抽出した。すべての有機層を合わせ、20重量%NaCl(水溶液、3.7g)で洗浄し、濃縮して粗化合物Wが黄色の固体油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 1:1&2:3v/v)で精製して、化合物W(522mg、1.01ミリモル、84%収率)が淡黄色の油状物として得られた。
【0093】
化合物Lへの代替経路
化合物H
【化63】


亜鉛(1.06g、16.2ミリモル、10等量)をTHF(2.3ml)に懸濁した。MsOH(0.010ml、0.02ミリモル、0.1等量)を室温で加え、得られたスラリーを還流状態で30分間加熱した。冷却後、THF(3.9ml)中の化合物X(780mg、1.62ミリモル、1等量)およびベンズヒドリルブロモ酢酸(0.74g、2.4ミリモル、1.5等量;Kumeら、Tetrahedron、1997、53巻、1635頁)の混合液を加え、反応体を加熱還流した。3時間の加熱の後、ベンズヒドリルブロモ酢酸(0.74g、2.4ミリモル、1.5等量)を加え、加熱をさらに7時間継続した。冷却後、混合液をMTBE(16ml)で希釈し、セライトのパッド(1.6g)を通して濾過した。濾液を1)20重量%クエン酸(水溶液、3.9g)、2)10重量%NaHCO(水溶液、3.9g)および3)20重量%NaCl(水溶液、2.3g)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物が黄色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)40M(ヘプタン−MTBE 1:1v/v)で精製して、化合物H(770mg、1.08ミリモル、67%収率)が淡黄色の油状物として得られた。
【0094】
化合物AB
【化64】


化合物H(770mg、1.08ミリモル、1等量)をTHF(0.77ml)に溶解し、0℃に冷却した。水(0.38ml)を加え、続いてAcOH(1.54ml)を加えた。混合液を室温まで温め、撹拌を8時間継続した。反応混合液をトルエン(15ml)で希釈し、濃縮した。残留物をさらにトルエン(15ml×2)で共沸させ、Biotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 2:1v/v)で精製して、化合物AB(716mg、1.01ミリモル、93%収率)が淡黄色の油状物として得られた。
【0095】
化合物L
【化65】


化合物AB(716mg、1.01ミリモル、1等量)を10重量%Pd−C(含水型、0.11g、0.050ミリモル、0.05等量)、H(バルーン)およびEtOAc(7.2ml)で2時間水素化した。反応混合液を濾過し、濃縮し、トルエン(7.2ml)に再溶解した。100℃で15分間、混合液を加熱した。冷却後、混合液を濃縮し、Biotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 2:1v/v)で精製して、化合物L(476mg、0.954ミリモル、95%収率)が無色の油状物として得られた。
【0096】
化合物AJ
【化66】


化合物AIは、アセトニトリル中のN−ヨードスクシンイミドによるヨード−エーテル化によってER−806730(WO2005/118565、実施例2)から合成された。
【0097】
化合物AI(2.95g、5.44ミリモル、1等量)をピリジン(3.0ml、36ミリモル、6.7等量)に溶解し、室温において無水フタル酸(0.846g、5.71モル、1.05等量)で18時間処理した。反応混合液をMTBE(200ml)で希釈し、1)20重量%クエン酸(35g);2)20重量%クエン酸(35g);3)水(9g);および4)水(9g)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物が淡黄色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)25M(ヘプタン−MTBE 1:1&MTBE 100%)で精製して、化合物AJが無色の油状物(3.20g、4.63ミリモル、85%収率)として得られた。
【数12】

【0098】
化合物AK
【化67】


化合物P(0.050g、0.046ミリモル、1等量)をTHF(0.30mL)に溶解し、室温においてNaOMe(MeOH中に25重量%溶液、0.10ml、0.44ミリモル、9.4等量)で1時間処理した。反応混合液をMTBE(3.0ml)で希釈し、1)水(0.30g);2)水(0.30g);および3)20重量%NaCl(0.30g)で順番に洗浄し、濃縮して無色の油状物として粗生成物が得られた。粗生成物を分取TLC(MTBE100%)によって精製して、化合物AKが無色のフィルム(33mg、0.033ミリモル、72%収率)として得られた。
【0099】
化合物ALおよび化合物AM
【化68】


化合物AK(0.175g、0.176ミリモル、1等量)をピリジン(0.56ml、6.9ミリモル、39等量)に溶解した。4−メトキシベンゾリクロリド(methoxybenzoly chloride)(0.066g、0.39ミリモル、2.2等量)を室温で加え、混合液を15時間撹拌した。反応混合液をMTBE(7ml)で希釈し、20重量%クエン酸(7g)で洗浄した。有機層を分離し、脇に置いた。水層をMTBE(7ml)で抽出した。すべての有機層を合わせ、20重量%クエン酸(3g)および水(3g)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物が淡黄色の油状物として得られた。粗生成物をBiotage(Uppsala、Sweden)12M KP−Sil(ヘプタン−MTBE 7:3&1:1)で精製して、化合物AL(0.02g、0.02ミリモル、9%収率、無色のフィルム)および化合物AM(0.14g、0.12ミリモル、70%収率、無色の油状物)が得られた。化合物AM:
【数13】

【0100】
化合物ADの合成および化合物ADからの化合物Pの合成
化合物AD
【化69】


化合物PとそのC27ジアステレオマーとの混合物を生成するプロセスにおいて、化合物ADを調製した。化合物P(50.2mg、0.0465ミリモル、1等量)をCHCl(0.50ml)に溶解した。Dess−Martinペルヨージナン(23.6mg、0.0556モル、1.2等量)を室温で加えた。10分間の後、NaHCO(40mg、0.5ミリモル)を加え、続いてイソプロピルアルコール(0.014ml、0.19モル、4等量)を加え、撹拌をさらに1時間継続した。混合液をMTBE(2ml)で希釈し、水(0.5ml)で洗浄し、濃縮して粗生成物が無色の油状物として得られた。粗原料をBiotage(Uppsala、Sweden)12M(ヘプタン−MTBE 7:3&1:1)で精製して、化合物AD(42mg、0.039ミリモル、84%収率)が無色の油状物として得られた。
【数14】

【0101】
化合物P
【化70】


化合物Pは、任意の手段によって作製される化合物ADの還元から得ることもできる。化合物AD(33mg、0.031ミリモル)をトルエン(0.50ml)に溶解し、0℃に冷却した。2.0MのLiBH(THF中の溶液、8μl)を0℃で加え、撹拌を0℃で10分間継続した。2.0MのLiBH(THF中の溶液、8μl)を加え、撹拌をさらに10分間継続した。反応混合液をMTBE(1.0ml)で希釈し、20重量%クエン酸(水溶液、0.20g)および飽和NaHCO(水溶液、0.20g)で順番に洗浄し、濃縮して粗生成物が得られた。粗原料を分取TLC(ヘプタン−MTBE 2:3)によって精製して、化合物P(24mg、72%収率、C27−dr 5:1)が得られた。
【0102】
他の実施形態
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載された化合物の様々な改変およびバリエーションは、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく当業者に明らかであろう。本発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、特許請求に係る本発明は、そのような実施形態に不当に限定されるべきでないことを理解すべきである。実際、関連分野の当業者に明らかである本発明の実施のための記載された様式の様々な改変は、本発明の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化71】


を有する化合物であって、式中、Xはハロゲンまたはオキソであり;Zは、脱離基であり;Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、−C(R)H(CHOYまたは−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;そして、nは1または2である、化合物。
【請求項2】
式(Ia)
【化72】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Qが−(CHOYである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、それが結合する酸素と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートまたはエーテルヒドロキシル保護基である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、ピバロイル、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、o−フタロイル、ベンジル、p−メトキシベンジル、トリフェニルメチル、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリルまたは(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
Xがハロゲンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Zがハロゲンまたは(C1〜C6)アルキルスルホネートである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Zがトリフレート、ヨウ化物または臭化物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(Ib)
【化73】


を有する請求項1の化合物であって、式中、YはH、ピバロイル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、p−メトキシベンゾイル、またはo−フタロイルまたはその塩である、化合物。
【請求項10】
下記式
【化74】


を有する化合物であって、式中、Xはハロゲンまたはオキソであり;Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、−C(R)H(CHOYまたは−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;nは、1または2であり;Y、Y、YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;Tは、オキソまたは−OYであり;そして、YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいは、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基である、化合物。
【請求項11】
下記式
【化75】


を有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
下記式
【化76】


を有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
Qが−(CHOYである、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
が、それが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートまたはエーテルヒドロキシル保護基であり;
およびYの各々が、独立してかつそれが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートもしくはエーテルヒドロキシル保護基であるか、またはYおよびYが、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環状カーボネート、環状ボロネート、アセタール、ケタールもしくは環状シリレンヒドロキシル保護基もしくは1,1,3,3−テトライソプロピルシロキサンジイルであり;
Tが、−OYであり;そして
が、それが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートまたはエーテルヒドロキシル保護基である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が、ピバロイル、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、o−フタロイル、ベンジル、p−メトキシベンジル、トリフェニルメチル、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリルまたは(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
およびYが、各々独立してトリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、または(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルであるか、あるいはYおよびYが一緒になって、ジ(C1〜C6アルキル)シリレンである、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
が、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイルまたはo−フタロイルである、請求項14に記載の化合物。
【請求項18】
Xがハロゲンである、請求項10に記載の化合物。
【請求項19】
下記式
【化77】


を有する請求項10に記載の化合物であって、式中、YおよびYは以下
【表3】


の通りである、化合物。
【請求項20】
下記式
【化78】


を有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項21】
下記式
【化79】


を有する化合物であって、式中、Qは、−C(O)H、−CH=CHC(O)OY、−C(R)H(CHOY、または−C(R)HCHC(O)OYであり;Rは、Hまたは−OYであり;nは、1または2であり;Y、Y、YおよびYは、各々独立してHまたはヒドロキシル保護基であり;Uは、ハロゲンまたは−OYであり;YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいは、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基であり;そして、YはHまたはヒドロキシル保護基であるか、あるいは、Yは、それが結合する酸素原子と一緒になって、脱離基であり、但し、Qが−(CHOYであり、Uが−OYであり、−OYが脱離基であり、かつ、Y、YおよびYが保護基である場合、YはHでない、化合物。
【請求項22】
式(IIIa)
【化80】


を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
Qが−(CHOYである、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
が、それが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートまたはエーテルヒドロキシル保護基であり;
およびYの各々が、独立してかつそれが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネート、もしくはエーテルヒドロキシル保護基であるか、またはYおよびYが、それらが結合する酸素原子と一緒になって、環状カーボネート、環状ボロネート、アセタール、ケタールもしくは環状シリレンヒドロキシル保護基もしくは1,1,3,3−テトライソプロピルシロキサンジイルであり;そして
が、それが結合する酸素原子と一緒になって、エステル、カーボネート、カルバメート、スルホネートまたはエーテルヒドロキシル保護基である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
が、ピバロイル、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル、o−フタロイル、ベンジル、p−メトキシベンジル、トリフェニルメチル、トリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリルまたは(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
およびYが、各々独立してトリ(C1〜C6アルキル)シリル、トリ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)シリル、ジ(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)(C1〜C6アルキル)シリル、または(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)ジ(C1〜C6アルキル)シリルであるか、あるいはYおよびYが一緒になって、ジ(C1〜C6)アルキルシリレンである、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
が、アセチル、ベンゾイル、p−ブロモベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイルまたはo−フタロイルである、請求項24に記載の化合物。
【請求項28】
がHまたはヒドロキシル保護基である、請求項21に記載の化合物。
【請求項29】
がHである、請求項21に記載の化合物。
【請求項30】
−OYが脱離基である、請求項21に記載の化合物。
【請求項31】
−OYが(C1〜C6)アルキルスルホネート、(C6〜C10アリールまたはC1〜C6ヘテロアリール)スルホネート、(C6〜C15)アリール(C1〜C6)アルキルスルホネート、または(C1〜C6)ヘテロアリール(C1〜C6)アルキルスルホネートである、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
−OYがメシレート、トルエンスルホネート、イソプロピルスルホネート、フェニルスルホネートまたはベンジルスルホネートである、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
下記式
【化81】


を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項34】
ER−804028
【化82】


を合成する方法であって、
(i)請求項1に記載の化合物を、式(IV)
【化83】


を有する化合物[式中、YおよびYは各々独立してHまたはヒドロキシル保護基である]とNHKカップリング条件下で反応させて請求項10に記載の化合物を生成するステップ、
(ii)ステップ(i)の生成物をVasella断片化条件下で反応させて請求項21に記載の化合物を生成するステップ、および
(iii)ステップ(ii)の生成物を分子内Williamsonエーテル化のための条件下で反応させてER−804028を生成するステップ
を含む、方法。

【公表番号】特表2013−518116(P2013−518116A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551271(P2012−551271)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2011/022611
【国際公開番号】WO2011/094339
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【Fターム(参考)】