説明

ハロゲンフリー樹脂組成物、被覆電線及びワイヤハーネス

【課題】難燃剤を添加しても機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させることができるハロゲンフリー樹脂組成物、被覆電線及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ハロゲンフリー樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂45〜65重量%と、低密度ポリエチレン樹脂15〜30重量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー15〜30重量%と、からなるベース樹脂組成物100重量部、及び、金属水和物80〜120重量部、を含有する。スチレン系熱可塑性エラストマーは、ビニル芳香族−共役ジエン系ブロック共重合体とされるとともに、その動的粘弾性測定装置で測定される−100〜50℃の動的損失係数(tanδ)のピーク温度が0〜30℃とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフリー樹脂組成物、該ハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された被覆電線及び複数の該被覆電線を結束させたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内に配索される被覆電線は、銅線等の導体を、ポリ塩化ビニル樹脂をベースとした樹脂組成物で被覆したものが多く用いられてきた。ポリ塩化ビニル樹脂は、自己消火性材料であるので難燃性が高い、可塑剤の添加によって硬度を自由に調節可能である、耐摩耗性が高い等の優れた材料特性を有しているが、焼却処分や車両火災等の燃焼時にハロゲン系ガス等の有害ガスが発生するので環境問題となっていた。
【0003】
このような問題を解決するために、近年、ポリオレフィン系樹脂をベースとしたハロゲンフリー樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、非晶性オレフィン系共重合体と、ビニル芳香族−共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物と、ポリオレフィン系樹脂とを含有し、耐候性、成形加工性、耐熱性、耐摩耗性及び変形回復性を向上させたハロゲンフリー樹脂組成物が記載されている。また、このハロゲンフリー樹脂組成物に、難燃剤として水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤を添加可能であることが記載されている。
【特許文献1】特開2005−248110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、所望の難燃性を得るためには無機系難燃剤を多量に添加しなければならず、これによってハロゲンフリー樹脂組成物の機械特性、耐摩耗性や柔軟性等が著しく低下してしまうといった問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、難燃剤を添加しても機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させることができるハロゲンフリー樹脂組成物、被覆電線及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、ポリプロピレン系樹脂45〜65重量%と、低密度ポリエチレン樹脂15〜30重量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー15〜30重量%と、からなるベース樹脂組成物100重量部、及び、金属水和物80〜120重量部、を含有するハロゲンフリー樹脂組成物であって、スチレン系熱可塑性エラストマーが、ビニル芳香族−共役ジエン系ブロック共重合体とされ、そして、スチレン系熱可塑性エラストマーの動的粘弾性測定装置で測定される−100〜50℃の動的損失係数(tanδ)のピーク温度が、0〜30℃とされていることを特徴としたハロゲンフリー樹脂組成物である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、導体と前記導体に被覆された被覆層とを備えた被覆電線において、前記導体に被覆された被覆層が、請求項1に記載されたハロゲンフリー樹脂組成物で構成されていることを特徴とした被覆電線である。
【0008】
請求項3に記載された発明は、複数の被覆電線を結束させたワイヤハーネスにおいて、前記複数の被覆電線のうちの少なくとも一本が、請求項2に記載された被覆電線で構成されていることを特徴としたワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、ポリプロピレン系樹脂45〜65重量%と、低密度ポリエチレン樹脂15〜30重量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー15〜30重量%と、からなるベース樹脂組成物100重量部、及び、金属水和物80〜120重量部、を含有するハロゲンフリー樹脂組成物であって、スチレン系熱可塑性エラストマーが、ビニル芳香族−共役ジエン系ブロック共重合体とされ、そして、スチレン系熱可塑性エラストマーの動的粘弾性測定装置で測定される−100〜50℃の動的損失係数(tanδ)のピーク温度が、0〜30℃とされているので、ポリプロピレン系樹脂の機械特性を維持しかつ低密度ポリエチレン樹脂やスチレン系熱可塑性エラストマーによって耐摩耗性や柔軟性を向上させて、多量の難燃剤を添加しても機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させた樹脂組成物を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載された発明によれば、導体に被覆された被覆層が、請求項1に記載されたハロゲンフリー樹脂組成物で構成されているので、機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させた被覆電線を得ることができる。
【0011】
請求項3に記載された発明によれば、複数の被覆電線のうちの少なくとも一本が、請求項2に記載された被覆電線で構成されているので、機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させたワイヤハーネスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかるハロゲンフリー樹脂組成物について説明する。本発明の一実施形態にかかるハロゲンフリー樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂45〜65重量%と、低密度ポリエチレン樹脂15〜30重量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー15〜30重量%と、からなるベース樹脂組成物100重量部、及び、金属水和物80〜120重量部、を含有する。また、スチレン系熱可塑性エラストマーは、ビニル芳香族−共役ジエン系ブロック共重合体とされ、動的粘弾性測定装置で測定される−100〜50℃の動的損失係数(tanδ)のピーク温度(Ttanδ)が0〜30℃とされている。
【0013】
前記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−αオレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−αオレフィンランダム共重合体等が挙げられる。αオレフィンとしては、炭素数4〜12のαオレフィン、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらαオレフィンは、単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0014】
これらポリプロピレン系樹脂は単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、ポリプロピレン系樹脂は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外のポリプロピレン系樹脂であってもよい。
【0015】
前記低密度ポリエチレン樹脂は、エチレンがランダムに分岐を持って結合したポリエチレンである。低密度ポリエチレン樹脂としては、密度が0.910以上〜0.930未満のものが用いられる。低密度ポリエチレン樹脂は、エチレンが略直鎖状に結合した高密度ポリエチレン樹脂と比較して硬度が低い。
【0016】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、ビニル芳香族−共役ジエン系ブロック共重合体とされ、ビニル芳香族化合物に由来する構造体単位を主体とする重合体ブロック(ビニル芳香族ブロック)と、共役ジエン化合物に由来する構造体単位を主体とする重合体ブロック(共役ジエンブロック)とから構成されるブロック重合体である。
【0017】
前記ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、特に好ましくはスチレンである。これらは単独でもよく、二種以上であってもよい。また、ビニル芳香族化合物は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外のビニル芳香族化合物であってもよい。
【0018】
前記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、置換共役ジエン等が挙げられる。好ましくは置換共役ジエンであり、例えば、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換直鎖共役ヘキサジエン等が挙げられ、より好ましくはイソプレンである。これらは単独でもよく、二種以上であってもよい。また、共役ジエン化合物は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外の共役ジエン化合物であってもよい。
【0019】
さらに、前記スチレン系熱可塑性エラストマーの動的粘弾性測定装置で測定される−100〜50℃の動的損失係数(tanδ)のピーク温度(Ttanδ)は0〜30℃とされている。ピーク温度(Ttanδ)とは、動的粘弾性測定装置を用いて、スチレン系熱可塑性エラストマーからなる試験片を−100〜50℃の範囲内において一定速度で昇温させ、例えば1℃毎に動的貯蔵弾性率(E’)及び動的損失弾性率(E’’)を測定し、各温度における動的損失係数(tanδ=E’’/E’)を求めた際に、その極大値を示す温度である。ピーク温度(Ttanδ)が0℃未満であると、ハロゲンフリー樹脂組成物の耐磨耗性を十分に向上させることができない(後述する比較例11〜13)。
【0020】
このようなスチレン系熱可塑性エラストマーは、商品名 ハイブラー5127(クラレ社製)として既に市販されているものであって、制振シート等の製造に用いられているものであるが、本発明者は、難燃剤を添加しても機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させることができるハロゲンフリー樹脂組成物を提供すべく、鋭意、深究したところ、かかるスチレン系熱可塑性エラストマーをハロゲンフリー樹脂組成物に含有させたところ、難燃剤を添加しても機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させることができるハロゲンフリー樹脂組成物を提供できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0021】
前記ベース樹脂組成物は、前述したポリプロピレン系樹脂45〜65重量%と、低密度ポリエチレン樹脂15〜30重量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー15〜30重量%と、からなり、これらの合計が100重量%とされている。ポリプロピレン系樹脂が45重量%未満であると十分な耐磨耗性が得られず(後述する比較例2)、65重量%を超えると柔軟性が低下する(比較例1)。また、低密度ポリエチレン樹脂が15重量%未満であると十分な耐磨耗性が得られず(比較例9)、30重量%を超えると耐磨耗性や柔軟性が低下する(比較例10)。また、スチレン系熱可塑性エラストマーが15重量%未満であると十分な耐磨耗性や柔軟性が得られず(比較例7)、30重量%を超えると耐磨耗性が低下する(比較例8)。
【0022】
前記金属水和物は、難燃剤として添加される。金属水和物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、硼酸亜鉛等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、金属水和物は、これらのみに限定されるものではなく、本発明の目的に反しない限りこれら以外の金属水和物であってもよい。
【0023】
前記金属水和物は、前述したベース樹脂組成物100重量部に対して80〜120重量部となるように添加される。金属水和物が80重量部未満であると十分な難燃性が得られず(後述する比較例5)、120重量部を超えても添加量の増加に伴う難燃性の向上はほとんどなく、延伸性(引張伸び)や耐磨耗性が低下する(比較例6)。
【0024】
前述した構成のハロゲンフリー樹脂組成物は、以上のような構成で配合され、ポリプロピレン系樹脂を含有することによって機械特性や耐薬品性が向上し、低密度ポリエチレン樹脂を含有することによって耐摩耗性と柔軟性が向上し、スチレン系熱可塑性エラストマーを含有することによってオレフィン系熱可塑性エラストマーにはなかった耐磨耗性が向上し、金属水和物を含有することによって難燃性が向上する。
【0025】
なお、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物を構成する各成分はハロゲンを含有しておらず、燃焼時にハロゲン系ガスが発生することがない。また、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物は非架橋型であり、容易にリサイクルすることができる。また、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物に、さらに酸化防止剤、金属捕捉剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、発砲剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0026】
前述したハロゲンフリー樹脂組成物は、以上のような構成で配合されて混練されるが、その方法は公知の種々の手段を用いることができる。例えば、予めヘンシェルミキサー等の高速混合装置を用いてプリブレンドした後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等公知の混練機を用いて混練する等してハロゲンフリー樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
次に、本実施形態のハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された被覆電線及びワイヤハーネスについて説明する。被覆電線の種類、構造には制限がなく、例えば、単線、フラット線、シールド線等が挙げられる。被覆電線は、導体と、該導体に被覆された被覆層とを備え、被覆層が本発明のハロゲンフリー樹脂組成物で構成される。導体は、銅やアルミニウム等の金属からなり、長尺線状に設けられている。導体は、一本でもよく、また複数本でもよい。なお、導体と被覆層との間に、例えば他の絶縁体等が介在されていてもよい。
【0028】
前述した被覆電線において、導体をハロゲンフリー樹脂組成物で被覆する方法は、公知の種々の手段を用いることができる。例えば、一般的な押出成形法を用いることができる。押出し機は、シリンダー直径Φ20〜90mm、L/D=10〜40の単軸押出機を使用し、スクリュー、ブレーカープレート、クロスヘッド、ディストリュビューター、ニップル及びダイスを有するものを使用する。そして、ハロゲンフリー樹脂組成物が十分に溶融する温度に設定された単軸押出機にハロゲンフリー樹脂組成物を投入する。ハロゲンフリー樹脂組成物はスクリューにより溶融及び混練され、一定量がブレーカープレートを経由してクロスヘッドに供給される。溶融したハロゲンフリー樹脂組成物は、ディストリュビューターによりニップルの円周上へ流れ込み、ダイスにより導体の円周上に被覆された状態で押出され、被覆電線が得られる。
【0029】
そして、複数の被覆電線を結束させて、ワイヤハーネスが得られる。被覆電線の端末には、例えば、コネクタが取り付けられる。コネクタは、板金等を折り曲げる等してなる端子金具と、合成樹脂からなるコネクタハウジングとを備えている。端子金具は、導体と電気的に接続され、コネクタハウジング内に収容される。コネクタは、他の電子機器に設けられたコネクタと嵌合し、ワイヤハーネスは電子機器に電力や制御信号等を伝達する。
【0030】
本実施形態によれば、ポリプロピレン系樹脂45〜65重量%と、低密度ポリエチレン樹脂15〜30重量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー15〜30重量%と、からなるベース樹脂組成物100重量部、及び、金属水和物80〜120重量部、を含有するハロゲンフリー樹脂組成物であって、スチレン系熱可塑性エラストマーが、ビニル芳香族−共役ジエン系ブロック共重合体とされ、そして、スチレン系熱可塑性エラストマーの動的粘弾性測定装置で測定される−100〜50℃の動的損失係数(tanδ)のピーク温度が、0〜30℃とされているので、ポリプロピレン系樹脂の機械特性を維持しかつ低密度ポリエチレン樹脂やスチレン系熱可塑性エラストマーによって耐摩耗性や柔軟性を向上させて、多量の難燃剤を添加しても機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させた樹脂組成物を得ることができる。
【0031】
導体に被覆された被覆層が前記ハロゲンフリー樹脂組成物で構成されているので、機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させた被覆電線を得ることができる。
【0032】
複数の被覆電線のうちの少なくとも一本が前記被覆電線で構成されているので、機械特性、耐摩耗性、難燃性及び柔軟性を向上させたワイヤハーネスを得ることができる。
【0033】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(PS201A、サンアロマー社製)45重量%、低密度ポリエチレン樹脂(ノバテックLD ZE41K、日本ポリエチレン社製)30重量%、スチレン系熱可塑性エラストマーA(ハイブラー5127、Ttanδ=20℃、クラレ社製)25重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に金属水和物(水酸化マグネシウム、キスマ5A、協和化学社製)90重量部を配合した後、これらを容量20リットルのヘンシェルミキサーで混合し、Φ40mm同方向二軸押出機を使用してダイス温度200℃設定で混練してハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形した。その後、電線押出し機(Φ60mm、L/D=24.5、FFスクリュー)に投入し、押出スピード600mm/min、押出温度230℃にて、導体面積0.3395mm(素線構成0.2485mm×7本撚り)の導体上に押出して、仕上がり外径1.20mmの被覆電線を製造した。
【0034】
(実施例2)
前記ポリプロピレン系樹脂50重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂20重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 30重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、実施例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0035】
(実施例3)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂25重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 20重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、実施例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0036】
(実施例4)
前記ポリプロピレン系樹脂65重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂15重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 20重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、実施例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0037】
(実施例5)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂25重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 20重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物80重量部を配合した後、実施例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0038】
(実施例6)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂25重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 20重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物120重量部を配合した後、実施例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0039】
(実施例7)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂30重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 15重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、実施例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0040】
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂(PS201A、サンアロマー社製)70重量%、低密度ポリエチレン樹脂(ノバテックLD ZE41K、日本ポリエチレン社製)15重量%、スチレン系熱可塑性エラストマーA(ハイブラー5127、Ttanδ=20℃、クラレ社製)15重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に金属水和物(水酸化マグネシウム、キスマ5A、協和化学社製)90重量部を配合した後、これらを容量20リットルのヘンシェルミキサーで混合し、Φ40mm同方向二軸押出機を使用してダイス温度200℃設定で混練してハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形した。その後、電線押出し機(Φ60mm、L/D=24.5、FFスクリュー)に投入し、押出スピード600mm/min、押出温度230℃にて、導体面積0.3395mm(素線構成0.2485mm×7本撚り)の導体上に押出して、仕上がり外径1.20mmの被覆電線を製造した。
【0041】
(比較例2)
前記ポリプロピレン系樹脂40重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂30重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 30重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0042】
(比較例3)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂35重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 10重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0043】
(比較例4)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂10重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 35重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0044】
(比較例5)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂25重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 20重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物75重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0045】
(比較例6)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂25重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 20重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物150重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0046】
(比較例7)
前記ポリプロピレン系樹脂60重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂30重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 10重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0047】
(比較例8)
前記ポリプロピレン系樹脂50重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂15重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 35重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0048】
(比較例9)
前記ポリプロピレン系樹脂60重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂10重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 30重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0049】
(比較例10)
前記ポリプロピレン系樹脂50重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂35重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーA 15重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0050】
(比較例11)
前記ポリプロピレン系樹脂45重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂30重量%、スチレン系熱可塑性エラストマーB(ハイブラー7125、Ttanδ=−5℃、クラレ社製)25重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0051】
(比較例12)
前記ポリプロピレン系樹脂50重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂20重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーB 30重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0052】
(比較例13)
前記ポリプロピレン系樹脂55重量%、前記低密度ポリエチレン樹脂25重量%、前記スチレン系熱可塑性エラストマーB 20重量%を配合してベース樹脂組成物とし、このベース樹脂組成物100重量部に前記金属水和物90重量部を配合した後、比較例1と同様にハロゲンフリー樹脂組成物のペレットを成形し、被覆電線を製造した。
【0053】
以上、実施例1〜7及び比較例1〜13で得た被覆電線について、以下の評価試験を行い、結果を表1ないし3にまとめた。
【0054】
(引張伸び評価)
被覆電線を150mmの長さに切り出し、導体を取り除いてハロゲンフリー樹脂組成物のみの管状試験片とした後、その中央部に50mmの間隔で標線を記した。次いで、室温下にて試験片の両端を引張試験機のチャックに取り付けた後、引張速度25〜500mm/minで引っ張り、標線間の距離を測定した。伸びが300%以上のものを合格(○)、伸びが300%未満のものを不合格(×)とした。
【0055】
(耐摩耗性評価)
スクレープ摩耗試験装置を用いて行った。即ち、長さ約1mの被覆電線をサンプルホルダーに載置し、クランプで固定した。そして、先端に直径0.45mmのピアノ線を備えるプランジを、押圧部材を用いて総荷重7Nで被覆電線に押し当てて往復させ(往復距離14mm)、被覆電線の被覆層が摩耗してプランジのピアノ線が被覆電線の導体に接するまでの往復回数を測定し、100回以上のものを合格(○)、100回未満のものを不合格(×)とした。
【0056】
(柔軟性評価)
JIS K6253に準拠してショアD硬度を測定した。ショアD硬度が55以上60以下のものを合格(○)、55未満または61以上のものを不合格(×)とした。
【0057】
(難燃性評価)
長さ600mm以上の被覆電線を無風槽に45°の角度に傾斜させて固定し、上端から500mm±5mmの部分にブンゼンバーナーにより15秒間還元炎を当て、消炎するまでの時間を測定した。消炎までの時間が70秒以内のものを合格(○)、70秒を超えるものを不合格(×)とした。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
本発明のハロゲンフリー樹脂組成物で被覆された被覆電線は、表1中の実施例1〜7に示すように、引張伸び、耐摩耗性、柔軟性、及び難燃性の全てにおいて良好な結果が得られ、特にワイヤハーネスを構成する被覆電線(の被覆層)として必要とされる十分な引張伸び、耐摩耗性、柔軟性、及び難燃性を有していることが確認された。一方、比較例の被覆電線は、表2及び3中の比較例1〜13に示すように、引張伸び、耐摩耗性、柔軟性、及び難燃性の少なくとも一つにおいて良好な結果が得られず、特にワイヤハーネスを構成する被覆電線(の被覆層)として必要とされる十分な引張伸び、耐摩耗性、柔軟性、及び難燃性を有していなかった。
【0062】
また、実施例1と比較例11、実施例2と比較例12、及び実施例3と比較例13を比較すると明らかなように、ハロゲンフリー樹脂組成物を構成する各成分を規定量含有していても、スチレン系熱可塑性エラストマーの動的損失係数(tanδ)のピーク温度(Ttanδ)が0℃未満であると、十分な耐磨耗性を有していなかった。
【0063】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂45〜65重量%と、低密度ポリエチレン樹脂15〜30重量%と、スチレン系熱可塑性エラストマー15〜30重量%と、からなるベース樹脂組成物100重量部、及び、金属水和物80〜120重量部、を含有するハロゲンフリー樹脂組成物であって、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、ビニル芳香族−共役ジエン系ブロック共重合体とされ、そして、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーの動的粘弾性測定装置で測定される−100〜50℃の動的損失係数(tanδ)のピーク温度が、0〜30℃とされている
ことを特徴とするハロゲンフリー樹脂組成物。
【請求項2】
導体と前記導体に被覆された被覆層とを備えた被覆電線において、前記導体に被覆された被覆層が、請求項1に記載されたハロゲンフリー樹脂組成物で構成されていることを特徴とする被覆電線。
【請求項3】
複数の被覆電線を結束させたワイヤハーネスにおいて、前記複数の被覆電線のうちの少なくとも一本が、請求項2に記載された被覆電線で構成されていることを特徴とするワイヤハーネス。

【公開番号】特開2009−173734(P2009−173734A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12388(P2008−12388)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】