説明

ハロゲンランプ、加熱装置、ハロゲンランプ製造方法

【課題】減圧によるシュリンクシールの封止部が高い強度を得ながら口金の小型化に寄与することが可能なハロゲンランプを実現する。
【解決手段】耐熱性のガラスで形成されたバルブ11内に挿入したタングステン製のフィラメント12と、フィラメント12の両端をそれぞれ溶接した一対の金属箔151,152と、金属箔151,152の他端に電力供給用のアウターリード161,162を溶接し、金属箔151の部分のバルブ11を減圧により封止させた封止部141,142とによりハロゲンランプ100を形成する。封止部141,142の部分を焼成させ、封止部141,142を形成する場合に、モールド型を用いて寸法管理可能な所望の形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複写機の定着用として使用される放射透過性バルブの内部に電気抵抗発熱体を備え、特に封止部が減圧により形成されたハロゲンランプ、加熱装置、ハロゲンランプ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機の定着用に使用されるハロゲンランプの封止部には、封止用の金属箔の酸化や箔切れを防止し、ガスの封入等に用いるチップ管を必要としない減圧によるシュリンクシールによる封止も考えられている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−158124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、ランプ両端の封止部に定着装置の保持に使用される絶縁性の口金を接着剤で固定している。しかし、減圧させて封止を行うシュリンクシールは、封止部分の径が凹凸により、ランプを挿入する口金の穴径を、変形することを考慮する必要があることから、口金を最大径の寸法で設計しなければならず、必然的に口金が大きくなり、延いては定着装置に取付けられるランプユニットの取付け構造が大型化する、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、シュリンクシールによる封止として高い強度を得ながら口金の小型化に寄与することが実現可能なハロゲンランプ、このランプを用いた加熱装置、この加熱装置を用いたハロゲンランプ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明のハロゲンランプは、耐熱性ガラス製のバルブ内の長手方向に配置されたタングステン製のフィラメントと、前記フィラメントの両端にそれぞれ接続した一対の金属箔と、前記金属箔それぞれの他端に接続した電力供給用のアウターリードと、前記金属箔の部分の前記バルブを焼成した状態で外部からモールド型を用いて減圧封止方法により封止した封止部とを具備したことを特徴とする。
【0007】
この発明の加熱装置は、上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、前記第1または第2のローラ内に配置された請求項1〜5のいずれかに記載のハロゲンランプと、予めトナーが転写された複写紙が、前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備したことを特徴とする。
【0008】
この発明のハロゲンランプ製造方法は、フィラメントの両端に、インナーリード、金属箔、直交方向にストッパーが接続されたアウターリードをそれぞれ直列状態に接続する工程と、前記ストッパーとの間で前記金属箔に位置させた状態に位置決めする位置決め部を有する耐熱性ガラス製のスリーブを収納する工程と、前記バルブ内を減圧させた状態で、前記金属箔および前記スリーブをバーナーで焼成させ、モールド型で封止部を成形する工程と、前記工程で形成された封止部分から外側のバルブおよび前記バルブの外側に位置するアウターリードを適当な長さにカットする工程と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、減圧による封止を行う場合に、モールド型を用いて形成したことによって、一定の形状での形成が可能となることから、封止部の強度を確保しながら取付けに用いる口金の小型化の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明のハロゲンランプに関する一実施形態について説明するための構成図である。
【図2】図1の要部の拡大図である。
【図3】図2のI−I’線断面図である。
【図4】この発明のハロゲンランプに関する一実施形態の変形例について説明するための、図3に相当する断面図である。
【図5】この発明のハロゲンランプの製造方法に関する一実施形態について説明するための説明図である。
【図6】図5の要部の工程についてさらに詳しく説明するための説明図である。
【図7】この発明のハロゲンランプに関する他の実施形態について説明するための、図3に相当する断面図である。
【図8】図6に相当する断面図である。
【図9】封止部の断面が円形状に形成される減圧による形成についてより詳しく説明するための説明図である。
【図10】この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための概略的な構成図である。
【図11】図10のII−II’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1〜図3は、この発明のハロゲンランプに関する一実施形態について説明するための、図1は構成図、図2は図1の要部の拡大図、図3は図2のI−I’線断面図である。
【0013】
図1〜図3において、100は管型白熱電球の一種であるハロゲンランプである。ハロゲンランプ100は、例えば定着用等のヒータとして多用され、放射透過性を有する石英ガラス製等のバルブ11を有する。バルブ11の内部には、耐火性金属の電気抵抗線の一例であるタングステン製のフィラメント12が熱源として同心状に収容される。このフィラメント12は、バルブ11内で軸方向に複数配設されたモリブデン製のアンカー13により、バルブ11に対する同心状態が保持される。
【0014】
また、バルブ11内には、微量のハロゲン物質たとえば臭素Brや塩素Clとの混合物とともに、アルゴン(Ar)や窒素(N)等の不活性ガスが、常温25℃で約0.9×10Pa(パスカル)の圧力で封入してある。
【0015】
バルブ11の軸方向の両端は、シュリンクシールによる封止部141,142が形成される。封止部141,142は、4方向からモールド型で圧着させて成形することにより、図3に示すように断面がほぼ一定した四角形状の封止部を形成することができる。
【0016】
封止部141,142内にはバルブ11と膨張係数が近似した導電性の例えばモリブデン(Mo)で形成された矩形箔状の金属箔151,152をそれぞれ埋設している。
【0017】
金属箔151の一端には、一端がフィラメント12に接続されたインナーリード121の他端が、金属箔152の一端には、一端がフィラメント12に接続されたインナーリード122の他端がそれぞれ接続される。金属箔151の他端は、電力を供給するためのアウターリード161に、金属箔152の他端は、電力を供給するためのアウターリード162にそれぞれ接続する。
【0018】
ところで、バルブ11の肉厚はせいぜい1mm程度の石英ガラス管であることから、金属箔151,152を封止部141,142で封止させるときは、ガラスの量が不足することが考えられる。このため、封止部141,142を形成する位置に予めバルブ11の内側あるいは外側に石英ガラスを追加し、この位置でのガラス量を増加させることが考えられる。
【0019】
この実施形態では、バルブ内を減圧させた状態で封止する場合に、モールド型を用いて所望の形状を得ることが可能となる。このため、定着装置に取付けるときに用いる図3の破線で示した口金17の大きさも余裕をさほど持たすことのないものを使用できることから、口金17の小型化に寄与する。
【0020】
図4は、この発明のハロゲンランプに関する一実施形態の変形例について説明するための、図3に相当する断面図である。
【0021】
この変形例では、封止部141の断面の角の部分までモールド型で圧着させないようにしたものである。このため、各角の部分が面取りされたような格好となり、口金17の形状をより小型化にすることが可能となる。また、封止部141の断面の各角の部分が面取りされた格好の部分があることで、口金17を取付ける場合に取付けの作業性の向上を図ることができる。
【0022】
次に、図5を用いてこの発明のハロゲンランプに関する一実施形態の製造方法について説明する。
【0023】
まず、図5(a)において、フィラメント12の両端に、インナーリード121,122、金属箔151,152、それにアウターリード161,162とその先端に一体的にアンカー51,52をそれぞれ直列に接続した状態のものを用意する。金属箔151,152は石英ガラス製のスリーブ31,32に挿入されている。スリーブ31,32はそれぞれ金属箔151,152に挿入するまでには、アンカー51,52等の弾性に抗して貫通孔を通過させている。フィラメント12の一端とインナーリード121、金属箔151、アウターリード161を直列に接続する箇所とフィラメント12の他端とインナーリード122、金属箔152、アウターリード162を直列に接続する箇所は、それぞれを例えばスポット溶接により結合させる。
【0024】
図5(b)では、図5(a)において直列に接続して一体化されたフィラメント12等を、例えば予め一端が封止された石英ガラス製のバルブ11に収納する。このときアンカー51,52で直列接続されたフィラメント12等をバルブ11内に直線的に配置して維持するようにする。
【0025】
さらに、ハロゲンガス500Torrを封入して、一旦仮排気を行った後、バルブ11の開放端側の減圧封止を行っている。そして封止部141となる部分にバーナー53で一定の火力で焼成し、バルブ11を一定の回転数で回転させてスリーブ31を加えた太さの封止部141を形成する。
【0026】
図5(b)において、バーナー53による焼成で柔らかくなっている封止部141となるバルブ11の部分に、図6中矢印方向に移動可能な図示しない可動部材に、それぞれの取付け部61が取付けられ、先端がほぼ長方形状の平坦部62をそれぞれ備えた4個のモールド型63a〜63dを矢印方向に移動させバルブを加圧させる。これにより、封止部141は、例えば図3の断面形状に示されるような長方形状となる。
【0027】
ところで、モールド型63a〜63dのうち、金属箔151の表裏と対向する位置にあるモールド型63a,63bは、金属箔151のエッジと対向する位置にあるモールド型63c,63dに対して互いがより近づくような加圧が行われる。このため、図3の断面に示すような長方形状となる。これは、金属箔151が極めて薄くモール型63c,63dの圧力が強いと、金属箔151が変形したりすることを防止する意味がある。
【0028】
図5(c)では、図5(b)の状態を上下反転させ、封止部142となる部分にバーナー53を一定の火力で焼成し、バルブ11を回転させてスリーブ32を加えた太さの封止部142を形成する。
【0029】
図5(c)において、バーナー53による焼成で柔らかくなっている封止部142となるバルブ11の部分に、4個のモールド型63a〜63dを用い、封止部141が形成される同様の工程を経て封止部142が形成される。
【0030】
図5(d)において、封止部141,142を残したバルブ12の両開口側を例えばレーザー等の手段でカットするとともに、アンカー51,52およびアウターリード161,162を適当な長さに残した状態でカットすることで、図5(e)のハロゲンランプ100が完成される。
【0031】
このハロゲンランプ製造方法により、減圧による封止でありながら一定の形状の封止部を形成することが可能となる。
【0032】
図7〜図9は、この発明のハロゲンランプに関する他の実施形態について説明するための、図7は図3に相当する説明図、図8は図6に相当する説明図、図9は封止部の断面が円形状に形成される減圧による形成についてより詳しく説明するための説明図である。なお、上記した実施形態と同一の構成部分には同一の符号を付してここでは異なる部分について説明する。
【0033】
図7に示すように、この実施形態では、封止部141,142の断面形状がほぼ円形となるようにしたものである。
【0034】
断面形状がほぼ円形に形成するために、図8に示すように、モールド型81a,81bの先端にそれぞれ半円形の凹状部が形成され、バーナー53によりバルブかせ柔らかくなる図5(b)と図5(c)のそれぞれに相当する工程において、モールド型81a,82bを図中矢印の方向に移動させ、図9に示すようにモールド型81a,81bの凹状部82a,82bを合わせるようにして加圧させることで、断面円形状の封止部141,142を形成することができる。
【0035】
この実施形態では、バルブ内を減圧させた状態で封止する場合に、モールド型を用いて断面円形状の封止部を得ることが可能となる。このため、定着装置に取付けるときに用いる口金17の大きさも封止部よりやや大きい程度の径の大きさで事済み、口金17の更なる小型化に寄与する。この場合断面が円形状であることから、口金と封止部との方向性の制約もなくなり、取付け作業性の向上にもつながる。
【0036】
図10、図11は、それぞれこの発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための、図10は概略的な構成を示す構成図であり、図11は図10のII−II’線断面図である。
【0037】
この実施形態は、この発明のハロゲンランプ100を、複写機等のトナーを定着させる加熱装置200に用いたもので、図10は図1の左側を拡大して示したハロゲンランプ100を加熱装置200に取付けた状態を示している。
【0038】
図10において、201は一端が図示しないシャーシ等に固着されたブラケットであり、このブラケット201は、例えばステンレス等の導電性の金属板で形成されている。ブラケット201の他端には係合孔を形成し、この係合孔にハロゲンランプ100の封止部141が取着される。
【0039】
ハロゲンランプ11は、口金17を封止部141に装着させた状態で、口金17とアウターリード161を電気的に接続させる。口金17は、例えば電源の一端に接続されたブラケット201に電気的に取付けることで、加熱装置200の円筒状加熱ローラ202内のほぼ中心に配置される。この加熱ローラ202は、フレーム203に軸受204を介して回転自在に支持される。なお、封止部142側にも口金17が取付けられ、電源の他端に接続された導電性のブラケットに電気的に取付けられる。
【0040】
図11に示すように、加熱ローラ202はアルミニウムや鉄等の材料で形成された管状体で、その表面にシリコンゴムやテフロン(登録商標)などの被覆材205で被覆されている。206は、回転軸207で回転自在に回転されるアルミニウムや鉄等の材料で形成された管状体の加圧ローラで、その表面に耐熱性弾性材料である、例えばシリコンゴム208が取付けてある。
【0041】
加熱ローラ202のほぼ中心軸上に位置するには、ハロゲンランプ100がブラケット201に支持することにより配置される。図示しない電源部に接続して給電が行われると、ハロゲンランプ100のフィラメント12の発熱が行われて、加熱ローラ202がヒートアップする。
【0042】
また、図11に示すように、図示しない転写ドラムなどからトナーT1が所定分布状態に転写された複写紙Pを矢印方向に回転させると、ヒートアップされた加熱ローラ202と加圧ローラ206との間に送り込ませることで、複写紙Pおよび前の工程で塗布されたトナーT1が加熱され、加熱されたトナーT2が溶解後複写紙P上に定着させ、所定の文字や図柄等として描かれる。
【0043】
この実施形態では、減圧封止により封止された封止部を、口金を介してブラケットに取付ける簡単な作業によりハロゲンランプを加熱ローラの所望位置に配置することができる。このとき、減圧封止された封止部の形状が寸法管理が可能であることから口金の小型化を実現できる。このため、ハロゲンランプが取付けられる加熱装置での取付けの省スペース化を実現することができる。
【符号の説明】
【0044】
100 ハロゲンランプ
11 バルブ
12 フィラメント
121,122 インナーリード
141,142 封止部
151,152 金属箔
161,162 アウターリード
17 口金
61 取付け部
62 平坦部
63a〜63d,81a,81b モールド型
82a,82b 凹状部
51,52 アンカー
53 バーナー
200 加熱装置
201 ブラケット
202 加熱ローラ
206 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性ガラス製のバルブ内の長手方向に配置されたタングステン製のフィラメントと、
前記フィラメントの両端にそれぞれ接続した一対の金属箔と、
前記金属箔それぞれの他端に接続した電力供給用のアウターリードと、
前記金属箔の部分の前記バルブを焼成した状態で外部からモールド型を用いて減圧封止方法により封止した封止部とを具備したことを特徴とするハロゲンランプ。
【請求項2】
前記封止部は、前記バルブの外側の4方から前記モールド型を用いて加圧したことを特徴とする請求項1記載のハロゲンランプ。
【請求項3】
前記封止部を形成するモールド型の先端は、平坦で形成したことを特徴とする請求項2記載のハロゲンランプ。
【請求項4】
前記封止部は、前記金属箔の表裏と対向する前記バルブの外側の2方向から前記モールド型を用いて加圧したことを特徴とする請求項1記載のハロゲンランプ。
【請求項5】
前記封止部を形成するモールド型の先端は、凹状に形成したことを特徴とする請求項4記載のハロゲンランプ。
【請求項6】
フィラメントの両端に、インナーリード、金属箔、直交方向にストッパーが接続されたアウターリードをそれぞれ直列状態に接続する工程と、
前記ストッパーとの間で前記金属箔に位置させた状態に位置決めする位置決め部を有する耐熱性ガラス製のスリーブを収納する工程と、
前記バルブ内を減圧させた状態で、前記金属箔および前記スリーブをバーナーで焼成させ、モールド型で封止部を成形する工程と、
前記工程で形成された封止部分から外側のバルブおよび前記バルブの外側に位置するアウターリードを適当な長さにカットする工程と、からなることを特徴とするヒータランプの製造方法。
【請求項7】
上下に配置され少なくとも一方は加熱される第1および第2のローラと、
前記第1または第2のローラ内に配置された請求項1〜5のいずれかに記載のハロゲンランプと、
予めトナーが転写された複写紙が、前記第1および第2のローラとの間を移動させて前記トナーを定着させる手段とを具備したことを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−96463(P2011−96463A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248193(P2009−248193)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】