説明

ハロゲン不含の難燃剤

高分子マトリックス中に配合されて含有せしめるためのハロゲン不含の難燃剤であり、該難燃剤が、少なくともポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体と、1,3,5-トリアジン誘導体のオリゴマー又はポリマーあるいはその複数のものの混合物と、リン酸モノ亜鉛、ホウ酸亜鉛、リン酸トリ亜鉛、ピロリン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸ホウ素(ホウリン酸)、リン酸モノアルミニウム、リン酸トリアルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及び、それらの混合物、から選択される化合物、予備縮合されたメラミン誘導体、メラミン塩又はメラミン付加化合物、リン酸エチレンジアミン、リン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン、1,3,5-トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレートから選択された化合物の少なくとも一つを含有しているものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子マトリックス中に配合されて含有せしめるためのハロゲン不含の難燃剤及び本発明の難燃剤を含有しているポリマー(高分子材料)、特に熱可塑性エラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーを包含する熱可塑性ポリマーは、多くの分野で使用されている。例えば、電気分野やエレクトリニクスの分野、建設分野、建築技術、自動車製造、公共輸送車両などで使用されている。熱可塑性ポリマーは、優れた機械的性質及び良好な加工性能、そして化学的な安定性を有している。そうしたポリマーを難燃性にする一つの可能な方法は、三酸化アンチモンを有するハロゲン含有の難燃剤を添加することである。さらに可能な方法は、金属水酸化物、有機又は無機のホスファートあるいはホスホナート、例えば、ポリリン酸アンモニウムなどのハロゲン不含の物質を、炭素源や発泡剤などの相乗的な活性を有する物質と一緒に添加することである。
【0003】
該ハロゲン不含の難燃剤は、特に、塩素化された有機化合物又は臭素化された有機化合物を含有している難燃剤と反対に、それらは火災の場合発煙性が少なくなり、原則として、環境にやさしいものとされるので、その重要性は高まりつつある。該難燃性物質のうち、リン酸、ピロリン酸及びポリリン酸の誘導体が、主として、ハロゲン不含の難燃剤において使用される。上述した物質のアンモニウム誘導体又はメラミン誘導体、リン酸ピペラジン及びリン酸エチレンジアミンは、それらを成形組成物に配合して入れると、それらは高温では嵩が増えて嵩張っている保護層になり、熱源に対する断熱層として働くという性質がある。本性質は、さらに、相乗的な活性を有する物質により強化せしめることができる。ハロゲン含有の難燃剤の作用の仕方と反対に、その嵩が増大すること、所謂、熱膨張は、実質的な量の煙が発生することなく起こる。
【0004】
ポリオレフィンに上記難燃剤を使用すると、しばしば、十分な保護作用をもたらさず、そして、さらに、例えば、炭素源や発泡剤などの相乗的な活性を有する物質を添加しなければならない。そうした難燃剤組成物の適切な作用効果を保障するためには、しばしば、難燃剤の比率を非常に大きくしてポリマーに添加しなければならない。そうすると、特に、ポリマーの機械的性質や電気的性質を変えてしまうことになる。
【0005】
従来の特に効果のある難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウムと、例えば、メラミン化合物及び/又はペンタエリスリトールとの混合物などのアミンとの混合物が挙げられる。さらによく知られている熱膨張性混合物は、ポリリン酸アンモニウムにTHEIC (1,3,5-トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌル酸)を配合したものに基づくものである。
【0006】
しかしながら、これらの混合物の問題点は、ポリマー中に入れられた後でさえ、それらは水溶性が非常に大きくて、部分的にしみ出てしまい、その結果、それらによる効果が、最早、得られることができなくなるということである。さらに、それらは分解温度が低く、そのことは、保護せしめられるべきポリマーからプラスチック物品を成形する間に、既にある程度まで、難燃剤添加物を分解せしめることに繋がる。さらにその上、効果が高められているけれども、これらの混合物は、ポリマー中に高濃度にして使用されなければならない。その結果、ポリマーの加工性能や柔軟性に低下をきたすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本技術的背景に照らして、本発明の目的は、当該分野の先行技術のものと比較して改善された耐炎性を有していているハロゲン不含の難燃剤であって、該ハロゲン不含の難燃剤
が、より少ない濃度で高分子材料に使用することができる一方で、同時に良好な耐炎性を有しており、水溶性が低くて、知られている難燃剤よりも高い温度、好ましくは、高分子(ポリマー)の加工処理温度を超える温度で分解するのみであるものを提供することである。本発明のさらなる目的は、良好な物性を持ち、良好な耐炎性があり、同時に耐水性があるという高分子材料、特には熱可塑性でエラストマーである高分子材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従うと、当該課題は、少なくとも次なる成分A、B及びC、そして任意の成分D:
A: ポリリン酸アンモニウム(ポリリン酸アンモニウム類)及び/又はその誘導体、
B: 次式
【化1】



(上式中、
Xは、モルホリノ残基、ピペリジノ残基又はピペラジンから誘導される基、
Yは、ピペラジンから誘導される二価の基、そして、
nは、1より大きな整数である)
のオリゴマー又はポリマーの1,3,5-トリアジン誘導体又はそれらの混合物、
C: リン酸モノ亜鉛、ホウ酸亜鉛、リン酸トリ亜鉛、ピロリン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸ホウ素(ホウリン酸)、リン酸モノアルミニウム、リン酸トリアルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及び、それらの混合物から選択される化合物、
D: 予備縮合されたメラミン誘導体、メラミン塩又はメラミン付加物、リン酸エチレンジアミン、リン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン、1,3,5-トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレート、
を含有しているハロゲン不含の難燃剤であり、上記成分A対上記成分Bの重量比は、10:1〜1:1であり、上記成分AとBとは、併せて、上記成分A、B、C及びDの全体の重量の60〜99 wt%となし、上記成分CとDとは、併せて、上記成分A、B、C及びDの全体の重量の1〜40 wt%となしてあることを特徴とするハロゲン不含の難燃剤により解決される。
【0009】
さらに該問題は、本発明の難燃剤を、5〜60 wt%の量で、好ましくは10〜40 wt%の量で含有しているポリマー(重合体)、特には熱可塑性エラストマーにより解決される。
【0010】
成分Aとしては、被覆されているポリリン酸アンモニウム(ポリリン酸アンモニウム類)や、また、被覆されていないポリリン酸アンモニウム(ポリリン酸アンモニウム類)の両方及び/又はその誘導体が挙げられる。
【0011】
本明細書中用語「被覆されているポリリン酸アンモニウム」とは、単に被覆されているポリリン酸アンモニウムと、さらに、被覆され且つ架橋されているポリリン酸アンモニウムが含まれる。そうした被覆物(皮膜、コーティング)の効能は、被覆されていないポリリン酸アンモニウムに比して、当該難燃剤をポリマーに添加せしめた時に、熱安定性がより良いものとなり、水溶性をより低いものにし、該難燃剤の使用されている高分子マトリックスとの適合性をより良いものとすることになるというものである。該成分Aの被覆されている形態のものは、粉末又は顆粒状のポリリン酸アンモニウム又はその誘導体を被覆処理(コーティング)することにより得られる。
【0012】
該成分Aは、当該難燃剤に、粉末又は顆粒として添加される。そして、火災などの発生時には、ハロゲンを含有する難燃剤よりも、より発煙が少ないものとなる。
【0013】
成分Bは、1,3,5-トリアジン誘導体のオリゴマー又はポリマーあるいはそのいくつかのものの混合物であり、ホスファート類と配合されて難燃剤としての活性を有する物質である。成分Bは、強烈な熱の作用又は炎に接触することにより、水、二酸化炭素、アンモニア及び窒素を包含する可燃性でないガスの発生を伴い、炭素を含有する残基を形成して、分解される。当該成分Bは本発明の熱膨張性混合物において炭素源として作用する。
【0014】
該成分AとBの重量比を10:1〜1:1とすると、最適な耐炎作用が得られる。
該成分Bをより低い比率としたり、あるいはより高い比率とすると、難燃剤としての効果を低下せしめることとなる。これに関して、該成分A対該成分Bの重量比は、好ましくは、 6:1〜2:1であり、そして特に好ましくは、5:1〜3:1である。さらに、該成分AとBとは、併せて、当該成分A、B、C及びDの全体の重量の85〜99 wt%にしたり、そして特に好ましくは90〜95 wt%にしたりすると、そして、該成分CとDとは、併せて、当該成分A、B、C及びDの全体の重量の1〜15 wt%としたり、そして特に好ましくは5〜10 wt%にしたりすると、好ましい。
【0015】
成分Cは、本発明の難燃剤中で煙が発生するのを一層減少せしめる物質、特には塩類を含有する。その結果、火災の際の発煙による毒性を著しく減少せしめ、そして同時に当該難燃剤の作用を高めることとなる。加えて、この成分により、当該難燃剤をより効果の高いものとし、そして該難燃剤が使用されているポリマーの機械的性状をより良いものとする。
【0016】
成分Dは、予備縮合されたメラミン誘導体及び/又はメラミン塩や付加物、リン酸エチレンジアミン(エチレンジアミンホスファート)、リン酸ピペラジン(ピペラジンホスファート)、ポリリン酸ピペラジン(ピペラジンポリホスファート)、1,3,5-トリヒドロキシエチルイソシアヌレート(イソシアヌル酸1,3,5-トリヒドロキシエチル)、1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート(イソシアヌル酸1,3,5-トリグリシジル)、トリアリルイソシアヌレート(イソシアヌル酸トリアリル)、又は、それらの混合物を含有している。予備縮合されたメラミン誘導体の例としては、メレム(melem)、メロン(melon)、メラム(melam)、メラミンシアヌレート(シアヌル酸メラミン)、メラミンボレート(ホウ酸メラミン)、メラミンオルトホスファート(オルトリン酸メラミン)、メラミンピロホスファート(ピロリン酸メラミン)、ジメラミンピロホスファート(ピロリン酸ジメラミン)、及び、メラミンポリホスファート(ポリリン酸メラミン)が挙げられる。
【0017】
該成分Dの化合物は、発泡剤として作用する。該予備縮合されたメラミン誘導体及び/又はメラミン塩やメラミン付加物は、安定であるので該難燃剤を含有しているプラスチックを加工処理している間、如何なる縮合反応あるいは如何なる分解反応も生起しないし、その結果、当該プラスチックの加工性能がかなりの程度高められる。同時に該難燃剤の作用は保持せしめられている。
【0018】
該成分Dの化合物は、ポリリン酸アンモニウムの分解温度に匹敵するかあるいはそれよりも高い分解温度を有しており、それ故に、ポリリン酸アンモニウム又はその誘導体の効能を高める働きをする。プラスチックに使用した場合、その安定性、加工性、及び、機械強度を維持せしめる。
【0019】
また、本発明の組成物における本発明の該難燃剤の上記成分は、当該難燃剤が使用されている高分子(ポリマー)の機械的性状をより良いものにするのに貢献する。
【0020】
本発明の該難燃剤の更なる利点は、慣用される難燃剤に比べて、より少ない量で同等の良好な作用又はより良好な作用を示すことであり、その結果、こうして処理されるプラスチックのコストを安価なものとし、より強くその機械的な性状に影響を与えないようにしたり、劣化せしめないようにする。薄いフィルム状のプラスチック、例えば、HDPE(高密度ポリエチレン)中、30%より少ない量の濃度でさえ、本発明の該難燃剤は非常に良好な難燃性の作用を示す。ポリプロピレン(PP)中で本発明の難燃剤ヲ使用する場合、該プラスチック中該難燃剤が25%より少ないか、あるいは20%より少ない濃度でさえ、その加工性能を劣るものにすることなく、良好な難燃剤としての作用を満足する。
【0021】
好ましくは、該成分Aは、被覆されているポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体であるかあるいはそれを含有するものである。該成分Aの被覆物(皮膜)は、水溶性を著しく低下せしめるように働くばかりでなく、該ポリリン酸アンモニウムの安定温度を高め、該ポリリン酸アンモニウムが当該難燃剤の他の成分と反応するのを低下せしめ、該難燃剤が使用されているポリマーとの適合性を増大せしめるように働く。
【0022】
一つの具体的な態様では、本発明の該難燃剤中の該成分Aは、被覆されている結晶形I、II又はVのポリリン酸アンモニウム、又はその混合物から選択される。
【0023】
特に好ましくは、成分Aは、被覆されている及び/又は被覆されていない結晶形IIのポリリン酸アンモニウム(それは、他の結晶形と比較して水にほとんど不溶である)を含有している。このものは、皮膜がなくてさえ水に対する溶解性が低く、同時に良好な難燃性の作用を有している粉末状の物質である。被覆されている結晶形IIのポリリン酸アンモニウムを使用することの利点は、このものは熱安定性がより大きく、ポリマー類との適合性がより高いものであり、その結果、ポリマー中に該難燃剤をより良好に分散させたり、ポリマーの加工性をより良好にしたり、より効率的に火炎保護作用を果たすことになるという事実から成るものである。
【0024】
好ましくは、この場合、該ポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体は、メラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シラン、シロキサン及び/又はポリスチレンでもって被覆されている。該粒子状ポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体と被覆物(皮膜物質)との間には、該ポリリン酸アンモニウムに結合せしめられているアンモニアが皮膜形成物質により置き換えられる間に、イオン性の結合が形成せしめられる。この結合は非常に安定であり、その結果、プラスチックを加工処理する間は、該被覆物は非常に安定である。
【0025】
メラミン被覆されたポリリン酸アンモニウムの製造は、250°Cより高い温度でなされる。その場合、反応時間は過剰なメラミンのいかなるものもポリリン酸アンモニウムの表面と完全に反応し、反応処理中にアンモニアを置換せしめ、そしてより良好に結合せしめられるようになるようにされる。
【0026】
また、ポリリン酸アンモニウムの粒子を、メラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シラン、シロキサン又はポリスチレンでもって被覆せしめ、ついで架橋処理せしめることは、好ましい。メラミン被覆物(皮膜)を架橋処理すると、ポリリン酸アンモニウムの水溶性を更に低下せしめることになるもので、それは、原則として、ホルムアルデヒドでもってなされる。その処理法は当業者には知られているものである。
【0027】
好ましくは、ポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体の被覆物の含量は、被覆されているポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体の全重量に基づき、0.1〜20 wt %、好ましくは、1〜10 wt %である。ポリリン酸アンモニウム対被覆物がそうした比率であると、ポリリン酸アンモニウムを最適に保護することが保障され、ポリリン酸アンモニウムと該難燃剤が使用されるべきポリマーとの適合性が、また、至適なものとなる。同時に、この比率であると、ポリリン酸アンモニウムに強くは結合していない遊離の被覆形成物質が離れてしまうことが起こるというように該被覆物が過剰に存在するということがない。
【0028】
特に好ましくは、ポリリン酸アンモニウム又はその誘導体の被覆されている粒子の平均の粒子径D50は、被覆物(皮膜)を含めて、5 μm〜30 μm、特には5 μm〜20 μm、そして特に好ましくは、7 μm〜18 μmである。それより大きな粒子では、ポリマー中に十分に均一に分散せしめることができないし、その結果、ある状況では、その性状に悪影響を与えることとなろう。同様に、それより小さな粒子では、それを秤量することが困難となり、好適でないものとなる。
【0029】
該被覆されているポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体においては、該被覆されている粒子のコア部(芯部)としてのポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体の粒子の平均の粒子径D50は、好ましくは、おおよそ7 μmである。また、それにより本発明の該難燃剤がより高い分解温度を示して、それにより、これまでに知られている難燃剤と比較して、より高い熱安定性を発揮することが達成される。
【0030】
成分Bとしては、オリゴマー又はポリマー(高分子)の1,3,5-トリアジン誘導体(ここで、nは、2〜50、特に好ましくは、2〜30、そして特別に好ましくは、3〜9の整数である)が、好ましく使用される。そうしたオリゴマーあるいはポリマーを製造する場合、異なる鎖の長さのものの混合物が通常形成される。
また、重合反応の間に生成されるそのような混合物としては、当該使用されるオリゴマーあるいはポリマーの70%よりも多く、好ましくは80%よりも多く、そして、特に好ましくは90%よりも多くが、n = 2〜50、好ましくはn = 2〜30、そして特に好ましくはn = 3〜9の鎖の長さを有しているものが、使用できる。ヘテロポリマー類、そしてホモポリマー類の双方が、ここで使用できる。
【0031】
成分Bとしての該1,3,5-トリアジン誘導体の好ましいモノマー類としては、2-ピペラジニレン-4-モルホリノ-1,3,5-トリアジンや2-ピペラジニレン-4-ピペリジノ-1,3,5-トリアジンが挙げられる。また、上記物質の混合せしめられているオリゴマー又はポリマーも使用できる。被覆されているポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体を備えている上記ポリマー又はオリゴマーの示す相乗的な効果は、特には、難燃剤の効能を増大せしめることである。
【0032】
該難燃剤の効果をさらに高め、そして特には該難燃剤をより少量の添加にすることを可能にする成分Cとしての化合物は、リン酸モノ亜鉛Zn(H2PO4)2、ホウ酸亜鉛、リン酸トリ亜鉛Zn3(PO4)2、ピロリン酸亜鉛Zn2P2O7、一般式: oZnO pP2O3 qH2O (式中、o 及びp は、1〜7であり、q は、0〜7である)のポリリン酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛ZnSn(OH)6、スズ酸亜鉛ZnSnO3、リン酸ホウ素(ホウリン酸)BPO4、リン酸モノアルミニウムAl(H2PO4)3、リン酸トリアルミニウムAlPO4、メタリン酸アルミニウム[Al(PO3)3]n、オクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)及びその混合物から選択された金属の塩類である。特にこれらの塩を使用すると、該成分AとBとの相互作用を介して、該難燃剤の傑出した作用が達成され、該難燃剤はポリマーに少量添加されてさえ、最高といえる難燃性のクラスに分類されることになるものとなるということを驚くことに見出した。
【0033】
該成分Dの予備縮合されたメラミン誘導体及び/又はメラミン塩やメラミン付加物のうち、メレム、メロン及びメラムが好適なものである。さらに該成分Dの好ましい化合物としては、メラミンシアヌレート(シアヌル酸メラミン)、メラミンボレート(ホウ酸メラミン)、メラミンオルトホスファート(オルトリン酸メラミン)、メラミンピロホスファート(ピロリン酸メラミン)、ジメラミンピロホスファート(ピロリン酸ジメラミン)、及び、メラミンポリホスファート(ポリリン酸メラミン)が挙げられる。これらの物質を添加すると、これらの物質は少量で発泡剤としても働くことで難燃剤をさらにより良いものとする効果がある。
【0034】
また、本発明は、本発明の該難燃剤を、5〜60 wt%の量、特に好ましくは10〜40 wt%の量含有する高分子材料、特には、熱可塑性エラストマーを包含する。例えば、たった0.8 mmのフィルムの厚さという薄さでさえ、そうした難燃化されたポリマーはPPあるいはHDPEやその他の可燃性のコポリマー類などの可燃性の高いプラスチックを使用してさえ非常に火災保護作用に対する要求を満足するものとなる。同時に本発明の難燃剤により、当該難燃剤処理されたプラスチックの柔軟性(フレキシビリティ)と加工性能は、知られている難燃剤で処理されているプラスチックと比較すると、改善せしめられている。
【0035】
好ましい高分子材料は、充填型及び未充填型ポリオレフィン類、ビニルポリマー類、オレフィンコポリマー類、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン類(TPU)、ポリエステル類及びコポリエステル類(TPC)、スチレンブロックコポリマー類(スチレンブロック共重合体類、TPS)及びポリアミド類及びコポリアミド類(TPA)から選択されたものである。特に、本発明の難燃剤をオレフィン系熱可塑性エラストマー、架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー又はスチレンブロックコポリマーと使用すると、そのプラスチックの機械的な性状、特には耐摩耗性に対し、好ましい影響がある。このようにそうした難燃剤処理された熱可塑性エラストマーは、特に、ケーブル類、配線系、電気ケーブル用の配管及び排水システムの配管類におけるPVCの代替物として使用できる。特に好ましくは、本発明の当該熱可塑性エラストマーは、スチレンブロックコポリマー類(スチレンブロック共重合体、TPS)から選択されたもの、好ましくは、スチレンブロックコポリマー(又はスチレンブロック共重合体)であるSBS(スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(又はスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体)、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(又はスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体)、SEEPS(スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(又はスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体)及びMBS(メタクリレート-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(又はメタクリレート-ブタジエン-スチレンブロック共重合体)から選択されたものである。
【0036】
熱可塑性エラストマー、特にスチレンブロックコポリマーは、中でも、それらは可燃性を高めるオイルを高い比率で含有することから、比較的簡易に、原則として、多くの他のタイプのポリマーよりもより容易に可燃性となる。それ故に、まさか熱可塑性エラストマーが難燃化せしめられることができるとか、特には、本発明の難燃剤で本発明に従って達成されて効果的にそれをなしうるということは、特には驚くべきことである。良好な難燃作用を達成するために必要な該高分子マトリックス中の難燃剤の比率としては、原則として、ある種の他のタイプのポリマーについてより、幾分か、より高いものであるが、しかしながら、非常に多くのタイプの熱可塑性エラストマーに関しては、本難燃剤をより高い比率とすることでは、顕著には機械的性状やその他の性状に悪い影響を与えない。
【0037】
さらに、本発明の難燃剤とは別に、該高分子材料は、好ましくは、その他の充填剤(フィラー)を含有している。該充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、クレイ又はマイカなどのシリケート(ケイ酸塩)、シリカ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラスファイバー並びにガラスビーズ、また、木粉、セルロース粉末、スス(カーボンブラック)及びグラファイトから選択されたものである。これらの充填剤は、プラスチックにその他の所要の性質を与えることができる。特に、それによりプラスチックの価格を低減できる。そして、プラスチックを着色することもでき、プラスチックの所要の機械的性質をより良いものにできる。例えば、グラスファイバーを用いて強化プラスチックにできる。
【0038】
本発明の高分子材料のさらなる具体的な例では、該ハロゲン不含の難燃剤中の該成分Bは塩素含有量が <1 wt%であり、好ましくは <0.8 wt %である。これは、知られている難燃剤では望ましくない大量の塩素が無機的にあるいは有機的に結合せしめられている塩素の形態で導入されることから、当該技術分野の状況と比べて、特に利点がある。
【0039】
本願発明のさらなる具体的な態様では、該高分子材料は全体として、 <1500 wt. ppmの塩素含有量、好ましくは <900 wt. ppmの塩素含有量を持つものである。これは、知られている難燃剤では望ましくない大量の塩素が無機的にあるいは有機的に結合せしめられている塩素の形態で導入されることから、当該技術分野の状況と比べて、特に利点がある。用語「ハロゲン不含の」とは、本発明では、上述の最大値の量にあるといった低い塩素不純物含量を許容するものである。しかしながら、塩素又は一般的にはハロゲンは、普通、ハロゲンによる悪影響を避けるために、低くされるべきである。
【0040】
本発明の高分子材料の更なる具体例では、該ハロゲン不含の難燃剤中で分散用助剤が、0.01〜10 wt%の量、好ましくは、0.1〜5.0 wt%の量含有されており、当該分散用助剤は、好ましくは、例えば、オレイン酸アミドやエルカ酸アミドなどの、脂肪酸モノアミド類、脂肪酸ビスアミド類及び脂肪酸アルカノールアミド類を包含する脂肪酸モノアミド類から選択されるか、グリセリンエステルやワックスエステルを包含する脂肪酸エステル類から選択されるか、C16〜C18脂肪酸類から選択されるか、セチル並びにステアリル脂肪酸アルコール類を包含する脂肪酸アルコール類から選択されるか、天然や合成のワックス類、ポリエチレンワックス類及び酸化されているポリエチレンワックス類から選択されるか、あるいは、金属ステアレート類、好ましくはCa、Zn、Mg、Ba、Al、Cd又はPbのステアレート類から選択されるものである。上記した分散用助剤を添加すると、該難燃剤の計量性、該高分子材料の押し出し加工性、そして該高分子マトリックス内での該分散化された難燃剤の均一性をより良いものにする。
【0041】
本発明の高分子材料の更なる具体例では、該ハロゲン不含の難燃剤は、遊離の水の含有量(湿度含量)が <0.6 wt%、好ましくは <0.4 wt%である。また、水分含量が低いと、該難燃剤の計量性、該高分子材料の押し出し加工性、そして該高分子マトリックス内での該分散化された難燃剤の均一性をより良いものにする。
【実施例】
【0042】
実施例をいくつか下記に記載する。これらの実施例は、本発明に従ったポリマー(高分子材料)と本発明によるものでないポリマー(高分子材料)の両方を含むもので、そこでは当該難燃剤が使用せしめられているものである。
【0043】
本実施例に関し、各種のテストのためのテスト片をブラベンダー(Brabender)のプラスチックニーダー中で調製した。このため、まず、難燃剤を何ら添加してないポリマーを攪拌しながら溶融せしめた。次に、当該成分A、B、C及び/又はDを、その溶融物(メルト)中に一ステップでもって混合物としてあるいは順次続けて添加した。10〜15分間の均一相化処理の後、プラスチック物質を取り出して、加熱用プレスを使用してプレスせしめ、0.8 mm及び1.6 mmの厚さを有する板(プレート)にした。プレスして得られた板をノコで適当なテスト片に切断し、下記するテストに付した。
【0044】
様々に異なったテスト片及び比較テスト片の組成は、表1に示してある。使用したトリアジン誘導体は、2-ピペラジニレン-4-モルホリノ-1,3,5-トリアジンのポリマーである。さらに、被覆されていないポリリン酸アンモニウム(FR CROS 484)、メラミンで被覆されたポリリン酸アンモニウム(FR CROS C40)又はメラミンで被覆され且つ架橋されているポリリン酸アンモニウム (FR CROS 498)を使用した(製造業者: ケミシェ・ファブリク・ブーデンハイム(Chemische Fabrik Budenheim)よりそれぞれ入手)。メラミンポリホスファートとしては、Budit 3141(製造業者: ブーデンハイム・イベリカ(Budenheim Iberica))又はMelapur 200 (製造業者: CIBA)を使用した。使用したリン酸アルミニウムは、Fabutit (製造業者: ケミシェ・ファブリク・ブーデンハイム(Chemische Fabrik Budenheim))であり、メラミンシアヌレートは、ブーデンハイム・イベリカ(Budenheim Iberica)よりBudit 315として入手できる。略号HDPEは、高密度ポリエチレンを示し、PPはポリプロピレンを示す。
【0045】
実施例番号として、Vが付されていない数字で示されているのが、本発明の実施例である。実施例番号として、Vが付された数字で示されているのが、比較例であって、本発明の実施例ではないものである。
【0046】
UL94垂直燃焼試験(UL94 Vertical Test)
燃焼性UL94垂直試験(UL94垂直テスト)、それは下記ではUL94 Vとして記載されているが、そのテストを実施するため、それぞれ1.6 mm又は0.8 mmの厚さを有する5個のテスト片をセットとして、垂直の向きとなるようにして一端をクランプで固定した。
テスト片の固定してない一端側にブンゼンバーナーの炎を10秒の間に2回接炎せしめた。この後、それぞれの場合の試験片の炎が消えてしまうまでの時間あるいはグローイング燃焼の時間を測定した。同時に、テスト片からの着火滴下物により、その下に置かれた綿に着火するか否かをみた。結果を表2に示す。
【0047】
それぞれにおいて、「TBT」とは、5個のテスト片すべての燃焼時間の和を秒で表したものを示す。
【0048】
本テストは、アンダーライター・ラボラトリーズ(Underwriter Laboratories)、UL 94V規格(Standard UL 94V)の指示に従って行われた。「UL94」は、テスト片の難燃性を次のように分類する、すなわち、V0 とは、試験された5個のテスト片の燃焼時間の合計が50秒を下回るもので、滴下するテスト片の発火物又は燃焼物による綿への着火がないことを意味するものである。当該分類のV2とは、試験された5個のテスト片の燃焼時間の合計が250秒を下回るものであるが、しかしながら、滴下するテスト片の成分で綿への着火がある場合を意味するものである。
【0049】
LOI試験(限界酸素指数テスト)
N2/O2の混合気体中で、着火した後サンプルが燃焼を持続させるのに必要な最小酸素濃度が、LOI値(限界酸素指数、limiting oxygen index)である。LOI値が大きければ大きいほど、そのサンプルはより難燃性があることになる。ここで30%を上回っているLOI値は、非常に良好である。大きなLOI値は、特にケーブル工業で必要とされる基準を満足するために重要である。
【0050】
テストは、DIN EN ISO 4589 part 2に従って行った。テスト片は、1.25 mm×3.0×6.5 mmのサイズのものであった。
【0051】
また、これらのテストの結果は、表2に示してある。LOI値は、パーセントで示してある。
【0052】
難燃剤の分解温度のテスト
更なるテストとして、ポリマー中に配合して入れることをしないで種々の難燃剤をそれだけで加熱処理し、分解の発生する温度を記録した。当該分解温度は、通常、2%の重量損失が生じた温度として記述される。
【0053】
これらのテストは、熱重量分析により行った。このためそれぞれ10 mgの量の難燃剤をルツボ中に置き、10 ケルビン(Kelvin)/minの温度上昇速度で350°Cを超える温度まで加熱処理した。加熱中、サンプルの重量の変化を測定した。
【0054】
これらのテストの結果を、表3に示す。
【0055】
全部で、本発明の組成物14種(実施例1〜14)並びに比較の組成物4種(実施例V1〜V4)についてテストを行った。
【0056】
特に0.8 mmのフィルム厚さを有しているテスト片では、明らかに、本発明の難燃剤及び本発明の難燃剤を含有しているポリマーは、類似したこれまで使用されてきた難燃剤と比べて、著しいるしい改善を達成していた。本発明の高分子材料は、ほとんどすべて、0.8 mmのフィルムの厚さでUL94のテストで最高の難燃性の分類であるV0になっていたが、比較例では、こうしたことはなかった。
【0057】
実施例3及び4に示す場合のように、該プラスチック中わずか20%の難燃剤を含有するものでさえ、UL94のテストでV2の区分に至るものであった。
【0058】
特に、非常に薄いフィルムの厚さで且つ30%より少ないあるいは25%より少ない難燃剤含量のところで最高の難燃性のランクが得られ、そしてプラスチック中20%より少ないところでさえ良好な難燃性のランクであるということは、プラスチック、特には非常に薄いフィルムの厚さを有している熱可塑性ポリオレフィン類やエラストマー類を難燃剤で処理することを可能とするものであり、それによってハロゲン不含の熱膨張性の難燃剤の新たな用途応用の可能性を拓くものとなる。こうした用途応用としては、ケーブル類の被覆物類、ケーブル用ダクト類、シート用材、エレクトロニック部材、電気器具やエレクロトニックデバイス用のハウジング類などが挙げられる。さらには、そうした材料を製造する場合に、本発明の難燃剤は、使用された熱可塑物(熱可塑性プラスチック)において優れた効果を奏し、その結果、少ない使用量並びに当該成分AとBに当該成分Cと任意のDを組み合わせての特別な相互作用により、このようにして処理されたポリマーの機械的性状を変えることなく保持せしめるという利点がある。また、本発明の難燃剤は、非常に発煙性が低いという特徴がある。
【0059】
特に、実施例5、6、7及び8は、成分Dを添加することにより、燃焼時間の合計がわずかながら延長せしめられ、一方、分解温度又は限界酸素指数(LOI)は、同様に、上昇せしめられたこと、すなわち、本発明によるテスト片あるいは本発明に従ってのポリマーをさらに燃焼するにはより高い酸素濃度で可能となるのみであることを示している。
【0060】
ここで、実施例5では、全体で25%だけの該難燃剤(これは、76%のメラミン被覆ポリリン酸アンモニウム、16%の当該トリアジン化合物及びそれぞれ4%のピロリン酸亜鉛とメラミンシアヌレートから成っている)を含有するものである。本成分のものは、特に、良好な難燃剤としての作用を持ち、非常に大きな酸素指数を示し、そして非常に高い分解温度を示すという性質を含めた性状をバランスのとれたものとする。
【0061】
本実施例で示されているように、該成分Dを添加すると、本発明の難燃剤の分解温度をより高いほうにシフトせしめることができる。かくして、用途に応じて、該成分Dを添加したりあるいは省くことにより、ある種の所望される性状を強化せしめることができる。
【0062】
本発明のすべての難燃剤あるいは本発明の難燃剤で処理されているポリマー並びに本発明のこうしたポリマーは、共に、非常に短い燃焼時間を有しており、また、非常に大きな酸素指数を有しており、そして非常に高い分解温度を有している。加えて、該ポリマーは、加工可能であり、環境に対して有害であるPVCを本発明のポリマーで置き換えることも可能である。
【0063】
【表1】


【0064】
【表2】


【0065】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックス中に配合されて入れられるハロゲン不含の難燃剤であって、
該難燃剤が、少なくとも次なる成分A、B及びC、そして任意の成分D:
A: ポリリン酸アンモニウム(ポリリン酸アンモニウム類)及び/又はその誘導体、
B: 次式
【化1】



(上式中、
Xは、モルホリノ残基、ピペリジノ残基又はピペラジンから誘導される基、
Yは、ピペラジンから誘導される二価の基、そして、
nは、1より大きな整数である)
のオリゴマー又はポリマーの1,3,5-トリアジン誘導体又はそれらの混合物、
C: リン酸モノ亜鉛、ホウ酸亜鉛、リン酸トリ亜鉛、ピロリン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸ホウ素(ホウリン酸)、リン酸モノアルミニウム、リン酸トリアルミニウム、メタリン酸アルミニウム、及び、それらの混合物から選択される化合物、
D: 予備縮合されたメラミン誘導体、メラミン塩又はメラミン付加物、リン酸エチレンジアミン、リン酸ピペラジン、ポリリン酸ピペラジン、1,3,5-トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレート、
を含有し、上記成分A対上記成分Bの重量比は、10:1〜1:1であり、上記成分AとBとは、併せて、上記成分A、B、C及びDの全体の重量の60〜99 wt%となし、上記成分CとDとは、併せて、上記成分A、B、C及びDの全体の重量の1〜40 wt%となしてあることを特徴とするハロゲン不含の難燃剤。
【請求項2】
前記成分Aが、被覆されているポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体であるかあるいはそれを含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項3】
前記成分Aが、被覆されている及び/又は被覆されていない結晶形IIのポリリン酸アンモニウムであるかあるいはそれを含有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項4】
前記成分Aとしての前記ポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体が、メラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シラン、シロキサン及び/又はポリスチレンでもって被覆されている粒子、及び/又は、メラミン、メラミン樹脂、メラミン誘導体、シラン、シロキサン又はポリスチレンでもって被覆及び架橋されている粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項5】
前記成分Aとしての前記ポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体の被覆物の割合が、前記被覆されているポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体の重量全体に基づいて0.1〜20 wt%、好ましくは1〜10 wt%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項6】
被覆物を含有している成分Aとしての前記被覆されているポリリン酸アンモニウム及び/又はその誘導体が、5〜30 μmの平均粒子サイズD50、好ましくは、5〜20 μmの平均粒子サイズD50を有しているものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項7】
成分Bにおいて、nは、2〜50の整数であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項8】
成分Bとしての該1,3,5-トリアジン誘導体は、2-ピペラジニレン-4-モルホリノ-1,3,5-トリアジン又は2-ピペラジニレン-4-ピペリジノ-1,3,5-トリアジンのオリゴマー又はポリマー及びそれらの化合物の配合物から選択されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項9】
成分Dは、メレム、メロン、メラム、メラミンシアヌレート、メラミンボレート、メラミンオルトホスファート、メラミンピロホスファート、ジメラミンピロホスファート、及び、メラミンポリホスファートから選択されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項10】
成分Bは、 <1 wt%の塩素含有量、好ましくは、 <0.8 wt%の塩素含有量のものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項11】
さらに、分散用助剤を、0.01〜10 wt%の量、好ましくは、0.1〜5.0 wt%の量含有しており、当該分散用助剤は、好ましくは、例えば、オレイン酸アミドやエルカ酸アミドなどの、脂肪酸モノアミド類、脂肪酸ビスアミド類及び脂肪酸アルカノールアミド類を包含する脂肪酸モノアミド類から選択されるか、グリセリンエステルやワックスエステルを包含する脂肪酸エステル類から選択されるか、C16〜C18脂肪酸類から選択されるか、セチル並びにステアリル脂肪酸アルコール類を包含する脂肪酸アルコール類から選択されるか、天然や合成のワックス類、ポリエチレンワックス類及び酸化されているポリエチレンワックス類から選択されるか、あるいは、金属ステアレート類、好ましくはCa、Zn、Mg、Ba、Al、Cd又はPbステアレート類から選択されるものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項12】
<0.6 wt%の遊離水の含有量(湿度含有量)、好ましくは、 <0.4 wt%の遊離水の含有量(湿度含有量)のものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一に記載のハロゲン不含の難燃剤を、5〜60 wt%の量で、好ましくは10〜40 wt%の量で含有している、特に熱可塑性エラストマー(TPE)を包含する高分子材料。
【請求項14】
該高分子材料は、充填剤を配合せしめられている又は充填剤の配合せしめられていないポリオレフィン類、ビニルポリマー類、オレフィンコポリマー類、オレフィン系熱可塑性エラストマー類(TPO)、架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー類、ウレタン類(TPU)、ポリエステル類及びコポリエステル類(TPC)、スチレンブロックコポリマー類(TPS)、ポリアミド類及びコポリアミド類(TPA)から選択されたものであることを特徴とする請求項13に記載の、特に熱可塑性エラストマー(TPE)を包含する高分子材料。
【請求項15】
該高分子材料は、スチレンブロックコポリマー類(TPS)から選択された熱可塑性エラストマー、好ましくはスチレンブロックコポリマー類であるSBS(スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー)、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー)、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー)、SEEPS (スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー)及びMBS(メタクリレート-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー)から選択された熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項13又は14に記載の、特に熱可塑性エラストマー(TPE)を包含する高分子材料。
【請求項16】
該高分子材料は、充填剤(フィラー)を含有するもので、該充填剤は、好ましくは、炭酸カルシウム、シリケート、タルク、クレイ、マイカ、シリカ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ガラスファイバー並びにガラスビーズ、木粉、セルロース粉末、スス(カーボンブラック)及びグラファイトから選択されたものであることを特徴とする請求項13又は15に記載の、特に熱可塑性エラストマー(TPE)を包含する高分子材料。

【公表番号】特表2010−534757(P2010−534757A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518636(P2010−518636)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059830
【国際公開番号】WO2009/016130
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(596009652)
【Fターム(参考)】