説明

ハロゲン不含難燃剤組成物

本開示は、柔軟性のあるハロゲン不含の難燃剤組成物を提供する。該組成物は、約25重量%から約95重量%までの熱可塑性ポリウレタン(TPU);約5重量%から約50重量%までのオレフィンブロックコポリマー(OBC);及び約30重量%から約70重量%までの難燃剤を含む。該難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスジフェニルホスフェート(BDP)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)(BPADP)、アルミニウム三水和物(ATH)、窒素/リンベースのハロゲン不含難燃剤、エポキシ化ノボラック樹脂、及びそれらの組合せから選択される。該組成物は、TPU及びOBC用の相溶化剤を必要としない。該組成物は、電線及びケーブル構造に用途を見出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、良好な柔軟性、低い熱変形、及び低い収縮を有するハロゲン不含難燃剤組成物を対象にする。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)ベースのハロゲン不含難燃剤組成物が知られている。TPUは、多くの用途に適する機械的性質、低い熱変形、及び柔軟性を提供する。しかし、TPUは、いくつかの欠点を有する。TPUは、高価であり、高い物質密度も有する。さらに、TPUベースのハロゲン不含難燃剤は、特に射出成形される場合に収縮する。
【0003】
TPUの通常のポリオレフィンとの複合材は、TPUのこれらの欠点を克服できない。TPUと通常のポリオレフィンの間の相溶性は、成分の間の極性の違いによって不十分である。通常のポリオレフィンのTPUへの添加は、一般的に、最終複合材の難燃性能を低下させる。さらに、TPU/ポリオレフィン複合材は、TPU単独と比べて熱変形特性が劇的に低下する。エチレンベースのエラストマーなどのポリオレフィンエラストマーは、一般的に、100℃より低い融点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
難燃性能を損なわずに、TPUの卓越した機械的性質及び熱変形性能を保ったハロゲン不含のTPUベースの組成物のニーズが存在する。射出成形された場合に収縮しないTPUベースのハロゲン不含難燃剤組成物のニーズもさらに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、組成物を提供する。一実施形態において、一組成物が提供され、組成物は、約25重量%から約95重量%までの熱可塑性ポリウレタン(TPU)、約5重量%から約50重量%のオレフィンブロックコポリマー(OBC)、及び約30重量%から約70重量%の難燃剤を含む。難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスジフェニルホスフェート(BDP)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)(BPADP)、アルミニウム三水和物(ATH)、窒素/リンベースのハロゲン不含難燃剤、エポキシ化ノボラック樹脂、及びそれらの組合せから選択される。
【0006】
上記組成物は、TPU及びOBCのための相溶化剤を必要としない。一実施形態において、上記組成物は、相溶化剤不含である。
【0007】
本開示は、別の組成物を提供する。一実施形態において、一組成物が提供され、組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂と難燃剤(TPU/FR)とのコンパウンド及び約1重量%から約40重量%までのオレフィンブロックコポリマー樹脂と難燃剤(OBC/FR)とのコンパウンドを含む。上記組成物は、上記組成物の合計重量に対して約30重量%から約70重量%までの総難燃剤をさらに含む。
【0008】
本開示は、一方法を提供する。一実施形態において、組成物を生成する方法が提供され、方法は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂を難燃剤(FR)とブレンドするステップ及びTPU/FRコンパウンドを形成するステップを含む。該方法は、オレフィンブロックコポリマー(OBC)樹脂を難燃剤(FR)とブレンドするステップ及びOBC/FRコンパウンドを形成するステップを含む。該方法は、TPU/FRコンパウンド及びOBC/FRコンパウンドをブレンドするステップを含む。該方法は、組成物の合計重量に対して約5重量%から約40重量%までのOBC樹脂及び約30重量%から約70重量%までの総難燃剤を含む難燃剤組成物を形成するステップを含む。
【0009】
本開示は、被覆導体を提供する。一実施形態において、被覆導体が提供され、被覆導体は、金属導体及び該金属導体上の被覆を含む。該被覆は、熱可塑性ポリウレタン、オレフィンブロックコポリマー、及び難燃剤を含有する組成物を含む。
【0010】
本開示の一利点は、改善された柔軟な、ハロゲン不含の難燃剤組成物である。
【0011】
本開示の一利点は、難燃性能を損なわない良好な柔軟性及び低い熱変形を有する難燃剤組成物の提供である。
【0012】
本開示の一利点は、TPUをOBCとブレンドするために相溶化剤を必要としない難燃剤TPU/OBCブレンドの提供である。
【0013】
本開示の一利点は、低い熱変形を有する難燃剤組成物の提供である。
【0014】
本開示の一利点は、TPU/OBC/FR組成物から構成される射出成形物品であり、該物品は、収縮をまったく又はほぼまったく示さない。
【0015】
本開示の一利点は、VW−1試験に合格する組成物で被覆された導体である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本開示の一実施形態による一組成物の原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【図1B】本開示の一実施形態による一組成物の原子間力顕微鏡(AFM)画像である。
【図2A】本開示の一実施形態による一組成物のAFM画像である。
【図2B】本開示の一実施形態による一組成物のAFM画像である。
【図3】本開示による実施形態による組成物のAFM画像である。
【図4】本開示による実施形態による組成物のAFM画像である。
【図5】本開示による実施形態による組成物のAFM画像である。
【図6】本開示による実施形態による組成物のAFM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
元素の周期律表への全ての参照は、2003年にCRC Press, Inc.によって刊行され著作権で保護された元素の周期律表を意味する。同様に、族(Group又はGroups)へのいずれの参照も、族の番号付けのためのIUPACシステムを使用するこの元素の周期律表に記載された族への参照とする。反対の記載がある、文脈から黙示されている、又は当技術分野で慣習的である場合を除き、全ての部及び百分率は、重量に基づき、全ての試験方法は、本開示の出願日現在のものである。米国特許の実施の目的で、任意の参照された特許、特許出願又は公開の内容は、特に合成技術、生成物及びプロセス設計、ポリマー、触媒、定義(本開示に具体的に提供されたいずれの定義とも矛盾しない程度に)、及び当技術分野における一般的な知見の開示に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれている(又はその等価な米国版が参照によりそのように組み込まれている)。
【0018】
本開示における数値域は、他に指示がない限り、近似であり、したがって、数値域の外の値を含み得る。数値域は、任意の下限値と任意の上限値の間に少なくとも2単位の隔たりがあることを条件として、1単位きざみで下限値及び上限値を含めて全ての数値を含む。一例として、例えば、分子量、重量百分率などの組成特性、物理特性又は他の特性が、100から1,000までである場合、全ての個別の値、例えば100、101、102など、及び下位数値域、例えば100から144まで、155から170まで、197から200までなどが、明確に列挙されることを意味する。1未満である値を含む又は1より大きい分数(例えば、1.1、1.5など)を含む数値域について、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01又は0.1であると考えられる。10未満の1桁の数を含む数値域について、1単位は、一般的に、0.1であると考えられる。これらは、具体的に意図されたものの例にすぎず、列挙された下限値と上限値の間の数値の全ての可能な組合せは、本開示に明確に記載されているものと考えるべきである。とりわけ、本発明の組成物中の種々の成分の量、本発明の組成物の難燃剤成分中の種々の成分の量、並びにそれによって、これらの組成物及びこれらの組成物から作られる電線及びケーブルシースが定義される種々の特徴及び特性について、本開示内で数値域が提供される。
【0019】
「電線」は、導体金属、例えば、銅若しくはアルミニウムの1本のストランド、又は光ファイバーの1本のストランドである。
【0020】
「ケーブル」は、シース、例えば、絶縁被覆又は保護外被内の少なくとも1本の電線又は光ファイバーである。一般的に、ケーブルは、一般的に、通常の絶縁被覆及び/又は保護外被中の一緒に束ねられた2本以上の電線又は光ファイバーである。シース内の個別の電線又はファイバーは、裸であり、被覆されており又は絶縁されていてよい。組合せケーブルは、電線及び光ファイバーの両方を含み得る。ケーブル等は、低電圧、中電圧及び高電圧用途に設計することができる。一般的なケーブル設計は、米国特許第5,246,783号、6,496,629号及び6,714,707号に示されている。
【0021】
「組成物」は、2種以上の成分の混合物又はブレンドである。
【0022】
「ポリマーブレンド」(及び同様の用語)は、2種以上のポリマーのブレンドである。このようなブレンドは、混和性であることも混和性でないこともある。このようなブレンドは、相分離されていることも相分離されていないこともある。このようなブレンドは、透過型電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当技術分野で知られている任意の他の方法で求めて、1つ又は複数のドメイン配置を含むことも含まないこともある。
【0023】
用語「ポリマー」(及び同様の用語)は、同一又は異なるタイプのモノマーを反応(即ち、重合)させることによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」には、ホモポリマー及び共重合体が含まれる。
【0024】
「共重合体」は、少なくとも2種の異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーである。この総称には、通常、2種の異なるモノマーから調製されるポリマーを意味するために使用されるコポリマー、及び3種以上の異なるモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどが含まれる。
【0025】
「オレフィンベースのポリマー」(及び同様の用語)は、ポリマーの合計重量に対して大部分の重量%のオレフィン、例えば、エチレン又はプロピレンを、重合形態で含有するポリマーである。オレフィンベースのポリマーの限定されない例には、エチレンベースのポリマー及びプロピレンベースのポリマーが含まれる。
【0026】
「ハロゲン不含」(及び同様の用語)は、ハロゲン分を有さない又はほぼ有さない組成物であり、即ち、イオンクロマトグラフィ(IC)又は同様の分析法で測定して2000mg/kg未満のハロゲンを含む。この量未満のハロゲン分は、電線又はケーブル被覆材としての組成物の有効性に重要ではないと考えられる。
【0027】
「膨張性難燃剤」(及び同様の用語)は、火災加熱中にポリマー材料の表面に形成される発泡炭化物を生じる難燃剤である。
【0028】
本開示は、一組成物を提供する。該組成物は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、オレフィンブロックコポリマー(OBC)、及び難燃剤(FR)を含む。難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)(BPADP)、アルミニウム三水和物(ATH)、窒素/リンベースのハロゲン不含難燃剤、エポキシ化ノボラック樹脂、及びそれらの組合せから選択される。該組成物は、酸化防止剤、紫外線安定剤、着色剤、加工助剤、充てん剤などを場合によって含む。
【0029】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)
「熱可塑性ポリウレタン」(又は「TPU」)は、ポリイソシアネート(一般的に、ジ−イソシアネート)、1種又は複数のポリマージオール(複数可)、及び場合によって1種又は複数の二官能性連鎖延長剤(複数可)の反応生成物である。本明細書で使用される「熱可塑性」は、(1)その元の長さを超えて伸ばされ、解放されるとほぼその元の長さに引っ込む能力を有し、(2)熱にさらされると軟化し、室温に冷却されるとほぼその元の状態に戻るポリマーである。
【0030】
TPUは、プレポリマー、準プレポリマー、又はワンショット法によって調製することができる。イソシアネートは、TPU中のハードセグメントを形成し、芳香族、脂肪族、又は脂環式イソシアネート及びこれらの化合物の2種以上の組合せであり得る。ジ−イソシアネート(OCN−R−NCO)から誘導される構造単位の限定されない一例が、式(I)によって表される
【0031】
【化1】

(式中、Rは、アルキレン、シクロアルキレン、又はアリーレン基である)。これらのジ−イソシアネートの代表例は、米国特許第4,385,133号、4,522,975号及び5,167,899号に見出すことができる。好適なジ−イソシアネートの限定されない例には、4,4’−ジ−イソシアナトジフェニル−メタン、p−フェニレンジ−イソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,4−ジ−イソシアナト−シクロヘキサン、ヘキサメチレンジ−イソシアネート、1,5−ナフタレンジ−イソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジ−イソシアネート、4,4’−ジ−イソシアナト−ジシクロヘキシルメタン、2,4−トルエンジ−イソシアネート、及び4,4’−ジ−イソシアナト−ジフェニルメタンが含まれる。
【0032】
ポリマージオールは、得られるTPU中のソフトセグメントを形成する。ポリマージオールは、例えば、200から10,000g/モルまでの範囲の分子量(数平均)を有し得る。2種以上のポリマージオールを使用し得る。好適なポリマージオールの限定されない例には、ポリエーテルジオール(「ポリエーテルTPU」を生ずる);ポリエステルジオール(「ポリエステルTPU」を生ずる);ヒドロキシ末端ポリカーボネート(「ポリカーボネートTPU」を生ずる);ヒドロキシ末端ポリブタジエン;ヒドロキシ末端ポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマー;ジアルキルシロキサン及びエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドのヒドロキシ末端コポリマー;天然油ジオール、及びそれらの組合せが含まれる。前述のポリマージオールの1種又は複数を、アミン末端ポリエーテル及び/又はアミノ末端ポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマーと混合することができる。
【0033】
二官能性連鎖延長剤は、鎖中に2個以上10個以下の炭素原子を有する脂肪族直鎖及び分枝鎖ジオールであり得る。このようなジオールの実例となるのは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど;1,4−シクロヘキサンジメタノール;ヒドロキノンビス−(ヒドロキシエチル)エーテル;シクロヘキシレンジオール(1,4−、1,3−、及び1,2−異性体)、イソプロピリデンビス(シクロヘキサノール);ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミンなど;及び上記のいずれかの混合物である。先に記載のように、いくつかの場合、二官能性延長剤の少量部分(約20当量%未満)が、得られるTPUの熱可塑性を損なうことなく三官能性延長剤で置換されていてよく、このような延長剤の実例となるのは、グリセロール、トリメチロールプロパンなどである。
【0034】
連鎖延長剤は、特定の反応成分の選択、ハード及びソフトセグメントの所望量、並びに弾性率及び引裂強さなどの良好な機械的性質を提供するために十分な指標によって決定される量でポリウレタン中に混合される。ポリウレタン組成物は、例えば、2から25重量%まで、好ましくは3から20重量%まで、より好ましくは4から18重量%までの連鎖延長剤成分を含有することができる。
【0035】
場合によって、「連鎖停止剤」としばしば呼ばれる少量のモノヒドロキシル官能性又はモノアミノ官能性化合物が、分子量を制御するために使用され得る。このような連鎖停止剤の実例となるのは、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールである。使用される場合、連鎖停止剤は、一般的に、ポリウレタン組成物をもたらす反応混合物全体の0.1から2重量%までの少量で存在する。
【0036】
ポリマージオールの前記連鎖延長剤に対する当量割合は、TPU製品の所望の硬さに応じて著しく変化し得る。一般的に言えば、当量割合は、約1:1から約1:20まで、好ましくは約1:2から約1:10までのそれぞれの範囲に含まれる。同時に、イソシアネートの当量の活性水素含有物質の当量に対する全体比は、0.90:1から1.10:1まで、好ましくは0.95:1から1.05:1までの範囲に含まれる。
【0037】
一実施形態において、TPUは、ASTM D2240で測定して70−95のショアA硬度を有するポリエーテルベースのポリウレタンである。
【0038】
好適なTPUの限定されない例には、Lubrizol Corporationから市販されているPELLETHANE(商標)熱可塑性ポリウレタンエラストマー;Noveonから全て市販されているESTANE(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOFLEX(商標)熱可塑性ポリウレタン、CARBOTHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOPHILIC(商標)熱可塑性ポリウレタン、TECOPLAST(商標)熱可塑性ポリウレタン、及びTECOTHANE(商標)熱可塑性ポリウレタン;BASFから市販されているELASTOLLAN(商標)熱可塑性ポリウレタン及び他の熱可塑性ポリウレタン;並びにBayer、Huntsman、the Lubrizol Corporation及びMerquinsaから市販されている熱可塑性ポリウレタンが含まれる。
【0039】
一実施形態において、組成物は、25重量%から95重量%まで、又は30重量%から50重量%までのTPUを含有する。重量%は、組成物の合計重量に基づく。
【0040】
一実施形態において、TPUは、ポリエーテルベースのTPUである。さらなる一実施形態において、組成物は、1種類のTPU又は1種類のみのTPUを含有する。1種類のみのTPUは、ポリエーテルベースのTPUである。
【0041】
オレフィンブロックコポリマー(OBC)
本組成物は、オレフィンブロックコポリマーも含む。「オレフィンブロックコポリマー」、(又は「OBC」)、「オレフィンブロック共重合体」、「マルチブロック共重合体」、「セグメント化共重合体」は、ペンダント又はグラフトよりむしろ、好ましくは直鎖で結合している2種以上の化学的に明確な領域又はセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマー、即ち、重合したオレフィン性、好ましくはエチレン性官能基に関して末端間で結合した化学的に差別化された単位を含むポリマーである。一実施形態において、ブロックは、組み込まれるコモノマーの量又はタイプ、密度、結晶化度、このような組成のポリマーに起因する結晶サイズ、立体規則性のタイプ又は程度(アイソタクチック又はシンジオタクチック)、レジオ規則性又はレジオ不規則性、分岐の量(長鎖分岐又は超分岐を含む)、均質性又は任意の他の化学的又は物理的性質の点で異なる。逐次モノマー付加、流動触媒(fluxional catalyst)、又はアニオン重合技術によって生成される共重合体を含む先行技術のブロック共重合体に比べて、本開示の実施において使用されるマルチブロック共重合体は、一実施形態においてそれらの調製において使用される多重触媒と組み合わせたシャトリング剤(shuttling agent)(複数可)の効果による両方のポリマー多分散性の独特の分布(PDI又はMw/Mn又はMWD)、ブロック長さ分布、及び/又はブロック数分布を特徴とする。より具体的には、連続プロセスで生成される場合、ポリマーは、望ましくは、1.7から3.5まで、好ましくは1.8から3まで、より好ましくは1.8から2.5まで、最も好ましくは1.8から2.2までのPDIを所持する。バッチ又はセミバッチプロセスで生成される場合、ポリマーは、望ましくは、1.0から3.5まで、好ましくは1.3から3まで、より好ましくは1.4から2.5まで、最も好ましくは1.4から2までのPDIを所持する。
【0042】
用語「エチレンマルチブロック共重合体」は、エチレン及び1種又は複数の共重合可能なコモノマーを含むマルチブロック共重合体であり、この中で、エチレンは、該ポリマー中の少なくとも1種のブロック又はセグメント、好ましくは少なくとも90、より好ましくは少なくとも95、最も好ましくは少なくとも98モル%のブロックの複数の重合したモノマー単位を含む。合計ポリマー重量に対して、本開示の実施において使用されるエチレンマルチブロック共重合体は、好ましくは、25から97%まで、より好ましくは40から96%まで、さらにより好ましくは55から95%まで、最も好ましくは65から85%までのエチレン含有率を有する。
【0043】
2種以上のモノマーから形成されるそれぞれの区別できるセグメント又はブロックは、単一のポリマー鎖に結合されるので、ポリマーは、標準の選択抽出技術を使用して完全に分別することはできない。例えば、相対的に結晶性(高密度セグメント)である領域及び相対的に非晶質(低密度セグメント)である領域を含有するポリマーは、異なる溶媒を使用して選択的に抽出又は分別することはできない。一実施形態において、ジアルキルエーテル又はアルカン溶媒のいずれかを使用して抽出可能なポリマーの量は、合計ポリマー重量の10%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは2%未満である。
【0044】
加えて、本明細書に開示されたマルチブロック共重合体は、望ましくは、Poisson分布よりもSchultz−Flory分布に適合するPDIを所持する。国際公開第2005/090427号及び米国特許出願第11/376,835号に記載された重合法の使用は、多分散ブロック分布及びブロックサイズの多分散分布の両方を有する生成物をもたらす。これは、改善された優れた物理的性質を有するポリマー生成物の形成をもたらす。多分散ブロック分布の理論的な利益は、Potemkin、Physical Review E (1998年)57巻(6号)、6902-6912頁、及びDobrynin、J. Chem.Phvs. (1997年)107巻(21号)、9234-9238頁において先にモデル化され論じられた。
【0045】
さらなる一実施形態において、本開示のポリマー、特に連続溶液重合反応器で作られたものは、ブロック長さの最も可能性の高い分布を所持する。本開示の一実施形態において、エチレンマルチブロック共重合体は、以下を有するものとして定義される。
(A)約1.7から約3.5までのMw/Mn、摂氏温度で表した少なくとも1つの融点、Tm、及びグラム/立方センチメートルで表した密度、d、ここで、Tm及びdの数値は、次の関係式に一致し、
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)、又は
(B)約1.7から約3.5までのMw/Mnは、J/gで表した融解熱、ΔH、及び最高のDSCピークと最高のCRYSTAFピークの間の温度差としての摂氏温度で表したデルタ量、ΔTによって特徴付けられ、ここで、ΔT及びΔHの数値は、次の関係式を有し、
ゼロより大きく最高130J/gまでのΔHについてΔT>−0.1299(ΔH)+62.81
130J/gより大きいΔHについてΔT≧48℃
ここで、CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を使用して求め、ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度は、30℃であり、又は
(C)エチレン/α−オレフィン共重合体の圧縮成形フィルムで測定された300%歪みにおける%で表した弾性回復、Re及び1サイクルは、グラム/立方センチメートルで表した密度、dを有し、ここで、Re及びdの数値は、エチレン/α−オレフィン共重合体が、架橋相を実質的に含まない場合、次の関係式を満足し、
Re>1481−1629(d)、又は
(D)TREFを使用して分別した場合、40Cから130Cの間で溶出する分子量画分を有し、該画分が、同じ温度の間で溶出する同等のランダムエチレン共重合体画分のモルコモノマー含有率に比べて少なくとも5%高いモルコモノマー含有率を有することを特徴とし、ここで、前記同等のランダムエチレン共重合体は、同じコモノマー(複数可)を有し、(全体のポリマーに対して)エチレン/α−オレフィン共重合体の10%以内のメルトインデックス、密度及びモルコモノマー含有率を有し、又は
(E)25℃における貯蔵弾性率、G’(25℃)、及び100℃における貯蔵弾性率、G’(100℃)を有し、ここで、G’(25℃)のG’(100℃)に対する比は、約1:1から約9:1までの範囲にある。
【0046】
エチレン/α−オレフィン共重合体は、同様に以下を有し得る。
(F)画分が、少なくとも0.5であり最高で約1までのブロックインデックス、及び約1.3より大きい分子量分布、Mw/Mnを有することを特徴とし、TREFを使用して分別した場合、40℃から130℃の間で溶出する分子画分、又は
(G)ゼロより大きく最高で約1.0までの平均ブロックインデックス、及び約1.3より大きい分子量分布、Mw/Mn。
【0047】
本開示の実施において使用されるエチレンマルチブロック共重合体の調製における使用に適するモノマーには、エチレン及びエチレン以外の1種又は複数の付加重合可能なモノマーが含まれる。好適なコモノマーの例には、3から30まで、好ましくは3から20個までの炭素原子の直鎖又は分枝αオレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン及び1−エイコセン;3から30まで、好ましくは3から20個までの炭素原子のシクロ−オレフィン、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及び2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン;ジ−及びポリオレフィン、例えば、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、及び5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン;並びに3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン、1,2−ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、及び3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンが含まれる。
【0048】
本開示の実施において使用し得る他のエチレンマルチブロック共重合体は、エチレン、C3〜20α−オレフィン、特にプロピレン、及び、場合によって、1種又は複数のジエンモノマーの弾性共重合体である。本開示の本実施形態における使用のためのα−オレフィンは、式CH=CHRによって指定され、ここで、Rは、1から12個までの炭素原子の直鎖又は分枝アルキル基である。好適なα−オレフィンの例には、それだけには限らないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンが含まれる。1種の特定のα−オレフィンは、プロピレンである。プロピレンベースのポリマーは、一般的に、当技術分野でEP又はEPDMポリマーと呼ばれる。このようなポリマー、特にマルチブロックEPDMタイプのポリマーの調製における使用に適したジエンには、4から20個までの炭素原子を含有する共役又は非共役、直鎖又は分枝鎖、環式又は多環式ジエンが含まれる。ジエンには、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、及び5−ブチリデン−2−ノルボルネンが含まれる。1種の特定のジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0049】
ジエンを含有するポリマーは、ジエン(皆無の場合も含む)及びα−オレフィン(皆無の場合も含む)のより大量又はより少量を含有する交互のセグメント又はブロックを含有するので、ジエン及びα−オレフィンの合計量は、その後のポリマー特性を損なうことなく減少されることがある。即ち、ジエン及びα−オレフィンモノマーは、ポリマー中に均一に又はランダムにというよりも、ポリマーのブロックの1つのタイプに優先的に組み込まれるので、それらは、より効果的に使用され、その後、ポリマーの架橋密度は、より良く制御され得る。このような架橋可能なエラストマー及び硬化した製品は、より高い引張強さ及びより良い弾性回復を含む有利な特性を有する。
【0050】
本開示の実施において有用なエチレンマルチブロック共重合体は、0.90g/cc未満、好ましくは0.89g/cc未満、より好ましくは0.885g/cc未満、さらにより好ましくは0.88g/cc未満、一層より好ましくは0.875g/cc未満の密度を有する。エチレンマルチブロック共重合体は、一般的に、0.85g/ccより大きい、より好ましくは0.86g/ccより大きい密度を有する。密度は、ASTM D−792の手順によって測定される。低密度エチレンマルチブロック共重合体は、一般的に、非晶質の、柔軟性の、良好な光学的性質、例えば、可視光線及び紫外線の高透過率及び低ヘイズを有するものとして特徴付けられる。
【0051】
本開示の実施において有用なエチレンマルチブロック共重合体は、一般的に、ASTM D1238(190℃/2.16kg)によって測定して毎10分1−10グラム(g/10分)のメルトフローレイト(MFR)を有する。
【0052】
本開示の実施において有用なエチレンマルチブロック共重合体は、ASTM D−882−02の手順によって測定して、約150未満、好ましくは約140未満、より好ましくは約120未満、さらにより好ましくは約100MPa未満の2%割線モジュラスを有する。エチレンマルチブロック共重合体は、一般的に、ゼロより大きい2%割線モジュラスを有するが、モジュラスが低ければ低いほど、該共重合体は、本開示における使用に良く適応する。割線モジュラスは、応力−歪み図の始点からの線が、関心のある点において曲線と交わる傾きであり、この図の非弾性領域における材料の剛性を表すために使用される。低モジュラスのエチレンマルチブロック共重合体は、それらが、応力下の安定性を提供し、例えば、応力又は収縮によって割れを生じる傾向があまりないので、本開示における使用に特に良く適応する。
【0053】
本開示の実施において有用なエチレンマルチブロック共重合体は、一般的に、約125未満の融点を有する。融点は、国際公開第2005/090427号(米国特許出願公開第2006/0199930号)に記載された示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。低融点を有するエチレンマルチブロック共重合体は、しばしば、本開示の電線及びケーブル被覆の製造において有用な望ましい柔軟性及び熱可塑性特性を示す。
【0054】
本開示の実施において使用されるエチレンマルチブロック共重合体、並びにそれらの調製及び使用は、米国特許第7,579,408号、7,355,089号、7,524,911号、7,514,517号、7,582,716号及び7,504,347号により完全に記載されている。
【0055】
一実施形態において、本組成物は、約5重量%から約50重量%までの、又は約10重量%から約40重量%までのOBCを含有する。
【0056】
一実施形態において、OBCは、官能化されていないOBCである。「官能化されていないOBC」は、官能基を欠いている(void of)、官能基を持っていない(devoid of)、又は官能基を含まない(free of)オレフィンブロックコポリマーである。OBCに存在しない官能基の限定されない例には、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、アルデヒド、カルボキシレート、エステル、エーテル、ペルオキシド、アミン、アミド、及び/又はアジドが含まれる。
【0057】
一実施形態において、OBC成分は、1種類のみのOBC又は1種類のOBCである。
【0058】
難燃剤
TPU及びOBCに加えて、本組成物は、難燃剤(FR)を含む。以下に詳しく論じられるように、FRは、TPU及び/又はOBCとブレンドされる。本TPU/OBC/FR組成物は、OBCが同様の量のTPUによって置き換えられた類似の組成物に比べてより低い密度を有する。より低い密度の組成物は、一般的に、より低コストの組成物である。
【0059】
難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)(BPADP)、アルミニウム三水和物(ATH)、窒素/リンベースのハロゲン不含難燃剤、エポキシ化ノボラック樹脂、及び前述のものの任意の組合せから選択される。
【0060】
BPADP及びRDPは、それぞれ、Adeka Palmarole及びSuprestaから市販されている。
【0061】
好適な窒素/リンベースのハロゲン不含難燃剤の限定されない一例は、ADK STAB FP−2100Jの名称でAdeka Palmaroleから市販のFP−2100J(ピペラジンピロホスフェート)である。
【0062】
本明細書で使用される「エポキシ化ノボラック樹脂」は、有機溶媒中におけるエピクロロヒドリン及びフェノールノボラックポリマーの反応生成物である。
【0063】
一実施形態において、エポキシ化ノボラック樹脂は、下記の構造(II)を有する
【0064】
【化2】

(式中、nは、1から約1000までの整数である)。
【0065】
一実施形態において、組成物は、約0.01重量%、又は約0.1重量%、又は約0.5重量%の下限値のエポキシ化ノボラック樹脂を含有し、約20重量%、又は約10重量%、又は約8重量%の上限値のエポキシ化ノボラック樹脂を含有する。エポキシ化ノボラック樹脂は、ミシガン州、ミッドランド市、The Dow Chemical Companyから得られる。
【0066】
一実施形態において、組成物中に存在する総難燃剤は、組成物の合計重量に対して、約30重量%から約70重量%まで、又は約40重量%から約60重量%までである。用語「総難燃剤」は、組成物中に存在する全ての難燃剤(複数可)の重量%の合計である。
【0067】
一実施形態において、難燃剤は、膨張性難燃剤である。
【0068】
TPU及びOBCと組み合わせた本開示の難燃剤は、難燃性、低収縮、低い熱変形、及び望ましい引張特性の相乗的バランスを示す組成物をもたらす。これらの特性に含まれるのは、5.8(又は6より大きい、又は7より大きい)メガパスカル(MPa)より大きい引張応力;90%より大きい、又は100%より大きい、又は150%より大きい、又は200%より大きい引張伸び(ASTM D638);50%未満(又は40%未満、又は30%未満)の150℃における熱変形率(UL1581−2001);VW−1試験(UL1581)に合格するために十分な難燃性、柔軟性及び軟らかさ(ASTM D2240によって測定して92未満のショアA硬度)である。
【0069】
TPUは、その中にOBC及び難燃剤が分散している連続相である。難燃剤もOBC中に分散している。出願者らは、驚くべきことに、TPU及びOBC用に相溶化剤を必要としないハロゲン不含難燃剤TPU/OBC複合材を発見した。「相溶化剤」は、TPUとOBCの間の混和性を促進するために添加される組成物である。TPUと通常のポリオレフィンの間の相溶性は、TPUと通常のポリオレフィンの間の極性の違いにより一般的に乏しく、そのため、ブレンディングを促進するために相溶化剤を必要とする。OBC成分は、予想外に、TPUと相溶性があり、そのため、相溶化剤の必要性を排除する。言い換えれば、本組成物は、相溶化剤を欠き、相溶化剤を持っておらず、又は相溶化剤を含まない。相溶化剤(即ち、本組成物中には存在しない組成物)の限定されない例には、無水マレイン酸、スチレンブロックコポリマー、アクリレート、及びアセテートが含まれる。相溶化剤不含のTPU/OBC複合材は、それが、コストを低減し、加工時間を削減し、加工設備を削減するので有利である。
【0070】
本TPU/OBC/FR組成物は、それだけには限らないが、酸化防止剤(例えば、Ciba Specialty Chemicalsの登録商標であるIRGANOX(商標)1010などのヒンダードフェノール)、亜リン酸塩(例えば、Ciba Specialty Chemicalsの登録商標であるIRGAFOS(商標)168)、紫外線安定剤、光安定剤(ヒンダードアミンなど)、可塑剤(ジオクチルフタレート又はエポキシ化大豆油など)、熱(溶融方法)安定剤、離型剤、ワックス(ポリエチレンワックスなど)、加工助剤(油、ステアリン酸などの有機酸、有機酸の金属塩など)、及び着色剤又は顔料などの1種又は複数の添加剤を、本開示の組成物から作られた物品の所望の物理的性質又は機械的性質を損なわない程度まで、含有し得る。一実施形態において、添加剤の合計量は、存在する場合、最終組成物の合計重量に対して、ゼロより大きい、例えば、0.01から2重量%まで、より一般的には0.1から1重量%までである。
【0071】
一実施形態において、組成物は、1種類のTPU、1種類のOBC、1種又は複数の難燃剤、及び場合による添加剤を含む。
【0072】
一実施形態において、組成物は、良好な寸法安定性を示す。本組成物は、加工中に、少量の収縮を示すか、まったく収縮を示さないか、ほぼまったく収縮を示さない。本組成物は、比較の難燃剤組成物の熱可塑性成分がTPUのみで構成されている比較の難燃剤組成物の収縮率より低い収縮率を有する。一実施形態において、本組成物は、0から0.3未満、又は0から0.2未満の収縮率を有する。
【0073】
一実施形態において、組成物は、ハロゲンを欠いており、ハロゲンを持っておらず又はハロゲン不含である。
【0074】
一実施形態において、組成物は、架橋したポリマーを欠いており、架橋したポリマーを持っておらず又は架橋不含である。
【0075】
本組成物は、本明細書に開示された2つ以上の実施形態を含み得る。
【0076】
本開示は、一方法を提供する。一実施形態において、1種の組成物を生成するための一方法が提供され、TPU樹脂を第1の難燃剤(FR)とブレンドしてTPU/FRコンパウンドを形成するステップを含む。該方法は、OBC樹脂を第2の難燃剤(FR)とブレンドしてOBC/FRコンパウンドを形成するステップを含む。該方法は、TPU/FRコンパウンドを、OBC/FRコンパウンドとブレンドして、約25重量%から95重量%までのTPU、約5重量%から約40重量%までのOBC及び約30重量%から70重量%までの総難燃剤を含む難燃剤複合材組成物を形成するステップを含む。第1の難燃剤及び第2の難燃剤は、同じか異なってよい。第1の難燃剤及び/又は第2の難燃剤は、1種、2種、又は3種以上の個別の難燃剤を含み得る。
【0077】
TPU/FRコンパウンドは、TPU/FRコンパウンドの合計重量に対して、約30重量%から約70重量%までのTPU樹脂及び約70重量%から約30重量%までの総FRを含む。
【0078】
OBC/FRコンパウンドは、OBC/FRコンパウンドの合計重量に対して、約30重量%から約70重量%までのOBC樹脂及び約70重量%から約30重量%までの総FRを含む。
【0079】
一実施形態において、上記方法は、約10重量%から約50重量%までのOBC/FRコンパウンドを、約90重量%から約50重量%までのTPU/FRコンパウンドとブレンドするステップを含む。
【0080】
一実施形態において、上記方法は、約99重量%から約60重量%までのTPU/FRコンパウンド及び約1重量%から約40重量%までのOBC/FRコンパウンドを含む組成物を生成する。該組成物は、最終組成物の合計重量に対して、約30重量%から約70重量%まで総難燃剤を含む。
【0081】
一実施形態において、上記最終組成物は、上記最終組成物の合計重量に対して、約25重量%から約50重量%までのTPU及び約10重量%から約30重量%までのOBCを含む。
【0082】
出願者らは、驚くべきことに、(i)FRを、別々の個別の各々の量のTPU樹脂及びOBC樹脂とブレンドするステップ並びに(ii)続いて、TPU/FRコンパウンドを、OBC/FRコンパウンドとブレンドするステップは、TPU、OBC、及び難燃剤(複数可)を均一にブレンド及び相溶化し、最終TPU/OBC/FR組成物における相溶化剤の排除に有利に寄与することを発見した。
【0083】
好適な混練装置の限定されない例には、内部バッチミキサー、例えばBanbury又はBolling内部ミキサー、Haakeミキサー、連続単軸又は二軸押出機、例えばFarrel連続ミキサー、Werner and Pfleiderer二軸ミキサー、又はBussニーディング連続押出機が含まれる。使用するミキサーのタイプ、及び該ミキサーの操作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面の平滑さなどの組成物の特性に影響を与える。
【0084】
TPU樹脂及び/又はOBC樹脂は、混練前に乾燥する。TPU樹脂は、一般的にペレット形態であるが、一般的に、80から100℃まで、又は90から95℃までの温度において、少なくとも6時間、又は6から10時間まで、真空下で乾燥する。OBC樹脂は、一般的にペレット形態であるが、20から50℃まで、又は40から50℃までの温度において、少なくとも6時間、又は6から10時間まで、真空下で乾燥する。TPU、OBC及びFRの混練温度は、一般的に、OBCの融点、例えば、120℃から220℃まで、より一般的には160から200℃までである。
【0085】
いくつかの実施形態において、添加剤は、予混合マスターバッチとして添加される。このようなマスターバッチは、添加剤を、別々に又は一緒に、不活性プラスチック樹脂、例えば、プラスチックマトリックス成分の1つに分散させることによって一般的に形成される。マスターバッチは、溶融混練法によって好都合に形成される。
【0086】
本組成物からなる(全体的に又は部分的に)物品には、繊維、リボン、シート、テープ、ペレット、チューブ、パイプ、ウェザーストリッピング、シール、ガスケット、フォーム、履き物、電線及びケーブル外被/絶縁用途、ACプラグ、SRコネクター、腕時計バンド、ハンドル、グリップ、ソフトタッチ部品及びボタン、自動車用途、グラスランチャンネル、自動車インテリアパネル、ボディシール、ウィンドシール、押出成形品、ベロー、消費者家電用フレキシブル配線などのフレキシブル配線、電源ケーブル、携帯電話及び/又はコンピューター用充電器用線、コンピューターデータコード、電源コード、機器内配線用電線、建築用電線、自動車用電線、及び消費者電子機器アクセサリーコードが含まれる。
【0087】
本開示は、被覆導体を提供する。被覆導体は、金属導体及び該金属導体上の被覆を含む。被覆は、本組成物を含む。特に、被覆は、熱可塑性ポリウレタン、オレフィンブロックコポリマー及び難燃剤を含む組成物を含む。
【0088】
本明細書で使用される「金属導体」は、少なくとも1種の金属電線及び/又は少なくとも1種の金属ケーブルである。被覆金属導体は、軟質、半硬質、又は硬質であり得る。被覆(「外被」又は「シース」又は「絶縁」とも呼ばれる)は、金属導体上にあるか、該導体の周囲の別のポリマー層上にある。被覆は、本組成物を含む。該組成物は、本明細書に開示されたいずれの組成物であってもよい。本明細書で使用される「〜の上(on)」は、被覆と金属導体の間の直接接触又は間接接触を含む。「直接接触」は、介在層(複数可)及び/又は介在物質(複数可)が被覆と金属導体の間に位置することなく、それによって、被覆が、金属導体に直接的に接触する配置である。「間接接触」は、それによって、介在層(複数可)及び/又は介在構造(複数可)及び/又は介在物質(複数可)が、金属導体と被覆の間に位置する配置である。被覆は、金属導体を、全体的又は部分的に、包む(cover)又は別の方法で囲む(surround)又は覆う(encase)ことができる。被覆は、金属導体を囲む唯一の構成要素であり得る。別法として、被覆は、金属導体を覆う1層の多層外被又はシースであり得る。
【0089】
被覆は、本組成物について上記で論じられた特性のいずれかを有し得る。一実施形態において、被覆導体は、UL−1581に従って測定されたVW−1試験に合格する。
【0090】
本明細書に開示された組成物を含む外被を有する被覆電線又は被覆ケーブル(場合による絶縁層を有する)などの被覆導体は、様々なタイプの押出機、例えば、単軸又は二軸タイプを用いて調製することができる。通常の押出機の記載は、米国特許第4,857,600号に見出し得る。共押出及び押出機の一例は、米国特許第5,575,965号に見出し得る。一般的な押出機は、その上流末端にホッパーを有し、その下流末端にダイを有する。ホッパーは、スクリューを収容するバレルに原料を供給する。下流末端において、スクリューの末端とダイの間に、スクリーンパック及びブレーカープレートがある。押出機のスクリュー部分は、3つのセクション、供給セクション、圧縮セクション、及び計量セクション並びに2つのゾーン、後部加熱ゾーン及び前部加熱ゾーンに分けられると考えられ、上記セクション及び上記ゾーンは、上流から下流に続く。別法として、上流から下流にかけて軸に沿って多段加熱ゾーン(3つ以上)が存在し得る。複数のバレルを有する場合、バレルは直列に接続される。各バレルの長さと直径の比は、約15:1から約30:1までの範囲にある。
【0091】
本開示の電線及びケーブル構成(即ち、被覆金属導体)は、本組成物を、導体に押し出すこと又は絶縁された導体の束に押し出して、絶縁された導体の周囲に被覆(又は外被)を形成することによって作られる。外被又は絶縁の厚みは、所望の末端用途の要件によって決まる。外被又は絶縁の一般的な厚みは、約0.010インチから約0.200インチであり、又は約0.015インチから約0.050インチである。本組成物は、予め作られた組成物から外被に押し出すことができる。通常、本組成物は、押出機への容易な供給のためにペレットの形態にある。電線及びケーブル外被又は絶縁は、本組成物を造粒する別のステップを経由せず、混練押出機から直接押し出すことができる。この一段階混練/押出プロセスは、組成物について1つの熱履歴段階を排除する。
【0092】
一実施形態において、本開示の組成物は、例えば、シース又は絶縁層のようなケーブルの被覆として、既知の量で、既知の方法で(例えば、米国特許第5,246,783号及び4,144,202号に記載された装置及び方法で)適用することができる。一般的に、組成物は、ケーブル被覆ダイを備えた反応−押出機で調製され、組成物の成分が配合された後、組成物は、ケーブルがダイを通って引かれる時にケーブル上に押し出される。次いで、シースは、一般的に、物品が、所望の架橋度に到達するまで、周囲温度から最高で組成物の融点未満までの温度で行う硬化期間にかけられる。硬化は、反応−押出機中で始まり得る。
【0093】
本開示の実施形態の限定されない例が以下に提供される。
【0094】
約25重量%から約95重量%までの熱可塑性ポリウレタン(TPU);約5重量%から約50重量%までのオレフィンブロックコポリマー(OBC);及び約30重量%から約70重量%までの難燃剤を含む組成物(E1)が提供される。難燃剤は、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスジフェニルホスフェート(BDP)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)(BPADP)、アルミニウム三水和物(ATH)、窒素/リンベースのハロゲン不含難燃剤、エポキシ化ノボラック樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される。E2. TPUが、ポリエステルベースのTPUであるE1の組成物。E3. OBCが、官能化されていないOBCであるE1−E2のいずれかの組成物。E4. 組成物が、相溶化剤不含であるE1−E3のいずれかの組成物。E5. 150℃において50%未満の熱変形を有するE1−E4のいずれかの組成物。E6. 0から0.3未満までの収縮率を有するE1−E5のいずれかの組成物。E7. 組成物がハロゲン不含であるE1−E6のいずれかの組成物。E8. 組成物が架橋不含であるE1−E7のいずれかの組成物。
【0095】
組成物(E9)が提供され、組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂と難燃剤(TPU/FR)とのコンパウンド;1重量%から約40重量%までのオレフィンブロックコポリマー樹脂と難燃剤(OBC/FR)とのコンパウンドを含み、ここで、該組成物は、該組成物の合計重量に対して、約30重量%から約70重量%までの総難燃剤を含む。E10. 組成物が、組成物の合計重量に対して、約5重量%から約40重量%までのOBC樹脂を含むE9の組成物。E11. OBC/FRコンパウンドが、約70重量%から約30重量%までのOBC樹脂及び約30重量%から約70重量%までの難燃剤を含むE9−E10のいずれかの組成物。
【0096】
組成物(E12)を生成する方法が提供され、方法は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂を難燃剤(FR)とブレンドしてTPU/FRコンパウンドを形成するステップ;オレフィンブロックコポリマー(OBC)樹脂を難燃剤(FR)とブレンドしてOBC/FRコンパウンドを形成するステップ;TPU/FRコンパウンド及びOBC/FRコンパウンドをブレンドするステップ;並びに組成物の合計重量に対して、約5重量%から約40重量%までのOBC樹脂及び約30重量%から約70重量%までの総難燃剤を含む難燃剤組成物を形成するステップを含む。
【0097】
被覆導体(E13)が提供され、被覆導体は、金属導体;及び該金属導体上の被覆を含み、該被覆は、熱可塑性ポリウレタン、オレフィンブロックコポリマー、及び難燃剤を含む組成物を含む。E14. 被覆が、E1−E11のいずれかの組成物を含むE13の被覆導体。
【0098】
試験方法
熱変形(HD)熱変形試験は、UL 1581−2001に従って行われる。各配合について、2つの並行サンプルプラークを、乾燥器中に置き、150℃で1時間予備加熱する。予備加熱したサンプルを、同じ加重で150℃において1時間プレスする。その後、プレスしたサンプルを、加重を取り除かずに、23℃の設定温度で、さらに1時間ASTM室に置く。サンプルプラークの厚みの変化を記録し、熱変形率を、
HD%=(D−D)/D100%
に従って計算する(式中、Dは、元のサンプルの厚みを表し、Dは、変形プロセス後のサンプルの厚みを表す)。2つの並行サンプルについて計算した変形率を平均する。
【0099】
メルトインデックス(MI)は、ASTM D 1238に従って、190℃において2.16kg加重で測定される。
【0100】
収縮率は、型から取りだした直後及び1時間の周囲温度での冷却後の射出成形プラークの寸法差を測定することによって求められる。60mm×60mm×2mmの元のサイズの成形プラークの長さ及び幅を、(1)型から取りだした直後に合計し(SUM1)、(2)1時間の周囲温度での冷却後に合計する(SUM2)。収縮率=(SUM1−SUM2)/SUM1。
【0101】
表面硬度試験は、ASTM室においてASTM D 2240に従ってショアS1Aデジタルデュロメーター計器で行う。6mmの厚みのサンプルを使用し、1種の配合サンプルについての3つの並行試験結果を記録し平均する。
【0102】
引張試験は、INSTRON 5565引張試験機で行う。プラークを、ダイカッターを使用してベル型試験片に切断する。引張強さ(TS)試験及び引張伸び(TE)試験を、室温でASTM D 638に従って実施する。試験速度は50mm/分である。
【0103】
UL−94は、Underwriters’ Laboratory (UL) Bulletin 94 for Flammability of Plastic Material for Parts in Devices and Appliancesである。以下の場合、被験材料は、UL 94 V−0に分類される。
・バーナーの炎が取り除かれたいずれの時も5個の試験片のいずれも10秒を超えて燃焼しない。
・10回の点火試験の合計燃焼時間は、50秒を超えない。
・いずれの試験片も炎又は残光のいずれかを伴ってクランプまで燃えない。
・いずれの試験片からも下部の綿の発火を引き起こしかねない燃えている滴が落ちてはならない。
・いずれの試験片も残光が30秒を超えない。
以下の場合、被験材料は、UL 94 V−1に分類される。
・バーナーの炎が取り除かれたいずれの時も5個の試験片のいずれも30秒を超えて燃焼しない。
・10回の点火試験の合計燃焼時間は、250秒を超えない。
・いずれの試験片も炎又は残光のいずれかを伴ってクランプまで燃えない。
・いずれの試験片からも、下部の綿の発火を引き起こしかねない燃えている滴が落ちてはならない。
・いずれの試験片も残光が60秒を超えない。
以下の場合、被験材料は、UL 94 V−2に分類される。
・バーナーの炎が取り除かれたいずれの時も5個の試験片のいずれも30秒を超えて燃焼しない。
・10回の点火試験の合計燃焼時間は、250秒を超えない。
・いずれの試験片も炎又は残光のいずれかを伴ってクランプまで燃えない。
・一瞬だけ燃え、それらのうちいくつかが下部の綿に火をつける燃えている破片のみ落下してよい。
・いずれの試験片も残光が60秒を超えない。
【0104】
1000ボルト直流での23±2℃及び55±5°(相対湿度)における体積抵抗率(オーム−cm)を、GB 1410−89に従って測定する。100mm×100mm×2mmのサイズの成形サンプル試験片を、ZC−36 High Resistance Meter(中国、上海市、Shanghai Precision and Scientific Instrument Corp.)で行う体積抵抗率試験に使用する。
【0105】
VW−1は、電線及び絶縁チューブ用のUnderwriters’ Laboratory(UL)の難燃性格付けである。それは、「垂直電線、クラス1(Vertical Wire、Class 1)」を意味し、これは、UL 1441規格下で電線又は絶縁チューブに与えることができる最高の難燃性格付けである。VW−1 FR試験は、UL−1581の1080法に従ってUL94チャンバー中で測定される。上記試験は、電線又は絶縁チューブを垂直位置に置くことによって実施される。試験片は、200mm×2.7mm×1.9mmの寸法に限定される。試験片を、その下端に50g加重を加えることによって、その長手方向軸が垂直になるようクランプから吊す。1つのペーパーフラッグ(2cm×0.5cm)を、電線の上端に付ける。炎の根元(flame bottom)(バーナーオラクル(burner oracle)の最高点)とフラッグの下部の間の距離は18cmである。炎が、連続して45秒間加えられる。燃焼後時間(after flame time)(AFT)、未炭化電線長さ(uncharred wire length)(UCL)及び未炭化フラッグ面積百分率(uncharred flag area percentage)(未炭化フラッグ)を、燃焼中及び燃焼後に記録する。4又は5個の試験片をサンプル毎に試験する。次のいずれも、「不合格」の格付けをもたらす。(1)試験片の下の綿が発火する;(2)フラッグが燃え尽きる;又は(3)炎のついた滴の落下。
【0106】
限定されない一例として、ここで、本開示の実施例が提供される。
【実施例】
【0107】
1. 材料
表1は、実施例に使用される材料を示している。
【0108】
【表1】

【0109】
2. TPU/OBC複合材
最初に、乾燥したTPUを、実験室規模のHaakeミキサー(Haake Polylab OS RheoDrive 7、Thermo Scientific)に可塑化のために供給し、次いでOBCを、混練のために混合室内に供給する。原材料を、60rpmの剪断速度で170℃において8分間混合する。場合によって、TPU及びOBCを最初に予備混合し、混練のためにHaakeミキサーに一緒に供給することができる。
【0110】
【表2】

【0111】
表2は、TPU/OBCブレンドの様々な配合及び特性を示している。引張強さ/伸び、150℃における熱変形、材料密度及び体積抵抗率を、それぞれの配合されたサンプルについて測定する。全体の組成物の最高30重量%までのOBC樹脂添加のTPU/OBCブレンドは、23MPaより大きい引張応力及び450%より大きい引張伸び、25%より低い150℃における熱変形率の優れた引張特性を示す。比較の目的で、150℃における熱変形、密度及び体積抵抗率を、表2に示されたように純粋なTPU及びOBCについても測定する。TPU/OBC組成物中のOBC添加を増加すると、全体の材料密度の漸減が観察される。TPU/OBCブレンドは、ポリマー組成物中の連続TPUマトリックスによって、純粋なOBCに比べて改善された熱変形性能を示す。TPU/OBCブレンドは、純粋なTPU及びOBCの両方と比べた場合、同等の体積抵抗率を示す。
【0112】
TPU/OBCブレンドの形態が、図1A−B及び図2A−Bに示されている。5μm及び10μmのスケールバーの付いたサンプルBの2枚の原子間力顕微鏡(AFM)画像が、図1A及び1Bにそれぞれ示されている。サンプルBは、20重量%のOBCを含み、OBCドメイン(画像中の黒い円)のサイズは、およそ数百ナノメートルであることを示している。
【0113】
5μm及び10μmのスケールバーの付いたサンプルDの2枚の原子間力顕微鏡(AFM)画像が、図2A及び2Bにそれぞれ示されている。サンプルDは、数百ナノメートルから約1マイクロメートルまでのドメインサイズの40重量%のOBCを含有する。サンプルB及びDは両方とも、連続TPUマトリックス中のOBCの良好な分散を示している。
【0114】
OBC樹脂の添加が最高でも40重量%までである場合、OBCは、ドメインサイズが数百ナノメートルの範囲の連続TPUマトリックス中の良好な分散を示す。TPU/OBCブレンドの形態は、良好な機械的性質と一致する。本TPU/OBCブレンドは、驚くべきことに、相溶化剤を使用せずに良好な相溶性を示す。引張特性及び150℃における熱変形性能は、電線及びケーブル用途に好適である。
【0115】
3. TPU/FR複合材及びOBC/FR複合材
2種の異なる加工機械、Haakeミキサー(Haake Polylab OS RheoDrive 7、thermo Scientific)及び二軸押出機が混練に使用される。混練のための詳細が表3に示されている。
【0116】
【表3】

【0117】
表3に示された異なるプロセスで作られたコンパウンドを、180−185℃で加熱プレスを使用してプラークに圧縮する。次いで、約1.5mmの厚みのプラークを、同じ圧力下で室温において5分間コールドプレッサにかける。下記の表4に示されたとおり、サンプル1−3は、TPU/FRコンパウンドであり、サンプル5−7は、OBC/FRコンパウンドである。
【0118】
【表4】

【0119】
重量%は、最終組成物中の各成分の合計重量に基づく。
【0120】
サンプル1及び2は、Haakeミキサーによって調製され、サンプル3は、二軸押出機によって調製される。
【0121】
4. 多段階混練によるTPU/OBC/FR複合材
表4におけるOBC/FRコンパウンド及びTPU/FRコンパウンドを、様々な重量比でブレンドしてTPU/OBC/FR組成物を調製する。OBC/FR複合材の添加が最高で40重量%までである場合、熱変形は、150℃において50%未満であり、TPU/OBC/FR組成物のFR性能は、VW−1試験に合格し、引張伸びは、150%より大きい。
【0122】
【表5】

【0123】
多段階混練方法によって調製されたTPU/OBC/FR組成物は、TPU/FR組成物と比べて改善されたFR性能を示す。加えて、多段階混練によって調製されたTPU/OBC/FR組成物は、望ましい引張特性及び150℃における熱変形性能を示す。
【0124】
実施例14(図3)、実施例15(図4)、実施例16(図5)、及び実施例17(図6)の原子間力顕微鏡(AFM)画像は、連続TPUマトリックス中のOBC(黒い円のドメイン)及びFR薬品粒子(白い粒子)の分散を示している。実施例14は、ポリマーマトリックス中に10重量%のOBC(OBC+TPUの合計重量に対して)を含み、OBCドメインサイズが数百ナノメートルの範囲にあることを示している。実施例15は、ポリマーマトリックス中に20重量%のOBC(OBC+TPUの合計重量に対して)を含み、OBCドメインサイズが最大で1マイクロメートルまでであることを示している。ポリマーマトリックス中に30重量%のOBC(OBC+TPUの合計重量に対して)を含む実施例16は、OBCドメインサイズが最大で3マイクロメートルまでであることを示している。ポリマーマトリックス中に40重量%のOBC(OBC+TPUの合計重量に対して)を含む実施例17は、OBCドメインサイズが最大で10マイクロメートルまでであることを示している。
【0125】
5. 一段階混練によるTPU/OBC/FR組成物
下記の表6に示されたように、TPU、OBC及びFR薬品の一段階混練を、Haakeミキサーで調製する。ポリマーマトリックス中の最高で30重量%までのOBCの添加によって、配合された実施例の引張特性及びFR性能は、150℃における良好な熱変形性能を維持する。
【0126】
【表6】

【0127】
要約すると、一段階混練方法によって調製されたTPU/OBC/FR組成物は、TPU/FR組成物に比べて改善されたFR性能及び減少した材料密度を示す。良好な引張特性及び150℃における熱変形性能は、ポリマーマトリックス(即ち、TPUプラスOBC)中の最高で20重量%までのOBCの使用によって得られる。加えて、TPU/OBC/FR組成物は、TPU/FR組成物と比較して同等の体積抵抗率を示す。
【0128】
6. TPU/OBC/ATH組成物
下記の表7に示された組成物を、二軸押出機で調製し、押出特性及び性質について評価する。以下のステップを、材料調製及び評価に使用する。
1)50L高速度ミキサーで、表7中の樹脂成分、即ち、TPU 2103−90AE及びOBC D9507を添加し、1800RPMで1分間混合する。次いで、この予備混合ブレンドを次のステップのために取りだす。
2)次いで、ステップ(1)からの予備混合ブレンドを、表7中の予備混合液体及び粉末成分、即ち、BPADP、DEN 438、AD001、酸化防止剤、TiO及びClariant MBと一緒に、それぞれ2つのフィーダーを備えた二軸押出機(ZSK 26)で押し出す。押出を、170℃より低いバレル温度、25mmのスクリュー径及び48のL/D、約25kg/時の吐出量で行う。最後に、ペレットを得、次のステップ用に120℃で6時間乾燥する。
3)ASTM D638引張試験用の165×12.7×3.18mmの寸法並びにUL94燃焼試験用の127×12.7×1.6mm及び127×12.7×3.2mmの寸法の射出成形プラークを、射出成形機(FANUC 100)を用いて作る。
4)引張特性を、方法としてASTM D638を用いてInstron引張試験機を使用して、これらのドッグボーン試験片で測定する。
−−次いで、引張伸び及び最大引張応力を、クロスヘッド速度を50mm/分に設定し、%伸びを25mm初期ゲージ長の伸び計を使用して測定して、破断点歪みを測定し、引張特性を、方法としてASTM D638による加重及び試験片断面積を使用する標準の計算により計算することによって測定する。
5)燃焼性能を、射出成形プラークの試験片でUL−94試験を使用して試験する。
6)収縮を、それぞれ、型から取りだした直後及び周囲温度での1時間の冷却後の射出成形プラークの寸法差を測定することによって特徴付ける。
【0129】
下記の表7において、データの第1列は、射出成形後の収縮を除いて、良好な機械的性質及び燃焼性能を提供するサンプル4(DFDA 1687 EXP1、ポリマーマトリックスとしてTPUのみを使用)を示している。
【0130】
比較のため、第2の配合(実施例24)は、オレフィンブロックコポリマー(OBC)を使用して、85/15重量%のTPU/OBC比で熱可塑性ポリウレタン(TPU)を部分的に置き換えている。試験結果は、良好な機械的性質及び燃焼性能を示している。一方、射出成形プラークの寸法変化がより小さい改善された収縮と共に、MFRは減少した。
【0131】
第3の配合(実施例25)は、オレフィンブロックコポリマー(OBC)の添加を増加しており、70/30重量%のTPU/OBC比でブレンドしている。試験結果は、同様に、良好な機械的性質及び燃焼性能を示している。OBCの増加した添加量によって、メルトインデックス(MI)はさらに低くなり、収縮は、射出成形プラークの寸法変化が殆どなくなってさらに改善された。
【0132】
【表7】

【0133】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態及び引例に限定されず、実施形態の部分及び異なる実施形態の要素の組合せを含む実施形態の修正形態を以下の特許請求の範囲に入るものとして含むことは明確に意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約25重量%から約95重量%までの熱可塑性ポリウレタン(TPU);
約5重量%から約50重量%までのオレフィンブロックコポリマー(OBC);並びに
約30重量%から約70重量%までの、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスジフェニルホスフェート(BDP)、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)(BPADP)、アルミニウム三水和物(ATH)、窒素/リンベースのハロゲン不含難燃剤、エポキシ化ノボラック樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選択される難燃剤
を含む組成物。
【請求項2】
前記TPUが、ポリエーテルベースのTPUである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記OBCが、官能化されていないOBCである、請求項1から2までのいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、相溶化剤不含である、請求項1から3までのいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
150℃において50%未満の熱変形を有する、請求項1から4までのいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
熱可塑性ポリウレタン樹脂と難燃剤(TPU/FR)とのコンパウンド;
約1重量%から約40重量%までのオレフィンブロックコポリマー樹脂と難燃剤(OBC/FR)とのコンパウンド
を含む組成物であって、該組成物の合計重量に対して約30重量%から約70重量%までの総難燃剤を含む組成物。
【請求項7】
前記組成物の合計重量に対して約5重量%から約40重量%までのOBC樹脂を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物を生成するための方法であって、
熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂を難燃剤(FR)とブレンドするステップ及びTPU/FRコンパウンドを形成するステップ;
オレフィンブロックコポリマー(OBC)樹脂を難燃剤(FR)とブレンドするステップ及びOBC/FRコンパウンドを形成するステップ;
TPU/FRコンパウンド及びOBC/FRコンパウンドをブレンドするステップ;並びに
該組成物の合計重量に対して約5重量%から約40重量%までのOBC樹脂及び約30重量%から約70重量%までの総難燃剤を含む難燃剤組成物を形成するステップ
を含む方法。
【請求項9】
金属導体;及び
該金属導体上の被覆
を含む被覆導体であって、該被覆は、熱可塑性ポリウレタン、オレフィンブロックコポリマー、及び難燃剤を含む組成物を含む被覆導体。
【請求項10】
前記被覆が、請求項1から7までのいずれかに記載の組成物を含む、請求項9に記載の被覆導体。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−514390(P2013−514390A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543439(P2012−543439)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/CN2009/075724
【国際公開番号】WO2011/072458
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】