説明

ハロゲン光源を用いた面照明装置

【課題】装置の製造コストや測定時のランニングコストが低く、発熱による装置本体への影響が少なく、操作の簡便な面照明装置を提供する。
【解決手段】放物面鏡の焦点位置に設置したハロゲン光源と、該光源から発せられた光を光軸に対して平行に偏向するコリメータレンズと、該コリメータレンズを透過した光束の幅や厚さを変更するスリットと、該スリットを通過してきた光を45°の斜面によって光軸方向に対して上方に全反射する第一の直角二等辺三角形プリズムとを具備する筐体部と、該筐体部の第一のプリズムを透過した光を反射面がたがいに平行で、45°の斜面で全反射する第二のプリズムを有する面照明装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン光源を用い、空気中に浮遊する水滴や煙粒子の動向を把握し、確認可能にする面照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年熱流動場における可視化技術の研究が進み、複雑な流動場における流体の流動を高精度かつ精密に測定可能な粒子画像流速計(Particle
Image Velocimetry:以下、PIVという。)が開発されつつある。このPIV技術を実施する際に必要となるのが、光源から発せられた光束を3次元の空間(閉空間でも良い)で平面シート状にするための面照明装置である。
従来の面照明技術としては、LED線光源装置が開示されている(特許文献1)。この発明では光源としてLEDランプを用い、左右相対峙する1対のLEDランプから照射される光をローレットカットを施した円筒形のレンズの下方両端及びローレットカットを施した部分で集光し、この光を前記レンズの側面から透過させて面照明とするものである。
また、気液混相流れ場の液体場可視化方法において、
光源から射出されたレーザービームをシリンドリカルレンズによりシート状に拡げ、可視化空間に照射する技術(特許文献2)が開示されている。
また、光強度の減衰を抑制するとともに、装置の設置スペースが小さいもので足りる面照明装置が開示されている(特許文献3)。
この発明は、レーザ光源からの直線的レーザ光を受けて扇形に拡げる走査する走査手段と、走査対象面に設けられた第1ミラーと、この第1ミラーと平行に対向する第2ミラーと、第2ミラーでの反射光を透過して平行光とするフレネルレンズとを有する構成である。
【特許文献1】特開平09−163079号公報
【特許文献2】特開平07−063642号公報
【特許文献3】特開2006−133110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば,家庭内にてIHヒーター等の加熱機を用いて調理を行う際に発生する煙や水蒸気が、どの程度換気されているかを調べるために従来の技術を用いた場合には、次のような問題点があった。
即ち、特許文献1に記載の発明では、光源としてLEDランプを用いているために測定時の消費電力が低く抑えられるものの、左右相対峙する1対のLEDランプから照射される光をローレットカットを施した円筒形のレンズの下方両端及びローレットカットを施した部分で集光し、この光を前記レンズの側面から透過させて面照明とするものであるために、レンズの加工や光源の設置に手間がかるという問題があった。
引用文献2や引用文献3に記載の発明を用いて煙や水蒸気がどの程度換気されているかを調べる場合には、レーザ光源を用いているために測定時のランニングコストがかかり、かつ発熱によるシリンドリカルレンズ、鏡等の光学系部品への影響が懸念された。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、装置の製造コストや測定時のランニングコストが低く、発熱による装置本体への影響が少なく、操作の簡便な面照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明のハロゲン光源を用いた面照明装置は、放物面鏡の焦点位置に設置したハロゲン光源と、該光源から発せられた光を光軸に対して平行に偏向するコリメータレンズと、該コリメータレンズを透過した光束の幅や厚さを変更するスリットと、該スリットを通過してきた光を45°の斜面によって光軸方向に対して上方に全反射する第一の直角二等辺三角形プリズムとを具備する筐体部と、該筐体部の第一のプリズムを透過した光を反射面がたがいに平行で、45°の斜面で全反射する第二のプリズムを、該プリズムの照射方向に対し、前後に回転可能に収容するケーシングと、該ケーシングが上下方向に移動するのを支えるために前記筐体部上部に直立させ、螺子を備えた支柱と、該支柱に噛合されるボールベアリングを具備する移動体と、該移動体を前記ケーシングとともに支柱に沿って上下させるステッピングモータと、前記ハロゲン光源を点灯させる電源とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ハロゲン光源を放物面鏡の焦点位置に設置しているので、前記ハロゲン光源から照射された光は散逸が少なく、前記の放物面鏡の中心線と略平行な光束が得られる。この光束を光軸に対して平行に偏向するコリメータレンズに透過させると、前記の放物面鏡の中心線と更に平行な光束となり、該光束を更に幅や厚さを変更するスリットに通過させると、前記スリットに施されているスリット溝の形状を有する光束となるので、該スリット溝の縦幅、横幅を変える事によって所定の縦幅、横幅での光シートを得ることができるが、本発明においては、前記スリット溝の形状を有する光束を、後述する筐体部内で更に45°の斜面によって光軸方向に対して真上方向に全反射する第一の直角二等辺三角形プリズムで反射させ、該筐体部内の第一の直角二等辺三角形プリズムを透過した光を、第二のプリズムの45°の斜面で反射している。また、前記第二のプリズムは、前記第一のプリズムの真上に位置し、上下移動が可能な状態でセッティングされている。このことにより、前記スリット溝を通過した光束は、前記第二のプリズムで反射され、該第二のプリズムから光シートが照射されることとなるので、前記第二のプリズムの位置を上下させることにより、光シートの位置を上下移動させることができる。また前記第二のプリズムは、光軸方向に対して上下に回動する事ができるので、該第二のプリズムの反射角度を変えることにより、光シートの角度を変更することが可能であるが、前記第二のプリズムの45°斜面で全反射させた場合の光束は、前記のコリメータレンズを透過した光束と平行な状態であり、光シートの幅も広くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のハロゲン光源を用いた面照明装置の概略図である。図1において、1は面照明装置全体を表わすものであり、2はハロゲン光源、3は前記のハロゲン光源の背後に設置する放物面鏡、4は入射される光を平行光に換えるコリメータレンズ、5は光の入射量を制御するスリット、6は入射してきた光を全反射するための第一の直角二等辺三角形プリズム、7は装置の枠組みとしての筐体、8は前記ケーシングを支持するための支柱、9は該支柱に施された螺子、10は前記ケーシングを上下移動させるためのステッピングモータ、Jは外部光の干渉やほこりを遮蔽するための蛇腹、Kは前記筐体の上部に設けられた開口部、Mは前記の螺子と噛合するボールベアリングを備えた移動体、11は前記第二の直角二等辺三角形プリズムを光軸に対し上下方向に回動可能に収容したケーシング、12は入射してきた光を全反射するための第二の直角二等辺三角形プリズム、13は前記第二の直角二等辺三角形プリズムを回転させるための調整つまみ、14は本発明のハロゲン光源を用いた面照明装置の電源である。
【0008】
本発明の面照明装置1では点光源としてのハロゲン光源2を放物面鏡3の焦点位置に設置している。ハロゲン光源としては、100Vの家庭用電圧が使用可能な150W〜200Wのものであれば好適に用いることができる。尚、光源が小さく、輝度が高いメタルハライドランプを用いることも可能である。次に、ハロゲン光源2を放物面鏡3の焦点位置に設置することにより、前記ハロゲン光源2で生じた光は、放物面鏡3による反射によって、光軸に対して略平行な状態となるので、散逸による光の損失を抑えることができるという利点がある。
【0009】
前記ハロゲン光源2の下流側には、コリメータレンズ4が設置され、放物面鏡3による反射によって、光軸に対して略平行な状態となった光を透過させることによって、更に光軸に対して平行な状態となる。
前記コリメータレンズ4の下流側には、スリット溝Sを施したスリット5が設置されている。前記スリット溝Sの幅は,例えば75mm〜100mm程度とすることができる。前記スリット5の下流側には、第一の直角二等辺三角形プリズム6が該プリズム斜面を光軸に対して45°となるように設置され、前記のハロゲン光源2、コリメータレンズ4、スリット5と共に筐体7内に設置されている。該筐体7の上部(前記直角二等辺三角形プリズム6が設置されている真上の位置)には開口部Kが設けられており、前記スリット5を通過した光束は、開口部Kを通して真上に全反射される。尚、図1の中に示したJは外部光の干渉やほこりを遮蔽するための蛇腹である。本発明を実施するためには必ずしも必要なものではないが、装置内にほこりが入らないように、また、外部光が干渉するのを妨ぐために設けても良い。
【0010】
前記筐体7上部に設けられた開口部Kの近傍には、後述するステッピングモータ及びケーシングの昇降する支柱8が直立した状態で設置されており、該支柱8の一側面には螺子9が施されている。該螺子9は、前記支柱8に沿って昇降するボールベアリングを備えた移動体Mと噛合しており、該移動体Mは、ステッピングモータ10の回転方向に応じて、保持しているケーシング11と共に前記支柱8に沿って昇降することができる。このことにより、本発明により得られる光シートは、支柱8に沿った上下方向に移動させることができる。
また,前記ケーシング11内には、直角二等辺三角形プリズム6で全反射された光束を光軸の下流方向に反射させるための第二の直角二等辺三角形プリズム12が光軸方向に対して上下に回動可能とする角度調整つまみを付した状態で設置されている。このことにより、本発明により得られる光シートは、光軸に対して上下方向に角度を変えることができる。
【0011】
本発明のハロゲン光源を用いた面照明装置1は、以上の構成態様にてなるものである。本発明の面照明装置1を用いて水蒸気・煙等の浮遊粒子がうまく換気されているかどうかの確認は、面照明装置1を先ず蒸気・煙等の発生している場所へ運びセッティングし、電源14によりハロゲン光源2に電圧を印加することから開始する。電圧を印加することによりハロゲン光源2は発光し、光を放射状に照射する。ハロゲン光源2の上流側には前記放物面鏡3が設置されており、ハロゲン光源2から発せられる光は、前記放物面鏡3によって光のほぼ平行な光束として反射されるので、該光束がコリメータレンズ4に導入される際の光の損失を抑えることができる。該コリメータレンズ4では、前記放物面鏡3によって光の略平行な光束として反射された光を更に光軸に対して平行な光に偏向するので、スリット5のスリット溝Sを通過した光は、該スリット溝Sの形状をした光束となり、この光束が、本発明における光シートの元となる。
【0012】
前記スリット溝Sを通過した光は、第一の直角二等辺三角形プリズム6及びステッピングモータ10と共に上下方向に移動可能なケーシング11内に収容されている第二の直角二等辺三角形プリズム12によって屈折され、光束の高低が変えらて下流側に照射されるため、光シートの位置を上下にずらすことができるので、本発明の面照明装置1を用いて実測する場合の高さを調整することができる。また、第二の直角二等辺三角形プリズム12に設けられた角度調整つまみ13を調整することで光シートの照射角度を変更することができる。
【0013】
次に本装置を用いて水蒸気・煙等の浮遊粒子がうまく換気されているかどうかを確認する場合の動作を図2を参照しながら説明する。図2は本発明のハロゲン光源1を用いて、家庭内での排気状態を確認する様子を表わした説明図である。
同図において、15はIHヒータ、16は蒸気、17は換気扇、18は前記の水蒸気に面照射を行った際に認められる照射面である。
【0014】
本発明の面照明装置1を用いて水蒸気・煙等の浮遊粒子がうまく換気されているかどうかの確認に先立って、面照明装置1を先ず蒸気・煙等の発生している場所へ運びセッティングし、電源14のスイッチ(図示せず)をオンにすることによりハロゲン光源2を点灯しておく必要がある。
準備ができたら,IHヒーター15を加熱することによって、生じている湯気16の中心部分に面照射を行って(図2における第二のプリズムの実線部分)、照射面18で湯気の有無を確認する。湯気が出ている場合には、照射面18において湯気の光反射が起こるので確認ができる。これよりステッピングモータ10によってケーシング11を換気扇17の上部まで移動させる(図中の上方移動時の位置)。もし、湯気が換気扇17によって完全に排気されている状態であれば、光シートには湯気による光反射が起こらないので、排気状態がうまくいっていることがわかる。また、光シートの角度を変えて湯気の状態を判断したいときには、第二の直角二等辺三角形プリズム12の角度調整つまみ13を回すことによって光シートの照射角度を変えればよい。
以上のように、本発明の面照明装置によれば、湯気や煙の位置に合わせて光シートの照射方向を変更できるので、家庭内の換気状態が良いのかどうかを簡単にチェックでき、装置の製造コストや測定時のランニングコストが低く、発熱による装置本体への影響が少なく、操作の簡便な面照明装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明のハロゲン光源を用いた面照明装置は、家庭内での熱源利用時に生じる湯気や煙がどの程度の効力で排気されているのかをチェックすることに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のハロゲン光源を用いた面照明装置の概略図である。
【図2】本発明のハロゲン光源を用いて、家庭内での排気状態を確認する様子を表わした説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 本発明のハロゲン光源を用いた面照明装置
2 ハロゲン光源
3 放物面鏡
4 コリメータレンズ
5 スリット
6 第一の直角二等辺三角形プリズム
7 筐体
8 支柱
9 螺子
10 ステッピングモータ
M ボールベアリングを備えた移動体
11 ケーシング
12 第二の直角二等辺三角形プリズム
13 角度調整つまみ
14 本発明のハロゲン光源を用いた面照明装置における電源
S スリット溝
K 開口部
J 蛇腹
15 IHヒータ
16 蒸気
17 換気扇
18 照射面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
放物面鏡の焦点位置に設置したハロゲン光源と、該光源から発せられた光を光軸に対して平行に偏向するコリメータレンズと、該コリメータレンズを透過した光束の幅や厚さを変更するスリットと、該スリットを通過してきた光を45°の斜面によって光軸方向に対して上方に全反射する第一の直角二等辺三角形プリズムとを具備する筐体部と、該筐体部の第一のプリズムを透過した光を反射面がたがいに平行で、45°の斜面で全反射する第二のプリズムを、該プリズムの照射方向に対し、上下に回動可能に収容するケーシングと、該ケーシングが上下方向に移動するのを支えるための前記筐体部上部に直立させ、螺子を備えた支柱と、該支柱の螺子に噛合されるボールベアリングを具備する移動体と、該移動体を前記ケーシングとともに支柱に沿って上下させるステッピングモータと、前記ハロゲン光源を点灯させる電源とからなることを特徴とするハロゲン光源を用いた面照明装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−244152(P2009−244152A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92105(P2008−92105)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】