説明

ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体及びそれを含む膜の堆積方法

【課題】前駆体及び膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】Xm1npSi(NR234-m-n-pの式Iを有し、式中、XはCl、Br、Iから選択され;R1は直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から選択され;R2は直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2;nは0、1又は2;pは0、1又は2;m+n+pは4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成し又は環を形成するために連結されていない前駆体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2011年9月27日付け出願の米国仮特許出願第61/539,717号の35U.S.C.§119に基づく優先権の利益を主張するものであり、当該米国仮特許出願の開示はその参照により全体として本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
誘電体膜、限定されないがケイ素含有膜、例えばケイ素膜、非晶質ケイ素膜、結晶ケイ素膜、微結晶ケイ素膜、多結晶ケイ素膜、窒化ケイ素膜、酸化ケイ素膜、炭素ドープ酸化ケイ素膜、炭窒化ケイ素膜及び酸窒化ケイ素膜を含む誘電体膜の堆積のために使用できる前駆体、特にはハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が本明細書において記載される。さらに別の態様において本明細書で記載されるのは、集積回路デバイスの製造において、ケイ素含有誘電体膜を堆積させるためのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体の使用である。これらの又は他の態様において、ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、限定されないが原子層堆積(「ALD」)、化学気相成長(「CVD」)、サイクリック化学気相成長(「CCVD」)、プラズマ強化化学気相成長(「PECVD」)、低圧化学気相成長(「LPCVD」)及び大気圧化学気相成長(「APCVD」)を含む種々の蒸気ベースの堆積プロセス、又は限定されないがスピンオン、ディップコート、エアロゾル、インクジェット、スクリーン印刷又は噴霧堆積法又は膜形成法を含む液体ベースの堆積方法のために使用されてよい。
【0003】
酸化ケイ素又は窒化ケイ素膜など(ただしこれらに限定されない)のケイ素含有膜のための前駆体として、複数の部類の化合物を使用することができる。前駆体としての使用に適したこれらの化合物の例としては、シラン、クロロシラン、ポリシラザン、アミノシラン及びアジドシランが含まれる。不活性キャリヤガス又は希釈剤、例えば限定されないがヘリウム、水素、窒素なども同様に、反応チャンバーに前駆体を送出するために使用される。
【0004】
米国特許第6,869,638号は、HxSiAy(NR124-x-y(式中、Hは水素であり;xは0〜3であり;Nは窒素であり;R1とR2は各々同じであるか又は異なるものであり独立してH、アリール、ペルフルオロアリール、C1−C8アルキル及びC1−C8ペルフルオロアルキルからなる群から選択され;nは1〜6である)という式のアミノシラン化合物とメタロアミド化合物を用いて、基材上にゲート誘電体薄膜、例えばゲート誘電体、高誘電性金属酸化物及び強誘電体金属酸化物を形成するCVD法について記載している。米国特許第6,869,638号に記載されているアミノシラン前駆体の例としては、ビス(ジエチルアミノ)ジクロロシラン及びトリス(ジエチルアミノ)クロロシランが挙げられる。
【0005】
国際公開第2011/123792号は、アミノ金属前駆体とハロゲン化金属前駆体の組み合わせから金属窒化物含有膜を形成する、好ましくはアミノシラン前駆体とクロロシラン前駆体の組み合わせからSiN含有膜を形成するための低温、熱又はプラズマベースのALD法について記載している。国際公開第2011/123792号は、Cl4-xSi(NR’R’’)x(式中、x=2又は3であり、R’とR’’は独立してH又はアルキル基から選択され、R’とR’’は連結されて環構造を形成してよい)という式を有するアミノクロロシランを含むアミノシラン前駆体及び、R’’’4-xSi(NR’R’’)x(式中、x=1、2又は3であり、R’とR’’は独立してH又はアルキル基から選択され、R’とR’’は連結されて環構造を形成してよく、R’’’は3個未満の炭素を有するアルキル基である)という式を有するアミノアルキルシラン前駆体について記載している。
【0006】
参考文献「Substitution of chlorine in silicon tetrachloride by dimethyl,diethylamino,and piperidino groups」、Breederveldら、Research(London)5:537−9(1952)は、SiCl4中の原子を段階的にジアルキルアミノ基で置き換えて、ジエチルアミノトリクロロシラン、ジ(ジエチルアミノ)ジクロロシラン、トリ(ジエチルアミノ)クロロシラン又はテトラ(ジエチルアミノ)シランという化合物のうちの1つ又は複数を生成することによる、ジアルキルアミノクロロシランの合成について記載している。類似の手順は、ピペリジノトリクロロシラン及びジピペリジノジクロロシランを調製するためにも使用された。
【0007】
参考文献「Molecular structures of some(dimethylamino)halogenosilanes in the gas phase by electron diffraction and the crystal and molecular structures on mono−and di−chloro(dimethylamino)silane by X−ray diffraction at low temperatures」、Andersonら、J.Chem.Soc、(1987)は、(ジメチルアミノ)ハロゲンシランSiH2X(NMe2)(式中、X=Cl、Br又はIである)について記載している。
【0008】
参考文献「Chloroaminosilanes.I.Preparation of chloro(dimethylamino)hydrogen silanes」、Washburneら、Inorg.Nucl.Chem.、5(1):17−19 (1969)は、HSiCl2NMe2(I)、HSiCl(NMe22(II)、及びHSi(NMe23(III)の調製ならびにこれらの化合物の関連する化学的特性について記載している。
【0009】
参考文献「Perparation of β−cyanoethyltrichlorosilane using silylamine catalysts」、Pikeら、Journal of Organic Chemistry、27(6):21−90−92(1962)は、アクリロニトリルに対するトリクロロシランの添加による指向性触媒であることが示されている(CH33SiNR2タイプのシリルアミンについて記載している。この参考文献中で記載されているシリルアミンの一例は(iPr2N)SiCl2Hである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当技術分野には、以下の利点、すなわち低い処理温度(例えば300℃以下)、比較的優れた堆積速度、組成の均一性及び/又は高純度のうち1つ又は複数を提供するケイ素を含む膜を堆積するのに使用できる前駆体を提供するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体、並びにそれを用いてケイ素を含む膜、例えば限定されないがケイ素膜、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素及びそれらの組み合わせを基材の少なくとも一部の上に形成するための方法が本明細書で記載される。また、例えば半導体ウェハなどの処理すべき物体上に誘電体膜又はコーティングを形成するための方法が本明細書で開示される。本明細書で記載される方法の1つの実施形態では、ケイ素と酸素を含む層が、基材上に酸化ケイ素層を生成するための条件下で、堆積チャンバーにおいてハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体、任意選択で1つ又は複数の追加の非ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体及び酸化剤を用いて基材上に堆積される。本明細書で記載される方法の別の実施形態では、ケイ素と窒素を含む層が、基材上に窒化ケイ素層を生成するための条件下で、堆積チャンバーにおいてハロゲン化前駆体、任意選択で1つ又は複数の非ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体及び窒素含有前駆体を用いて基材上に堆積される。さらなる実施形態では、本明細書で記載されるハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、例えば限定されないが金属酸化物膜又は金属窒化物膜などの金属含有膜のためのドーパントとして使用することもできる。本明細書で記載されるプロセスでは、本明細書に記載の式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシランがケイ素含有前駆体の少なくとも1つとして使用される。
【0012】
1つの態様では、本明細書に記載のハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
を有するケイ素前駆体を含み、式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない。幾つかの実施形態では、式I中のR2とR3は互いに連結されて環を形成することができる。他の実施形態では、式I中のR2とR3は、環を形成するために互いに連結されない。
【0013】
別の態様では、基材の少なくとも1つの表面上にケイ素含有膜を形成するための方法であって、
反応チャンバー内に基材の少なくとも1つの表面を提供する工程と;
以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
を有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を用いて、化学気相成長プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスにより前記少なくとも1つの表面上にケイ素含有膜を形成する工程と
を含む方法が提供される。式Iの1つの特定の実施形態では、R2とR3は互いに連結されて環を形成することができる。式Iの別の実施形態では、R2とR3は環を形成するために連結されない。
【0014】
別の態様では、原子層堆積プロセス又はサイクリック化学気相成長プロセスによって酸化ケイ素膜を形成する方法であって、
a.反応装置内に基材を用意する工程と;
b.反応装置内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)から選択される少なくとも1つのケイ素前駆体を導入する工程と;
c.反応装置をパージガスでパージする工程と;
d.反応装置内に酸素源を導入する工程と;
e.反応装置をパージガスでパージする工程と;
膜の所望の厚さが得られるまで工程b〜eを繰り返す工程と
を含む方法が提供される。
【0015】
さらなる態様では、CDVプロセスを用いて基材の少なくとも1つの表面上に酸化ケイ素膜を形成する方法であって、
a.反応装置内に基材を用意する工程と;
b.反応装置内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を導入する工程と;
c.酸素源を提供して前記少なくとも1つの表面上に酸化ケイ素膜を堆積させる工程と
を含む方法が提供される。
【0016】
別の態様では、原子層堆積プロセス又はサイクリック化学気相成長プロセスによって窒化ケイ素膜を形成する方法であって、
a.反応装置内に基材を用意する工程と;
b.反応装置内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される少なくとも1つのケイ素前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を導入する工程と;
c.反応装置をパージガスでパージする工程と;
d.反応装置内に窒素含有源を導入する工程と;
e.反応装置をパージガスでパージする工程と;
窒化ケイ素膜の所望の厚さが得られるまで工程b〜eを繰り返す工程と
を含む方法が提供される。
【0017】
さらなる態様では、CDVプロセスを用いて基材の少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素膜を形成する方法であって、
a.反応装置内に基材を用意する工程と;
b.反応装置内に式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を導入する工程と;
c.窒素含有源を提供し、少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体と窒素含有源を反応させて前記少なくとも1つの表面上にケイ素と窒素の両方を含む膜を堆積させる工程と
を含む方法が提供される。
【0018】
別の態様では、誘電体膜の堆積用の容器であって、式Iを有する1つ又は複数のハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体を含む容器が本明細書で記載される。1つの特定の実施形態では、この容器は、CVD又はALDプロセスのための反応装置に1つ又は複数の前駆体を供給できるようにする適切なバルブ及び接続具を備えた少なくとも1つの加圧可能な容器(好ましくはステンレス鋼の容器)を含む。
【0019】
さらなる別の態様では、誘電体膜の堆積のための組成物であって、
m1npSi(NR234-m-n-p
(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)と;
エーテル、第3級アミン、ニトリル、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、第3級アミノエーテル又はそれらの混合物からなる群より選択される溶媒と
を含む組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】例3に記載の2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランの質量分析(MS)スペクトルを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ハロゲン化オルガノアミノシランは、化学量論及び非化学量論的ケイ素含有膜、例えば限定されないがケイ素、非晶質ケイ素、結晶ケイ素、微結晶ケイ素、多結晶ケイ素、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素及び酸炭窒化ケイ素などを形成するための前駆体として用いられる。これらの前駆体は、例えば、金属含有膜のためのドーパントとしても使用可能である。ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、典型的には、高純度の揮発性液体前駆体化学物質であり、気化され堆積チャンバー又は反応装置に気体として送出されて、半導体デバイス用にケイ素含有膜をCVD又はALDプロセスを介して堆積させる。他の実施形態では、ハロゲン化オルガノアミノシランは、限定されないがスピンオン、ディップコート、エアロゾル、インクジェット、スクリーン印刷又は噴霧塗布などの液体ベースの堆積又は膜形成方法において使用可能である。堆積のための前駆体材料の選択は、結果として所望される誘電体材料又は膜によって左右される。例えば、その化学元素含有量、その化学元素の化学量論比及び/又はCVDの下で形成される結果として得られる誘電体膜又はコーティングに基づいて前駆体材料を選択してもよい。前駆体材料は同様に、さまざまな他の特性、例えばコスト、無毒性、取扱い特性、室温で液相を維持する能力、揮発性、分子量及び/又は他の考慮事項に基づいて選択されてもよい。幾つかの実施形態では、本明細書で記載される前駆体は、任意の複数の手段により、好ましくは、堆積チャンバー又は反応装置に対する液相前駆体の供給を可能にするための適切なバルブ及び接続具を備えた加圧可能なステンレス鋼製容器を用いて、反応装置システムに対して供給され得る。
【0022】
本明細書で記載されるハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、オルガノアミンとHClを放出するようにその場触媒反応を介してSi−N−Si連結、Si−Si結合、Si−O−Si連結を形成するために、化学気相成長中、特にサイクリック化学気相成長中又は原子層堆積中に、非ハロゲン化オルガノアミノシランに比べて、基材表面に対してさらに優れた反応性を提供することができ、これらのオルガノアミンとHClが後に組合わさってアミン−塩化水素塩を形成するものと考えられている。四塩化ケイ素又はオルガノアミノシランなどの従来のケイ素前駆体に比べたハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体の1つの特別な利点は、ハロゲン化物とオルガノアミノ基の両方が基材表面上でSi−OH又はSiNH2と反応してALD又はCCVDプロセス中に前駆体を定着させ、こうしてケイ素含有膜の堆積を容易にすることができる、ということにあると考えられている。上述の利点に加えて、本明細書で記載されるハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、サイクリックCVD、ALD又はPEALD堆積方法を用いた酸化ケイ素又は窒化ケイ素膜の堆積用などの幾つかの実施形態では、例えば500℃以下、400℃以下又は300℃以下の比較的低い堆積温度で高密度材料を堆積させることができるかもしれない。他の実施形態では、本明細書で記載される前駆体は、例えば約500℃〜約800℃の範囲内でのさらに高温の堆積において使用可能である。
【0023】
1つの態様では、以下の式
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される幾つかの前駆体又はハロゲン化オルガノアミノシラン(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)が提供される。式Iのハロゲン化オルガノアミノシランの幾つかの実施形態では、R2とR3は、互いに連結されて環を形成することができる。式Iのハロゲン化オルガノアミノシランの変形実施形態では、R2とR3は、環を形成するために互いに連結されていない。
【0024】
式I−III中及び本明細書全体を通して、「アルキル」という用語は、1〜10個又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐官能基を表す。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル及びネオヘキシルが挙げられるがそれらに限定されない。幾つかの実施形態では、アルキル基は、それに結合した1つ又は複数の官能基、例えば限定されないがアルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はそれらの組み合わせなどの1つ又は複数の官能基を有していてよい。他の実施形態では、アルキル基は、それに結合した1つ又は複数の官能基を有していない。
【0025】
式I〜III中及び本明細書全体を通して、「環状アルキル」という用語は、3〜12個、又は4〜10個の炭素原子を有する環状官能基を表す。例示的な環状アルキル基としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基が挙げられるがそれらに限定されない。
【0026】
式I〜III中及び本明細書全体を通して、「アリール」という用語は、6〜12個の炭素原子を有する芳香族環状官能基を表す。例示的なアリール基としては、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル及びo−キシリルが挙げられるがそれらに限定されない。
【0027】
式I〜III中及び本明細書全体を通して、「アルケニル基」という用語は、1つ又は複数の炭素−炭素2重結合を有しかつ2〜12個又は2〜6個の炭素原子を有する基を表す。例示的なアルケニル基としては、ビニル又はアリル基が挙げられるがそれらに限定されない。
【0028】
式I〜III中及び本明細書全体を通して、「アルキニル基」という用語は、1つ又は複数の炭素−炭素3重結合を有しかつ2〜12個又は2〜6個の炭素原子を有する基を表す。
【0029】
式I〜III中及び本明細書全体を通して、「アルコキシ」という用語は、酸素原子に連結され(例えばR−O)かつ1〜12個又は1〜6個の炭素原子を有し得るアルキル基を表す。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ(−OCH3)、エトキシ(−OCH2CH3)、n−プロポキシ(−OCH2CH2CH3)及びイソプロポキシ(−OCHMe2)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0030】
幾つかの実施形態では、式I−III中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基及び/又はアリール基の1つ又は複数は、置換されてよいか、又は例えば水素原子の代りに置換された1つ又は複数の原子又は原子群を有していてよい。例示的な置換基としては、酸素、硫黄、ハロゲン原子(例えばF、Cl、I又はBr)、窒素、及びリンが挙げられるがそれらに限定されない。他の実施形態では、式I中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、及び/又はアリール基のうちの1つ又は複数が置換されていてよい。
【0031】
幾つかの実施形態では、置換基R2及びR3は、式I中で連結されて環構造を形成する。他の実施形態では、置換基R2及びR3は、式I中で連結されていない。
【0032】
下表1は、式Iを有するオルガノアミノシランの幾つかの実施形態の限定的でない例を与える。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
幾つかの実施形態では、式Iのハロゲン化オルガノアミノシランは、XとしてClを含み、ClH2Si(NR23)(式中、m=1、n=0、p=2であり、R2は直鎖又は分岐C3−C10アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され、R3は分岐C3−C10アルキル基又はC6−C10アリール基であり、R2とR3は環状環又はアルキル置換の環状環を形成することができる)と;R1ClHSi(NR34)(式中、m=1、n=1、p=1であり、R1はC1−C10アルキル基であり、R2とR3は直鎖又は分岐C3−C10アルキル基又はC4−C10アリール基であり、R2とR3は環状環又はアルキル置換の環状環を形成することができる)とを含む群から選択される。
【0038】
幾つかの実施形態では、式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシランは、1モル当量のジクロロシラン(DCS)と1モル当量の第2級アミンと、あるいはトリクロロシラン(TCS)と1又は2モル当量の以下の式IIを有する第2級アミンとを、有機溶媒又は溶媒混合物中で、副産物である塩化水素を吸収するためにトリエチルアミン又はトリブチルアミンなどの1又は2モル当量の第3級アミンを使用して(好ましくは、以下の例1及び2で実証されているように、第3級アミンが使用される)反応させることによって調製可能である。幾つかの実施形態では、第3級アミンは、等モル量の第2級アミンにより置き換えられる。この実施形態において使用可能な選択される第2級アミンは、以下の式IIを有する:
【化1】

ここでR2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基そしてC6−C10アリール基から選択され;ここでR2とR3は連結されて環を形成するか又はR2とR3は環を形成するために連結されない。R2及び/又はR3が分岐アルキル、環状アルキル又は芳香族基である実施形態では、このようなR2及び/又はR3基の立体的嵩高性によってアミノ基とハロゲン原子の分子間代替交換反応が妨害されることから、これらのアミンから合成されたハロゲン化オルガノアミノシランの安定性は大幅に改善される場合がある。式IIを有する例示的な第2級アミンとしては、ジ−イソ−プロピルアミン、ジ−イソ−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、イソ−プロピルメチルアミン、イソ−プロピルエチルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、シクロプロピルエチルアミン、ジシクロプロピルアミン、シクロヘキシルイソプロピルアミン、N−メチルアニリン(フェニルメチルアミン)、N−エチルアニリン(フェニルエチルアミン)、N−イソ−プロピルアニリン、n−ブチルアニリン、N−アリルアニリン、N−エチル−m−トルイジン、N−メチル−o−トルイジン、N−メチル−p−トルイジン、4−フルオロ−N−メチルアニリン、4−クロロ−N−メチルアニリン、N−シクロヘキシルアニリン、3−アニリノプロピオニトリル又はN−フェニルグリシノニトリルが挙げられるがそれらに限定されない。
【0039】
2とR3が連結されて環を形成する式IIを有する例示的アミンとしては、2,6−ジメチルピペリジン、2−メチルピペリジン、2−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、3−メチルインドール、2−メチルインドール、インドール、ペルヒドロキノリン、8−メチル−l,2,3,4−テトラヒドロキノリン、3−インドールアセトニトリル、2−メチルインドリン、2,3−ジヒドロインドール、5−メチルインドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロ−6−メチルキノリン、3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンズオキサジン、カルバゾール、2,6−ジメチルモルホリン及び3,5−ジメチルモルホリンが挙げられるがそれらに限定されない。
【0040】
以下の式1、2及び3は、本明細書中に記載の式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシランを製造するために使用してよい反応スキーム又は合成経路の例を提供している。式1、2及び3中の反応は、有機溶媒を用いて(例えばその存在下で)行なうことができる。有機溶媒が使用される実施形態では、適切な有機溶媒の例としては、炭化水素例えばヘキサン、オクタン、トルエン及びエーテル、例えばジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン(THF)が挙げられるがそれらに限定されない。これらの又は他の実施形態では、反応温度は、約−70℃から、溶媒が関与する場合には利用される溶媒の沸点までの範囲内にある。結果として得られるオルガノアミノシランは、全ての副産物ならびに溶媒(単複)の除去後、真空蒸留を介して精製可能である。式1〜3は、ジクロロシラン又はトリクロロシランの反応が関与する実施形態である。部分的アミノ化反応が関与する合成経路の例は、本明細書において例1及び3として提供されており、一方金属アルキルと式IIを有するアミンとの反応を介して調製され得る金属アミドが関与する式2は、例2に実証されている。
【化2】

【0041】
ケイ素含有誘電体膜又はコーティングを形成するために使用される方法は、堆積プロセスである。本明細書中で開示されている方法のための適切な堆積プロセスの例としては、サイクリックCVD(CCVD)、MOCVD(金属有機CVD)、熱化学気相成長、プラズマ強化化学気相成長(「PECVD」)、高密度PECVD、光子支援CVD、プラズマ−光子支援(「PPECVD」)、低温化学気相成長、化学物質支援気相成長、高温フィラメント化学気相成長、液体ポリマー前駆体のCVD、超臨界流体からの堆積及び低エネルギーCVD(LECVD)が挙げられるがそれらに限定されない。幾つかの実施形態では、金属含有膜は、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化ALD(PEALD)又はプラズマ強化サイクリックCVD(PECCVD)プロセスを介して堆積される。本明細書で使用される「化学気相成長プロセス」という用語は、基材が1つ又は複数の揮発性前駆体に曝露され、これらの前駆体が基材表面上で反応及び/又は分解して所望の堆積を生成するあらゆるプロセスを意味する。本明細書中で使用される「原子層堆積プロセス」という用語は、材料の膜をさまざまな組成の基材上に堆積させる自己限定的(例えば各反応サイクル中に堆積される膜材料の量は恒常である)逐次的界面化学を意味する。本明細書中で使用される前駆体、試薬及び供給源は、「気体」として記載される場合があるが、前駆体は、直接的気化、発泡又は昇華を介して反応装置内に不活性ガスとともに又は不活性ガスなしで輸送される液体又は固体であり得るものと理解される。一部の場合において、気化された前駆体はプラズマ発生器を通過し得る。1つの実施形態では、誘電体膜は、ALDプロセスを用いて堆積される。別の実施形態では、誘電体膜は、CCVDプロセスを用いて堆積される。さらなる実施形態では、誘電体膜は、熱CVDプロセスを用いて堆積される。本明細書で使用する「反応装置」という用語は、限定されないが反応チャンバー又は堆積チャンバーを含む。
【0042】
幾つかの実施形態では、本明細書中で開示されている方法は、反応装置への導入の前及び/又は導入中に前駆体を分離するALD又はCCVD法を使用することによって前駆体の前反応を回避する。これに関連して、ALD又はCCVDプロセスなどの堆積技術が、誘電体膜の堆積に使用される。1つの実施形態では、膜は、ケイ素含有前駆体、酸素源、窒素含有源又は他の前駆体又は試薬の1つ又は複数に対して交互に基材表面を曝露することにより、ALDプロセスを介して堆積される。膜成長は、表面反応、各前駆体又は試薬のパルス長及び堆積温度を自己限定的に制御することによって進行する。しかしながら、ひとたび基材の表面が飽和されたならば、膜成長は停止する。
【0043】
幾つかの実施形態では、本明細書で記載される方法はさらに、上述の式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体以外の1つ又は複数の追加のケイ素含有前駆体又は非ハロゲン化前駆体を含む。追加のケイ素含有前駆体としては、シロキサン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)及びジメチルシロキサン(DMSO));オルガノシラン(例えば、メチルシラン;ジメチルシラン;ビニルトリメチルシラン;トリメチルシラン;テトラメチルシラン;エチルシラン;ジシリルメタン;2,4−ジシラペンタン;1,4−ジシラブタン;2,5−ジシラヘキサン;2,2−ジシリルプロパン;1,3,5−トリシラシクロヘキサン及びこれらの化合物のフッ素化誘導体;フェニル含有オルガノケイ素化合物(例えば、ジメチルフェニルシラン及びジフェニルメチルシラン);酸素含有オルガノケイ素化合物、例えばジメチルジメトキシシラン;1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン;1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン;1,3,5,7−テトラシラ−4−オキソヘプタン;2,4,6,8−テトラシラ−3,7−ジオキソ−ノナン;2,2−ジメチル−2,4,6,8−テトラシラ−3,7−ジオキソノナン;オクタメチルシクロテトラシロキサン;[1,3,5,7,9]ペンタメチルシクロペンタシロキサン;1,3,5,7−テトラシラ−2,6−ジオキソ−シクロオクタン;ヘキサメチルシクロトリシロキサン;1,3−ジメチルジシロキサン;1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン;ヘキサメトキシジシロキサン及びこれらの化合物のフッ素化誘導体が挙げられるがそれらに限定されない。
【0044】
本明細書で記載される方法の1つの特定の実施形態では、非ハロゲン化ケイ素含有前駆体は、以下の式III
(R23N)SiH3 (III)
(式中、R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基そしてC6−C10アリール基から選択され、ここでR2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を有する化合物である。式IIIの幾つかの実施形態では、R2とR3は組合わされて環状基又は環を形成できる。式IIIの他の実施形態では、R2とR3は、環状基又は環を形成するために組み合わされない。非ハロゲン化ケイ素含有前駆体の例としては、ジ−イソ−プロピルアミノシラン、ジ−sec−ブチルアミノシラン、フェニルメチルアミノシラン及び2,6−ジメチルピペリジノシランが挙げられるがそれらに限定されない。
【0045】
堆積プロセスに応じて、幾つかの実施形態では、1つ又は複数のハロゲン化又は非ハロゲン化ケイ素含有前駆体を既定のモル体積で又は約0.1〜約1000マイクロモルで反応装置内に導入してよい。この実施形態又は他の実施形態では、ハロゲン化又は非ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、既定の時間反応装置内に導入されてよい。幾つかの実施形態では、時間は約0.001〜約500秒である。
【0046】
幾つかの実施形態では、本明細書で記載される方法を用いて堆積される誘電体膜は、酸素源、酸素を含む試薬又は前駆体を用いて酸素の存在下で形成される。酸素源は少なくとも1つの酸素源の形で反応装置内に導入されてよく、及び/又は堆積プロセス内で使用される他の前駆体中に付随的に存在する場合もある。適切な酸素源気体としては、例えば水(H2O)(例えば脱イオン水、浄水及び/又は精製水)、酸素(O2)、酸素プラズマ、オゾン(O3)、NO、NO2、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)及びそれらの組み合わせが含まれ得る。幾つかの実施形態では、酸素源は、約1〜約2000平方立方センチメートル(sccm)又は約1〜約1000sccmの流量で反応装置内に導入される酸素源気体を含む。酸素源は、約0.1〜約100秒の時間導入され得る。特定の1つの実施形態では、酸素源は、10℃以上の温度を有する水を含む。膜がALD又はサイクリックCVDプロセスによって堆積される実施形態では、前駆体パルスは、0.01秒を超えるパルス継続時間を有することができ、酸素源は、0.01秒未満のパルス継続時間を有することができ、一方水パルス継続時間は、0.01秒未満のパルス継続時間を有することができる。さらに別の実施形態では、パルス間のパージ持続時間は0秒に近い短時間であり得るか、又は間にパージなく連続的にパルス送りされる。酸素源又は試薬は、ケイ素前駆体に対して1:1の比より少ない分子の量で提供され、こうして少なくとも幾分かの炭素が、堆積されたままの誘電体膜内に保持されることになる。
【0047】
幾つかの実施形態では、誘電体膜はケイ素と窒素を含む。これらの実施形態では、本明細書で記載される方法を用いて堆積される誘電体膜は、窒素含有源の存在下で形成される。窒素含有源は少なくとも1つの窒素源の形で反応装置内に導入されてよく、及び/又は堆積プロセス内で使用される他の前駆体中に付随的に存在する場合もある。適切な窒素含有源気体としては、例えばアンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ及びそれらの混合物が含まれ得る。幾つかの実施形態では、窒素含有源は、約1〜約2000平方立方センチメートル(sccm)又は約1〜約1000sccmの流量で反応装置内に導入されるアンモニアプラズマ又は水素/窒素プラズマ源気体を含む。窒素含有源は、約0.1〜約100秒の時間導入され得る。膜がALD又はサイクリックCVDプロセスによって堆積される実施形態においては、前駆体パルスは、0.01秒を超えるパルス継続時間を有することができ、窒素含有源は、0.01秒未満のパルス継続時間を有することができ、一方水パルス継続時間は、0.01秒未満のパルス継続時間を有することができる。さらに別の実施形態では、パルス間のパージ持続時間は0秒に近い短時間であり得るか、又は間にパージなく連続的にパルス送りされる。
【0048】
本明細書中で開示されている堆積方法には1つ又は複数のパージガスが関与してよい。未消費の反応物質及び/又は反応副産物をパージするために使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)、ネオン、水素(H2)及びそれらの混合物が挙げられるがそれらに限定されない。幾つかの実施形態では、Arなどのパージガスは、約10〜約2000sccmの流量で約0.1〜1000秒間、反応装置内に供給され、こうして反応装置内に残留する可能性のある全ての副産物及び未反応材料をパージする。
【0049】
前駆体、酸素源、窒素含有源、及び/又は他の前駆体、供給源気体及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、結果として得られる誘電体膜の化学量論的組成を変更するためにそれらの供給時間を変えることによって、実施されてよい。
【0050】
反応を誘発し基材上の誘電体膜又はコーティングを形成するために、前駆体、窒素含有源、還元剤、他の前駆体又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つにエネルギーが適用される。このようなエネルギーは、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、Eビーム、光子、遠隔プラズマ法、及びそれらの組み合わせ(ただしこれらに限定されない)によって提供可能である。幾つかの実施形態では、二次RF周波数源が、基材表面におけるプラズマ特性を修正するために使用可能である。堆積にプラズマが関与する実施形態では、プラズマ発生型プロセスは、プラズマを反応装置内で直接発生させる直接プラズマ発生型プロセス、又は、プラズマを反応装置外で発生させて反応装置内に供給する遠隔プラズマ発生型プロセスを含む。
【0051】
オルガノアミノシラン前駆体及び/又は他のケイ素含有前駆体は、さまざまな形でCVD又はALD反応装置などの反応チャンバーに送出されてよい。1つの実施形態では、液体送出システムが使用されてもよい。一変形実施形態では、例えば、Shoreview、MNのMSP Corporation製のターボ気化器などの組み合わせ型液体送出及びフラッシュ気化プロセスユニットを使用して低揮発性材料を容積式に送出できるようにしてよく、こうして前駆体を熱分解することなく再現可能な輸送及び堆積が導かれる。液体送出方式において、本明細書で記載される前駆体はニートな液体形態で送出されてよく、あるいは代替的にはそれを含む溶媒調合物又は組成物中で利用されてよい。したがって、幾つかの実施形態では、前駆体調合物には、基材上に膜を形成するために所与の最終用途利用分野において所望され有利であるかもしれない適切な性質をもつ溶媒構成成分(単複)が含まれていてよい。
【0052】
式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(単複)が、溶媒と本明細書で記載される式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体とを含む組成物中で使用される実施形態については、溶媒又はその混合物はオルガノアミノシランと反応しない。組成物中の溶媒の重量百分率による量は、0.5重量%〜99.5%又は10重量%〜75%である。この実施形態又は他の実施形態では、溶媒は、式Iのハロゲン化オルガノアミノシランの沸点(b.p.)と類似の沸点を有するか、又は溶媒の沸点と式Iのハロゲン化オルガノアミノシランの沸点の差は40℃以下、30℃以下、又は20℃以下、又は10℃である。あるいは、沸点間の差は、以下の端点、0、10、20、30又は40℃のうちのいずれか1つ以上からの範囲内にある。沸点差の適切な範囲の例としては、限定されないが0〜40℃、20°〜30℃又は10°〜30℃が挙げられる。組成物中の適切な溶媒の例としては、エーテル(例えば1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル)、第3級アミン(例えばピリジン、1−メチルピペリジン、1−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)、ニトリル(例えばベンゾニトリル)、アルキル炭化水素(例えば、オクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばトルエン、メシチレン)、第3級アミノエーテル(例えばビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル)又はそれらの混合物が挙げられるがそれらに限定されない。幾つかの限定的でない例示的組成物としては、ジイソプロピルアミノシラン(沸点約116℃)とオクタン(沸点125〜126℃)を含む組成物;ジイソプロピルアミノシラン(沸点約116℃)とピリジン(沸点115℃);ジイソプロピルアミノシラン(沸点約116℃)とトルエン(沸点約110℃);N−メチルシクロヘキシルアミノシラン(沸点約171℃とデカン(沸点174℃)を含む組成物;N−メチルシクロヘキシルアミノシラン(沸点約171℃とジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)を含む組成物;N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン(沸点約199℃)とビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(沸点189℃)を含む組成物;N−イソプロピルシクロヘキシルアミノシラン(沸点約199℃)とベンゾニトリル(沸点約191℃)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0053】
別の実施形態では、式Iを有する1つ又は複数のオルガノアミノシラン前駆体を含む誘電体膜を堆積させるための容器が、本明細書で記載される。1つの特定の実施形態では、容器は、CVD又はALDプロセスのための反応装置に対する1つ又は複数の前駆体の供給を可能にするため適切なバルブ及び接続具が取付けられた少なくとも1つの加圧可能な容器(好ましくはステンレス鋼製)を含む。この実施形態及び他の実施形態では、式Iのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、ステンレス鋼で構成された加圧可能な容器に入って提供され、前駆体の純度は98重量%以上又は大部分の半導体利用分野に適したものである99.5重量%以上である。幾つかの実施形態では、このような容器は同様に、所望される場合前駆体と1つ又は複数の追加の前駆体とを混合するための手段も有することができる。これらの又は他の実施形態では、容器(単複)の中味は追加の前駆体と予め混合され得る。あるいは、ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体及び/又は他の前駆体を別個の容器内又は分離手段を有する単一の容器内に維持して、貯蔵中オルガノアミノシラン前駆体と他の前駆体を分離した状態に維持することが可能である。幾つかの実施形態では、容器中の式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、バックフィルガス(単複)、例えば限定されないが窒素、不活性ガス、例えばヘリウム、又はそれらの組み合わせをさらに含む。一変形実施形態では、容器はバックフィルガスを含まない。
【0054】
前述のように、ハロゲン化オルガノアミノシランの純度レベルは、信頼性の高い半導体製造のために受容できるほど充分高いものである。幾つかの実施形態では、本明細書で記載されるハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は、以下の不純物のうちの1つ又は複数を2重量%未満又は1重量%未満又は0.5重量%未満含む:遊離アミン、遊離ハロゲン化物又はハロゲンイオン又はより高い分子量の種。本明細書で記載されるオルガノアミノシランの比較的高い純度レベルは、精製、吸着、及び/又は蒸留というプロセスのうちの1つ又は複数を通して得ることができる。
【0055】
本明細書で記載される方法の1つの実施形態では、CCVD、ALD又はPEALDなどのサイクリック堆積プロセスが使用されてよく、そこでは、式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体から選択される少なくとも1つのケイ素含有前駆体そして任意には窒素含有源、例えばアンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマが利用される。
【0056】
幾つかの実施形態では、前駆体キャニスタと反応チャンバーを結ぶガスラインは、プロセス要件に応じて1つ又は複数の温度まで加熱され、式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体のコンテナは、発泡のため1つ又は複数の温度に保たれる。他の実施形態では、式Iを有する少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体を含む溶液が、直接的液体注入のため1つ又は複数の温度に保たれる気化器内に注入される。
【0057】
アルゴン及び/又は他の気体流をキャリヤガスとして使用して、前駆体をパルス送りする間反応チャンバーに少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体の蒸気を送出するのを補助してよい。幾つかの実施形態では、反応チャンバーのプロセス圧力は約1Torrである。
【0058】
典型的なALD又はCCVDプロセスにおいて、酸化ケイ素基材などの基材は、最初、ケイ素含有前駆体に曝露される反応チャンバー内の加熱器段上で加熱されて、錯体が基材の表面上に化学的吸着できるようにする。
【0059】
アルゴンなどのパージガスが、未吸収の余剰の錯体をプロセスチャンバーからパージする。充分なパージングの後、反応チャンバー内に窒素含有源が導入されて、吸収された表面と反応してよく、その後に別のガスパージが続き、チャンバーから反応副産物を除去する。プロセスサイクルを繰り返して、所望の膜厚を達成することができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、プロセスは還元剤を利用する。還元剤は典型的には気体形態で導入される。適切な還元剤の例としては、水素ガス、水素プラズマ、遠隔水素プラズマ、シラン(すなわちジエチルシラン、エチルシラン、ジメチルシラン、フェニルシラン、シラン、ジシラン、アミノシラン、クロロシラン)、ボラン(例えばボラン、ジボラン)、アラン、ゲルマン、ヒドラジン、アンモニア又はそれらの混合物が挙げられるがそれらに限定されない。非晶質ケイ素の堆積などの特定の実施形態では、還元剤が用いられる。
【0061】
この実施形態又は他の実施形態では、本明細書で記載される方法の各工程は、種々の順序で実施されてよく、逐次的又は同時に(例えば別の工程の少なくとも一部の間に)及びそれらの任意の組み合わせにおいて実施されてよい。前駆体及び窒素含有源気体を供給するそれぞれの工程は、結果として得られる誘電体膜の化学量論的組成を変更するためそれらの供給時間の長さを変動させることによって、実施されてよい。
【0062】
本明細書で開示される方法の別の実施形態では、ケイ素と窒素の両方を含む膜は、
ALD反応装置内に基材を用意する工程と;
ALD反応装置内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を導入する工程と;
基材上に少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体を化学吸着させる工程と;
パージガスを用いて未反応の少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体をパージする工程と;
加熱した基材上でオルガノアミノシラン前駆体に窒素含有源を提供して、吸着された少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体と反応させる工程と;
任意選択で、未反応の窒素含有源をパージする工程と
を含むALD堆積方法を用いて形成される。
【0063】
本明細書中で開示されている方法の別の実施形態では、誘電体膜は、
反応装置内に基材を用意する工程と;
反応装置内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を導入する工程と;
基材上に少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体を化学吸着させる工程と;
パージガスを用いて未反応の少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体をパージする工程と;
加熱した基材上でオルガノアミノシラン前駆体に酸素源を提供して、吸着された少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体と反応させる工程と;
任意選択で、未反応の酸素源をパージする工程と
を含むALD堆積方法を用いて形成される。
【0064】
上述の工程は、本明細書で記載される方法のための1つのサイクルを規定しており、誘電体膜の所望される厚さが得られるまでこのサイクルを繰り返すことができる。この実施形態又は他の実施形態では、本明細書で記載される方法の各工程は、種々の順序で実施されてよく、逐次的又は同時に(例えば別の工程の少なくとも一部の間に)及びそれらの任意の組み合わせにおいて実施されてよい。前駆体及び酸素源を供給するそれぞれの工程は、結果として得られる誘電体膜の化学量論的組成を変更するためそれらの供給時間の長さを変動させることによって、実施されてよいが、酸素はつねに、利用可能なケイ素との関係において化学量論量より少ない量で使用される。
【0065】
多成分誘電体膜については、他の前駆体例えばケイ素含有前駆体、窒素含有前駆体、還元剤又は他の試薬を、反応装置チャンバー内に交互に導入することができる。
【0066】
本明細書で記載される方法のさらなる実施形態では、誘電体膜は熱CVDプロセスを用いて堆積される。この実施形態では、本方法は、
周囲温度から約700℃の温度まで加熱されそして1Torr以下の圧力に維持される反応装置内に1つ又は複数の基材を入れる工程と;
以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
を有する少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基、及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基、及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を導入する工程と;
反応装置内に酸素源を提供して少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させ、1つ又は複数の基材上に誘電体膜を堆積させる工程と
を含む。CVD法の幾つかの実施形態では、反応装置は、導入工程の際、100mTorr〜600mTorrの圧力に維持される。
【0067】
上述の工程は、本明細書で記載される方法のための1つのサイクルを規定しており、誘電体膜の所望される厚さが得られるまでこのサイクルを繰り返すことができる。この実施形態又は他の実施形態では、本明細書で記載される方法の各工程は、種々の順序で実施されてよく、逐次的又は同時に(例えば別の工程の少なくとも一部の間に)及びそれらの任意の組み合わせにおいて実施されてよい。前駆体及び酸素源を供給するそれぞれの工程は、結果として得られる誘電体膜の化学量論的組成を変更するためそれらの供給時間の長さを変動させることによって、実施されてよいが、酸素はつねに、利用可能なケイ素との関係において化学量論量より少ない量で使用される。
【0068】
多成分誘電体膜については、他の前駆体例えばケイ素含有前駆体、窒素含有前駆体、酸素源、還元剤及び/又は他の試薬を、反応装置チャンバー内に交互に導入することができる。
【0069】
本明細書で記載される方法のさらなる実施形態では、誘電体膜は熱CVDプロセスを用いて堆積される。この実施形態では、本方法は、
周囲温度から約700℃の温度まで加熱されそして1Torr以下の圧力に維持される反応装置内に1つ又は複数の基材を入れる工程と;
以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
を有する少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基、及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基、及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を導入する工程と;
反応装置内に窒素含有源を提供して少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体と少なくとも部分的に反応させ、1つ又は複数の基材上に誘電体膜を堆積させる工程と
を含む。CVD法の幾つかの実施形態では、反応装置は、導入工程の際、100mTorr〜600mTorrの圧力に維持される。
【0070】
上述のとおり、本明細書で記載されるプロセスは、本明細書で記載される式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシランなどの2つ以上の前駆体を本明細書で記載される式IIIを有する非ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体、本明細書で記載されるものなどのケイ素含有前駆体及び/又はクロロシラン(例えば限定されないがモノクロロシラン(MCS)、ジクロロシラン(DCS)、トリクロロシラン又はテトラクロロシラン)、及び/又はアルキルクロロシラン(例えば限定されないがメチルクロロシラン、エチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン)などの追加の前駆体とともに使用して膜を堆積させるために用いることができる。これらの実施形態では、1つ又は複数の前駆体は、使用される異なる前駆体の数に応じて、第1の前駆体、第2の前駆体、第3の前駆体などと記載される。プロセスは、例えば、サイクリック化学気相成長又は原子層堆積において使用され得る。これらの実施形態又は他の実施形態では、前駆体は、さまざまな方法[例えばa)第1の前駆体を導入する;b)パージする;c)第2の前駆体を導入する;d)パージする;e)第3の前駆体を導入する;f)パージするなど、あるいは代替的には、a)第1の前駆体を導入する;b)パージする;c)第2の前駆体を導入する;d)パージする;e)第2の前駆体を導入する、など]により導入可能である。1つの特定の実施形態では、酸化ケイ素膜又はケイ素、炭素及び酸化物膜を堆積させるためのプロセスであって、
a)第1の前駆体から生成された蒸気を加熱された基材と接触させて、加熱された基材上で第1の前駆体を化学的に吸着させる工程と;
b)未吸着の前駆体がある場合、それをパージする工程と;
c)加熱された基材上に酸素源を導入して、吸着された第1の前駆体と反応させる工程と;
d)未反応の酸素源がある場合、それをパージする工程と;
e)第1の前駆体とは異なるものである第2の前駆体から生成された蒸気を加熱された基材と接触させて、加熱された基材上で第2の前駆体を化学的に吸着させる工程と;
f)未吸着の前駆体がある場合、それをパージする工程と;
g)加熱された基材上に酸素源を導入して、吸着された第1及び第2の前駆体と反応させる工程と;
h)未反応の酸素源がある場合、それをパージする工程と
を含み、所望の厚さに達するまで工程a)〜h)が繰り返されるプロセスが提供される。
【0071】
本明細書で記載されるプロセスのさらに別の実施形態では、窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素を堆積する方法であって、
a)第1の前駆体から生成された蒸気を加熱された基材と接触させて、加熱された基材上で第1の前駆体を化学的に吸着させる工程と;
b)未吸着の第1の前駆体がある場合、それをパージする工程と;
c)加熱された基材上に窒素源を導入して、吸着された第1の前駆体と反応させる工程と;
d)未反応の窒素源がある場合、それをパージする工程と;
e)第1のものとは異なるものである第2の前駆体から生成された蒸気を加熱された基材と接触させて、加熱された基材上で第2の前駆体を化学的に吸着させる工程と;
f)未吸着の第2の前駆体がある場合、それをパージする工程と;
g)加熱された基材上に窒素源を導入して、吸着された第2の前駆体と反応させる工程と;
h)未反応の窒素源がある場合、それをパージする工程と
を含み、所望の厚さに達するまで工程a)〜h)が繰り返される方法が提供される。
【0072】
さらなる実施形態では、本明細書で記載されるのは、サイクリック化学気相成長(CCVD)又は原子層堆積(ALD)技術、例えば、限定されないがプラズマ強化ALD(PEALD)又はプラズマ強化CCVD(PECCVD)プロセスを用いてケイ素含有膜を堆積させるプロセスである。これらの実施形態では、堆積温度は、一部の半導体利用分野において求められる膜の特性の仕様を制御するため、比較的高い温度、つまり約500〜800℃であってよい。1つの特定の実施形態では、このプロセスには、式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシランから生成された蒸気を、加熱された基材と接触させて、加熱された基材上に前駆体を化学的に吸着させる工程と;未吸着の前駆体がある場合にはこれをパージする工程と;還元剤を導入して吸着された前駆体を還元する工程と;未反応の還元剤がある場合にはそれをパージする工程と、が含まれる。
【0073】
幾つかの実施形態では、本明細書で記載される式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は同様に、例えば限定されないが金属酸化物膜又は金属窒化物膜などの金属含有膜のためのドーパントとしても使用され得る。これらの実施形態では、金属含有膜は、金属アルコキシド、金属アミド又は揮発性有機金属前駆体を用いて、本明細書で記載されるプロセスなどのALD又はCVDプロセスを用いて堆積される。本明細書中で開示されている方法とともに使用されてよい適切な金属アルコキシド前駆体の例としては、第3族乃至第6族金属アルコキシド、アルコキシとアルキル置換シクロペンタジエニルリガンドの両方を有する第3族乃至第6族金属錯体、アルコキシとアルキル置換ピロリルリガンドの両方を有する第3族乃至第6族金属錯体、アルコキシとジケトネートリガンドの両方を有する第3族乃至第6族金属錯体、アルコキシとケトエステルリガンドの両方を有する第3族乃至第6金属錯体が挙げられるがそれらに限定されない。本明細書中で開示されている方法とともに使用されてよい適切な金属アミド前駆体の例としては、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ)、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(TDEAZ)、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ)、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAH)、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH)及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAH)、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT)、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(TEMAT)、tert−ブチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TBTDET)、tert−ブチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT)、tert−ブチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT)、エチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(EITDET)、エチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(EITDMT)、エチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(EITEMT)、tert−アミルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TAIMAT)、tert−アミルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル、tert−アミルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(BTBMW)、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(ジエチルアミノ)タングステン、ビス(tert−ブチルイミノ)ビス(エチルメチルアミノ)タングステン及びそれらの組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書中で開示されている方法とともに使用されてよい適切な有機金属前駆体の例としては、第3族金属シクロペンタジエニル又はアルキルシクロペンタジエニルが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書中の例示的な第3族乃至第6族金属としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Yb、Lu、Ti、Hf、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWが挙げられるがそれらに限定されない。他の揮発性有機金属前駆体としては、金属アルキル前駆体、例えば限定されないがトリエチルアルミニウム(TEA)、トリメチルアルミニウム(TMA)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0074】
幾つかの実施形態では、ハロゲン化オルガノアミノシランは、スピンオン、ディップコート、エアロゾル、インクジェット、スクリーン印刷又は噴霧塗布などの(ただしこれらに限定されない)液体ベースの堆積又は膜形成方法において使用可能である。ケイ素膜が液体ベースの堆積を通して形成される実施形態では、複合膜は、なかでも、シリカ源としての本明細書で記載される式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシランなどの少なくとも1つのケイ素含有前駆体、触媒及び水を含む組成物から形成される。組成物はさらに、溶媒と界面活性剤を含んでいてよい。簡単に言うと、基材上に組成物を送り出し、溶媒と水を蒸発させると、膜を形成することができる。界面活性剤、残留溶媒及び水は一般に、1つ又は複数のエネルギー源に対して、ケイ素含有膜を生成するのに充分な時間曝露することによって除去される。一部の場合において、膜を予め加熱して実質的にシリカ源の加水分解を完了させ、架橋プロセスを続行し、存在する場合には残留溶媒を膜から除去してよい。
【0075】
本明細書で記載される式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン以外に、シリカ源の別の例としては、細孔形成材料を除去した時点でSi−H結合を生成する化合物が含まれ得る。
【0076】
供給源のさらなる例は、例えば参考文献Hayら、「Synthesis of Organic−lnorganic Hybrids via the Non−hydrolytic Sol−Gel Process」、Chem.Mater.、13、3396−3403(2001)又はHayら、「A Versatile Route to Organically−Modified Silicas and Porous Silicas via the Non−Hydrolytic Sol−Gel Process」、J.Mater.Chem.、10、1811−1818(2000)で記載されている非加水分解化学方法の中に見られる。
【0077】
シリカ源のさらに別の例としては、コロイドシリカ、ヒュームドシリカ、又はケイ酸出発材料が含まれ得る。
【0078】
シリカ源のさらに他の例としては、水素シルセスキオクサン(HSQ、HSi01.5)及びメチルシルセスキオクサン(MSQ、RSi01.5、[ここでRはメチル基である])などのシルセスキオキサンが含まれる。
【0079】
幾つかの実施形態では、シリカ源は、加水分解及び凝縮の産物として混合物に添加されてよい。シリカ源の加水分解及び凝縮は、水及び触媒を溶媒に添加し、シリカ源を一度に、間欠的に又は連続的に添加し、一般に−30〜100℃、好ましくは20〜100℃の温度範囲で0〜24時間混合物を撹拌しながら加水分解及び凝縮反応を行なうことによって発生する。調製の各工程で溶媒を用いて凝縮又は希釈を行なうことにより組成を調節して、所望の固体含有量を提供することができる。さらに、シリカ源は、加水分解された時点で酢酸を生成する化合物であってよい。
【0080】
シリカ源の加水分解及び凝縮は、膜形成中のあらゆる時点、すなわち混合物への添加前、混合物の添加後、少なくとも1つのエネルギー源に対する曝露前及び/又は曝露中などに発生し得る。例えば、幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシリカ源は、容器中で溶媒、水及び界面活性剤と組合わされ、触媒は漸進的に容器に添加され、混合される。本発明の精神から逸脱することなく、混合物に対するさまざまな異なる添加順序を用いることができるということが想定されている。
【0081】
本発明に適した触媒としては、水の存在下でのシリカ源からの置換基の加水分解及び/又は2つのシリカ源の凝縮の触媒として作用してSi−O−Si架橋を形成し得るあらゆる有機又は無機酸又は塩素が含まれる。触媒は、有機塩基例えば限定されないが第4級アンモニウム塩及び水酸化物、例えばアンモニウム又はテトラメチルアンモニウム、アミン例えば第1級、第2級及び第3級アミン、及びアミン酸化物であり得る。触媒は、同様に、酸、例えば限定されないが硝酸、マレイン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、グリコール酸、グリオキサル酸又はそれらの混合物でもあり得る。好ましい実施形態では、触媒は硝酸を含む。
【0082】
本発明において使用するのに適した溶媒としては、試薬との溶解性を示すあらゆる溶媒が含まれていてよい。溶媒は例えばアルコール溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒又はエステル溶媒であり得る。幾つかの実施形態では、溶媒は、超臨界流体、例えば二酸化炭素、フッ化炭素、六フッ化硫黄、アルカン及び他の適切な多成分混合物などであってよい。幾つかの実施形態では、本発明において使用される1つ又は複数の溶媒は、比較的低い沸点、すなわち160℃未満の沸点を有する。これらの溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、酢酸エチル及びメチルエチルケトンが挙げられるがそれらに限定されない。本発明において使用可能であるが160℃超の沸点を有する他の溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカルボネート、プロピレンカルボネート、グリセロール及び誘導体、ナフタレン及び置換態、酢酸無水物、プロピオン酸及びプロピオン酸無水物、ジメチルスルホン、ベンゾフェノン、ジフェニルスルホン、フェノール、m−クレゾール、ジメチルスルホキシド、ジフェニルエーテル、テルフェニルなどが含まれる。好ましい溶媒としては、プロピレングリコールプロピルエーテル(PGPE)、3−へプタノール、2−メチル−l−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−ヘプタノ、2−ヘキサノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル(PGBE)、1−ブトキシ−2−プロパノール、2−メチル−3−ペンタノール、2−メトキシエチルアセテート、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセトアセテート、1−ペンタノール、及びプロピレングリコールメチルエーテルが含まれる。さらにそれ以外の例示的溶媒には、乳酸塩、ピルビン酸塩及びジオールが含まれる。さらなる例示的溶媒としては、欧州特許第1,127,929号(EP1,127,929)に列挙されている溶媒が含まれる。上に列挙した溶媒は単独で又は2つ以上の溶媒の組み合わせにおいて使用することができる。
【0083】
幾つかの実施形態では、組成物内の試薬は反応して基材上に凝縮された流動性ある膜を形成する。この膜は、空隙内に流入してこの空隙を誘電性材料で満たす。その後膜は、熱アニール、紫外線(UV)曝露、マイクロ波曝露又は酸化プラズマに対する曝露を含む種々の技術のうちの1つ又は複数のものにより固体誘電性材料へと転換される。幾つかの実施形態によると、膜は、固体材料を生成するための前駆体の架橋及び/又は水素(−H)、ヒドロキシル(−OH)又は水(H2O)基の除去を含む(ただしこれらに限定されない)機構により、固体材料に転換される。特定の実施形態では、膜転換のために誘導結合プラズマが使用される。
【0084】
幾つかの実施形態では、結果として得られた誘電体膜又はコーティングを、例えば限定されないがプラズマ処理、化学処理、紫外光曝露、電子ビーム曝露及び/又は他の処理などの堆積後処理に曝露して、膜の1つ又は複数の特性に影響を及ぼすことができる。
【0085】
幾つかの実施形態では、本明細書で記載される誘電体膜は、6以下の誘電定数を有する。これらの実施形態又は他の実施形態では、膜は、約5以下又は約4以下あるいは約3.5以下の誘電定数を有し得る。しかしながら、膜の所望の最終用途に応じて、他の誘電定数(例えばより高い又はより低いもの)を有する膜を形成できることが想定されている。1つの実施形態では、本明細書で記載されるオルガノアミノシラン前駆体及びプロセスを用いて形成されるケイ素含有膜又は誘電体膜は、Sixyzvwという式を有し、例えばXPS又は他の手段により決定された場合に原子百分率重量%で、式中Siは約10%〜約40%の範囲内にあり;Oは約0%〜約65%の範囲内にあり;Cは約0%〜約75%又は約0%〜約50%の範囲内にあり;Nは約0%〜約75%又は約0%〜50%の範囲内にあり;Hは約0%〜約50%の範囲内にあり、ここでx+y+z+v+w=100原子量パーセントである。しかしながら、本明細書で記載されるハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体を用いて、異なる調合を有する誘電体膜又はケイ素含有膜の他の実施形態を作製することが可能である。
【0086】
先に言及したとおり、本明細書で記載される方法は、基材の少なくとも一部の上にケイ素含有膜を堆積させるために使用してよい。適切な基材の例としては、ケイ素Si02、Si34、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、ホウ窒化物、反射防止コーティング、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質有機及び無機材料、銅及びアルミニウムなどの金属、そして例えば限定されないがTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W又はWNなどの拡散障壁層が挙げられるがそれらに限定されない。膜は、後続するさまざまな処理工程、例えば化学機械平坦化(CMP)及び異方性エッチングと相容性を示す。
【0087】
堆積した膜には、コンピュータチップ、光学デバイス、磁気情報記憶装置、支持材料又は基材上のコーティング、微小電気機械システム(MEMS)、ナノ電気機械システム、薄膜トランジスタ(TFT)及び液晶ディスプレー(LCD)を含む(ただしこれらに限定されない)利用分野がある。
【0088】
クレーム中、請求対象工程を識別するために文字が使用されている(例えば(a)、(b)及び(c))。これらの文字は、方法工程に言及する上での補助として用いられ、請求対象工程を実施する順序を示すようには意図されていないが、このような順序がクレーム中で具体的に示されている場合そしてそのような場合のみについてはこのかぎりではない。
【0089】
以下の例は、本明細書で記載されるハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体ならびに本明細書中に記載されている堆積されたケイ素含有膜を調製するための方法を例証するものであり、いかなる形であれそれを限定するように意図されたものではない。
【実施例】
【0090】
[例1:2,6−ジメチルピペリジノクロロシランの合成]
機械式撹拌器及び付加漏斗が備わった2000ml入りの3口丸底フラスコ内に、1000mlのヘキサンを添加した。ドライアイスIPA低温浴を用いて−20℃までフラスコを冷却し、101g(1.0mol)のジクロロシランを凝縮し、ヘキサン中に溶解させた。撹拌しながら、113g(1.0mol)の2,6−ジメチルピペリジンと111g(1.1mol)のトリエチルアミンの混合物をフラスコに対し滴下により添加した。添加を完了した後、反応混合物を1時間−20℃で撹拌し、その後室温まで暖めた。空気中の水分と生成物が反応するのを防ぐため、N2でパージしたグローブバック内での真空濾過によって、HCl・Et3Nの塩副産物沈殿物を除去した。濾液についてのGC/MS分析により、生成物2,6−ジメチルピペリジノクロロシランが確認され、生成物が177の分子イオン質量を有し162の質量MCH3のマスラグメントを担持することが示された。溶媒ヘキサンを蒸留によって除去し、生成物を真空蒸留によって分離した。沸点は10torrで60℃であった。収量は66%であった。
【0091】
[例2:2,6−ジメチルピペリジノクロロシランのための代替的合成経路]
−78℃のTHF50mL中の7.55g(66.68mmol)シス−2,6−ジメチルピペリジンの溶液に対して、ヘキサン中のn−ブチルリチウムの2.5M溶液28.00mL(70.02mmol)を添加した。沈殿物が発生し、反応混合物を撹拌しながら室温まで暖めた。1時間後に、この混合物を、−40℃の30mLのキシレンと70mLのヘキサン中の6.74(66.68mmol)ジクロロシランの溶液に対して滴下にて添加し、薄灰色の沈殿物が形成した。反応混合物を16時間撹拌し、その後、発生した固体からそれを傾瀉し、周囲圧力での蒸留に付して揮発性物質を除去した。収量27%で、3.16gの所望の生成物を分離した。GC/MS分析により、生成物を2,6−ジメチルピペリジノクロロシランとして確認した。
【0092】
[例3:2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランの合成]
70重量%のヘキサン溶液中においてモル比で1部分の2,6−ジメチルピペルジンと1部分のトリエチルアミンと1.1部分のトリクロロシランとを混合することにより、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランの合成を行なった。ビス(2,6−ジメチルピペリンド)クロロシランの形成を防げるために、余剰量のトリクロロシランが必要であった。空気中の水分と生成物が反応するのを防ぐため、N2でパージしたグローブバッグの中で真空濾過により、HCl・Et3Nの塩副産物沈殿物を除去した。濾液についてのGC/MS分析(これは図1に示されている)により、211の質量を結果としてもたらし196の質量−CH3のマスフラグメントを担持する生成物2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランが生成されたことが確認された。真空濾過の後、第1の工程における単純な蒸留によりヘキサン総量を除去した。第2の工程では、真空蒸留技術を使用し、生成物を収集した。真空蒸留から判定した沸点は、18torrで93℃、5torrで66℃である。収量は64%であった。
【0093】
[例4:ケイ素含有膜の原子層堆積]
2,6−ジメチルピペリジノクロロシランという前駆体を用いて、ケイ素含有膜の原子層堆積を実施した。実験室規模のALDプロセス装置上で堆積を行なった。全ての気体(例えばパージガス及び反応物質ガス又は前駆体及び酸素源)は、堆積ゾーンに入る前に100℃に予熱させた。気体及び前駆体の流量は、起動が速いALDダイヤフラムで制御した。堆積において使用した基材は、基材温度を確認するために試料ホルダー上に取付けられた熱電対を有する長さ12インチのケイ素ストリップであった。酸素源気体としてオゾンを用いて堆積を実施し、堆積のプロセスパラメータを表2に提供する。
【0094】
【表5】

【0095】
所望の厚さに達するまで、工程b)〜e)を繰り返す。結果として得たケイ素含有膜を堆積速度及び屈折率について特徴づけした。膜からの反射データを予め設定された物理的モデル(例えばLorentz振動子モデルなど)に適合させることによって、Film Tek2000SEエリプソメータを用いて、膜の厚さ及び屈折率を測定した。X線光電子分光法(XPS)技術を用いて、膜組成を分析した。X線光電子分光法実験は、多重チャネルプレート(MCD)と集束Al単色X線源の備わったPHI5000VersaProbe分光計上で実施する。偶発的炭素信号を除去するため、膜内に100Åで膜組成を測定した。XPSでは検出不能であるため、測定された膜組成では水素を除去して100%まで正規化した。
【0096】
X線反射率測定(XRR)を全ての試料について実施して、膜密度を判定した。0.001の工程サイズ及び1秒/工程の計数時間を用いて0.2≦2≦0.65の範囲にわたり試料を走査した。定義された基材をSiとし膜を酸化ケイ素として、2層モデルを用いてデータを分析した。
【0097】
表3に要約されているとおりの1秒の前駆体投与で150〜300℃のさまざまな基材温度で2,6−ジメチルピペリジノクロロシランを用いて、酸化ケイ素の膜を形成した。
【0098】
【表6】

【0099】
表4に要約されているとおりの可変的な前駆体投与で300℃の基材温度で2,6−ジメチルピペリジノクロロシランを用いて、酸化ケイ素膜を形成した。
【0100】
【表7】

【0101】
酸化ケイ素堆積は、前駆体投与の増加に伴う堆積速度の飽和を示し、自己限定型原子層堆積(ALD)様の挙動を実証している。堆積した膜は、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、33原子%のSiと67原子%のOを有している。膜内に炭素、窒素及び塩素は全く検出されなかった。膜密度は、1.9±0.05g/ccである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表されるハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体であって、式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成している、ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体。
【請求項2】
1とR2が同じである、請求項1に記載のハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体。
【請求項3】
1とR2が異なる、請求項1に記載のハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体。
【請求項4】
化学気相成長プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスにより基材の少なくとも1つの表面上に誘電体膜を形成するための方法であって、
反応チャンバー内に基材の少なくとも1つの表面を提供する工程と;
以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
を有する少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成している)を導入する工程と;
反応装置内に窒素含有源を導入し、少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体と窒素含有源を反応させて前記少なくとも1つの表面上に誘電体膜を形成させる工程と
を含む、方法。
【請求項5】
少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシラン、2,6−ジメチルピペリジノクロロシラン、シクロヘキシルメチルアミノクロロシラン、シクロヘキシルエチルアミノクロロシラン、及びシクロヘキシル−イソ−プロピルアミノクロロシランからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノクロロシランを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
窒素含有源が、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
誘電体膜が、窒化ケイ素及び炭窒化ケイ素からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
原子層堆積(ALD)プロセスによって誘電体膜を形成する方法であって、
a.ALD反応装置内に基材を用意する工程と;
b.ALD反応装置内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
を有する少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を提供する工程と;
c.ALD反応装置を不活性ガスでパージする工程と;
d.ALD反応装置内に窒素含有源を提供する工程と;
e.ALD反応装置を不活性ガスでパージする工程と;
誘電体膜の所望の厚さが得られるまで工程b〜eを繰り返す工程と
を含む、方法。
【請求項11】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシラン、2,6−ジメチルピペリジノクロロシラン、シクロヘキシルメチルアミノクロロシラン、シクロヘキシルエチルアミノクロロシラン、及びシクロヘキシル−イソ−プロピルアミノクロロシランからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノクロロシランを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
窒素含有源が、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
誘電体膜が、窒化ケイ素及び炭窒化ケイ素からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
プラズマ強化原子層堆積(PEALD)プロセスを用いて基材の少なくとも1つの表面上に誘電体膜を形成する方法であって、
a.ALD反応装置内に基材を用意する工程と;
b.ALD反応装置内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
を有する少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を提供する工程と;
c.ALD反応装置を不活性ガスでパージする工程と;
d.ALD反応装置内にプラズマ窒素含有源を提供する工程と;
e.ALD反応装置を不活性ガスでパージする工程と;
誘電体膜の所望の厚さが得られるまで工程b〜eを繰り返す工程と
を含む、方法。
【請求項17】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシラン、2,6−ジメチルピペリジノクロロシラン、シクロヘキシルメチルアミノクロロシラン、シクロヘキシルエチルアミノクロロシラン、及びシクロヘキシル−イソ−プロピルアミノクロロシランからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノクロロシランを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
窒素含有源が、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
誘電体膜が、窒化ケイ素及び炭窒化ケイ素からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
基材上に酸化ケイ素膜を形成するための方法であって、気相堆積プロセスにおいて、以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表されるハロゲン化オルガノアミノシランを含む前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成している)と酸化剤を反応させて、基材上に酸化ケイ素膜を形成する工程を含む、方法。
【請求項23】
気相堆積が、化学気相成長、低圧気相成長、プラズマ強化化学気相成長、サイクリック化学気相成長、プラズマ強化サイクリック化学気相成長、原子層堆積、及びプラズマ強化原子層堆積から選択される少なくとも1つからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシラン、2,6−ジメチルピペリジノクロロシラン、シクロヘキシルメチルアミノクロロシラン、シクロヘキシルエチルアミノクロロシラン、及びシクロヘキシル−イソ−プロピルアミノクロロシランからなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノクロロシランを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
基材上に酸化ケイ素膜を形成するための方法であって、以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
を有する少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を含む組成物及び少なくとも1つの酸化剤から、気相堆積によって基材上に酸化ケイ素膜を形成する工程
を含み、気相堆積が、化学気相成長、低圧気相成長、プラズマ強化化学気相成長、サイクリック化学気相成長、プラズマ強化サイクリック化学気相成長、原子層堆積、及びプラズマ強化原子層堆積から選択される少なくとも1つである、方法。
【請求項28】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシラン、2,6−ジメチルピペリジノクロロシラン、シクロヘキシルメチルアミノクロロシラン、シクロヘキシルエチルアミノクロロシラン、及びシクロヘキシル−イソ−プロピルアミノクロロシランからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノクロロシランを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
基材上に酸化ケイ素膜を形成するための方法であって、
反応装置内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表されるハロゲン化オルガノアミノシラン(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)を導入する工程と;
反応装置内に少なくとも1つの酸化剤を導入し、少なくとも1つの酸化剤をオルガノアミノシランと反応させて基材上に酸化ケイ素膜を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項32】
基材上にある厚さを有する酸化ケイ素膜を形成するための方法であって、
a.堆積チャンバー内に以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成している)を導入する工程と;
b.基材上に少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体を化学吸着させる工程と;
c.パージガスを用いて未反応の少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体をパージする工程と;
d.加熱した基材上でハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体に酸素源を提供して、吸着された少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体と反応させる工程と;
e.任意選択で、未反応の酸素源をパージする工程と
を含む、方法。
【請求項33】
膜の厚さが確立されるまで工程a〜d及び任意選択の工程eが繰り返される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つのオルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシラン、2,6−ジメチルピペリジノクロロシラン、シクロヘキシルメチルアミノクロロシラン、シクロヘキシルエチルアミノクロロシラン、及びシクロヘキシル−イソ−プロピルアミノクロロシランからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシランを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つのハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体が、2,6−ジメチルピペリジノクロロシランを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
原子層堆積プロセスである、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
プラズマ強化サイクリック化学気相成長である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
ケイ素含有膜の堆積のための前駆体を供給するのに用いられる容器であって、
以下の式I
m1npSi(NR234-m-n-p
で表される前駆体(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0又は1であり;pは1であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成している)を含み、前駆体の純度が約98%以上である、容器。
【請求項40】
容器がステンレス鋼で構成された、請求項39に記載の容器。
【請求項41】
2,6−ジメチルピペリジノクロロシラン、2,6−ジメチルピペリジノジクロロシラン、ジシクロヘキシルアミノクロロシラン、シクロヘキシルメチルアミノクロロシラン、シクロヘキシルエチルアミノクロロシラン、シクロヘキシル−イソ−プロピルアミノクロロシラン、N−(クロロシリル)ペルヒドロキノリン、フェニルアリルアミノクロロシラン、m−トリルメチルアミノクロロシラン、N−(クロロシリル)カルバゾール、N−(クロロシリル)−テトラヒドロキノリン、N−(クロロシリル)インドール、N−(クロロシリル)−2−メチルインドール、N−(クロロシリル)−3−メチルインドール及びN−(クロロシリル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノリンからなる群より選択される、ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体。
【請求項42】
以下の式
ClH2Si(NR23
を有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体であって、式中、m=1、n=0、p=2であり、R2は直鎖又は分岐C3−C10アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され、R3は分岐C3−C10アルキル基又はC6−C10アリール基であり、R2とR3は環状環又はアルキル置換の環状環を形成することができる、ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体。
【請求項43】
以下の式
1ClHSi(NR34
を有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体であって、式中、m=1、n=1、p=1であり、R1はC1−C10アルキル基であり、R2とR3は直鎖又は分岐C3−C10アルキル基又はC4−C10アリール基であり、R2とR3は環状環又はアルキル置換の環状環を形成することができる、ハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体。
【請求項44】
誘電体膜の堆積のための組成物であって、
m1npSi(NR234-m-n-p
(式中、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択されるハロゲン化物であり;R1は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル基、C2−C12アルケニル基、C2−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル及びC6−C10アリール基から独立して選択され;R2は、直鎖又は分岐C1−C10アルキル、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;R3は、分岐C3−C10アルキル基、C3−C12アルケニル基、C3−C12アルキニル基、C4−C10環状アルキル基及びC6−C10アリール基から選択され;mは1又は2であり;nは0、1又は2であり;pは0、1又は2であり;(m+n+p)の合計は4未満であり、R2とR3は連結されて環を形成しているか又はR2とR3は環を形成するために連結されていない)と;
エーテル、第3級アミン、ニトリル、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、第3級アミノエーテル又はそれらの混合物からなる群より選択される溶媒と
を含む、組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2013−100262(P2013−100262A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−215012(P2012−215012)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】