説明

ハロゲン化合物の判別方法、判別キット

【課題】液体試料中における、ハロゲン化合物の含有量を現地で簡便かつ瞬時に判別することができるハロゲン化合物の判別方法を実現する。
【解決手段】本発明のハロゲン化合物の判別方法は、液体試料中における、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子の何れか1つを少なくとも含むハロゲン化合物の存在の有無を判別する方法であり、液体試料を銅含有化合物の存在下、火炎内で燃焼させ、生じた火炎色から液体試料中におけるハロゲン化合物の存在の有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中にハロゲン化合物が存在するか否かを迅速、簡便に判別する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塩素系や臭素系化合物等のハロゲン化合物含有廃棄物の埋め立てや焼却による処理の際、公害問題が課題となっている。特に塩素系物質を含んだ材料については焼却によるダイオキシンの発生が大きな問題となっている。
【0003】
ダイオキシンの発生は、塩化ビニル樹脂等の塩素含有樹脂の焼却において燃焼温度が低い場合に生成するが、一般的な有機材料及び微量の塩素化合物の存在でも生成することが知られている。このようなことから、固体、粉体、液体に係わらず廃棄物中に含有するハロゲン化合物を安価に、簡便かつ迅速に識別する実用性の高い判別方法が求められている。
【0004】
このような方法として、液状試料を加熱燃焼させ、PCB(polychlorinated biphenyl)から遊離したハロゲンガスを液体に吸収させた後、液体中のハロゲンイオンを電量滴定で定量する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、火炎発生装置から放出される火炎に当たる箇所に銅線を備えた装置や、加熱銅線に廃樹脂を接触させ、再度加熱して火炎色から塩素の含有を簡易に判別する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。他には、プラスチック試料とアルカリ金属又はアルカリ土類金属とを燃焼させ、生じた火炎色からハロゲン元素を識別する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、変圧器絶縁オイル中のPCB類用のスクリーニング技術(例えば、非特許文献1参照)や、産業廃棄物中の有機塩素化合物をヘキサンで抽出し、ビフェニルナトリウム(同仁試薬社製)で分解後、純水で抽出して比色法(チオシアン酸水銀-鉄法)で定量する方法(例えば、非特許文献2参照)や、絶縁油中のPCBを金属Naで分解し、純水で抽出後、イオンクロマト法で定量する方法(例えば、非特許文献3参照)が開示されている。
【特許文献1】特開2006−30176号公報(2006年2月2日公開)
【特許文献2】特開平11−132955号公報(1999年5月21日公開)
【特許文献3】特開平9−243565号公報(1997年9月19日公開)
【非特許文献1】J.D. Mahon, M.S., D.Balog, A.C.Lynn, T.B.Lynn,Ph.D., 「変圧器絶縁オイル中のPCB類用のフィールドスクリーニング技術:L2000DX分析器に対する米国環境保護局フィールド試験結果」、The 2002 Meeting of MY TRANSFO in Trino
【非特許文献2】電気協会法「絶縁油中のポリ塩素化ビフェニル(PCB)の分析方法規程」JEAC1201-1991、社団法人 日本電気協会 電気技術基準調査委員会編集、平成3年9月30日発行
【非特許文献3】栗田恵子、野々村誠、阪口慶、佐伯愛子、竹田良子、「ポリ塩化ビフェニル分解キットの改良とイオンクロマトグラフィーによる絶縁油中ポリ塩化ビフェニルの簡易定量」、分析化学、Vol.54(2005)、No.9、pp.855−860
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の方法では、廃油等の液状試料におけるハロゲン化合物の含有量を、簡便かつ瞬時に判別することができないという問題を生じる。
【0007】
具体的には、特許文献1や非特許文献1〜3等の方法では、液体試料に金属ナトリウムやビフェニルナトリウム等を用いて分解又は燃焼により生成したハロゲンガスを液体に吸収させた後、液体中のハロゲンイオンを分光光度計、イオンクロマトグラフ、イオン電極、電量滴定計を用いて定量するものである。しかしながら、これらの方法は、前処理、測定装置と関連する専門知識が必要であり、かつ現地での瞬時の判定が困難である。
【0008】
一方、特許文献2,3等に記載の方法のように、昔から良く知られている炎色反応、特にバイルシュタイン反応を用いた方法は、瞬時に含有する塩素、臭素、ヨウ素の判別ができることが知られている。しかし、プラスチック等の固体へ適用することのみが知られていた。
【0009】
このように、プラスチック等の固体試料においては、迅速かつ簡便に判別する技術が報告されているが、液体試料においては、前処理等が必要で迅速かつ簡便な技術は知られていなかった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体試料中における、ハロゲン化合物の含有量を現地で簡便かつ瞬時に判別することができるハロゲン化合物の判別方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るハロゲン化合物の判別方法は、上記課題を解決するために、液体試料中における、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子の何れか1つを少なくとも含むハロゲン化合物の存在の有無を判別する方法であり、液体試料を銅含有化合物の存在下、火炎内で燃焼させ、生じた火炎色から液体試料中におけるハロゲン化合物の存在の有無を判別することを特徴としている。
【0012】
上記方法によれば、液体試料を銅含有化合物の存在下、火炎内で燃焼させるだけで、液体試料中における、ハロゲン化合物の存在の有無を判別することができる。よって、専門知識や特別な技術を有しなくとも、火炎発生装置等の手軽な装置を用いて、前処理なしで液体中に含まれる微量塩素等のハロゲン化合物を瞬時に判別することができる。
【0013】
従って、上記方法によれば、液体試料中における、ハロゲン化合物の含有量を現地で簡便かつ瞬時に判別することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係るハロゲン化合物の判別方法では、上記銅含有化合物を粉末状で用いることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るハロゲン化合物の判別方法では、上記液体試料に上記銅含有化合物を溶解若しくは分散させ、当該溶解液若しくは分散液を火炎内で燃焼させることが好ましい。
【0016】
更には、本発明に係るハロゲン化合物の判別方法では、上記銅含有化合物を含有させた液体吸収体材料に上記液体試料を含浸させ、当該液体吸収体材料を火炎内で燃焼させることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係るハロゲン化合物の判別方法では、液体吸収体材料に上記液体試料を含浸させた後、上記銅含有化合物粉末を付着させ、火炎内で燃焼させることが好ましい。
【0018】
上記各方法によれば、簡単な操作により、ハロゲン化合物の含有量を判別することができる。また、銅含有化合物と液体試料との接触面積を大きくすることができるため、より高い感度でハロゲン化合物の含有量を判別することができるという更なる効果を奏する。
【0019】
本発明に係るハロゲン化合物の判別方法では、上記液体吸収体材料が、紙、布、綿棒状物、又はセラミックス多孔質体であることが好ましい。
【0020】
本発明に係るハロゲン化合物の判別方法では、上記火炎は火炎発生装置により発生させ、火炎の温度が800℃以上であることが好ましい。
【0021】
上記方法によれば、より高い感度でハロゲン化合物の含有量を判別することができるという効果を奏する。また、ダイオキシンの生成が抑制されると考えられる。
【0022】
本発明に係るハロゲン化合物の判別方法では、上記ハロゲン化合物としてPCBの存在の有無を判別することが好ましい。
【0023】
本発明に係るハロゲン化合物の判別キットは、上記課題を解決するために、液体試料中における、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子の何れか1つを少なくとも含むハロゲン化合物の存在の有無を判別する判別キットであり、火炎発生装置と、下記(i)〜(iii)
(i)粉末状の銅含有化合物
(ii)粉末状の銅含有化合物及び液体吸収体材料
(iii)銅含有化合物を含有させた液体吸収体材料
の何れか1つとを含むことを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、例えば、上記(i)を含む場合では、上記液体試料に上記銅含有化合物を溶解若しくは分散させ、当該溶解液若しくは分散液を火炎内で燃焼させること等により、液体試料中における、ハロゲン化合物の存在の有無を判別することができる。よって、専門知識や特別な技術を有しなくとも、前処理なしで液体中に含まれる微量塩素等のハロゲン化合物を瞬時に判別することができる。
【0025】
また、上記(ii)を含む場合では、液体試料を液体吸収体材料に含浸させ、上記銅含有化合物粉末を付着させ、火炎内で燃焼させることにより、液体試料中における、ハロゲン化合物の存在の有無を判別することができる。
【0026】
更には、上記(iii)を含む場合では、液体試料を液体吸収体材料に含浸させ、火炎内で燃焼させるだけで、液体試料中における、ハロゲン化合物の存在の有無を判別することができる。
【0027】
従って、上記構成によれば、液体試料中における、ハロゲン化合物の含有量を現地で簡便かつ瞬時に判別することができるという効果を奏する。
【0028】
本発明に係るハロゲン化合物の判別キットでは、上記液体吸収体材料が、紙、布、綿棒状物、又はセラミックス多孔質体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るハロゲン化合物の判別方法は、以上のように、液体試料を銅含有化合物の存在下、火炎内で燃焼させ、生じた火炎色から液体試料中におけるハロゲン化合物の存在の有無を判別することを特徴としている。
【0030】
このため、液体試料中における、ハロゲン化合物の含有量を現地で簡便かつ瞬時に判別することができるという効果を奏する。
【0031】
また、本発明に係るハロゲン化合物の判別キットは、火炎発生装置と、(i)粉末状の銅含有化合物、(ii)粉末状の銅含有化合物及び液体吸収体材料、(iii)銅含有化合物を含有させた液体吸収体材料、の何れか1つとを含むことを特徴としている。
【0032】
このため、液体試料中における、ハロゲン化合物の含有量を現地で簡便かつ瞬時に判別することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
【0034】
(I)ハロゲン化合物の判別方法
本実施の形態に係るハロゲン化合物の判別方法は、液体試料中における、ハロゲン化合物の存在の有無を判別する方法であり、液体試料を銅含有化合物の存在下、火炎内で燃焼させ、生じた火炎色から液体試料中におけるハロゲン化合物の存在の有無を判別する。
【0035】
尚、本明細書では、特に断らない限り「ハロゲン化合物」とは、「塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子の何れか1つを少なくとも含む化合物」の意味で用いられる。また、上記「液体試料」とは、常温、常圧下において液体である全ての物質を意味する。
【0036】
本実施の形態に係るハロゲン化合物の判別方法は、廃油等の液状試料を仕分け、処理する場合に、ハロゲン化合物の含有量を現地で簡便かつ瞬時に判別することができる簡易判別方法を提供することを目的に成され、バイルシュタイン反応を応用して絶縁油等の液状試料中のハロゲン化合物濃度を安価に、簡便かつ瞬時に判別する方法を提供することができる。
【0037】
尚、バイルシュタイン反応(試験)とは、ロシアの有機化学者バイルシュタインによって提案されたハロゲン検出法の1つで、銅線をガスバーナー等で強熱して表面に酸化銅(CuO)の皮膜をつくり、これに試料の微量を付けて再びガスバーナーで熱し、火炎の色でハロゲンが含有しているかを判定する。青〜青緑色の炎色が現れると、ハロゲンが検出されたことになる。
【0038】
本実施の形態に係る判別方法が対象とする液体試料は、常温、常圧下において液体である試料であれば特には限定されないが、取り扱いの点で燃焼前に揮散し難い高沸点有機液体が望ましい。具体的には、PCBの混入が考えられる変圧器やコンデンサーに使用されている絶縁油や、重電機器に使用される廃油等が挙げられる。
【0039】
対象となるハロゲン化合物としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子の何れかを少なくとも含む化合物であれば、特には限定されず、例えば、PCB等が挙げられる。
【0040】
上記銅含有化合物としては、無機銅含有化合物、又は有機銅含有化合物であれば特には限定されないが、ハロゲン不純物を含有しない、銅含有化合物単独で加熱燃焼させても火炎部に緑色が生じない銅含有化合物を選ぶことが必要である。また、上記銅含有化合物は、可能な限り精製して使用することが望ましい。例えば、ハロゲン不純物を含む場合は再結晶等の精製をして粉末にしたものを使用することができる。
【0041】
上記無機銅含有化合物としては、例えば、銅金属、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、酸化銅、水酸化銅や、これら銅含有化合物とアルカリとのコロイド状銅錯塩が挙げられる。また、上記有機銅含有化合物としては、ギ酸銅、酢酸銅、シュウ酸銅、クエン酸銅、安息香酸銅等が挙げられる。また、銅含有化合物と液体試料との接触面積を大きくする観点から、上記銅含有化合物を粉末状で用いることが好ましい。
【0042】
本実施の形態に係るハロゲン化合物の判別方法として具体的には、(i)銅線等の所定の形状の銅含有化合物に、上記液体試料を付着させ、付着した液体試料を銅線等と共に火炎内で燃焼させる方法、(ii)上記液体試料に上記銅含有化合物を溶解若しくは分散させ、当該溶解液若しくは分散液を火炎内で燃焼させる方法、(iii)液体吸収体材料に上記液体試料を含浸させた後、上記銅含有化合物粉末を付着させ、火炎内で燃焼させる方法、(iv)上記銅含有化合物を含有させた液体吸収体材料に上記液体試料を含浸させ、当該液体吸収体材料を火炎内で燃焼させる方法、等が挙げられる。
【0043】
上記(i)の方法では、火炎が放出する位置に、上記液体試料を付着させる銅線等を備えた火炎発生装置を用いれば、ハロゲン化合物の存在の有無を簡便に判定することができる。
【0044】
上記(ii)の方法では、銅含有化合物を液体試料中に溶解若しくは分散させるため、銅含有化合物と液体試料との接触面積を大きくすることができ、銅含有化合物とハロゲン化合物との接触面積が増加し、炎色反応が促進されると考えられる。このため、より高い感度でハロゲン化合物の存在の有無を判別することができる。(iii)の方法でも、同様に、銅含有化合物粉末を付着させるため、銅含有化合物と液体試料との接触面積を大きくすることができ、高い感度でハロゲン化合物の存在の有無を判別することができる。
【0045】
更には、上記(iv)の方法では、上記銅含有化合物を含有させた液体吸収体材料に上記液体試料を含浸させ、当該液体吸収体材料を火炎内で燃焼させるだけなので、手間のかかる処理を行う必要がなく、銅含有化合物と液体試料との接触面積を大きくすることができ、高い感度でハロゲン化合物の存在の有無を判別することができる。
【0046】
上記液体吸収体材料としては、ハロゲンを含まない、液体を吸収する材料であって、単独では火炎内で加熱燃焼させても緑色を呈しないものであれば特には限定されない。例えば、ろ紙やウエス等の紙や布、綿棒状物、又は小さい気孔が無数に開いている、焼成されたセラミックス多孔質体を用いることができる。また、手軽に入手できる市販されているろ紙や布を短冊状に切断して用いることもできる。
【0047】
液体試料を燃焼させる火炎を放出する火炎発生装置としては、ライター、バーナーやガストーチ等を利用することができる。安価で手軽に入手できるライター型着火装置を使用することもできる。
【0048】
また、火炎発生装置から放出されるガス流速を大きくして、還元炎の生成を多くした火炎を用いることが好ましい。また、液体試料の燃焼の際の火炎の温度が800℃以上であることが好ましい。
【0049】
ハロゲン化合物の存在の有無の上記判別は、具体的には、銅含有化合物と液体試料とを燃焼させた火炎が緑色に発色したか否かにより行うことができる。つまり、緑色に発色すれば、ハロゲン化化合物が存在していると判定される。
【0050】
また、上記判別方法では、加熱燃焼は瞬間的に終わるので、正確な判別をするためにビデオ撮影機能のあるカメラやビデオ等の装置を使用して記録してもよい。
【0051】
以上のように、本実施の形態に係るハロゲン化合物の判別方法は、絶縁油等の液体試料中に、PCB等のハロゲン化合物を含むか否かを簡単、迅速に判別できる。このため、分析機器類を車に搭載することなく、現場での分析(オンサイト分析)が可能になる。
【0052】
更には、上記方法によれば、機器分析法や生物検定法を用いる場合における前処理の煩雑さや、高度な専門知識及び機器操作技術を習得することから解放され、PCB等のハロゲン化化合物の混入が考えられる、変圧器や重電機器に使用される廃油やこぼれた油等にハロゲン化合物が含有するか否かの判定を簡易かつ瞬時に実施することができる。
【0053】
(II)ハロゲン化合物の判別キット
本実施の形態に係るハロゲン化合物の判別キットは、液体試料中における、ハロゲン化合物の存在の有無を判別する判別キットであり、火炎発生装置と、(i)粉末状の銅含有化合物、(ii)粉末状の銅含有化合物及び液体吸収体材料、(iii)銅含有化合物を含有させた液体吸収体材料、の何れか1つとを含む。つまり、本実施の形態に係るハロゲン化合物の判別キットは、上述したハロゲン化合物の判別方法を用いるための判別キットであり、本キット含まれる、粉末状の銅含有化合物、液体吸収体材料、並びに火炎発生装置は、上述した銅含有化合物、液体吸収体材料及び火炎発生装置をそれぞれ用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例により、何ら限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
モノクロルベンゼンをろ紙に浸し、浸したろ紙の表面に微粉状の硫酸銅を付着させ、当該ろ紙を火炎発生装置(製品名:簡易塩ビ判別器 塩ビちゃん、(株)イージーエス製)で燃焼させた。その結果、火炎中に塩化銅特有の緑色を呈することが確認できた。
【0056】
〔実施例2〕
モノクロルベンゼンの代わりにモノブロモベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、火炎中に臭化銅特有の緑色を呈することが確認できた。
【0057】
〔実施例3〕
モノクロルベンゼンの代わりにモノヨードベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、火炎中に沃化銅特有の緑色を呈することが確認できた。
【0058】
〔参考例1〕
モノクロルベンゼンの代わりにモノフルオロベンゼンを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、火炎中にハロゲン化銅特有の呈色が確認できなかった。
【0059】
〔実施例4〕
塩素を含まないトルエンにモノクロルベンゼンを混合し、モノクロルベンゼン濃度が50質量%、10質量%の溶液を調製した。
【0060】
そして、これら各溶液をろ紙に浸し、浸したろ紙の表面に微粉状の硫酸銅を付着させ、当該ろ紙を火炎発生装置(製品名:簡易塩ビ判別器 塩ビちゃん、(株)イージーエス製)でそれぞれ燃焼させた。その結果、全ての試料について、火炎中に塩化銅特有の緑色を呈することが確認できた。
【0061】
〔実施例5〕
塩素を含まない絶縁油にPCB(商品名:カネクロール KC−500、(株)カネカ製)を混合し、PCB濃度が質量換算で1000ppm、750ppm、500ppm、250ppm、120ppm、50ppm、20ppmである各溶液を調製した。
【0062】
そして、これら各溶液をろ紙に浸し、浸したろ紙の表面に微粉状の硫酸銅を付着させ、当該ろ紙を火炎発生装置(製品名:簡易塩ビ判別器 塩ビちゃん、(株)イージーエス製)でそれぞれ燃焼させた。その結果、全ての試料について、火炎中に塩化銅特有の緑色を呈することが確認できた。
【0063】
〔実施例6〕
塩素を含まない絶縁油にPCB(商品名:カネクロール KC−500、(株)カネカ製)を混合し、PCB濃度が質量換算で1000ppm、750ppm、500ppm、250ppm、120ppm、50ppm、25ppmである各溶液を調製した。
【0064】
撚り線を巻いた銅線に調製液を付着させた後、バーナーの火炎内で燃焼させた。その結果、1000ppmの試料について、火炎中に塩化銅特有の緑色を呈することが確認できた。
【0065】
〔実施例7〕
予め機器分析にてPCB濃度を測定した絶縁油4種類(PCB濃度が質量換算で200ppm、120ppm、54ppm、22ppm)を市販ろ紙に含浸させた。このろ紙にハロゲンを含まない粉末硫酸銅を付着させた後、このろ紙を火炎発生装置(製品名:簡易塩ビ判別器 塩ビちゃん、(株)イージーエス製)から放出される火炎内で燃焼させ、生じた火炎色から液体試料中にPCBが含有するか否かを判別した。
【0066】
この結果でも、PCB濃度が54ppm以上になると火炎中に塩化銅特有の緑色を呈した。
【0067】
〔実施例8〕
予め機器分析にてPCB濃度を測定した絶縁油4種類(PCB濃度が質量換算で280ppm、120ppm、54ppm、22ppm)に、ハロゲンを含まない酢酸銅を重量比で30%になるよう加えた後、市販ろ紙に含浸させた。このろ紙を火炎発生装置(製品名:簡易塩ビ判別器 塩ビちゃん、(株)イージーエス製)から放出される火炎内で燃焼させ、生じた火炎色から液体試料中にPCBが含有するか否かを判別した。
【0068】
その結果、PCB濃度が280ppm以上になると火炎中に塩化銅特有の緑色を呈した。
【0069】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0070】
【表1】

【0071】
尚、表1中の方法A〜Cは、以下のことを意味する。
方法A:液体吸収体材料に液体試料を含浸させた後、銅含有化合物粉末を付着させ、火炎内で燃焼させる方法
方法B:銅線に、液体試料を付着させ、付着した液体試料を銅線と共に火炎内で燃焼させる方法
方法C:液体試料に銅含有化合物を溶解させ、当該溶解液を火炎内で燃焼させる方法
また、表1中の「結果」における「○」は、緑色を呈したことを意味し、「×」は緑色を呈していないことを意味する。
【0072】
表1に示すように、感度の違いはあるが、各実施例のハロゲン化合物の判別方法により、ハロゲン化合物の含有量を簡便かつ瞬時に判別することができることが確認できた。
【0073】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のハロゲン化合物の判別方法は、液体試料中における、ハロゲン化合物の含有量を現地で簡便かつ瞬時に判別することができる。このため、PCB等を含む可能性のある絶縁油等の液体試料の判別等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中における、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子の何れか1つを少なくとも含むハロゲン化合物の存在の有無を判別する方法であり、
液体試料を銅含有化合物の存在下、火炎内で燃焼させ、生じた火炎色から液体試料中におけるハロゲン化合物の存在の有無を判別することを特徴とするハロゲン化合物の判別方法。
【請求項2】
上記銅含有化合物を粉末状で用いることを特徴とする請求項1に記載の判別方法。
【請求項3】
上記液体試料に上記銅含有化合物を溶解若しくは分散させ、当該溶解液若しくは分散液を火炎内で燃焼させることを特徴とする請求項1に記載の判別方法。
【請求項4】
上記銅含有化合物を含有させた液体吸収体材料に上記液体試料を含浸させ、当該液体吸収体材料を火炎内で燃焼させることを特徴とする請求項1に記載の判別方法。
【請求項5】
液体吸収体材料に上記液体試料を含浸させた後、銅含有化合物粉末を付着させ、火炎内で燃焼させることを特徴とする請求項1又は2に記載の判別方法。
【請求項6】
上記液体吸収体材料が、紙、布、綿棒状物、又はセラミックス多孔質体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の判別方法。
【請求項7】
上記火炎は火炎発生装置により発生させ、火炎の温度が800℃以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の判別方法。
【請求項8】
上記ハロゲン化合物としてPCBの存在の有無を判別することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の判別方法。
【請求項9】
液体試料中における、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子の何れか1つを少なくとも含むハロゲン化合物の存在の有無を判別する判別キットであり、
火炎発生装置と、下記(i)〜(iii)
(i)粉末状の銅含有化合物
(ii)粉末状の銅含有化合物及び液体吸収体材料
(iii)銅含有化合物を含有させた液体吸収体材料
の何れか1つとを含むことを特徴とするハロゲン化合物の判別キット。
【請求項10】
火炎発生装置と、上記(ii)又は(iii)とを含み、
上記液体吸収体材料が、紙、布、綿棒状物、又はセラミックス多孔質体であることを特徴とする請求項9に記載の判別キット。

【公開番号】特開2010−139408(P2010−139408A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316687(P2008−316687)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所 環境ホルモン学会(正式名 日本内分泌撹乱化学物質学会)、刊行物名 第11回 環境ホルモン学会研究発表会 要旨集、発行日 平成20年12月13日
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【出願人】(508366123)
【Fターム(参考)】