説明

ハロゲン化銀写真感光材料

【課題】低カブリ、高感度で相反則不軌特性に優れ、潜像安定性、乳剤安定性、塗布液停滞安定性に優れたハロゲン化銀乳剤及び該乳剤を用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料の提供。
【解決手段】支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、前記ハロゲン化銀乳剤層に含有されるハロゲン化銀粒子の少なくとも1種が下記一般式(3)で表される化合物により化学増感されたことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料に関し、詳しくは高感度で相反則不軌特性、乳剤安定性に優れたハロゲン化銀乳剤、及びその化学増感方法及び該乳剤を用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の急速なデジタル化指向の中にあって、ハロゲン化銀写真感光材料(以下、感光材料とも言う)においては、レーザー光などによるデジタル方式の露光が行われる機会が増えて来た。これに伴い、特にカラープリント用の写真感光材料であるカラーペーパーにおいては、高照度の光でのミリ秒〜ナノ秒程度の極く短時間での露光適性や、走査露光に対する適性も求められるようになって来た。
【0003】
高感度化を達成するために金増感法が有効な手段で、塩化金酸などのAu(III)化合物を用いることが古くから知られている。塩化金酸は水溶液中で十分に安定である反面、感度、階調、高照度露光適性、保存時の感度変動、耐湿潤摩耗性、露光時の温湿度環境に対するタフネス等の点で不十分な写真性能であり、改良が望まれている。金増感に用いる金化合物としてメソイオン配位子を含む金(I)化合物(以下、メソイオン金(I)化合物と記す)が知られており、高感度、硬調な乳剤製造に有用であることが開示されている(例えば特許文献1参照)。しかし、メソイオン金(I)化合物は、品質の一定な乳剤の安定製造には不十分であることが開示されており(例えば特許文献2参照)、乳剤安定性に改善が望まれていた。
【0004】
又、感光材料の保存性能、特に経時でのカブリの上昇に関しては、更なる改良が求められている。特に撮影用の感光材料は、撮影後、直ぐに現像される場合から撮影後数カ月あるいは一年後に現像される場合もあり、このような経時期間中にカブリ性能が変化しないことが望ましい(例えば特許文献3参照)。
【0005】
特定の金増感剤との併用による低カブリ、高感度、潜像安定性に寄与することが開示されているが(例えば特許文献4参照)、乳剤安定性、塗布液停滞安定性との両立に関する記載は一切されていない。
【特許文献1】特開平4−267249号公報
【特許文献2】特開平11−218870号公報
【特許文献3】特開2002−148750号公報
【特許文献4】特開2004−4458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低カブリ、高感度で相反則不軌特性に優れ、潜像安定性、乳剤安定性、塗布液停滞安定性に優れたハロゲン化銀乳剤及び該乳剤を用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
1.
支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、前記ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層に下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を少なくとも1種含有し、かつ前記ハロゲン化銀乳剤層に含有されるハロゲン化銀粒子の少なくとも1種が下記一般式(3)で表される化合物により化学増感されたことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1、R2は置換基を表し、nは1〜4の整数、mは1〜3の整数を表す。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、Au(I)は1価の金を表し、L1はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に結合可能な基を表し、L2はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表す。Mは水素原子又は対カチオンを表し、m11及びn11は各々、0又は1を表す。〕
2.
前記一般式(3)で表される化合物が下記一般式(4)〜(8)の何れかで表される化合物であることを特徴とする前記1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0012】
【化3】

【0013】
〔式中、Au(I)は1価の金を表し、AはO、S又はNR4を表し、QはS、Se又はTeを表し、R1〜R4は各々、水素原子又は置換基を表す。R3はR1又はR2と共に5〜7員の環状構造を形成してもよい。L3はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、n21は0又は1を表す。〕
【0014】
【化4】

【0015】
〔式中、Au(I)は1価の金を表し、QはS、Se又はTeを表し、X1はO、S又はNR5を表す。Yは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、OR6、SR7又はN(R8)R9を表す。R5〜R9は各々、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。L4はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、n31は0又は1を表す。〕
【0016】
【化5】

【0017】
〔式中、Au(I)は1価の金を表し、W1は電子求引性基を表し、QはS、Se又はTeを表し、R10及びR11は各々、水素原子又は置換基を表す。W1とR10、W1とR11、R10とR11は各々、互いに結合して環状構造を形成してもよい。L5はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、n41は0又は1を表す。〕
【0018】
【化6】

【0019】
〔式中、Au(I)は1価の金を表し、QはS、Se又はTeを表し、W2は電子求引性基を表す。R12〜R14は各々、水素原子又は置換基を表す。W2とR12は互いに結合して5〜7員の環状構造を形成してもよい。L6はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、n51は0又は1を表す。ただし、次の(イ)〜(ハ)の少なくとも一つの条件を満たす。
【0020】
(イ)R12及びR14の少なくとも一つがアリール基である
(ロ)W2とR12は互いに結合して5〜7員の環を形成する
(ハ)W2及びR12〜R14のハメットの置換基定数σp値の総和が0.6以上である〕
【0021】
【化7】

【0022】
〔式中、Au(I)は1価の金を表し、QはS、Se又はTeを表し、Mは水素原子又は対カチオンを表し、n61は0又は1を表す。Zは下記式(a)〜(e)で表される置換基を表し、L7はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、m21は0又は1を表す。〕
【0023】
【化8】

【0024】
〔式中、R21、R22及びR23は各々、それぞれ置換もしくは無置換の脂肪族基又は芳香族基を表し、R24は置換基を表し、X2及びX3は各々N又はCReを表すが、X2及びX3のうち少なくとも一方はNである。Reは水素原子又は置換基を表し、Ar1、Ar2及びAr3は各々、それぞれ置換もしくは無置換のアリール基又は不飽和複素環基を表す。Ra及びRcは各々、置換基を表し、Rb及びRdは各々、水素原子又はアシル基を表し、rは0〜3の整数を表し、s及びtは各々0〜4の整数を表す。〕
3.
前記一般式(3)で表される化合物が前記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
4.
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が下記一般式(9)又は(10)で表されることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0025】
【化9】

【0026】
〔式中、Reは電子吸引基を表し、R11、R12は置換基を表し、n′は0〜3の整数を、m′は0〜2の整数を表す。〕
5.
前記ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子が、少なくとも90モル%以上の塩化銀を含有していることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【発明の効果】
【0027】
低カブリ、高感度で相反則不軌特性に優れ、潜像安定性、乳剤安定性、塗布液停滞安定性に優れたハロゲン化銀乳剤及び該乳剤を用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料を得ることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明を詳細に説明する。まず、本発明に用いられる化合物について順次詳述する。
【0029】
一般式(1)、(2)において、R1及びR2は置換基を表し、具体的にはアルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、ヒドロキシエチル、ステアリル、ドデシル、エイコシル、ドコシル、オレイル等)、シクロアルキル基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アリール基(フェニル、p−テトラデカニルオキシフェニル、o−オクタデカニルアミノフェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル等)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、アミド基(アセトアミド、ベンズアミド等)、カルバモイル基(メチルカルバモイル、ブチルカルバモイル、フェニルカルバモイル等)、アルコキシカルボニル基(エトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルボニルオキシ基(メチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、フェニルカルボニルオキシ等)、シアノ基、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素、弗素)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、スルホニル基(メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ドデシルスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド等)、スルファモイル基(メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、アミノ基、アルキルアミノ基(エチルアミノ、ジメチルアミノ、ヒドロキシアミノ等)等を表わす。n、mが2以上の時、複数のR1、R2は異なる基でもよく、互いに結合して縮合環を形成することも出来る。
【0030】
一般式(9)、(10)においてReは電子吸引基を表す。電子吸引基としてはσp値が0以下である基を表し、σpとは電子的パラメータを示し、J.Med.Chem.16,1207(1973)及び同誌20,304(1977)に記載された方法により算出することが出来る。例えばシアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(エトシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル等)、スルホニル基(メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル等)、スルホンアミド基(メタンスルホンアミド、ドデシルスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド等)、スルファモイル基(メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等)、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子(塩素、弗素、臭素、沃素)等が挙げられる。R11、R12は、それぞれ前記一般式(1)、(2)におけるR1、R2と同義である。n、mが2以上の時、複数のR11、R12は異なる基でもよく、互いに結合して縮合環を形成することも出来るのは、一般式(1)、(2)の場合と同様である。
【0031】
本発明の一般式(1)、(2)で表される化合物(以下、本発明のジスルフィド化合物とも称す)は、公知の種々の方法により合成することが出来る。
【0032】
本発明のジスルフィド化合物の添加量は特に制限はないが、感光性ハロゲン化銀乳剤層に添加する場合は、添加層のAg1モルに対し1.0×10-7〜1.0×10-1モルの範囲が好ましく、1.0×10-6〜5.0×10-3モルの範囲が更に好ましい。
【0033】
本発明のジスルフィド化合物は固体又は溶液として添加できる。溶液として添加する場合、水、メタノール、エタノール等の水可溶性溶媒、又はこれらの混合溶媒に溶解して添加しても乳化分散により添加してもよい。水に溶解する場合、pHを高くする又は低くした方が溶解度が上がるものについては、pHを高く又は低くして溶解し、これを添加してもよい。又、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
以下に、本発明のジスルフィド化合物の代表的具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
前記一般式(3)において、Au(I)は1価の金を表し、Mは水素原子又は化合物の電荷を中和する対カチオンを表す。ここで言うカチオンとは、Li,Na,K,Rb,Cs等のアルカリ金属、Mg,Ca,Ba等のアルカリ土類金属等、無機の陽イオンや、置換又は無置換のアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等、有機の陽イオンなどを表す。ただし、Mが無機の陽イオンである場合、MはAg+イオン及びAu+イオンを表すことはない。Mは水素原子もしくはアルカリ金属の陽イオン、アルカリ土類金属の陽イオン、置換又は無置換のアンモニウムイオンが好ましく、水素原子、アルカリ金属の陽イオン、置換又は無置換のアンモニウムイオンがより好ましく、アルカリ金属の陽イオン又は置換もしくは無置換のアンモニウムイオンが更に好ましい。n11は0又は1を表すが、1が好ましい。
【0041】
1はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に結合し得る基を表すが、具体的にはアニオンで結合し得る基であり、置換又は無置換のアミン類(炭素数1〜30の1級、2級のアルキルアミン、炭素数6〜30のアニリン類など)、置換又は無置換のチオール類{アルキルチオール類(炭素数1〜30の、置換もしくは無置換の、直鎖、分岐もしくは環状のもの)、置換もしくは無置換のアリールチオール類(炭素数6〜30の、置換もしくは無置換の、単環もしくは縮環のアリールチオール類であり、フェニルチオール、ナフチルチオール等)}、チオアミド類(チオ尿素、チオウレタン、ジチオカルバミン酸エステル、4−チアゾリン−2−チオン、チアゾリジン−2−チオン、4−オキサゾリン−2−チオン、オキサゾリジン−2−チオン、2−ピラゾリン−5−チオン、4−イミダゾリン−2−チオン、2−チオヒダントイン、ローダニン、イソローダニン、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン、チオバルビツール酸、テトラゾリン−5−チオン、1,2,4−トリアゾリン−3−チオン、1,3,4−チアジアゾリン−2−チオン、1,3,4−オキサジアゾリン−2−チオン、ベンズイミダゾリン−2−チオン、ベンズオキサゾリン−2−チオン及びベンゾチアゾリン−2−チオン等)、置換又は無置換のアルコール類(炭素数1〜30の、置換もしくは無置換の、直鎖、分岐もしくは環状のものであり、メトキシ、シクロヘキシルオキシ等)、アリールアルコール類(炭素数6〜30の、置換もしくは無置換の、単環もしくは縮環のアリールオキシ基であり、フェノキシ、ナフチルオキシ等)、ホスフィン類(アルキルホスフィン類、アリールホスフィン類、複素環ホスフィン類等)、セレノール類(アルキルセレノール類、アリールセレノール類、複素環セレノール類等)、セレノアミド類(具体的にはチオアミド化合物のS原子をSe原子に置き換えた化合物)、テルロール類(具体的には置換又は無置換のアルキルテルロール類、アリールテルロール類、複素環テルロール類)、テルロアミド類(具体的にはチオアミド化合物のS原子をTe原子に置き換えた化合物)等から水素原子を除いた基を表す。
【0042】
2はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、具体的には置換又は無置換のアミン類(炭素数1〜30の、1級、2級もしくは3級のアルキルアミン、又は炭素数6〜30のアニリン類等)、置換もしくは無置換の5又は6員の含窒素複素環類(ベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、チアゾール、チアゾリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサゾリン、オキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアジン、ピロール、ピロリジン、イミダゾリジン、モルホリン等が挙げられ、更に好ましくはベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、インダゾールである。
【0043】
この含窒素複素環は複素環内の窒素原子を介して金に配位してもよいし、置換基を有する場合、この置換基を介して金に配位してもよい)、置換又は無置換のチオール類(アルキルチオール類(炭素数1〜30の、置換もしくは無置換の、直鎖、分岐もしくは環状のもの)、置換もしくは無置換のアリールチオール類(炭素数6〜30の、置換もしくは無置換の、単環もしくは縮環のアリール基であり、フェニル基、ナフチル基である)、複素環チオール類(窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも一つを含む5〜7員環の、置換もしくは無置換の、飽和もしくは不飽和の複素環で、これらは単環でもよいし、更に他のアリール環又は複素環と共に縮合環を形成してもよい。例えばピロリル、ピロリジニル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニルトリアジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラニル、クロメニル、チエニル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、モルホリノ、モルホリニル等の各基)、チオエーテル類(ジアルキルチオエーテル類(アルキル基としては炭素数1〜30の、置換もしくは無置換の、直鎖、分岐もしくは環状のもの)、ジアリールチオエーテル類(アリール基としては炭素数6〜30の、置換もしくは無置換の、単環もしくは縮環であり、フェニル基、ナフチル基など)、ジ複素環チオエーテル類(複素環基としては飽和でも不飽和でもよく、単環であっても、更に他のアリール環又は複素環と共に縮合環を形成してもよい。ピロリル、ピロリジニル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、イミダゾリル、ピラゾリルピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリル、イソキノリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラニル、クロメニル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾオキサゾリルベンゾチアゾリル、モルホリノ、モルホリニル等)、アルキル−アリールチオエーテル類、アルキル−複素環チオエーテル類、アリール−複素環チオエーテル類など)、ジスルフィド類(具体的には置換又は無置換のジアルキルジスルフィド類、ジアリールジスルフィド類、ジ複素環ジスルフィド類、アルキル−アリールジスルフィド類、アルキル−複素環ジスルフィド類、アリール−複素環ジスルフィド類など。本発明における好ましいジスルフィドは、対称又は非対称のジアルキルジスルフィド類、ジアリールジスルフィド類又はアルキル−アリールジスルフィド類である)、チオアミド類(チオ尿素、チオウレタン、ジチオカルバミン酸エステル、4−チアゾリン−2−チオン、チアゾリジン−2−チオン、4−オキサゾリン−2−チオン、オキサゾリジン−2−チオン、2−ピラゾリン−5−チオン、4−イミダゾリン−2−チオン、2−チオヒダントイン、ローダニン、イソローダニン、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン、チオバルビツール酸、テトラゾリン−5−チオン、1,2,4−トリアゾリン−3−チオン、1,3,4−チアジアゾリン−2−チオン、1,3,4−オキサジアゾリン−2−チオン、ベンズイミダゾリン−2−チオン、ベンズオキサゾリン−2−チオン及びベンゾチアゾリン−2−チオン等)、ホスフィン類(アルキルホスフィン類、アリールホスフィン類、複素環ホスフィン類等)、セレノール類(アルキルセレノール類、アリールセレノール類、複素環セレノール類等)、セレノエーテル類(アルキルセレノエーテル類、ジアリールセレノエーテル類、ジ複素環セレノエーテル類、アルキル−アリールセレノエーテル類、アルキル−複素環セレノエーテル類、アリール−複素環セレノエーテル類など)、ジセレニド類(具体的には置換又は無置換のジアルキルジセレニド類、ジアリールジセレニド類、ジ複素環ジセレニド類、アルキル−アリールジセレニド類、アルキル−複素環ジセレニド類、アリール−複素環ジセレニド類など)、セレノアミド類(具体的にはチオアミド化合物のS原子をSe原子に置き換えた化合物)、テルロール類(具体的には置換又は無置換のアルキルテルロール類、アリールテルロール類、複素環テルロール類)、テルロエーテル類(具体的にはジアルキルテルロエーテル類、ジアリールテルロエーテル類、ジ複素環テルロエーテル類、アルキル−アリールテルロエーテル類、アルキル−複素環テルロエーテル類、アリール−複素環テルロエーテル類など)、ジテルリド類(具体的にはジアルキルジテルリド類、ジアリールジテルリド類、ジ複素環ジテルリド類、アルキル−アリールジテルリド類、アルキル−複素環ジテルリド類、アリール−複素環ジテルリド類など)、テルロアミド類(具体的にはチオアミド化合物のS原子をTe原子に置き換えた化合物)等を表す。n11は0又は1を表す。
【0044】
一般式(4)におけるR1〜R3で表される置換基とは、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基(その塩を含む)、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。
【0045】
更に詳しくは、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素)、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルキル基)を表す。アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−ドデシルシクロヘキシル等)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を1個取り去った1価の基。ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル等)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基もこのような概念のアルキル基を表す)、アルケニル基(直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルケニル基)を表す。アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル等)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基。2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル等)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を1個持つビシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基。ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル等)、複素環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族の複素環基。2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル等)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、t−ブトキシ、オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ等)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20のシリルオキシ基、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ等)、複素環オキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換の複素環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ等)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ等)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−オクチルカルバモイルオキシ等)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えばフェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ等)、アミノ基(好ましくはアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ等)、アシルアミノ基(好ましくはホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ等)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ等)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、例えばスルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−オクチルアミノスルホニルアミノ等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ等)、メルカプト基(及びその塩を含む。ここで塩とは、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属塩、MgやCa等のアルカリ土類金属塩、金塩などを含む)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基、メチルチオ、エチルチオ、ヘキサデシルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ等)、複素環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換の複素環チオ基、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N′−フェニルカルバモイル)スルファモイル等)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル等)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル等)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル、例えばカルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル等)、アリール及び複素環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換の複素環アゾ基、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ等)、イミド基(N−スクシンイミド、N−フタルイミド等)、ホスフィノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ等)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル等)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ等)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ等)、シリル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル等)を表す。上記の官能基中で水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されてよい。
【0046】
1〜R3は置換基を有してもよく、その例としては上述の置換基と同じものが挙げられる。R1〜R3が有してもよい置換基の内、好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基であり、更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、カルバモイル基である。
【0047】
1、R2は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、メルカプト基(及びその塩)、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基であり、最も好ましくは水素原子又はアルキル基である。R3は、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基であり、最も好ましくはアルキル基又はアリール基である。
【0048】
3はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表すが、前記一般式(3)のL2と同義である。n21は0又は1である。
【0049】
A=NR4の時、R4は好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基である。又、R3はR1又はR2と共に5〜7員の環状構造を形成してもよく、この時形成される環状構造は、非芳香族の含O、含S又は含Nの複素環となる。この環状構造は、芳香族もしくは非芳香族の炭素環、又は芳香族もしくは非芳香族の複素環と縮合環構造を形成してもよい。本発明においては、R3がR1又はR2と共に5〜7員の環状構造を形成するのが好ましい。
【0050】
一般式(5)において、X1はO、S又はNR5を表し、Yは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、OR6、SR7又はN(R8)R9を表す。R5〜R9は各々、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。L4はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表すが、前記一般式(3)におけるL2と同義である。n31は0又は1である。
【0051】
1は好ましくはO又はNR5であり、更に好ましくはOである。
【0052】
Yで表されるアルキル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30)は、置換もしくは無置換の、直鎖、分岐もしくは環状のものであり、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。Yで表されるアリール基は、炭素数6〜30の、置換もしくは無置換の、単環もしくは縮環のアリール基であり、例えばフェニル、ナフチルである。特に好ましくは置換又は無置換のフェニルである。Yで表される複素環基は、N、O、Sのうち少なくとも一つを含む5〜7員環の、置換もしくは無置換の、飽和もしくは不飽和の複素環である。これらは単環でもよいし、更に他のアリール環又は複素環と共に縮合環を形成してもよい。複素環基として好ましくは5〜6員のものであり、例えばピロリル、ピロリジニル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリル、イソキノリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラニル、クロメニル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、モルホリノ、モルホリニル等の各基が挙げられる。Yは置換されてもよく、代表的な置換基としてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及び複素環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が挙げられる。更に詳しくは、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素)、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルキル基)を表す。アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、t−ブチル、オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−ドデシルシクロヘキシル等)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を1個取り去った1価の基、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル等)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)も、このような概念のアルキル基を表す。)、アルキニル基(直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルケニル基)を表す。アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル等)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基。2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル等)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を1個持つビシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基。ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル等)、複素環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基、更に好ましくは、炭素数3〜30の5又は6員の芳香族の複素環基。2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル等)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、t−ブトキシ、オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ等)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20のシリルオキシ基、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ等)、複素環オキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換の複素環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ等)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ等)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−オクチルカルバモイルオキシ等)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシ等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ等)、アミノ基(好ましくはアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ等)、アシルアミノ基(好ましくはホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ等)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ等)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−オクチルアミノスルホニルアミノ等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基、メチルチオ、エチルチオ、ヘキサデシルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ等)、複素環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換の複素環チオ基、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N−フェニルカルバモイル)スルファモイル等)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル等)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル等)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−オクチルオキシフェニルカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル等)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル等)、アリール及び複素環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換の複素環アゾ基、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくはN−スクシンイミド、N−フタルイミド等)、ホスフィノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ等)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル等)、ホスフィニル
オキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ等)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ等)、シリル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル等)を表す。
【0053】
上記の官能基の中で水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されてもよい。Yは好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、OR6,SR7又はN(R8)R9であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基又はN(R8)R9であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基又は複素環基である。R5〜R9は各々、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。R5〜R9で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、炭素数1〜30の、置換もしくは無置換の、直鎖、分岐もしくは環状のものであり、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0054】
5〜R9で表されるアリール基は炭素数6〜30の、置換もしくは無置換の、単環もしくは縮環のアリール基であり、例えばフェニル、ナフチルである。特に好ましくは置換又は無置換のフェニル基である。
【0055】
5〜R9で表される複素環基はN、O、Sのうち少なくとも一つを含む5〜7員環の、置換もしくは無置換の、飽和もしくは不飽和の複素環である。これらは単環でもよいし、更に他のアリール環又は複素環と共に縮合環を形成してもよい。複素環基として好ましくは5〜6員のものであり、例えばピロリル、ピロリジニル、ピリジル、ピペリジル、ピペラジニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、キノリル、イソキノリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラニル、クロメニル基、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、モルホリノ、モルホリニル等の各基が挙げられる。R5〜R9は置換されてもよく、その置換基の例としては上述のYが有してもよい置換基と同じものが挙げられる。R5〜R9が有していてもよい置換基のうち、好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基などであり、更に好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、カルバモイル基などが挙げられる。R5〜R9は好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基であり、更に好ましくはアルキル基又はアリール基である。L4はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表すが、一般式(3)におけるL2と同義である。n31は0又は1である。
【0056】
一般式(6)において、W1は電子求引性基を表す。ここで言う電子求引性基とはハメットの置換基定数σp値が正の値である置換基であり、好ましくはσp値が0.2〜1.0の置換基である。σp値が0.2以上の電子求引性基の具体例としては、アシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、ホスホリル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、カルボキシル基(又はその塩)、それぞれ少なくとも2個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基及びアルキルチオ基、アシルアミノ基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、複素環基、ハロゲン原子、アゾ基、セレノシアネート基などが挙げられる。W1として好ましくはアシル基、ホルミル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアルキルホスフィニル基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、チオカルボニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、ホスホリル基、カルボキシル基(又はその塩)、少なくとも2個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、複素環基、ハロゲン原子であり、より好ましくはアシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、カルボキシ基、少なくとも2個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、σp値が0.2以上の他の電子求引性基で置換されたアリール基、複素環基である。
【0057】
10及びR11は各々、水素原子又は置換基を表すが、R10及びR11が表す置換基の例としては、前記一般式(5)のYが有していてもよい置換基として挙げたものと同様の基が挙げられる。R10として好ましくは水素原子又は上述のW1で表される電子求引性基と同義の基であり、更に好ましくは電子求引性基である。R11として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アミノ基、アシルアミノ基が挙げられる。
【0058】
1とR10とが異なり化合物の立体構造に幾何異性体(シス体、トランス体)が存在する場合、本発明においては、これら異性体を区別することはない。W1とR10、W1とR11、あるいはR10とR11が互いに結合して環状構造を形成する場合も好ましい。この場合に形成される環状構造は、非芳香族の炭素環又は非芳香族の複素環であり、好ましくは5〜7員環である。環構造を形成するW1としてはアシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基などが好ましく、R11としてはアシル基、カルバモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、イミノ基、N原子で置換したイミノ基、アシルアミノ基、カルボニルチオ基などが好ましい。
【0059】
5は一般式(3)におけるL2と同義であり、n41は0又は1を表す。
【0060】
一般式(7)において、W2は電子求引性基を表す。この電子求引性基については前述のW1と同義であるが、W2として好ましくはアシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、チオシアネート基、チオカルボニル基、カルボキシル基(又はその塩)、少なくとも2個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアシル基、ホルミル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、少なくとも2個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0061】
12〜R14は各々、水素原子又は置換基を表す。R12、R13が置換基を表す場合、その例としては前記一般式(5)のYが有していてもよい置換基として挙げたものと同じものが挙げられる。本発明においてR12、R13として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基であり、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、更に好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基である。
【0062】
14が置換基を表す場合、その例としては前述のYが有していてもよい置換基として挙げたものと同じものが挙げられる。R14として好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0063】
2とR12は互いに結合して5〜7員の環状構造を形成するものが好ましい。この場合、形成される環状構造は非芳香族の炭素環もしくは非芳香族の複素環であり、好ましくは5員又は6員環であり、より好ましくは6員環である。環構造を形成するW2としてはアシル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基が好ましく、R12としてはアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基が好ましい。W2とR12が互いに結合して5〜7員の環状構造を形成しない場合は、R13又はR14のうち少なくとも一方がアリール基であるものが好ましい。R13又はR14のうち少なくとも一方がアリール基である場合、好ましいアリール基としては炭素数6〜30の、置換もしくは無置換の、単環もしくは縮環のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0064】
13とR14何れもアリール基ではなく、又、W2とR12が互いに結合して環状構造を形成しない場合は、W2及びR12〜R14のハメットの置換基定数σp値の総和が0.6以上であるものが好ましい。この時、場合によってはR12〜R14も前述の電子求引性基から選ばれる。これらの組合せとしては、例えばW2がシアノ基でR12〜R14が水素原子、W2がアルキルスルホニル基でR12〜R14が水素原子、W2がアリールスルホニル基でR12〜R14が水素原子、W2とR12がアルコキシカルボニル基で、R13とR14が水素原子、W2がアルコキシカルボニル基でR12がアシル基でR13とR14が水素原子、W2がアシル基でR12がアルコキシカルボニル基でR13とR14が水素原子などが挙げられる。好ましい組合せの一つは、W2が電子求引性基であり、W2とR12とが互いに結合して非芳香族の5〜7員の環状構造を形成し、この時、R12がアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、R13は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、R14は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。更に好ましくは、W1とR12が互いに結合して非芳香族の5〜6員の環状構造を形成し、R12がアルキル基、アリール基であり、R13が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基アリール基、シアノ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基であり、R14が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アシルオキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基であり、最も好ましくはW2とR12とが互いに結合して非芳香族の6員の環状構造を形成し、R12がアルキル基、アリール基であり、R13は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基などであり、R14は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アシルオキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基であり、nが0を表すものである。
【0065】
2とR12が互いに結合して非芳香族の5〜7員の環状構造を形成しない場合、好ましくはW2が電子求引性基であり、R13又はR14のうち少なくとも一方がアリール基であり、R12、R13が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、R14が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、カルボキシ基、アシルオキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。更に好ましくはW2が電子求引性基であり、R13又はR14のうち少なくとも一方がアリール基であり、R12、R13が水素原子、アルキル基、アリール基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基などであり、R14が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基であり、最も好ましくはW2が電子求引性基であり、R13又はR14のうち少なくとも一方がアリール基であり、R12、R13が水素原子、アルキル基、アリール基であり、R14が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基である。W2とR12が互いに結合して5〜7員の環状構造を形成せず、又、R13とR14何れもアリール基ではない場合、好ましい化合物はW2及びR12〜R14のハメットの置換基定数σp値の総和が0.6以上であり、R12、R13が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であり、R14が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。更に好ましくは、W2及びR12〜R14のハメットの置換基定数σp値の総和が0.6以上であり、R12、R13が水素原子、アルキル基、アリール基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基などであり、R14が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基である。最も好ましくは、W2及びR12〜R14のハメットの置換基定数σp値の総和が0.6以上であり、R12、R13が水素原子、アルキル基、アリール基であり、R14が水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アシルオキシ基、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基などである。W2とR12が互いに結合して5〜7員の環状構造を形成する場合、あるいはW2とR12が互いに結合して5〜7員の環状構造を形成せず、R13又はR14のうち少なくとも一方がアリール基である場合がより好ましく、W2とR12が互いに結合して5〜7員の環状構造を形成する場合が最も好ましい。
【0066】
6は一般式(3)におけるL2と同義であり、n51は0又は1を表す。
【0067】
一般式(8)において、Zは下記式(a)〜(e)で表される置換基を表し、QはS、Se又はTeを表し、L7は前記一般式(2)のL2と同義であり、m21は0又は1を表し、Mは水素原子又は対カチオンを表し、n61は0又は1を表す。
【0068】
式(a)〜(e)において、R21、R22及びR23は各々、置換又は無置換の脂肪族基(メチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル等)、芳香族基(フェニル、ナフチル等)を表し、それらは更に置換されてもよい。
【0069】
2及びX3は各々、N又はCReを表し、X2、X3のうち少なくとも一方はNである。Reは水素原子又は置換基を表し、置換基としては例えばハロゲン原子(弗素、塩素等)、アルキル基(メチル、エチル、ブチル、ペンチル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル等)、アリール基(フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ、ナフトキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(メチルアミノ、ジエチルアミノ、メトキシエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、複素環基(ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)が挙げられる。R24は置換基を表し、rは0〜3の整数を表す。
【0070】
Ar1、Ar2及びAr3は各々、置換又は無置換のアリール基(フェニル、ナフチル等)、不飽和複素環基(ピリジル、ピラジニル、イミダゾリル、チエニル等)を表し、置換基としてはReでの置換基と同義である。
【0071】
Ra、Rcは置換基を表し、例えばハロゲン原子(弗素、塩素等)、アルキル基(メチル、エチル、ブチル、ペンチル、2−メトキシエチル、トリフルオロメチル、2−エチルヘキシル等)、アリール基(フェニル、p−トリル、ナフチル等)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ、ナフトキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、i−プロポキシカルボニル等)、アシルオキシ基(アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ、p−トリルチオ等)、アミノ基(メチルアミノ、ジエチルアミノ、メトキシエチルアミノ等)、シアノ基、ニトロ基、複素環基(ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)が挙げられる。Rb、Rdは水素原子又はアシル基を表し、アシル基としてはアセチル、プロピオニル、ベンゾイル等が挙げられる。s及びtは0〜4の整数を表す。
【0072】
本発明の一般式(3)で表される化合物は、公知の種々の方法により合成することが出来る。該化合物の添加量は場合に応じて広範囲に変わり得るが、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-7〜5×10-3モル、好ましくは5×10-7〜5×10-4モルである。
【0073】
一般式(3)で表される化合物は、水、あるいはアルコール類(メタノール、エタノール等)、ケトン類(アセトン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド等)、グリコール類(メチルプロピレングリコール等)、及びエステル類(酢酸エチル等)などを溶媒とした溶液で添加してもよい。添加は、乳剤製造時のどの段階でも可能であるが、ハロゲン化銀粒子形成後から化学増感工程終了までの間に添加することが好ましい。
【0074】
一般式(3)〜(8)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化15】

【0076】
【化16】

【0077】
【化17】

【0078】
【化18】

【0079】
【化19】

【0080】
【化20】

【0081】
【化21】

【0082】
【化22】

【0083】
【化23】

【0084】
【化24】

【0085】
【化25】

【0086】
【化26】

【0087】
【化27】

【0088】
【化28】

【0089】
【化29】

【0090】
【化30】

【0091】
ハロゲン化銀乳剤層に含有されるハロゲン化銀粒子としては、塩化銀、臭化銀、沃化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀等、当分野で用いられる何れのハロゲン化銀粒子であってもよく、特に制限はないが好ましくは塩化銀含有率90モル%以上である。
【0092】
ハロゲン化銀粒子の組成は、粒子内部から外部に至るまで均一なものであってもよいし、粒子内部と外部の組成が異なってもよい。又、粒子内部と外部の組成が異なる場合、連続的に組成が変化してもよいし、不連続であってもよい。
【0093】
ハロゲン化銀粒子の粒子径は特に制限はないが、迅速処理性及び感度等、他の写真性能等を考慮すると、好ましくは0.2〜1.6μm、更に好ましくは0.25〜1.2μmの範囲である。尚、上記粒子径は、当該技術分野において一般に用いられる各種の方法によって測定することができる。代表的な方法としては、ラプランドの「粒子径分析法」(A.S.T.M.シンポジウム・オン・ライト・マイクロスコピー,1955年,94〜122頁)又は「写真プロセスの理論」(ミース及びジェームズ共著,第3版,マクミラン社発行(1966年)の第2章)に記載されている。
【0094】
この粒子径は、粒子の投影面積か直径近似値を使ってこれを測定することができる。粒子が実質的に均一形状である場合は、粒径分布は直径か投影面積として正確に表すことができる。
【0095】
ハロゲン化銀粒子の粒子径の分布は、多分散であってもよいし、単分散であってもよい。好ましくはハロゲン化銀粒子の粒径分布において、その変動係数が0.22以下、更に好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子である。尚、変動係数は以下のように計算される。
【0096】
変動係数=粒径分布の標準偏差/平均粒径
ハロゲン化銀粒子は酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものでもよい。該粒子は一時に成長させてもよいし、種粒子を造った後、成長させてもよい。種粒子を造る方法と成長させる方法は同じであっても、異なってもよい。
【0097】
又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法それらの組合せなど何れでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に同時混合法の一形式として、特開昭54−48521号等に記載されるpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0098】
更に必要であればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。又、メルカプト基含有化合物、含窒素複素環化合物又は増感色素のような化合物を、ハロゲン化銀粒子の形成時、又は粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0099】
ハロゲン化銀粒子の形状は任意のものを用いることができる。好ましい一つの例は、{100}面を結晶表面として有する立方体である。又、8面体、14面体、12面体等の形状を有する粒子を用いることもできる。更に、双晶面を有する粒子を用いてもよい。
【0100】
ハロゲン化銀粒子は、単一の形状からなる粒子を用いてもよいし、種々の形状の粒子が混合されたものでもよい。
【0101】
ハロゲン化銀乳剤を得るには、重金属イオンを含有させるのが有利である。このような目的に用いることのできる重金属イオンとしては、例えば鉄、イリジウム、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト等の第8〜10族金属や、カドミウム、亜鉛、水銀などの第12族遷移金属や、鉛、レニウム、モリブデン、タングステン、ガリウム、クロムの各イオンを挙げることができる。中でも、鉄、イリジウム、白金、ルテニウム、ガリウム、オスミウムの金属イオンが好ましい。
【0102】
これらの金属イオンは、塩や錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することができる。重金属イオンが錯体を形成する場合には、その配位子又はイオンとしてはシアン化物イオン、チオシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、シアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、硝酸イオン、カルボニル、アンモニア等を挙げることができる。中でも、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、イソチオシアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等が好ましい。
【0103】
ハロゲン化銀乳剤に重金属イオンを含有させるためには、該重金属化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の場所で添加すればよい。前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、重金属化合物をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部に亘って連続的に添加することができる。
【0104】
重金属イオンをハロゲン化銀乳剤中に添加する時の量は、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが好ましく、特に1×10-8〜5×10-5モルが好ましい。
【0105】
ハロゲン化銀粒子は、適当な還元雰囲気に置くことにより、粒子内部及び/又は粒子表面に還元増感核を付与できる。
【0106】
ハロゲン化銀粒子を含有する乳剤は、ハロゲン化銀粒子の成長の終了後に不要な可溶性塩類を除去してもよいし、含有させたままでもよい。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディスクロージャー(RD)17643号記載の方法に基づいて行うことができる。
【0107】
本発明に用いるハロゲン化銀粒子は、好ましくは潜像が主として表面に形成される粒子であるが、潜像が粒子内部に形成される粒子でもよい。
【0108】
本発明においては、カルコゲン増感剤を併せて用いることができる。カルコゲン増感剤とは硫黄増感剤、セレン増感剤、テルル増感剤の総称であるが、硫黄増感剤、セレン増感剤が好ましい。硫黄増感剤としては、例えばチオ硫酸塩、アリルチオカルバジド、チオ尿素、アリルイソチオシアナート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニン等が挙げられる。その他、米国特許1,574,944号、同2,410,689号、同2,278,947号、同2,728,668号、同3,501,313号、同3,656,955号、西独出願公開(OLS)1,422,869号、特開昭56−24937号、同55−45016号等に記載されている硫黄増感剤も用いることができる。硫黄増感剤の添加量はpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件によって相当の範囲に亘って変化するが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-1モル程度が好ましい。
【0109】
本発明に用いられる乳剤は、還元性物質を用いる還元増感法、貴金属化合物を用いる貴金属増感法などを併せて用いることができる。
【0110】
本発明に用いられる乳剤は分光増感されることが好ましい。分光増感は、各層の乳剤に対して所望の光波長域に分光感度を付与する目的で行われる。本発明の感光材料において、青、緑、赤領域の分光増感に用いられる分光増感色素としては例えば、F.M.Harmer著 Heterocyclic compounds−Cyanine dyes andrelated compounds (John Wiley&Sons[New York,London]社刊1964年)に記載されるものを挙げることができる。増感色素はハロゲン化銀粒子の形成過程、あるいは化学増感過程において添加してもよく、塗布時に添加してもよい。特に増感色素をハロゲン化銀乳剤粒子形成中に添加する方法としては、米国特許4,225,666号、同4,828,972号、特開昭61−103149号を参考にすることができる。又、増感色素をハロゲン化銀乳剤の脱塩工程において添加する方法としては、欧州特許291,339−A号、特開昭64−52137号を参考にすることができる。又、増感色素を化学増感工程において添加する方法は、特開昭59−48756号を参考にすることができる。
【0111】
増感色素による分光増感感度を高める方法として、2種以上の増感色素を組み合わせて使用する方法が知られている。2種以上の増感色素を組み合わせて使用すると、分光感度はそれぞれの増感色素を単独で使用した時の中間の効果になるか、又は低下することが多いが、ある特別な組合せを用いると、それぞれの増感色素を単独で使用した時より著しく分光感度が上昇することがある。通常、この現象を増感色素の強色増感作用と呼んでいる。
【0112】
強色増感作用についてはT.H.James編「The Theory of the Photographic Process」第四版,Macmillan,New York,1977の第10章(W.West,P.B.Gilman共著)に纏められている。このような組合せを用いた時、分光増感波長はそれぞれの増感色素を単独で使用した時、得られる分光増感波長の中間、又は単なる結合になることもあるが、単独使用での分光増感特性からは予測できないような波長への分光増感の移行がもたらされることもある。このように増感色素を組み合わせて使用することにより、それぞれの増感色素を単独で用いた時より更に高い分光感度を得て、かつ写真感光材料の使用目的にあうような増感波長域を持つ増感色素の組合せを見い出すことは、ハロゲン化銀写真乳剤の分光増感技術において大きな課題となっている。強色増感を得るために用いられる増感色素の組合せは、それらの色素の間に互いに著しく選択性が要求され、一見僅かの化学構造上の差と思われることが強色増感作用に著しく影響する。即ち、強色増感作用をもたらす増感色素の組合せは、ただ単に化学構造式の上からだけでは予測し難い。
【0113】
強色増感剤としては、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質を使用することもできる。例えば含窒素異節環基で置換されたアミノスチリル化合物(米国特許2,933,390号、同3,635,721号に記載のもの)、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮合物(米国特許3,743,510号に記載のもの)、カドミウム塩、アザインデン化合物などを含んでもよい。米国特許3,615,613号、同3,615,641号、同3,617,295号、同3,635,721号に記載の組合せは特に有用である。
【0114】
感光材料には、親水性コロイド層にフィルター染料として、あるいはイラジエーション防止、その他種々の目的で水溶性染料を含有してもよい。
【0115】
感光材料には、他に各種の写真用添加剤を含有せしめることができる。例えばカブリ防止剤、現像促進剤、現像遅延剤、漂白促進剤、安定剤、紫外線吸収剤、色汚染防止剤、蛍光増白剤、色画像褪色防止剤、帯電防止剤、硬膜剤、界面活性剤、可塑剤、湿潤剤等を用いることができる(これらに関してはRD17643号を参照できる)。更に、競合カプラー及び現像主薬の酸化体とのカップリングによって現像促進剤、漂白促進剤、現像剤、ハロゲン化銀溶剤、調色剤、硬膜剤、カブリ剤、カブリ防止剤、化学増感剤、分光増感剤及び減感剤の様な写真的に有用なフラグメントを放出する化合物を用いることができる。
【0116】
感光材料の支持体は、例えばバライタ紙、ポリエチレン被覆紙、ポリプロピレン合成紙、ガラス板、セルロースアセテート、セルロースナイトレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム等があり、透明支持体の場合は反射層を併用してもよい。これらの支持体は感光材料の使用目的に応じて適宜選択される。
【0117】
乳剤層及びその他の構成層の塗設には、ディッピング塗布、エアードクター塗布、カーテン塗布、ホッパー塗布等種々の塗布方法を用いることができる。又、米国特許2,781,791号、同2,941,898号に記載の方法による2層以上の同時塗布法を用いることもできる。
【0118】
本発明においては、各乳剤層の塗設位置を任意に定めることができるが、支持体側から順次、青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、赤感性ハロゲン化銀乳剤層の配列とすることが好ましい。
【0119】
感光材料は、目的に応じて適当な厚さの中間層を設けることは任意であり、更にフィルター層、カール防止層、保護層、アンチハレーション層等、種々の層を構成層として適宜組み合わせて用いることができる。
【0120】
これらの構成層には結合剤として親水性コロイドを用いることができ、ゼラチンが好ましく用いられる。又、その層中には前記乳剤層中の説明で挙げた種々の写真用添加剤を含有せしめることができる。
【0121】
本発明において用いられるイエローカプラーとしては、例えば米国特許2,778,658号、同2,875,057号、同2,908,573号、同3,227,155号、同3,227,550号、同3,253,924号、同3,265,506号、同3,277,155号、同3,341,331号、同3,369,895号、同3,384,657号、同3,408,194号、同3,415,652号等に記載のものが知られている。マゼンタカプラーとしては、例えば米国特許3,725,067号、同3,758,309号、同3,810,761号、特開昭59−125732号、同61−282845号、同61−292639号、同61−279855号、特開昭63−24256号等に記載のものが知られている。シアンカプラーとしては、例えば米国特許2,367,351号、同2,423,730号、同2,474,293号、同2,772,161号、同2,772,162号、同2,895,826号、同2,920,961号、同3,002,836号、同3,446,622号、同3,476,563号、同3,552,962号、同3,758,308号、同3,779,763号、同3,839,044号、同3,880,661号、同3,998,642号、同4,333,999号、同4,990,436号、同4,960,685号及び同5,476,757号;仏国特許1,478,188号及び同1,479,043号;及び英国特許2,070,000号、米国特許5686235号、欧州特許491197A1号、同488248号、同545300号、同628867A1号、同484909号、米国特許5,164,289号、特開平6−347960号、特開平9−189988号、同10−198012号に記載のものが知られている。
【0122】
色素形成カプラー、色素画像安定化剤等の疎水性化合物は、通常、沸点約150℃以上の高沸点有機溶媒又は水不溶性高分子化合物と混合後、80℃以上に加熱して溶解するか、又は必要に応じて低沸点有機溶媒(酢酸エチル等)及び/又は水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて撹拌器、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波装置等の分散手段を用いて乳化分散した後、目的とする親水性コロイド層中に添加すればよい。低沸点有機溶媒を用いる場合は、乳化分散後、又は分散と同時に低沸点有機溶媒を除去する工程を入れることが好ましい。用いられる高沸点有機溶媒としては、フタル酸エステル、燐酸エステル、脂肪族エステル等のエステル類、高級飽和又は不飽和アルコール類、アルキルフェノール類、有機酸アミド類、ケトン類、炭化水素化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、例えば特開平1−196048号4〜7頁に記載の例示化合物A−1〜A−120、8〜9頁に記載の例示化合物II−1〜II−29、14〜15頁に記載の例示化合物H−1〜H−22、特開平1−209446号3〜7頁に記載の例示化合物S−1〜S−69、特開昭63−253943号10〜12頁に記載の例示化合物I−1〜I−95、米国特許5,429,913号2頁右に記載の例示化合物(a−I)〜(a−IX)、欧州特許550,359A1号22頁に記載の例示化合物5−1〜5−15等を挙げることができる。
【0123】
本発明の感光材料の処理方法については特に制限はなく、通常知られているあらゆる処理方法が適用できる。その代表的なものとしては、発色現像後、漂白定着処理を行い、必要なら更に水洗及び/又は安定処理を行う方法、発色現像後、漂白と定着を分離して行い、必要に応じ更に水洗及び/又は安定処理を行う方法、何れの方法を用いて処理してもよいが、本発明のカラー感光材料は、発色現像、漂白定着、水洗(又は安定化)の工程で迅速に処理されるのに適している。
【0124】
本発明のカラー感光材料は、カラーネガフィルム、カラーポジフィルム、カラー反転フィルム、カラー反転印画紙、カラー印画紙等に用いられるが、中でもカラー印画紙として用いるのが好ましい。カラー印画紙は、イエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層ずつ有してなることが好ましく、一般には、これらのハロゲン化銀乳剤層は支持体から近い順にイエロー発色性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色性ハロゲン化銀乳剤層である。
【実施例】
【0125】
下記に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表し、「部」は「質量部」を表す。
【0126】
実施例1
《カラー写真感光材料の作製》
〔試料101の作製〕
坪量180g/m2の紙パルプの両面に高密度ポリエチレンをラミネートし、紙支持体を作製した。ただし、各乳剤層を塗布する側には、表面処理を施したアナターゼ型酸化チタンの分散物(含有量は15%)を含有する溶融ポリエチレンをラミネートし、反射支持体Aを作製した。この反射支持体Aをコロナ放電処理した後、ゼラチン下塗層を設け、更に以下に示す構成の各構成層を塗設し、カラー写真感光材料試料101を作製した。
【0127】
(ハロゲン化銀乳剤の調製)
〈青感性ハロゲン化銀乳剤の調製〉
平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1を、常法に従い調製した。次に、平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤であるEMP−1Bを、常法に従い調製した。
【0128】
上記EMP−1に対し、下記化合物を用い、感度−カブリの関係が最適になる様に化学増感を行った。又、EMP−1Bに対しても同様に、感度−カブリの関係が最適になる様に化学増感した後、増感されたEMP−1とEMP−1Bを銀量で1:1の比率で混合し、青感性ハロゲン化銀乳剤(Em−B)を調製した。
【0129】
チオ硫酸ナトリウム 17×10-4モル/モルAgX
塩化金酸 17×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10-4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10-4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10-4モル/モルAgX
〈緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製〉
平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−2を、常法に従い調製した。次に、平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−2Bを、常法に従い調製した。
【0130】
上記EMP−2に対し、下記化合物を用い、感度−カブリの関係が最適になる様に化学増感を行った。又、EMP−2Bに対しても同様に、感度−カブリの関係が最適になる様に化学増感した後、増感されたEMP−2とEMP−2Bを銀量で1:1の比率で混合し、緑感性ハロゲン化銀乳剤(Em−G)を調製した。
【0131】
チオ硫酸ナトリウム 17×10-4モル/モルAgX
塩化金酸 17×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10-4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 4×10-4モル/モルAgX
〈赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製〉
平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−3を、常法に従い調製した。又、平均粒径0.38μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤であるEMP−3Bを、常法に従い調製した。
【0132】
上記EMP−3に対し、下記化合物を用い、感度−カブリの関係が最適になる様に化学増感を行った。又、EMP−3Bに対しても同様に、感度−カブリの関係が最適になる様に化学増感した後、増感されたEMP−3とEMP−3Bを銀量で1:1の比率で混合し、赤感性ハロゲン化銀乳剤(Em−R)を調製した。
【0133】
チオ硫酸ナトリウム 35×10-4モル/モルAgX
塩化金酸 35×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10-4モル/モルAgX
上記各ハロゲン化銀乳剤の調製に使用した各化合物の詳細は以下の通りである。
【0134】
STAB−1:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−3:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
又、赤感光性ハロゲン化銀乳剤には、SS−1をハロゲン化銀1モル当たり2.0×10-3モル添加した。
【0135】
【化31】

【0136】
(塗布液の調製)
塗布液は下記のようにして調製した。
【0137】
〈第1層塗布液の調製〉
イエローカプラー(Y−1)を3.34g、(Y−2)を10.02g、(Y−3)を1.67g、色素画像安定剤(ST−1)を1.67g、(ST−2)を1.67g、(ST−5)を3.34g、ステイン防止剤(HQ−1)を0.167g、画像安定剤Aを2.67g、高沸点有機溶媒(DBP)を5.0g及び(DNP)を1.67g秤量し、これらに酢酸エチル60mlを加えて溶解し、この溶液を10%界面活性剤(SU−1)溶液5mlを含有する7%ゼラチン水溶液320ml中に添加した後、超音波ホモジナイザーを用いて乳化分散させてイエローカプラー分散液500mlを調製した。この分散液を、前記条件で調製した青感性塩臭化銀乳剤(Em−B)と混合し、第1層塗布液を調製した。
【0138】
〈第2〜7層塗布液の調製〉
第2〜7層塗布液についても、上記第1層塗布液と同様にして、各添加剤を表1、2に記載の塗布量になるように各塗布液を調製した。
【0139】
又、硬膜剤として(H−1)、(H−2)を添加した。塗布助剤としては、界面活性剤(SU−2)、(SU−3)を添加し、表面張力を調整した。又、各層に防黴剤(F−1)を全量が0.04g/m2となるように添加した。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】

【0142】
尚、表1、2に記載の各添加剤の詳細は以下の通りである。
【0143】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム
SU−3:スルホ琥珀酸ジ(2,2,3,3,4,4,5,5,−オクタフルオロペンチル)・ナトリウム
DBP:ジブチルフタレート
DNP:ジノニルフタレート
DOP:ジオクチルフタレート
DIDP:ジ−i−デシルフタレート
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−4:2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−5:2,5−ジ〔(1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル〕ハイドロキノン
画像安定剤A:p−t−オクチルフェノール
画像安定剤B:ポリ(t−ブチルアクリルアミド)
【0144】
【化32】

【0145】
【化33】

【0146】
【化34】

【0147】
〔試料102〜121の作製〕
上記試料101の作製において、青感層の化学増感時に使用したカルコゲン増感剤及び金増感剤を表3に記載の様に変更及び/又はジスルフィド化合物を添加した以外は同様にして、試料102〜121を作製した。
【0148】
【表3】

【0149】
【化35】

【0150】
《カラー感光材料試料の評価》
上記作製した試料101〜121について、下記に記載の方法に従って、感度、カブリ、乳剤安定性及び塗布液停滞安定性を評価した。
【0151】
(評価1:高照度露光及び低照度露光における感度・カブリ評価)
各試料に対し、10-6秒露光のキセノンフラッシュ高照度露光用感光計(山下電装社製SX−20型)を用いてブルーフィルターを介して青色光によりウエッジ露光した後、下記の処理工程に従って発色現像処理を行った。又、各試料に対し、同フィルターを介して低照度で10秒間露光したものを上記と同様の方法で発色現像処理を行った。
【0152】
以上の様にして現像処理を行った各試料のイエロー画像反射濃度を、光学濃度計(コニカ社製PDA−65型)を用いて測定し、縦軸:反射濃度(D)、横軸:露光量(LogE)からなるイエロー画像の特性曲線を作成して、感度を算出した。
【0153】
ここで感度は、試料101の感度を100として表記した。又、各々の特性曲線における最低濃度値を、カブリ濃度として表記した。
【0154】
感度=1/(カブリ+1.0の濃度を示す露光量)
(評価2:乳剤安定性及び塗布液停滞安定性の評価)
評価1で作製した試料101〜121と同様に青感性ハロゲン化銀乳剤を調製した後、60℃で12時間停滞させてから、第1層塗布液の調製を行って、試料101〜121と同様にして試料201〜221を作製した。又、評価1で作製した第1層塗布液の調製を行った後、40℃で24時間停滞させてから、試料101〜121と同様にして試料301〜321を作製した。
【0155】
各試料に対し、10-6秒露光のキセノンフラッシュ高照度露光用感光計(前出:SX−20型)を用いて、ブルーフィルターを介して青色光によりウエッジ露光した。評価1と同様の処理工程に従って発色現像処理を行った。又、各試料に対し、同フィルターを介して低照度で10秒間露光したものを同様の方法で発色現像処理を行った。
【0156】
以上のようにして処理を行った各試料のイエロー画像反射濃度を、光学濃度計(前出:PDA−65型)を用いて測定し、縦軸:反射濃度(D)、横軸:露光量(LogE)からなるイエロー画像の特性曲線を作成して、感度、カブリ濃度を算出して評価1でのそれらとの差(Δ感度、Δカブリ)を表記した。
【0157】
(現像処理)
処理工程 処理温度 時間 補充量
発色現像 42.0±0.3℃ 20秒 80ml
漂白定着 40.0±0.5℃ 20秒 120ml
安定化 30〜34℃ 20秒 150ml
乾燥 60〜80℃ 30秒
現像処理液の組成を下記に示す。
〈発色現像液タンク液及び補充液〉
タンク液 補充液
純水 800ml 800ml
トリエチレンジアミン 2g 3g
ジエチレングリコール 10g 10g
臭化カリウム 0.01g −
塩化カリウム 3.5g −
亜硫酸カリウム 0.25g 0.5g
N−エチル−N−(βメタンスルホンアミドエチル)−3−メチル−4−アミノアニ
リン硫酸塩 6.0g 10.0g
N,N−ジエチルヒドロキシルアミン 6.8g 6.0g
トリエタノールアミン 10.0g 10.0g
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩 2.0g 2.0g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体)
2.0g 2.5g
炭酸カリウム 30g 30g
水を加えて全量を1リットルとし、タンク液はpHを10.10に、補充液はpHを10.60に調整。
〈漂白定着液タンク液及び補充液〉
ジエチレントリアミン五酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 65g
ジエチレントリアミン五酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール 2.0g
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウム又は氷酢酸でpHを5.0に調整。
〈安定化液タンク液及び補充液〉
o−フェニルフェノール 1.0g
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
ジエチレングリコール 1.0g
蛍光増白剤(チノパールSFP) 2.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.8g
塩化ビスマス(45%水溶液) 0.65g
硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g
PVP(ポリビニルピロリドン) 1.0g
アンモニア水(水酸化アンモニウム25%水溶液) 2.5g
ニトリロ三酢酸・三ナトリウム塩 1.5g
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸又はアンモニア水でpHを7.5に調整。
【0158】
以上により得られた結果を表4、表5、表6に示す。
【0159】
【表4】

【0160】
【表5】

【0161】
【表6】

【0162】
表4〜6から判る様に、本発明の一般式(1)又は(2)で表されるジスルフィド化合物と一般式(3)で表される金化合物を併用した場合、比較化合物又は塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムを用いた場合よりも、高照度露光時、低照度露光時においても、良好な感度、カブリを示し、乳剤安定性、塗布液停滞安定性も良好となった。即ち、高感度で相反則不軌特性に優れ、乳剤安定性及び塗布液停滞安定性に優れたハロゲン化銀乳剤及び該乳剤を用いたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することが出来た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、前記ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層に下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を少なくとも1種含有し、かつ前記ハロゲン化銀乳剤層に含有されるハロゲン化銀粒子の少なくとも1種が下記一般式(3)で表される化合物により化学増感されたことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【化1】

〔式中、R1、R2は置換基を表し、nは1〜4の整数、mは1〜3の整数を表す。〕
【化2】

〔式中、Au(I)は1価の金を表し、L1はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に結合可能な基を表し、L2はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表す。Mは水素原子又は対カチオンを表し、m11及びn11は各々、0又は1を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(3)で表される化合物が下記一般式(4)〜(8)の何れかで表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【化3】

〔式中、Au(I)は1価の金を表し、AはO、S又はNR4を表し、QはS、Se又はTeを表し、R1〜R4は各々、水素原子又は置換基を表す。R3はR1又はR2と共に5〜7員の環状構造を形成してもよい。L3はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、n21は0又は1を表す。〕
【化4】

〔式中、Au(I)は1価の金を表し、QはS、Se又はTeを表し、X1はO、S又はNR5を表す。Yは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、OR6、SR7又はN(R8)R9を表す。R5〜R9は各々、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又は複素環基を表す。L4はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、n31は0又は1を表す。〕
【化5】

〔式中、Au(I)は1価の金を表し、W1は電子求引性基を表し、QはS、Se又はTeを表し、R10及びR11は各々、水素原子又は置換基を表す。W1とR10、W1とR11、R10とR11は各々、互いに結合して環状構造を形成してもよい。L5はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、n41は0又は1を表す。〕
【化6】

〔式中、Au(I)は1価の金を表し、QはS、Se又はTeを表し、W2は電子求引性基を表す。R12〜R14は各々、水素原子又は置換基を表す。W2とR12は互いに結合して5〜7員の環状構造を形成してもよい。L6はN、S、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、n51は0又は1を表す。ただし、次の(イ)〜(ハ)の少なくとも一つの条件を満たす。
(イ)R12及びR14の少なくとも一つがアリール基である
(ロ)W2とR12は互いに結合して5〜7員の環を形成する
(ハ)W2及びR12〜R14のハメットの置換基定数σp値の総和が0.6以上である〕
【化7】

〔式中、Au(I)は1価の金を表し、QはS、Se又はTeを表し、Mは水素原子又は対カチオンを表し、n61は0又は1を表す。Zは下記式(a)〜(e)で表される置換基を表し、L7はN、S、O、P、Se又はTeを介してAu(I)に配位可能な化合物を表し、m21は0又は1を表す。〕
【化8】

〔式中、R21、R22及びR23は各々、それぞれ置換もしくは無置換の脂肪族基又は芳香族基を表し、R24は置換基を表し、X2及びX3は各々N又はCReを表すが、X2及びX3のうち少なくとも一方はNである。Reは水素原子又は置換基を表し、Ar1、Ar2及びAr3は各々、それぞれ置換もしくは無置換のアリール基又は不飽和複素環基を表す。Ra及びRcは各々、置換基を表し、Rb及びRdは各々、水素原子又はアシル基を表し、rは0〜3の整数を表し、s及びtは各々0〜4の整数を表す。〕
【請求項3】
前記一般式(3)で表される化合物が前記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項4】
前記一般式(1)又は(2)で表される化合物が下記一般式(9)又は(10)で表されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【化9】

〔式中、Reは電子吸引基を表し、R11、R12は置換基を表し、n′は0〜3の整数を、m′は0〜2の整数を表す。〕
【請求項5】
前記ハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子が、少なくとも90モル%以上の塩化銀を含有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。