説明

ハロゲン化銀感光材料およびその製造方法

【課題】写真特性に悪影響を及ぼすことなく、金属混入によるスポット状汚染を防止したハロゲン化銀写真感光材料を提供することである。
【解決手段】支持体上に、順に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層、第一中間層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、第二中間層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有し、第一中間層がキレート化剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料に関するもので、詳しくは感光材料の製造、加工、保存、処理等の工程で混入する金属による汚染を防止したハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光材料の製造、加工、保存、処理工程において、感光材料に悪作用を及ぼす金属または金属化合物の混入による汚染を避けるため、多大の努力が払われて来ている。しかしながら多くの努力にもかかわらず、これらの金属は微細粒子となって大気中より、あるいは懸濁液、または溶液となって感光材料と接触し処理後の結果、画像として好ましくないステイン、スポット、色汚染、調子変化等を与える。中でも未露光部が感光して点状の画像が形成される、所謂スポットの発生は昨今のデジタル画像の場合には特に目障りなものである。これら感光材料に悪作用を及ぼす金属または金属化合物は、特に鉄、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、亜鉛等であるが、その中でも鉄粉による影響が最も大きい(以下、このような金属または金属化合物による悪作用を「鉄粉故障」という)。
そこで、特許文献1および2では、乳剤層または非乳剤層にキレート化剤を入れることにより、上記鉄粉故障の問題を解決するための試みがなされている。そして、その具体的な実施例においては、特許文献1の段落番号[0171]および特許文献2の段落番号[0114]に記載されているように、低感度赤感性ハロゲン化銀乳剤層(第3層)およびイエローフィルター層(第11層)に特定のアミノ化合物を含有させている。
【特許文献1】特開平5−204084号公報
【特許文献2】特開平6−148787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、本発明者が検討したところ、ハロゲン化銀感光材料の低感度赤感性ハロゲン化銀乳剤層、イエローフィルター層またはこれら両層にキレート化剤を含有させた場合の何れの態様についても、満足できる結果が得られないことが判明した。即ち、イエローフィルター層にキレート化剤を含有させた場合には鉄粉故障を抑える効果が満足のいく程度には発現せず、低感度赤性ハロゲン化銀感乳剤層にキレート化剤を含有させた場合および低感度赤感性ハロゲン化銀乳剤層とイエローフィルター層の両層にキレート化剤を含有させた場合には鉄粉故障を抑えることができたものの、カブリが上昇してしまうといったハロゲン化銀写真感光材料としての基本性能を低下させてしまう重大な欠点が現れてしまうことが判った。
【0004】
本発明は、ハロゲン化銀感光材料としてのカブリ等の基本性能を損なうことなく、鉄粉故障を満足の行くレベルにまで抑えることができるハロゲン化銀写真感光材料を提供することを課題とする。
また本発明は、カブリ等の基本性能が損なわれることなく、鉄粉故障が満足の行くレベルにまで抑えこまれたハロゲン化銀写真感光材料を得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決すべく、本発明者は種々の検討を重ねた結果、以下の発明により解決できることが判明した。即ち、
<1> 支持体上に、順に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層、第一中間層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、第二中間層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有し、
前記第一中間層がキレート化剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料、および
<2> 長尺フィルムベース上に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第一中間層用塗布液膜、緑感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第二中間層塗布液膜および青感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜を一回または複数回に分割して塗布し、セットし、そして乾燥して、前記フィルムベース上に、順に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層、第一中間層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、第二中間層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料を製造する製造方法であって、前記第一中間層用塗布液膜がキレート化剤を含有していることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の製造方法、
である。
ここで、「キレート化剤」は、鉄粉故障であるスポットカブリを引き起こす金属イオン(特に、鉄イオン)をトラップするものを意味し、包含するものであって、本明細書中では金属キレートを形成する多座配位子そのもの(以下、これを「キレート配位子」と言う。)のみならず、このキレート配位子がナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属イオンを含む化合物であっても、それが上記の感光材料に悪作用を及ぼす金属または金属化合物と反応してそれらの金属との金属キレートを形成するものである限り含まれる。なお、本発明の製造工程では、第一中間層用塗布液にキレート化剤が添加され、そのキレート化剤のキレート配位子が感光材料に悪作用を及ぼす金属または金属化合物と反応してそれらの金属との金属キレートを形成して鉄粉故障(スポットカブリ)が抑制されると本発明者らは推定する。
【0006】
本発明に使用されるキレート化剤におけるキレート配位子は後記一般式(I)で表されるものが好ましく、中でもEDTAまたはNTAが入手の容易さと作用効果の点から特に好ましいことが判明した。 更に、上記キレート化剤は1.0×10−8mol/m〜2.0×10−3mol/mの範囲内にとなる量で含有させておくことがキレート化剤を添加しない場合のカブリ等の写真性能と同等の性能が維持されつつ、鉄粉故障を満足の行くレベルに抑えることができるという点から特に好ましいことも判明した。なお、製造過程で第一中間層用塗布液に添加するキレート化剤は0.0001g/m〜0.6g/mとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるハロゲン化銀感光材料は、その基本性能を損なうことなく、鉄粉等の金属の混入による故障を満足いくレベルに抑えることができる。さらに、本発明による製造方法により、上記のような性能を有するハロゲン化銀感光材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、支持体上に、順に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層、第一中間層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、第二中間層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有するものを基本構成とするものであり、前記第一中間層がキレート化剤を含有することを特徴とする。
なお、以下の説明において、上記の「赤感性ハロゲン化銀乳剤層」、「緑感性ハロゲン化銀乳剤層」および「青感性ハロゲン化銀乳剤層」の各々を「単位感光性層」とも言う。単位感光性層は、少なくとも2層の、より好ましくは3層の互いに感度の異なる乳剤層で構成されることが明るさの異なる広い範囲の環境下で被写体を撮影する場合であっても優れた再現性を確保できるという点で好ましい。更に、青感性ハロゲン化銀乳剤層の上に、少なくとも一層の保護層を設けることができ、支持体と赤感性ハロゲン化銀乳剤層の間には下塗層を設けてもよい。更に、支持体の反乳剤層面(バック面)には、ハレーション防止層を設けても良い。また、上記の第二中間層は、イエローフィルター層であってもよく、この場合には、ハロゲン化銀粒子を含有させてイエローフィルター層としての機能を持たせることができる。
【0009】
本発明によるハロゲン化銀感光材料においては、単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、および青感性ハロゲン化銀乳剤層の順に設置される。そして、これらの単位感光性層の間には、中間層が設けられ、更に青感性ハロゲン化銀乳剤層の上に最上層(保護層)を、また赤感性ハロゲン化銀乳剤層と支持体の間には、下塗り層等の最下層を設けてもよい。通常、第一中間層、最上層、最下層は非感光性である。これらには、後述のカプラー、DIR化合物、混色防止剤等が含まれていてもよい。各単位乳剤層が複数のハロゲン化銀乳剤層により構成されている場合には、支持体に向かって順次感光度が低くなる様に配列するのが好ましい。
【0010】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、上記第一中間層がキレート化剤を含有する。
上記キレート化剤としては、感光材料に悪作用を及ぼす金属または金属化合物と金属キレートを形成するものであれば使用することができるが、特に鉄イオンと金属キレート形成するものが好ましい。また感光材料の製造過程においては、キレート化剤が赤感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層に移動する場合もあり、このときその隣接層では銀イオンをトラップすることも考えられるので、鉄イオンとの安定度定数が銀イオンとのそれよりも高いものが好ましい。このようなキレート化剤を使用することで、写真特性への悪影響が抑制できる。このようなキレート化剤の好ましい一群には、下記一般式(I)で示される化合物が含まれる。
【0011】
一般式(I)
【化1】

【0012】
式中、
およびLはアルキレン基または置換アルキレン基を表す。
Yは、−O−または下記一般式(II)で示される基を表す。
【0013】
一般式(II)
【化2】

【0014】
mは0または1の整数を表す。
Xはカルボキシル基、そのアルカリ金属塩基、ホスホノ基、そのアルカリ金属塩基、スルホ基、そのアルカリ金属塩基、ヒドロキシ基または下記一般式(III)で示される基を表す。
【0015】
一般式(III)
【化3】

【0016】
、A、A、AおよびAは各々独立してカルボキシル基、そのアルカリ金属塩基、ホスホノ基、そのアルカリ金属塩基、スルホ基、そのアルカリ金属塩基またはヒドロキシ基を表す。
、L、L、LおよびLは各々独立してアルキレン基を表す。
【0017】
上記のアルキレン基としては、アルカンから二個の水素原子を除いた二価の基を意味し、炭素数が1〜10のものが好ましく、炭素数が2〜3のものがより好ましい。具体的には、1,2−エチレン基、トリメチレン基が挙げられる。
上記の置換アルキレン基は、上記のアルキレン基の少なくとも一つの水素原子がヒドロキシ基で置換されたものが好ましい。具体的には、2−ヒドロキシ−1,3−トリメチレン基が挙げられる。
また、A、A、A、AおよびAは好ましくはカルボキシル基である。
本発明で使用されるキレート配位子の具体例のいくつかを以下に記載する。
【0018】
【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】


【化12】


【化13】

【0019】
本発明においては、上記の配位子のカルボキシル基の一部または全部がナトリウム塩またはカリウム塩となった化合物もキレート化剤として使用することができる。本発明においては、特にEDTA・2NaおよびNTA・3Naが安価に入手できる上、写真特性を劣化させることなく鉄粉故障を防止する能力が十分に発揮されると共に、製造時に水溶液として第一中間層用塗布液に添加することができるので好ましい。
キレート化剤は単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。キレート化剤の含有量は、鉄粉故障を抑制できれば良く、1.0×10−8mol/m〜2.0×10−3mol/mが好ましい。前記上限値は、1.5×10−3mol/mがより好ましく、8.0×10−4mol/mがさらに好ましく、4.0×10−5mol/mが特に好ましい。前記下限値は、1.0×10− 6mol/mがより好ましく、3.0×10−6mol/mがさらに好ましい。
また製造過程で第一中間層用塗布液に添加するキレート化剤は、0.0001g/m〜0.6g/mの範囲内にとなる量であること好ましい。この範囲内であれば、鉄粉故障を抑えることができる一方で、基本的な写真性能が損なわれる恐れもないからである。第一中間層用塗布液に添加するキレート化剤のより好ましい範囲は0.0006g/m〜0.1g/mの範囲であり、最も好ましくは0.001g/m〜0.02g/mの範囲である。
【0020】
本発明のハロゲン化銀感光材料で用いることのできるハロゲン化銀乳剤(以下、「本発明の乳剤」ともいう)は、好ましくは沃臭化銀、臭化銀または塩沃臭化銀平板状乳剤である。
【0021】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、好ましくは、各単位感光性層が実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から構成され、各単位感光性層を構成するハロゲン化銀乳剤層の中で感度の高い乳剤層のうち少なくとも1層に含有されるハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上が平板状ハロゲン化銀粒子(以下、平板粒子ともいう。)である。本発明において該平板粒子の平均アスペクト比は、好ましくは8以上であり、より好ましくは12以上であり、最も好ましくは15以上である。
【0022】
平板粒子において、アスペクト比とはハロゲン化銀における厚みに対する直径の比を意味する。すなわち、個々のハロゲン化銀粒子の直径を厚みで除した値である。ここで、直径とは、ハロゲン化銀粒子を顕微鏡または電子顕微鏡で観察したとき、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を指すものとする。また、本明細書において平均アスペクト比とは乳剤中の全平板粒子のアスペクト比の平均値である。
【0023】
また、本発明の緑感性ハロゲン化銀乳剤層および赤感性ハロゲン化銀乳剤層の最高感度層に用いるハロゲン化銀写真乳剤は、全ハロゲン化銀粒子数の50%以上が粒子厚み0.15μm以下である。全ハロゲン化銀粒子数の60%以上が、粒子厚み0.15μm以下の粒子であることが好ましい。また、50%以上が、粒子厚み0.01μm以上0.15μm以下の粒子であることも好ましい。
【0024】
アスペクト比および粒子厚みは、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して個々の粒子の円相当直径と厚みを求める方法で実施した。この測定では、厚みをレプリカの影(シャドー)の長さから算出する。
【0025】
平板粒子乳剤は沃臭化銀もしくは塩沃臭化銀より成ることが好ましい。塩化銀を含んでもよいが、好ましくは塩化銀含率は8モル%以下、より好ましくは3モル%以下、最も好ましくは0モル%である。沃化銀含有率については、平板粒子乳剤の粒子サイズの分布の変動係数が30%以下であることが好ましいので、沃化銀含有率は20モル%以下が好ましい。沃化銀含有率を低下させることにより平板粒子乳剤の円相当径の分布の変動係数を小さくすることが容易になる。特に平板粒子乳剤の粒子サイズの分布の変動係数は20%以下が好ましく、沃化銀含有率は10モル%以下が好ましい。
【0026】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤はセレン増感または金増感することが好ましい。
本発明で用い得るセレン増感剤としては、従来公知の特許に開示されているセレン化合物を用いることができる。
【0027】
本発明で用いる乳剤は、化学増感において硫黄増感を併用することが望ましい。本発明で用いるハロゲン化銀乳剤を粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、あるいは化学増感後に還元増感することもできる。
還元増感としては、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で成長または、熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長または熟成させる方法のいずれを選ぶことができる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0028】
本発明で用いる乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用してこれを銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。
【0029】
本発明で用いる写真乳剤は、好ましくはメチン色素類その他によって分光増感することにより所望の感色性を付与すること、ハロゲン化銀乳剤に有用であることが知られている通常のドーパントを用いることができる。
【0030】
本発明によるハロゲン化銀感光材料には、前記の種々の添加剤以外にも目的に応じて種々の添加剤を用いることができる。これらの添加剤の総括的な説明がリサーチディスクロージャー Item 17643(1978年12月)、同 Item 18716(1979年11月)および同 Item 308119(1989年12月)に記載されており、その該当個所を後掲の表にまとめて示した。
添加剤種類 RD17643 RD18716 RD308119
1 化学増感剤 23頁 648頁右欄 996頁
2 感度上昇剤 同 上
3 分光増感剤、 23〜24頁 648頁右欄〜 996右〜 998右
強色増感剤 649頁右欄
4 増 白 剤 24頁 998右
5 カブリ防止剤 24〜25頁 649頁右欄 998右〜1000右
および安定剤
6 光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄〜 1003左〜1003右
フィルター染料 650頁左欄
紫外線吸収剤
7 ステイン防止剤 25頁右欄 650左〜右欄 1002右
8 色素画像安定剤 25頁 1002右
9 硬 膜 剤 26頁 651頁左欄 1004右〜1005左
10 バインダー 26頁 同 上 1003右〜1004右
11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄 1006左〜1006右
12 塗布助剤、 26〜27頁 同 上 1005左〜1006左
表面活性剤
13 スタチック 27頁 同 上 1006右〜1007左
防止剤
14 マット剤 1008左〜1009左
【0031】
本発明によるハロゲン化銀観光材料に使用することができる層配列等の技術、ハロゲン化銀乳剤、色素形成カプラー、DIRカプラー等の機能性カプラー、各種の添加剤等、及び本発明によるハロゲン化銀感光材料の現像処理については、欧州特許第0565096A1号(1993年10月13日公開)及びこれに引用された特許に記載されており、それらは本発明にも適用することができる。以下に各項目とこれに対応する記載個所を列記する。
【0032】
1.層構成:61頁23〜35行、61頁41行〜62頁14行
2.中間層:61頁36〜40行、
3.重層効果付与層:62頁15〜18行、
4.ハロゲン化銀ハロゲン組成:62頁21〜25行、
5.ハロゲン化銀粒子晶癖:62頁26〜30行、
6.ハロゲン化銀粒子サイズ:62頁31〜34行、
7.乳剤製造法:62頁35〜40行、
8.ハロゲン化銀粒子サイズ分布:62頁41〜42行、
9.平板粒子:62頁43〜46行、
10.粒子の内部構造:62頁47行〜53行、
11.乳剤の潜像形成タイプ:62頁54行〜63頁5行、
12.乳剤の物理熟成・化学増感:63頁6〜9行、
13.乳剤の混合使用:63頁10〜13行、
14.かぶらせ乳剤:63頁14〜31行、
15.非感光性乳剤:63頁32〜43行。
【0033】
16.塗布銀量:63頁49〜50行、
17.ホルムアルデヒドスカベンジャー:64頁54〜57行、
18.メルカプト系カブリ防止剤:65頁1〜2行、
19.かぶらせ剤等放出剤:65頁3〜7行、
20.色素:65頁7〜10行、
21.カラーカプラー全般:65頁11〜13行、
22.イエロー、マゼンタ及びシアンカプラー:65頁14〜25行、
23.ポリマーカプラー:65頁26〜28行、
24.拡散性色素形成カプラー:65頁29〜31行、
25.カラードカプラー:65頁32〜38行、
26.機能性カプラー全般:65頁39〜44行、
27.漂白促進剤放出カプラー:65頁45〜48行、
28.現像促進剤放出カプラー:65頁49〜53行、
29.その他のDIRカプラー:65頁54行〜66頁4行、
30.カプラー分散方法:66頁5〜28行
31.防腐剤・防かび剤:66頁29〜33行、
32.感材の種類:66頁34〜36行、
33.感光層膜厚と膨潤速度:66頁40行〜67頁1行、
34.バック層:67頁3〜8行、
35.現像処理全般:67頁9〜11行、
36.現像液と現像薬:67頁12〜30行、
37.現像液添加剤:67頁31〜44行、
38.反転処理:67頁45〜56行、
39.処理液開口率:67頁57行〜68頁12行、
40.現像時間:68頁13〜15行、
41.漂白定着、漂白、定着:68頁16行〜69頁31行、
42.自動現像機:69頁32〜40行、
43.水洗、リンス、安定化:69頁41行〜70頁18行、
44.処理液補充、再使用:70頁19〜23行、
45.現像薬感材内蔵:70頁24〜33行、
46.現像処理温度:70頁34〜38行、
【0034】
本発明に使用できる適当な支持体は、例えば、前述のRD.No.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄、および同No.307105の879頁に記載されている。
【0035】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の支持体に対して反対側に、乾燥膜厚の総和が0.5μm〜20μmのバック層を設けることが好ましい。このバック層には、例えば、前述の光吸収剤、カーボンブラック、フィルター染料、紫外線吸収剤、スタチック防止剤、硬膜剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、塗布助剤、表面活性剤を含有させることが好ましく、中でもカーボンブラック、スタチック防止剤が特に好ましい。
【0036】
本発明の感光材料は、アマチュア用カラーネガ、アドバンストアマチュア用カラーネガ、プロフェッショナル用カラーネガ、映画用カラーネガのいずれにも適用することができるが、映画用カラーネガに適用することが最も好ましい。映画用カラーネガでは品質に対する要求が厳しく、スポットカブリの許容範囲が小さい。本発明では、スポットカブリを最小限にすることができるので、映画用カラーネガでの効果が特に大きい。
【0037】
本発明のハロゲン化銀感光材料は、必要により下塗り層を設けた長尺状支持体上に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第一中間層用塗布液膜、緑感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第二中間層塗布液膜および青感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜を同時多層塗布方法により、一回で設けたのち、セットし、乾燥することにより製造することができる。この場合、製造環境下において、空気中に微細な鉄粉等が紛れ込んで、上記の塗布液膜を設ける直前の支持体表面に付着してしまうことが避けられないが、第一中間層用塗布液にキレート化剤を含有させておくことにより、この鉄粉と乳剤層中の感光性ハロゲン化銀粒子との反応が抑制されて、鉄粉故障を効果的に防止することが出来る。
これに対して、キレート化剤を赤感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液に含有させた場合には、この塗布液中でキレート化剤と乳剤中の感光性ハロゲン化銀粒子とが反応してしまい、カブリ等の写真特性を却って悪化させてしまう原因となる。また、支持体表面から遠い位置にある第二中間層塗布液(通常はイエローフィルター層である。)にキレート化剤を含有させた場合には、支持体表面を汚染している鉄粉とキレート化剤とが鉄キレートを生成するまでに時間を要してしまい、鉄キレートが生成するまでの時間内に鉄粉と感光性ハロゲン化銀(例えば、赤感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液中のハロゲン化銀粒子)とが反応してしまい、スポットが発生してしまう。従って、キレート化剤を第一中間層に含有させておくことが極めて重要である。
【0038】
他方、必要により下塗り層を設けた長尺状支持体上に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第一中間層用塗布液膜、緑感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第二中間層塗布液膜および青感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜を同時多層塗布方法により二回に分けて塗布する場合、例えば第一回の塗布で赤感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜と第一中間層用塗布液膜を同時に塗布し、セットし、乾燥した後、この上に第二回の塗布で緑感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第二中間層塗布液膜および青感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜を設け、セットし、乾燥して最終的なハロゲン化銀感光材料を製造する場合には、第一中間層用塗布液にキレート化剤を含有させておき、更に、第二中間層用塗布液にもキレート化剤を含有させておくことが好ましい。こけれは、支持体表面を汚染した鉄粉に対しては、第一中間層に含有させたキレート化剤により鉄キレートが生成するが、第二回の塗布の際に、その表面(例えば、上記の例で言えば第一中間層の表面)を汚染した鉄粉に対しては第二中間層用塗布液に含有させたキレート化剤が有効に機能するからである。
【0039】
本発明のハロゲン化銀感光材料の現像処理に用いる発色現像液は、好ましくは芳香族第一級アミン系発色現像主薬を主成分とするアルカリ性水溶液である。発色現像液は、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、ホウ酸塩もしくはリン酸塩のようなpH緩衝剤、塩化物塩、臭化物塩、沃化物塩、ベンズイミダゾール類、ベンゾチアゾール類もしくはメルカプト化合物のような現像抑制剤またはかぶり防止剤を含むのが一般的である。発色現像処理の時間は通常2〜5分の間で設定されるが、高温高pHとし、かつ発色現像主薬を高濃度に使用することにより、更に処理時間の短縮を図ることもできる。
【0040】
発色現像後の写真乳剤層は通常漂白処理される。漂白処理は定着処理と同時に行なわれてもよいし(漂白定着処理)、個別に行なわれてもよい。更に処理の迅速化を図るため、漂白処理後に漂白定着処理する処理方法でもよい。さらに、二槽の連続した漂白定着浴で処理すること、漂白定着処理の前に定着処理すること、又は漂白定着処理後に漂白処理することも目的に応じ任意に実施できる。
【0041】
脱銀工程の時間の合計は、脱銀不良が生じない範囲で短い方が好ましい。好ましい時間は1分〜3分、更に好ましくは1分〜2分である。また、処理温度は25℃〜50℃、好ましくは35℃〜45℃である。本発明のハロゲン化銀感光材料は、脱銀処理後、水洗及び/又は安定工程を経るのが一般的である。水洗工程での水洗水量は、感光材料の特性(例えば、カプラーのような使用素材による)、用途、更には、例えば、水洗水温、水洗タンクの数(段数)、向流、順流のような補充方式、その他種々の条件に応じて広範囲に設定し得る。
【0042】
本発明のハロゲン化銀感光材料の処理おける水洗水のpHは、4〜9、好ましくは5〜8である。水洗水温および水洗時間も、例えば感光材料の特性、用途に応じて種々設定し得るが、一般には、15〜45℃で20秒〜10分、好ましくは25〜40℃で30秒〜5分の範囲が選択される。更に、本発明の感光材料は、上記水洗に代えて、直接安定液によって処理することもできる。
【0043】
また、前記水洗処理に続いて、更に安定化処理する場合もある。その例として、撮影用カラー感光材料の最終浴として使用される、色素安定化剤と界面活性剤を含有する安定浴を挙げることができる。
【0044】
上記水洗及び/又は安定液の補充に伴うオーバーフロー液は脱銀工程のような他の工程において再利用することもできる。例えば自動現像機を用いた処理において、上記の各処理液が蒸発により濃縮化する場合には、水を加えて濃縮補正することが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を示す。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
特開2008−145958号の実施例1に記載の試料101の作製と同様にして、但し、低感度赤感乳剤層を設ける前に下記の鉄粉汚染層を第1層として設けたものを作製して、試料101を作製した。第1層は、金属起因のスポット状汚染を強性的に再現し易くするための層であり、写真性評価におけるスポット数を定量的に評価するために設けた。従って、試料101は三酢酸セルロースフィルム支持体上に、順に、第1層(鉄粉汚染層)、第2層(低感度赤感乳剤層)、第3層(中感度赤感乳剤層)、第4層(高感度赤感乳剤層)、第5層(第一中間層)、第6層(低感度緑感乳剤層)、第7層(中感度緑感乳剤層)、第8層(高感度緑感乳剤層)、第9層(イエローフィルター層)、第10層(低感度青感乳剤層)、第11層(中感度青感乳剤層)、第12層(高感度青感乳剤層)、第13層(第1保護層)および第14層(第2保護層)を有し、上記支持体の反対面(バック面)にバック層を有する構成となっている。これらの各層を塗布するに際しては、裏面にバック層を設けた長尺状三酢酸セルロースフィルム支持体上に、先ず第1層((鉄粉汚染層)を塗布・乾燥して設けた後、第2層から第14層の塗布液膜を一回でギーサーを用いて塗布し、セットし、そして35℃で乾燥して、フィルムベース上に設ける方法を採用した。以上の通りに作製したカラーネガ感光材料を、試料101とする。第1層(金属起因のスポット状汚染の強性再現層)は微細に砕いた鉄粉0.0009g/mおよびゼラチン0.406g/mの塗布量で作製した。
【0046】
(試料102〜108の作製)
試料101の非乳剤層である第5層、第9層または第13層に、キレート化剤としてEDTA・2Naを表1に示したように添加し試料102〜108を作製した。
【0047】
【表1】

【0048】
(試料109〜115の作製)
試料102〜108と同様にして、但し、キレート化剤としてNTA・3Naを使用し、以下の表2に示す添加量に変更し試料109〜115を作製した。表2には、NTA・3Naの添加量をg/mおよびモル量換算で示した。また表2には、キレート化剤がEDTA・2Naの場合についての添加量についてもg/mおよびモル量換算を掲載した。
【0049】
【表2】

【0050】
(試料の評価)
各試料に、ウエッジを介して1/100秒間の白色露光を行った。露光された各試料を特開2008−145958号の実施例1に記載の方法と同様にして処理し、得られた画像について、特開昭63−226650号に記載されている方法で濃度測定を行った。また、各試料を未露光状態で現像処理行い、発生するスポット状汚染の数を数えた。
【0051】
写真性の評価
上記方法で得られた試料101の性能を基準にして、試料102〜115のFresh写真性能差、保存時の写真性能差を求めた。保存条件は温度60℃且つ相対湿度30%で3日間とした。キレート化剤未添加試料である試料101との性能差が小さいほど、キレート化剤の添加による性能弊害が小さい優れた試料であると言える。
ここで、Fresh写真性能差は基準同等でるのが最良であるが、カブリ濃度が0.05以下の場合は許容範囲内であり、0.05を超えると許容範囲外となる。
また、保存時の写真性能差は、Fresh写真濃度を基準としてカブリ濃度が0.20以下であれば許容範囲であり、好ましくは0.09以下である。
更に上記方法で得られた試料のスポットの数を観察し、試料101のスポット数を100として相対数値化し、各試料のスポット数を求めた。
スポット数は、試料101のスポット数を100とした場合に、スポット数が40以下であれば許容範囲内であり、25以下であれば好ましく、10以下であれば更に好ましく、0が最も好ましい。結果を表3に示した。
得られた結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
表3からわかる様に、本発明の効果は、キレート化剤を添加した際に生じるFresh写真性能差/保存時の写真性能変化差を最小に抑えることができ、かつスポット数を著しく減少させ、金属汚染防止に対して大きな改善効果を示す事が分かる。
これに対して、低感度赤感ハロゲン化銀乳剤層にキレート化剤を含有させた場合には、赤感ハロゲン化銀乳剤層のカブリが上昇してしまうという重大な欠陥となってしまった。更に、イエローフィルター層にキレート化剤を含有させた場合には、スポットの発生を防止する性能が不十分であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、順に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層、第一中間層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、第二中間層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有し、
前記第一中間層がキレート化剤を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項2】
前記キレート化剤が下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
一般式(I)
【化1】


式中、
およびLはアルキレン基または置換アルキレン基を表す。
Yは、−O−または下記一般式(II)で示される基を表す。
一般式(II)
【化2】


mは0または1の整数を表す。
Xはカルボキシル基、そのアルカリ金属塩基、ホスホノ基、そのアルカリ金属塩基、スルホ基、そのアルカリ金属塩基、ヒドロキシ基または下記一般式(III)で示される基を表す。
一般式(III)
【化3】


、A、A、AおよびAは各々独立してカルボキシル基、そのアルカリ金属塩基、ホスホノ基、そのアルカリ金属塩基、スルホ基、そのアルカリ金属塩基またはヒドロキシ基を表す。
、L、L、LおよびLは各々独立してアルキレン基を表す。
【請求項3】
前記キレート化剤がEDTA、そのナトリウム塩、NTAまたはそのナトリウム塩であることを特徴とする請求項2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項4】
前記キレート化剤の含有量が、1.0×10−8mol/m〜2.0×10−3mol/mであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項5】
長尺フィルムベース上に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第一中間層用塗布液膜、緑感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜、第二中間層塗布液膜および青感性ハロゲン化銀乳剤層用塗布液膜を一回または複数回に分割して塗布し、セットし、そして乾燥して、前記フィルムベース上に、順に、赤感性ハロゲン化銀乳剤層、第一中間層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層、第二中間層および青感性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料を製造する製造方法であって、前記第一中間層用塗布液膜がキレート化剤を含有していることを特徴とする前記製造方法。
【請求項6】
前記キレート化剤が下記一般式(I)で表されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
一般式(I)
【化4】


式中、
およびLはアルキレン基または置換アルキレン基を表す。
Yは、−O−または下記一般式(II)で示される基を表す。
一般式(II)
【化5】


mは0または1の整数を表す。
Xはカルボキシル基、そのアルカリ金属塩基、ホスホノ基、そのアルカリ金属塩基、スルホ基、そのアルカリ金属塩基、ヒドロキシ基または下記一般式(III)で示される基を表す。
一般式(III)
【化6】


、A、A、AおよびAは各々独立してカルボキシル基、そのアルカリ金属塩基、ホスホノ基、そのアルカリ金属塩基、スルホ基、そのアルカリ金属塩基またはヒドロキシ基を表す。
、L、L、LおよびLは各々独立してアルキレン基を表す。
【請求項7】
前記キレート化剤がEDTAまたはNTAであることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記キレート化剤の含有量が1.0×10−8mol/m〜2.0×10−3mol/mであることを特徴とする請求項5〜請求項7の何れか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−134175(P2010−134175A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309755(P2008−309755)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】