説明

ハロゲン含有エラストマー加硫用組成物

【課題】ハロゲン含有エラストマー加硫用組成物、および当該加硫用組成物を加硫してなる加硫ゴム材料の提供。
【解決手段】(A)ハロゲン含有エラストマー、(B)下記式(I)で表される4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体、並びに(C)水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウムを含むことを特徴とする加硫用ゴム組成物。
【化1】


[R1〜R8 はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン含有エラストマー加硫用組成物、およびその加硫ゴム材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハロゲン含有エラストマーは、加硫されることにより耐熱性などの諸物性に優れた材料として広汎に用いられている。
【0003】
しかしながら、該ポリマー中の加硫点である炭素-ハロゲン結合が幾分、化学的に安定であるため、従来から使用されている加硫系(加硫剤と受酸剤の組合せを意味する。以下同じ。)では容易、有効にこれを加硫することは比較的困難とされてきた。
【0004】
これに対し、ハロゲン含有エラストマーを加硫するための有効な加硫剤として、従来よりエチレンチオウレアが用いられてきた(非特許文献1、2)が、発がん性や催奇性が疑われ、安全面で問題があることから、近年その使用については縮小傾向にある。
【非特許文献1】S.L.Graham et al.,Bull.Environ.Contam.Toxicol.,7,19(1972)
【非特許文献2】寺本昭二、他、毒性研究会報,3,22(1974)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、ハロゲン含有エラストマーを容易、有効かつ安全に加硫することができる加硫系を有するハロゲン含有エラストマー組成物を提供すること、および当該組成物を加硫してなる耐熱性などの諸物性に優れた加硫ゴム材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は種々検討の結果、ハロゲン含有エラストマー(A)、下記一般式(I)で表される4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体(B)、並びに水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウム(C)を含有することを特徴とする加硫用ゴム組成物が上述の目的を達成することを見出し本発明を完成したものである。
【0007】
【化1】

[R1〜R8 はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を意味する。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の加硫用組成物によれば、ハロゲン含有エラストマーの加硫を容易、有効かつ安全に行うことができ、耐熱性などの諸物性に優れた加硫ゴム材料を提供することができる。また、本発明の加硫ゴム材料は、電子写真機器や自動車用途等の当該諸物性が要求される各種ゴム部材やゴム製品に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
はじめにハロゲン含有エラストマー(A)について説明する。
本発明の組成物の主体を成すハロゲン含有エラストマー(A)は、ハロゲン含有モノマーを主たる構成要素としている重合体、重合体主鎖にハロゲンが結合している重合体、架橋点として少量のハロゲンを含有している重合体が挙げられる。
ハロゲン含有モノマーを主たる構成要素としている重合体としては、エピクロルヒドリン系ゴム、ポリクロロプレン、フッ素ゴム等が挙げられ、重合体主鎖にハロゲンが結合している重合体としては、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、クロルスルホン化ポリエチレン等が挙げられ、架橋点として少量のハロゲンを含有している重合体としては、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、含塩素モノマーを共重合したアクリルゴム等が挙げられる。
【0010】
これらの重合体は、公知の各種モノマーから公知の手段にて重合して製造することもできるが、いずれも市販品であってよく、特に制約はない。
【0011】
上記ハロゲン含有エラストマー(A)のうちエピクロルヒドリン系ゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体が挙げられる。中でも、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が好適である。
【0012】
ハロゲン含有エラストマー(A)がエピクロルヒドリン系ゴムである場合のその成分組成は、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体では、エピクロルヒドリン成分が5mol%〜80mol%、エチレンオキサイド成分が20mol%〜95mol%、好ましくはエピクロルヒドリン成分が30mol%〜60mol%、エチレンオキサイド成分が40mol%〜70mol%であり、またエピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体では、エピクロルヒドリン成分が85mol%〜99mol%、アリルグリシジルエーテル成分が1mol%〜15mol%、好ましくはエピクロルヒドリン成分が90mol%〜98mol%、アリルグリシジルエーテル成分が2mol%〜10mol%であり、またエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体では、エピクロルヒドリン成分が5mol%〜75mol%、エチレンオキサイド成分が20mol%〜90mol%、アリルグリシジルエーテル成分が1mol%〜10mol%、好ましくはエピクロルヒドリン成分が10mol%〜65mol%、エチレンオキサイド成分が30mol%〜85mol%、アリルグリシジルエーテル成分が2mol%〜8mol%であるものが用いられる。
【0013】
上記、重合体ゴムの製造方法としては公知の重合法を採用できる。特に本出願人の米国特許第3,773,694号明細書に記載の有機錫−リン酸エステル縮合物を重合触媒とする方法は、重合物が高収率で得られるので好ましい。即ち、上記触媒の存在下で脂肪族又は芳香族炭化水素を溶媒として重合温度10〜70℃で5〜15時間重合させることにより、重合収率90%以上で製品を得ることができる。これ等の共重合体ゴムの分子量範囲は100℃におけるムーニー粘度表示で30〜200のものが好ましく用いられる。
【0014】
次に、4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体(B)について説明する。
本発明に用いられる一般式(I)で表される4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体(B)としては、例えば、4,4’-チオビスベンゼンチオール、2-メチル-4,4’-チオビスベンゼンチオール、3-メチル-4,4’-チオビスベンゼンチオール、2,2’-ジメチル-4,4’-チオビスベンゼンチオール、3,3’-ジメチル-4,4’-チオビスベンゼンチオール等が挙げられる。
ここで、一般式(I)中、R1〜R8 は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基と定義されるが、本発明の技術的範囲を解釈する上で、いわゆる均等物(例えば、当該アルキル基の一部に水素以外の原子や官能基が存在する場合)を積極的に排除するものではない。
4,4’-チオビスベンゼンチオールが好ましい。
【0015】
例えば、4,4’-チオビスベンゼンチオールは、従来、耐熱性や耐薬品性に優れる高機能性エンジニアリングプラスチック用材料や高屈折プラスチックレンズを製造する際の原料として有用な化合物であり、様々な合成法が公知(特開平3−014557、特開平4−257558号、特開平4−264064号、特開平6−032773号)であり、これらに基づき容易に製造が可能である。また、市販品を使用してよい。
【0016】
4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体(B)の配合割合は、ハロゲン含有エラストマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であってよく、好ましくは0.5〜5重量部が用いられる。
【0017】
また、ハロゲン含有エラストマーの公知の加硫剤を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体(B)との組み合わせで用いてもよい。このようなハロゲン含有エラストマーの加硫剤としては、例えば、ポリアミン類(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、チオウレア類(エチレンチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア等)、チアジアゾール類(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等)、メルカプトトリアジン類(2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン等)、ピラジン類(ピラジン-2,3-ジチオカーボネート等)、キノキサリン類(6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート等)、有機過酸化物(tert−ブチルヒドロパーオキサイド等)、硫黄、モルホリンポリスルフィド類(モルホリンジスルフィド等)、チオラムポリスルフィド類(テトラメチルチウラムジスルフィド等)などが挙げられる。これらの加硫剤は単独であるいは2種以上併用して用いることができる。
【0018】
次に、水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウム(C)について説明する。
本発明で使用する水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウム(C)は、ハロゲン含有エラストマーを加硫する際に発生するハロゲン類を吸収すべく使用される、いわゆる受酸剤として機能するものである。
受酸剤(C)としては、水酸化カルシウムまたは炭酸ナトリウムをそれぞれ単独で使用してもよく、また水酸化カルシウムと炭酸ナトリウムを一緒に併用してもよい。
【0019】
受酸剤(C)の配合量は、ハロゲン含有エラストマー100重量部に対して、0.2〜20重量部であってよく、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0020】
また、ハロゲン含有エラストマーの公知の受酸剤を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、水酸化カルシウムまたは/および炭酸ナトリウムからなる受酸剤(C)との組み合わせで用いてもよい。ただし、公知の受酸剤は、本発明に用いられる4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体(B)以外の公知の加硫剤を併用した時に用いるのが好ましい。
【0021】
公知の受酸剤としては、周期表第II族金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表第IV族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸鉛等、および下記一般式(II)で示される合成ハイドロタルサイト、および一般式(III)で示されるLi-Al系包接化合物が挙げられる。
【0022】
【化2】

[式中、xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す。]
【0023】
【化3】

[式中、Xは無機または有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは0〜3の実数を表す。]
【0024】
公知の受酸剤の具体的な例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜リン酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛を挙げることができる。
【0025】
また、公知の促進剤(加硫促進剤)および遅延剤を本発明における加硫ゴム用組成物に添加することもできる。
加硫促進剤の例としては、塩基性シリカ、1級、2級、3級アミン(n−ヘキシルアミン、オクチルアミン等)、該アミンの有機酸塩およびその付加物(n−ブチルアミン・酢酸塩等)、アルデヒドアンモニア系促進剤(ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドとアンモニアの反応生成物等)、アルデヒドアミン系促進剤(アニリンとブチルアルデヒドの縮合物等)、グアニジン系促進剤(ジフェニルグアニジン等)、チアゾール系促進剤(2―メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等)、スルフェンアミド系促進剤(N−エチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等)、チウラム系促進剤(テトラメチルチウラムジスルフィド等)、ジチオカルバミン酸系促進剤(ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等)、1、8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7及びその弱酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7およびその弱酸塩、第4級アンモニウム化合物等を挙げることができる。
また、遅延剤としては、酸性シリカ、N−シクロヘキシルチオフタルイミド、ジ−(O−ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、無水フタル酸等を挙げることができる。
これらの加硫促進剤および遅延剤は単独で用いてもよいし、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。加硫促進剤または遅延剤の量は、ハロゲン含有エラストマー100重量部に対してそれぞれ0〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0026】
また、本発明の加硫用ゴム組成物は、当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば滑剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、発泡剤等を任意に配合できる。
【0027】
更に、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当該技術分野で通常行われているゴム、樹脂等とのブレンドを行うことも可能である。本発明に用いられるゴムを例示すれば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等が挙げられ、また樹脂を例示すれば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PUR(ポリウレタン)樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂、EVA(エチレン/酢酸ビニル)樹脂、AS(スチレン/アクリロニトリル)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂等が挙げられる。
【0028】
ところで、本発明の加硫用ゴム組成物に導電性を付与させる場合は、導電付与剤として、カーボンブラックなどの電子伝導性粒子やアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの金属塩、またはカチオン種が一般式(IV)
【化4】

[式中、R9、R10、R11およびR12はそれぞれ同一または異なって、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、または主鎖がポリオキシエチレン鎖もしくはポリオキシプロピレン鎖で末端にアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基もしくは水酸基を有する基である。]
で表され、アニオン種が過塩素酸イオンのような無機酸イオン、または、塩化物イオンのようなハロゲンイオンなどを有した第四級アンモニウム塩などを任意に添加してよい。
【0029】
これら導電付与剤となる塩において、カチオン種としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Caや遷移金属であるFe、Cu、Zn及びAg金属の陽イオンや、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の第四級アンモニウムイオン、トリエチルメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム等のホスホニウムイオンが挙げられる。また、アニオン種としては、例えば、塩素イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6−、PF6−、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられ、これら任意の組み合わせから選ばれた化合物が導電付与剤として挙げられる。
【0030】
導電付与剤の量は、ハロゲン含有エラストマー100重量部に対して0〜10重量部であってよく、例えば0〜5重量部である。
【0031】
本発明の組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用することができる。
【0032】
その配合手順としては、ポリマー加工の分野において行われている通常の手順で行うことができる。例えば、最初にポリマーのみを混練りし、次いで加硫剤、加硫促進剤以外の配合剤を投入したA練りコンパウンドを作成し、その後、加硫剤、加硫促進剤を投入するB練りを行う手順で行うことができる。
【0033】
本発明の組成物は、通常100〜250℃に加熱することで加硫物、すなわち加硫ゴム材料とすることができる。加硫時間は温度によって異なるが、0.5〜300分の間で行われるのが普通である。加硫成型は加硫と成型を一体的に行う場合や、先に成型した加硫用組成物に改めて加熱することで加硫物とする場合のほか、先に加熱して加硫物とした加硫ゴム材料を成型のために加工を施す場合のいずれでもよい。加硫成型の具体的な方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0034】
本発明における電子写真用プロセスに用いられる半導電ゴム部材とは、コピー機、プリンター等に用いられる帯電、現像、転写などの半導電ゴムロールおよび半導電性無端ベルト等を意味する。
【0035】
また、本発明における自動車用途に用いられる押し出し加硫製品および型加硫製品とは、燃料ホース、フィラーネックホース、ベントホース、ベーパーホース等の燃料タンクまわりの燃料油系ホース、エミッションコントロールホース、PCVホース等のエアー系ホース等を意味する。
【実施例】
【0036】
本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜6、比較例1〜6]
表1−1、表2−1に示す各材料をニーダーおよびオープンロールで混練し、未加硫ゴムシートを作製した。
(1)得られた未加硫ゴムシートを用い、JIS K6300に定めるムーニースコーチ試験を行った。
(2)同じく得られた未加硫ゴムシートの加硫曲線をJSRキュラストメーターIII型を用いて170℃で15分測定した。
(3)同じく得られた未加硫ゴムシートを170℃で15分プレス加硫し、2mm厚の一次加硫物を得た。得られた加硫物を用い、引張試験(常態物性)の評価を行った。各評価試験は順にJIS K 6251に記載の方法に準じて行った。
(4)上記一次加硫物を用い、JIS K 6257に記載の空気加熱老化試験(ノーマルオーブン法)に準じて耐熱老化試験を行った。
(5)得られた上記未加硫ゴムシートを試験片作製用金型を用いて170℃で20分プレス加硫し、直径約29mm、高さ約12.5mmの円柱状試験片一次加硫物を得た。得られた加硫物を用い、JIS K 6262記載の方法に準じて圧縮永久歪試験を行った。
【0037】
各試験方法より得られた実施例および比較例の試験結果を表1−2、表2−2に示す。
各表中、Vmは最低粘度、tはJIS K6300のムーニースコーチ試験に定めるムーニースコーチ時間、M100はJIS K6251の引張試験に定める100%伸び時の引張応力、TbはJIS K6251の引張試験に定める引張強さ、EbはJIS K6251の引張試験に定める伸び、HsはJIS K6253の硬さ試験に定める硬さをそれぞれ意味する。
また、実施例1〜6および比較例1〜5について、未加硫ゴムシートの加硫曲線を図1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
各実施例と比較例1〜5との比較により、一般式(I)で表される4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体(B)に対して水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウム(C)を受酸剤として用いることにより、ハロゲン含有エラストマーを容易に、かつ有効に加硫することが可能であり、その加硫物は優れた耐熱老化性などの諸物性を示していることがわかる。また、(B)成分の4,4’-チオビスベンゼンチオールの代わりとしてエチレンチオウレアを用いた比較例6よりも圧縮永久歪率は優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の加硫ゴム材料は、ハロゲン含有エラストマーの優れた耐熱性、耐油性、耐候性、耐オゾン性、耐磨耗性を活かしたゴム製品や樹脂製品の材料として或いは接着剤原料や塗料原料として幅広く用いることが可能である。特に、エピクロルヒドリン系ゴム材料では、燃料系ホースやエアー系ホース、チューブ材料などの自動車用途や、半導電性ローラー、ベルト、ドラム等のOA機器用途として極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】未加硫ゴムシートの加硫曲線を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ハロゲン含有エラストマー、(B)下記式(I)で表される4,4’-チオビスベンゼンチオール誘導体、並びに(C)水酸化カルシウムおよび/または炭酸ナトリウムを含むことを特徴とする加硫用ゴム組成物。
【化1】

[R1〜R8 はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。]
【請求項2】
(A)ハロゲン含有エラストマーが、エピクロルヒドリン系ゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン、クロルスルホン化ポリエチレン、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、フッ素ゴム、および含塩素モノマーを共重合したアクリルゴムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることを特徴とする請求項1に記載の加硫用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加硫用ゴム組成物を加硫してなる加硫ゴム材料。
【請求項4】
請求項1または2に記載の加硫用ゴム組成物を成型および加硫してなる、電子写真用プロセスに用いられる半導電ゴム部材。
【請求項5】
請求項1または2に記載の加硫用ゴム組成物を成型および加硫してなる、自動車用途に用いられる押出加硫製品または型加硫製品。


【図1】
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【公開番号】特開2007−31700(P2007−31700A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169781(P2006−169781)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】