説明

ハロゲン非含有の難燃剤組成物及び難燃性ポリアミド組成物

【課題】ハロゲン非含有の難燃剤組成物及び難燃性ポリアミド組成物
の提供。
【解決手段】本発明は、熱可塑性組成物、特にガラス繊維強化ポリアミド組成物中に使用するための、ハロゲン非含有の難燃剤組成物に関し、前記難燃剤組成物は、10ないし90質量%の、式(I)及び/または式(II)で表されるホスフィネート化合物及び/またはそのポリマー、及び90ないし10質量%の、式(III)で表され、かつ1,3,5−トリアジン化合物の含有量がリン原子1モル当たり1,3,5−トリアジン1.1モル以上である1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸塩、及び0ないし30質量%のオレフィンコポリマーを含む。ガラス繊維強化ポリアミド組成物中に難燃剤として使用した場合、ハロゲン非含有の難燃剤組成物は、アンダーライター実験室のUL94試験に従ったV−0等級の組み合わせ及び良好な機械的性質を生じた。よって本発明はまた、ポリアミド組成物中の難燃剤としてのこの難燃剤組成物の使用、及び前記難燃剤組成物を含む難燃性ポリアミド組成物にも関する。本発明はまた、前記難燃性ポリアミド組成物を含む成形品及び、電気及び電子用途の分野におけるそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン非含有の、難燃剤組成物に関する。本発明はまた、熱可塑性組成物、特にガラス繊維強化ポリアミド組成物中の難燃剤としてのこの難燃剤組成物の使用、及び前記難燃剤組成物を含む難燃性ポリアミド組成物にも関する。本発明はまた、前記難燃性ポリアミド組成物を含む成形品及び、電気及び電子用途の分野におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
このような難燃剤組成物は、とりわけ国際公開第9739053号パンフレットから既知である。上記パンフレットは、熱可塑性、特にポリエステルのための難燃剤組成物、及び該組成物が金属ホスフィネート及び窒素化合物を含むことを記載している。また非強化難燃性ポリアミド組成物が、メチルエチルホスフィン酸のアルミニウム塩及びメラミンシアヌレートまたはメラミン燐酸を含むことを記載している。
【0003】
既知の難燃剤組成物の欠点は、ガラス繊維強化ポリアミド組成物中に使用された場合、それらは、アンダーライター実験室のUL(アンダーライター実験室)94またはUL(アンダーライター実験室)756A試験に従った、所望の難燃性の組み合わせ及び良好な機械的性質をもたらさない。
【特許文献1】国際公開第9739053号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、本発明の主題は、上記欠点を有しない、または少なくとも、上記欠点の大部分が解消された、ポリアミド組成物、特にガラス繊維強化ポリアミド組成物のためのハロゲン非含有の難燃剤組成物の必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者達は、熱可塑性組成物中に使用される、ハロゲン非含有の、難燃剤組成物であって、前記難燃剤組成物は、少なくとも
(a)10ないし90質量%の、式(I)及び/または式(II)
【化1】

(式中、
1、R2は、水素原子、直鎖のまたは枝分かれした炭素原子数1ないし6のアルキル基、またはフェニル基を表し;
3は、直鎖のまたは枝分かれした炭素原子数1ないし10のアルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、またはアリールアルキレン基を表し;
Mは、アルカリ土類金属、またはアルカリ金属、Al、Zn、Feまたは1,3,5−トリアジン化合物を表し;
mは、1、2または3を表し;
nは、1または3を表し;
xは1または2を表す)で表されるホスフィネート化合物及び/またはそのポリマー、
(b)90ないし10質量%の、式(III)
【化2】

(式中、Tは、1,3,5−トリアジン化合物を表し;及び
nは、数平均縮合度の値であって、そして3よりも大きい。)で表される1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸塩であって、1,3,5−トリアジン化合物の含有量が、リン原子1モル当たり1,3,5−トリアジン1.1モル以上である1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸塩、及び
(c)0ないし30質量%のオレフィンコポリマー
を含み、成分a)ないしc)の合計が100%になる組成物が、この要求を満たすことを発見した。
【0006】
成分(c)は、下記されるような任意の相乗成分である。
【0007】
ガラス繊維強化ポリアミド組成物中に難燃剤として使用した場合、ハロゲン非含有の難燃剤組成物は、アンダーライター実験室のUL(アンダーライター実験室)94試験に従った所望のV−0等級の組み合わせ及び良好な機械的性質を生じさせることを可能にする。
【0008】
1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸はまた、下記でメラミンポリ燐酸としても引用される。
【0009】
メラミンポリ燐酸を含む、金属ホスフィネート及び窒素化合物を含む難燃性ポリエステル組成物は、国際公開第9957187号パンフレットから既知である。ポリマー組成物のための難燃剤中の成分としてのメラミンポリ燐酸の使用はまた、国際公開第0002869号パンフレット中にも記載されているが、しかしこのパンフレットにもホスフィネート化合物との組み合わせについては全く示唆されていない。国際公開第0009606号パンフレット中に、ポリエステル及びポリアミド組成物中での、アルカリ土類金属塩との組み合わせにおけるメラミン燐酸の使用が開示されているが、このパンフレットには、上記ホスフィネート化合物の使用については記載されていない。
【0010】
nが大きい場合、メラミンポリ燐酸は、式(THPO3nとしてもまた表され得る。もしもT/P(トリアジン/燐)比が、約1ならば、理論上、構造は直鎖構造をしている。もしもT/Pが、1よりも小さいならば、生成物は架橋されている。T/P<0.4の場合、網状構造が形成されている。数平均縮合度nが20よりも大きい、より好ましくはnが40より大きいメラミンポリ燐酸から製造されるものの使用が好ましい。これの利点は、前記難燃剤組成物を含むポリアミド組成物から製造された成形品が、より少ないブルーミングを示すということである。1,3,5−トリアジンの含有量は、リン原子1モル当たり1,3,5−トリアジン1.1モル以上であり、好ましくは、リン原子1モル当たり1,3,5−トリアジン1.2モル以上である。数平均縮合度nは、一般的には200以下であり得、特にnは、150以下である。1,3,5−トリアジンの含有量は、一般的に、リン原子1モル当たり1,3,5−トリアジン1.1モルないし2モルであり、好ましくは、リン原子1モル当たり1,3,5−トリアジン1.1モルないし1.8モルである。このようなメラミンポリ燐酸の利点は、例えば、高温において加工されるポリマー組成物中に、それを使用できるということである。このようなポリマー組成物は優れた熱安定性を有する。このようなメラミンポリ燐酸及びその製造については、国際公開第000
2869号パンフレット中に記載されている。
【0011】
1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸中の適当な1,3,5−トリアジン化合物の例は、2,4,6−トリアミン−1,3,5−トリアジン(メラミン)、メラム、メレム、メロン、アンメリン、アンメリド、2−ウレイドメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ジアミンフェニルトリアジン、またはそれらの混合物である。メラミン、メラム、メレム、メロン、またはそれらの混合物が好ましく、そしてさらに、とりわけメラミンが好ましい。
【0012】
ホスフィネート化合物は、ここでは式(I)及び式(II)で表される化合物、並びにそのポリマーであると理解される。本発明に従った難燃剤組成物は、好ましくは、R1及びR2が直鎖または枝分かれした炭素原子数1ないし6のアルキル基、またはフェニル基を表すホスフィネート化合物を含む。これの利点は、化合物のより良好な安定性である。
【0013】
本発明の難燃剤化合物は、好ましくは、Ca、Al、またはZnのホスフィネート化合物を含む。これの利点は、難燃性ポリアミド組成物の製造及び加工の間、ポリアミド組成物中でより少しポリマー分解が起こることである。より好ましくは、難燃剤組成物は、亜鉛ホスフィネート化合物を含み、それはこの難燃剤を含むガラス繊維強化ポリアミド組成物が、難燃性と合わせて、より良好な靱性、例えば破断に対する高い伸び率を示すためである。欧州特許出願公開第0792912号パンフレットは、特にポリアミド組成物中において、亜鉛ホスフィネート化合物は、良好な難燃剤活性を有しないということを示唆しているので、ポリアミド亜鉛ホスフィネート化合物で得られた良好な結果は驚くべきである。本発明に従った難燃剤組成物中のホスフィネート化合物中の適当な1,3,5−トリアジン化合物の例は、2,4,6−トリアミン−1,3,5−トリアジン(メラミン)、メラム、メレム、メロン、アンメリン、アンメリド、2−ウレイドメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ジアミンフェニルトリアジン、またはそれらの混合物である。メラミン、メラム、メレム、メロン、またはそれらの混合物が好ましく、そしてさらに、とりわけメラミン及び/またはメラムが好ましい。
【0014】
ホスフィネート化合物は既知の方法を用いて、例えば、とりわけ欧州特許出願公開第0699708号明細書中に記載されているように、金属塩とホスフィン酸を水溶液中で反応させることによって生成され得る。トリアジンホスフィネートの生成は、国際公開第0157051号パンフレット中に記載されている。適当なホスフィン酸の例は、ジメチルホスフィン酸、エチル−メチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタン−ジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチル−フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸である。
【0015】
本発明に従った難燃剤組成物は、好ましくは、25ないし75質量%のホスフィネート化合物及び75ないし25質量%の1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸塩を含む。より好ましくは、本発明に従った難燃剤組成物が、ホスフィネート化合物及び1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸塩を、1.0より小さい質量比で、より好ましくは0.9より小さい質量比で、さらにより好ましくは、0.8より小さい質量比で含む。これの利点は、難燃性及び機械的性質の間の平衡におけるさらなる改良、特に靭性が、特異的に、ポリアミド組成物中で得られるということである。上記質量比は、良好な防火挙動を保持するために、好ましくは0.33よりも大きく、より好ましくは0.5よりも大きい。最も好ましくは、本難燃剤を含むガラス繊維強化ポリアミド組成物が、ホットワイヤー発火試験における高速PLC等級においても、防火挙動及び機械的性質の間に良好な平衡を示す約2/3の比が選択される。
【0016】
本発明に従った難燃剤組成物はまた、0ないし30質量%のオレフィンコポリマーを含
む。オレフィンコポリマーは、ここでは2ないし12個の炭素原子を有する少なくとも1つのオレフィン、及び酸、酸無水物、またはエポキシ基を含む0.1ないし30質量%(高分子化合物の重量に基づいて計算。)の化合物を少なくとも1つに基づく高分子化合物であると理解される。これは難燃剤組成物が熱可塑性組成物に使用された場合、より良い靭性、例えば破断点伸びだけではなく、驚くべきことにより良い難燃性を生じるという利点を有する。より良い難燃性は、例えばUL94試験における有炎燃焼時間の短縮という形で現れ、それによりより良い等級が、同濃度のホスフィネート化合物及びメラミンポリ燐酸において得られ、また低濃度の難燃性組成物から製造されたものの使用が可能である。本来、そのような高分子化合物自体が、難燃性として既知でないため、オレフィンコポリマーのこの効果は驚くべきである。酸、酸無水物、またはエポキシ基を含む、0.1ないし30質量%(高分子化合物の重量に基づいて計算。)のコモノマーを有するエチレン、プロピレン、またはエチレン−プロピレンのコポリマーが、適当なオレフィンコポリマーとして考えられ得る。上記コポリマーは、上記の基を含まないコモノマー、例えば、アクリルエステル、または酢酸ビニルもまた含み得る。好ましくは前記コポリマーは、酸、酸無水物、またはエポキシ基を含む、0.5ないし12質量%(コポリマーの質量に基づいて計算。)の化合物を含む。このような化合物の例は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、グリシジルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートがある。好ましくは、コポリマーは、酸または酸無水物の基を含む。これは、これらの基が例えば、ポリアミド組成物中のポリアミドの末端アミン基と反応し得るという利点を有する。市販で入手できる適当なオレフィンコポリマーの例は、プロピレン/無水マレイン酸(ハイモント(Himont))、プロピレン/アクリル酸(ポリボンド(登録商標:Polybond)、BPケミカル)、及び無水マレイン酸変性エチレン/α−オレフィンコポリマー(タフマー(登録商標:Tafmer)、ミツイ)がある。0.5質量%のマレイン酸無水物を用いて変性されたエチレン−プロピレンコポリマー(タフマー(登録商標:Tafmer)、ミツイ)を用いて良好な結果を得た。
【0017】
本発明はまた、熱可塑性組成物中の難燃剤としての本発明の難燃剤組成物の使用にも関する。熱可塑性ポリマーとしては、様々な種類のポリマーが使用され得る。本発明の難燃剤組成物は、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリウレタン、及びそれらの配合物(ブレンド)のような熱耐性難燃剤を必要とするポリマーにとって特に好都合である。より好ましくは、本発明の難燃剤組成物は、ガラス繊維強化ポリアミド組成物中に使用される。
【0018】
本発明は、さらに特異的に、以下の成分
a)95ないし10質量%のポリアミド、
b)0ないし50質量%のガラス繊維、
c)5ないし40質量%の、本発明の難燃剤組成物、及び
d)0ないし50質量%の他の添加剤
を含み、成分a)ないしd)の合計が100質量%になる難燃性ポリアミド組成物に関する。
【0019】
好ましくは、難燃性ポリアミド組成物は、10ないし40質量%のガラス繊維を含む。既知のポリアミド組成物に対して、本組成物の利点は、本発明の組成物が、例えば、UL94に従ったV−0等級の他に、例えば、ISO527−1に従った引張試験で測定された良好な機械的性質、特に高い破壊強さ及び高い破断点伸びもまた示すということである。
【0020】
良好な結果は、特に、10ないし35質量%の難燃剤組成物を含む本発明の難燃性ポリアミド組成物で得られた。好ましくはポリアミド組成物は、15ないし30質量%の難燃剤組成物を含む。最も適当な濃度は、ポリアミド組成物中の他の成分の性質及び濃度に特
に依存し、そして本質的には、当業者によって、経験的に決定され得る。好ましくはポリアミド組成物は、総組成物に基づき、メラミンポリ燐酸の含有量が、10質量%以上、より好ましくは12質量%以上であるような量の難燃剤組成物を含む。
【0021】
適当なポリアミドの例は、ジアミン及びジカルボン酸から、及び/またはアミノカルボン酸から誘導されたポリアミド及びコポリアミド、またはポリアミド4(PA4)、PA6、PA66、PA6.10、PA6.9、PA6.12、PA46、PA66/6、PA6/66、PA11、PA12のような脂肪族ポリアミド、及びPA6/6T、PA66/6T、PA6/66/6T、PA66/6I/6Tのような半芳香族ポリアミドを含む、相当するラクタム、及びそれらの混合物である。好ましくはポリアミド6、PA66、またはPA46が選択される。適当なポリアミドは、(90%蟻酸中に1%溶液で、25℃において測定した場合、)1.9ないし3.0、好ましくは2.0ないし2.7、及び最も好ましくは2.0ないし2.4の相対溶液粘度を有する。本発明の難燃性ポリアミド組成物中のポリアミドは、特にポリアミド6である。今までは、既知のハロゲン非含有の難燃剤を使用し、UL94に従ったV−0等級、またはHWI試験におけるPLC0等級の他に、このような良好な機械的性質を有するような、ポリアミド組成物である、ポリアミド6を基礎とするガラス繊維強化ポリアミド組成物を使用することはできなかった。
【0022】
本発明のポリアミド組成物は、一般的に5ないし50質量%の、好ましくは10ないし40質量%の、及び最も好ましくは20ないし35質量%のガラス繊維を含む。適当なガラス繊維は、市販で入手することができ、そして一般的には5ないし20μmの直径、3ないし10mmの切断長さを有し、そして通常、シラン化合物を含む塗料で被覆されている。
【0023】
本発明のポリアミド組成物はまた、本質的に本発明をそこなうことなく、従来技術で既知の他の添加剤を30質量%まで含み得る。このような添加剤の例として、着色剤、加工助剤、例えば、剥離剤、核剤、UV(紫外線)安定剤及び熱安定剤、及び他の無機補強剤及び、珪灰石、(焼成された)クレー、タルク、雲母、ガラス球等のような充填剤がある。適当な加工助剤の例は、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム及びビスエチレンステアロアミドがある。適当な安定剤の例は、イルガノックス(登録商標:Irganox)1098、B1171、及びCul/KI併用がある。所望によりポリアミド組成物は、滴下性質に影響を及ぼす助剤物質、例えば、ポリテトラフルオロエチレンのようなフルオロポリマーもまた含む。
【0024】
難燃性ポリアミド組成物は好ましくは、オレフィンコポリマー、特に無水マレイン酸変性エチレン/α−オレフィンコポリマーをも含む本発明の難燃剤組成物を含む。より好ましくは、本発明の難燃性ポリアミド組成物は、1ないし5質量%のオレフィンコポリマーを含む。これは、防火挙動及び機械的性質の両方を更に改善するという利点を有する。
【0025】
本発明のポリアミド組成物は、従来技術で既知の方法、溶融液中で混合することによって生成され得る。このため、全ての所望の成分を押出機へ、押出機のスロート中かまたは溶融液へ定量しながら供給する装置を備えた押出機、特に二軸スクリュー押出機が使用される。
【0026】
本発明はまた、本発明の難燃性ポリアミド組成物を含む成形品にも関する。成形品の適当な製造方法は、射出成形及び押出成形である。
【0027】
本発明はまた、このようにして得られた成形品を、例えば電気及び電子用途の分野中で使用することにも関する。このような適用例には、様々な外被、コンデンサー、開閉器、プラグ、コネクター等がある。
【0028】
本発明を、下記の実施例及び比較実験に基づいて、詳細に説明する。
【実施例】
【0029】
実施例;
使用材料:
【表1】

実施例I及び比較実験A及びB
ポリアミド組成物は、成分を、ハァケ ニーダー(Haake kneader)または実験室用の中型の押出機(自己作製)上で、約260℃で混合することによって生成された。UL94試験のための試験片は、約260℃でプレスされたシートから2mmの厚さで切り取られるか、または約260℃でのポリアミド組成物の射出成形によって得られる。
これらの組成物の防火挙動は、2mmの厚さの試験片上で、UL94に従って試験された。UL94に従った等級は、V−0及びNC(等級なし)によって示された。
表1は実施例I及び比較実験A及びBの組成及び性質を示す。
【表2】

【0030】
実施例II−V
ポリアミド組成物は、表2に列挙した成分を混合し、温度250℃、スクリュー速度250rpm、約12kg/時間の押出量に設定されたW&P ZSK30 二軸スクリュー押出機上で生成された。ガラス繊維は、サイドフィーダーを経て供給され、他の成分は、押出機のスロートへ供給される。測定された溶融温度は、300ないし310℃の範囲内だった。
得られた物質は、エンゲル(Engel)80Aを用いて、235ないし245℃のシリンダー温度(ホッパーからノズルまで)及び85℃の成形温度で様々な試験片中へ射出成形した。
引張性質は、ISO527−1に従った引張試験で測定した。
防火挙動を、厚さ0.8及び1.6mmに成形された試験片上でUL94に従って評価した。得られた試験結果は、分級され(V−0、V−1またはV−2)、V−0を与えられた試験片の数を(%として)示し、着火時間後の第一及び第二時間を(t1及びt2として)示した。
グローワイヤー試験を、1.0及び1.6mmの試験片上でIEC695−1に従って行った。1mmのワイヤーにおいて、グローワイヤー発火温度(GWIT)及びグローワイヤー燃焼指数(GWFI)が示されている。ホットワイヤー発火耐性(HWI)を、0.8*125*12.5mmの試験片上で、UL746A(ASTM D3874)に従って測定した。結果は、性能レベル分類(PLC)として報告された。PLC0は120秒の接触時間の間に、発火しなかったことを意味し、PLC1は、60ないし120秒の接触時間後、発火したことを示す。
表2に示した結果から、全ての試料が、好ましい防火挙動及び興味深い引張特性及び耐衝撃性を示し、大抵の適用における要求を満たすという結論に達し得る。ホスフィネート化合物とメラミンポリ燐酸の比が2/3である組成物、実施例IV及びVは、上記比が1またはそれ以上である実施例II及びIIIよりさらに良好な防火挙動を、他の関連した性質の低下なしに示した:特にHWI試験で確認したPLCの0級に注意。この点において、電気及び電子工業分野において、古典的なUL94試験よりも、GWIT及び特にHWI等級の重要性が、より高まってきているということに注目すべきである。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性組成物中に使用される、ハロゲン非含有の、難燃剤組成物であって、前記難燃剤組成物は、少なくとも
(a)10ないし90質量%の、式(I)及び/または式(II)
【化1】

(式中、
1、R2は、水素原子、直鎖のまたは枝分かれした炭素原子数1ないし6のアルキル基、またはフェニル基を表し;
3は、直鎖のまたは枝分かれした炭素原子数1ないし10のアルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、またはアリールアルキレン基を表し;
Mは、アルカリ土類金属、またはアルカリ金属、Al、Zn、Feまたは1,3,5−トリアジン化合物を表し;
mは、1、2または3を表し;
nは、1または3を表し;
xは1または2を表す)で表されるホスフィネート化合物及び/またはそのポリマー、
(b)90ないし10質量%の、式(III)
【化2】

(式中、Tは、1,3,5−トリアジン化合物を表し;及び
nは、数平均縮合度の値であって、そして3よりも大きい。)で表される1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸塩であって、1,3,5−トリアジン化合物の含有量が、リン原子1モル当たり1,3,5−トリアジン1.1モル以上である1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸塩、及び
(c)0ないし30質量%のオレフィンコポリマー
を含み、成分a)ないしc)の合計が100%になる組成物。
【請求項2】
前記1,3,5−トリアジン化合物のポリ燐酸塩において、前記1,3,5−トリアジン化合物がメラミンを表す請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項3】
以下の成分
(a)95ないし10質量%のポリアミド、
(b)0ないし50質量%のガラス繊維、
(c)5ないし40質量%の、請求項1に記載の難燃剤組成物、及び
(d)0ないし50質量%の他の添加剤
を含み、成分a)ないしd)の合計が100質量%になる難燃性ポリアミド組成物。


【公開番号】特開2009−30067(P2009−30067A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237153(P2008−237153)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【分割の表示】特願2002−532530(P2002−532530)の分割
【原出願日】平成13年10月4日(2001.10.4)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】