説明

ハロブチルアイオノマーの製造方法

本発明は、溶液重合およびブチルゴムのその後の臭素化の両方のために共通媒体を使用するブチルアイオノマーのエネルギー効率の良い、環境上好ましい製造方法に関する。より具体的には、本発明は、溶液重合および臭素化剤の存在下でのブチルゴムの臭素化の両方のためにならびに任意選択的に少なくとも1つの窒素および/またはリンベースの求核試薬とのその後の反応のために共通脂肪族媒体を用いる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液重合およびブチルゴムのその後の臭素化の両方のために共通媒体を使用するブチルアイオノマーのエネルギー効率の良い、環境上好ましい製造方法に関する。より具体的には、本発明は、溶液重合および臭素化剤の存在下でのブチルゴムの臭素化の両方のためにならびに任意選択的に少なくとも1つの窒素および/またはリンベースの求核試薬とのその後の反応のために共通脂肪族媒体を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「ブチルゴム」は本明細書で用いるところでは一般に、別に定義されない場合、C〜Cイソオレフィン、C〜C14共役ジエンおよび任意選択的にその他の共重合性モノマーのコポリマーを意味し、それらを含む。用語「ブロモブチルゴム」は本明細書で用いるところでは一般に、別に定義されない場合、臭素化ブチルゴムを意味し、それらを含む。ブチルゴムの例示的なおよび好ましい例は、イソプレンおよびイソブチレンの共重合によって得られるゴムであり、それは本明細書においては以下IIRとも言われる。その臭素化類似体はまたBIIRとも言われる。
【0003】
ポリ(イソブチレン−コ−イソプレン)、またはIIRは、イソブチレンと少量のイソプレンとのランダムカチオン共重合によって1940年代以降製造されてきたブチルゴムとして一般に知られる合成エラストマーである。結果として生じる商業的に入手可能なIIRは、1〜2モル%のマルチオレフィン含有率を有する。その分子構造の結果として、IIRは、優れた空気不透過性、高い損失弾性率、酸化安定性および長期耐疲労性を有する((非特許文献1)を参照されたい)。
【0004】
窒素および/またはリンベースの求核試薬でのブロモブチルゴムの処理が、それらの初期イソプレン含有率にとりわけ依存する、興味深い物理的および化学的特性を持ったアイオノマーの生成につながることが示されている((特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(非特許文献2)、(非特許文献3)を参照されたい。
【0005】
ブチルアイオノマーを製造するために使用されるブロモブチルゴムは、従来法で典型的には製造される。
【0006】
ブロモブチルゴムの従来の製造方法においては、イソブチレンおよびイソプレンモノマーが、アルミニウムベースの開始系、典型的には三塩化アルミニウム(AlCl)かエチルアルミニウムジクロリド(EtAlCl)かのどちらかを使って塩化メチルなどの、極性ハロ炭化水素媒体中で先ず重合させられる。ブチルゴムは、この極性媒体にはほとんど溶解せず、懸濁粒子として存在し、だからこの方法はスラリー法と普通は言われる。残存モノマーおよび重合媒体は次に、それが臭素化媒体、典型的にはヘキサンなどの非極性媒体に溶解させられる前に、ブチルゴムから水蒸気蒸留される。臭素化プロセスは最終臭素化生成物を究極的には生成する。従来法はそれ故、2つの異なる媒体を用いる別個の重合および臭素化工程を用いる。重合のための極性媒体および臭素化のための非極性媒体の使用は、中間のストリッピングおよび溶解工程を必要とし、エネルギーの観点から非効率的である。
【0007】
ブチルポリマーからモノマーおよび塩化メチルを分離する工程は、臭素と残存モノマーとの反応からの高毒性副生物の形成を回避するために臭素化の前に行われる。この方法に使用される成分の標準沸点は、塩化メチル、−24℃;イソブチレン、−7℃;およびイソプレン、34℃である。残存モノマーのより重質物(イソプレン)を除去するあらゆるストリッピング法はまた、塩化メチルおよびイソブチレンの本質的にすべてを除去するであろう。未反応成分のすべてをゴムスラリーから除去するプロセスは、かなりの量のエネルギーを必要とする。臭素化モノマーのより大きい分子量(およびそれ故より高い沸点)はまた、臭素化プロセス後のこれら化学種の除去を不可能にする。
【0008】
ブチルゴムの重合のための溶液法は長年にわたって知られており、ロシアで商業的に実施されている。溶液法の例は、(特許文献5)に記載されており、それは、好ましい重合媒体としてのイソ−ペンタンの使用を開示している。上記方法を用いて製造されたポリマーはハロゲン化されていない。臭素化はイソ−ペンタン中で理論的には行われ得るだろうが、残存モノマー(イソブチレンおよびイソプレン)の存在は、臭素化中に前述の望ましくない副生物の形成をもたらすであろう。未反応モノマーの除去は、そのような方法にとって課題であり、まだ解決されていない。モノマーを蒸留によって除去することが望ましいであろうが、イソ−ペンタンの沸点(28℃)がより重質の残存イソプレンモノマーのそれ(34℃)より低く、それ故この種の分離は不可能である。たとえ純n−ペンタン(沸点36℃)が媒体として使用されたとしても、沸点の差は、蒸留技法を用いてイソプレンの効果的な除去を可能にするには不十分であろう。結果として、残存モノマーおよび媒体はすべて、ゴムが臭素化のためにその後再溶解させられる状態で、スラリー法におけるように、ブチルゴムから一緒にストリッッピングされなければならないであろう。これは、実際に、従来のスラリー法の臭素化よりもエネルギー集約型である。ブロモブチルゴムを製造するための共通媒体としてのイソ−ペンタンの使用はそれ故、従来の溶液法を用いると実用的ではない。
【0009】
ヘキサン、すなわちC6媒体を溶液法で重合媒体として使用することは当該技術分野において公知である。しかし、ポリマー溶液の粘度は、使用される媒体の粘度に強く依存する。C6媒体の粘度は、所与の分子量およびポリマー固形分レベルについて、C5媒体のそれよりはるかに高いので、ポリマー溶液の生じる粘度もまたはるかに高い。これは、C6が溶媒として使用されるときに、さもなければ溶液が良好な伝熱、ポンプ送液および取り扱いにとって余りにも粘稠になるので、ポリマー固形分を比較的低いレベルに制限する。プロセスの全体経済性は、重合反応器から出てくる溶液または懸濁液中のポリマー固形分のレベルに強く依存し;より高い固形分レベルは、より高い転化率および向上した経済性を意味する。商業目的のために十分に高い分子量を有する材料を製造するために、比較的低い温度、多くの場合−80℃未満を用いることがブチル重合において必要である。これらの低温は、高い溶液粘度の問題を悪化させ、さらにより低い固形分レベルにつながる。溶液法においては、ヘキサンを溶媒として使用するときに高い粘度のために所望の温度(分子量)で経済的な固形分レベル(転化率)を達成することは、それ故極めて困難である。
【0010】
(特許文献6)において、従来のスラリー重合法からの生成物が粗ゴム溶液またはセメントを生成するためにヘキサンと混合される方法が開示されている。ヘキサンは、塩化メチル/モノマー混合物中に依然として細分され、懸濁されている間にゴムをヘキサンに溶解させるために重合反応器を出た後に塩化メチル−ゴムスラリーに加えられる。蒸留プロセスが次に、リサイクル用の塩化メチルならびに残存イソブテンおよびイソプレンモノマーを除去するために用いられ、ゴムだけをハロゲン化の準備ができたヘキサン溶液に残す。このいわゆる「溶媒置き換え」法は、重合段階後にゴムとともに残された元の媒体のすべてが除去されることを依然として必要とする。エネルギー所要量は、従来法においてと本質的に同じものである。重合および臭素化の両方のための共通溶媒は全く用いられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 922 361 A号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 913 077 A号明細書
【特許文献3】米国特許第7,501,460号明細書
【特許文献4】米国特許第7,514,491号明細書
【特許文献5】カナダ特許第1,019,095号明細書
【特許文献6】米国特許第5,021,509号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Chu,C.Y.and Vukov,R.,Macromolecules,18,1423−1430,1985
【非特許文献2】Parent,J.S.;Liskova,A.;Whitney,R.A.;Parent,J.S.;Liskova,A.;Resendes,R.Polymer 45,8091−8096,2004
【非特許文献3】Parent,J.S.;Penciu,A.;Guillen−CasteUanos,S.A.;Liskova,A.;Whitney,R.A.Macromolecules 37,7477−7483,2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それ故に、ブチルアイオノマーの効率の良い、環境上好ましい製造方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
a)40:60〜99:1、好ましくは50:50〜85:15、さらにより好ましくは61:39〜80:20のモノマー混合物対共通脂肪族媒体の質量比で、
・1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する少なくとも50重量%の1つ以上の脂肪族炭化水素を含む共通脂肪族媒体、ならびに
・少なくとも1つのモノオレフィンモノマー、少なくとも1つのマルチオレフィンモノマーを含みおよびその他の共重合性モノマーを全く含まないか少なくとも1つ含むモノマー混合物
を含む反応媒体を提供する工程と;
b)モノマー混合物を反応媒体内で重合させて共通脂肪族媒体およびモノマー混合物の残存モノマーを含む媒体中に少なくとも実質的に溶解しているゴムポリマーを含むゴム溶液を形成する工程と;
c)モノマー混合物の残存モノマーをゴム溶液から分離してゴムポリマーおよび共通脂肪族媒体を含む分離ゴム溶液を形成する工程と、
d)分離ゴム溶液中のゴムポリマーを臭素化して臭素化ゴムポリマーおよび共通脂肪族媒体を含む溶液を得る工程と、
e)工程d)で得られた臭素化ゴムポリマーを少なくとも1つの窒素および/またはリン含有求核試薬と反応させる工程と
を少なくとも含むアイオノマーの製造方法が今提供される。
【0015】
本発明の範囲は、一般的であろうと好みの分野内であろうと本明細書において挙げられる定義、パラメーターおよびイラストのあらゆる可能な組み合わせを含む。
【0016】
本明細書で用いるところでは用語「少なくとも実質的に溶解している」は、工程b)により得られたゴムポリマーの少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%が媒体に溶解していることを意味する。
【0017】
本発明の実施形態において工程b)による重合および工程a)による溶液の提供は、溶液重合反応器を用いて達成される。好適な反応器は、当業者に公知のものであり、フロースルー重合反応器を含む。
【0018】
本方法の工程c)は、未反応の残存モノマー、すなわちイソオレフィンモノマーおよびマルチオレフィンモノマーを媒体から分離するために蒸留を用いてもよい。これは、未反応モノマーからの望ましくないハロゲン化副生物の形成を軽減する。本方法は、モノマー対共通脂肪族媒体の中程度のまたは比較的高い比で行われる。典型的には、イソオレフィンモノマーは共通脂肪族媒体よりかなり低い粘度を有し、それ故、より高いモノマーレベルはより低い全体粘度をもたらす。本方法の全体エネルギー効率および原材料利用率は、重合のために使用された第1希釈剤または溶媒からゴムを分離し、次にそれを臭素化のための第2溶媒に再溶解させる必要性を排除することによって、および臭素化から生じた臭化物を臭素化剤にリサイクルして戻すことによって改善される。本発明による統合プロセスはそれ故、臭素化ブチルゴムを製造するための従来の非統合プロセスと比べて改善されたエネルギーおよび原材料効率ならびにプロセス工程数の減少を提供する。
【0019】
本発明をまとめると、その好ましい実施形態は、図1に関して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ポリマー溶液からの分離後の未反応モノマーの精製および任意選択のリサイクルを用いる本発明による方法についてのプロセスフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1について言及すると、溶液重合反応器40には、任意選択的な熱交換器10、好ましくは復熱式(recuperative)熱交換器、および供給物クーラー20を通して、イソプレンおよびイソブチレンを含むモノマーMの供給物、ならびに共通脂肪族媒体Sが提供される。モノマーは、共通脂肪族媒体と前もって混合されるか重合反応器40内で混合されるかのどちらかであってもよい。ブチルゴム重合のために使用されるタイプのカルボカチオン開始剤−活性化剤系(たとえば、アルミニウム(オルガノ)ハロゲン化物などの、三価金属化学種、および少量の水)を含む、触媒溶液は、触媒調製装置30において共通脂肪族媒体Sと前もって混合され、そしてまた反応器40に導入される。その結果、溶液重合が重合反応器40内で起こる。本統合プロセスにおける使用に好適なタイプの溶液重合反応器40は、そのような反応器のプロセス制御および運転パラメーターと一緒に、参照により本明細書に援用される、たとえば、欧州特許出願公開第0 053 585 A号明細書に記載されている。転化は所望の程度まで進行させられ、次に反応停止剤Q、たとえば水またはメタノールなどのアルコールが、ミキサー50において共通脂肪族媒体S、未反応モノマーMおよびブチルゴムIIRを含む反応器排出流れ中へ添加され、混ぜ込まれる。未反応モノマーM、すなわちイソプレンおよびイソブチレン、共通脂肪族媒体SならびにブチルゴムIIRを含む生じたポリマー溶液は、復熱式熱交換器10を通過させられ、そこでそれは、反応器への入ってくる供給物によって暖められ、一方同時にこれらの供給物を、それらが最終供給物クーラー20に入る前に冷却するのに役立つ。暖められたポリマー溶液は次に、未反応モノマーの除去のための蒸留塔60に導かれる。未反応モノマーがリサイクリング流れMとして分離されてしまったら、それらは塔60の塔頂から出ていき、分離ポリマー溶液(S,IIR)は塔60の塔底から出て溶液臭素化反応器70に入る。追加の共通脂肪族媒体Sおよび/または水Wが、臭素化のための所望の条件を提供するために臭素化反応器70に提供されてもよい。重合のために使用された同じ共通脂肪族媒体が臭素化までのプロセスを通してブチルゴムに同伴すること、および臭素化前にポリマーを溶媒から分離する必要性が全くないことを指摘することは重要である。臭素化剤B(本明細書において以下記載されるような)の供給物がまた臭素化反応器70に提供される。臭素化ブチルゴム(BIIR)は、溶液(S,BIIR)で反応器を出て、次に、典型的には反応器80を用いる中和および洗浄後に、溶液においてか共通脂肪族媒体の除去後かのどちらかで窒素および/またはリン含有求核試薬の添加によって相当するアイオノマーに転化される。アイオノマー(ION)は次に、一般的な仕上げおよび乾燥手順にかけられる。アイオノマーを形成する前か前記仕上げ工程中かのどちらかで除去された共通脂肪族媒体は、溶媒精製セクション120への導入前にリサイクリング流れSとして溶媒回収110に送られる。追加の共通脂肪族媒体Sが精製120の前かまたは、媒体がすでに前もって精製されている場合には、後で加えられてもよい。精製された共通脂肪族媒体は、本方法での再使用のために復熱式熱交換器10および最終供給物クーラー20にリサイクルして戻される。蒸留塔60においてポリマー溶液から分離された未反応モノマーは、リサイクル流れMとしてモノマー回収装置90に送られ、次に、復熱式熱交換器10および供給物クーラー20にリサイクルして戻される前にモノマー精製セクション100において精製される。追加の新鮮モノマーMがモノマー精製100の前か、モノマーが前もって精製されている場合には、後でかのどちらかで加えられてもよい。重合および臭素化の両方のためのならびに任意選択的にアイオノマーへの転化のためさえの共通脂肪族媒体の使用は、従来のアプローチと比べて本統合プロセスの環境影響を低減し、経済的成果を向上させる。
【0022】
本明細書において上に示された本方法の説明は例示的であり、本明細書において述べられるすべてのモノマーおよび生成物組成物にだけでなく、すべての共通脂肪族媒体組成物にも適用することができる。
【0023】
共通脂肪族媒体の組成が、その成分の沸点が異なるために未反応モノマーの除去の前後でわずかに変動した組成を有する可能性があることは本発明の範囲内である。
【0024】
溶液重合によってゴムポリマーを製造するために使用されるモノマー混合物は、個々のモノマーが1013hPaで45℃より低い、好ましくは1013hPaで40℃より低い沸点を有し、そしてモノマー混合物が共通脂肪族媒体より低い粘度を有するという条件で、特定のイソオレフィンに限定されない。しかし、イソ−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンまたはそれらの混合物などの、4〜5個の炭素原子の範囲内のイソオレフィンが好ましい。最も好ましいイソオレフィンはイソブテンである。
【0025】
モノマー混合物は、個々のモノマーが1013hPaで45℃未満、好ましくは1013hPaで40℃未満の沸点を有し、そしてモノマー混合物が共通脂肪族媒体より低いの粘度を有するという条件で、特定のマルチオレフィンに限定されない。上述のイソオレフィンと共重合可能であると当業者によって知られるマルチオレフィンを使用することができる。しかし、イソプレン、ブタジエンまたはそれらの混合物などの、4〜5個の炭素原子の範囲内の、ジエン、特に共役ジエンを含むマルチオレフィンが好ましくは使用される。最も好ましいマルチオレフィンはイソプレンである。
【0026】
一実施形態においては、ゴムポリマー、好ましくはブチルゴムの製造のためのモノマー混合物は、80.0重量%〜99.9重量%、好ましくは92.0重量%〜99.5重量%の範囲で少なくとも1つ、好ましくは1つのイソ−オレフィンモノマーおよび0.5重量%〜20.0重量%、好ましくは0.5重量%〜8.0重量%の範囲で少なくとも1つ、好ましくは1つのマルチオレフィンモノマーを含んでもよい。より好ましくは、モノマー混合物は、95.0重量%〜98.5重量%の範囲で少なくとも1つ、好ましくは1つのイソ−オレフィンモノマーおよび1.5重量%〜5.0重量%の範囲で少なくとも1つ、好ましくは1つのマルチオレフィンモノマーを含む。最も好ましくは、モノマー混合物は、97.0重量%〜98.5重量%の範囲で少なくとも1つ、好ましくは1つのイソオレフィンモノマーおよび1.5重量%〜3.0重量%の範囲で少なくとも1つ、好ましくは1つのマルチオレフィンモノマーを含む。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において上に示された範囲は、イソオレフィンがイソブテンであり、そしてマルチオレフィンがイソプレンであるモノマー混合物に適用される。
【0028】
一実施形態においては、本発明により製造されるブチルゴムのマルチオレフィン含有率は、たとえば0.5モル%〜20.0モル%の範囲に、好ましくは0.5モル%〜8.0モル%、より好ましくは1.0モル%〜5.0モル%の範囲に、その上より好ましくは1.5モル%〜5モル%の範囲に、さらにより好ましくは1.8モル%〜2.2モル%の範囲にある。
【0029】
別の実施形態においては、本発明により製造されるブチルゴムのマルチオレフィン含有率は、たとえば好ましくは3.5モル%〜20.0モル%の範囲に、より好ましくは3.5モル%〜6.0モル%、さらにより好ましくは3.5モル%〜5.0モル%の範囲にある。
【0030】
前述の粘度問題を克服する方法の1つは、重合工程においてモノマー対溶媒の高い比を選択することによる。60:40以下のモノマー対脂肪族炭化水素溶媒の質量比が先行技術においては用いられてきたが、一態様において本発明は、たとえば61:39〜80:20、好ましくは65:35〜70:30のより高い比を利用する。主としてC4化合物であり、そして共通脂肪族媒体より低い粘度を有する。より高いモノマーレベルの存在は、許容できる限度まで溶液粘度を下げ、そしてまたより高い固形分レベルが重合中に達成されることを可能にする、より高いモノマーレベルの使用はまた、より低いモノマーレベルが用いられるときより高い温度で許容される分子量に達することを可能にする。より高い温度の使用は今度は、溶液粘度を低下させ、溶液中のより大きいポリマー固形分レベルを可能にする。
【0031】
前述の粘度問題が克服されてしまう方法のもう1つは、共通脂肪族媒体を溶媒として選択することによる。1013hPaで45℃以下の沸点を有する化合物のより高い含有率を有するかまたはそれらの化合物からなる溶媒は、溶液からのモノマーの分離がかなりの溶媒除去をもたらすであろうほどにモノマーに近い沸点を有するであろう。
【0032】
1013hPaで80℃超の沸点を有する化合物の高い含有率を有するかまたはそれらの化合物からなる溶媒の使用は、臭素化後のゴムからの分離を困難にするだろう。そのような溶媒の使用によって提供される溶液粘度はまた、上記の高いモノマー対溶媒比で提供されるときでさえ、共通脂肪族媒体でよりも著しく高く、溶液を取り扱うことをより困難にし、反応器における伝熱を妨げる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において共通脂肪族媒体は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、その上さらにより好ましくは少なくとも97重量%の1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する1つ以上の脂肪族炭化水素を含む。1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する脂肪族炭化水素としては、シクロペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、メチルシクロペンタンおよび2,2−ジメチルペンタンが挙げられる。
【0034】
共通脂肪族媒体は、たとえば、1013hPaの圧力で80℃超の沸点を有するたとえばヘプタンおよびオクタン、プロパン、ブタン、n−ペンタン、シクロヘキサンのようなその他の脂肪族炭化水素などの重合条件下に少なくとも実質的に不活性であるその他の化合物、ならびに反応条件下に少なくとも実質的に不活性である塩化メチルおよびその他の塩素化脂肪族炭化水素などのハロ炭化水素、ならびにたとえば、式C(式中、xは1〜20、あるいは1〜好ましくは1〜3の整数であり、式中、yおよびzは整数であり、少なくとも1である)で表されるものであるハイドロフルオロカーボンをさらに含んでもよい。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態において共通脂肪族媒体は、ハロ炭化水素を実質的に含まない。
【0036】
本明細書で用いるところでは用語「実質的に含まない」は、2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、さらにより好ましくはハロ炭化水素の不在の共通脂肪族媒体内のハロ炭化水素の含有率を意味する。
【0037】
モノマー対炭化水素溶媒の好ましい比は、前もって計算できないが、しかし、非常に少ない所定の実験によって容易に決定することができる。モノマーの量を増加させると溶液粘度が低下するはずであるが、当該低下の程度の正確な理論的予測を行うことは、本方法において用いられる濃度および温度での溶液の様々な成分の相互作用の粘度に対する複雑な影響にある程度起因して実現可能ではない。
【0038】
一実施形態においては、プロセス温度は、−100℃〜−40℃の範囲に、好ましくは−95℃〜−65℃の範囲に、より好ましくは−85℃〜−75℃の範囲に、その上より好ましくは−80℃〜−75℃の範囲にある。
【0039】
冷却およびポンプ送液のためのエネルギー使用量が(より高い温度でのより低い粘度のために)低下するという点においてより高い温度が望ましいが、これは、商業的に望ましいようなものではないより低い分子量のポリマーを一般にもたらす。しかし、本発明における高いモノマー対溶媒比の使用のために、低下したが依然として許容される分子量をより高い温度で得ることができる。
【0040】
それ故、代わりの実施形態においては、−50℃〜−75℃より低い、好ましくは−55℃〜−72℃、より好ましくは−59℃〜−70℃、その上より好ましくは−61℃〜−69℃の範囲の温度が、所望の分子量のブチルゴムを依然として得ながら用いられる。
【0041】
本発明による方法を用いて製造されたブチルゴムポリマーの重量平均分子量は、臭素化の前に測定されるように、典型的には200〜1000kg/モル、好ましくは200〜700kg/モル、より好ましくは325〜650kg/モル、さらにより好ましくは350〜600kg/モル、その上より好ましくは375〜550kg/モル、さらにより好ましくは400〜500kg/モルの範囲にある。特に断らない限り、分子量は、ポリスチレン分子量標準を使用してテトラヒドロフラン(THF)溶液におけるゲル浸透クロマトグラフィーを用いて得られる。
【0042】
反応器40からの排出時の溶液の粘度は、典型的にはおよび好ましくは2000cP未満、好ましくは1500cP未満、より好ましくは1000cP未満である。粘度の最も好ましい範囲は、500〜1000cPである。特に断らない限り、粘度は、コーン−プレート型の回転流動計(Haake)で測定された粘度である。すべての示される粘度は、外挿したゼロ剪断粘度を意味する。
【0043】
重合後に得られた溶液の固形分は、好ましくは3〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%、さらにより好ましくは12〜18重量%、その上より好ましくは14〜18重量%、さらにより好ましくは14.5〜18重量%、もっとより好ましくは15〜18重量%、最も好ましくは16〜18重量%の範囲にある。前記のように、より高い固形分が好ましいが、増加した溶液粘度を伴う。本方法に用いられるより高いモノマー対溶媒比は、過去におけるよりも高い固形分が達成されることを可能にし、有利にはまた重合および臭素化の両方のための共通脂肪族媒体の使用を可能にする。
【0044】
本明細書で用いるところでは用語「固形分」は、工程b)により、すなわち、重合において得られた、そしてゴム溶液中に存在するポリマーの重量パーセントを意味する。
【0045】
工程c)において、未反応の残存モノマーは、好ましくは蒸留プロセスを用いて重合後の溶液から除去される。異なる沸点の液体を分離するための蒸留プロセスは、当該技術分野においてよく知られており、参照により本明細書に援用される、たとえば、Encyclopedia of Chemical Technology,Kirk Othmer,4th Edition,pp.8−311に記載されている。
【0046】
分離度は、塔に用いられるトレイの数に大きく依存する。分離後の溶液中の残存モノマーの許容されるおよび好ましいレベルは、重量で百万当たり20部未満である。約40トレイがこの分離度を達成するのに十分であることが分かった。モノマーからの共通脂肪族媒体の分離は、決定的に重要であるようなものではなく、たとえば10重量%以下の含有率の共通脂肪族媒体の成分は、蒸留プロセスからのオーバーヘッド流れ中に許容される。好ましい実施形態においては、蒸留プロセスからのオーバーヘッド流れ中の共通脂肪族媒体の成分の含有率は、5重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。
【0047】
図1に関して、本発明の方法は好ましくは、蒸留塔60を用いて重合溶液から分離された未反応モノマーの精製を含む。精製装置100がこの目的のために提供されてもよく;あるいは、精製は、別個の精製装置においてオフサイトで行うことができる。精製モノマーは、普通はこのプロセスへリサイクルして戻され、新鮮なモノマーと混合されるが;それらはあるいは、異なるプロセスに利用されてもまたは別個に販売されてもよい。本方法の好ましい実施形態は、有利な全体プロセス経済性を達成するためにこれらの任意選択の精製およびリサイクリング工程を含む。
【0048】
モノマーの精製は、好適なモレキュラーシーブまたはアルミナベースの吸着剤を含有する吸着剤塔を通過させることによって実施されてもよい。重合反応の妨害を最小限にするために、この反応に対して毒として働く水ならびにアルコールおよびその他の有機オキシジェネートなどの物質の総濃度は好ましくは、重量基準で百万当たり約10部未満に下げられる。リサイクルのために利用可能であるモノマーの割合は、重合プロセス中に得られる転化度に依存する。たとえば、66:34というモノマー対共通脂肪族媒体の比を例として挙げると、生成ゴム溶液中の固形分レベルが10%である場合、モノマーの85%がリサイクル流れに戻されるために利用可能である。固形分レベルが18%に増やされる場合、モノマーの73%がリサイクルに利用可能である。
【0049】
未反応の残存モノマーの除去後に、ブチルポリマーは工程d)において臭素化される。臭素化ブチルゴムは、溶液相技法を用いて製造される。重合工程中に使用された共通脂肪族媒体に溶解したブチルゴムの溶液を含む「セメント」は、追加の酸化剤の不在下または存在下のどちらかで使用される臭素化剤で処理される。
【0050】
好適な再酸化剤としては、次の物質で例示されるような過酸化物および過酸化物形成物質が挙げられる:過酸化水素、塩素酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムもしく亜臭素酸ナトリウム、酸素、窒素の酸化物、オゾン、ウレアペルオキシデート、過チタン酸、過ジルコン酸、過クロム酸、過モリブデン酸、過タングステン酸、過ホウ酸、過リン酸、過ピロリン酸、過硫酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩および過ヨウ素酸などの酸または前述の酸化剤の混合物。
【0051】
新鮮な共通脂肪族媒体をたとえば含む、補足溶媒、および/または水が、臭素化のための所望の特性を有するセメントを形成するために分離ゴム溶液に加えられてもよい。
【0052】
重合工程中に使用された共通脂肪族媒体中での臭素化は、ポリマーを重合媒体から分離し、次にそれを臭素化のための異なる媒体に再溶解させる必要性を排除することによって従来のスラリー法と比べてエネルギーを有利に節約する。
【0053】
好ましくは、臭素化剤の量は、ポリマーの0.1〜20重量%の範囲に、好ましくは、0.1〜8重量%、さらにより好ましくは約0.5重量%〜約4重量%、その上さらにより好ましくは約0.8重量%〜約3重量%、さらにもっとより好ましくは約1.5重量%〜約2.5重量%、最も好ましくは1.5〜2.5重量%の範囲にある。
【0054】
別の実施形態において臭素化剤の量は、ブチルポリマー中に含有される二重結合のモル量の0.2〜1.2倍、好ましくはこのモル量の0.8〜1.2倍である。
【0055】
臭素化剤は、元素状臭素(Br)、塩化臭素(BrCl)などのハロゲン間化合物および/またはそれらの有機ハロゲン化物前駆体、たとえばジブロモ−ジメチルヒダントイン、N−ブロモスクシンイミドなどを含んでもよい。最も好ましい臭素化剤は臭素を含む。さらにより好ましくは臭素が臭素化剤として使用される。
【0056】
臭素化プロセスは、10℃〜90℃、好ましくは20℃〜80℃の温度で操作されてもよく、反応時間は、1〜10分、好ましくは1〜5分であってもよい。臭素化反応器中の圧力は、0.8〜10バールであってもよい。
【0057】
この手順中の臭素化の量は、最終ポリマーが本明細書において上に記載された好ましい量の臭素を有するように制御されてもよい。ハロゲンをポリマー結合させる特定モードは特に制限されず、当業者は、上記のもの以外のモードが本発明の利益を達成しながら用いられてもよいことを認めるであろう。溶液相臭素化プロセスの追加の詳細および代わりの実施形態については、参照により本明細書に援用される、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(Fifth,Completely Revised Edition,Volume A231 Editiors Elversら)および/またはMaurice Mortonによる「Rubber Technology」(Third Edition),Chapter 10(Van Nostrand Reinhold Company版権1987)、特にpp.297−300を参照されたい。
【0058】
工程e)により、工程d)において得られた臭素化ブチルゴムポリマーは、少なくとも1つの窒素および/またはリン含有求核試薬と反応させられる。
【0059】
工程d)における臭素化反応の完了後に、ポリマーは、従来法、たとえば、希苛性溶液での中和、水洗および水蒸気蒸留によるなどの溶媒の除去またはイソプロパノールなどの低級アルコールを使用する沈澱、引き続く乾燥によって回収されてもよい。
【0060】
第四級化およびアイオノマー形成は、たとえば、反応を実施するのに十分な温度および滞留時間で、インターナルミキサー中で行うことができる反応混練によって容易に達成することができる。あるいは、この反応は、任意選択的に高められた圧力および温度下に溶液において実施されてもよい。
【0061】
溶液技法が適用される場合、工程d)において得られたブロモブチルゴムポリマーおよび共通脂肪族媒体を含むゴム溶液を、水性の塩基性物質、たとえば、水酸化ナトリウムの希水溶液で中和して、それによって得られたブロモブチルゴムポリマーおよび共通脂肪族媒体を含む有機相を分離し、そして前記溶液を、任意選択的に追加の乾燥工程の後に、少なくとも1つの窒素および/またはリン含有求核試薬と反応させることが好ましい。
【0062】
本明細書で用いるところでは用語「求核試薬」は、共有結合を形成してホスホニウムまたはアンモニウムイオンを形成することができる、窒素またはリン上に置かれた孤立電子対を有する化合物を意味する。
【0063】
好ましい窒素および/またはリン含有求核試薬は、式I
AR (I)
(式中、
Aは窒素またはリンを意味し、
、RおよびRは互いに独立して、C〜C18アルキル、C〜C15アリールアルキルまたはC〜C14アリールからなる群から選択される)
のものである。
【0064】
〜C18アルキルは、ヒドロキシルまたはアルコキシ基で任意選択的にさらに置換されていてもよい直鎖状、環状、分枝状もしくは非分枝状のアルキルラジカルを意味する。同じことがC〜C15アリールアルキルラジカルのアルキル部分に適用される。
【0065】
〜C14アリールは炭素環ラジカルのみならず、各芳香族の各環のゼロ、1、2または3個の炭素原子、しかし全体ラジカル中の少なくとも1個の炭素原子が、窒素、硫黄または酸素の群から選択されるヘテロ原子で置き換えられているヘテロ芳香族ラジカルをも意味する。
【0066】
アルコキシは、直鎖状、環状または分枝状もしくは非分枝状のアルコキシラジカルを意味する。
【0067】
式(I)の好ましい求核試薬は、残基R、RおよびRの2つまたは3つが同一であるものである。
【0068】
式(I)のより好ましい求核試薬は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、2−ジメチルアミノエタノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、4−(ジメチルアミノ)−1−ブタノール、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、3−(ジエチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、2−{[2−(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ}エタノール、4−ジエチルアミノ−2−ブチン−1−オール、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、N−ブチルジエタノールアミン、N−第三ブチルジエタノールアミン、2−(メチルフェニルアミノ)エタノール、3−(ジメチルアミノ)ベンジルアルコール、2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール、2−(N−エチルアニリノ)エタノール、N−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、2−(ジブチルアミノ)エタノール、2−(N−エチル−N−m−トルイジノ)エタノール、2,2’−(4−メチルフェニルイミノ)ジエタノール、トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン、3−(ジベンジルアミノ)−1−プロパノールまたは前述の求核試薬の混合物である。
【0069】
工程c)において得られたブロモブチルゴムと反応させられる求核試薬の量は、ブロモブチルポリマー中に存在するアリル型ハロゲン化物の総モル量を基準としてたとえば、0.05〜5モル当量、より好ましくは0.1〜4モル当量、さらにより好ましくは0.2〜3モル当量の範囲にある。
【0070】
例示的な一実施形態において求核試薬およびブロモブチルポリマーは、80〜200℃、好ましくは90〜160℃、より好ましくは100〜140℃の範囲の温度で約30秒〜90分、好ましくは45秒〜7分、より好ましくは1分〜5分間反応させることができる。
【0071】
本発明によれば、生じたアイオノマーはまた、残存マルチオレフィンが0.2〜5.0モル%、さらにより好ましくは0.5〜0.8モル%の範囲で存在する状態で、アイオノマー部分およびアリル型ハロゲン化物官能性の総モル量が0.05〜15モル%、より好ましくは0.2〜1.0モル%、さらにより好ましくは0.5〜0.8モル%の範囲で存在するようにポリマー結合アイオノマー部分とアリル型ハロゲン化物との混合物であることができよう。
【0072】
さらなる工程f)において、工程e)により得られたアイオノマーは、たとえば従来の硬化系硫黄、樹脂または過酸化物を使用して硬化させられてもよい。
【0073】
好ましい硬化系は硫黄ベースである。典型的な硫黄ベースの硬化系は、(i)金属酸化物、(ii)元素状硫黄および(iii)少なくとも1つの硫黄ベースの促進剤を含む。硬化系における成分としての金属酸化物の25使用は、当該技術分野においてよく知られている。好適な金属酸化物は酸化亜鉛であり、それは、ナノ複合材料中の百重量部ブチルポリマー当たり約1〜約10、好ましくは約2〜約5重量部の量で典型的には使用される。好ましい硬化系の成分(ii)を構成する、元素状硫黄は、組成物中の百重量部ブチルポリマー当たり約0.2〜約10重量部の量で典型的には使用される。好適な硫黄ベースの促進剤(好ましい硬化系の成分(iii))は、組成物中の百重量部ブチルポリマー当たり約0.5〜約3重量部の量で典型的には使用される。有用な硫黄ベースの促進剤の非限定的な例は、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)などのチウラムスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDC)などのチオカルバメートおよびメルカプトベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)などのチアジルおよびベンゾチアジル化合物から選択されてもよい。好ましくは、硫黄ベースの促進剤はメルカプトベンゾチアジルジスルフィドである。
【0074】
本発明の別の実施形態において硬化は、ジクミルペルオキシド、ジ−第三ブチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,2’−ビス第三ブチルペルオキシジイソプロピルベンゼン(Vulcup(登録商標)40KE)、ベンゾイルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、(2,5−ビス(第三ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンなどの過酸化物硬化剤を使用して達成される。
【0075】
過酸化物硬化剤は、ゴムの百部当たり0.2〜10部(phr)、好ましくは1〜6phr、より好ましくは約4phrの量で好適には使用される。
【0076】
当業者によって好適であると知られる加硫助剤をまた使用することができる。好適な助剤としては、DuPontから商標DIAK 7で商業的に入手可能な、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)またはHVA−2TMとして知られるN,N’−m−フェニレンジマレイミド(DuPont Dow)、トリアリルシアヌレート(TAC)またはRiconTM D 153として知られる液体ポリブタジエン(Ricon Resinsによって供給される)が挙げられる。量は過酸化物硬化剤と当量以下であることができる。
【0077】
酸化防止剤がまた、好適には4phr以下、好ましくは約2phrの量でアイオノマー中に含まれてもよい。好適な酸化防止剤の例としては、p−ジクミルジフェニルアミン(Naugard(登録商標)445)、Vulkanox(登録商標)DDA(ジフェニルアミン誘導体)、Vulkanox(登録商標)ZMB2(メチルメルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩)、Vulkanox(登録商標)HS(重合した1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン)およびIrganox(登録商標)1035(Ciba−Geigyによって供給されるチオジエチレンビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメートまたはチオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。Vulkanoxは、Lanxess Incの商標である。
【0078】
硬化品は、反応促進剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、発泡剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、ブローイング剤、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、阻害剤、金属酸化物、およびゴム産業に知られている、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオールなどの活性化剤などの、ゴム用の補助製品をさらに含有してもよい。ゴム助剤は、意図される用途にとりわけ依存する従来の量で使用される。硬化品はまた、鉱物および/または非鉱物充填剤を含有してもよい。従来の量は、アイオノマーを基準として、0.1〜50重量%である。
【0079】
硬化または未硬化アイオノマーは、インナーライナー、トレッド、側壁、接着剤を含むが、それらに限定されないタイヤの一部として、熱可塑性エラストマー、履物、貯蔵膜、保護衣、製薬ストッパー、内張り、およびバリアコーティングの一部として使用されてもよい。
【実施例】
【0080】
実施例1−重合および蒸留
図1に記載されるプロセスの重要な要素を、連続モードで運転する2リットル総容量の反応器を使ってパイロット規模で操作した。反応器への供給物は、66:34のモノマー/共通脂肪族媒体質量比を与える3.87kg/hのイソブテン、0.09kg/hのイソプレンおよび2.0kg/hのヘキサンであった。用いられた反応温度は−65℃であり、16重量%の固形分を有する溶液が生成した。この材料は、約440kg/モルの重量平均分子量および約1.7モル%のイソプレン含有率を有した。反応器からの溶液を40トレイの蒸留塔に供給し、ゴム溶液からのモノマーの分離を行った。溶液を42℃に予熱し、リボイラーを塔底で用いて113℃の塔底温度を維持した。還流冷却器を用いてオーバーヘッド流れの一部を36℃のそこでの温度を維持する塔頂に戻した。塔で達成される分離は、分離ゴム溶液中に10ppm未満の残存イソプレンモノマー、そしてオーバーヘッドモノマー流れ中に約1%の共通脂肪族媒体の成分を残した。分離モノマーを精製し、次に溶液重合反応器に再導入した。共通脂肪族媒体中の分離ゴム溶液は、補足共通脂肪族媒体を添加して従来法によって臭素化を達成することができるようなものであった。
【0081】
使用された共通脂肪族媒体は商業的に入手可能であり、1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する97.5重量%の脂肪族炭化水素を含有し、残りは、1013hPaの圧力で45℃未満または80℃超の沸点を有する脂肪族炭化水素であった。
【0082】
実施例2−ハロゲン化
実施例1の分離ゴム溶液を、パイロット規模の臭素化装置を用いてハロゲン化した。10%の量の補足共通脂肪族媒体を、粘度を低くするために分離ゴム溶液に加えた。1.6%の臭素を含有する臭素化ブチルポリマーを分離ゴム溶液において製造する。臭素化された分離ゴム溶液を次に、従来の乾燥および仕上げ技法を用いて仕上げる。
【0083】
実施例3−ホスホニウムアイオノマーの製造
2LのParr反応器において、実施例2の100gのブロモブチルゴムを1000mLのヘキサンに溶解させる。これに、4gのトリフェニルホスフィンを加え、100℃の温度で60分間反応させる。ポリマーセメントをエタノール中で凝固させ、生じたポリマーを乾燥させ、Hおよび31P NMRによって分析する。高いアイオノマー含有率を確認した。
【0084】
実施例4−アンモニウムアイオノマーの製造
2LのParr反応器において、実施例2の100gのブロモブチルゴムを1000mLのヘキサンに溶解させる。これに、3.2gのN,N−ジメチルアミノエタノールを加え、100℃の温度で60分間反応させる。ポリマーセメントをエタノール中で凝固させ、生じたポリマーを乾燥させ、H NMRによって分析する。高いアイオノマー含有率を確認した。
【0085】
前述のものは、特定の好ましい実施形態を記載するにすぎず、本発明のその他の特徴および態様は当業者に明らかであろう。同様に機能する記載された要素の変形形態および均等物により、本発明が機能する方法に影響を及ぼすことなく、置き換えられてもよい。本発明者は記載された特徴のすべての副次的組み合わせが以下の特許請求の範囲に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)40:60〜99:1のモノマー混合物対共通脂肪族媒体の質量比で
・1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する少なくとも50重量%の1つ以上の脂肪族炭化水素を含む共通脂肪族媒体、ならびに
・少なくとも1つのモノオレフィンモノマー、少なくとも1つのマルチオレフィンモノマーを含みおよびその他の共重合性モノマーを全く含まないか少なくとも1つ含むモノマー混合物
を含む反応媒体を提供する工程と;
b)前記モノマー混合物を前記反応媒体内で重合させて前記共通脂肪族媒体および前記モノマー混合物の残存モノマーを含む前記媒体中に少なくとも実質的に溶解しているゴムポリマーを含むゴム溶液を形成する工程と;
c)前記モノマー混合物の残存モノマーを前記ゴム溶液から分離して前記ゴムポリマーおよび前記共通脂肪族媒体を含む分離ゴム溶液を形成する工程と、
d)前記分離ゴム溶液中の前記ゴムポリマーを臭素化して臭素化ゴムポリマーおよび前記共通脂肪族媒体を含む溶液を得る工程と、
e)工程d)で得られた前記臭素化ゴムポリマーを少なくとも1つの窒素および/またはリン含有求核試薬と反応させる工程と
を少なくとも含むアイオノマーの製造方法。
【請求項2】
前記ゴムがブチルゴムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノマー混合物が80.0重量%〜99.9重量%の範囲の少なくとも1つのイソオレフィンモノマーおよび0.1重量%〜20.0重量%の範囲の少なくとも1つのマルチオレフィンモノマーを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記イソオレフィンモノマーがイソブテンであり、前記マルチオレフィンモノマーがイソプレンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記共通脂肪族媒体が、1013hPaの圧力で45℃〜80℃の範囲の沸点を有する少なくとも80重量%の1つ以上の脂肪族炭化水素を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)のプロセス温度が−100℃〜−40℃の範囲にある、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
臭素化の前に測定されるブチルゴムの重量平均分子量が200〜1000kg/モルの範囲にある、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応が重合反応器で行われ、そして前記重合反応器からの排出時の前記溶液の粘度が2000cP未満である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)での後に得られる前記ゴム溶液の固形分が3〜25%の範囲にある、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分子状臭素が臭素化剤として使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
使用される臭素化剤の量が前記ゴムの0.1〜20重量%の範囲にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記臭素化剤が酸化剤と組み合わせて使用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記窒素および/またはリン含有求核試薬が式I
AR (I)、(式中、
Aは窒素またはリンを意味し、
、RおよびRは互いに独立して、C〜C18アルキル、C〜C15アリールアルキルまたはC〜C14アリールからなる群から選択される)
のものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程e)が反応混練によって達成されるかまたは溶液中で実施される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
さらなる工程f)において前記アイオノマーが硬化させられる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
硬化アイオノマーを製造するための請求項1〜14のいずれか一項に従って製造されたアイオノマーの使用。
【請求項17】
タイヤ、接着剤、熱可塑性エラストマー、履物、貯蔵膜、保護衣、製薬ストッパー、内張り、およびバリアコーティングの一部としての請求項1〜14のいずれか一項に従って製造されたアイオノマーまたは請求項15に従って製造された硬化アイオノマーの使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2013−517359(P2013−517359A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549317(P2012−549317)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050505
【国際公開番号】WO2011/089083
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511013418)ランクセス・インターナショナル・ソシエテ・アノニム (12)
【Fターム(参考)】