説明

ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体、その原料化合物及びそれらの製造方法

【課題】ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で示される誘導体を、その原料である(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体をハロゲン誘導体と反応させることで製造する。


(ここで、置換基Tは硫黄原子、セレン原子等を示し、置換基Xは、臭素原子、塩素原子、等を示し、置換基Xは臭素原子、塩素原子等を示し、置換基R〜Rは水素原子、フッ素原子、炭素数3〜30のアルキル基等を示し、記号mは0〜2の整数を示し、記号n及びoは0又は1である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なハロベンゾカルコゲノフェン誘導体及びその原料である新規なアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト、及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されるようになった。有機薄膜トランジスタは有機半導体活性相、基板、絶縁相、電極等数種類の材料から構成されるが、中でも電荷のキャリアー移動を担う有機半導体活性相は該デバイスの中心的な役割を有している。この有機半導体活性相を構成する有機材料のキャリアー移動能により半導体デバイス性能が左右される。
【0003】
有機半導体活性相を作製する方法としては一般的に、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法及び有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法が知られている。塗布法においては、塗布は高温高真空条件を用いることなく印刷技術を用いても実施することができる。そのため、塗布法は印刷によりデバイス作製の大幅な製造コストの削減を図ることができることから、経済的に好ましいプロセスである。しかし、従来、有機半導体デバイスとして性能が高い材料ほど塗布法で有機半導体活性相を形成することが困難になるという問題があった。
【0004】
例えば、ペンタセン等の結晶性材料はアモルファスシリコン並みの高いキャリアー移動度を有し、優れた有機半導体デバイス特性を発現することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。又、ペンタセン等のポリアセンを溶解させ塗布法で有機半導体デバイスを製造する試みも報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ペンタセンはその強い凝集性のため溶解性が低く、塗布法を適用するためには高温加熱等の条件が必要とされ、さらにペンタセンの溶液は極めて容易に空気酸化されることから、塗布法の適用はプロセス的、経済的に困難を伴うものであった。そこで、ベンゼン環とチオフェン環が縮環したヘテロアセン誘導体はその溶液が耐空気酸化性に優れることからペンタセンに代わる有機半導体材料として注目を集めるようになってきた(例えば、特許文献2参照)。一方、ヘテロアセン誘導体の溶解性を向上させるためにアルキル基等の置換基を導入する必要がある。置換基を導入する方法として、1)未置換のヘテロアセン誘導体に置換基を導入する(例えば、非特許文献2参照)、2)置換基を導入した原料を用いて、ヘテロアセン誘導体へ変換する、2つの方法が考えられる。2)の方法が多様なヘテロアセン誘導体へ変換することが可能であることからより好ましい方法であるが、置換基を導入したヘテロアセン誘導体の原料となるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体はこれまで知られていないという問題があった。また、アントラチオフェンはその高い硬直性から有機半導体材料あるいはその原料として期待されるが、アルキル基等の置換基を有していないことから塗布型の有機半導体材料あるいは原料として適してはいなかった(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2003/016599号
【特許文献2】WO2008/026602号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ジャーナル オブ アプライド フィジックス」、(米国)、2002年、92巻、5259−5263頁
【非特許文献2】「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー」、(米国)、2007年、129巻、15732−15733頁
【非特許文献3】「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー」、(米国)、2006年、128巻、16002−16003頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題点に鑑み、新規なハロベンゾカルコゲノフェン誘導体及びその原料となる新規なアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。特に、本発明はアルキル基等の置換基を特定の位置に有することが可能なハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の提供を目的とし、さらに塗布法による半導体活性相の形成が可能な有機半導体相構成材料の原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、新規な特定のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体、及びそれを製造する特定の方法を見出し、本発明を完成させた。さらに本発明者らは、該特定のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の一部の原料となる新規なアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体を見出し、且つそれを製造する特定の方法を見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明者らは、新規な特定のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体、及びその一部の原料である新規な特定のアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体、並びにそれらの製造方法を見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
(ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体)
本発明のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は下記一般式(1)で示される。
【0011】
【化1】

【0012】
(ここで、置換基Tは硫黄原子、セレン原子、テルル原子を示し、置換基Xは、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル基、又は水素原子を示し、置換基Xは臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、又は水素原子を示し、置換基R〜Rは同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、炭素数3〜30のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数2〜30のアルケニル基を示し、記号mは0〜2の整数を示し、記号n及びoは0又は1である。但し、R〜Rは同時に水素原子であることはなく、またn及びoは同時に0ではない。)
置換基Tは好ましくは硫黄である。
【0013】
置換基Xは、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル基、水素原子であり、特に好ましくは臭素原子、ヨウ素原子、水素原子である。置換基Xは、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子、水素原子であり、特に好ましくはヨウ素原子、水素原子である。
【0014】
置換基R〜Rにおける炭素数3〜30のアルキル基は特に限定はなく、例えばプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基、(4−オクチルフェニル)メチル基、(4−ドデシルフェニル)メチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のアルキル基;パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロテトラデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロオクタデシル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロシクロオクチル基等のパーフルオロアルキル基;ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、2−エチルパーフルオロヘキシル基等の一部の水素がフッ素に置換されたハロゲン化アルキル基を挙げることができ、好ましくは炭素数8〜30のアルキル基であり、さらに好ましくはオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロテトラデシル基であり、特に好ましくはオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基である。
【0015】
置換基R〜Rにおける炭素数4〜30のアリール基は、特に限定はなく、例えばフェニル基、p−トリル基、p−(オクチル)フェニル基、p−(ドデシル)フェニル基、p−(シクロヘキシル)フェニル基、m−(オクチル)フェニル基、m−(ドデシル)フェニル基、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、p−(パーフルオロオクチル)フェニル基、p−(パーフルオロドデシル)フェニル基、m−(パーフルオロドデシル)フェニル基、2−チエニル基、5−(ドデシル)−2−チエニル基、2,2’−ビチエニル−5−基、ビフェニル基、パーフルオロビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−パーフルオロナフチル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、9−アントラセニル基等を挙げることができ、好ましくはフェニル基、p−(オクチル)フェニル基、p−(ドデシル)フェニル基、p−(パーフルオロオクチル)フェニル基、5−(ドデシル)−2−チエニル基等であり、特に好ましくはフェニル基、p−(ドデシル)フェニル基である。
【0016】
置換基R〜Rにおける炭素数2〜30のアルキニル基は、特に限定はなく、例えばエチニル基、メチルエチニル基、イソプロピルエチニル基、tert−ブチルエチニル基、(オクチル)エチニル基、(ドデシル)エチニル基、(トリフルオロメチル)エチニル基、(パーフルオロオクチル)エチニル基、(パーフルオロドデシル)エチニル基、フェニルエチニル基、{p−(オクチル)フェニル}エチニル基、{p−(ドデシル)フェニル}エチニル基、{m−(ドデシル)フェニル}エチニル基、ナフチルエチニル基、アントラセニルエチニル基、ベンジルエチニル基、パーフルオロフェニルエチニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エチニル基、{p−(パーフルオロオクチル)フェニル}エチニル基、{p−(パーフルオロドデシル)フェニル}エチニル基、{m−(パーフルオロドデシル)フェニル}エチニル基、5−(ヘキシル)チエニル−2−}エチニル基、{5−(パーフルオロヘキシル)チエニル−2−}エチニル基等を挙げることができ、好ましくは(オクチル)エチニル基、(ドデシル)エチニル基、(パーフルオロオクチル)エチニル基、(パーフルオロドデシル)エチニル基、フェニルエチニル基等である。
【0017】
置換基R〜Rにおける炭素数2〜30のアルケニル基は、特に限定はなく、例えばエテニル基、メチルエテニル基、イソプロピルエテニル基、tert−ブチルエテニル基、(オクチル)エテニル基、(ドデシル)エテニル基、(トリフルオロメチル)エテニル基、フェニルエテニル基、{p−(ヘキシル)フェニル}エテニル基、{p−(オクチル)フェニル}エテニル基、{p−(ドデシル)フェニル}エテニル基、{m−(ドデシル)フェニル}エテニル基、2−フェニル−1,2−ジフルオロエテニル基、2−フェニル−1,2−ジメチルエテニル基、ジフェニルエテニル基、トリフェニルエテニル基、ナフチルエテニル基、アントラセニルエテニル基、ベンジルエテニル基、フェニル(メチル)エテニル基、(パーフルオロフェニル)エテニル基、{p−(トリフルオロメチル)フェニル}エテニル基、(パーフルオロオクチル)エテニル基、(パーフルオロドデシル)エテニル基、{5−(ヘキシル)チエニル−2−}エテニル基、{5−(パーフルオロヘキシル)チエニル−2−}エテニル基等を挙げることができ、好ましくは(オクチル)エテニル基、(ドデシル)エテニル基、(パーフルオロオクチル)エテニル基、(パーフルオロドデシル)エテニル基等である。なお、該炭素数2〜30のアルケニル基はトランス体及びシス体の何れであってもよく、またそれらの任意の割合の混合物であってもよい。
【0018】
なお、置換基R〜Rの内、R及びRが水素原子、フッ素原子、炭素数3〜30のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数2〜30のアルケニル基からなる群から選ばれる基であり、且つR及びR〜Rが水素原子、炭素数3〜30のアルキル基からなる群から選ばれる基であることが好ましい。さらに、置換基R及びRが水素原子、フッ素原子、炭素数3〜30のアルキル基からなる群から選ばれる基であり、且つR及びR〜Rが水素原子、炭素数3〜30のアルキル基からなる群から選ばれる基であることが特に好ましい。
【0019】
記号mは0〜2の整数を示し、好ましくは0又は2であり、記号nは0又は1であり、好ましくは0である。記号oは0又は1であり、好ましくは1である。
【0020】
これらの中でも本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は、以下の化合物が好ましく、
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
特に好ましくは
【0028】
【化8】

【0029】
である。
【0030】
((エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体)
次に、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の原料である(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体について述べる。
【0031】
本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の原料である(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体は下記一般式(2)で示される。
【0032】
【化9】

【0033】
(ここで、置換基T、X及びR〜R並びに記号m及びnは一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
ここで、置換基Xは、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル基、水素原子を示し、好ましくはトリメチルシリル基、ヨウ素原子、臭素原子であり、特に好ましくはトリメチルシリル基、ヨウ素原子である。
【0034】
これらの中でも本発明の一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体は、以下の化合物が好ましく、
【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
特に好ましくは
【0041】
【化15】

【0042】
である。
【0043】
((エチニル)ハロアレーン誘導体)
次に、本発明の一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の原料である(エチニル)ハロアレーン誘導体について述べる。
【0044】
本発明の一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の原料である(エチニル)ハロアレーン誘導体は下記一般式(3)で示される。
【0045】
【化16】

【0046】
(ここで、置換基Xは臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子を示し、置換基X及びR〜R、並びに記号m及びnは一般式(2)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
ここで、置換基Xは好ましくはヨウ素原子、臭素原子である。
【0047】
これらの中でも本発明の一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体は、以下の化合物が好ましく、
【0048】
【化17】

【0049】
【化18】

【0050】
【化19】

【0051】
【化20】

【0052】
【化21】

【0053】
特に好ましくは
【0054】
【化22】

【0055】
である。
【0056】
(ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法1)
次に、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の第1の製造方法について述べる。
【0057】
本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体から製造することができる。
【0058】
即ち、一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体をハロゲン誘導体と反応させることにより、一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体を製造することができる。
【0059】
一般式(2)との反応に用いるハロゲン誘導体は特に限定はなく、一般式(2)のエチニル基と反応するものであれば良い。具体例として、例えば、臭素、ヨウ素、塩素、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド、テトラブロモエタン、テトラヨードエタン、テトラクロロエタン等を挙げることができ、好ましくは臭素、ヨウ素である。
【0060】
一般式(2)の(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体とハロゲン誘導体の反応は、好ましくは溶媒中で行う。係る溶媒は特に限定はなく、具体例として、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等を挙げることができ、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。
【0061】
係る反応において、用いるハロゲン誘導体の使用量は一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体1当量に対し、0.9〜4.0当量が好ましく、特に好ましくは1.0〜2.2当量である。該反応の温度は0〜100℃が好ましく、特に好ましくは20〜70℃である。反応時間は0.5〜48時間が好ましく、特に好ましくは1〜10時間である。
【0062】
なお、該製造方法では一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の置換基Xがトリメチルシリル基の場合、反応条件により(特にハロゲン誘導体としてヨウ素を用いた場合)下記一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体が生成する。
【0063】
【化23】

【0064】
(ここで、置換基TMSはトリメチルシリル基を示し、置換基T、X及びR〜R、並びに記号m、n及びoは一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
置換基Xは、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、特に好ましくはヨウ素原子である。
【0065】
この場合、一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体はハロゲン誘導体と反応させることで一般式(5)のTMS基を、ヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、水素原子に置換することにより一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体へ変換することができる。
【0066】
一般式(5)との反応に用いるハロゲン誘導体は特に限定はなく、一般式(5)のTMS基と反応するものであれば良い。具体例として、例えば、一塩化ヨウ素(ICl)、一臭化ヨウ素(BrI)、三塩化ヨウ素(ICl)、三臭化ヨウ素(IBr)、臭素、ヨウ素、塩素、N−ヨードスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド、ヨウ素酸、テトラブチルアンモニウムフルオリド、塩化水素等を挙げることができ、好ましくは一塩化ヨウ素(ICl)、一臭化ヨウ素(BrI)である。
【0067】
一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体とハロゲン誘導体との反応は、好ましくは溶媒中で行う。係る溶媒は特に限定はなく、具体例として、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等を挙げることができ、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。
【0068】
係る反応において、用いるハロゲン誘導体の使用量は一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体1当量に対し、0.9〜4.0当量が好ましく、特に好ましくは1.0〜2.2当量である。該反応の温度は0〜90℃が好ましく、特に好ましくは20〜60℃である。反応時間は0.5〜48時間が好ましく、特に好ましくは1〜10時間である。
【0069】
また、一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体をハロゲン誘導体と反応させる方法は、例えば、「ジャーナル オブ オルガニック ケミストリィー」(米国)、2002年、67巻、1905−1909頁に記載されている方法で実施することもできる。
【0070】
本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法1は、好ましくは窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気下で実施する。
【0071】
(ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法2)
次に、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の第2の製造方法について述べる。具体的には一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の内、一般式(1)中のXが水素原子であるものについての製造方法を以下に述べる。
【0072】
即ち、本発明の一般式(1)中のXが水素原子であるものは、上記一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体をメタル化剤を用いてメタル化し、プロトン性化合物と反応させることで製造することができる。
【0073】
なお、ここでメタル化とは、一般式(5)における置換基Xをメタルに置換することを意味する。
【0074】
一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体をメタル化する場合、用いるメタル化剤は、一般式(5)におけるXをメタルに置換することができるものである限り特に限定はなく、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;フェニルリチウム、p−tert−ブチルフェニルリチウム、p−メトキシフェニルリチウム、p−フルオロフェニルリチウム等のアリールリチウム;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等のリチウムアミド;リチウムパウダー等のリチウム金属;メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、tert−ブチルマグネシウムクロリド、シクロヘキシルマグネシウムブロミド等のアルキルグリニャール試薬;マグネシウム金属;亜鉛金属等を挙げることができ、好ましくはアルキルリチウム、アルキルグリニャール試薬であり、特に好ましくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムブロミドである。
【0075】
該メタル化剤の使用量は一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体1当量に対し、0.9〜3.0当量が好ましく、さらに好ましくは1.5〜2.5当量である。
【0076】
該メタル化は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定はなく、例えばテトラヒドロフラン(以下、THFと略す)、ジエチルエーテル(以下、エーテルと略す)、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHF、エーテルである。又、これら溶媒は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。該メタル化の温度は−90〜40℃で行うことが好ましく、特に好ましくは−80〜30℃である。反応時間は1〜240分が好ましく、特に好ましくは10〜120分である。なお、メタル化の進行は、反応液の一部を取り出し、水で反応を停止させた後、薄層クロマトグラフィーあるいはガスクロマトグラフィーで分析することで監視することができる。
【0077】
該メタル化は、一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体に、メタル化剤を添加しても良いし、メタル化剤に一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体を添加するいずれの方法を用いても実施することができる。
【0078】
該メタル化により生成したメタル塩は、次いでプロトン性化合物と反応させることにより、一般式(1)中のXが水素原子であるハロベンゾチオフェン誘導体が得られるものである。該プロトン性化合物は、該反応でプロトンを供給できるものであり、生成したメタル塩と反応するものである限り特に限定はなく、例えば、水、メタノール、エタノール、塩化アンモニウム、塩化トリメチルアンモニウム、塩化トリエチルアンモニウム、塩酸水溶液、硫酸水溶液等を挙げることができ、好ましくは水、メタノール、エタノールである。該メタル化により生成したメタル塩とプロトン性化合物を反応させる際には、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定はなく、例えばTHF、エーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、好ましくはTHF、エーテルである。係る反応は、前記メタル化により生成したメタル塩を含む反応混合物に前記プロトン性化合物を添加する方法;生成したメタル塩を含む反応混合物を前記プロトン性化合物に添加する方法のいずれを用いてもよい。
【0079】
用いるプロトン性化合物の使用量は、一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾチオフェン誘導体1当量に対し、1〜100当量が好ましく、特に好ましくは2〜50当量である。該プロトン性化合物との反応温度は−90〜40℃が好ましく、特に好ましくは−80〜30℃であり、反応時間は1〜30分間が好ましく、特に好ましくは2〜10分間である。
【0080】
(ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法3)
次に、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の第3の製造方法について述べる。具体的には一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の内、一般式(1)中のXが水素原子であるものについての製造方法を以下に述べる。
【0081】
即ち、本発明の一般式(1)中のXが水素原子であるものは、上記一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体をメタル化剤を用いてメタル化し、カルコゲンと反応させることで製造することができる。
【0082】
なお、ここでメタル化とは、一般式(3)における置換基Xをメタルに置換することを意味する。
【0083】
一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体をメタル化する場合、用いるメタル化剤は、一般式(3)におけるXをメタルに置換することができるものである限り特に限定はなく、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム;フェニルリチウム、p−tert−ブチルフェニルリチウム、p−メトキシフェニルリチウム、p−フルオロフェニルリチウム等のアリールリチウム;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等のリチウムアミド;リチウムパウダー等のリチウム金属;メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムブロミド、イソプロピルマグネシウムクロリド、tert−ブチルマグネシウムクロリド、シクロヘキシルマグネシウムブロミド等のアルキルグリニャール試薬;マグネシウム金属;亜鉛金属等を挙げることができ、好ましくはアルキルリチウム、アルキルグリニャール試薬であり、特に好ましくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムである。
【0084】
該メタル化剤の使用量は一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体1当量に対し、0.9〜3.0当量が好ましく、特に好ましくは1.5〜2.5当量である。
【0085】
該メタル化は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定はなく、例えばTHF、エーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHF、エーテルである。又、これら溶媒は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。該メタル化の温度は−90〜40℃で行うことが好ましく、特に好ましくは−80〜30℃である。反応時間は1〜240分が好ましく、特に好ましくは10〜120分である。なお、メタル化の進行は、反応液の一部を取り出し、水で反応を停止させた後、薄層クロマトグラフィーあるいはガスクロマトグラフィーで分析することで監視することができる。
【0086】
該メタル化は、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体に、メタル化剤を添加しても良いし、メタル化剤に一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体を添加するいずれの方法を用いても実施することができる。
【0087】
該メタル化により生成したメタル塩は、次いでカルコゲンと反応させることにより、一般式(1)中のXが水素原子であるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体が得られるものである。該カルコゲンは特に限定はなく、例えば、硫黄、セレン、テルルを挙げることができ、好ましくは硫黄である。該メタル化により生成したメタル塩とカルコゲンを反応させる際には、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定はなく、例えばTHF、エーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、好ましくはTHF、エーテルである。係る反応は、前記メタル化により生成したメタル塩を含む反応混合物に前記カルコゲンを添加する方法;生成したメタル塩を含む反応混合物を前記カルコゲンに添加する方法のいずれを用いてもよい。
【0088】
用いるカルコゲンの使用量は、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体1当量に対し、0.9〜5当量が好ましく、特に好ましくは1〜3当量である。該カルコゲンとの反応温度は−90〜40℃が好ましく、特に好ましくは−80〜30℃であり、反応時間は0.5〜30時間が好ましく、特に好ましくは1〜15時間である。
【0089】
さらに、該カルコゲンとの反応終了時に水、メタノール、塩酸水溶液等のプロトン性化合物を添加し、反応を完結させる。
【0090】
(ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法4)
次に、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の第4の製造方法について述べる。具体的には一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の内、一般式(1)中のXが水素原子であるものについての製造方法を以下に述べる。
【0091】
即ち、本発明の一般式(1)中のXが水素原子であるものは、上記一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体を脱トリメチルシリル化し、水素原子へ置換することで製造することができる。
【0092】
該トリメチルシリル基はテトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等のフッ素化合物と反応させることで容易に水素原子へ置換することができる。
【0093】
該フッ素化合物の使用量は一般式(5)で示される2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体1当量に対し、0.9〜3.0当量が好ましく、特に好ましくは1.0〜1.8当量である。
【0094】
該脱トリメチルシリル化は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定はなく、例えばTHF、エーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHF、エーテルである。又、これら溶媒は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。該脱トリメチルシリル化の温度は−10〜50℃で行うことが好ましく、特に好ましくは0〜30℃である。反応時間は1〜240分が好ましく、特に好ましくは10〜120分である。なお、脱トリメチルシリル化の進行は、反応液の一部を取り出し、水で反応を停止させた後、薄層クロマトグラフィーあるいはガスクロマトグラフィーで分析することで監視することができる。
【0095】
かくして得られた、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定はなく、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。
【0096】
(アルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体)
次に、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の一部の原料であるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体について述べる。
【0097】
本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の一部の原料であるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は下記一般式(4)で示される化合物である。
【0098】
【化24】

【0099】
(ここで、置換基Tは硫黄原子、セレン原子、テルル原子を示し、置換基R〜R13は水素原子、炭素数3〜30のアルカノイル基を示し、置換基X及びX、並びに記号m、n及びoは一般式(1)で示される置換基及び記号と同意義を示す。但し、R〜R13は同時に水素原子であることはなく、またn及びoは同時に0ではない。)
本発明の一般式(4)の置換基について、さらに述べる。
【0100】
置換基R〜R13における炭素数3〜30のアルカノイル基は特に限定はなく、例えばプロパノイル基、ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、ペンタノイル基、3,3−ジメチルブタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、オクタデカノイル基、2−エチルヘキサノイル基、フェニルアセチル基、4−オクチルフェニルアセチル基、4−ドデシルフェニルアセチル基、シクロヘキサンカルボニル基、シクロオクタンカルボニル基、シクロヘキシルアセチル基等のアルカノイル基;パーフルオロヘキサノイル基、パーフルオロオクタノイル基、パーフルオロドデカノイル基、パーフルオロテトラデカノイル基、パーフルオロペンタデカノイル基、パーフルオロオクタデカノイル基、パーフルオロシクロヘキサンカルボニル基、パーフルオロシクロオクタンカルボニル基等のパーフルオロアルカノイル基;ペンタデカフルオロオクタノイル基、オクタデカフルオロデカノイル基、2−エチルパーフルオロヘキサノイル基等の一部の水素がフッ素に置換されたハロゲン化アルカノイル基を挙げることができ、好ましくは炭素数8〜30のアルカノイル基であり、さらに好ましくはオクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、オクタデカノイル基、パーフルオロドデカノイル基、パーフルオロテトラデカノイル基、パーフルオロオクタデカノイル基であり、特に好ましくはドデカノイル基、テトラデカノイル基、オクタデカノイル基、パーフルオロドデカノイル基である。
【0101】
なお、置換基R〜R13の内、R及びR10が水素原子、炭素数3〜30のアルカノイル基からなる群から選ばれる基であり、且つR及びR11〜R13が水素原子であることが好ましい。
【0102】
記号mは0〜2の整数を示し、好ましくは0又は2であり、記号nは0又は1であり、好ましくは0である。記号oは0又は1であり、好ましくは1である。
【0103】
一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体としては、以下の化合物が好ましく、
【0104】
【化25】

【0105】
【化26】

【0106】
特に好ましくは
【0107】
【化27】

【0108】
である。
【0109】
(ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法5)
次に、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の第5の製造方法について述べる。
【0110】
本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体から製造することができる。
【0111】
即ち、一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体を、有機酸中、アルキルシランで還元することにより、一般式(1)のR〜Rが水素原子、炭素数3〜30のアルキル基からなる群から選ばれる基であるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体を製造することができる。
【0112】
一般式(4)の還元に用いるアルキルシランは特に限定はなく、カルボニル基をメチレン基に還元できるものであれば良い。具体例として、例えば、トリエチルシラン、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリオクチルシラン等の3置換アルキルシラン類;ジエチルシラン、ジメチルシラン、ジブチルシラン、ジオクチルシラン等の2置換アルキルシラン類;エチルシラン、メチルシラン、ブチルシラン、オクチルシラン等の1置換アルキルシラン類を挙げることができ、好ましくは3置換アルキルシラン類であり、特に好ましくはトリエチルシランである。
【0113】
一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体のアルキルシランによる還元は、有機酸中で行う。係る有機酸は特に限定はなく、具体例として、例えば、トリフルオロ酢酸、トリフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、パーフルオロオクタン酸、ジフルオロ酢酸、モノフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸を挙げることができ、好ましくはトリフルオロ酢酸である。
【0114】
係る還元反応において、用いるアルキルシランの使用量は一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体1当量に対し、1.5〜4.8当量が好ましく、特に好ましくは1.8〜3.2当量である。一方、有機酸の使用量は一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体1当量に対し、5〜40当量が好ましく、特に好ましくは7〜20当量である。該還元反応の温度は0〜80℃が好ましく、特に好ましくは20〜50℃である。反応時間は0.5〜48時間が好ましく、特に好ましくは1〜10時間である。
【0115】
該還元反応による本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法は、好ましくは窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気下で実施する。
【0116】
かくして得られた、本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定されず、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。
【0117】
(アルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法)
さらに、本発明の一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法について述べる。
【0118】
本発明の一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は、炭素数3〜30のアルカノイルクロリド、ルイス酸、及びハロベンゾカルコゲノフェンを、−30〜20℃で混合しフリーデルクラフツアシル化反応させることで製造することができる。
【0119】
本発明の一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法で用いられる炭素数3〜30のアルカノイルクロリドの具体例として、例えば、ヘキサノイルクロリド、オクタノイルクロリド、デカノイルクロリド、ウンデカノイルクロリド、ドデカノイルクロリド、テトラデカノイルクロリド、ペンタデカノイルクロリド、ヘキサデカノイルクロリド、オクタデカノイルクロリド、フェニルアセチルクロリド、4−オクチルフェニルアセチルクロリド、4−ドデシルフェニルアセチルクロリド、パーフルオロオクタノイルクロリド、パーフルオロデカノイルクロリド等を挙げることができ、好ましくはデカノイルクロリド、ドデカノイルクロリド、テトラデカノイルクロリド、オクタデカノイルクロリド等である。
【0120】
本発明の一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法で用いられるルイス酸は特に限定はなく、具体例として、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、BF、BF・エーテル錯体、BCl、4塩化チタン等を挙げることができ、好ましくは塩化アルミニウムである。
【0121】
本発明の一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法で用いられるハロベンゾカルコゲノフェンの具体例として、例えば、2,3−ジブロモベンゾチオフェン、2,3−ジクロロベンゾチオフェン、2,3−ジヨードベンゾチオフェン、2−ブロモ−3−クロロベンゾチオフェン、2−ブロモ−3−フルオロベンゾチオフェン等を挙げることができ、好ましくは2,3−ジブロモベンゾチオフェンである。
【0122】
本発明の一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法は、炭素数3〜30のアルカノイルクロリドとルイス酸を混合させた後、ハロベンゾカルケゴノフェンを添加することが好ましい。
【0123】
係るフリーデルクラフツアシル化反応において、用いる炭素数3〜30のアルカノイルクロリドの使用量はハロベンゾカルコゲノフェン1当量に対し、0.9〜2.2当量が好ましく、特に好ましくは1.0〜1.5当量である。一方、ルイス酸の使用量はハロベンゾカルコゲノフェン1当量に対し、0.8〜2.1当量が好ましく、特に好ましくは0.9〜1.4当量である。該アシル化反応の温度は−40〜50℃が好ましく、特に好ましくは−30〜20℃である。反応時間は1〜100時間が好ましく、特に好ましくは12〜80時間である。
【0124】
本発明の一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾチオフェン誘導体の製造方法は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒に特に限定はなく、具体例として、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化物;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素;ニトロベンゼン等を挙げることができ、好ましくはハロゲン化物であり、より好ましくはジクロロメタンである。
【0125】
かくして得られた、本発明の一般式(4)で示されるアルカノイルハロベンゾチオフェン誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定はなく、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。
【0126】
((エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の製造方法)
次に、一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の製造方法について述べる。
【0127】
本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾチオフェン誘導体の原料である一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体は上記一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体から製造することができる。
【0128】
即ち、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体をアルキルリチウムを用いてリチオ化した後、ジメチルジカルコゲニドと反応させることにより、一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体を製造することができる。
【0129】
一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体をリチオ化する場合、用いるアルキルリチウムは、一般式(3)におけるXをリチウムに置換することができるものである限り特に限定はなく、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、メチルリチウム、ヘキシルリチウム等を挙げることができ、好ましくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムである。
【0130】
該アルキルリチウムの使用量は一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体1当量に対し、0.9〜3.5当量が好ましく、特に好ましくは1.1〜2.2当量である。
【0131】
該リチオ化は、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定はなく、例えばTHF、エーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、特に好ましくはTHF、エーテルである。又、これら溶媒は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。該メタル化の温度は−90〜30℃で行うことが好ましく、特に好ましくは−80〜20℃である。反応時間は1〜240分が好ましく、特に好ましくは10〜120分である。なお、メタル化の進行は、反応液の一部を取り出し、水で反応を停止させた後、薄層クロマトグラフィーあるいはガスクロマトグラフィーで分析することで監視することができる。
【0132】
該リチオ化は、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体に、リチオ化剤を添加しても良いし、リチオ化剤に一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体を添加するいずれの方法を用いても実施することができる。
【0133】
該リチオ化により生成したリチウム塩は、次いでジメチルジカルコゲニドと反応させることにより、一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体が得られるものである。用いるジメチルジカルコゲニドとしては、例えばジメチルジスルフィド、ジメチルジセレニド、ジメチルジテルリド等が挙げられ、好ましくはジメチルジスルフィドである。係る反応は、前記リチオ化により生成したリチウム塩を含む反応混合物に前記ジメチルジカルコゲニドを添加する方法;生成したリチウム塩を含む反応混合物を前記ジメチルジカルコゲニドに添加する方法のいずれを用いてもよい。
【0134】
リチオ化により生成したリチウム塩とジメチルジカルコゲニドと反応させる際には、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒は特に限定はなく、例えばTHF、エーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグライム、ジオキサン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等であり、好ましくはTHF、エーテルである。用いるジメチルジカルコゲニドの使用量は、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体1当量に対し、0.9〜3.5当量が好ましく、特に好ましくは1.1〜2.2当量である。該ジメチルジカルコゲニドとの反応温度は−90〜30℃が好ましく、特に好ましくは−80〜20℃であり、反応時間は1〜120分が好ましく、特に好ましくは1〜70分である。
【0135】
かくして得られた、本発明の一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体は、さらに精製することができる。精製する方法は特に限定はなく、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。
【0136】
((エチニル)ハロアレーン誘導体の製造方法)
次に、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体の製造方法について述べる。
【0137】
本発明の一般式(2)で示される(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の原料である上記一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体は、上記一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)から製造することができる。
【0138】
即ち、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体は、一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)と下記一般式(6)で示されるアセチレン誘導体をパラジウム触媒及び/又はニッケル触媒存在下で反応させることにより製造することができる。
【0139】
H−≡−X (6)
(ここで、置換基Xは一般式(3)で示される置換基と同意義を示す。)
一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)と一般式(6)で示されるアセチレン誘導体の反応に用いる触媒はパラジウム触媒及び/又はニッケル触媒であれば特に限定はなく、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム/トリフェニルホスフィン混合物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム、ジアセタトビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)パラジウム、ジクロロ(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)パラジウム、酢酸パラジウム/トリフェニルホスフィン混合物、酢酸パラジウム/トリ(o−トリル)ホスフィン混合物、酢酸パラジウム/トリ−tert−ブチルホスフィン混合物、酢酸パラジウム/2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル混合物、ジクロロ(エチレンジアミン)パラジウム、ジクロロ(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム、ジクロロ(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム/トリフェニルホスフィン混合物等のパラジウム触媒;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロ(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)ニッケル、ジクロロ(1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン)ニッケル、ジクロロ(エチレンジアミン)ニッケル、ジクロロ(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル、ジクロロ(N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン)ニッケル、ジクロロ(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル/トリフェニルホスフィン混合物、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル/トリフェニルホスフィン混合物等のニッケル触媒;を挙げることができる。中でも、好ましい触媒はパラジウム触媒であり、特に好ましい触媒はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムである。又、これら触媒は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良い。
【0140】
一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)と一般式(6)で示されるアセチレン誘導体をパラジウム触媒及び/又はニッケル触媒存在下で反応させる際には、好ましくは溶媒中で実施する。用いる溶媒に特に限定はなく、例えばTHF、エーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、エタノール、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、ピロリジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等を挙げることができ、又、これら溶剤は1種若しくは2種以上の混合物を用いても良く、例えばTHF/ジイソプロピルアミン、THF/トリエチルアミン、トルエン/ピペリジン、トルエン/水、ジイソプロピルアミン/トルエン/水、トルエン/エタノール/水のような2乃至3成分系でも使用することができる。
【0141】
パラジウム触媒、ニッケル触媒の使用量は一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)1モルに対し、0.05〜10モル%が好ましく、特に好ましくは0.1〜5モル%である。
【0142】
一般式(6)で示されるアセチレン誘導体の使用量は一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)1当量に対し、0.4〜1.8当量が好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.6当量、特に好ましくは0.5〜1.2当量である。アセチレン誘導体としては、例えばトリメチルシリルアセチレン、ブロモアセチレン、ヨードアセチレン、クロロアセチレン、アセチレン等を挙げることができ、好ましくはトリメチルシリルアセチレンである。
【0143】
なお、反応系中に銅化合物を存在させることが好ましい。該銅化合物しては特に限定はなく、例えば塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、酢酸銅(I)等の1価銅;塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(II)、アセチルアセトナート銅(II)等の2価銅等を挙げることができる。その中でも好ましくは1価銅であり、特に好ましくはヨウ化銅(I)である。これらの銅化合物の使用量は該パラジウム触媒及び/又はニッケル触媒1当量に対し、0.5〜4.0当量が好ましく、特に好ましくは0.6〜2.0当量である。
【0144】
反応の際の温度は10〜120℃が好ましく、さらに好ましくは20〜80℃、特に好ましくは20〜60℃であり、反応時間は1〜96時間が好ましく、特に好ましくは2〜72時間である。
【0145】
なお、反応系中に塩基を存在させることもできる。この場合の塩基の種類としては特に限定はなく、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、りん酸カリウム、りん酸ナトリウム、ナトリウムtert−ブトキサイド、カリウムtert−ブトキサイド、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等の無機塩基;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、テトラブチルアンモニウムフルオライド等の有機塩基を好適なものとして挙げることができる。これらの塩基の使用量は一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)1当量に対し、0.4〜10.0当量が好ましく、特に好ましくは0.5〜4.0当量である。さらにこれらの塩基と併用し、相間移動触媒を用いることもできる。相間移動触媒の種類は特に限定はなく、例えばトリオクチルメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等を好適なものとして挙げることができる。これらの相間移動触媒の使用量は一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)1当量に対し、0.1〜1.5当量が好ましく、特に好ましくは0.2〜0.8当量である。
【0146】
さらに反応系中にトリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン等のホスフィンを存在させることもできる。これらのホスフィンの使用量は、該パラジウム触媒及び/又はニッケル触媒1当量に対し、0.9〜5.0当量が好ましく、特に好ましくは1.0〜3.0当量である。
【0147】
また、一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0も可)と一般式(6)で示されるアセチレン誘導体をパラジウム触媒及び/又はニッケル触媒存在下で反応させる方法は、例えば、「シンレット」、2004年、165−168頁に記載されている方法で実施することもできる。
【0148】
また、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体の置換基Xは、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル基、水素原子を示すが、Xが水素原子の場合は、一般式(3)中のXがトリメチルシリル基であるものから誘導することもできる。即ち、該トリメチルシリル基は例えば、メチルアルコール/THF中、炭酸カリウム等の無機塩基で処理することで容易に水素原子へ置換することができる。あるいは該トリメチルシリル基は、THF中、テトラブチルアンモニウムフルオリドと反応させた後、水で処理することでも容易に水素原子へ置換することができる。
【0149】
かくして得られた、一般式(3)で示される(エチニル)ハロアレーン誘導体は、精製することができる。精製する方法は特に限定はなく、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶化、あるいは昇華による方法を挙げることができる。また、単離精製することなく次の反応の原料として使用することもできる。
【0150】
本発明の一般式(1)で示されるハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は、電子ペーパー及び有機EL等のフレキシブルディスプレイ、あるいはICタグ用のトランジスタの有機半導体材料の原料として、さらに有機半導体レーザー材料の原料として利用することができる。
【発明の効果】
【0151】
本発明は一般式(1)で示される新規なハロベンゾカルコゲノフェン誘導体、及びその一部の原料となる新規なアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体、並びにそれらの製造方法を提供する。特に、本発明はアルキル基等の置換基を特定の位置に有するハロベンゾカルコゲノフェン誘導体を提供することができる。
【0152】
本発明のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体は2位のハロゲン原子又は水素原子の反応活性が高いことから選択的に亜鉛あるいはホウ素等の元素に交換することが可能で、パラジウムカップリング反応の反応剤として有用である。さらにはアルキル基等を有することから塗布による半導体活性相の形成が可能な高い溶解度を有する有機半導体活性相構成材料の原料として利用することができる。
【実施例】
【0153】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0154】
生成物の同定にはH NMRスペクトル及びマススペクトルを用いた。なお、H NMRスペクトルは日本電子製JEOL GSX−270WB(270MHz)を用いて、マススペクトル(MS)は日本電子製JEOL JMS−700を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)を用いて測定した。
【0155】
反応における溶媒は市販の脱水溶媒をそのまま用いた。
【0156】
合成例1 (1,2―ジドデシルベンゼンの合成)
1,2−ジドデシルベンゼンは「日本化学会誌」1989年、983−987頁に従い以下の様に合成した。
【0157】
1,2−ジクロロベンゼン2.22g(15.1mmol)、ジクロロ[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(東京化成工業製)131mg(0.24mmol)、エーテル12mlの混合液にドデシルマグネシウムブロミド(シグマ−アルドリッチ製、1.0mol/lエーテル溶液)45ml(45.0mmol)を窒素雰囲気中0℃で滴下した。35℃で20時間反応を行い、反応混合物を0℃に冷やして希塩酸を加え、エーテルで抽出した。エーテル溶液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順に洗浄し、塩化カルシウムで乾燥させた。得られた液体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)及び加熱減圧乾燥で精製し、目的の1,2―ジドデシルベンゼン5.56g(13.4mmol)を得た(収率88%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=7.11(m,4H),2.59(t,J=7.8Hz,4H),1.55(m,4H),1.26(m,36H),0.88(t,J=6.8Hz,6H)。
MS m/z: 414(M,100%),260(M−C1123,71%),106(M−C2246,98%)。
【0158】
合成例2 (1,2―ジドデシル−4−ブロモ−5−ヨードベンゼンの合成)(一般式(1)のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0)の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例1で合成した1,2−ジドデシルベンゼン2.95g(7.11mmol)、過ヨウ素酸・2水和物402mg(1.76mmol)、ヨウ素960mg(3.78mmol)、酢酸15ml、水0.8ml、及び硫酸0.11mlを添加した。65℃で17時間撹拌後、室温まで冷却後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加し、反応を停止させた。ジクロロメタンで抽出し、有機相を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機相を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン)、3.73gの液体を得た。この液体にジクロロメタン20mlを添加し、0℃に冷却した。鉄粉(シグマ−アルドリッチ製)67mg及びヨウ素10mg(0.04mmol)を添加後、臭素0.39ml(7.61mmol)を滴下した。0℃で6時間撹拌後、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加し、反応を停止させた。有機相を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルを用いて濾過し、濾液を濃縮後、−30℃下で2回ヘプタン再結晶精製を行い、1,2―ジドデシル−4−ブロモ−5−ヨードベンゼンを得た(3.14g、収率71%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=7.59(s,1H),7.36(s,1H),2.58−2.40(m,4H),1.57−1.45(m,4H),1.42−1.23(m,36H),0.90(t,J=6.6Hz,6H)。
【0159】
実施例1 (1,2―ジドデシル−5−(トリメチルシリル)エチニル−4−ブロモベンゼンの合成)(一般式(3)の(エチニル)ハロアレーン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例2で合成した1,2―ジドデシル−4−ブロモ−5−ヨードベンゼン2.78g(4.49mmol)、トルエン20ml、及びトリエチルアミン15mlを添加した。さらにジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(和光純薬工業製)33.3mg(0.047mmol)、ヨウ化銅(I)(和光純薬工業製)6.8mg(0.036mmol)、及びトリメチルシリルアセチレン(和光純薬工業製)0.67ml(0.46g、4.7mmol)(一般式(6)の化合物)を添加した。この混合物を50℃で7時間反応を実施した。得られた反応物にトルエン及び飽和食塩水を添加し、分相後、有機相を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン)、1,2―ジドデシル−5−(トリメチルシリル)エチニル−4−ブロモベンゼンの黄色油状物2.29gを得た(収率86%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=7.31(s,1H),7.26(s,1H),2.58−2.44(m,4H),1.58−1.44(m,4H),1.26(m,36H),0.88(t,J=6.9Hz,6H),0.28(s,9H)。
MS m/z:590(M,39%),575(M−CH,100%)。
【0160】
NMR及びMS測定より、1,2―ジドデシル−5−(トリメチルシリル)エチニル−4−ブロモベンゼンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0161】
【化28】

【0162】
実施例2 (1,2―ジドデシル−5−(トリメチルシリル)エチニル−4−メチルチオベンゼンの合成)(一般式(2)の(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器にTHF30mlを加え、−75℃に冷却し、tert−ブチルリチウム(関東化学製、1.46mol/l、ペンタン溶液)4.9ml(7.2mmol)を添加した。実施例1で合成した1,2―ジドデシル−5−(トリメチルシリル)エチニル−4−ブロモベンゼン1.66g(2.81mmol)及びTHF12mlからなる溶液をキャヌラーを用いて−75℃下で投入した。−75℃で40分間撹拌(リチオ化)した後、−75℃でジメチルジカルコゲニドとしてジメチルジスルフィド(シグマ−アルドリッチ製)669mg(7.10mmol)を添加した。−75℃で1時間撹拌後、3M塩酸水溶液を添加し、反応を停止させた。トルエン及び水を加え分相し、トルエンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン及びヘキサン:ジクロロメタン=10:1)、1,2―ジドデシル−5−(トリメチルシリル)エチニル−4−メチルチオベンゼンの薄黄色固油状物1.45gを得た(収率92%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=7.21(s,1H),6.92(s,1H),2.62−2.44(m,4H),2.47(s,3H),1.58−1.44(m,4H),1.26(m,36H),0.88(t,J=6.9Hz,6H),0.27(s,9H)。
【0163】
NMR測定より、1,2―ジドデシル−5−(トリメチルシリル)エチニル−4−メチルチオベンゼンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0164】
【化29】

【0165】
実施例3 (5,6−ジ(ドデシル)−2,3−ジヨードベンゾチオフェンの合成)(一般式(1)のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
実施例3−1) (5,6−ジ(ドデシル)−2−トリメチルシリル−3−ヨードベンゾチオフェンの合成)(一般式(5)の2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例2で合成した1,2―ジドデシル−5−(トリメチルシリル)エチニル−4−メチルチオベンゼン1.43g(2.56mmol)及びジクロロメタン27mlを添加した。得られた混合物にヨウ素703mg(2.77mmol)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加後、分相し、有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、5,6−ジ(ドデシル)−2−トリメチルシリル−3−ヨードベンゾチオフェンの黄色油状物1.64gを得た(収率97%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=7.58(s,1H),7.52(s,1H),2.78−2.67(m,4H),1.68−1.45(m,4H),1.26(m,36H),0.88(t,J=8.1Hz,6H)。
【0166】
NMR測定より、5,6−ジ(ドデシル)−2−トリメチルシリル−3−ヨードベンゾチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0167】
【化30】

【0168】
実施例3−2) (5,6−ジ(ドデシル)−2,3−ジヨードベンゾチオフェンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例3−1)で合成した5,6−ジ(ドデシル)−2−トリメチルシリル−3−ヨードベンゾチオフェン1.64g(2.45mmol)及びジクロロメタン50mlを添加した。得られた混合物を氷冷し、1塩化ヨウ素(シグマ−アルドリッチ製、1.0mol/l、ジクロロメタン溶液)2.7ml(2.7mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した(脱トリメチルシリル化)。得られた反応混合物に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を添加後、分相し、有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、残渣をヘプタンから再結晶精製し、5,6−ジ(ドデシル)−2,3−ジヨードベンゾチオフェンの白色固体1.66gを得た(収率94%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=7.48(s,1H),7.40(s,1H),2.76−2.63(m,4H),1.68−1.45(m,4H),1.26(m,36H),0.88(t,J=8.1Hz,6H)。
MS m/z:722(M,100%),596(M−I,5%),413(M−2C1123+1,87%)。
【0169】
NMR測定及びMS測定より、5,6−ジ(ドデシル)−2,3−ジヨードベンゾチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0170】
【化31】

【0171】
合成例3 (4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸の合成)
4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸は「ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー」(米国)、1951年、16巻、1577−1581頁を参考に、以下の様に合成した。
【0172】
4−ブロモフタルイミド(東京化成工業製)9.95g(44.0mmol)を窒素ガスで置換した50mlの二口ナスフラスコに入れた。次いでヨウ素5.87g(23.1mmol)及び10%発煙硫酸(ヨツハタ化学工業製)12mlを加え、90℃で23時間反応を行った。反応混合物を室温に冷やして氷に注ぎ入れた後、ガラスフィルターでろ過し、黄色固体12.8gを得た。得られた固体を濃硫酸35mlに溶解させ、130℃で5時間反応を行った。反応混合物を氷冷後、氷水を加えて析出した固体をろ過し、フタル酸誘導体の固体13.8gを得た。次に得られた固体を、水酸化ナトリウム3.6gを水18mlに溶かした水溶液に室温で溶かした。この塩基性水溶液に酢酸を加えpHを3〜4に調整し、析出するフタル酸誘導体のモノナトリウム塩の白色沈殿をろ過した。得られた白色固体を水に懸濁させ、濃塩酸でpHを1以下にし、再びフタル酸誘導体として白色固体6.45gを得た。この固体をトルエン48mlに溶かし、無水酢酸8.7g(85.7mmol)を加え、105℃で4時間反応を行った。反応液を減圧濃縮して白色固体5.87gを得た。この固体をトルエンで再結晶精製し、目的の4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸5.13g(14.5mmol)を得た(収率33%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=8.51(s,1H),8.23(s,1H)。
MS m/z: 353(M,100%),309(M−CO,18%),282(M−C,10%),155(M−C−I,16%),74(M−C−I−Br,32%)。
【0173】
合成例4 (1,2−ジ(ペンタデシル)ベンゼンの合成)
合成例1でドデシルマグネシウムブロミドの代わりに、ペンタデシルマグネシウムブロミド(エーテル中、1−ブロモペンタデカンとマグネシウムから調製)を用いた以外は合成例1と同じ操作を繰り返して1,2−ジ(ペンタデシル)ベンゼンを合成した(収率80%)。
【0174】
合成例5 (6,7−ジ(ペンタデシル)−2−ブロモ−3−ヨードアントラキノンの合成)
合成例3で得られた4−ブロモ−5−ヨード無水フタル酸1.06g(3.00mmol)、合成例4で得られた1,2−ジ(ペンタデシル)ベンゼン1.55g(3.11mmol)、及びジクロロエタン3.0mlの混合液に塩化アルミニウム818mg(6.13mmol)を加え、加熱還流下で1.5時間反応を行った。水を加えてクエンチし、さらに水洗浄を行い、加熱真空乾燥後、白色固体を2.7g得た。得られた固体に濃硫酸19mlを添加し、80℃で1時間反応した。反応混合物を氷に注ぎ入れ、析出した粘性固体をろ過して水で洗浄した。乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)及びヘプタンからの再結晶で精製し、6,7−ジ(ペンタデシル)−2−ブロモ−3−ヨードアントラキノンの固体525mg(0.630mmol)を得た(収率21%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=8.73(s,1H),8.45(s,1H),8.05(s,2H),2.75(t,J=7.8Hz,4H),1.62(m,4H),1.26(m,48H),0.88(t,J=6.3Hz,6H)。
【0175】
合成例6 (6,7−ジ(ペンタデシル)−2−ブロモ−3−ヨードアントラセンの合成)(一般式(1)のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体(但し、n=o=0)の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例5で合成した6,7−ジ(ペンタデシル)−2−ブロモ−3−ヨードアントラキノン518mg(0.622mmol)を入れた。次いでTHF7mlを加え、水素化ジイソブチルアルミニウム(関東化学製、0.99mol/l、トルエン溶液)1.7ml(1.7mmol)を加え、室温で1.5時間反応を行った。次いで反応混合物に6M塩酸水溶液10mlを加え、65℃で3時間反応を行った。反応混合物を室温まで冷やし、エーテルで抽出した。エーテル溶液を飽和食塩水で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮した。得られた残渣の上記の水素化ジイソブチルアルミニウム還元/6M塩酸水溶液処理をさらに2回繰り返した。得られた粗生成物を、メタノール/クロロホルムから再沈殿精製することで、6,7−ジ(ペンタデシル)−2−ブロモ−3−ヨードアントラセンの淡黄色固体370mg(0.460mmol)を得た(収率74%)。
H NMR(CDCl,22℃):δ=8.55(s,1H),8.27(s,1H),8.16(s,1H),8.15(s,1H),7.72(s,2H),2.78(m,4H),1.71(m,4H),1.27(m,48H),0.88(t,J=6.3Hz,6H)。
【0176】
実施例4 (6,7−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−ブロモアントラセンの合成)(一般式(3)の(エチニル)ハロアレーン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例6で合成した6,7−ジ(ペンタデシル)−2−ブロモ−3−ヨードアントラセン504mg(0.627mmol)、トルエン10ml、及びトリエチルアミン2mlを添加した。さらにジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(和光純薬工業製)13.2mg(0.0019mmol)、ヨウ化銅(I)(和光純薬工業製)7.2mg(0.039mmol)、及びトリメチルシリルアセチレン(和光純薬工業製)0.095ml(66mg、0.67mmol)(一般式(6)の化合物)を添加した。この混合物を室温で5時間反応を実施した。反応混合物をシリカゲル濾過(溶媒;トルエン)し、得られた濾液を減圧濃縮し、さらに真空乾燥した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン)、6,7−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−ブロモアントラセン440mgを得た(収率91%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=8.21(s,1H),8.19(s,1H),8.17(s,1H),8.15(s,1H),7.72(s,2H),2.78(t,J=7.7Hz,4H),1.71(m,4H),1.26(m,48H),0.88(t,J=6.5Hz,6H),0.32(s,9H)。
【0177】
NMR測定より、6,7−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−ブロモアントラセンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0178】
【化32】

【0179】
実施例5 (6,7−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−メチルチオアントラセンの合成)(一般式(2)の(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例4で合成した6,7−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−ブロモアントラセン211mg(0.272mmol)及びエーテル10mlを添加した。得られた混合物を0℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.61mol/l、ヘキサン溶液)0.34ml(0.55mmol)を滴下した(リチオ化)。0℃で5分間攪拌後、ジメチルジカルコゲニドとしてジメチルジスルフィド(シグマ−アルドリッチ製)55mg(0.58mmol)を滴下した。0℃で30分間攪拌後、水を加えて反応をクエンチした。エーテルを添加し分相後、有機相を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン:クロロホルム=9:1)、6,7−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−メチルチオアントラセンの黄色固体161mgを得た(収率80%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=8.16(s,1H),8.12(s,1H),8.10(s,1H),7.70(s,1H),7.68(s,1H),7.52(s,1H),2.77(t,J=7.0Hz,4H),2.60(s,3H),1.70(m,4H),1.26(m,48H),0.88(t,J=6.6Hz,3H),0.32(s,9H)。
【0180】
NMR測定より、6,7−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−メチルチオアントラセンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0181】
【化33】

【0182】
実施例6 (7,8−ジ(ペンタデシル)アントラチオフェンの合成)(一般式(1)のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
実施例6−1) (7,8−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)アントラチオフェンの合成)(一般式(5)の2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例4で合成した6,7−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−ブロモアントラセン100mg(0.129mmol)及びエーテル5mlを添加した(メタル化)。得られた混合物を0℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.66mol/l、ヘキサン溶液)0.158ml(0.262mmol)を滴下した。0℃で5分間攪拌後、−50℃に冷却し、カルコゲンとして硫黄(シグマ−アルドリッチ製)10.3mg(0.323mmol)を投入した。1時間要して室温まで昇温した後、エチルアルコール1mlを加え、室温で一晩撹拌した。ここへ1M塩酸水溶液を加えて反応をクエンチし、エーテルを添加し、分相後、有機相を水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、7,8−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)アントラチオフェンの黄色固体35.8mgを得た(収率38%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=8.47(s,2H),8.44(s,1H),8.38(s,1H),7.75(s,2H),7.51(s,1H),2.79(t,J=7.8Hz,4H),1.72(m,4H),1.26(m,48H),0.88(t,J=6.3Hz,6H),0.42(s,9H)。
【0183】
NMR測定より、7,8−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)アントラチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0184】
【化34】

【0185】
実施例6−2) (7,8−ジ(ペンタデシル)アントラチオフェンの合成)(一般式(1)のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例6−1)で合成した7,8−ジ(ペンタデシル)−2−(トリメチルシリル)アントラチオフェン35.8mg(0.049mmol)及びTHF5mlを添加した。得られた混合物にテトラブチルアンモニウムフルオリド(シグマ−アルドリッチ製、1.0mol/l、THF溶液)0.1ml(0.1mmol)を滴下した(脱トリメチルシリル化)。室温で1時間攪拌後、水を添加し、分相した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、7,8−ジ(ペンタデシル)アントラチオフェンの黄色固体26.3mgを得た(収率82%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=8.46(s,1H),8.38(s,1H),8.23(s,1H),8.21(s,1H),7.76(s,1H),7.74(s,1H),7.52(d,J=5.4Hz,1H),7.47(d,J=5.4Hz,1H),2.81(t,J=7.6Hz,4H),1.73(m,4H),1.26(m,48H),0.88(t,J=6.6Hz,6H)。
【0186】
NMR測定より、7,8−ジ(ペンタデシル)アントラチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0187】
【化35】

【0188】
実施例7 (6−ドデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンの合成)(一般式(4)のアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、300ml二口ナスにハロベンゾカルコゲノフェンとして2,3−ジブロモベンゾチオフェン(シグマ−アルドリッチ製)10.33g(35.37mmol)及びジクロロメタン150mlを加えた。−25℃に冷却した後、アルカノイルクロリドとしてドデカノイルクロリド(和光純薬工業製)9.00ml(8.28g、37.8mmol)、次いでルイス酸として塩化アルミニウム(和光純薬工業製)5.05g(37.8mmol)を添加した。−25℃で2日間反応させた後(フリーデルクラフツアシル化反応)、水を加えて反応を停止させた。分相し、有機相に飽和炭酸ナトリウム水溶液を添加し、一昼夜撹拌した(過剰のドデカン酸除去のため)。分相、水洗し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。溶離液をヘキサンとすることで、未反応の2,3−ジブロモベンゾチオフェン及び副生物のトリブロモベンゾチオフェンが溶出し、溶離液をヘキサン:トルエン=10:1とすると異性体の4−ドデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンが溶出し、溶離液をヘキサン:トルエン=2:1とすると目的物を含む成分が溶出した。この最後の成分をヘプタン30mlで再結晶精製し、目的物である6−ドデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンの白色固体4.39g(9.25mmol)得た(収率26%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=8.35(s,1H),8.01(dd,J=8.5Hz,1.4Hz,1H),7.80(d,J=8.4Hz,1H),3.03(t,J=7.6Hz,2H),1.77(m,2H),1.26(m,16H),0.88(t、J=8.1Hz,3H)。
MS m/z: 474(M,11%),394(M−Br,2%),334(M−C1021+1,100%),319(M−C1123,58%)。
【0189】
NMR測定及びMS測定より、6−ドデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0190】
【化36】

【0191】
実施例8 (6−ドデシル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンの合成)(一般式(1)のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例7で合成した6−ドデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェン3.85g(8.12mmol)及びトリフルオロ酢酸(和光純薬工業製)6.3mlを添加した。氷冷後、トリエチルシラン(信越化学製)2.9mlを滴下した。その後、40℃で6時間反応(アルキルシランによる還元)後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後(溶離液;ヘキサン)、目的物を含むフラクションを130パスカル、90℃で真空加熱し、低沸分を除去した。残渣に6−ドデシル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンの白色固体3.35g(7.28mmol)を得た。収率90%。
H NMR(CDCl,23℃):δ=7.63(d,J=8.1Hz,1H),7.50(d,J=1.1Hz,1H),7.24(dd,J=8.1Hz,1.4Hz,1H),2.71(t,J=8.1Hz,2H),1.65(m,2H),1.25(m,18H),0.88(t、J=8.1Hz,3H)。
MS m/z: 460(M,65%),380(M−Br,4%),305(M−C1123,100%)。
【0192】
NMR測定及びMS測定より、6−ドデシル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0193】
【化37】

【0194】
実施例9 (6−オクタデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンの合成)(一般式(4)のアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、200ml二口ナスにアルカノイルクロリドとしてオクタデカノイルクロリド(シグマ−アルドリッチ製)7.50ml(6.75g、22.3mmol)及びジクロロメタン50mlを加えた。−15℃に冷却した後、ルイス酸として塩化アルミニウム(和光純薬工業製)2.76g(20.7mmol)を添加した。−15℃で30分間攪拌後、−25℃に冷却し、ハロベンゾカルコゲノフェンとして2,3−ジブロモベンゾチオフェン(シグマ−アルドリッチ製)5.02g(17.1mmol)を添加し、−25℃で3日間反応させた後(フリーデルクラフツアシル化反応)、水を加えて反応を停止させた。ジクロロメタンを添加後分相し、有機相を水で洗浄した。有機相に飽和炭酸ナトリウム水溶液を添加し、一昼夜撹拌することでオクタデカン酸をナトリウム塩とした。分相し、有機相を減圧濃縮した。得られた残渣をショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘプタン及びヘプタン:トルエン=3:1)、さらにヘプタンから再結晶精製することで6−オクタデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンの白色固体3.91gを得た(収率41%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=8.33(s,1H),8.00(dd,J=8.5Hz,1.4Hz,1H),7.80(d,J=8.4Hz,1H),3.02(t,J=7.6Hz,2H),1.77(m,2H),1.26(m,28H),0.88(t、J=8.1Hz,3H)。
MS m/z: 558(M,18%),479(M−Br+1,8%),334(M−C1633+1,100%)。
【0195】
NMR測定及びMS測定より、6−オクタデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0196】
【化38】

【0197】
実施例10 (6−オクタデシル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンの合成)(一般式(1)のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例9で合成した6−オクタデカノイル−2,3−ジブロモベンゾチオフェン2.18g(3.90mmol)及びトリフルオロ酢酸(和光純薬工業製)5mlを添加した。室温でトリエチルシラン(信越化学製)1.5mlを滴下した。得られた混合物を60℃で4時間反応(アルキルシランによる還元)後、減圧濃縮した。残渣を120パスカル、100℃で真空加熱し、低沸分を除去した。残渣に6−オクタデシル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンの白色固体2.11gを得た(収率99%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=7.63(d,J=8.1Hz,1H),7.50(d,J=1.1Hz,1H),7.24(dd,J=8.1Hz,1.4Hz,1H),2.71(t,J=8.1Hz,2H),1.65(m,2H),1.25(m,30H),0.88(t、J=8.1Hz,3H)。
【0198】
NMR測定より、6−オクタデシル−2,3−ジブロモベンゾチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0199】
【化39】

【0200】
実施例11 (6−オクタデシル−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−ブロモベンゾチオフェンの合成)(一般式(3)の(エチニル)ハロアレーン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例10で合成した6−オクタデシル−2,3−ジブロモベンゾチオフェン351mg(0.644mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(和光純薬工業製)4.2mg(0.0060mmol)、ヨウ化銅(I)(和光純薬工業製)0.8mg(0.0042mmol)、THF4ml、及びトリエチルアミン3mlを添加した。さらに及びトリメチルシリルアセチレン(和光純薬工業製)72.3mg(0.736mmol)(一般式(6)の化合物)を添加した。この混合物を室温で15時間反応を実施した。得られた混合物を氷冷し、3M塩酸水溶液及びトルエンを添加し、分相した。得られた有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン)、6−オクタデシル−2−トリメチルシリルエチニル−3−ブロモベンゾチオフェンの白色固体345mgを得た(収率95%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=7.66(d,J=8.1Hz,1H),7.52(d,J=1.1Hz,1H),7.27(dd,J=8.1Hz,1.4Hz,1H),2.72(t,J=8.1Hz,2H),1.65(m,2H),1.25(m,30H),0.88(t、J=8.1Hz,3H),0.30(s,9H)。
NMR測定より、6−オクタデシル−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−ブロモベンゾチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0201】
【化40】

【0202】
実施例12 (6−オクタデシル−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−メチルチオベンゾチオフェンの合成)(一般式(2)の(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例11で合成した6−オクタデシル−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−ブロモベンゾチオフェン345mg(0.614mmol)及びTHF7mlを添加した。得られた混合物を−74℃に冷却し、tert−ブチルリチウム(関東化学製、1.46mol/l、ペンタン溶液)0.84ml(1.22mmol)を滴下した。−74℃で20分間攪拌(リチオ化)後、ジメチルカルコゲニドとしてジメチルジスルフィド(シグマ−アルドリッチ製)115mg(1.22mmol)を滴下した。−74℃で70分間攪拌後、3M塩酸水溶液を加えて反応をクエンチした。水及びトルエンを添加し、分相後、有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン)、6−オクタデシル−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−メチルチオベンゾチオフェンの白色固体278mgを得た(収率86%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=7.80(d,J=8.1Hz,1H),7.52(d,J=1.1Hz,1H),7.23(dd,J=8.1Hz,1.4Hz,1H),2.71(t,J=8.1Hz,2H),2.55(s,3H),1.65(m,2H),1.25(m,30H),0.88(t、J=8.1Hz,3H),0.30(s,9H)。
【0203】
NMR測定より、6−オクタデシル−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−メチルチオベンゾチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0204】
【化41】

【0205】
実施例13 (オクタデシル−2,3−ジヨードベンゾチエノチオフェンの合成)(一般式(1)のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
実施例13−1) (オクタデシル−3−ヨード−2−(トリメチルシリル)ベンゾチエノチオフェンの合成)(一般式(5)の2−トリメチルシリル−3−ハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例12で合成した6−オクタデシル−2−(トリメチルシリル)エチニル−3−メチルチオベンゾチオフェン277mg(0.525mmol)及びジクロロメタン14mlを添加した。得られた混合物にヨウ素146mg(0.577mmol)を添加し、40℃で10時間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、チオ硫酸ナトリウム水溶液を添加後、分相し、有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶媒;ヘキサン)、オクタデシル−3−ヨード−2−(トリメチルシリル)ベンゾチエノチオフェンの無色オイル283mgを得た(収率84%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=7.68(d,J=8.1Hz,1H),7.63(d,J=1.1Hz,1H),7.23(dd,J=8.1Hz,1.4Hz,1H),2.72(t,J=8.1Hz,2H),1.67(m,2H),1.25(m,30H),0.88(t、J=8.1Hz,3H),0.49(s,9H)。
【0206】
NMR測定より、オクタデシル−3−ヨード−2−(トリメチルシリル)ベンゾチエノチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0207】
【化42】

【0208】
実施例13−2) (オクタデシル−2,3−ジヨードベンゾチエノチオフェンの合成)
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例13−1)で合成したオクタデシル−3−ヨード−2−(トリメチルシリル)ベンゾチエノチオフェン283mg(0.441mmol)及びジクロロメタン12mlを添加した。得られた混合物を氷冷し、一塩化ヨウ素(シグマ−アルドリッチ製、1.0mol/l、ジクロロメタン溶液)0.49ml(0.49mmol)を添加し、室温で5時間攪拌した。(脱トリメチルシリル化)得られた反応混合物を減圧濃縮し、残渣をヘプタンから再結晶精製し、オクタデシル−2,3−ジヨードベンゾチエノチオフェンの淡黄色固体288mg(0.415mmol)を得た(収率94%)。
H NMR(CDCl,23℃):δ=7.63(brs,1H),7.62(d,J=8.1Hz,1H),7.23(d,J=8.1Hz,1H),2.73(t,J=8.1Hz,2H),1.67(m,2H),1.25(m,30H),0.88(t、J=8.1Hz,3H)。
【0209】
NMR測定より、オクタデシル−2,3−ジヨードベンゾチエノチオフェンが得られたことを確認した。なお、その構造式を下記に示す。
【0210】
【化43】

【0211】
比較例1 (アントラチオフェンの合成)
「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー」、(米国)、2006年、128巻、16002−16003頁に従い、アントラチオフェンを合成した。該化合物は難溶解性であることからカラムクロマトグラフィーによる精製は困難であり、高真空下での昇華で精製しなければならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されることを特徴とするハロベンゾカルコゲノフェン誘導体。
【化1】

(ここで、置換基Tは硫黄原子、セレン原子、テルル原子を示し、置換基Xは、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、トリメチルシリル基、又は水素原子を示し、置換基Xは臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子、又は水素原子を示し、置換基R〜Rは同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、炭素数3〜30のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数2〜30のアルケニル基を示し、記号mは0〜2の整数を示し、記号n及びoは0又は1である。但し、R〜Rは同時に水素原子であることはなく、またn及びoは同時に0ではない。)
【請求項2】
一般式(1)において、置換基R及びRが水素原子、フッ素原子、炭素数3〜30のアルキル基、炭素数4〜30のアリール基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数2〜30のアルケニル基からなる群から選ばれる基であり、且つR及びR〜Rが水素原子、炭素数3〜30のアルキル基からなる群から選ばれる基であることを特徴とする請求項1に記載のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体。
【請求項3】
一般式(1)において、置換基R〜Rが水素原子、炭素数3〜30のアルキル基からなる群から選ばれる基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体。
【請求項4】
下記一般式(2)で示されることを特徴とする(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体。
【化2】

(ここで、置換基T、X及びR〜R並びに記号m及びnは請求項1に記載の一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
【請求項5】
下記一般式(3)で示されることを特徴とする(エチニル)ハロアレーン誘導体。
【化3】

(ここで、置換基Xは臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子を示し、置換基X及びR〜R、並びに記号m及びnは請求項1に記載の一般式(1)で示される置換基並びに記号と同意義を示す。)
【請求項6】
請求項4に記載の(エチニル)(メチルカルコゲノ)アレーン誘導体をハロゲン誘導体と反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の(エチニル)ハロアレーン誘導体をメタル化剤を用いてメタル化し、カルコゲンと反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハロベンゾチオフェン誘導体の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(4)で示されることを特徴とするアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体。
【化4】

(ここで、置換基R〜R13は水素原子、炭素数3〜30のアルカノイル基を示し、置換基T、X及びX、並びに記号m、n及びoは請求項1に記載の一般式(1)で示される置換基及び記号と同意義を示す。但し、R〜R13は同時に水素原子であることはなく、またn及びoは同時に0ではない。)
【請求項9】
一般式(4)において、置換基R及びR10が水素原子、炭素数3〜30のアルカノイル基からなる群から選ばれる基であり、且つR及びR11〜R13が水素原子であることを特徴とする請求項8に記載のアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体を、有機酸中、アルキルシランで還元することを特徴とする請求項3に記載のハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法。
【請求項11】
炭素数3〜30のアルカノイルクロリド、ルイス酸、及びハロベンゾカルコゲノフェンを、−30〜20℃で混合しフリーデルクラフツアシル化反応させることを特徴とする請求項8又は9に記載のアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法。
【請求項12】
炭素数3〜30のアルカノイルクロリドとルイス酸を混合させた後、ハロベンゾカルコゲノフェンを添加する請求項11に記載のアルカノイルハロベンゾカルコゲノフェン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2010−254636(P2010−254636A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108385(P2009−108385)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】