説明

ハンダ付け方法およびハンダ付け装置

【課題】より信頼性の高いハンダ付け方法およびハンダ付け装置を提供する。
【解決手段】実施形態のハンダ付け方法は、複数の第1接続用端子が配置され、複数の第1接続用端子の上面にハンダ材が設けられた下側基板と、複数の第1接続用端子の位置に対応するように複数の第2接続用端子が配置された上側基板と、を準備し、複数の第1接続用端子と、複数の第2接続用端子と、をハンダ材を介して対向させ、複数の第2接続用端子が上側基板において配置された配置領域を、複数の第2接続用端子が占める面積よりも大きい複数の矩形領域に区分けし、上側基板を透過することが可能な光を上側基板の側から複数の矩形領域に対して順次照射して下側基板の温度を上昇させ、下側基板上に設けられたハンダ材を熔融し、複数の第1接続用端子と、複数の第2接続用端子と、を前記ハンダ材によって接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ハンダ付け方法およびハンダ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接続用端子どうしを接合するハンダ付け技術としてパルスヒート方式がある。しかし、パルスヒート方式は接触式であるため、静電気(ESD)対策が必要になる。また、パルスヒート方式は、接続用端子に圧力をかけるため、基板側のバックアップ対策が必要になる。このため、接触式のハンダ付け技術に代わり、非接触方式のハンダ付け技術が注目されている。
【0003】
非接触方式のハンダ付け技術の代表例としては、光照射によってハンダ付けを行う方法がある。例えば、ランプ加熱を利用する方法、またはレーザ光を照射する方法がある。レーザ光を照射する方法では、全ての接続用端子に一括でレーザ光を照射する方式、あるいはレーザ光を所定の方向に走査させて個々の接続用端子にレーザ光を照射する方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−061635号公報
【特許文献2】特開2003−060338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、より信頼性の高いハンダ付け方法およびハンダ付け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のハンダ付け方法は、複数の第1接続用端子が配置され、前記複数の第1接続用端子のそれぞれの上面にハンダ材が設けられた下側基板と、前記複数の第1接続用端子のそれぞれの位置に対応するように複数の第2接続用端子が配置された上側基板と、を準備する。次に、前記複数の第1接続用端子のそれぞれと、前記複数の第2接続用端子のそれぞれと、を前記ハンダ材を介して対向させる。次に、前記複数の第2接続用端子のそれぞれが前記上側基板において配置された配置領域を、前記複数の第2接続用端子のそれぞれが占める面積よりも大きい複数の矩形領域に区分けする。次に、前記上側基板の側から前記上側基板を透過することが可能な光を前記複数の矩形領域のそれぞれに対して順次照射して前記下側基板の温度を上昇させ、前記下側基板上に設けられた前記ハンダ材を熔融する。そして、前記複数の第1接続用端子のそれぞれと、前記複数の第2接続用端子のそれぞれと、を前記ハンダ材によって接合する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係るハンダ付け方法のフローを説明する図である。
【図2】ハードディスクの概要を説明するための図であり、(a)はハードディスクの全体構造を説明するための立体模式図、(b)は、ヘッド部の構造を説明するための立体模式図である。
【図3】中継FPCの構造を示す平面模式図であり、(a)は、中継FPCの表側の平面模式図、(b)は、中継FPCの裏側の平面模式図である。
【図4】メインFPCの構造を示す平面模式図であり、(a)は、メインFPCの表側の平面模式図、(b)は、メインFPCの裏側の平面模式図である。
【図5】中継FPCの銅配線とメインFPCの銅配線とが対向した状態を説明する模式図であり、(a)は、平面模式図、(b)は、(a)の矢印Aで囲んだ部分の拡大図、(c)は、(a)のX−Y断面図である。
【図6】複数の第2接続用端子が配置された領域を複数の矩形領域に区分けする方法を説明するための図である。
【図7】ハンダ付けの手順を説明する図であり、(a)は、複数の矩形領域のそれぞれにレーザ光を照射する手順を説明する図、(b)は、図5(a)の矢印Aで囲んだ部分に対応する拡大図、(c)は、図5(a)のX−Y断面に対応する断面図である。
【図8】第2実施形態に係るハンダ付けの手順を説明する図であり、(a)は、複数の第2接続用端子が配置された領域を複数の矩形領域に区分けする方法を説明するための図、(b)は、複数の矩形領域のそれぞれにレーザ光を照射する手順を説明する図である。
【図9】ハンダ付け装置を説明する図である。
【図10】ハンダ付け装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るハンダ付け方法のフローを説明する図である。
【0010】
まず、第1実施形態では、複数の第1接続用端子が配置され、複数の第1接続用端子のそれぞれの上面にハンダ材が設けられた下側基板と、複数の第1接続用端子のそれぞれの位置に対応するように複数の第2接続用端子が配置された上側基板と、を準備する(ステップS10)。
【0011】
次に、複数の第1接続用端子のそれぞれと、複数の第2接続用端子のそれぞれと、をハンダ材を介して対向させる(ステップS20)。
【0012】
次に、複数の第2接続用端子のそれぞれが上側基板において配置された配置領域を、複数の第2接続用端子のそれぞれが占める面積よりも大きい複数の矩形領域に区分けする(ステップS30)。
【0013】
次に、上側基板を透過することが可能なレーザ光を上側基板の側から複数の矩形領域のそれぞれに対して順次照射することによって下側基板の温度を上昇させる。そして、下側基板からハンダ材に熱を伝導させることによってハンダ材を熔融する(ステップS40)。
【0014】
次に、複数の第1接続用端子のそれぞれと、複数の第2接続用端子のそれぞれと、をハンダ材によって接合する(ステップS50)。
【0015】
このようなフローによって、下側基板に配置された複数の第1接続用端子のそれぞれと、上側基板に配置された複数の第2接続用端子のそれぞれと、がハンダ材によって接合される。なお、ステップS30の複数の第2接続用端子のそれぞれが上側基板において配置された配置領域を、複数の第2接続用端子のそれぞれが占める面積よりも大きい複数の矩形領域に区分けするステップについては、ステップS20の前に行ってもよい。この場合、図1に示す「S30」のステップと、「S20」とが入れ替わる。
【0016】
第1実施形態のハンダ付け方法の具体的な方法について説明する。
第1実施形態では、上述したハンダ付け方法を、例えばハードディスク(HDD)内の接続用端子のハンダ付けに適用する。ハードディスク(HDD)においては、その容量増加によって接続用端子の数が増加したり、接続用端子の微細化が進行している。このような状況の中、上述したハンダ付け方法が有効になる。
【0017】
図2は、ハードディスクの概要を説明するための図であり、(a)はハードディスクの全体構造を説明するための立体模式図、(b)は、ヘッド部の構造を説明するための立体模式図である。
【0018】
図2(a)に示すように、ハードディスク500内には、円盤状の磁気記録媒体501が設けられている。また、ハードディスク500内には、磁気記録媒体501にデータを書き込んだり、磁気記録媒体501からデータを読み込んだりするヘッド部(ヘッドスタックアセンブリ)502が設けられている。ヘッド部502と、基板本体503とは、メインフレキシブルプリント回路基板504(以下、メインFPC504)を介して接続されている。また、ヘッド部502とメインFPC504とは、ヘッド部502から延在された中継フレキシブルプリント回路基板505(以下、中継FPC505)を介して接続されている。
【0019】
第1実施形態では、矢印510に示す部分の中継FPC505に設けられた接続用端子と、矢印510に示す部分のメインFPC504に設けられた接続用端子と、を上述したハンダ付け方法によって接合する。
【0020】
図3は、中継FPCの構造を示す平面模式図であり、(a)は、中継FPCの表側の平面模式図、(b)は、中継FPCの裏側の平面模式図である。図3には、矢印510に示す部分の中継FPC505が示されている。
【0021】
中継FPC505は、上側基板である絶縁フィルム基板505aを有する。絶縁フィルム基板505aの材質は、例えば、ポリイミド樹脂である。絶縁フィルム基板505aには、孔505hが設けられている。中継FPC505は、第2接続用端子である銅配線505bを複数有している。銅配線505bは、フライングリードとも呼称される。複数の銅配線505bのそれぞれは、列状になって周期的に配置されている。また、複数の銅配線505bのそれぞれは、絶縁フィルム基板505a内に設けられた配線505lに接続されている。複数の銅配線505bのそれぞれは、孔505hを横切るように配置されている。複数の銅配線505bのそれぞれの一部は、孔505h内において露出されている。銅配線505bの表面には、ハンダ接合の際のハンダ材の濡れ性を良好にするために、金(Au)メッキ、ニッケル(Ni)メッキ等を施してもよい。
【0022】
図4は、メインFPCの構造を示す平面模式図であり、(a)は、メインFPCの表側の平面模式図、(b)は、メインFPCの裏側の平面模式図である。図4には、矢印510に示す部分のメインFPC504が示されている。
【0023】
メインFPC504は、下側基板であるベース基板504sを有する。このベース基板504sは、上述したヘッド部502に固定されている。ベース基板504sの材質は、ステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)等である。ベース基板504sは、メインFPC504の裏面側において露出されている。また、メインFPC504は、絶縁フィルム基板504aを有する。絶縁フィルム基板504aは、メインFPC504の表面側において露出されている。絶縁フィルム基板504aの材質は、例えば、ポリイミド樹脂である。ベース基板504sと絶縁フィルム基板504aとは、接着材によって接着されている。
【0024】
また、絶縁フィルム基板504aには、孔504hが設けられている。メインFPC504は、第1接続用端子である銅配線504bを複数有している。複数の銅配線504bのそれぞれは、列状になって周期的に配置されている。複数の銅配線504bのそれぞれは、孔504hを横切るように配置されている。すなわち、複数の銅配線504bのそれぞれの上面の一部は、孔504h内において露出されている。複数の銅配線504bのそれぞれの上面には、ハンダ材504cが設けられている。
【0025】
第1実施形態では、このような中継FPC505およびメインFPC504を予め準備する。中継FPC505の銅配線505bの位置は、メインFPC504の銅配線504bの位置に対応するように配置されている。
【0026】
図5は、中継FPCの銅配線とメインFPCの銅配線とが対向した状態を説明する模式図であり、(a)は、平面模式図、(b)は、(a)の矢印Aで囲んだ部分の拡大図、(c)は、(a)のX−Y断面図である。
【0027】
次に、メインFPC504の上方から中継FPC505をフェイスダウンによって降下させ、中継FPC505における複数の銅配線505bのそれぞれと、メインFPC504における複数の銅配線504bのそれぞれと、をハンダ材504cを介して対向させる。この後、複数の銅配線505bのそれぞれとハンダ材504cとを接触させる。複数の銅配線505bの全てとハンダ材504cとを接触をより良好にするために、複数の銅配線505bのそれぞれに対しては、ベース基板504s側に荷重を印加してもよい。
【0028】
図6は、複数の第2接続用端子が配置された領域を複数の矩形領域に区分けする方法を説明するための図である。
【0029】
次に、複数の銅配線505bのそれぞれが絶縁フィルム基板505aにおいて配置された配置領域10を、複数の銅配線505bのそれぞれが占める面積よりも大きい複数の矩形領域11に区分けする。例えば、配置領域10を縦に3個、横に3個に区分けする。すなわち、絶縁フィルム基板505aの主面に対して垂直な方向から絶縁フィルム基板505aをみたとき、複数の矩形領域11は、1つの矩形領域11が縦横に並んだマトリクスをなすことになる。
【0030】
配置領域10の平面形状は、例えば、一辺が6mm〜7mmの矩形である。銅配線505b(銅配線504b)の数は、図示する数に限らず、20個〜60個である。
【0031】
図7は、ハンダ付けの手順を説明する図であり、(a)は、複数の矩形領域のそれぞれにレーザ光を照射する手順を説明する図、(b)は、図5(a)の矢印Aで囲んだ部分に対応する拡大図、(c)は、図5(a)のX−Y断面に対応する断面図である。
【0032】
図7(a)に示すように、レーザ光20を絶縁フィルム基板505aの側から複数の矩形領域11のそれぞれに対して順次照射する。レーザ光20としては、絶縁フィルム基板505aを透過することが可能なレーザ光が選択される。例えば、レーザ光20の波長λは、600nm以上(例えば、808nm)である。
【0033】
第1実施形態では、複数の矩形領域11のそれぞれの面積とレーザ光20の照射面積とが略同じになるようにレーザ光20のビーム径が整形されている。例えば、複数の矩形領域11のそれぞれの平面形状とレーザ光20のスポット形状とは、略同じである。また、矩形領域11内では、レーザ光20の光強度は略均一である。そして、第1実施形態では、レーザ光20を照射した矩形領域11に隣り合う矩形領域11にレーザ光20を順次照射していく。
【0034】
例えば、複数の矩形領域11のそれぞれに「1」〜「9」の番号を振り分けた場合、最初に、番号「1」の矩形領域11(配置領域10の角に位置する矩形領域11)を照射する。その後、「2」、「3」、「6」、「9」、「8」、「7」、「4」の順序でレーザ光20を照射していく。マトリクス状の配置領域10の中央に位置する矩形領域11(番号「5」)には、レーザ光20を照射しない。この理由については後述する。
【0035】
第1実施形態では、マトリクス状の配置領域10の外周に位置する矩形領域11のそれぞれに対して、レーザ光20を順次照射するサイクルを少なくとも1回実行する。例えば、1サイクルを1つのルーチンとしたとき、このルーチンを1回か、もしくは2回〜300回、繰り返す。レーザ光20を照射する際には、複数の銅配線505bのそれぞれに対してベース基板504s側に荷重を印加してもよい。
【0036】
絶縁フィルム基板505a、504a、および接着材504dの波長808nmの対する光の透過率は、例えば、10%〜20%であるとする。レーザ光20は、絶縁フィルム基板505a、504a、さらに接着材504dを透過してベース基板504sにまで到達する。これにより、ベース基板504sにレーザ光20が照射されて、ベース基板504sの温度が上昇する(図7(c)参照)。
【0037】
ベース基板504sの温度が上昇すると、ベース基板504sからハンダ材504cに熱が伝導する。そして、ハンダ材504cの温度が所定の温度に到達すると、ハンダ材504cが熔融する。複数の銅配線505bのそれぞれに対して、ベース基板504s側に荷重を印加した場合は、確実に複数の銅配線505bのそれぞれとハンダ材504cとが接触している。この状態で、ハンダ材504cが溶融すると、溶融したハンダ材504cは、複数の銅配線505bのそれぞれの上面にまで濡れ広がる。この状態が図7(b)、(c)に示されている。
【0038】
第1実施形態では、ビーム径をハンダ材504cの面積程度に集光させたレーザ光を直接的にハンダ材504cに照射しない。第1実施形態では、ハンダ材504cの面積よりも広いビーム径のレーザ光20をベース基板504sに照射してベース基板504sからの熱伝導によって間接的にハンダ材504cを熔融する。
【0039】
すなわち、第1実施形態では、ハンダ材504cが占める面積よりも大きいスポット形状のレーザ光20を下側基板であるベース基板504sに照射する。そして、上述したルーチンを1回か、もしくは2回〜300回、繰り返す。これによりベース基板504sが加熱されて、配置領域10内における温度分布が均一になるようにする。そして、ベース基板504sからの熱伝導によって、複数の銅配線504bのそれぞれと複数の銅配線505bのそれぞれとの間に介在するハンダ材504cの全てを一括で同時に溶融する。
【0040】
また、ハンダ材504cの全てが同時に溶融すると、中継FPC505の銅配線505bの全てがハンダ材504cにめり込む。このめり込みによって、絶縁フィルム基板505a全体がベース基板504s側に移動する。そして、溶融したハンダ材504cが複数の銅配線505bのそれぞれの上面にまで濡れ広がる。
【0041】
この後、レーザ光照射を止める。これにより、ハンダ材504cが再び固化する。これにより、複数の銅配線504bのそれぞれと、複数の銅配線505bのそれぞれと、がハンダ材504cによって接合される。
【0042】
第1実施形態では、レーザ光20の照射位置を複数の矩形領域11のそれぞれにおいて停止させ、複数の矩形領域11のそれぞれに対して、レーザ光20を所定の時間照射する。例えば、1つの矩形領域11に対してレーザ光20を照射する時間は、数ミリ秒程度(例えば、5ミリ秒〜10ミリ秒)である。また、隣り合う矩形領域11間を移動するレーザ光20の時間は、1ミリ秒以下(例えば、0.5ミリ秒)である。
【0043】
また、第1実施形態では、複数の矩形領域11のなかで熱損失が比較的大きい矩形領域11ほど、レーザ光20をより長く照射する。例えば、番号「3」の矩形領域11と、番号「9」の矩形領域11の熱損失は、他の矩形領域11に比べて大きいとする。
【0044】
具体的には、番号「3」の矩形領域11の近傍および番号「9」の矩形領域11の近傍がネジによって強固にヘッド部502に固定されているとする。この場合、番号「3」の矩形領域11と、番号「9」の矩形領域11と、からは、ヘッド部502に熱が逃げ易くなる。あるいは、ネジの材質によっては、ネジ自体が熱を吸収し易い場合もある。
【0045】
このような場合、他の矩形領域11にレーザ光20を照射する時間を「100%」とし、番号「3」の矩形領域11と、番号「9」の矩形領域11と、には、レーザ光20を照射する時間をそれぞれ「170%」、「130%」にする。
【0046】
各矩形領域11におけるレーザ光20の照射時間は、レーザ出力や各矩形領域11の熱容量によって適宜変更される。但し、レーザ光20の照射時間は、絶縁フィルム基板505a、504a、接着材504dに熱ダメージを与えない程度に調整される。
【0047】
また、第1実施形態では、配置領域10の中央に位置する矩形領域11にはレーザ光20を照射していない。第1実施形態では、配置領域10の外周にレーザ光20を照射することにより、ベース基板504sの外周をひとまず加熱する。そして、ベース基板504sの外周からの熱伝導によってベース基板504sの中央部分を間接的に加熱している。これは、以下のような理由に基づく。
【0048】
例えば、ベース基板504sがネジ止め等によってヘッド部502に固定されているとき、ネジ止め等の仕様によっては、配置領域10の外周ほどベース基板504s外に熱が逃げやすくなる場合がある。このような状況で全ての矩形領域11に対して、同じパワーのレーザ光を同じ時間で照射すると、配置領域10の外周は充分に温まらず、配置領域10の外周でハンダ付け不良が生じる場合がある。逆に、配置領域10の外周のハンダ材504cが熔融する程度までレーザ光を照射し続けると、今度は、ベース基板504sの中央部分が過剰に加熱されてしまう。
【0049】
このため、第1実施形態では、配置領域10の外周に優先的にレーザ光20を照射してベース基板504sの面内温度を均一になるように制御している。これにより、配置領域10の全てのハンダ材504cを同時かつ均一に熔融することができる。
【0050】
このように、第1実施形態では、レーザ光20を照射する矩形領域11を選択したり、照射時間を適宜変えることにより、各矩形領域11へのエネルギー投入量を変化することができ、接続用端子やベース基板に空間的な熱容量の差異が生じても、加熱後のベース基板504sの温度分布が均一になる。
【0051】
このようなハンダ付け方法によれば、図6に示す全ての銅配線504bのそれぞれと、全ての銅配線505bのそれぞれと、がハンダ材504cによって均一に接合される。第1実施形態によれば、ハンダ付けによる接続用端子間の接続信頼性が確実なものになる。
【0052】
また、第1実施形態では、配置領域10のサイズが変更してもレーザ光20の照射域を適宜変更するだけで足りる。従って、配置領域10のサイズが変更しても、後述する光学系の設計変更を要しない。
【0053】
第1実施形態に対する比較例として、レーザ光のビーム径を単純に拡げ、レーザビーム光を半導体チップのボールグリッドアレイ(Ball Grid Array)全体に照射して、一括リフロー方式によって全てのボールグリッドアレイを溶融する方法がある。
【0054】
しかし、単純にビーム径を拡げても、ガウス分布によってレーザ光の中心の強度は相対的に強くなっている。従って、この方法では、ボールグリッドアレイの中心のみがリフローされるだけで、ボールグリッドアレイの周辺はリフローしないという不具合が生じる。
【0055】
この場合、カレイドスコープ等の光学系を用いてレーザ光の強度分布を均一にする方法も考えられる。しかし、個々のボールグリッドは、それぞれ熱容量の異なる領域に配置されている場合もある。従って、この場合においてもリフローし難いボールグリッドが存在してしまう。また、ボールグリッドが配置された領域のサイズが素子ごとに異なると、素子ごとに光学系の設計変更が必要になる。
【0056】
第1実施形態では、絶縁フィルム基板505a、504a、接着材504d、薄い細線となった銅配線504b、505bにレーザ光を照射する。ベース基板504sは、ヘッド部502にネジ等で固定されている。ベース基板504sがネジ等によってヘッド部502に強固に接触する部分は、熱がベース基板504sからヘッド部502に逃げ易い。このため、上述した比較例を採択すると、ベース基板504sに配置された接続用端子の一部のハンダ付けが困難になる場合がある。
【0057】
また、別の比較例として、レーザ光を接続用端子に直接照射してハンダ材を熔融する方法がある。この方法においては、熱容量の高い領域に配置された接続用端子に対してはレーザ光の照射時間を長くしたり、あるいはレーザ光のパワーを強くしてレーザ光を照射することもできる。
【0058】
しかし、接続用端子ごとに個別にリフローを実施すると、個々のハンダ材が個別に熔解する。従って、この方法を本実施形態に適用すると、リフロー中において上側基板の全体が下側基板側に移動しないという不具合が生じる。このため、一部の接続用端子においては、接続不足が生じてしまう。また、上述したように、レーザ光の強度は中心ほど高い。このため、絶縁フィルム基板505a、504a、接着材504dに熱ダメージを与える場合もある。さらに、銅配線504b、505bが微細化によって薄い細線となった場合は、銅配線504b、505b自体にも熱ダメージを与えてしまう。
【0059】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係るハンダ付けの手順を説明する図であり、(a)は、複数の第2接続用端子が配置された領域を複数の矩形領域に区分けする方法を説明するための図、(b)は、複数の矩形領域のそれぞれにレーザ光を照射する手順を説明する図である。
【0060】
レーザ光20を配置領域10内で移動させるサイクルとしては、第1実施形態のサイクルに限らない。
【0061】
例えば、図8(a)に示すように、複数の銅配線505b(もしくは、複数の銅配線504b)の配置や数が第1実施形態と異なるときは、配置領域10の区分けを適宜変更する。例えば、第2実施形態では、配置領域10を縦に2個、横に5個に区分けしている。そして、図8(b)に示すように、複数の矩形領域11のそれぞれに「1」〜「10」の番号を振り分ける。
【0062】
第2実施形態では、最初に、配置領域10の角に位置する番号「1」の矩形領域11を照射する。その後、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」、「7」、「8」、「9」、「10」の順序でレーザ光20を照射していく。この後、番号「1」の矩形領域11と、番号「5」の矩形領域11には、所定の時間、レーザ光20を再度照射する。第2実施形態では、この再度の照射を含めたサイクルを1つのルーチンとしている。
【0063】
第2実施形態では、配置領域10の左下と右下の矩形領域11の熱損失が相対的に大きい場合を想定している。このような場合、第2実施形態では、配置領域10の左下と右下の矩形領域11に対するレーザ光20の照射を1つのルーチンにおいて1回とは限らず、複数回照射している。このような方法によっても加熱後のベース基板504sの温度が均一になる。
【0064】
第1実施形態では、複数の矩形領域11のなかで熱損失が比較的大きい矩形領域11に対して、より長くレーザ光20を照射している。第2実施形態では、配置領域10を1周した後、複数の矩形領域11のなかで熱損失が比較的大きい矩形領域11に対して再度光を照射する。
【0065】
このような方法によっても、各矩形領域11へのエネルギー投入量を変化することができ、接続用端子やベース基板に空間的な熱容量の差異が生じても、加熱後のベース基板504sの温度分布が均一になる。これにより、第1実施形態と同様にハンダ付けによる接続用端子間の接続信頼性が確実なものになる。
【0066】
(第3実施形態)
図9は、ハンダ付け装置を説明する図である。図9には、ハンダ付け装置100のモデルが示されている。
【0067】
図9に示すハンダ付け装置100は、レーザ源110と、カレイドスコープ120と、コリメートレンズ130と、ビーム走査ミラー140、141と、集光レンズ150と、カメラ160と、制御装置170と、を備える。
【0068】
ハンダ付け装置100は、複数の第1接続用端子が配置され、複数の第1接続用端子のそれぞれの上面にハンダ材504cが設けられた下側基板と、複数の第1接続用端子のそれぞれの位置に対応するように複数の第2接続用端子が配置された上側基板と、を対向させつつ、複数の第1接続用端子のそれぞれと、複数の第2接続用端子のそれぞれと、をハンダ材によって接合する。第1接続用端子は、例えば、銅配線504bである。下側基板は、例えば、ベース基板504sである。第2接続用端子は、例えば、銅配線505bである。上側基板は、例えば、絶縁フィルム基板505aである。
【0069】
レーザ源110から出射されたレーザ光20は、カレイドスコープ120に導光される。カレイドスコープ120の出射端では、レーザ光20の断面の面内強度分布が均一化されるとともに、レーザ光20のスポット形状が矩形領域11の平面形状と略相似になる。カレイドスコープ120を通過したレーザ光20は、コリメートレンズ130に導光される。
【0070】
コリメートレンズ130を通過した平行なレーザ光20は、ビーム走査ミラー140、141に導光される。ビーム走査ミラー141から反射されたレーザ光20は、集光レンズ150に導光される。レーザ光20は、集光レンズ150によって集光されて、最終的にレーザ光20が配置領域10に結像される。配置領域10に照射されたレーザ光20のスポット形状は、上述したように、矩形領域11の形状と略同じである(図7(a)参照)。また、配置領域10、矩形領域11、およびレーザ光20のスポット形状は、カメラ160によって監視されている。
【0071】
レーザ源110、カレイドスコープ120、コリメートレンズ130、ビーム走査ミラー140、141、集光レンズ150、およびカメラ160の操作は、制御装置170によって制御されている。
【0072】
ハンダ付け装置100においては、光路途中にビーム走査ミラー140、141が設けられている。ビーム走査ミラー140、141を操作することにより、配置領域10に結像されるレーザ光20を配置領域10内においてX方向もしくはY方向に走査することができる。
【0073】
制御装置170は、上側基板において複数の第2接続用端子のそれぞれが配置された配置領域10を、複数の第2接続用端子のそれぞれが占める面積よりも大きい複数の矩形領域11に区分けすることができる。すなわち、ハンダ付け装置100は、上側基板において複数の第2接続用端子のそれぞれが配置された配置領域10を、複数の第2接続用端子のそれぞれが占める面積よりも大きい複数の矩形領域11に区分けする区分け手段を備える。
【0074】
制御装置170は、ビーム走査ミラー140、141を操作することによって、上側基板を透過することが可能なレーザ光20を上側基板の側から複数の矩形領域11のそれぞれに対して順次照射することができる。これにより、下側基板の温度が上昇し、下側基板からハンダ材に熱が伝導してハンダ材504cを熔融することができる。すなわち、ハンダ付け装置100は、レーザ光20を上側基板の側から複数の矩形領域11のそれぞれに対して順次照射することにより、下側基板の温度を上昇させ、下側基板からハンダ材に熱を伝導させることによりハンダ材504cを熔融する熔融手段を備える。
【0075】
図10は、ハンダ付け装置の変形例を説明する図である。
レーザ光20のスポット形状の整形は、カレイドスコープ120のほか、フライアイレンズ180を用いて行ってもよい。例えば、レーザ源110から出射されたレーザ光20は、フライアイレンズ180に導光される。
【0076】
フライアイレンズ180の出射端では、レーザ光20の断面の面内強度分布が均一化されるとともに、レーザ光20のスポット形状が矩形領域11の平面形状と略相似になる。その後、コンデンサレンズ190によってレーザ光20が集光されて、レーザ光20は、コリメートレンズ130に導光される。この後のレーザ光20の光路は、図9と同じである。
【0077】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明した。しかし、実施形態はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、実施形態の特徴を備えている限り、実施形態の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、レーザ光の代わりにランプ光を用いてもよい。また、ハンダ付けの対象は、ハードディスク内の接続用端子ではなく、半導体素子、フラットパネルディスプレイ、太陽電池等のデバイスに設けられた接続用端子にも適用可能である。
【0078】
また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて複合させることができ、これらを組み合わせたものも実施形態の特徴を含む限り実施形態の範囲に包含される。その他、実施形態の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても実施形態の範囲に属するものと了解される。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
10 配置領域
11 矩形領域
20 レーザ光
100 ハンダ付け装置
110 レーザ源
120 カレイドスコープ
130 コリメートレンズ
140、141 ビーム走査ミラー
150 集光レンズ
160 カメラ
170 制御装置
180 フライアイレンズ
190 コンデンサレンズ
500 ハードディスク
501 磁気記録媒体
502 ヘッド部
503 基板本体
504 メインフレキシブルプリント回路基板(メインFPC)
504a 絶縁フィルム基板
504b 銅配線
504c ハンダ材
504d 接着材
504h 孔
504s ベース基板
505 中継フレキシブルプリント回路基板(中継FPC)
505a 絶縁フィルム基板
505b 銅配線
505h 孔
505l 配線
510 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1接続用端子が配置され、前記複数の第1接続用端子のそれぞれの上面にハンダ材が設けられた下側基板と、前記複数の第1接続用端子のそれぞれの位置に対応するように複数の第2接続用端子が配置された上側基板と、を準備するステップと、
前記複数の第1接続用端子のそれぞれと、前記複数の第2接続用端子のそれぞれと、を前記ハンダ材を介して対向させるステップと、
前記複数の第2接続用端子のそれぞれが前記上側基板において配置された配置領域を、前記複数の第2接続用端子のそれぞれが占める面積よりも大きい複数の矩形領域に区分けするステップと、
前記上側基板の側から前記上側基板を透過することが可能な光を前記複数の矩形領域のそれぞれに対して順次照射して前記下側基板の温度を上昇させ、前記下側基板上に設けられた前記ハンダ材を熔融するステップと、
前記複数の第1接続用端子のそれぞれと、前記複数の第2接続用端子のそれぞれと、を前記ハンダ材によって接合するステップと、
を備えたハンダ付け方法。
【請求項2】
前記上側基板の主面に対して垂直な方向からみて、前記複数の矩形領域は、1つの矩形領域が縦横に並んだマトリクスをなし、前記光を照射した矩形領域に隣り合う矩形領域に前記光を順次照射していく請求項1記載のハンダ付け方法。
【請求項3】
前記複数の矩形領域のそれぞれに対して、前記光を所定の時間のあいだ照射する請求項1または2に記載のハンダ付け方法。
【請求項4】
前記光を照射する際に、前記複数の第2接続用端子のそれぞれに対し前記下側基板側に荷重を印加する請求項1〜3のいずれか1つに記載のハンダ付け方法。
【請求項5】
前記複数の矩形領域のそれぞれの面積と前記光の照射面積とが略同じである請求項1〜4のいずれか1つに記載のハンダ付け方法。
【請求項6】
前記下側基板からの熱伝導によって、前記複数の第1接続用端子のそれぞれと前記複数の第2接続用端子のそれぞれとの間に介在する前記ハンダ材の全てを一括して溶融する請求項1〜5のいずれか1つに記載のハンダ付け方法。
【請求項7】
前記複数の矩形領域のなかで熱損失が比較的に大きい矩形領域ほど、前記光をより長く照射する請求項1〜6のいずれか1つに記載のハンダ付け方法。
【請求項8】
前記マトリクスの外周に配置された矩形領域のそれぞれに対して、前記光を順次照射する請求項2〜7のいずれか1つに記載のハンダ付け方法。
【請求項9】
前記マトリクスの外周に配置された矩形領域のそれぞれに対して、前記光を順次照射した後、前記複数の矩形領域のなかで熱損失が比較的大きい前記矩形領域に対して前記光を再度照射する請求項8記載のハンダ付け方法。
【請求項10】
複数の第1接続用端子が配置され、前記複数の第1接続用端子のそれぞれの上面にハンダ材が設けられた下側基板と、前記複数の第1接続用端子のそれぞれの位置に対応するように複数の第2接続用端子が配置された上側基板と、を対向させて、前記複数の第1接続用端子のそれぞれと、前記複数の第2接続用端子のそれぞれと、を前記ハンダ材によって接合するハンダ付け装置であって、
前記上側基板において前記複数の第2接続用端子のそれぞれが配置された配置領域を、前記複数の第2接続用端子のそれぞれが占める面積よりも大きい複数の矩形領域に区分けする区分け手段と、
前記上側基板の側から前記上側基板を透過することが可能な光を前記複数の矩形領域のそれぞれに対して順次照射して前記下側基板の温度を上昇させ、前記下側基板上に設けられた前記ハンダ材を熔融する熔融手段と、
を備えたハンダ付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−65683(P2013−65683A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203212(P2011−203212)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】