ハンチのジヒドロピリジン合成反応に基づく薄い有機コーティング用の新規な架橋機構
コーティング組成物におけるポリマー鎖を架橋する架橋方法が開示される。1つの実施形態において、この方法は、ハンチのジヒドロピリジン反応を利用して反応生成物を形成し、β−ケトエステル官能基間に永続するジヒドロピリジン結合を形成するために、アルデヒドの供給源およびアンモニアまたは1級アミンの供給源を使用して、β−ケトエステル官能基を有するポリマー樹脂鎖を架橋することを含む。この新規な架橋反応は、典型的な架橋反応と比較して低温で起こることができ、中性から弱アルカリ性のpH6〜11の水溶液において起こることができる。この新規な架橋反応は、コーティング樹脂におけるポリマー鎖を架橋するのに多くの利点を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、有機コーティング樹脂における架橋反応、より特には、ハンチのジヒドロピリジン合成反応に基づく架橋反応に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング樹脂を架橋するための架橋反応は、当該技術分野において知られている。架橋により、コーティングされた基体の特性を高めることができる。これらの特性としては、機械的特性、物理的特性、美的特性、および腐食に対する耐性が挙げられる。現在行われている架橋反応に伴う1つの難点は、しばしば架橋反応が高い処理温度を必要とし、これが、ある種の基体に対する架橋反応の有用性を制限することである。加えて、架橋反応の多くが非水系の溶液を必要とするか、可逆的であり、このため、実施上の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より低い反応温度において使用できる架橋プロセスおよびシステムを開発することが望まれている。加えて、水溶液において起こり得る、不可逆な架橋プロセスを開発することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般的に、本発明は、より低温で水系において動作し、不可逆である架橋プロセスおよびシステムを提供する。該方法は、架橋基としてハンチのジヒドロピリジンを形成する方法に基づく。1つの実施形態においては、該システムは、アセトアセトキシエチルメタクリレートから得られるものなどの樹脂上の2当量のβ−ケトエステル、1当量のアルデヒドおよび1当量のアンモニアまたは1級アミンを使用して、ハンチのジヒドロピリジンを生成する。
【0005】
好ましい実施形態の詳細な記載から、当業者には、本発明のこれら、および他の特徴および利点が、より明白となるであろう。図面を、詳細な説明と共に、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本発明により提案されるハンチのジヒドロピリジン架橋機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、コーティング樹脂において隣接するポリマー鎖を架橋する架橋機構に関する。これまで架橋反応はコーティング樹脂用に利用されてきたが、それらは、高い反応温度が必要であり、厳しい条件が必要であり、非水系または可逆性であるという問題がある。本発明は、他の架橋反応に比べ低温で動作し、水溶液中で起こり、不可逆な架橋反応を提供する。本架橋反応により、コーティング樹脂の化学的特性、機械的特性、バリア特性、物理的特性および耐腐食性が向上する。例として、薄い有機コーティング、有機コーティング、不動態化リンス剤、封止リンス剤、接着剤および封止剤において架橋を生じるために本反応を使用できる。本発明は、露出金属表面(金属リン酸塩溶液、クロム含有リンス剤、または他の不動態化処理で、金属表面が事前に処理されていないことを意味する。)の処理に関する。本発明の方法の恩恵を受ける金属表面としては、鋼、冷延鋼、熱延鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、亜鉛金属または亜鉛合金でコーティングされた鋼(電気亜鉛めっき鋼、ガルバリウム(登録商標)、ガルバニール、および、溶融亜鉛めっき鋼など)が挙げられる。
【0008】
好ましくは、本発明による処理に先立ち、金属表面は洗浄および脱脂される。金属表面の洗浄は当該技術分野においてよく知られており、弱または強アルカリ性洗浄剤を含むことができる。2つのアルカリ性洗浄剤の例として、Parco(登録商標)Cleaner ZX−1およびParco(登録商標)Cleaner 315が挙げられ、両者ともHenkel Surface Technologies社から市販されている。洗浄に続いて、本発明による処理に先立ち、好ましくは、表面を水洗する。
【0009】
本発明のために提案される反応スキームを図1に示す。ハンチのジヒドロピリジン/ピリジン合成反応により、アンモニアまたは1級アミンの存在下、アルデヒドと、2当量のβ−ケトエステル(樹脂中にアセトアセトキシエチルメタクリレートを組み込んだ後のペンダント鎖により与えられるものなど)とを縮合反応させて、ジヒドロピリジン誘導体を製造することができる。その後の酸化または脱水素化により、ピリジン3,5−ジカルボキシレートが得られる。
【0010】
本発明において、アンモニアまたは種々の1級アミンが有用である。例として、アンモニア、アミノ酸、ジアミン、および、1級アミン基を有する他の分子が挙げられる。ハンチのジヒドロピリジン反応を阻害することなく、樹脂のβ−ケトエステル基の数をはるかに超えて、アミンのレベルを非常に高くできることが見いだされた。
【0011】
本発明において、種々のアルデヒドを使用することができ、単に例としてであるが、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、グルコース、バニリン、グリオキサル、および、グリオキシル酸が挙げられる。好ましくは、アルデヒドの量を、樹脂のβ−ケトエステルサイトのレベルに合わせる。架橋溶液は、好ましくは、樹脂のβ−ケトエステル基の2当量あたり0.1〜1.5当量のアルデヒド、より好ましくは、樹脂のβ−ケトエステル基の2当量あたり0.5〜1.1当量のアルデヒドを含む。
【実施例】
【0012】
ペンダント鎖として、β−ケトエステル官能基と共に、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)を有する一連の樹脂を調製した。これは、単に、本発明の方法において使用が可能なペンダント鎖の1つである。
【0013】
<コーティング樹脂例1(3272−096)>
有機コーティング樹脂を下記の通り調製し、それを樹脂3272−096と呼ぶ。樹脂は、モノマーとして、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、n−ブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、および、ADD APT PolySurf HP(これは、メタクリレート化されたモノおよびジ−リン酸エステルの混合物である。)を含む。本発明により調製される全ての樹脂におけるリン酸エステルの別の可能な供給源は、Radcure社製のEbecryl 168である。樹脂における全モノマーの分布は以下の通りであった:20.00% AAEM、12.50% n−ブチルメタクリレート、15.00% スチレン、27.50% メチルメタクリレート、20.00% 2−エチルヘキシルアクリレート、および、5.00% ADD APT PolySurf HP。80℃の設定温度で加熱し、撹拌しながらN2下において樹脂重合反応を行った。反応容器への最初の充填物は、241.10グラムの脱イオン(DI)水、2.62グラムのラウリル硫酸アンモニウム(Rhodapon L−22 EP)、および、2.39グラムの硫酸第一鉄 0.5%FeSO4・7H2O(3ppm)であった。この最初の充填物を時間ゼロの時点で反応容器に入れ、設定温度への加熱を開始した。30分後、5.73グラムのDI水、0.90グラムのノニオン性界面活性剤Tergitol 15−S−20、0.13グラムのRhodapon L−22 EP、2.15グラムのn−ブチルメタクリレート、2.57グラムのスチレン、4.74グラムのメチルメタクリレート、3.48グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、3.41グラムのアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、および0.85グラムのADD APT PolySurf HPの組合せを含む反応体種を反応容器に加え、設定温度への加熱を更に15分続けた。次いで、0.32グラムのHOCH2SO2Na、4.68グラムのDI水、0.45グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の4.54グラムのDI水を含む最初の開始剤充填物を容器に加え、更に30分、温度を設定温度で維持した。次いで、温度を設定温度で維持しながら3時間にわたって、モノマーおよび開始剤の共供給物を容器に加えた。モノマー共供給物は、106.92グラムのDI水、17.10グラムのTergitol 15−S−20、2.49グラムのRhodapon L−22 EP、40.89グラムのn−ブチルメタクリレート、48.83グラムのスチレン、89.97グラムのメチルメタクリレート、66.10グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、64.77グラムのAAEM、および、16.19グラムのADD APT PolySurf HPであった。開始剤共供給物は、0.97グラムのHOCH2SO2Na、14.03グラムのDI水、1.39グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の13.61グラムのDI水であった。3時間後、追加充填物を30分間にわたって容器に加えた。追加充填物は、0.32グラムのHOCH2SO2Na、4.88グラムのDI水、0.46グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の4.54グラムのDI水であった。次いで、1時間30分、設定温度で容器を保持した。次いで、設定温度からの冷却を開始し、温度が38℃となるまで2時間、継続した。次いで、バッファー共供給物を容器に加えた。バッファー共供給物は、5.19グラムの水酸化アンモニウム(28%)および18.48グラムのDI水であった。この樹脂および本発明による全ての樹脂においてTergitol 15−S−20(これは、2級アルコールエトキシレートである。)の代わりに使用することのできる追加のノニオン性界面活性剤安定剤は、15〜18の親水性親油性バランスを有する他のノニオン性安定剤である。これらの安定剤の例としては、Tergitol 15−S−15などの他の2級アルコールエトキシレート;Abex 2515などのエトキシレートの配合物;Emulsogen LCN 118または258などのアルキルポリグリコールエーテル;Genapol T 200およびT 250などの獣脂脂肪族アルコールエトキシレート;Genapol X 158およびX 250などのイソトリデシルアルコールエトキシレート;Rhodasurf BC−840などのトリデシルアルコールエトキシレート;およびRhoadsurf ON−877などのオレイルアルコールエトキシレートが挙げられる。
【0014】
<コーティング樹脂例2(3272−103)>
有機コーティング樹脂を下記の通り調製し、それを樹脂3272−103と呼ぶ。樹脂は、モノマーとして、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、n−ブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、および、ADD APT PolySurf HP(これは、メタクリレート化されたモノおよびジ−リン酸エステルの混合物である。)を含む。樹脂における全モノマーの分布は以下の通りであった:20.00% AAEM、12.50% n−ブチルメタクリレート、15.00% スチレン、27.50% メチルメタクリレート、20.00% 2−エチルヘキシルアクリレート、および、5.00% ADD APT PolySurf HP。80℃の設定温度で加熱し、撹拌しながらN2下において樹脂重合反応を行った。反応容器への最初の充填物は、286.10グラムのDI水、および、2.47グラムのRhodapon L−22 EPであった。この最初の充填物を時間ゼロの時点で反応容器に入れ、設定温度への加熱を開始した。30分後、5.44グラムのDI水、0.85グラムのTergitol 15−S−20、0.12グラムのRhodapon L−22 EP、2.04グラムのn−ブチルメタクリレート、2.44グラムのスチレン、4.49グラムのメチルメタクリレート、3.30グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、3.24グラムのアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、および0.81グラムのADD APT PolySurf HPの組合せを含む反応体種を反応容器に加え、設定温度への加熱を更に15分続けた。次いで、4.79グラムのDI水および0.21グラムの(NH4)2S2O8を含む最初の開始剤充填物を容器に加え、更に30分、温度を80℃で維持した。次いで、温度を設定温度で維持しながら3時間にわたって、モノマーおよび開始剤の共供給物を容器に加えた。モノマー共供給物は、103.36グラムのDI水、16.15グラムのTergitol 15−S−20、2.35グラムのRhodapon L−22 EP、38.81グラムのn−ブチルメタクリレート、46.34グラムのスチレン、85.38グラムのメチルメタクリレート、62.73グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、61.47グラムのAAEM、および、15.37グラムのADD APT PolySurf HPであった。開始剤共供給物は、14.36グラムのDI水および0.64グラムの(NH4)2S2O8であった。3時間後、追加充填物を30分間にわたって容器に加えた。追加充填物は、0.35グラムのアスコルビン酸、4.65グラムのDI水、0.44グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、追加の4.56グラムのDI水、および、2.39グラムの硫酸第一鉄 0.5%FeSO4・7H2O(3ppm)であった。次いで、1時間30分、設定温度で容器を保持した。次いで、冷却を開始し、温度が38℃となるまで2時間、継続した。次いで、バッファー共供給物を容器に加えた。バッファー共供給物は、5.88グラムの水酸化アンモニウム(28%)および18.48グラムのDI水であった。
【0015】
<コーティング樹脂例3(3272−056)>
有機コーティング樹脂を下記の通り調製し、それを樹脂3272−056と呼ぶ。樹脂は、モノマーとして、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、n−ブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、および、ADD APT PolySurf HP(これは、メタクリレート化されたモノおよびジ−リン酸エステルの混合物である。)を含む。樹脂における全モノマーの分布は以下の通りであった:20.00% AAEM、12.50% n−ブチルメタクリレート、15.00% スチレン、27.50% メチルメタクリレート、20.00% 2−エチルヘキシルアクリレート、および、5.00% ADD APT PolySurf HP。70℃の設定温度で加熱し、撹拌しながらN2下において樹脂重合反応を行った。最初の反応器充填物は、241.01グラムのDI水、および、2.62グラムのRhodapon L−22 EP(ラウリル硫酸アンモニウム)であった。第2の反応器充填物は、2.39グラムの硫酸第一鉄 0.5%FeSO4・7H2O(3ppm)であった。2つの開始剤共供給物は、23.38グラムのDI水中の1.62グラムのHOCH2SO2Naおよび22.69グラムのDI水中の2.31グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシドであった。モノマー共供給物は、114.41グラムのDI水、18.00グラムのTergitol 15−S−20(2級アルコールエトキシレート界面活性剤)、2.62グラムのRhodapon L−22 EP、68.18グラムのAAEM、43.05グラムのn−ブチルメタクリレート、51.39グラムのスチレン、94.70グラムのメチルメタクリレート、69.58グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、および、17.05グラムのADD APT PolySurf HPであった。中和剤充填物は、18.48グラムのDI水中の6.52グラムの28%水酸化アンモニウムであった。30分撹拌しながら最初の反応器充填物を反応容器に加えることで、プロセスを開始した。次いで、それぞれ4ミリリットルの開始剤共供給物および第2の反応器充填物と一緒に、反応体種として25グラムのモノマー共供給物を反応容器に加えた。次いで、3時間にわたりモノマー共供給物を反応容器に供給し、4時間にわたり開始剤共供給物を反応容器に供給した。開始剤共供給物の最後の添加の後、さらに40分間反応を行い、38℃への冷却を開始した。1時間45分の冷却後、中和剤充填物を反応容器に加えた。
【0016】
第1の試験において、樹脂コーティング組成物においてハンチのジヒドロピリジン反応を起こすことができるかどうかを決定するために、2つのコーティング組成物を調製した。試験では、樹脂3272−096と、反応のためのアルデヒド供給源としてバニリンまたはサリチルアルデヒドのいずれかを使用した。反応に必要なアミンは、反応においてアミンとして働く大過剰のアンモニウムを有するBacote 20(登録商標)によって与えられる。Bacote 20(登録商標)は炭酸ジルコニルアンモニウムの好ましい供給源の1つであり、ニュージャージー州フレミントン市のMEIから市販されている。それは、ほぼ20%重量/重量のZrO2を与える。2つの試験配合物は、下記の表1に記載されている。バニリンを含む配合物は目に見える反応の兆候は全くなかったが、サリチルアルデヒドを含む配合物は、色が黄色に変わり始めて、反応が起こり、炭素−窒素の結合が形成されたことを示した。これらの結果は、配合物においてハンチのジヒドロピリジン反応が可能であること、および、アルデヒド供給源の種類が反応に影響を及ぼす場合があることを示唆している。
【0017】
【表1】
次の一連の実験において、上記のコーティング樹脂を使用して、一連のコーティング組成物を作製した。重量パーセントで記載した各成分の量で下記の表2および表3に記載した通り、コーティング組成物を調製した。コーティング溶液において、アルデヒドの供給源を種々に変え、ハンチのジヒドロピリジン反応のためのアミンはBacote 20(登録商標)の過剰のアンモニアによって供給する。加えて、アミンはシステインによって供給できる。また、本発明のコーティングは、コーティングされた基体の成形性を向上させるワックスなどの加工助剤を含むことができる。
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
次いで、ASTM B117を使用する塩水噴霧(NSS)試験におけるコーティングの耐腐食性の試験のために、表2および表3に記載された、調製したコーティング組成物を一連の溶融亜鉛めっき(HDG)パネルACT HDG APR 31893上にコーティングした。当業者に知られているように、その場で乾燥する方法(dry in place process)で、試験パネルを表2および表3の配合物でコーティングした。それぞれのパネルに、1平方フィート当たり略200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)のコーティング重量でコーティングを塗工し、次いで、200°F(93℃)または300°F(149℃)のいずれかのピーク金属温度まで乾燥し、NSS試験に直接入れるか、または、最初にアルカリ性洗浄剤PCl 338で洗浄し、次いでNSS試験に入れるかのいずれかとした。PCl 338での事前処理後にNSSの結果が下がることは、コーティングがアルカリ耐性でないことを示す。次いで、ASTM B117に従い、NSSを使用して、コーティングされたパネルの耐腐食性を試験した。それぞれの時点において複数の各条件を検討し、腐食された全表面のパーセンテージを決定し、平均し、以下に報告した。
【0020】
表4における結果は、PCl 338で処理せず200°F(93℃)のピーク金属温度まで乾燥させたパネルの結果である。対照である配合物9Aおよび9Hは、ハンチのジヒドロピリジン反応のために外から加えられたアルデヒドを一切含まなかった。配合物9Dにおいてアルデヒド供給源がグルコースのときに最良の結果が見られ、これは他の配合物よりも非常に高い耐腐食性を示した。また、配合物9Jおよび9Kにおいても良好な結果が見られた。
【0021】
【表4】
表5における結果は、PCl 338で処理せず300°F(149℃)のピーク金属温度まで乾燥させたパネルの結果である。対照である配合物9Aおよび9Hは、ハンチのジヒドロピリジン反応のために外から加えられたアルデヒドを一切含まなかった。結果は、実質的に全ての配合物について、PMTを300°F(149℃)まで上昇すると、NSS試験において性能が悪化するか、または改良されないことを示している。これらの更に高いPMT条件において、最良の耐腐食性は配合物9Dおよび9Gで見られた。
【0022】
【表5】
表6における結果は、200°F(93℃)のピーク金属温度まで乾燥し、続いてNSS試験に先立ち、PCl 338で事前処理したパネルの結果である。対照である配合物9Aおよび9Hは、ハンチのジヒドロピリジン反応のために外から加えられたアルデヒドを一切含まなかった。配合物9A〜9Nの全てについての結果がPCl 338の事前処理後に悪くなっており、コーティングがアルカリ耐性でないことを示している。
【0023】
【表6】
表7における結果は、300°F(149℃)のピーク金属温度まで乾燥し、続いてNSS試験に先立ち、PCl 338で事前処理したパネルの結果である。対照である配合物9Aおよび9Hは、ハンチのジヒドロピリジン反応のために外から加えられたアルデヒドを一切含まなかった。配合物9A〜9Nについて、PCl 338の事前処理の効果は、一般に、耐腐食性を低下させた。一部の配合物は変化を示さなかったが、ほとんどが事前処理によってマイナスの影響を受けた。
【0024】
【表7】
別の一連の実験において、これらの配合物およびピーク金属温度をHDGパネルで試験し、それらのメチルエチルケトン(MEK)に対する溶媒耐性を決定した。試験は当業者に知られている通りに行った。簡単に言えば、コーティングされた試験パネルを、所定の時間、MEK中でコーティングされたパッドで機械的にこすり、その後、外観について評価した。レベル1が最悪の外観、10が最良として、結果を下記の表8に示す。配合物9Nの対照パネルは、200°F(93℃)のPMTで、50%グリオキシル酸の代わりに酢酸(これはアルデヒド官能基を与えない。)を使用して調製した。この対照はレベル5の外観であった。配合物9A〜9Nは、ほぼ全面的に、より高い300°F(149℃)のPMTから利益を得るようであった。最良の結果は、また、サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、グルコース、グリオキシル酸のいずれかで見られた。
【0025】
【表8】
最後の一連の実験において、コーティングのアルカリ耐性に対するPMTの効果を決定した。この実験のために、以下のコーティング配合物[65.00% DI水、24.00% Bacote 20、0.50% V2O5、10.00% 樹脂3272−056、および、0.5% システイン]を使用してパネルを作製した。このコーティングにおいて、アルデヒドは、樹脂3272−056を形成するために使用されたホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム開始剤に由来する。コーティングされたパネルは1平方フィート当たり略200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)でコーティングされ、次いで、200、250、300、または、350°F(93、121、149、または、177℃)のPMTまで乾燥した。アルカリ処理は以下の通りであった。それぞれのパネルの一部を20%NaOH溶液中に略1〜2分浸漬し、次いで、目視による評価のために取り外した。結果は、200または250°F(93または121℃)のPMTを使用してもアルカリ浸漬に対する耐性は付与されないことを示し、実際、浸漬によりコーティング全体が除去され、金属が露出した。対照的に、300または350°F(149または177℃)のPMTによって、アルカリ処理に対する完全な耐性が付与された。これは、この配合物を使用して、ハンチのジヒドロピリジン反応を完了するには、250〜300°F(121〜149℃)のPMTが必要となる場合があることを示している。
【0026】
本発明により調製されるコーティングは、ホスフェート、または洗浄以外の他の事前処理を一切必要とせず、露出した金属基体に直接塗工するように設計されている。状況に応じて要求される任意の所望のコーティング重量でコーティングを塗工することができ、好ましくは、1平方フィート当たり150〜400ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり150〜400ミリグラム)、より好ましくは、1平方フィート当たり175〜300ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり175〜300ミリグラム)、最も好ましくは、1平方フィート当たり175〜250ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり175〜250ミリグラム)のコーティング重量でコーティングを塗工する。当該技術分野において知られているように、本発明のコーティングは、その場で乾燥するコーティング(dry in place coating)であり、好ましくは、180〜350°F(82〜177℃)のピーク金属温度、より好ましくは、200〜325°F(93〜163℃)のPMTまで乾燥される。
【0027】
上記の発明は関連する法的基準に従って記載されており、よって、記載は、本質的に制限するのではなく例示である。開示される実施形態に対する変更および修正は当業者には明らかであり、本発明の範囲内である。従って、本発明に対して与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、有機コーティング樹脂における架橋反応、より特には、ハンチのジヒドロピリジン合成反応に基づく架橋反応に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング樹脂を架橋するための架橋反応は、当該技術分野において知られている。架橋により、コーティングされた基体の特性を高めることができる。これらの特性としては、機械的特性、物理的特性、美的特性、および腐食に対する耐性が挙げられる。現在行われている架橋反応に伴う1つの難点は、しばしば架橋反応が高い処理温度を必要とし、これが、ある種の基体に対する架橋反応の有用性を制限することである。加えて、架橋反応の多くが非水系の溶液を必要とするか、可逆的であり、このため、実施上の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より低い反応温度において使用できる架橋プロセスおよびシステムを開発することが望まれている。加えて、水溶液において起こり得る、不可逆な架橋プロセスを開発することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般的に、本発明は、より低温で水系において動作し、不可逆である架橋プロセスおよびシステムを提供する。該方法は、架橋基としてハンチのジヒドロピリジンを形成する方法に基づく。1つの実施形態においては、該システムは、アセトアセトキシエチルメタクリレートから得られるものなどの樹脂上の2当量のβ−ケトエステル、1当量のアルデヒドおよび1当量のアンモニアまたは1級アミンを使用して、ハンチのジヒドロピリジンを生成する。
【0005】
好ましい実施形態の詳細な記載から、当業者には、本発明のこれら、および他の特徴および利点が、より明白となるであろう。図面を、詳細な説明と共に、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本発明により提案されるハンチのジヒドロピリジン架橋機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、コーティング樹脂において隣接するポリマー鎖を架橋する架橋機構に関する。これまで架橋反応はコーティング樹脂用に利用されてきたが、それらは、高い反応温度が必要であり、厳しい条件が必要であり、非水系または可逆性であるという問題がある。本発明は、他の架橋反応に比べ低温で動作し、水溶液中で起こり、不可逆な架橋反応を提供する。本架橋反応により、コーティング樹脂の化学的特性、機械的特性、バリア特性、物理的特性および耐腐食性が向上する。例として、薄い有機コーティング、有機コーティング、不動態化リンス剤、封止リンス剤、接着剤および封止剤において架橋を生じるために本反応を使用できる。本発明は、露出金属表面(金属リン酸塩溶液、クロム含有リンス剤、または他の不動態化処理で、金属表面が事前に処理されていないことを意味する。)の処理に関する。本発明の方法の恩恵を受ける金属表面としては、鋼、冷延鋼、熱延鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、亜鉛金属または亜鉛合金でコーティングされた鋼(電気亜鉛めっき鋼、ガルバリウム(登録商標)、ガルバニール、および、溶融亜鉛めっき鋼など)が挙げられる。
【0008】
好ましくは、本発明による処理に先立ち、金属表面は洗浄および脱脂される。金属表面の洗浄は当該技術分野においてよく知られており、弱または強アルカリ性洗浄剤を含むことができる。2つのアルカリ性洗浄剤の例として、Parco(登録商標)Cleaner ZX−1およびParco(登録商標)Cleaner 315が挙げられ、両者ともHenkel Surface Technologies社から市販されている。洗浄に続いて、本発明による処理に先立ち、好ましくは、表面を水洗する。
【0009】
本発明のために提案される反応スキームを図1に示す。ハンチのジヒドロピリジン/ピリジン合成反応により、アンモニアまたは1級アミンの存在下、アルデヒドと、2当量のβ−ケトエステル(樹脂中にアセトアセトキシエチルメタクリレートを組み込んだ後のペンダント鎖により与えられるものなど)とを縮合反応させて、ジヒドロピリジン誘導体を製造することができる。その後の酸化または脱水素化により、ピリジン3,5−ジカルボキシレートが得られる。
【0010】
本発明において、アンモニアまたは種々の1級アミンが有用である。例として、アンモニア、アミノ酸、ジアミン、および、1級アミン基を有する他の分子が挙げられる。ハンチのジヒドロピリジン反応を阻害することなく、樹脂のβ−ケトエステル基の数をはるかに超えて、アミンのレベルを非常に高くできることが見いだされた。
【0011】
本発明において、種々のアルデヒドを使用することができ、単に例としてであるが、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド、シンナムアルデヒド、グルコース、バニリン、グリオキサル、および、グリオキシル酸が挙げられる。好ましくは、アルデヒドの量を、樹脂のβ−ケトエステルサイトのレベルに合わせる。架橋溶液は、好ましくは、樹脂のβ−ケトエステル基の2当量あたり0.1〜1.5当量のアルデヒド、より好ましくは、樹脂のβ−ケトエステル基の2当量あたり0.5〜1.1当量のアルデヒドを含む。
【実施例】
【0012】
ペンダント鎖として、β−ケトエステル官能基と共に、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)を有する一連の樹脂を調製した。これは、単に、本発明の方法において使用が可能なペンダント鎖の1つである。
【0013】
<コーティング樹脂例1(3272−096)>
有機コーティング樹脂を下記の通り調製し、それを樹脂3272−096と呼ぶ。樹脂は、モノマーとして、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、n−ブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、および、ADD APT PolySurf HP(これは、メタクリレート化されたモノおよびジ−リン酸エステルの混合物である。)を含む。本発明により調製される全ての樹脂におけるリン酸エステルの別の可能な供給源は、Radcure社製のEbecryl 168である。樹脂における全モノマーの分布は以下の通りであった:20.00% AAEM、12.50% n−ブチルメタクリレート、15.00% スチレン、27.50% メチルメタクリレート、20.00% 2−エチルヘキシルアクリレート、および、5.00% ADD APT PolySurf HP。80℃の設定温度で加熱し、撹拌しながらN2下において樹脂重合反応を行った。反応容器への最初の充填物は、241.10グラムの脱イオン(DI)水、2.62グラムのラウリル硫酸アンモニウム(Rhodapon L−22 EP)、および、2.39グラムの硫酸第一鉄 0.5%FeSO4・7H2O(3ppm)であった。この最初の充填物を時間ゼロの時点で反応容器に入れ、設定温度への加熱を開始した。30分後、5.73グラムのDI水、0.90グラムのノニオン性界面活性剤Tergitol 15−S−20、0.13グラムのRhodapon L−22 EP、2.15グラムのn−ブチルメタクリレート、2.57グラムのスチレン、4.74グラムのメチルメタクリレート、3.48グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、3.41グラムのアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、および0.85グラムのADD APT PolySurf HPの組合せを含む反応体種を反応容器に加え、設定温度への加熱を更に15分続けた。次いで、0.32グラムのHOCH2SO2Na、4.68グラムのDI水、0.45グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の4.54グラムのDI水を含む最初の開始剤充填物を容器に加え、更に30分、温度を設定温度で維持した。次いで、温度を設定温度で維持しながら3時間にわたって、モノマーおよび開始剤の共供給物を容器に加えた。モノマー共供給物は、106.92グラムのDI水、17.10グラムのTergitol 15−S−20、2.49グラムのRhodapon L−22 EP、40.89グラムのn−ブチルメタクリレート、48.83グラムのスチレン、89.97グラムのメチルメタクリレート、66.10グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、64.77グラムのAAEM、および、16.19グラムのADD APT PolySurf HPであった。開始剤共供給物は、0.97グラムのHOCH2SO2Na、14.03グラムのDI水、1.39グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の13.61グラムのDI水であった。3時間後、追加充填物を30分間にわたって容器に加えた。追加充填物は、0.32グラムのHOCH2SO2Na、4.88グラムのDI水、0.46グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の4.54グラムのDI水であった。次いで、1時間30分、設定温度で容器を保持した。次いで、設定温度からの冷却を開始し、温度が38℃となるまで2時間、継続した。次いで、バッファー共供給物を容器に加えた。バッファー共供給物は、5.19グラムの水酸化アンモニウム(28%)および18.48グラムのDI水であった。この樹脂および本発明による全ての樹脂においてTergitol 15−S−20(これは、2級アルコールエトキシレートである。)の代わりに使用することのできる追加のノニオン性界面活性剤安定剤は、15〜18の親水性親油性バランスを有する他のノニオン性安定剤である。これらの安定剤の例としては、Tergitol 15−S−15などの他の2級アルコールエトキシレート;Abex 2515などのエトキシレートの配合物;Emulsogen LCN 118または258などのアルキルポリグリコールエーテル;Genapol T 200およびT 250などの獣脂脂肪族アルコールエトキシレート;Genapol X 158およびX 250などのイソトリデシルアルコールエトキシレート;Rhodasurf BC−840などのトリデシルアルコールエトキシレート;およびRhoadsurf ON−877などのオレイルアルコールエトキシレートが挙げられる。
【0014】
<コーティング樹脂例2(3272−103)>
有機コーティング樹脂を下記の通り調製し、それを樹脂3272−103と呼ぶ。樹脂は、モノマーとして、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、n−ブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、および、ADD APT PolySurf HP(これは、メタクリレート化されたモノおよびジ−リン酸エステルの混合物である。)を含む。樹脂における全モノマーの分布は以下の通りであった:20.00% AAEM、12.50% n−ブチルメタクリレート、15.00% スチレン、27.50% メチルメタクリレート、20.00% 2−エチルヘキシルアクリレート、および、5.00% ADD APT PolySurf HP。80℃の設定温度で加熱し、撹拌しながらN2下において樹脂重合反応を行った。反応容器への最初の充填物は、286.10グラムのDI水、および、2.47グラムのRhodapon L−22 EPであった。この最初の充填物を時間ゼロの時点で反応容器に入れ、設定温度への加熱を開始した。30分後、5.44グラムのDI水、0.85グラムのTergitol 15−S−20、0.12グラムのRhodapon L−22 EP、2.04グラムのn−ブチルメタクリレート、2.44グラムのスチレン、4.49グラムのメチルメタクリレート、3.30グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、3.24グラムのアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、および0.81グラムのADD APT PolySurf HPの組合せを含む反応体種を反応容器に加え、設定温度への加熱を更に15分続けた。次いで、4.79グラムのDI水および0.21グラムの(NH4)2S2O8を含む最初の開始剤充填物を容器に加え、更に30分、温度を80℃で維持した。次いで、温度を設定温度で維持しながら3時間にわたって、モノマーおよび開始剤の共供給物を容器に加えた。モノマー共供給物は、103.36グラムのDI水、16.15グラムのTergitol 15−S−20、2.35グラムのRhodapon L−22 EP、38.81グラムのn−ブチルメタクリレート、46.34グラムのスチレン、85.38グラムのメチルメタクリレート、62.73グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、61.47グラムのAAEM、および、15.37グラムのADD APT PolySurf HPであった。開始剤共供給物は、14.36グラムのDI水および0.64グラムの(NH4)2S2O8であった。3時間後、追加充填物を30分間にわたって容器に加えた。追加充填物は、0.35グラムのアスコルビン酸、4.65グラムのDI水、0.44グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、追加の4.56グラムのDI水、および、2.39グラムの硫酸第一鉄 0.5%FeSO4・7H2O(3ppm)であった。次いで、1時間30分、設定温度で容器を保持した。次いで、冷却を開始し、温度が38℃となるまで2時間、継続した。次いで、バッファー共供給物を容器に加えた。バッファー共供給物は、5.88グラムの水酸化アンモニウム(28%)および18.48グラムのDI水であった。
【0015】
<コーティング樹脂例3(3272−056)>
有機コーティング樹脂を下記の通り調製し、それを樹脂3272−056と呼ぶ。樹脂は、モノマーとして、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、n−ブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、および、ADD APT PolySurf HP(これは、メタクリレート化されたモノおよびジ−リン酸エステルの混合物である。)を含む。樹脂における全モノマーの分布は以下の通りであった:20.00% AAEM、12.50% n−ブチルメタクリレート、15.00% スチレン、27.50% メチルメタクリレート、20.00% 2−エチルヘキシルアクリレート、および、5.00% ADD APT PolySurf HP。70℃の設定温度で加熱し、撹拌しながらN2下において樹脂重合反応を行った。最初の反応器充填物は、241.01グラムのDI水、および、2.62グラムのRhodapon L−22 EP(ラウリル硫酸アンモニウム)であった。第2の反応器充填物は、2.39グラムの硫酸第一鉄 0.5%FeSO4・7H2O(3ppm)であった。2つの開始剤共供給物は、23.38グラムのDI水中の1.62グラムのHOCH2SO2Naおよび22.69グラムのDI水中の2.31グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシドであった。モノマー共供給物は、114.41グラムのDI水、18.00グラムのTergitol 15−S−20(2級アルコールエトキシレート界面活性剤)、2.62グラムのRhodapon L−22 EP、68.18グラムのAAEM、43.05グラムのn−ブチルメタクリレート、51.39グラムのスチレン、94.70グラムのメチルメタクリレート、69.58グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、および、17.05グラムのADD APT PolySurf HPであった。中和剤充填物は、18.48グラムのDI水中の6.52グラムの28%水酸化アンモニウムであった。30分撹拌しながら最初の反応器充填物を反応容器に加えることで、プロセスを開始した。次いで、それぞれ4ミリリットルの開始剤共供給物および第2の反応器充填物と一緒に、反応体種として25グラムのモノマー共供給物を反応容器に加えた。次いで、3時間にわたりモノマー共供給物を反応容器に供給し、4時間にわたり開始剤共供給物を反応容器に供給した。開始剤共供給物の最後の添加の後、さらに40分間反応を行い、38℃への冷却を開始した。1時間45分の冷却後、中和剤充填物を反応容器に加えた。
【0016】
第1の試験において、樹脂コーティング組成物においてハンチのジヒドロピリジン反応を起こすことができるかどうかを決定するために、2つのコーティング組成物を調製した。試験では、樹脂3272−096と、反応のためのアルデヒド供給源としてバニリンまたはサリチルアルデヒドのいずれかを使用した。反応に必要なアミンは、反応においてアミンとして働く大過剰のアンモニウムを有するBacote 20(登録商標)によって与えられる。Bacote 20(登録商標)は炭酸ジルコニルアンモニウムの好ましい供給源の1つであり、ニュージャージー州フレミントン市のMEIから市販されている。それは、ほぼ20%重量/重量のZrO2を与える。2つの試験配合物は、下記の表1に記載されている。バニリンを含む配合物は目に見える反応の兆候は全くなかったが、サリチルアルデヒドを含む配合物は、色が黄色に変わり始めて、反応が起こり、炭素−窒素の結合が形成されたことを示した。これらの結果は、配合物においてハンチのジヒドロピリジン反応が可能であること、および、アルデヒド供給源の種類が反応に影響を及ぼす場合があることを示唆している。
【0017】
【表1】
次の一連の実験において、上記のコーティング樹脂を使用して、一連のコーティング組成物を作製した。重量パーセントで記載した各成分の量で下記の表2および表3に記載した通り、コーティング組成物を調製した。コーティング溶液において、アルデヒドの供給源を種々に変え、ハンチのジヒドロピリジン反応のためのアミンはBacote 20(登録商標)の過剰のアンモニアによって供給する。加えて、アミンはシステインによって供給できる。また、本発明のコーティングは、コーティングされた基体の成形性を向上させるワックスなどの加工助剤を含むことができる。
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
次いで、ASTM B117を使用する塩水噴霧(NSS)試験におけるコーティングの耐腐食性の試験のために、表2および表3に記載された、調製したコーティング組成物を一連の溶融亜鉛めっき(HDG)パネルACT HDG APR 31893上にコーティングした。当業者に知られているように、その場で乾燥する方法(dry in place process)で、試験パネルを表2および表3の配合物でコーティングした。それぞれのパネルに、1平方フィート当たり略200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)のコーティング重量でコーティングを塗工し、次いで、200°F(93℃)または300°F(149℃)のいずれかのピーク金属温度まで乾燥し、NSS試験に直接入れるか、または、最初にアルカリ性洗浄剤PCl 338で洗浄し、次いでNSS試験に入れるかのいずれかとした。PCl 338での事前処理後にNSSの結果が下がることは、コーティングがアルカリ耐性でないことを示す。次いで、ASTM B117に従い、NSSを使用して、コーティングされたパネルの耐腐食性を試験した。それぞれの時点において複数の各条件を検討し、腐食された全表面のパーセンテージを決定し、平均し、以下に報告した。
【0020】
表4における結果は、PCl 338で処理せず200°F(93℃)のピーク金属温度まで乾燥させたパネルの結果である。対照である配合物9Aおよび9Hは、ハンチのジヒドロピリジン反応のために外から加えられたアルデヒドを一切含まなかった。配合物9Dにおいてアルデヒド供給源がグルコースのときに最良の結果が見られ、これは他の配合物よりも非常に高い耐腐食性を示した。また、配合物9Jおよび9Kにおいても良好な結果が見られた。
【0021】
【表4】
表5における結果は、PCl 338で処理せず300°F(149℃)のピーク金属温度まで乾燥させたパネルの結果である。対照である配合物9Aおよび9Hは、ハンチのジヒドロピリジン反応のために外から加えられたアルデヒドを一切含まなかった。結果は、実質的に全ての配合物について、PMTを300°F(149℃)まで上昇すると、NSS試験において性能が悪化するか、または改良されないことを示している。これらの更に高いPMT条件において、最良の耐腐食性は配合物9Dおよび9Gで見られた。
【0022】
【表5】
表6における結果は、200°F(93℃)のピーク金属温度まで乾燥し、続いてNSS試験に先立ち、PCl 338で事前処理したパネルの結果である。対照である配合物9Aおよび9Hは、ハンチのジヒドロピリジン反応のために外から加えられたアルデヒドを一切含まなかった。配合物9A〜9Nの全てについての結果がPCl 338の事前処理後に悪くなっており、コーティングがアルカリ耐性でないことを示している。
【0023】
【表6】
表7における結果は、300°F(149℃)のピーク金属温度まで乾燥し、続いてNSS試験に先立ち、PCl 338で事前処理したパネルの結果である。対照である配合物9Aおよび9Hは、ハンチのジヒドロピリジン反応のために外から加えられたアルデヒドを一切含まなかった。配合物9A〜9Nについて、PCl 338の事前処理の効果は、一般に、耐腐食性を低下させた。一部の配合物は変化を示さなかったが、ほとんどが事前処理によってマイナスの影響を受けた。
【0024】
【表7】
別の一連の実験において、これらの配合物およびピーク金属温度をHDGパネルで試験し、それらのメチルエチルケトン(MEK)に対する溶媒耐性を決定した。試験は当業者に知られている通りに行った。簡単に言えば、コーティングされた試験パネルを、所定の時間、MEK中でコーティングされたパッドで機械的にこすり、その後、外観について評価した。レベル1が最悪の外観、10が最良として、結果を下記の表8に示す。配合物9Nの対照パネルは、200°F(93℃)のPMTで、50%グリオキシル酸の代わりに酢酸(これはアルデヒド官能基を与えない。)を使用して調製した。この対照はレベル5の外観であった。配合物9A〜9Nは、ほぼ全面的に、より高い300°F(149℃)のPMTから利益を得るようであった。最良の結果は、また、サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、グルコース、グリオキシル酸のいずれかで見られた。
【0025】
【表8】
最後の一連の実験において、コーティングのアルカリ耐性に対するPMTの効果を決定した。この実験のために、以下のコーティング配合物[65.00% DI水、24.00% Bacote 20、0.50% V2O5、10.00% 樹脂3272−056、および、0.5% システイン]を使用してパネルを作製した。このコーティングにおいて、アルデヒドは、樹脂3272−056を形成するために使用されたホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム開始剤に由来する。コーティングされたパネルは1平方フィート当たり略200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)でコーティングされ、次いで、200、250、300、または、350°F(93、121、149、または、177℃)のPMTまで乾燥した。アルカリ処理は以下の通りであった。それぞれのパネルの一部を20%NaOH溶液中に略1〜2分浸漬し、次いで、目視による評価のために取り外した。結果は、200または250°F(93または121℃)のPMTを使用してもアルカリ浸漬に対する耐性は付与されないことを示し、実際、浸漬によりコーティング全体が除去され、金属が露出した。対照的に、300または350°F(149または177℃)のPMTによって、アルカリ処理に対する完全な耐性が付与された。これは、この配合物を使用して、ハンチのジヒドロピリジン反応を完了するには、250〜300°F(121〜149℃)のPMTが必要となる場合があることを示している。
【0026】
本発明により調製されるコーティングは、ホスフェート、または洗浄以外の他の事前処理を一切必要とせず、露出した金属基体に直接塗工するように設計されている。状況に応じて要求される任意の所望のコーティング重量でコーティングを塗工することができ、好ましくは、1平方フィート当たり150〜400ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり150〜400ミリグラム)、より好ましくは、1平方フィート当たり175〜300ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり175〜300ミリグラム)、最も好ましくは、1平方フィート当たり175〜250ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり175〜250ミリグラム)のコーティング重量でコーティングを塗工する。当該技術分野において知られているように、本発明のコーティングは、その場で乾燥するコーティング(dry in place coating)であり、好ましくは、180〜350°F(82〜177℃)のピーク金属温度、より好ましくは、200〜325°F(93〜163℃)のPMTまで乾燥される。
【0027】
上記の発明は関連する法的基準に従って記載されており、よって、記載は、本質的に制限するのではなく例示である。開示される実施形態に対する変更および修正は当業者には明らかであり、本発明の範囲内である。従って、本発明に対して与えられる法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンダントβ−ケトエステル官能基を含有するポリマー樹脂と、アルデヒド基の供給源と、アンモニアまたは1級アミンのいずれかの供給源との反応生成物を含む水性コーティング組成物であって、
2当量の前記β−ケトエステル官能基と、1当量の前記アルデヒド基と、1当量の前記アンモニアまたは前記1級アミンとの間のハンチのジヒドロピリジン反応によって、前記ポリマー樹脂の一部が架橋される水性コーティング組成物。
【請求項2】
更にワックスを含む請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
前記樹脂の2当量のβ−ケトエステル官能基あたり0.1〜1.5当量の前記アルデヒド基を含む請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
前記β−ケトエステル官能基は、前記ポリマー樹脂中にアセトアセトキシエチルメタクリレートを組み込むことによって与えられる請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
前記アルデヒド基は、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、グルコース、バニリン、グリオキサル、グリオキシル酸、および、それらの混合物から成る群より選択される請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
前記1級アミンの供給源はアミノ酸を含む請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
6〜11のpHを有する請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
ペンダントβ−ケトエステル官能基を含有するポリマー樹脂と、アルデヒド基の供給源と、アンモニアまたは1級アミンのいずれかの供給源との反応生成物を含むコーティング組成物でコーティングされた金属基体を含む被覆金属基体であって、
2当量の前記β−ケトエステル官能基と、1当量の前記アルデヒド基と、1当量の前記アンモニアまたは前記1級アミンとの間のハンチのジヒドロピリジン反応によって、前記ポリマー樹脂の一部が架橋される被覆金属基体。
【請求項9】
金属基体をコーティングする方法であって、
a)金属基体を準備する工程と、
b)ペンダントβ−ケトエステル官能基を含有するポリマー樹脂と、アルデヒド基の供給源と、アンモニアまたは1級アミンのいずれかの供給源との反応生成物を含む水性コーティング組成物であって、2当量のβ−ケトエステル官能基と、1当量のアルデヒド基と、1当量のアンモニアまたは1級アミンとの間のハンチのジヒドロピリジン反応によって、該ポリマー樹脂の一部が架橋される水性コーティング組成物を準備する工程と、
c)前記コーティング組成物を前記金属基体に塗工し、この金属基体上のその場で、このコーティング組成物を乾燥する工程と
を含む方法。
【請求項10】
工程c)は、ハンチのジヒドロピリジン反応が進むのに十分なピーク金属温度で前記コーティング組成物を乾燥して、前記ポリマー樹脂を十分に架橋し、20%NaOH溶液に1分間曝露しても前記金属基体から除去されないコーティングを実現することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程c)は、82〜177℃のピーク金属温度で前記コーティング組成物を乾燥することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項1】
ペンダントβ−ケトエステル官能基を含有するポリマー樹脂と、アルデヒド基の供給源と、アンモニアまたは1級アミンのいずれかの供給源との反応生成物を含む水性コーティング組成物であって、
2当量の前記β−ケトエステル官能基と、1当量の前記アルデヒド基と、1当量の前記アンモニアまたは前記1級アミンとの間のハンチのジヒドロピリジン反応によって、前記ポリマー樹脂の一部が架橋される水性コーティング組成物。
【請求項2】
更にワックスを含む請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
前記樹脂の2当量のβ−ケトエステル官能基あたり0.1〜1.5当量の前記アルデヒド基を含む請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
前記β−ケトエステル官能基は、前記ポリマー樹脂中にアセトアセトキシエチルメタクリレートを組み込むことによって与えられる請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
前記アルデヒド基は、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、グルコース、バニリン、グリオキサル、グリオキシル酸、および、それらの混合物から成る群より選択される請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
前記1級アミンの供給源はアミノ酸を含む請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
6〜11のpHを有する請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
ペンダントβ−ケトエステル官能基を含有するポリマー樹脂と、アルデヒド基の供給源と、アンモニアまたは1級アミンのいずれかの供給源との反応生成物を含むコーティング組成物でコーティングされた金属基体を含む被覆金属基体であって、
2当量の前記β−ケトエステル官能基と、1当量の前記アルデヒド基と、1当量の前記アンモニアまたは前記1級アミンとの間のハンチのジヒドロピリジン反応によって、前記ポリマー樹脂の一部が架橋される被覆金属基体。
【請求項9】
金属基体をコーティングする方法であって、
a)金属基体を準備する工程と、
b)ペンダントβ−ケトエステル官能基を含有するポリマー樹脂と、アルデヒド基の供給源と、アンモニアまたは1級アミンのいずれかの供給源との反応生成物を含む水性コーティング組成物であって、2当量のβ−ケトエステル官能基と、1当量のアルデヒド基と、1当量のアンモニアまたは1級アミンとの間のハンチのジヒドロピリジン反応によって、該ポリマー樹脂の一部が架橋される水性コーティング組成物を準備する工程と、
c)前記コーティング組成物を前記金属基体に塗工し、この金属基体上のその場で、このコーティング組成物を乾燥する工程と
を含む方法。
【請求項10】
工程c)は、ハンチのジヒドロピリジン反応が進むのに十分なピーク金属温度で前記コーティング組成物を乾燥して、前記ポリマー樹脂を十分に架橋し、20%NaOH溶液に1分間曝露しても前記金属基体から除去されないコーティングを実現することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程c)は、82〜177℃のピーク金属温度で前記コーティング組成物を乾燥することを含む請求項9に記載の方法。
【図1】
【公表番号】特表2011−521082(P2011−521082A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510637(P2011−510637)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/044457
【国際公開番号】WO2009/143110
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/044457
【国際公開番号】WO2009/143110
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】
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