説明

ハンドシャワー装置

【課題】使用者がシャワーヘッドからの吐止水の操作を行うに際し、シャワーヘッドを手に持つ際の持ち手に制約が無く、使い勝手が良好でしかも電源を必要としないハンドシャワー装置を提供する。
【解決手段】シャワーヘッド10の内部に設けられたパイロット弁64を開閉することにより主弁を開閉させてシャワー吐水口からの吐水と止水とを行うハンドシャワー装置において、シャワーヘッド10の内部には、パイロット弁64の開閉機構66を設けるとともに、重錘118-1,118-2を移動可能に設け、シャワーヘッド10に加えた加振力による重錘118-1,118-2の振れの力を開閉機構66に作用させてパイロット弁64を開弁及び閉弁させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はハンドシャワー装置に関し、詳しくはハンドシャワーヘッドの内部に主弁開閉用のパイロット弁を備えたハンドシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドシャワー装置として、(a)可撓性のシャワーホースの先端部に接続されたシャワーヘッドと、(b)シャワーホースを通じてシャワーヘッドに給水を行う主水路上に設けられて主水路を開閉する主弁と、(c)主弁の背後に形成され、内部の水の圧力を主弁に対する閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(d)主水路における主弁の上流側の水を背圧室に導入し、背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(e)背圧室に連通する状態でシャワーヘッド側に延び出した、背圧室の水抜水路としてのパイロット水路と、(f)シャワーヘッドの内部に設けられ、パイロット水路を開閉するパイロット弁と、を有し、シャワーヘッドに備えられた手元操作部を操作することでパイロット弁を開閉させ、これにより主弁を開閉させてシャワーヘッドの先端部に備えられた吐水口からの吐水と止水とを行うようになしたハンドシャワー装置が公知である。
【0003】
例えば下記特許文献1にこの種のハンドシャワー装置が開示されている。
このハンドシャワー装置の場合、使用者がハンドシャワーヘッドを手に持ったまま手元操作部を操作することで、シャワーヘッドに備えた吐水口からの吐水と止水とを行うことができ、利便性が高い。
しかしながらこのように手元操作部を操作して吐水と止水とを行う場合、使用者は手元操作部に指がかかるようにしてシャワーヘッドを手に持つ必要があり、必然的に持ち手の位置が限られてしまって、好みの位置でシャワーヘッドを持つといったことができず、或いは手元操作部を操作する際にシャワーヘッドを持ち替えなければならないといった不便さがある。
また例えば洗髪中などの目を瞑った状態でシャワーヘッドを手に持って吐止水を行う場合、手元操作部を手探りで探し出す必要があり、速やかに吐水或いは止水を行うことが難しいといった問題がある。
【0004】
このような課題を解決することを目的として、下記特許文献2には、シャワーヘッドに加速度センサを設けて、その加速度センサからの出力に基づいて、制御手段によりシャワーヘッドへの給水流路上に設けた開閉弁としての電磁弁を開閉させるようになしたハンドシャワー装置が開示されている。
しかしながらこのものは電気的にシャワーヘッドの振れを感知し、またその感知に基づいて電気的に電磁弁の作動制御等を行うもので必然的に電源を必要とし、また水周りの器具であるハンドシャワー装置をこのように構成すると漏電その他の問題を生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−11913号公報
【特許文献2】特開2006−104701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、使用者がシャワーヘッドを手に持って使用し、吐止水の操作を行うに際してシャワーヘッドを手に持つ際の持ち手の位置に制約が無く、使い勝手が良好でしかも電源を必要としたり漏電その他電気使用による問題を生じることのないハンドシャワー装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して請求項1のものは、(a)可撓性のシャワーホースの先端部に接続されたシャワーヘッドと、(b)該シャワーホースを通じて該シャワーヘッドに給水を行う主水路上に設けられて該主水路を開閉する主弁と、(c)該主弁の背後に形成され、内部の水の圧力を該主弁に対する閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(d)前記主水路における前記主弁の上流側の水を該背圧室に導入し、該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(e)該背圧室に連通する状態で前記シャワーヘッド側に延び出した、該背圧室の水抜水路としてのパイロット水路と、(f)該シャワーヘッドの内部に設けられ、該パイロット水路を開閉するパイロット弁と、を有し、該パイロット弁の開閉により前記主弁を開閉させて前記シャワーヘッドの先端部に備えられた吐水口からの吐水と止水とを行うハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドの内部には、前記パイロット弁の開閉機構を設けるとともに、重錘を移動可能に設け、該シャワーヘッドに加えた加振力による該重錘の振れの力を前記開閉機構に作用させて前記パイロット弁を開弁及び閉弁させるようになし、該開閉機構には、該パイロット弁を開弁後において開弁状態に、閉弁後において閉弁状態に保持するロック機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2のものは、請求項1において、軸周りに回動する長,短一対のアームを有する倍力機構を設けて、長アームの先端部に前記重錘を取り付ける一方、短アームを前記開閉機構に接続し、該重錘の振れの力を倍力して該短アームから該開閉機構に伝えるようになしたことを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0009】
以上のように本発明は、シャワーヘッドの内部にパイロット弁を設けて成るハンドシャワー装置において、シャワーヘッドの内部にパイロット弁の開閉機構を設けるとともに、重錘を移動可能に設け、シャワーヘッドに加えた加振力による重錘の振れの力をその開閉機構に作用させて、パイロット弁を開弁及び閉弁させるようになし、またその開閉機構に、パイロット弁を開弁後において開弁状態に、閉弁後において閉弁状態に保持するロック機構を備えたものである。
【0010】
かかる本発明のハンドシャワー装置では、使用者がシャワーヘッドを手に持ってこれを振るだけで、つまりシャワーヘッドに加振力を加えるだけでパイロット弁を開弁,閉弁させ、これにより主弁を開弁,閉弁させることでシャワーヘッドの吐水口からの吐水と止水とを行うことができる。
【0011】
従って本発明のハンドシャワー装置では、使用者がシャワーヘッドを手に持ってこれを使用する際、持ち手の位置が制限されてしまうといったことがなく、使用者の好む任意の位置でシャワーヘッドを手に持ってこれを使用することができる。即ち持ち手の位置がどのような位置であっても、単にシャワーヘッドを振るだけで吐水及び止水を行うことができる。
【0012】
また洗髪中など目を瞑った状態の下でも、シャワーヘッドを振るだけで簡単に吐水と止水とを行うことができ、更に指の不自由な人であっても支障無くシャワーヘッドを手に持って吐水と止水とを行うことができる。
【0013】
また本発明のハンドシャワー装置では、重錘の移動による慣性力を利用して機械的にパイロット弁を開弁及び閉弁させ、吐水口からの吐水と止水とを行うものであるため、電気的に吐水と止水とを行う場合のように電源を必要としたり、或いは漏電などを起してしまうといった問題を生じない。
ここで上記ロック機構は、スラストロック機構となしておくことができる。
【0014】
次に請求項2は、軸周りに回動する長,短一対のアームを有する倍力機構を設けて、長アームの先端部に重錘を取り付ける一方、短アームをパイロット弁の開閉機構に接続し、重錘の振れの力を倍力して短アームから開閉機構に伝えるようになしたもので、この請求項2によれば、重錘の振れの力が倍力されて開閉機構に伝わるため、重錘として質量の小さなものを用いることが可能となる。或いは同じ質量の重錘を用いる場合においては、より強い力で開閉機構を開閉させるようになすことができる。
更に長アーム,短アームの向きを適宜の向きとすることで、シャワーヘッドに加えるべき加振力の向きを自在に選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態であるハンドシャワー装置を示す図面である。
【図2】図1のシャワーヘッドの要部断面図である。
【図3】図1のバルブユニットの断面図である。
【図4】同実施形態におけるスラストロック機構の構成部品を分解して示す斜視図である。
【図5】図4のスラストロック機構の作用説明図である。
【図6】同実施形態のシャワーヘッド装置における吐水状態を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1は、本実施形態のハンドシャワー装置の全体構成を示している。
図に示しているようにこの実施形態のハンドシャワー装置は、可撓性のシャワーホース12の先端部に接続されたシャワーヘッド10と、シャワーホース12の他端部に接続されたバルブユニット14とを有している。
ここでシャワーヘッド10は、使用者の手によって握られ、保持されるグリップ部11を有している。
シャワーヘッド10は、先端部に散水板16を有しており、そこに多数の散水孔18からなるシャワー吐水口20が備えられている。
【0017】
図3に、バルブユニット14の内部構造が詳しく示してある。
22は、バルブユニット14におけるボデーで、接続口24を有している。
バルブユニット14は、この接続口24において水栓本体の湯水の混合部等に接続されるようになっている。
このバルブユニット14の内部には、シャワーホース12を通じてシャワーヘッド10に給水を行う主水路26上に、ピストン弁からなる主弁28が設けられている。
主弁28は、ボデー22に設けられた主弁座30に着座することで閉弁し、主水路26を遮断する。
また主弁座30から図中上方に離間することで開弁し、主水路26を開放する。
流入口31からボデー22内部に流入した水は、主弁28の開弁状態の下で、シャワーヘッド10のシャワー吐水口20まで到る主水路26を通じてシャワー吐水口20へと送られ、外部にシャワー吐水される。
【0018】
主弁28の図中上側の背後には背圧室32が形成されている。
この背圧室32は、内部の水の圧力を主弁28に対し図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
この背圧室32と、主水路26における主弁28の上流側とは小孔から成る導入小孔36にて連通しており、主水路26における主弁28より上流側の水が、この導入小孔36を通じて背圧室32へと導入されるようになっている。
背圧室32の水の圧力は、この導入小孔36を通じ内部に水が導入されることで上昇せしめられる。
尚、34はボデー22の本体部にねじ結合にて脱着可能に結合されたキャップである。
【0019】
38は、背圧室32に連通する状態でシャワーヘッド10側に延び出した水抜水路としてのパイロット水路で、大部分がシャワーホース12の内部に挿通された小径のチューブ40の内側に形成されている。
42は、ボデー22の内部に組み込まれたチューブ接続部材で、中心部に小径の筒状部44を有しており、その筒状部44に対してチューブ40が接続されている。
【0020】
チューブ40の内側の水路は、この筒状部44の内側の水路38a、及び主弁28の中心部を軸方向即ち図中上下方向に貫通する水路38bを通じて背圧室32と連通している。
即ちこれら水路38a,38bはパイロット水路38の一部を成している。
尚、筒状部44と主弁28とは水密に凹凸嵌合されており、その凹凸嵌合に基づいて筒状部44と主弁28とが水密接続されている。
【0021】
チューブ接続部材42には、小径の筒状部44周りに図中上下方向の軸方向に貫通する貫通孔が複数設けられており、それら貫通孔にて形成される水路26aが、主水路26の一部を成している。
ボデー22の内部にはまた、このチューブ接続部42の図中下側位置において、ホース接続部材46が組み込まれている。
【0022】
ホース接続部材46は、ボデー22から図中下向きに突出する筒状の挿込部48を備えている。
この挿込部48には、外周面に断面鋸歯状をなす凸形状部が上下方向に複数設けられている。
上記シャワーホース12は、この挿込部48に外挿状態に押し込まれた上、その外周面から固定リング50にて締め付けられることで挿込部48に固定されている。
【0023】
図2に、シャワーヘッド10の内部構造が詳しく示してある。
図2において、52はシャワーヘッド10の本体部54にねじ結合にて組み付けられた弁座保持部材で、中心部に筒状の保持部55を有しており、その内側の図中上部に、筒状をなす弁座部材56がねじ結合にて組み付けられ、保持されている。
また保持部55の図中下端部にはチューブ40が接続部材57,58にて接続されている。
【0024】
上記のパイロット水路38は、何れもがパイロット水路38の一部をなす保持部55の内側の水路38c,弁座部材56の中心部の断面円形且つ弁座部材56を軸方向に貫通する水路38d、更に保持部55の上端の開口にて形成される水路38eを経て、シャワーヘッド10内部の主水路26へと繋がっている。
尚、弁座保持部材52には保持部55周りに、軸方向に貫通した貫通孔を有している。この貫通孔にて形成される内側の水路26bは主水路26の一部を成している。
【0025】
上記弁座部材56は図中上部に、断面円形の軸状をなすパイロット弁64の軸心周りに円環状をなすパイロット弁座60を有している。
このパイロット弁座60は内周側にそのシール部であるOリング62を保持している。
そしてこのOリング62に対してパイロット弁64が、軸方向に摺動可能に且つ内嵌状態に嵌合するようになっている。
【0026】
而してパイロット弁64がパイロット弁座60詳しくはOリング62に嵌合した状態で、図2の部分拡大図に示しているように、パイロット弁64とパイロット弁座60との間が径方向に水密にシールされ、パイロット弁64が閉弁状態となる。
また図6の部分拡大図に示しているように、パイロット弁64がOリング62から図中上向きに離間した状態で、即ちOリング62との間に間隙を形成した状態で開弁状態となる。
【0027】
このパイロット弁64の開弁状態の下で、パイロット水路38はシャワーヘッド10内部の主水路26に開放された状態となり、パイロット水路38内の水が主水路26へと流入する。
即ち、図3に示す上記の背圧室32内の水が、パイロット水路38を通じて図2のシャワーヘッド10内の主水路26内へと流入し、ここにおいて背圧室32の水の圧力が低下する。
【0028】
而して背圧室32内の水の圧力が低下すると、図3のバルブユニット14内の主弁28が、主水路26における主弁28の上流側の給水圧力により開弁して主水路26を開放し、ここにおいて主水路26を通じシャワーヘッド10のシャワー吐水口20に給水が行われ、シャワー吐水口20からシャワー吐水される。
【0029】
一方パイロット弁64が開弁状態から閉弁状態となり且つ閉弁状態に保持されると、その後導入小孔36を通じて背圧室32内に主水路26の水(主弁28よりも上流側の水)が導入されて背圧室32の圧力が増大し、そしてその圧力が一定圧まで増大すると、背圧室32の圧力で主弁28が閉弁し、ここにおいて主水路26が閉鎖されてシャワーヘッド10のシャワー吐水口20からの吐水が停止される。
【0030】
図2において、66はパイロット弁64の開閉機構で、この開閉機構66は駆動軸68を有している。
ここで駆動軸68は、シャワーヘッド10におけるグリップ部11の略中心部に配置され、またその軸方向が、グリップ部11の軸方向即ち図2中上下方向を向く状態に設けられている。
駆動軸68は、断面円形で軸方向に一様な外径を有しており、その下端部に上記のパイロット弁64が一体に構成されている。
この駆動軸68の図中上半部は雄ねじ部70とされている。
【0031】
そしてこの雄ねじ部70の上部に、フランジ部72付きのコア部材74がねじ結合されて固定され、また更にこのコア部材74に対して有底の駆動スリーブ76がねじ結合にて固定されている。
そしてこのコア部材74のフランジ部72と駆動スリーブ76の図中上端との間に、後述のスラストロック機構90の要素をなすリング状の回転子78が、コア部材74周りに回転可能に保持されている。
従ってここではコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が駆動軸68と一体に図中上下方向、即ち駆動軸68の軸方向に移動するようになっている。
【0032】
この実施形態では、パイロット弁64が閉弁状態の下でコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が、駆動軸68と一体に図中上向きに押し上げられることで、パイロット弁64がパイロット弁座60から図中上方に離間して開弁する。
またコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が駆動軸68とともに図中下向きに降下することで、パイロット弁64がパイロット弁座60内部、具体的にはOリング62内に嵌入して閉弁状態となる。
尚これら一体に移動するコア部材74,駆動スリーブ76,駆動軸68は、コイルばね80にて常時下向き即ちパイロット弁64を閉弁させる方向に付勢されている。
【0033】
82は固定状態に設けられ、上記のコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78を駆動軸68とともに図中上昇位置と下降位置とに位置保持する位置保持スリーブで、シャワーヘッド10の本体部54に組み付けられたプレート84により、吊持状態に保持されている。
ここでプレート84には、これを板厚方向に貫通する貫通孔が設けられており、その貫通孔にて形成される水路26cが主水路26の一部を成している。
【0034】
このプレート84と本体部54の上側の段付部86との間にはばね受88が挟持されており、このばね受88に対して、上記のコイルばね80の上端が上向きに当接せしめられている。
【0035】
コイルばね80は、その下端が上記のコア部材74のフランジ部72の上面に下向きに当接せしめられており、コイルばね80は、これらばね受88とコア部材74のフランジ部72との間に介在して、その付勢力をコア部材74に対して下向きに及ぼしている。
【0036】
90は、パイロット弁64の開弁後においてこれを開弁状態に、また閉弁後においてこれを閉弁状態にそれぞれ状態保持する、上記の開閉機構66に備えられたスラストロック機構で、その具体的な構成が図4に示してある。
図4に示しているように、位置保持スリーブ82は内面側に突出した係止部92を有している。
係止部92は、周方向に沿って噛合歯94と溝96とを交互に有している。
またその上面には傾斜形状のカム面98が周方向に沿って設けられている。
【0037】
一方駆動スリーブ76には、その外周面にストッパ突起100と、位置決め突条102とが設けられている。
ここでストッパ突起100は、駆動スリーブ76の上昇時には位置保持スリーブ82の溝96内を上昇移動し、また下降時には溝96内を下降移動した後溝96の底部に当ってストッパ作用し、駆動スリーブ76の下降端を規定する。
また位置決め突条102は、位置保持スリーブ82の位置決め溝104に摺動可能に嵌合して、駆動スリーブ76と位置保持スリーブ82とを回転方向に位置決めする。
この駆動スリーブ76の上面にもまた、傾斜形状のカム面106が設けられている。
【0038】
回転子78には、周方向に連続した下面にカム面108が設けられている。
回転子78にはまた、径方向外方に突出した噛合歯110が周方向に、つまり回転方向に一定間隔で複数個所に設けられている。
この噛合歯110にもまた、その下面にカム面112が設けられている。
【0039】
コア部材74には、フランジ部72の下側位置に位置決め突条114が設けられ、この位置決め突条114が、駆動スリーブ76の内面の位置決め溝116に上下方向に摺動可能に嵌合することで、コア部材74と駆動スリーブ76とを回転方向に位置決めしている。
【0040】
このスラストロック機構90では、パイロット弁64が図2の部分拡大図に示す閉弁状態にあるときには、回転子78の径方向外方に突出した噛合歯110が、図5(I)に示しているように位置保持スリーブ82の溝96内に入り込んだ状態にあり、また駆動スリーブ76のストッパ突起100が溝96の底部に当った状態にあって、コア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が下降端に位置している。
即ちコア部材74と駆動スリーブ76と回転子78とが、駆動軸68とともに下降端にあって、位置保持スリーブ82にてその下降端に位置保持されている。
【0041】
この状態でコア部材74,駆動スリーブ76,回転子78が駆動軸68とともに図中上向きに持ち上げられ、そして図5(II)に示すように回転子78の噛合歯110が溝96から上側に外れると、駆動スリーブ76のカム面106と回転子78のカム面108とによるカム作用で、回転子78が微小角度図4中矢印P方向に回転させられる。
【0042】
その後、コイルばね80の下向きの付勢力でコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が下向きに下がると、回転子78の噛合歯110のカム面112と、位置保持スリーブ82のカム面98とが接触して、それらのカム作用で回転子78が更に微小角度矢印P方向に回転せしめられ、図5(III)に示すように回転子78の噛合歯110が位置保持スリーブ82の噛合歯94に咬み合った状態となる。
ここにおいてコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が、駆動軸68とともに上昇位置に位置保持される。
即ちパイロット弁64が、図中上向きに上昇した状態の開弁状態に状態保持される。
【0043】
その後コア部材74,駆動スリーブ76,回転子78が再び微小距離上向きに持ち上げられると、回転子78の噛合歯110が位置保持スリーブ82の溝96から上向きに抜け出して、回転子78が回転可能な状態となり、ここにおいて回転子78が、駆動スリーブ76のカム面106と回転子78のカム面108との接触によるカム作用で、図4中P方向に微小角度回転させられ、その後コア部材74,駆動スリーブ76,回転子78がコイルばね80の付勢力で下向きに下ると、今度は回転子78の噛合歯110のカム面112が位置保持スリーブ82のカム面98に接触して、それらのカム作用で回転子78が更に図中P方向に微小角度回転し、その後回転子78の噛合歯110が位置保持スリーブ82の溝96の位置に到って、その後回転子78が駆動スリーブ102及びコア部材74とともに溝96に沿って下向きに下降する。
【0044】
即ちコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が、駆動軸68とともに一体に下降運動し、またこれとともにパイロット弁64が下降運動して、再び図2の部分拡大図に示す閉弁状態となる。
以後コア部材74,駆動スリーブ76,回転子78が上向きに持ち上げられる度に、同様の動きが繰り返される。
即ちコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が上向きに持ち上げられるごとに、パイロット弁64が開弁状態と閉弁状態とに交互に状態保持される。
そしてこれにより主弁28が開弁又は閉弁し、シャワーヘッド10のシャワー吐水口20からの吐水と止水とが行われる。
【0045】
図2に示しているように、シャワーヘッド10の本体部54の内部には、環状をなす金属製の重錘118-1,118-2が、駆動軸68に沿って移動可能な状態で駆動軸68に外嵌状態に保持されている。
駆動軸68にはまた、その上方部位において重錘118-1,118-2を衝突させて、それら重錘118-1,118-2の振れの力(慣性力)、即ち動的荷重を受ける当り部120が固定状態に設けられている。
尚この当り部120の中心部には雌ねじ孔が設けられていて、その雌ねじ孔において、当り部120が雄ねじ部70に対しねじ結合で固定されている。
当り部120は、雄ねじ部70に対する螺合位置を変えることで駆動軸68に沿って位置調節が可能である。
【0046】
この実施形態では、使用者がシャワーヘッド10を手に持ってこれを図中上下に振ると、即ちシャワーヘッド10に対し加振力を加えると、その加振力によってシャワーヘッド10内部の重錘118-1,118-2が駆動軸68に沿って上方移動して、当り部120に勢い良く衝突する。
【0047】
その結果駆動軸68に対して、重錘118-1,118-2による動的な慣性力が働いて、駆動軸68と一体のコア部材74,駆動スリーブ76及び回転子78が図2中上方に持ち上げられる。
その結果、パイロット弁64が当初閉弁状態にあれば、パイロット弁64が開弁動作し、その後スラストロック機構90による上記の状態保持作用によって、パイロット弁64が開弁状態に状態保持される。
【0048】
その後再びシャワーヘッド10を手に持って図2中上下方向にこれを振り、加振力を加えると、重錘118-1,118-2が図2中下方位置から上向きに勢い良く移動して当り部120に衝突し、コア部材74,駆動スリーブ76,回転子78を駆動軸68とともに上向きに押し上げる。
その結果、今度はコア部材74,駆動スリーブ76,回転子78が下降位置に位置保持されて、パイロット弁64が閉弁し且つ閉弁状態に状態保持される。
【0049】
この実施形態では、このようにしてシャワーヘッド10を手に持って図2中上下方向、即ち軸方向に加振力を加えるごとに、パイロット弁64が開弁と閉弁とを交互に繰返し、且つ開弁後においては開弁状態に、また閉弁後においては閉弁状態にそれぞれ状態保持される。
【0050】
以上のように本実施形態のハンドシャワー装置では、使用者がシャワーヘッド10を手に持ってこれを振るだけで、パイロット弁64を開弁,閉弁させることができ、これにより主弁28を開弁,閉弁させてシャワーヘッド10のシャワー吐水口20からの吐水と止水とを行うことができる。
【0051】
従って本実施形態のハンドシャワー装置では、使用者がシャワーヘッド10を手に持ってこれを使用する際、持ち手の位置が制限されてしまうといったことがなく、使用者の好む任意の位置でシャワーヘッド10を手に持ってこれを使用することができる。即ち持ち手の位置がどのような位置であっても、単にシャワーヘッド10を振るだけで吐水及び止水を行うことができる。
【0052】
また洗髪中など目を瞑った状態の下でも、シャワーヘッド10に設けた操作部を手探りで捜さなくても、シャワーヘッド10を振るだけで簡単に吐水と止水とを行うことができ、更に指の不自由な人であっても支障無くシャワーヘッド10を手に持って吐水と止水とを行うことができる。
【0053】
また本実施形態のハンドシャワー装置では、重錘118-1,118-2の移動による慣性力を利用して機械的にパイロット弁64を開弁及び閉弁させ、シャワー吐水口20からの吐水と止水とを行うものであるため、電気的に吐水と止水とを行う場合のように電源を必要としたり、或いは漏電などを起してしまうといった問題を生じない。
【0054】
図7は上記実施形態の変形例を示している。
この例は、重錘122を大径として、シャワーヘッド10の本体部54内面に沿って移動させるようにし、また重錘122を大径としたのに対応して、当り部124を大径とした例である。
尚、他の点については基本的に上記実施形態と同様である。
【0055】
図8は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、倍力機構により重錘の振れの力を倍力して開閉機構66に作用させるようになした例である。
同図において126はその倍力機構で、シャワーヘッド10の本体部54に取り付けられた軸128と、軸128周りに回動する長アーム130と短アーム132とを有しており、その長アーム130の先端部に重錘134が取り付けられている。
一方短アーム132には、その先端部に直角に折れ曲った突出形状の係合部136が設けられ、その係合部136が、駆動軸68の雄ねじ部に螺合状態に組み付けられた連結部材138の係合穴140に挿入状態に係合せしめられている。
【0056】
尚この実施形態において、軸128はその両端部が本体部54の内面に設けられた溝142に嵌められて、その溝142底部にて支持され、またストッパリング144にて溝142底部からの軸128の浮上りが阻止されている。
倍力機構126は、そのようにして本体部54に組み付けられている。
またこの実施形態において、長アーム130は軸部128から下方に向って延び出している。
【0057】
この実施形態では、使用者がシャワーヘッド10を手に持ってこれを図8中左右方向、つまり駆動軸68の軸直角方向(シャワーヘッド10の本体部54の径方向)に振ると、その加振の力により重錘134が図8中左右方向に振れ、その振れの力が倍力機構126を介して駆動軸68に伝えられ、駆動軸68に対し上向きの強い力が加えられる。
【0058】
開閉機構66に対するこの上向きの力の作用は、シャワーヘッド10に加振の力を加えるごとに繰返し行われ、これによってパイロット弁64が開閉せしめられるとともに、開弁後において開弁状態を、また閉弁後において閉弁状態を、上記のスラストロック機構90により状態保持される。
【0059】
この実施形態によれば、重錘134の振れの力が倍力されて開閉機構66に伝わるため、重錘134として質量の小さなものを用いることが可能となる。或いは同じ質量の重錘134を用いる場合においては、より強い力で開閉機構66を開閉させるようになすことができる。
【0060】
尚ここでは長アーム130が軸128から下方向きに延びていることから、シャワーヘッド10を駆動軸68のほぼ軸直角方向に振ることで、パイロット弁64の開閉、即ちシャワーヘッド10のシャワー吐水口20から吐水と止水とを交互に行わせることができるが、長アーム130の向きを様々に変えることで、シャワーヘッド10に対して加えるべき加振の力の向きを自在に選択することができる。
【0061】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば上記実施形態では、パイロット弁を開弁状態と閉弁状態とに状態保持するロック機構としてスラストロック機構を用いているが、ハートカム機構その他様々なロック機構を用いることも可能である。
その他本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 シャワーヘッド
12 シャワーホース
20 シャワー吐水口
26 主水路
28 主弁
32 背圧室
36 導入小孔
38 パイロット水路
60 パイロット弁座
64 パイロット弁
66 開閉機構
118-1,118-2,122,134 重錘
126 倍力機構
130 長アーム
132 短アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)可撓性のシャワーホースの先端部に接続されたシャワーヘッドと、(b)該シャワーホースを通じて該シャワーヘッドに給水を行う主水路上に設けられて該主水路を開閉する主弁と、(c)該主弁の背後に形成され、内部の水の圧力を該主弁に対する閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、(d)前記主水路における前記主弁の上流側の水を該背圧室に導入し、該背圧室の圧力を増大させる導入小孔と、(e)該背圧室に連通する状態で前記シャワーヘッド側に延び出した、該背圧室の水抜水路としてのパイロット水路と、(f)該シャワーヘッドの内部に設けられ、該パイロット水路を開閉するパイロット弁と、を有し、該パイロット弁の開閉により前記主弁を開閉させて前記シャワーヘッドの先端部に備えられた吐水口からの吐水と止水とを行うハンドシャワー装置において、
前記シャワーヘッドの内部には、前記パイロット弁の開閉機構を設けるとともに、重錘を移動可能に設け、該シャワーヘッドに加えた加振力による該重錘の振れの力を前記開閉機構に作用させて前記パイロット弁を開弁及び閉弁させるようになし、
該開閉機構には、該パイロット弁を開弁後において開弁状態に、閉弁後において閉弁状態に保持するロック機構を備えたことを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項2】
請求項1において、軸周りに回動する長,短一対のアームを有する倍力機構を設けて、長アームの先端部に前記重錘を取り付ける一方、短アームを前記開閉機構に接続し、該重錘の振れの力を倍力して該短アームから該開閉機構に伝えるようになしたことを特徴とするハンドシャワー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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