説明

ハンドジャッキ

【課題】 ハンドジャッキを使用して斫り穴部分にある鋼製建具枠に傷を付けることなく持ち上げることが可能で、コンパクトで使い勝手がよく、経済的でしかも上下方向の高さを自在に操作して目的の位置へ容易に調整すると共に、前後左右方向の位置調整も容易に行うことのできるハンドジャッキを提供する。
【解決手段】 ハンドジャッキ1にはロッド3の後端に設けられた調整ハンドル14を円周方向へ廻すことによって、下げる方向に対しても無段階で調整自在に下げることができることと、アーム3の先端には支持部9が形成されており、支持部9はロッドの先端に固定してあるベース12よりも低い位置まで自在に下げられることと、アーム3の基部には持ち上げる物に対して傷が付かないように保護材10が取り付けられており、保護材10と支持部9の二点支持で持ち上げることにより、支持部9の上では安定した状態で保持し、物に対して平行姿勢を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンドジャッキに係り、特にコンクリート床の斫りのされている場所で鋼製建具枠を取り付けする時に、目的の高さや位置へ適宜調整し得るように構成したハンドジャッキに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製建具枠は数ミリの取り付け誤差があると、後に扉を取り付けしたときにスムーズに開閉できないことや鍵が掛からないといった状況が生じるので、このようなことがおきないようにするためにも鋼製建具枠の取り付けは正確さが要求されている。
【0003】
図11は鋼製建具枠31の仮設置の状態で、コンクリート床面37上に組まれた軽量鉄骨壁下地34の開口部36で床の一部を斫り、その斫り穴33へ鋼製建具枠31の最下部を落し込んで倒れないように紐35で結んだところである。そしてこの状態から鋼製建具枠31の下部Hにおいて木製のくさびや平板を使用して、鋼製建具枠31を目的の高さや位置へ調整していくところとなっている。
【0004】
図12,13,14は図11中、H部分の一方を例にとったものである。図12に示すように、斫り穴33でのくさびによる枠の調整方法は、くさび41を斜めの方向から支うために鋼製建具枠31が反対方向へ滑り落ちてしまうので、図13に示すように反対側からもくさび42を支わなければ安定しない。このようにして高さを上げていくようになるが、図14に示すように上下AB、前後CD、左右EF方向の決められた位置へ枠を調整するためには、数方向からくさび41、42、43や平板51を支うことになる。このようにして目的の位置への調整を完了した状態が、アーク溶接作業にて固定する前の、くさびを使用した場合の仮固定の状態となっている。仮固定の状態へ調整した後に鋼製建具枠31の裏側に設けられた溶接用バンド32と軽量鉄骨壁下地34に鉄筋棒を使用してアーク溶接作業にて固定する方法がとられている。
【0005】
しかしながら図14に示すように、数ヶ所の斜め方向からくさびを支うことは鋼製建具枠31がより安定した仮固定の状態となり、溶接作業のときに溶接用バンド32の部分へ多少の振動をあたえても、鋼製建具枠31がずれにくいという利点を有するがその反面、溶接用バンド32の視界を遮り溶接作業の妨げとなってしまうことや、その他以下のような問題点を生じさせている。即ち鋼製建具枠31を目的の位置へ調整するには、上下AB、前後CD、左右EFの三方向に対して正確に位置を合わせなくてはいけないため、この作業を斜めの状態にあるくさびの上でおこなうと、複数のくさびが鋼製建具枠31の下部へ接している時は安定しているが、鋼製建具枠31を少し移動するだけでバランスが崩れ高さや位置が変わってしまう。従ってこれらの動作を繰り返して微調整を行いながら目的の位置へ調整するには、かなりの時間を必要とし、このような手間を考えると好ましくない使用状態であるといえる。
【0006】
また上述した内容に付け加えると、鋼製建具枠31の重さを支えるように斜め方向からくさびを使用すると、くさびの形状は先端が薄いので折れてしまうことがあり、くさびの消耗が早まるため経済的な方法とはいえない。
【0007】
さらにコンクリート床面37には鋼製建具枠31の前後CD、左右EFの位置を決めるために基準となる地墨ライン38が印してあり、この地墨ライン38から鋼製建具枠31までの長さを測るときに、くさびがあるために測りにくいという問題を生じさせていた。
【0008】
また図15に示すように、従来のハンドジャッキ101はアームの上に物を載せて持ち上げるように構成されているため、アーム103は物が滑り落ちないように水平に設けられており、乗せる物に対応した大きさを必要としていた。従ってベース104の形状も小さいものを使用すると、ジャッキ本体102が傾いてしまい載せている物が滑り落ちてしまうため、アームに比例した大きさが必要となり倒れにくい構造となっている。また上げる方向に対しては可動レバー105の操作や、または可動レバー105に接触する微調整ネジ106を使った操作方法により、無段階で微調整も含めて自在に操ることができるようになっているが、下げる方向に対しての微調整をするための機構が構成されていないので、上げ過ぎてしまった場合の調整に対する対処が欠けていた。これらのことから狭い斫り穴の内部で鋼製建具枠を持ち上げて調整自在に操ることは困難であるという問題点を生じさせていた。
【特許文献1】登録実用新案公報 第3006549号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の背景技術及び背景技術が抱えていた問題点の存在を踏まえてなされたものであって、ハンドジャッキを使用して斫り穴部分にある鋼製建具枠に傷を付けることなく持ち上げることが可能で、コンパクトで使い勝手がよく、経済的でしかも上下方向の高さを自在に操作して目的の位置へ容易に調整すると共に、前後左右方向の位置調整も容易に行うことのできるハンドジャッキを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に記載した発明は、可動レバーの回動操作によってロッドを送り出すことにより無段階で調整自在に物を持ち上げると同時に、その高さを維持することが可能なタイプのハンドジャッキにおいて、
ハンドジャッキにはジャッキ本体が、中央に位置する胴体部と、
前記胴体部の後方の部位から水平方向に延びるグリップと、
前記胴体部の正面側に位置し急勾配な角度で斜め下方へ延びるアームとから形成されていて、
このうち前記胴体部には所定の長さを有する丸棒状のロッドが貫通されており、
該胴体部の内部では所定の位置に固着し、前記ロッドに挿入された固定プレートと、
前記固定プレートの上部の位置で、前記ロッドに挿入されたバネ大と、
前記バネ大の上部に位置し、前記ロッドに挿入された送りプレートと、
前記送りプレートを所定の方向に移動させ、前記ロッドを所定の方向に送り出すための可動レバーとからなるロッド送り機構部と、
前記胴体部の上部に位置し、前記ロッドに挿入されたバネ小と、
前記バネ小の上部に位置し、前記ロッドに挿入されたストッパープレートと、
前記ストッパープレートの一端部に位置し、該ストッパープレートを回動可能に連結している支持金具とからなるストッパー機構部とが構成されており、
前記ロッドの先端にはベースが固定され、もう一方の後端には該ロッドを回動させ、該ロッドを微小に変位させるための調整ハンドルが設けられていることを特徴とするハンドジャッキである。
【0011】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したハンドジャッキにおいて、前記可動レバーの回動操作によって持ち上げる物を目的の高さより上げ過ぎた場合に、前記ロッドの後端に設けられた調整ハンドルを円周方向へ廻すことによって、下げる方向に対しても無段階で調整自在に下げることができるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキである。
【0012】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載したハンドジャッキにおいて、前記アームの先端には物に引っ掛ける部分となる支持部が形成されており、該支持部は前記ロッドの先端に固定されているベースよりも低い位置まで自在に下げられるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキである。
【0013】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載したハンドジャッキにおいて、前記アームの基部には持ち上げる物に傷が付かないように保護材が取り付けられており、該保護材と前記支持部の二点支持で持ち上げることにより、持ち上げる物に対して平行姿勢を維持できるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキである。
【0014】
請求項5に記載した発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載したハンドジャッキにおいて、前記ロッドの先端に固定されているベースは脱着可能となっており、持ち上げる物や床の状況に対応して取り替えることができるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキである。
【0015】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載したハンドジャッキにおいて、前記ジャッキ本体の正面側に位置するアームが下面となるように本発明のハンドジャッキを横にして、前記支持部を床面に固定されているアンカーボルトへ引っ掛けるように設置したときに、前記可動レバーの回動操作によってロッドを送り出すことにより、前記ベースの先に置いてある物を押すことができるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハンドジャッキによれば、アームの基部へ取り付けられている保護材により持ち上げる物に対して傷を付けることなく平行姿勢を保つことができるように構成されているので、ベースも小さな形状となっている。支持部と保護材の二点支持で持ち上げることにより、支持部の上では安定した状態で保持し、また支持部は鋼製建具枠の下部に引っ掛ける程度の小さな形状となり、アームも垂直に近い急勾配な角度に設けられている。従って斫り穴の僅かな隙間から支持部を差し込み鋼製建具枠の下部へ引っ掛けることが可能となっている。
【0017】
また斫り穴に最下部を落とし込んだ鋼製建具枠を可動レバーの回動操作により傷を付けることなくスムーズに持ち上げて、同時にその高さを維持することが可能になっている。またその斫り穴の内部で上下両方向に対して無段階に微調整も含めて高さの調整が自在に行えるため、容易に目的の高さへ調整することができ、また高さを保った状態でベースの位置を前後左右へ動かすことにより容易に位置調整もおこなえる。またアーク溶接作業にて取り付けた後、簡単に鋼製建具枠から取り外すことが可能な道具となっているこれらのことから斫り穴に対応したコンパクトな形状にすることが可能になっている。
【0018】
ハンドジャッキを使用することで、鋼製建具枠の重さを支えるために支うくさびは不要となるので、くさびの先端を傷めることがなくなり経済的である。しかし必要に応じて溶接作業時に鋼製建具枠の位置がずれにくい状態にするのであれば目的の位置へセットが完了した後に、軽く触れる程度にくさびを支うことも可能となっている。
【0019】
また鋼製建具枠を持ち上げるときのハンドジャッキの設置位置は開口部に対して中央側となり、一つで使用する場合は鋼製建具枠の重心付近で、二つで使用する場合は鋼製建具枠の両端部付近となる。この位置は溶接作業には影響を与えない位置となっている。ハンドジャッキはコンパクトな形状なので複数使用しても地墨ラインから鋼製建具枠までの長さを測るときに支障とならない位置に設置することが可能となるため作業性が向上する。
以上のことから操作性の良いコンパクトな形状のハンドジャッキを提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図1〜図11に示す実施の形態1と実施の形態2を例にとって、本発明に係るハンドジャッキについて具体的に説明する。
【0021】
本実施の形態に係るハンドジャッキ1は、可動レバー5の回動操作によってロッド3を送り出すことにより、無段階で調整自在に物を持ち上げると同時に、その高さを維持することが可能なタイプのハンドジャッキである。
【実施例1】
【0022】
[実施の形態1]
図1は、本発明のハンドジャッキを示す斜視図であり、これを参照して説明すると、ハンドジャッキ1は、ジャッキ本体25の中央に位置する胴体部2と、胴体部2を貫通して所定の長さを有する丸棒状の部材からなるロッド3と、胴体部2の後方の部位から水平方向に延びるグリップ4と、グリップ4の基部に設けた回動ピン6により回動支点24を有する可動レバー5と、胴体部2の正面側に位置し急勾配な角度で斜め下方に延びるアーム8と、アーム8の基部には取り付けネジ11により保護材10が取り付けられている。
【0023】
ロッド3の先端には脱着可能としたベース12がナット13により取り付けられ固定している。またロッド3の後端には後述する調整ハンドル14が設けられている。
【0024】
可動レバー5の基部は、送りプレート20を跨ぐように形成されており、その上方には送りピン7を有している。
【0025】
アーム8の先端には物に引っ掛ける部分となる支持部9が形成されており、鋭角に曲げられている。
【0026】
アーム8の基端部には貫通孔16を有した支持金具15が設けられている。支持金具15の貫通孔16には、中央に貫通孔18を有して一端部を大きくして抜けない状態に形成されたストッパープレート17が通されている。ストッパープレート17と胴体部2との間には、バネ小19が設けられている。そしてバネ小19の内部とストッパープレート17の貫通孔18にロッド3が挿入されている。この段落に述べた部分を後述するストッパー機構部とする。
【0027】
胴体部2の内部には中央に貫通孔21を有した送りプレート20が設けられている。送りプレート20の下方には固定プレート22が固着されていてロッド3を貫通できるようになっている。送りプレート20と固定プレート22との間にはバネ大23が設けられている。そしてバネ大23の内部と、送りプレート20及び固定プレート22の貫通孔21にロッド3が挿入されている。この段落に述べた部分を後述するロッド送り機構部とする。以上本発明はこのようにして構成されている。
【0028】
次に、このようにして構成されるハンドジャッキ1のストッパー機構部の作動内容を説明する。図2は、ストッパー機構部の非作動時の状態を示している。支持金具15に通してあるストッパープレート17は、貫通孔16を支点に回動可能に連結されている。しかしストッパープレート17の下部に位置するバネ小19の付勢力を受けて傾斜した状態となるように持ち上げられている。従ってロッド3はストッパープレート17に有した貫通孔18のエッジに挟まれて常に摩擦力を受けている状態になっている。ストッパープレート17はロッド3に対して垂直な状態に近づくほどロッド3へ与える摩擦力は弱まるが、逆に傾斜が増すとロッド3を挟もうとする力が強く働くため摩擦力が強まっていく。現状としてロッド3を下へ送る方向はストッパープレート17がロッド3に対して垂直な状態に近づく方向であり、逆にロッド3を上へ送る方向はストッパープレート17の傾斜が増す方向となっている。このためロッド3は下方へ送ることはできても上方への逆進ができないようになっている。
【0029】
図3は、ストッパー機構部の作動時の状態を示している。上記ストッパープレート17を押し下げると、ストッパープレート17はロッド3に対して垂直な状態になり、貫通孔18のエッジによる摩擦力が解除されてロッド3はフリーな状態となり、上方向へ送ることが可能になる。ストッパー機構部は、以上のように構成されている。
【0030】
次に、このようにして構成されるハンドジャッキ1のロッド送り機構部の作動内容を説明する。図4は、ロッド送り機構部の非作動時の状態を示している。固定プレート22は胴体部2の補強材として固着されている一方で、バネ大23の一端を留めているプレートとなっている。固定プレート22の上にあるバネ大23は、送りプレート20を付勢するバネとなっている。送りプレート20は上下方向へ自在に動くように設けられているが、バネ大23の付勢力により水平に持ち上げられており、端部で送りピン7を押し上げている。このため回動支点24を介して可動レバー5はグリップ4に対して開いた状態を維持している。このときロッド3は送りプレート20の貫通孔21のエッジによる摩擦力の作用を受けていないのでフリーな状態になっている。
【0031】
図5は、ロッド送り機構部の作動時の状態を示している。可動レバー5を引き上げると回動支点24を介して送りピン7が下方向へ回動する。これに伴い送りピン7は送りプレート20の端部と接触しているので、送りプレート20は傾斜した状態となり下方向へ移動するようになる。送りプレート20が傾斜した状態になると、上述したように貫通孔21のエッジによりロッド3を挟もうとする力が働き、この摩擦力をうけてロッド3は送りプレート20と同じように移動するため下方向へ送り出すことができるようになっている。ロッド送り機構部は、以上のように構成されている。従って、可動レバー5の回動操作によりロッド3を送り出すことができ、また操作次第でそれは無段階で調整自在に送り出すこととなり、そして送り出したロッド3は逆進することなく維持できるようになっている。
【0032】
次に、このようにして構成されるハンドジャッキ1を利用して、鋼製建具枠を持ち上げる場合の操作手順と使用状況を説明する。実施の形態1に示す鋼製建具枠はすべて図11の状態にあるもとし、その内のH部分の一方を例に取ったものとする。図6に示す一実施例は、まず始めにストッパープレート17を押し下げてベース12がコンクリート床面37と干渉しない位置までロッド3を引き上げる。そして斫り穴33の隙間へ支持部9を差し込み鋼製建具枠31の最下部へ引っ掛ける。次に可動レバー5を引き上げて、下方向へロッド3を送り出していく。ロッド3の先端に設けてあるベース12がコンクリート床面37に接触したところで、支持部9に鋼製建具枠31の重さが掛かると、ジャッキ本体25が鋼製建具枠31の方向へ倒れようとする。この力を利用して保護材10が鋼製建具枠31へ接触したところである。
【0033】
引き続き可動レバー5の回動操作を繰り返すことで、図7に示すように鋼製建具枠31を持ち上げると同時にその高さを維持することができる。鋼製建具枠31は上方を紐にて結んであるため倒れないようになっている。ジャッキ本体25は支持部9に掛かる鋼製建具枠31の重さにより、保護材10を介して寄り掛かっている状態になり、鋼製建具枠31に対して常に平行姿勢を保つことができるようになっている。また支持部と保護材の二点支持で持ち上げることにより、支持部の上では安定した状態で保持できるようになっている。持ち上げる方向に対しては、可動レバー5の操作次第でほんの僅かにミリ以下の単位で上げることからセンチ単位でスムーズに上げることまで無段階で調整自在にできるようになっている。しかし目的の高さより上げ過ぎた場合には下げる方向に対してストッパープレート17を解除して下げる方法と、後述する調整ハンドル14を廻すことにより無段階にミリ以下の単位で少しずつ、そしてスムーズに下げる方法とがある。
【0034】
次に調整ハンドルの使用内容について説明をする。調整ハンドル14を円周方向の左右どちらかに回すことによりロッド3も回動して、ジャッキ本体25の重さ、あるいは持ち上げる物の重さにより無段階で微調整をしながら下げられるようになっている。これは前記ストッパー機構部の作動内容で示したように、ジャッキ本体25はストッパープレート17によるロッド3の一部分に掛かる摩擦力の作用により鋼製建具枠31を持ち上げた状態でその高さを維持しているが、ロッド3が円周方向に回動することによりロッド3に掛かっている力の接点が微小にずれていくため、ジャッキ本体25に掛かる重さにより無段階にミリ以下の単位で少しずつ、そしてスムーズに下方向へ移動する。このように上下方向に対して微調整も含めて調整自在に操ることのできるハンドジャッキ1となっている。
【0035】
また前後左右方向の調整は、ハンドジャッキ1により鋼製建具枠31を持ち上げた状態で、ベース12の位置を自在に動かすことにより対応される。このようにして仮固定の状態へ調整した後に鋼製建具枠31の裏側に設けられた溶接用バンド32と軽量鉄骨壁下地34に鉄筋棒61を使用してアーク溶接作業にて本固定されている。取り付け完了後はストッパープレート17を下げてロッド3をフリーな状態にしてハンドジャッキ1を外すことができるようになっている。
【0036】
図8は、ハンドジャッキ1を使用して鋼製建具枠31を目的の位置へ調整をして完了した後の仮固定の状態である。ハンドジャッキ1を使用することでこのように場所をとらずに、すっきりとした形で容易に作業を行うことができるようになっている。また必要に応じて溶接作業時に位置がずれにくい状態にするのであれば目的の位置への調整が完了した後に、軽く触れる程度にくさびを支うことも可能となっている。
【0037】
図9は、ハンドジャッキ1を使用して奥行き幅の大きい鋼製建具枠39を目的の位置へ調整をして完了した後の仮固定の状態である。奥行き幅の大きい鋼製建具枠39を持ち上げる時は、枠の両端部付近の二箇所にハンドジャッキ1を設置して使用することにより、安定した状態で高さを保持することが可能になっている。
【実施例2】
【0038】
[実施の形態2]
実施の形態2に係るハンドジャッキ1は、実施の形態1で使用したハンドジャッキ1と同様とし、構成及び作用の説明は省略する。
本発明のハンドジャッキ1は、実施の形態1で詳述した物を待ち上げるために使用することに限らず、物を押すことや、押し付けることにも使用することが可能となっている。
【0039】
図10に示すように、ジャッキ本体25の正面側であるアーム8の設けてある面が下面となるようにハンドジャッキ1を横にして、前記支持部9を床面に固定されているアンカーボルト72へ引っ掛けるように設置したときに、可動レバー5の回動操作によってロッド3を送り出すことにより、ベース12の先に置いてあるスチールボックス71を押すことができるように構成されている。上記内容から例えば位置の微調整を必用とする物に使用することや、また物が倒れないように押し付けておくことができるようになっている。
【0040】
以上、本発明を実施するための最良の形態の一例である実施の形態1と2について詳述してきたが、具体的な構成は上述した構成に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内における設計の変更などがあっても本発明に含まれる。
【0041】
例えば保護材の取り付け位置や形状は図示の実施の形態のようにアーム8の基部に円錐台形状の保護材10を設けるものの他、持ち上げる材料に対応してアーム8の中央部や先端部寄りへ、保護材10の取り付けネジ11用の穴を数箇所増やして位置を替えられるようにしてもよいし、また保護材の形状として四角錐台や表面積の大きい長四角錐台の形状にしてもよい。また使用する場所や状況に対応して、アーム8やロッド3の長さを変えてもよいし、アームの先端である支持部の形状をもっと引っ掛かりの良い形状としても構わない。
【0042】
本実施の形態1に係る鋼製建具枠31,39に比べて、もっと重量のある鋼製建具枠に対応するときは、ハンドジャッキ1を構成する部材の強度を増すために肉厚の素材を使用してもよいし、また図示の実施の形態のようにストッパープレート17や送りプレート20の数を一枚ではなく二枚構造となるようにしてロッド3にあたえる摩擦力を強くしてもよいし、また胴体部2やアーム8に補強を加えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
鋼製建具枠の取り付けに限らず、アルミやステンレス製の素材の枠に対してや、また木枠や石膏ボードやコンクリートパネルや外壁パネルなど、多くの部材に対して上下両方向へ無段階で調整自在にそして容易に目的の高さへ調整することができるため、さまざまなエリアで適用できる操作性の良いコンパクトな形状のハンドジャッキを提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1と2に係るハンドジャッキを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1と2に係る図1中、P−P線で破断した部分のストッパー機構部において非操作時の状態を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1と2に係る図1中、P−P線で破断した部分のストッパー機構部において操作時の状態を示す側断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1と2に係る図1中、Q−Q線で破断した部分のロッド送り機構部において非操作時の状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1と2に係る図1中、Q−Q線で破断した部分のロッド送り機構部において操作時の状態を示す側断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係るハンドジャッキの使用状態を示す鋼製建具枠を持ち上げる前の側断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るハンドジャッキの使用状態を示す鋼製建具枠を持ち上げた後の側断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る図11中、H部分の一方で鋼製建具枠に対してハンドジャッキを使用した場合のセット完了後を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る奥行き幅の大きい鋼製建具枠に対してハンドジャッキを使用した場合のセット完了後を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係るハンドジャッキを横にして使用したときの状態を示す側断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る鋼製建具枠の仮設置の状態を示す斜視図である。
【図12】図11中、H部分の一方で鋼製建具枠に対して従来のくさびを使用した場合の問題点を示す斜視図である。
【図13】図11中、H部分の一方で鋼製建具枠に対して従来のくさびの使用状況を示す斜視図である。
【図14】図11中、H部分の一方で鋼製建具枠に対して従来のくさびを使用した場合のセット完了後の仮固定の状態を示す斜視図である。
【図15】従来のハンドジャッキの構造及び使用状況を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ハンドジャッキ 2 ジャッキ本体 3 ロッド 4 グリップ
5 可動レバー 6 回動ピン 7 送りピン 8 アーム
9 支持部 10 保護材 11 取り付けネジ 12 ベース
13 ナット 14 調整ハンドル 15 支持金具 16 貫通孔
17 ストッパープレート 18 貫通孔 19 バネ小
20 送りプレート 21 貫通孔 22 固定プレート 23 バネ大
24 回動支点 25 ジャッキ本体 31 鋼製建具枠
32 溶接用バンド 33 斫り穴 34 軽量鉄骨壁下地 35 紐
36 開口部 37 コンクリート床面 38 地墨ライン
39 奥行き幅の大きい鋼製建具枠 41〜43 くさび 51 平板
61 鉄筋棒 71 スチールボックス 72 アンカーボルト
A 上方向 B 下方向
C 前方向 D 後方向
E 左方向 F 右方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動レバーの回動操作によってロッドを送り出すことにより無段階で調整自在に物を持ち上げると同時に、その高さを維持することが可能なタイプのハンドジャッキにおいて、
ハンドジャッキにはジャッキ本体が、中央に位置する胴体部と、
前記胴体部の後方の部位から水平方向に延びるグリップと、
前記胴体部の正面側に位置し急勾配な角度で斜め下方へ延びるアームとから形成されていて、
このうち前記胴体部には所定の長さを有する丸棒状のロッドが貫通されており、
該胴体部の内部では所定の位置に固着し、前記ロッドに挿入された固定プレートと、
前記固定プレートの上部の位置で、前記ロッドに挿入されたバネ大と、
前記バネ大の上部に位置し、前記ロッドに挿入された送りプレートと、
前記送りプレートを所定の方向に移動させ、前記ロッドを所定の方向に送り出すための可動レバーとからなるロッド送り機構部と、
前記胴体部の上部に位置し、前記ロッドに挿入されたバネ小と、
前記バネ小の上部に位置し、前記ロッドに挿入されたストッパープレートと、
前記ストッパープレートの一端部に位置し、該ストッパープレートを回動可能に連結している支持金具とからなるストッパー機構部とが構成されており、
前記ロッドの先端にはベースが固定され、もう一方の後端には該ロッドを回動させ、該ロッドを微小に変位させるための調整ハンドルが設けられていることを特徴とするハンドジャッキ。
【請求項2】
請求項1に記載したハンドジャッキにおいて、前記可動レバーの回動操作によって持ち上げる物を目的の高さより上げ過ぎた場合に、前記ロッドの後端に設けられた調整ハンドルを円周方向へ廻すことによって、下げる方向に対しても無段階で調整自在に下げることができるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキ。
【請求項3】
請求項2に記載したハンドジャッキにおいて、前記アームの先端には物に引っ掛ける部分となる支持部が形成されており、該支持部は前記ロッドの先端に固定されているベースよりも低い位置まで自在に下げられるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載したハンドジャッキにおいて、前記アームの基部には持ち上げる物に傷が付かないように保護材が取り付けられており、該保護材と前記支持部の二点支持で持ち上げることにより、持ち上げる物に対して平行姿勢を維持できるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載したハンドジャッキにおいて、前記ロッドの先端に固定されているベースは脱着可能となっており、持ち上げる物や床の状況に対応して取り替えることができるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載したハンドジャッキにおいて、前記ジャッキ本体の正面側に位置するアームが下面となるように本発明のハンドジャッキを横にして、前記支持部を床面に固定されているアンカーボルトへ引っ掛けるように設置したときに、前記可動レバーの回動操作によってロッドを送り出すことにより、前記ベースの先に置いてある物を押すことができるように構成されていることを特徴とするハンドジャッキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−270398(P2009−270398A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124264(P2008−124264)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【特許番号】特許第4206503号(P4206503)
【特許公報発行日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(599156106)
【Fターム(参考)】