説明

ハンマー

【課題】金型修理保全作業等における粗調整時や微調整時に適正なグリップ位置の目安を柄に付与することによって、作業の利便性を向上させたハンマーを提供すること。
【解決手段】ヘッド部2が取り付けられる先端から後端まで漸次太く構成された柄1の先端近傍と略中央部と後部との3箇所にグリップ用くびれ部1a、1b、1cを形成した柄1を備えているハンマー。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、金型修理保全作業等に用いて好適なハンマーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、プラスチック製品等の成形金型は、使用経過とともに可動部の相対的な関係が狂いを生じ、不良品を発生させるに至ることになるため、定期的又は随時、金型の修理保全が行われている。この金型の修理保全は、可動部の相対的関係を大まかに粗調整したり、精密に微調整することによって行われている。
従来、上記のような金型の修理保全作業に使用されるハンマーの柄は、頭部先端から後端に向けて漸次太くなるように構成されており、金型の修理保全における粗調整時や微調整時の使用に際しては、ハンマーの柄の適正なグリップ位置を選択して使用する必要がある。しかしながら、従来のハンマーの柄には、粗調整時や微調整時に適正なグリップ位置が設定されておらず、不便であった。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
本考案が解決しようとする課題は、金型修理保全作業等における粗調整時や微調整時に適正なグリップ位置の目安を柄に付与することによって、作業の利便性を向上させたハンマーを提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段として、本考案は、ヘッド部が取り付けられる先端から後端まで漸次太く構成された柄の先端近傍と略中央部と後部との3箇所にグリップ用くびれ部を形成した柄をハンマーに備えさせたものである。
前記3箇所のグリップ用くびれ部の形成位置の関係は、ヘッド部の取付中心位置からそれぞれ約1:3:5の長さの比率で形成されていることを特徴としている。
【0005】
上記構成によれば、3箇所のグリップ用くびれ部のうち、先端近傍の部分を把持して使用すると、弱い力で叩くことができ、略中央部の部分を把持して使用すると、それよりも強い中程度の力で叩くことができ、後部のくびれ部を把持して使用すると、最大の力で叩くことができ、これらの比率は、柄に同じ大きさの力を加えたとすると、それぞれ約1倍、約3倍、約5倍となる。従って、本考案のハンマーを使用すれば、初回使用時の3箇所の打撃力の大きさの違いを柄の各くびれ部の位置を目安として記憶することができ、次回以降の使用時、どの部分を把持して使用すればよいかの判断が容易となり、金型修理保全作業等における粗調整時や微調整時の作業の利便性を向上させることができる。
【0006】
また、本考案のハンマーは、前記柄の後部のグリップ用くびれ部より後端側にグリップエンド用膨大部を一連に形成した柄を備えていることを特徴としている。
上記構成によれば、後部のくびれ部を把持して使用する際、グリップエンド用膨大部の存在により、手元からハンマーが抜け出すのを防止することができる。また、本考案のハンマーは、前記柄の先端に双頭形状のヘッド部をT型に取り付けたことを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、本考案のハンマーを、柄のグリップエンド端面を作用面とし、T型頭部を力点、柄の途中を支点とするT字形の押し棒として使用することができ、例えば、金型部品のカムの動き具合やガイドピンの動き具合等、手で直接押したり動かしたりすることができない可動部の動きの確認を行う場合に使用することができる。
また、本考案の前記双頭形状のヘッド部は、柄への取付孔を中央部に備え、両側にヘッド取付部を有する基部と、該基部の両側のヘッド取付部に取り付けられた樹脂、金属、木材の何れかの材料で構成された両側で異種素材のヘッド体とからなることを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、金型の修理保全等において、打撃痕跡の残存が問題となる個所等の修理点検時には樹脂ヘッド体や木材ヘッド体を使用し、それ以外の個所等には金属ヘッド体を使用するといった使い分けができる。
また、本考案の前記基部の両側のヘッド取付部は、雄ねじが刻設されており、前記ヘッド体にはこの雄ねじに螺合する雌ねじ孔が形成されており、この雌ねじ孔を前記雄ねじに螺合させることによって、前記基部の両側にヘッド体が取り付けられていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、ヘッド体の交換が容易となる。
また、本考案のハンマーは、前記基部の両側のヘッド取付部の雄ねじの内の一方が、基部とは別体の雄ねじ部材からなり、この雄ねじ部材が基部に螺合されており、かつ、基部中央の取付孔に挿着された柄の止めねじと兼用とされていることを特徴としている。
この構成によれば、柄の先端が痩せ細っても、その都度、雄ねじ部材を締め込むことにより、基部を柄にしっかりと再固定することができ、同一の柄を長期間に亘って継続して使用することができる。
【0010】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態を図面に基いて説明する。
図1の(A)(B)は本考案に係るハンマーの実施形態の側面図及び平面図を示しており、1は柄、2はヘッド部である。
柄1は、打撃方向に長軸が設定された断面楕円形であり、ヘッド部2が取り付けられる先端から後端まで漸次太く構成され、先端近傍と略中央部と後部との3箇所にグリップ用くびれ部1a、1b、1cが形成されている。柄1の後部のグリップ用くびれ部1cより後端側にグリップエンド用膨大部1dが一連に形成されている。前記3箇所のグリップ用くびれ部1a、1b、1cの形成位置の関係は、ヘッド部2の取付中心位置からそれぞれ約1:3:5の長さの比率で形成されており、図1の(A)にはそれぞれ1L、3L、5Lとして表示している。但し、この比率は、±10%程度の誤差があってもよい。
【0011】
ヘッド部2は、双頭形状とされており、柄1の先端にT型に取り付けられている。双頭形状のヘッド部2は、基部2aと両側のヘッド体2b、2cとで構成されている。基部2aは真鍮で円柱状に構成され、また、一方のヘッド体2bは銅材で、他方のヘッド体2cは樹脂材で円柱状に構成されている。しかし、基部2a及び両側のヘッド体2b、2cは他の材料で構成しても良い。
基部2aの軸方向中央部には、図2に示すように、柄1への取付孔2dが略小判型形状の貫通孔として形成され、かつ、軸方向両側にヘッド取付部2e、2fが形成されている。
【0012】
両側のヘッド取付部2e、2fは、雄ねじ2g,2hが刻設されており、前記ヘッド体2b、2cにはこの雄ねじ2g,2hに螺合する雌ねじ孔2i,2jが形成されており、この雌ねじ孔2i,2jを前記雄ねじ2g,2hに螺合させることによって、基部2aの両側にヘッド体2b、2cが取り付けられている。
両側のヘッド取付部2e,2fの雄ねじ2g,2hの内の一方2gは、基部2aとは別体の雄ねじ部材2kとされ、この雄ねじ部材2kが基部2aの雌ねじ孔2mに螺合されており、この雌ねじ孔2mは基部2aの軸方向の一端から柄1の取付孔2dまで貫通して形成されており、これによって、上記雄ねじ部材2kは、一方のヘッド体2bを基部2aに取り付けるための部材と、基部2a中央の取付孔2dに挿着された柄1の止めねじとに兼用とされている。そのため、雄ねじ部材2kの頭部には、ドライバー等のねじ回し工具の係止凹部2nが形成されている。この係止凹部2nは、角穴、マイナス溝、プラス溝等とされている。
【0013】
本考案に係るハンマーの実施形態の構成は、以上であって、次に、その使用例を図3の(A)〜(D)により説明する。
先ず、(A)は、柄1の3箇所のグリップ用くびれ部1a、1b、1cのうち、先端近傍の部分1aを把持して使用する場合を示しており、この場合は、例えば、金型部品のパンチをパンチホルダーへやさしく打ち込んだり、その際、叩き棒を使って入れたり、或いは、ダイスをダイスホルダーへやさしく打ち込む場合や金型部品の再修正時等のような高い精度が要求され、比較的軽微な弱い力で叩くことが必要な作業に利用される。
【0014】
また、(B)は、柄1の略中央部の部分1bを把持して使用する場合であって、前記(A)の場合よりも強い中程度の力で叩くことが必要な作業に利用される。さらに、(C)は、柄1の後部のくびれ部1cを把持して使用する場合であって、この場合は、前記(B)の場合よりもさらに大きい力で叩く必要がある粗調整等の作業に利用される。また、(D)は、本考案のハンマーをT字形の押し棒に使う場合であって、例えば、金型部品のカムの動き具合を点検したり、スライドピンの動き具合の点検等の手指では無理乃至危険な個所の点検作業等に利用される。
【0015】
本考案のハンマーの実施形態の使用例は以上であるが、この使用例に制限されるものではなく、これ以外の携帯で使用してもよい。また、本考案のハンマーの柄1は、通常、樫材等の硬質木材が使用されているが、金属製、強化樹脂製、これらの複合材製、その他、適宜の材料で構成してもよい。また、ヘッド部2は、実施形態以外の各種形状のものに適用し得るものである。
【0016】
【考案の効果】
本考案によれば、金型修理保全作業等における粗調整時や微調整時に適正なグリップ位置の目安を柄に付与することによって、作業の利便性を向上させたハンマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)(B)は本考案に係るハンマーの実施形態の側面図及び平面図である。
【図2】本考案に係るハンマーのヘッド部の実施形態を示す拡大縦断側面図である。
【図3】(A)(B)(C)(D)は本考案に係るハンマーの実施形態の異なる使用例の説明図である。
【符号の説明】
1  柄
1a、1b、1c グリップ用くびれ部
1d グリップエンド用膨大部
2  ヘッド部
2a 基部
2b、2c ヘッド体
2d 取付孔
2e、2f ヘッド取付部
2g、2h 雄ねじ
2i、2j 雌ねじ孔
2k 雄ねじ部材
2m 雌ねじ孔
2n 係止凹部

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部が取り付けられる先端から後端まで漸次太く構成された柄の先端近傍と略中央部と後部との3箇所にグリップ用くびれ部を形成した柄を備えていることを特徴とするハンマー。
【請求項2】
前記3箇所のグリップ用くびれ部の形成位置の関係は、ヘッド部の取付中心位置からそれぞれ約1:3:5の長さの比率で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハンマー。
【請求項3】
前記柄の後部のグリップ用くびれ部より後端側にグリップエンド用膨大部を一連に形成した柄を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハンマー。
【請求項4】
前記柄の先端に双頭形状のヘッド部をT型に取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のハンマー。
【請求項5】
前記双頭形状のヘッド部は、柄への取付孔を中央部に備え、両側にヘッド取付部を有する基部と、該基部の両側のヘッド取付部に取り付けられた樹脂、金属、木材の何れかの材料で構成された両側で異種素材のヘッド体とからなることを特徴とする請求項4に記載のハンマー。
【請求項6】
前記基部の両側のヘッド取付部は、雄ねじが刻設されており、前記ヘッド体にはこの雄ねじに螺合する雌ねじ孔が形成されており、この雌ねじ孔を前記雄ねじに螺合させることによって、前記基部の両側にヘッド体が取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載のハンマー。
【請求項7】
前記基部の両側のヘッド取付部の雄ねじの内の一方が、基部とは別体の雄ねじ部材からなり、この雄ねじ部材が基部に螺合されており、かつ、基部中央の取付孔に挿着された柄の止めねじと兼用とされていることを特徴とする請求項6に記載のハンマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【登録番号】実用新案登録第3097577号(U3097577)
【登録日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【発行日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【考案の名称】ハンマー
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2003−2459(U2003−2459)
【出願日】平成15年5月1日(2003.5.1)
【出願人】(390037534)オーエッチ工業株式会社 (11)