Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
ハードカプセル
説明

ハードカプセル

【課題】内容物によってハードカプセル皮膜の崩壊性が高められたハードカプセルを提供する。
【解決手段】ハードカプセル皮膜に内容物が充填されたハードカプセルであって、内容物は、炭酸塩と、常温で固体の酸とを含有する。炭酸塩と酸との反応による発泡で、ハードカプセル皮膜の崩壊性が高められる。上記構成において、ハードカプセル皮膜の皮膜基剤をゼラチンとし、酸をビタミンCとすることができる。また、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合を、30質量%〜60質量%とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品等の内容物が充填されたハードカプセルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセルやハードカプセルの皮膜は、経時的に崩壊性が低下する(以下、「崩壊遅延」と称する)ことがある。特に、ソフトカプセルやハードカプセルの皮膜基剤として多用されているゼラチンは、ある種の物質と反応して崩壊遅延しやすいことが知られている。例えば、カプセルの内容物として、アルデヒド基を有する物質が含まれる場合、カプセル皮膜に着色料としてカラメル色素が含まれる場合などである。そして、カプセル皮膜が崩壊遅延したカプセルは、内用した際に医薬品や食品等の内容物を体内に十分に吸収させることができない。
【0003】
そこで、本出願人は過去に、崩壊遅延の抑制されたソフトカプセル皮膜を備えるソフトカプセルを提案している(特許文献1参照)。これは、温度変化によりゾルゲル転移するゲル化能を有するゼラチン加水分解物を所定量含む皮膜基剤によって、ソフトカプセル皮膜が形成されているものである。
【0004】
ところで、ソフトカプセルは、製造工程において内容物の充填とほぼ同時にカプセル皮膜が形成されるのに対し、ハードカプセルは、ボディ及びキャップからなる容器としての既成のハードカプセル皮膜に、内容物を充填する工程によって製造される。そのため、ハードカプセル皮膜を製造する事業者と、ハードカプセル皮膜に内容物を充填してハードカプセルを製造する事業者とが相違する場合も多く、ハードカプセル皮膜自体の組成によって崩壊遅延を抑制するのではなく、充填される内容物の側からハードカプセル皮膜の崩壊性を高める技術に対する要請もあるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、内容物によってハードカプセル皮膜の崩壊性が高められたハードカプセルの提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるハードカプセルは、「ハードカプセル皮膜に内容物が充填されたハードカプセルであって、前記内容物は、炭酸塩と、常温で固体の酸とを含有する」ものである。
【0007】
「炭酸塩」としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を使用可能である。
【0008】
「常温で固体の酸」としては、ビタミンC(アスコルビン酸)、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸等を使用可能である。
【0009】
炭酸塩が酸と反応すると、二酸化炭素と酸の塩を生じる。この反応は水の存在下で速やかに進行し、反応によって生成する水によって更に進行する。そのため、ハードカプセルの内容物に炭酸塩及び酸を含有させると、ハードカプセルを内用する際に用いた水や、口腔内を含む体内の水分によって上記の反応が進行する。そして、二酸化炭素の発生による発泡によりハードカプセル皮膜は刺激を受け、ハードカプセル皮膜の崩壊性が高められる。従って、ハードカプセルの内容物に炭酸塩及び酸を含有させることにより、ハードカプセル皮膜の崩壊性を高めることができる。また、仮に、内容物に含まれる他の成分によってハードカプセル皮膜に崩壊遅延が生じた場合であっても、発泡による刺激によってハードカプセル皮膜の崩壊性を高めることができる。
【0010】
本発明にかかるハードカプセルは、上記構成において、「前記ハードカプセル皮膜の皮膜基剤はゼラチンであり、前記内容物は、前記酸としてビタミンCを含有する」ものとすることができる。
【0011】
ゼラチンを皮膜基剤とするハードカプセル皮膜は、下記の表1に示すように、ビタミンCと反応して崩壊遅延しやすい。ここで、表1は、豚ゼラチンを皮膜基剤とするハードカプセル皮膜(以下、「ゼラチンカプセル皮膜」と称する)、及び、ヒプロメロース(旧局方名:ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を皮膜基剤とするハードカプセル皮膜(以下、「HPMCカプセル皮膜」と称する)の保存試験の結果である。試験は、同一サイズのゼラチンカプセル皮膜及びHPMCカプセル皮膜それぞれにビタミンCの粉末を同一質量充填したハードカプセルを、温度50±2℃の過酷な条件下で保存することにより行った。この過酷条件下での4週間及び8週間の保存は、常温保存での1年及び2年にそれぞれ相当する。
【0012】
所定期間の保存後のハードカプセルについて、日本薬局方に規定された崩壊試験法に則り、人工胃液(第一液)中での崩壊時間を静置状態で測定した。崩壊性は、600秒未満で崩壊した場合を「○」で、600秒以上1200秒未満で崩壊した場合を「△」で、1200秒以上経過しても崩壊が不十分であった場合を「×」で評価した。なお、実用的なカプセルは、20分以内(1200秒以内)に崩壊することが要請される。
【0013】
【表1】

【0014】
表1から明らかなように、同じくビタミンCを内容物とするハードカプセルであっても、ハードカプセル皮膜がHPMCカプセル皮膜の場合では8週間経過後まで崩壊時間が600秒未満であったのに対し、ハードカプセル皮膜がゼラチンカプセル皮膜の場合では崩壊遅延が生じている。具体的には、ゼラチンカプセル皮膜の場合は、崩壊時間は1週間経過後には600秒を超えており、4週間の経過後には1200秒を超えている。
【0015】
本構成の本発明では、上記のように、ハードカプセル皮膜の皮膜基剤がゼラチンの場合に、本来は崩壊遅延の要因となる「ビタミンC」を、炭酸塩と反応させる「酸」として用いることにより、ハードカプセル皮膜の崩壊性を高めることができる。加えて、「ビタミンC」は、ハードカプセルに充填して内用する目的物質として、需要の高い成分である。すなわち、本構成では、内用の目的物質に、ハードカプセル皮膜の崩壊性を高めるために内容物に含有させる成分の役割を兼ねさせることができる。これにより、内容物における目的物質の含有率を、高めることが可能となる。
【0016】
本発明にかかるハードカプセルは、上記構成において、「前記炭酸塩及び前記酸の和に対する前記酸の割合は30質量%〜60質量%である」ものとすることができる。
【0017】
炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合を上記の範囲とすることにより、後述のように、炭酸塩と酸の種類によらず、水中または人工胃液中に投入してから発泡が開始するまでの時間が短く、且つ、崩壊時間が短いハードカプセルを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の効果として、内容物によってハードカプセル皮膜の崩壊性が高められたハードカプセルを、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の内容物を充填したハードカプセルを過酷な条件下で保存した場合について、保存期間と発泡開始時間との関係を示すグラフである。
【図2】実施例1の内容物を充填したハードカプセルを過酷な条件下で保存した場合について、保存期間と崩壊時間との関係を示すグラフである。
【図3】実施例2の内容物を充填したハードカプセルについて、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合と、発泡開始時間及び崩壊時間との関係を示すグラフである。
【図4】実施例3の内容物を充填したハードカプセルについて、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合と、発泡開始時間及び崩壊時間との関係を示すグラフである。
【図5】実施例4の内容物を充填したハードカプセルについて、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合と、発泡開始時間及び崩壊時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態であるハードカプセルについて説明する。本実施形態のハードカプセルは、ハードカプセル皮膜に内容物が充填されたハードカプセルであって、内容物は、炭酸塩と、常温で固体の酸とを含有する。また、内容物において、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合は30質量%〜60質量%である。
【0021】
以下、本実施形態のハードカプセルを上記構成とした根拠を示す。まず、実施例1の内容物を充填したハードカプセルの崩壊性を、対照例1及び対照例2の内容物を充填したハードカプセルと対比した結果を示す。表2に、実施例1、対照例1及び対照例2の内容物の組成を示す。ここで、実施例1は、炭酸塩として炭酸水素ナトリウム粉末、及び、酸としてビタミンC粉末を含有する例であり、更に、粉末同士の凝結を防止すると共に、流動性及び充填性を良好とする目的で、ショ糖脂肪酸エステル及び二酸化珪素粉末を添加している。
【0022】
これに対し、対照例1は、炭酸水素ナトリウムを除く他の成分、すなわち、ビタミンC、ショ糖脂肪酸エステル及び二酸化珪素粉末については実施例1と同一質量含有し、炭酸水素ナトリウムを結晶セルロースに置換したものである。また、対照例2は、ショ糖脂肪酸エステル及び二酸化珪素粉末については実施例1と同一質量含有し、炭酸水素ナトリウム及びビタミンCを結晶セルロースに置換したものである。ここで、結晶セルロースは、ゼラチンを皮膜基剤とするハードカプセル皮膜と反応しない物質として選択したものである。また、炭酸水素ナトリウム、ビタミンC、及び、結晶セルロースは密度が異なるが、実施例1、対照例1及び対照例2の何れの組成も、同一サイズのハードカプセル皮膜が完全に充填されるように設定されている。
【0023】
【表2】

【0024】
なお、表2は各成分の質量(単位:mg)で示した組成であり、各成分を質量百分率で表すと表3のようになる。ここで、実施例1において、炭酸塩と酸の和に対する酸の割合は、35.9質量%である。
【0025】
【表3】

【0026】
実施例1、対照例1及び対照例2の内容物を、それぞれ上記のゼラチンカプセル皮膜に充填した。内容物が充填されたハードカプセルを、密閉可能な包装袋に乾燥剤と共に収容し、温度50±2℃の過酷な条件下で所定期間保存した。
【0027】
上記の過酷な条件下で保存した結果、保存開始から8週間経過後まで(常温保存での2年に相当)、包装袋の膨張は確認されなかった。
【0028】
また、実施例1、対照例1及び対照例2の内容物をそれぞれ充填したハードカプセルについて、所定期間保存後の崩壊性を評価した。崩壊試験は、日本薬局方に規定された崩壊試験法に準拠して行い、試験液中での崩壊時間を静置状態で測定した。試験液は、水と、人工胃液(第一液)の二種類とした。上述のように、実用的なカプセルは崩壊時間が1200秒以内であることが要請されることから、1200秒が経過した時点でハードカプセル皮膜が残存しなかった場合を「○」で、1200秒が経過した時点でハードカプセル皮膜が部分的に残存する場合を「△」で、1200秒が経過した時点でハードカプセル皮膜がほとんど残存している場合を「×」で評価した。試験液が水の場合の崩壊性の評価結果を表4に、試験液が人工胃液の場合の崩壊性の評価結果を表5に示す。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
表4及び表5を用いて対照例1と対照例2とを対比すると、ゼラチンを皮膜基剤とするハードカプセル皮膜は、ゼラチンと反応しない成分を内容物としている場合(対照例2)であっても経時的に崩壊性が低下し、ビタミンCを内容物とする(対照例1)ことにより崩壊遅延が生じる時期が早くなっていることが分かる。具体的には、試験液が水であっても人工胃液であっても、ゼラチンと反応しない成分を内容物とする場合(対照例2)は、数週間(3〜5週間)の保存期間で崩壊性が不十分となる(部分的に皮膜が残存する)のに対し、ビタミンCを内容物とする場合(対照例1)は、1週間の保存で既に崩壊性が不十分となっており、6週間経過後にはハードカプセル皮膜はほとんど不溶化した。
【0032】
これに対し、内容物として、ビタミンCに加えて炭酸塩を含有する実施例1のハードカプセルでは、試験液が水であっても人工胃液であっても、8週間の保存後も良好な崩壊性を示した。このことから、ゼラチンを皮膜基剤とするハードカプセル皮膜の崩壊性を低下させるビタミンCを内容物とする場合であっても、更に炭酸塩を内容物として含有することにより、ハードカプセル皮膜の崩壊性が高められていることが確認された。
【0033】
次に、実施例1の内容物を充填したハードカプセルについて、より詳細な崩壊性の検討結果を示す。上記と同様に、温度50±2℃の過酷な条件下で所定期間保存したハードカプセルについて、試験液に投入してから発泡が開始するまでの時間を図1に、崩壊が終了するまでに要した時間を図2に示す。試験液は、上記と同様に、水と人工胃液(第一液)の二種類とした。
【0034】
図1から明らかなように、試験液が水であっても人工胃液であっても、保存期間が8週間に至るまで、発泡が開始するまでの時間は100秒から150秒と同程度であった。また、図2から明らかなように、試験液が水であっても人工胃液であっても、保存期間が8週間に至るまで、崩壊時間は約300秒と同程度であった。一般的に、栄養補助食品などを充填したカプセルの賞味期限は2年であることを考慮すると、実施例1の内容物を充填したハードカプセルは、賞味期限に至るまで、ほとんど崩壊遅延を生じないと言うことができる。また、上述のように、実用的なカプセルは崩壊時間が1200秒以内であることが要請されることを考慮すると、約300秒という短時間で崩壊する実施例1のハードカプセルは、極めて崩壊性が高いと言うことができる。
【0035】
上記の実施例1は、炭酸塩として炭酸水素ナトリウムを、酸としてビタミンCを使用し、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合は約36質量%の例であった。次に、種類の異なる炭酸塩及び酸を使用し、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合を異ならせたハードカプセルについて、崩壊性を検討した結果を示す。検討は、表6に示す炭酸塩と酸との組み合わせによる実施例2〜実施例4の内容物を充填したハードカプセルについて、試験液に投入してから発泡が開始するまでの時間と崩壊に要する時間とを測定することにより行った。試験液は人工胃液(第一液)とした。また、ハードカプセル皮膜としては、上記のゼラチンカプセル皮膜を使用した。実施例2〜実施例4に関する測定結果を、それぞれ図3〜図5に示す。なお、図3〜図5では、600秒経過しても発泡が開始しなかった試料、及び、600秒経過しても完全に崩壊しなかった崩壊性の不十分な試料について、それぞれ発泡開始時間及び崩壊時間を600秒としてプロットしている。
【0036】
【表6】

【0037】
図3〜図5に示すように、組み合わせる炭酸塩及び酸の種類が異なっても、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合が少なくとも30質量%〜60質量%の範囲であれば、発泡が開始するまでの時間が短く、且つ、崩壊に要する時間も短いことが確認された。また、当該割合を40質量%〜50質量%とすれば、発泡が開始するまでの時間も崩壊に要する時間もより短く、より好適であると考えられた。
【0038】
また、実施例2〜4の何れにおいても、炭酸塩及び酸の和に対する酸の割合が0質量%の場合は、試験液が人工胃液であっても崩壊性が不十分であった。このことから、ハードカプセル皮膜の崩壊性を高めるためには、内容物として炭酸塩を含有するのみでは足らず、内容物として予め炭酸塩と酸との両方が含有されていることが必要であると考えられた。
【0039】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0040】
また、本発明は、ゼラチンを皮膜基剤とするハードカプセルなど、崩壊遅延が問題となっているハードカプセルに対して特に有用であるが、崩壊遅延が特に問題となっていないハードカプセルに適用した場合も、崩壊性をより高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開2010−260812号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードカプセル皮膜に内容物が充填されたハードカプセルであって、
前記内容物は、炭酸塩と、常温で固体の酸とを含有する
ことを特徴とするハードカプセル。
【請求項2】
前記ハードカプセル皮膜の皮膜基剤はゼラチンであり、
前記内容物は、前記酸としてビタミンCを含有する
ことを特徴とする請求項1に記載のハードカプセル。
【請求項3】
前記炭酸塩及び前記酸の和に対する前記酸の割合は30質量%〜60質量%である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハードカプセル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−103879(P2013−103879A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246144(P2011−246144)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(503315676)中日本カプセル 株式会社 (9)
【Fターム(参考)】