説明

ハードコーティング組成物およびこれを含む積層体

【課題】ハードコーティング組成物にアルキレングリコール系アクリルモノマーを含むことによって、優れた耐衝撃性、耐スクラッチ性および高い鉛筆硬度を有するハードコーティング組成物およびこれを含む積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)アルキレングリコール系アクリルモノマー、(B)多官能アクリルモノマーおよび(C)重合開始剤を含み、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーは、組成物全体の固形分含量に対して、5〜69質量%で含まれるハードコーティング組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコーティング組成物およびこれを含む積層体に関するものである。より具体的に、本発明は、ハードコーティング組成物にアルキレングリコール系アクリルモノマーを含むことによって、優れた耐衝撃性、耐スクラッチ性および高い鉛筆硬度を有するハードコーティング組成物およびこれを含む積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、建築用資材、自動車の外装部品、紙、木材、家具、防音壁、光学材料、化粧品の容器および各種ディスプレイ素子などで使用されている。このようなプラスチックを保護するために、機能性ハードコーティングがプラスチック製品に広範囲に適用されている。
【0003】
最近は、LCD、PDPまたはプロジェクションTVなどの各種ディスプレイ装置が大いに発展している。このような傾向により、前記ディスプレイ装置を含む各種家電製品または携帯電話のウィンドウなどでプラスチックシートの表面を保護し、スクラッチなどを防止するための機能性ハードコーティングに対する需要が大いに増加している。
【0004】
したがって、ウィンドウなどのプラスチックシートの表面に透明性、耐衝撃性、屈曲性、耐溶剤性および/または耐スクラッチ性を有するハードコーティング層を形成するための研究が多方面で行われている。
【0005】
前記ハードコーティング層を形成するハードコーティング組成物は、重合反応に関わる(participate)アクリル樹脂を含む。耐衝撃性および屈曲性を向上させるために、添加するアクリル樹脂の官能基数を少なくすることができる。しかし、これによって、鉛筆硬度および耐スクラッチ性が低下した。
【0006】
すなわち、多官能アクリルモノマーおよび2官能オリゴマーは、耐衝撃性および屈曲性を増加させることができる。しかし、モノマーおよびオリゴマーの未反応物が残存し、それらの低硬度の特性のため、鉛筆硬度および耐スクラッチ性の低下が生じた。また、多官能アクリルモノマーは、その毒性のため作業者の皮膚疾患を誘発することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ハードコーティング組成物にアルキレングリコール系アクリルモノマーを含むことによって、優れた耐衝撃性、耐スクラッチ性および高い鉛筆硬度を有するハードコーティング組成物およびこれを含む積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの形態は、ハードコーティング組成物に関するものである。前記ハードコーティング組成物は、(A)アルキレングリコール系アクリルモノマー、(B)多官能アクリルモノマーおよび(C)重合開始剤を含み、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーは、組成物全体の固形分含量のうち5〜69質量%含まれる。
【0009】
本発明の好ましい形態としては、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーは、アルキレングリコール残基および(メタ)アクリレート残基を含み、前記アルキレングリコール残基は、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマー1分子中、1〜35個を含むことができる。
【0010】
また、本発明の好ましい形態としては、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーは、下記の式1で表示される化合物を一つ以上含むことができる。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、
は、水素、C1−C5アルキルまたは
【0013】
【化2】

【0014】
であり、
、R、RおよびR’は、それぞれ独立して、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH)CHまたは−CHCHCHCHであり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはCHであり、
a、bおよびcは、0または正の整数で、1≦a+b+c≦35である。
【0015】
本発明の好ましい形態としては、前記組成物は、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーと(B)多官能アクリルモノマーとを、組成物全体の固形分含量に対して、合計して90〜99.9質量%含み、(C)重合開始剤を、組成物全体の固形分含量に対して0.1〜10質量%含むことができる。
【0016】
本発明の他の形態は、基材と、前記基材上にコーティングされたハードコーティング組成物とを含む積層体に関するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハードコーティング組成物がアルキレングリコール系アクリルモノマーを含むことによって、優れた耐衝撃性、耐スクラッチ性および高い鉛筆硬度を有するハードコーティング組成物およびこれを含む積層体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ハードコーティング組成物は、(A)アルキレングリコール系アクリルモノマー、(B)多官能アクリルモノマーおよび(C)重合開始剤を含み、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーは、組成物全体の固形分含量のうち5〜69質量%で含まれる。
【0019】
以下、本発明のハードコーティング組成物を、単に「組成物」と称する場合もある。
【0020】
(A)アルキレングリコール系アクリルモノマー
アルキレングリコール系アクリルモノマーは、アルキレングリコール残基を含む。アルキレングリコール系アクリルモノマーは、(メタ)アクリレート残基を含み得る。アルキレングリコール系アクリルモノマーは、電気陰性的な特性によってポリマー分子間の引力を増大させる。したがって、アルキレングリコール系アクリルモノマーは、ハードコーティング組成物に適用すると、ポリマー分子間力が強いため、優れた耐衝撃性および耐スクラッチ性を発揮する。
【0021】
本発明の好ましい形態によれば、アルキレングリコール系アクリルモノマーは、1分子中、アルキレングリコール残基を好ましくは1〜35個、より好ましくは2個以上含む。さらに好ましくは2〜15個、特に好ましくは3〜9個、もっとも好ましくは3〜6個含むことができる。また、具体的には、2個、3個または6個含むのが好ましい。1個以上のアルキレングリコール残基を含む場合は耐スクラッチ性および耐化学性が良くなり得る。35個未満のアルキレングリコール残基を含む場合は、耐スクラッチ性および耐薬品性(chemical resistance)が良くなり得る。
【0022】
また、本発明の好ましい形態によれば、アルキレングリコール系アクリルモノマーは、2個以上の官能基、即ち、(メタ)アクリレート残基を含み得る。(メタ)アクリレート残基の官能基は、1分子中、2個以上であることが好ましく、2〜15個であることがより好ましく、3〜9個であることがさらに好ましく、3〜6個であるのが特に好ましい。また、具体的には、2官能、3官能または6官能の多官能であることがもっとも好ましい。官能基が2個以上である(メタ)アクリレート残基は鉛筆硬度、耐スクラッチ性および耐薬品性(chemical resistance)を向上させる。
【0023】
一例として、アルキレングリコール系アクリルモノマーは下記の式1で表示される。
【0024】
【化3】

【0025】
式中、
は、水素、C1−C5アルキルまたは
【0026】
【化4】

【0027】
であり、
、R、RおよびR’は、それぞれ独立して、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH)CHまたは−CHCHCHCHであり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはCHであり、
a、bおよびcは、0または正の整数で、1≦a+b+c≦35である。
【0028】
C1−C5アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルが挙げられる。アルキレングリコールアクリル系モノマーは、炭化水素またはアルキルコアにアルキレングリコール残基または残基らが結合された構造を有し得る。具体的に、前記アルキルコアは、C4アルキルコアであっても良い。前記アルキレングリコールアクリル系モノマーは、アルキレングリコール残基または残基らが結合された(メタ)アクリレート残基を含み得る。
【0029】
式1において、好ましい形態としては、Rは−CHCHまたは−CH(OCHCH)OC(=O)CH=CHになり得る。
【0030】
式1において、好ましい形態としては、R、R、RおよびR’は、それぞれ独立して、−CHCH、−CHCHCHまたは−CHCHCHCHであるのが好ましく、−CHCHまたは−CHCHCHがより好ましく、−CHCHがさらに好ましい。特に、式1で、R、R、RおよびR’が−CHCHであるエチレングリコール系モノマーは、R、R、RおよびR’が−CHCHCHであるプロピレングリコール系モノマーよりも増大した鉛筆硬度および耐スクラッチ性を示す。
【0031】
また、式1において、好ましい形態としては、a、bおよびcは、1≦a+b+c≦35、より好ましくは2≦a+b+c≦15、さらに好ましくは3≦a+b+c≦9、特に好ましくは3≦a+b+c≦6である。
【0032】
式1で表されるアルキレングリコール系モノマーは、単独またはこれらの混合物を含むことができる。また、アルキレングリコール系モノマーは、式1で表されるアルキレングリコール系モノマー以外に、他のアルキレングリコール系モノマー単独またはこれらの混合物をさらに含むことができる。
【0033】
本発明において、用いられるアルキレングリコール系モノマーは、市販品を用いることもできるし、公知の方法で合成することもできる。
【0034】
アルキレングリコール系モノマーとしては、これに制限されるものではないが、たとえば、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(たとえば、A−TMPT−3EO、A−TMPT−6EO:新中村化学工業株式会社製)、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(たとえば、A−TMPT−6PO:新中村化学工業株式会社製)、エトキシ化ペンタエリスリトルテトラクリレート(たとえば、ATM−4E:新中村化学工業株式会社製)などの化合物を用いることができる。
【0035】
アルキレングリコール系モノマーは、組成物全体の固形分含量に対して、5〜69質量%、好ましくは10〜68質量%、より好ましくは12〜67質量%、さらに好ましくは15〜65質量%、もっとも好ましくは16〜64質量%で含まれる。アルキレングリコール系モノマーの含量が前記範囲であるとき、耐衝撃強度の改善または発現をもたらし、良好な耐スクラッチ性を示す。
【0036】
なお、組成物中に、たとえば、アルキレングリコール系モノマー、多官能アクリルモノマーおよび重合開始剤以外の固形分を含む場合には、前記アルキレングリコール系モノマー、多官能アクリルモノマーおよび重合開始剤との合計量に対して、アルキレングリコール系モノマーが上記範囲となるように混合されるのがよい。また、多官能アクリルモノマーまたは重合開始剤の組成物全体の固形分含量に対する含有量についても、アルキレングリコール系モノマー、多官能アクリルモノマーおよび重合開始剤との合計量に対する値である。
【0037】
(B)多官能アクリルモノマー
多官能アクリルモノマーは、コーティング層の強度を高め、鉛筆硬度および耐スクラッチ性を高める。また、多官能アクリルモノマーは、希釈剤としてハードコーティング組成物の粘度を低下させる。「多官能」アクリルモノマーとは、官能基が2個以上であるアクリルモノマーを意味する。たとえば、多官能アクリルモノマーは、2官能、3官能、6官能以上のアクリルモノマー単独またはこれらの混合物を含むことができる。
【0038】
本発明において、用いられる多官能アクリルモノマーは、市販品を用いることもできるし、公知の方法で合成することもできる。
【0039】
たとえば、多官能アクリルモノマーは、これに制限されるものではないが、ジペンタエリスリトルヘキサアクリレート(DPHA)(たとえば、NOPCOMER 4612:Sanopcoco.,Ltd社製)、ペンタエリスリトルトリアクリレート(PETA)(たとえば、M430:Miwon Commercial Co.,Ltd製)、トリ(2―ヒドロキシエチル)イソシアヌエートトリアクリレート(THEIC)トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)およびジシクロデカンジメタノールジアクリレート(DCPA)からなる群から選択される一つ以上を含むことができる。これらの中でも、ジペンタエリスリトルヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトルトリアクリレート(PETA)が特に好ましい。
【0040】
(B)多官能アクリルモノマーは、(B)多官能アクリルモノマーと(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーとを、組成物全体の固形分含量に対して、合計して、好ましくは90〜99.9質量%、より好ましくは90〜98質量%、さらに好ましくは90〜97質量%含まれる。(B)多官能アクリルモノマーと(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーが前記範囲内で含有される場合、酸素障害によって硬化速度が遅くなることを防止し、鉛筆硬度およびスクラッチ性の減少を防止することができる。また、(B)多官能アクリルモノマーと(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーが前記範囲内で含有される場合、適切な粘度を維持し、コーティング混合液の流れ性の低下を防止し、コーティング膜を均一に形成することができる。
【0041】
(C)重合開始剤
重合開始剤は、紫外線硬化型組成物に使用される重合開始剤を制限なく使用することができる。たとえば、重合開始剤は、これに制限されるものではないが、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure−184)、α,α−ジメトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン(Darocure 1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの混合物などのベンゾフェノン系、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパンなどを単独または混合して使用することができる。
【0042】
重合開始剤は、組成物全体の固形分含量に対して、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜10質量%、特に好ましくは4〜10質量%、もっとも好ましくは4.5〜8質量%の量で含まれる。前記範囲内では、ハードコート層を十分に硬化させることができる。また、前記範囲内では、重合開始剤が不純物として残って塗膜の硬度を低下させることを防止することができる。
【0043】
ハードコーティング組成物は、(D)有機溶媒、(E)添加剤またはこれらの混合物をさらに含むことができる。
【0044】
(D)有機溶媒
有機溶媒は、これに制限されるものではないが、イソプロパノール(IPA)、ノルマルプロパノール(NPA)、2−メトキシエタノール(MCS)などのアルコール、酢酸エチル(エチルアセテート)、酢酸ブチル(ブチルアセテート)などのアセテート系溶媒を、単独またはこれらの混合物として組成物に含むことができる。
【0045】
アルコールのみを含む有機溶媒は低下した分散性を示す。分散性を向上させるためには、アルコールとアセテートを2種以上混合して使用することが望ましい。
【0046】
有機溶媒を含む場合は、ハードコーティング組成物のフローコーティング時、固形分の濃度が、好ましくは10〜69質量%、より好ましくは20〜67質量%、さらに好ましくは30〜55質量%、特に好ましくは33〜45質量%になるように含まれることが望ましい。また、組成物全体の粘度は、アクリルモノマーの重合性によって調節されるので、有機溶媒が添加されないこともある。
【0047】
(E)添加剤
ハードコーティング組成物は、当業界で知られている添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、これに制限されるものではないが、レベリング剤、紫外線吸収剤または界面活性剤などを含むことができる。添加剤の具体的な種類と添加量は、当業者に公知の範囲と同一である。
【0048】
たとえば、ハードコーティング組成物は、表面レベリング剤を添加剤として含むことができる。表面レベリング剤は、コーティング面の異物などによるコーティング面の平滑性の低下を防止し、ハードコーティング組成物の濡れ性を向上させることができる。表面レベリング剤は、ハードコーティング組成物全体に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、さらに好ましくは0.07〜3質量%、特に好ましくは0.09〜1質量%で含むことができる。
【0049】
表面レベリング剤としては、これに制限されるものではないが、たとえば、フッ素系、シリコーン系、各種界面滑性剤等が例示され、それぞれ、適宜量添加される。
【0050】
本発明によれば、基材と、前記基材上にコーティングされたハードコーティング組成物とを含む積層体が提供される。前記基材は、ポリカーボネート(PC)樹脂またはポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂などを含むプラスチックシートやパネルなどを含む多様な透明な基材を含むことができるが、これらに制限されるものではない。たとえば、基材は、樹脂内にゴム粒子が分散されている耐衝撃PMMAシートを含むことができる。
【0051】
ハードコーティング組成物は、通常の方法で基材上にコーティングされる。たとえば、ハードコーティング組成物は、フローコーティング方法によって基材上にコーティングされる。フローコーティング方法は、透明なプラスチック基材を垂直に立てた後、コンベヤによって移送しながら、基材の両側面の上端でコーティング組成物を、ノズルを介して塗布する方法である。コーティング組成物を塗布した後、たとえば、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜80℃の赤外線ランプで好ましくは1〜10分、より好ましくは2〜5分間乾燥する。水銀ランプによって、好ましくは300〜900mJ/cm(UV A)、より好ましくは500〜800mJ/cm(UV A)で紫外線硬化を行い、膜を製造することができる。
【0052】
ハードコーティング組成物は、約1〜40μmの厚さでコーティングされるが、これらに制限されるものではない。
【0053】
ハードコーティング組成物は、プラスチック液晶ディスプレイ材質の表面、平板ディスプレイ液晶画面の表面、コンピュータのモニター画面および保眼鏡の表面に使用されるポリカーボネートおよびポリメタクリレートパネルなどを含む透明基材の表面にコーティングされることによって、耐スクラッチ性、耐衝撃性および各種有機溶剤に対する抵抗性などを示すようになる。
【実施例】
【0054】
本発明に関するより詳細な内容は、次の具体的な製造例および試験例を通して説明し、ここに記載していない内容は、この技術分野の当業者であれば充分に技術的に類推可能であるので、それに対する説明を省略する。
【0055】
実施例および比較例における「部」および「%」は、特別な明示がない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。前記成分で実施例1〜9および比較例1〜4を製造した。各成分の含量(質量部)は下記の表1と表2に示した。
【0056】
(実施例1)
重合開始剤として(C)イルガキュア184(Irgacure 184、チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド)3質量部と、有機溶媒として(D1)2―メトキシエタノール(MCS)26.0質量部とを混合した。前記混合液に、多官能アクリルモノマーとして(B1)ジペンタエリスリトルヘキサアクリレート(DPHA、NOPCOMER 4612、Sanopcoco.,Ltd)10質量部と、(B2)ペンタエリスリトルトリアクリレート(PETA、M430、Miwon Commercial Co.,Ltd)であるM340 10質量部とを添加した。その後、アルキレングリコール系アクリルモノマーとして下記の構造式1の(A1)エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT3EOA、EO3mol)であるA−TMPT−3EO(新中村化学工業株式会社)11質量部を添加した。これらを混合して撹拌した後、有機溶媒である(D2)イソプロピルアルコール(IPA)39.8質量部を添加して撹拌した。その後、レベリング剤として(E)ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンであるビック306(BYK 306、BYK社)0.2質量部を添加し、紫外線硬化型ハードコーティング液を製造した。
【0057】
【化5】

【0058】
(実施例2)
エチレングリコール系アクリルモノマーとして、(A1)の代わりに、下記の構造式2の(A2)エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT6EOA、EO6mol)であるA−TMPT−6EO(新中村化学工業株式会社)を使用したことを除けば、実施例1と同一にハードコーティング組成物を製造した。
【0059】
【化6】

【0060】
(実施例3)
エチレングリコール系アクリルモノマーとして、(A1)の代わりに、下記の構造式3の(A3)エトキシ化ペンタエリスリトルテトラアクリレートであるATM−4E、EO4mol(新中村化学工業株式会社)を使用したことを除けば、実施例1と同一にハードコーティング組成物を製造した。
【0061】
【化7】

【0062】
(実施例4)
エチレングリコール系アクリルモノマーとして、(A1)の代わりに、下記の構造式4の(A4)プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートであるA−TMPT−6PO(新中村化学工業株式会社)を使用したことを除けば、実施例1と同一にハードコーティング組成物を製造した。
【0063】
【化8】

【0064】
(実施例5)
重合開始剤として(C)3質量部と有機溶媒として(D1)26.0質量部とを混合した。前記混合液に多官能アクリルモノマーとして(B1)12.5質量部と(B2)12.5質量部とを添加した。その後、(A1)6質量部を添加して撹拌し、有機溶媒として(D2)39.8質量部を混合して撹拌した。最後に、レベリング剤として(E)0.2質量部を混合し、紫外線硬化型ハードコーティング液を製造した。
【0065】
(実施例6)
エチレングリコール系アクリルモノマーとして、(A1)の代わりに(A2)を使用したことを除けば、実施例5と同一にハードコーティング組成物を製造した。
【0066】
(実施例7)
エチレングリコール系アクリルモノマーとして、(A1)の代わりに(A3)を使用したことを除けば、実施例5と同一にハードコーティング組成物を製造した。
【0067】
(実施例8)
重合開始剤として(C)3質量部と有機溶媒として(D1)30.0質量部とを混合した。前記混合液に多官能アクリルモノマーとして(B1)5.0質量部と(B2)15.0質量部とを添加した。その後、(A1)20.0質量部を混合して撹拌し、有機溶媒として(D2)26.8質量部を混合して撹拌した。最後に、レベリング剤として(E)0.2質量部を混合し、紫外線硬化型ハードコーティング液を製造した。
【0068】
(実施例9)
重合開始剤として(C)3質量部と有機溶媒として(D1)20.0質量部とを混合した。前記混合液に多官能アクリルモノマーとして(B1)5.0質量部と(B2)15.0質量部とを添加した。その後、(A1)40.0質量部を混合して撹拌し、有機溶媒として(D2)16.8質量部を混合して撹拌した。最後に、レベリング剤として(E)0.2質量部を混合し、紫外線硬化型ハードコーティング液を製造した。
【0069】
(比較例1)
(A1)の代わりに、下記の構造式5の(a1)トリメチロールプロパントリアクリレートであるA―TMPT(新中村化学工業株式会社)を使用したことを除けば、実施例1と同一にハードコーティング組成物を製造した。
【0070】
【化9】

【0071】
(比較例2)
(A1)の代わりに、(a2)単官能アクリレートモノマーイソボニルアクリレートであるIBOA(SKcytec co.,Ltd)を使用したことを除けば、実施例1と同一にハードコーティング組成物を製造した。
【0072】
(比較例3)
(A1)の代わりに、(a3)ウレタンアクリレートであるEB284(SKcytec co.,Ltd)を使用したことを除けば、実施例1と同一にハードコーティング組成物を製造した。
【0073】
(比較例4)
重合開始剤として(C)3質量部と有機溶媒として(D1)10.8質量部とを混合した。前記混合液に多官能アクリルモノマーとして(B1)5.0質量部を添加した。その後、(A1)75.0質量部を混合して撹拌し、有機溶媒として(D2)6.0質量部を混合して撹拌した。最後に、レベリング剤として(E)0.2質量部を混合し、紫外線硬化型ハードコーティング液を製造した。
【0074】
(比較例5)
重合開始剤として(C)3質量部と有機溶媒として(D1)26質量部とを混合した。前記混合液に多官能アクリルモノマーとして(B1)20質量部、多官能アクリルモノマーとして(B2)20質量部を添加した。その後、(A1)2質量部を混合して撹拌し、有機溶媒として(D2)28.8質量部を混合して撹拌した。最後に、レベリング剤として(E)0.2質量部を混合し、紫外線硬化型ハードコーティング液を製造した。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
<試験例:ハードコーティングシートに対する評価>
(1―1:コーティング膜の製造)
シート基材としては、クラレ社の耐衝撃PMMAシートであるCOMOGLASS HI(厚さ:1.0mm)を使用した。前記シートの表面はイソプロピルアルコールで洗浄した。実施例および比較例で製造されたコーティング液組成物を、12mmノズルを介して垂直方向に噴射し、フローコーティングを行った。このとき、コーティング温度は25℃に維持し、湿度は50%に維持した。コーティングされたシート基材は、赤外線乾燥器によって60℃で3分間乾燥させた。紫外線ランプで光量を500mJ/cmにして温度65℃で2sec間、光を照射することによって、ハードコーティング組成物が8−13μmの厚さで硬化されたハードコーティングシートを製造した。
【0078】
(1―2:評価方法)
実施例および比較例で製造したコーティング液組成物がコーティングされたハードコーティングシートに対して、鉛筆硬度、透過率、耐衝撃性、外観および耐スクラッチ性を評価した。その結果を表3と表4に示した。評価のための試片の大きさは200mm×250mmである。
【0079】
1)鉛筆硬度は、ASTM D3502(鉛筆硬度試験機)で測定した。
【0080】
2)透過率は、UV―visスペクトラム(DARSA PRO―5000 SYSTEM)を用いて測定し、波長550nmでの透過率を表3および4に示した。
【0081】
3)耐衝撃性の測定では、剛球(Steel Ball)36gを高さ30cmから落下させ、試片の割れの有無を測定した。具体的に、70mm×70mm×50mmのジグに試片を置いた後、剛球36gを高さ30cmから落下させ、試片の割れの有無を測定した。割れが生じない場合を「良好」、割れが生じた場合を「割れあり」と評価した。
【0082】
4)外観は、3波長ランプを用いて肉眼で判定した。ゆず肌が発生しない場合を「良好」、ゆず肌が発生する場合を「良好でない」と評価した。
【0083】
5)耐スクラッチ性の測定では、Steelwool#0000で以って100gの荷重で15回の往復摩耗を実施し、スクラッチの有無を測定した。スクラッチが生じない場合を「良好」、スクラッチが生じた場合を「スクラッチあり」と評価した。
【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
表3に示すように、アルキレングリコール系アクリルモノマーを含有する実施例1〜9のコーティング組成物から形成されたコーティング膜は、良好な外観、透過率および硬度を示し、改善された耐スクラッチ性および衝撃強度を示すことが分かる。比較例1は、実施例のアルキレングリコール系アクリルモノマーと構造的に類似しているが、アルキレングリコール残基を有していないアクリルモノマーを含有する。比較例2は、アルキレングリコール系アクリルモノマーの代わりに單官能アクリレートモノマーを含む。比較例3は、アルキレングリコール系アクリルモノマーの代わりにウレタンアクリレートオリゴマーを含む。比較例4は、アルキレングリコール系アクリルモノマーを実施例1〜9に比べて過量に使用した。表4に示すように、比較例1の組成物でコーティングされたシートは弱い耐衝撃強度を示した。比較例2または3の組成物でコーティングされたシートは、低下した耐スクラッチ性を示した。そして、比較例4の組成物でコーティングされたシートは、悪化したスクラッチ性を示し、外観も良好でなかった。
【0087】
以上、添付の図面および表を参照して本発明の各実施例を説明したが、本発明は、各実施例に限定されるものでなく、互いに異なる多様な形態で製造され得る。そして、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施され得ることが理解できると考えられる。したがって、以上で説明した各実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものでないことを理解しなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキレングリコール系アクリルモノマー、(B)多官能アクリルモノマーおよび(C)重合開始剤を含み、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーは、組成物全体の固形分含量に対して5〜69質量%で含まれるハードコーティング組成物。
【請求項2】
前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーは、アルキレングリコール残基および(メタ)アクリレート残基を含み、前記アルキレングリコール残基は、1分子中1〜35個含まれる、請求項1に記載のハードコーティング組成物。
【請求項3】
前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーは、下記式1:
【化1】

式中、
は、水素、C1−C5アルキルまたは
【化2】

であり、
、R、RおよびR’は、それぞれ独立して、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH)CHまたは−CHCHCHCHであり、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して、HまたはCHであり、
a、bおよびcは、0または正の整数で、1≦a+b+c≦35である、
で表される化合物を一つ以上含む、請求項1または2に記載のハードコーティング組成物。
【請求項4】
前記R、R、RおよびR’が−CHCHである、請求項3に記載のハードコーティング組成物。
【請求項5】
前記(B)多官能アクリルモノマーは、ジペンタエリスリトルヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトルトリアクリレート(PETA)、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌエートトリアクリレート(THEIC)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、ジシクロデカンジメタノールジアクリレート(DCPA)およびこれらの混合物からなる群から選択される一つ以上を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハードコーティング組成物。
【請求項6】
前記(C)重合開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α,α−ジメトキシ−α−ヒドロキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの混合物およびこれらの混合物からなる群から選択される一つ以上を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のハードコーティング組成物。
【請求項7】
前記組成物は、アルコールおよびアセテートからなる群から選択される一つ以上を含む(D)有機溶媒をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハードコーティング組成物。
【請求項8】
前記組成物は、前記(A)アルキレングリコール系アクリルモノマーと(B)多官能アクリルモノマーとを、組成物全体の固形分含量に対して、合計して90〜99.9質量%含み、(C)重合開始剤を、組成物全体の固形分含量に対して0.1〜10質量%含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のハードコーティング組成物。
【請求項9】
前記組成物は、組成物全体に対して0.01〜10質量%でレベリング剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のハードコーティング組成物。
【請求項10】
基材と、前記基材上にコーティングされた請求項1〜9のいずれか1項に記載のハードコーティング組成物と、を含む積層体。
【請求項11】
前記基材は、基材樹脂にゴム粒子が分散されたPMMAシートである、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記ハードコーティング組成物は1〜40μmの厚さでコーティングされる、請求項10または11に記載の積層体。

【公開番号】特開2011−137155(P2011−137155A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283680(P2010−283680)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】