説明

ハードコートフィルムおよびタッチパネル

【課題】
ペンや指による耐摺動性に優れ、かつクラックの発生が抑制されたハードコートフィルム、および該ハードコートフィルムを備えたタッチパネルを提供する。
【解決手段】
基材フィルムの一方の面にハードコート層Aを有し、基材フィルムの他方の面にハードコート層Bを有するハードコートフィルムであって、前記ハードコート層Aの鉛筆硬度が2H以上であり、前記ハードコート層Bの引張伸度が10%以上であることを特徴とする、ハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関し、詳しくは基材フィルムの両面にハードコート層を有するハードコートフィルムおよび該ハードコートフィルムを備えたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
基材フィルムの両面にハードコート層を有する両面ハードコートフィルムは、例えば、タッチパネルのタッチ面の表面保護部材として用いること(特許文献1〜4)、あるいはタッチパネルの上部電極形成用導電性フィルムの基材フィルムとして用いること(特許文献5〜11)、が知られている。
【0003】
タッチパネルのタッチ面はペンや指で繰り返し押圧されることから、上記したようにタッチ面の表面保護部材、あるいは上部電極形成用導電性フィルムの基材フィルムとして両面ハードコートフィルムが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−148036号公報
【特許文献2】特開2002−103504号公報
【特許文献3】特開2003−80644号公報
【特許文献4】特開2006−155452号公報
【特許文献5】特開2010−188540号公報
【特許文献6】特開2011−39978号公報
【特許文献7】特開2011−65937号公報
【特許文献8】特開2011−68064号公報
【特許文献9】特開2011−145593号公報
【特許文献10】特開2011−175040号公報
【特許文献11】特開2011−201087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチパネルのタッチ面はペンや指による押圧(摺動)に耐え得るハードコート性が要求されており、一般にタッチ面に用いられるハードコートフィルムには高硬度のハードコート層が設けられている。
【0006】
しかしながら、基材フィルムの両面に高硬度のハードコート層を設けたハードコートフィルムをタッチパネルのタッチ面に用いた場合、一方の側(裏面側;タッチ面とは反対側)のハードコート層にクラックが発生するという問題が起こる。この問題は上記特許文献に開示されている両面ハードコートフィルムでは、十分に解消することはできない。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記従来技術の問題に鑑み、ペンや指による耐摺動性に優れ、かつクラックの発生が抑制されたハードコートフィルム、および該ハードコートフィルムを備えたタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1) 基材フィルムの一方の面にハードコート層Aを有し、基材フィルムの他方の面にハードコート層Bを有するハードコートフィルムであって、前記ハードコート層Aの鉛筆硬度が2H以上であり、前記ハードコート層Bの引張伸度が10%以上であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【0009】
2) 前記基材フィルムが、屈折率(nf)が1.63〜1.70のポリエチレンテレフタレートフィルムであり、このポリエチレンテレフタレートフィルムは両面にそれぞれ屈折率(np)が1.54〜1.61の易接着層を有し、前記ハードコート層Aおよび前記ハードコート層Bの屈折率(nh)がそれぞれ1.48〜1.55であり、かつ前記基材フィルムの両面とも下記式1〜式3の全てを満足する、前記1)のハードコートフィルム。
nf>np>nh ・・・・式1
nf−np<0.1 ・・・・式2
np−nh<0.1 ・・・・式3。
【0010】
3) 前記1)または2)のハードコートフィルム、上部電極層、および下部電極層がこの順に積層され、前記ハードコートフィルムの前記ハードコート層B側の面が、前記上部電極層側に向けられているタッチパネル。
【0011】
4) 前記上部電極層と基材とで上部電極が形成されており、前記下部電極層と基材とで下部電極が形成されており、前記ハードコートフィルムの前記ハードコート層B側の面が、前記上部電極の基材と粘着剤層を介して貼り合わされている、前記3)のタッチパネル。
【0012】
5) 前記ハードコートフィルムの前記ハードコート層B側の面に前記上部電極層が積層され、このハードコートフィルムとこの上部電極層とで上部電極が形成されており、前記下部電極層と基材とで下部電極が形成されている、前記3)のタッチパネル。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ペンや指による耐摺動性に優れ、かつクラックの発生が抑制されたハードコートフィルムを提供することができる。また、本発明のハードコートフィルムはタッチパネルに好ましく適用される。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、さらに反射色ムラが抑制されたハードコートフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、従来のハードコートフィルムあるいは本発明のハードコートフィルムを備えた一般的なタッチパネルの概略断面図である。
【図2】図2は、本発明のハードコートフィルムが適用されたタッチパネルの他の例の概略断面図である。
【図3】図3は、ペンによる耐摺動性試験に用いられるガラス板(周囲4辺に両面粘着テープ付き)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの一方の面に鉛筆硬度が2H以上のハードコート層Aを有し、基材フィルムの他方の面に引張伸度が10%以上のハードコート層Bを有する。
【0017】
本発明における鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4(1999年)に準拠し750gの荷重で測定されたものである。また、本発明における引張伸度は、ハードコートフィルムの片側を固定して引張速度50mm/minでハードコートフィルムを引っ張ったときに、ハードコート層にクラックが発生するときの伸び率である。
【0018】
前述の特許文献に開示されているハードコートフィルムあるいは従来から一般的に用いられているタッチパネル用ハードコートフィルムは、ハードコート層の硬度は比較的が高く、引張伸度も比較的小さい(5%以下)ものである。
【0019】
このような引張伸度が小さいハードコート層が設けられた従来のハードコートフィルムを、図1に示すようにタッチパネルのタッチ面に配置した場合、ペン等でのタッチ入力操作(摺動)を繰り返すとタッチ面とは反対側のハードコート層にクラックが発生するという問題があることが分かった。
【0020】
図1は、従来のハードコートフィルムあるいは本発明のハードコートフィルムを備えた一般的なタッチパネルの概略断面図である。図1において、上部電極21に粘着剤層3を介してハードコートフィルム1が積層されて、タッチパネル2を構成している。ハードコートフィルム1は、基材フィルム10の一方の面(表面)にハードコート層11を有し、他方の面(裏面)にハードコート層12を有する。
【0021】
図1において、ハードコートフィルム1が従来のハードコートフィルムである場合は、符号11は表面ハードコート層、符号12は裏面ハードコート層と言う。一方ハードコートフィルム1が本発明のハードコートフィルムの場合は、符号11はハードコート層Aであり、符号12はハードコート層Bである。
【0022】
図1において、ペン4でタッチ入力操作(摺動)を繰り返し行うと、従来のハードコートフィルムを用いた場合、裏面ハードコート層12にクラックが発生する。これは、タッチパネル2は上部電極21と下部電極22との間に空隙が存在(絶縁スペーサー27で空隙形成)するために、ペン4でハードコートフィルム1の表面ハードコート層11の面を押圧すると、裏面ハードコート層12は外側(基材フィルム10の反対側)へ湾曲し、この湾曲が繰り返されることにより裏面ハードコート層12にクラックが発生する。
【0023】
上記のペン押圧時の裏面ハードコート層12の外側への湾曲は、空隙の存在以外にも、ハードコートフィルム1の下方側に(タッチパネル側)に比較的厚みの大きい粘着剤層が存在する場合も起こり得る。
【0024】
本発明は、上記の裏面ハードコート層12のクラック発生は、該ハードコート層の引張伸度を10%以上とすることにより抑制されることを見いだした。一方、表面ハードコート層11は、ペン等によるタッチ入力(摺動)に耐え得る耐摺動性が必要であり、該ハードコート層の鉛筆硬度は2H以上が必要であることを見いだした。
【0025】
つまり、図1において、基材フィルム10の一方の面に鉛筆硬度が2H以上のハードコート層A(11)を有し、基材フィルム10の他方の面に引張伸度が10%以上のハードコート層B(12)を有する本発明のハードコートフィルム1をタッチパネル2に装着することによって、上記したクラック発生の課題および耐摺動性の課題が解決する。
【0026】
上述したように、本発明のハードコートフィルムはタッチパネルのタッチ面側に好ましく用いられる。その好ましい態様は、ハードコートフィルムのハードコート層B側の面が、タッチパネルの上部電極層側を向くようにしてハードコートフィルムが配置される態様である。
【0027】
上記の1つの態様として、前述の図1の態様が挙げられる。つまり、本発明のハードコートフィルム1のハードコート層B(12)側の面が、基材23と上部電極層24とからなる上部電極21の基材23に粘着剤層3を介して貼り合わされている態様である。
【0028】
図1において、タッチパネル2は上部電極21と下部電極22が絶縁スペーサ27を介して配置されており、上部電極21は基材23と上部電極層24とからなり、下部電極22は基材25と下部電極層26とからなる。
【0029】
他の好ましい態様として、図2の態様が挙げられる。この態様は、上部電極21の基材として本発明のハードコートフィルムを用いる態様である。つまり、ハードコートフィルム1のハードコート層B(12)側の面に上部電極層24が積層され、ハードコートフィルム1と上部電極層24とで上部電極21が形成されている態様である。
【0030】
上記の図1および図2の態様は、言い換えれば、タッチパネル2の上部電極層24に対して本発明のハードコートフィルム1のハードコート層A(11)がタッチ側(図面のペン4側)となるように配置される態様である。
【0031】
タッチパネル2を構成する上部電極21の上部電極層24および下部電極22の下部電極層26は、一般に酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、ITO(酸化インジウム錫)、ATO(酸化アンチモン錫)等の金属酸化物をスパッタや真空蒸着等の気相製膜法により、基材(23、25)上に製膜された透明導電性膜である。
【0032】
[ハードコートフィルム]
以下、本発明のハードコートフィルムについて詳細に説明する。本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの一方の面に鉛筆硬度が2H以上のハードコート層Aを有し、基材フィルムの他方の面にクッラク伸度が10%以上のハードコート層Bを有する。
【0033】
[基材フィルム]
基材フィルムとしてプラスチックフィルムが好ましく用いられる。プラスチックフィルムを構成する樹脂としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、熱や溶剤に対する耐性が高く、透明性が高いという観点からポリエステル樹脂が好ましく、特に加工性の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0034】
基材フィルムの厚みは20〜250μmの範囲が好ましく、50〜200μmの範囲がより好ましい。
本発明に好ましく用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムの屈折率(nf)は一般的に1.63〜1.70の範囲であり、好ましくは1.64〜1.68の範囲である。
【0035】
基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合は、両面にそれぞれ積層されるハードコート層との密着性を強化するという観点から、両面に易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
【0036】
易接着層は、樹脂成分と架橋剤とを主成分とすることが好ましい。樹脂成分としてはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられ、架橋剤としては、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。上記樹脂成分の中でも、易接着層の屈折率を後述する範囲に調整するという観点からポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
【0037】
易接着層は、さらに易滑性向上のために無機微粒子を含有することが好ましい。無機微粒子としてはコロイダルシリカが好ましく用いられる。
【0038】
易接着層の厚みは、10〜300nmの範囲が好ましく、20〜250nmの範囲がより好ましく、特に30〜200nmの範囲が好ましい。
【0039】
また、本発明のハードコートフィルムの基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合、ハードコートフィルムの反射色ムラを抑制するという観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に設けられる易接着層の屈折率(np)は、それぞれ1.54〜1.61の範囲が好ましく、1.55〜1.60の範囲がより好ましく、特に1.56〜1.59の範囲が好ましい。
【0040】
さらにハードコートフィルムの反射色ムラを抑制するという観点から、基材フィルムの両面とも下記式1〜式3の全てを満足することが好ましい。
nf>np>nh ・・・・式1
nf−np<0.1 ・・・・式2
np−nh<0.1 ・・・・式3
上記式1〜式3において、nfは基材フィルムの屈折率、npは易接着層の屈折率、nhはハードコート層Aおよびハードコート層Bの屈折率である。
【0041】
上記式2、3において、nf−np、np−nhは、いずれも0.09未満であることがより好ましく、特に0.08未満であることが好ましい。
【0042】
また、後述する本発明のハードコート層Aおよびハードコート層Bの屈折率(nh)は、いずれも1.48〜1.55の範囲が好ましく、1.50〜1.54の範囲がより好ましく、特に1.51〜1.53の範囲が好ましい。
【0043】
[ハードコート層A]
ハードコート層Aは鉛筆硬度が2H以上である。ハードコート層Aの屈折率は、好ましくは3H以上である。上限は9H程度である。
【0044】
ハードコート層Aは、熱硬化性あるいは活性エネルギー線硬化性の樹脂を含むハードコート層A形成用組成物をウェットコーティング法により塗布後、必要に応じて乾燥した後、硬化せしめた層であることが好ましい。ハードコート層A形成用組成物としては、特に活性エネルギー線硬化性樹脂を含む組成物が好ましい。
【0045】
かかる活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂であり、分子中にエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(例えばモノマー、オリゴマー)が好ましく用いられる。ここで、エチレン性不飽和基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0046】
ハードコート層Aに鉛筆硬度が2H以上のハードコート性を付与するという観点から、ハードコート層A形成用組成物は分子中にエチレン性不飽和基を3個以上有する化合物を含むことが好ましい。以下の説明において、「・・・(メタ)アクリレート」なる表現は、「・・・アクリレート」と「・・・メタクリレート」との2つの化合物を含む。
【0047】
上記の分子中にエチレン性不飽和基を3個以上有する重合化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレオリゴマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマーなどが挙げられる。
【0048】
ハードコート層A形成用組成物は、上記の分子中にエチレン性不飽和基を3個以上有する重合化合物をハードコート層A形成用組成物の固形分総量100質量%に対して30質量%以上含むことが好ましく、40質量%以上含むことがより好ましく、特に50質量%以上含むことが好ましい。上限は98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0049】
ハードコート層A形成用組成物は、さらに分子中にエチレン性不飽和基を1〜2個有する重合化合物(例えばモノマー、オリゴマー)を含むことができる。上記分子中にエチレン性不飽和基を1〜2個有する重合化合物の含有量は、ハードコート層A形成用組成物の固形分総量100質量%に対して30質量%以下が好ましい。
【0050】
上記の分子中にエチレン性不飽和基を1個有する重合化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
上記の分子中にエチレン性不飽和基を2個有する重合化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキエチルジ(メタ)アクリレート、1−ヒドロキプロピルジ(メタ)アクリレート、1−ヒドロキブチルジ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキブチルジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキペンチルジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
ハードコート層A形成用組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−ベンゾイルメチルベンゾエート、アセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、メチルベンジルホルメートなどが挙げられる。
【0053】
また、光重合開始剤は一般に市販されており、それらを使用することができる。例えば、
チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製のイルガキュア907、イルガキュア379、イルガキュア819、イルガキュア127、イルガキュア500、イルガキュア754、イルガキュア250、イルガキュア1800、イルガキュア1870、イルガキュアOXE01、DAROCUR TPO、DAROCUR1173等、日本シイベルヘグナー(株)製のSpeedcureMBB、SpeedcurePBZ、SpeedcureITX、SpeedcureCTX、SpeedcureEDB、Esacure ONE、Esacure KIP150、Esacure KTO46等、日本化薬(株)製のKAYACURE DETX−S、KAYACURE CTX、KAYACURE BMS、KAYACURE DMBI等が挙げられる。
【0054】
光重合開始剤の含有量は、ハードコート層A形成用組成物の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%の範囲が適当であり、0.5〜8質量%の範囲が好ましい。
【0055】
ハードコート層A形成用組成物には、さらに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、無機粒子、有機粒子、滑剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0056】
特に本発明のハードコートフィルムを前述したタッチパネルの用途に使用する場合は、ハードコート層は紫外線吸収剤を含有することが好ましい。これによって、外光(紫外線)によるハードコート層の劣化(黄変、クラック発生、密着力の低下等)を抑制することができる。
【0057】
かかる紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いることができる。上記の紫外線吸収剤の中でも、ハードコート層Aの初期密着力と紫外線暴露後の密着力を高レベルで付与することができ、かつ紫外線暴露後のハードコート層Aの黄変やクラックの発生を効率よく抑制することができるという観点からトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、特にヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
【0058】
本発明に好ましく用いられるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を以下に例示する。
2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ビス((4−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ)−フェニル))−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ビス((4−(3−(2−プロピルオキシ)−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)−2−ヒドロキシ)−フェニル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−(3’−(メトキシヘプタエトキシ)−2’−ヒドロキシプロポキシ)−フェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−((メトキシトリエトキシカルボニル)−2−エトキシ)−フェニル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4’−メトキシフェニル)−4,6−ビス(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン。
【0059】
紫外線吸収剤の含有量は、ハードコート層Aの固形分総量100質量%に対して0.5〜8質量%の範囲が好ましく、1〜7質量%の範囲がより好ましく、特に1.5〜5質量%の範囲が好ましい。
【0060】
ハードコート層Aの厚みは、1〜20μmの範囲が好ましく、2〜15μmの範囲がより好ましく、特に3〜10μmの範囲が好ましい。
【0061】
ハードコート層A形成用組成物をウェットコーティングするときに用いられる塗布方法としては、例えばリバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法等が挙げられる。
【0062】
[ハードコート層B]
ハードコート層Bは引張伸度が10%以上である。ハードコート層Bの引張伸度は15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、特に25%以上が好ましい。上限は150%以下が好ましく、100%以下がより好ましく、さらに80%以下が好ましく、特に60%以下が好ましい。
【0063】
ハードコート層Bの引張伸度が10%未満であると、ペンや指等による摺動によってクラックが発生しやすくなり、一方、引張伸度が150%を越えると鉛筆硬度が低下し、ペンや指等による摺動によって、あるいは加工工程でハードコート層Bに傷が入ることがある。
【0064】
ハードコート層Bは、熱硬化性あるいは活性エネルギー線硬化性の樹脂を含むハードコート層B形成用組成物をウェットコーティング法により塗布後、必要に応じて乾燥した後、硬化せしめた層であることが好ましい。ハードコート層B形成用組成物としては、特に活性エネルギー線硬化性樹脂を含む組成物が好ましい。
【0065】
かかる活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂であり、分子中にエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(例えば、モノマー、オリゴマー)が好ましく用いられる。ここで、エチレン性不飽和基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0066】
ハードコート層Bに引張伸度10%以上を付与するという観点から、ハードコート層B形成用組成物は以下の組成物1あるいは組成物2であることが好ましい。
【0067】
(組成物1)
組成物1は、分子中にエチレン性不飽和基を1〜2個有する重合性化合物(a)、および分子中にエチレン性不飽和基を3個以上有する重合性化合物(b)を、組成物1の固形分総量100質量%に対して、重合性化合物(a)を10〜90質量%、重合性化合物(b)を3〜60質量%含有する組成物である。好ましくは、組成物1の固形分総量100質量%に対して、重合性化合物(a)を20〜80質量%、重合性化合物(b)を5〜50質量%含有する組成物である。
【0068】
分子中にエチレン性不飽和基を1〜2個有する重合性化合物(a)および分子中にエチレン性不飽和基を3個以上有する重合性化合物(b)は、前述のハードコート層A形成用組成物で用いることができる化合物と同様の化合物を用いることができる。
【0069】
組成物1は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては前述のハードコート層A形成用組成物に用いられるものと同様のものを用いることができる。光重合開始剤の含有量は、組成物1の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%の範囲が適当であり、0.5〜8質量%の範囲が好ましい。
【0070】
(組成物2)
組成物2は、分子中にエチレン性不飽和基を有するウレタン(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーを、組成物2の固形分総量100質量%に対して30〜90質量%含有する組成物である。
【0071】
上記のウレタン(メタ)アクリレートモノマーもしくはオリゴマーとしては、具体的には、共栄社化学社製のAT−600、UA−101l、UA−306H、UA−306T、UA−306l、UF−8001、UF−8003等、日本合成化学社製のUV7550B、UV−7600B、UV−1700B、UV−6300B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製のU−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A、U−2PPA、UA−NDP等、ダイセルユーシービー社製のEbecryl−270、Ebecryl−284、Ebecryl−264、Ebecryl−9260、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製のUN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等、三菱レイヨン製のRQシリーズ、荒川化学工業製のビームセットシリーズ等が挙げられる。
【0072】
組成物2は、さらに分子中にエチレン性不飽和基を3個以上有する重合性化合物(b)を含有することができる。重合性化合物(b)の含有量は、組成物2の固形分総量100質量%に対して1〜30質量%の範囲が好ましい。
【0073】
組成物2は、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては前述のハードコート層A形成用組成物に用いられるものと同様のものを用いることができる。光重合開始剤の含有量は、組成物2の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%の範囲が適当であり、0.5〜8質量%の範囲が好ましい。
【0074】
ハードコート層B形成用組成物には、さらに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、無機粒子、有機粒子、滑剤、帯電防止剤等を含有させることができる。
【0075】
ハードコート層Bの厚みは、0.5〜10μmの範囲が好ましく、1〜8μmの範囲がより好ましく、特に2〜6μmの範囲が好ましい。
【0076】
ハードコート層Bの鉛筆硬度は、F以上が好ましく、H以上がより好ましい。上限は3H以下が好ましく、2H以下がより好ましい。
【0077】
ハードコート層B形成用組成物をウェットコーティングするときに用いられる塗布方法としては、前述のハードコート層A形成用組成物のウェットコーティングに用いられる塗布方法と同様のものを用いることができる。
【0078】
[他の機能層]
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層Aおよび/またはハードコート層Bの上に、反射防止層、防眩層、防汚層、易滑層等の機能層が積層されていてもよい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例における測定法および評価法を以下に示す。
【0080】
(1)鉛筆硬度
実施例および比較例で作製したハードコートフィルムのハードコート層A面とハードコート層B面について、それぞれJIS K5600−5−4(1999年)に準拠して測定した。荷重は750g、速度は30mm/minである。測定装置は、新東科学(株)製の表面性硬度計(HEIDON;タイプ14DR)を用いた。測定時の環境は、23℃±2℃、相対湿度55%±5%である。
【0081】
(2)ハードコート層Bの引張伸度
実施例および比較例において、ハードコート層Bのみ積層した中間段階のハードコートフィルムを常温で1日保管後、長さ110mm×幅20mmの短形に切り出して試験サンプルを作製した。引張試験機(島津製作所製の「オートグラフAGS−500NX」)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minで、目視にてハードコート層Bのクラック発生状態を確認しながら引張試験を行った。クラックが発生したときの伸度を引張伸度とした。それぞれ5回測定し、平均した。測定時の環境は、23℃±2℃、相対湿度55%±5%である。
【0082】
(3)ペンによる摺動性試験
図3に示すように、厚みが2mmの矩形のガラス板(65mm×45mm)31の周囲4辺に厚みが250μmで幅が10mmの両面粘着シート32を貼り合わせ、その上に実施例および比較例で作製したハードコートフィルムの矩形カットシート(65mm×45mm)を、ハードコート層Bの面をガラス板の両面粘着シートに貼り合わせて試験用サンプルを作製した。
【0083】
上記試験用サンプルを(株)タッチパネル研究所製のタッチパネル摺動試験器(GRAPHTEK PENPLOTTER FP3800)に装着し、先端形状が半径0.8mmRの半球状のポリアセタール樹脂製タッチペンをハードコート層A面に接触させ、荷重250g、ペン摺動速度300mm/secで、直線40mmを5万回往復させた後、試験用サンプルのハードコート層Aおよびハードコート層Bの状態を観察し、以下の基準で評価した。測定時の環境は、23℃±2℃、相対湿度55%±5%である。
<ハードコート層Aの評価>
○;傷の発生は認められない。
×;傷が発生している。
<ハードコート層Bの評価>
○;クラックの発生は認められない。
×;クラックが発生している。
【0084】
(4)ハードコートフィルムの反射色ムラの目視評価
図1に示すように、実施例および比較例のハードコートフィルムをタッチパネルに装着し、暗室三波長蛍光灯下にて目視にて反射色ムラを観察し以下の基準で評価した。
○:反射色ムラの発生は小さく実用的に問題とならない。
×:反射色ムラがあり実用的に問題となる可能性がある。
【0085】
(5)屈折率の測定その1
ハードコート層A、ハードコート層Bおよび易接着層の屈折率は、それらの層形成用組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターにて塗工形成した塗膜(乾燥厚み約2μm)について、25℃の温度条件下で位相差測定装置(ニコン(株)製:NPDM−1000)で633nmの屈折率を測定した。
【0086】
(6)屈折率の測定その2(基材フィルムの屈折率)
基材フィルム(PETフィルム)の屈折率は、JIS K7105(1981)に準じてアッベ屈折率計で測定した。
【0087】
(実施例1)
下記の要領でハードコートフィルムを作製した。
<基材フィルム>
屈折率が1.65で厚みが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の両面に、それぞれ下記の易接着層形成用組成物1を乾燥厚みが90nmとなるようにが積層して、両面に易接着層を有するPETフィルムを作製した。
【0088】
<易接着層形成用組成物1>
テレフタル酸/イソフタル酸/5−ナトリウムスルホイソフタル酸/エチレングリコール/1,4−ブタンジオールを30/15/5/30/20(モル%)で重縮合させた水系ポリエステル樹脂液を75質量部(固形分)、メラミン系架橋剤として三和ケミカル製「ニカラックMW12LF」を20質量部(固形分)、オキサゾリン系架橋剤として日本触媒製「エポクロスWS500」を5質量部(固形分)、平均粒径80nmのコロイダルシリカを0.2質量部(固形分)混合して水系組成物を作製した。この組成物の屈折率は1.58であった。
【0089】
<ハードコートフィルムの作製>
上記PETフィルムの一方の面に下記のハードコート層B形成用組成物1をグラビアコーターで塗工し、90℃で熱風乾燥した後、紫外線(積算光量400mJ/cm)を照射して厚みが3μmのハードコート層Bを形成した。
【0090】
次に、PETフィルムのハードコート層Bが積層された面とは反対面に、下記のハードコート層A形成用組成物1をグラビアコーターで塗工し、90℃で熱風乾燥した後、紫外線(積算光量400mJ/cm)を照射して厚みが5μmのハードコート層Aを形成し、実施例1のハードコートフィルムを得た。
【0091】
<ハードコート層B形成用組成物1>
ハードコート層B形成用組成物1として、荒川化学工業(株)製のUV硬化性ハードコーティング剤「ビームセット1200H」を用いた。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0092】
<ハードコート層A形成用組成物1>
活性エネルギー線硬化性樹脂としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを50質量部とウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製の「アートレジンUN901T」を50質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)184」)5質量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤として2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン2.5質量部を有機溶剤に分散あるいは溶解した組成物である。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0093】
(実施例2)
ハードコート層Bの形成において下記のハードコート層B形成用組成物2に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層B形成用組成物2>
ハードコート層B形成用組成物2として、荒川化学工業(株)製のUV硬化性ハードコーティング剤「ビームセット1470」を用いた。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0094】
(実施例3)
ハードコート層Bの形成において下記のハードコート層B形成用組成物3に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層B形成用組成物3>
ハードコート層B形成用組成物3として、荒川化学工業(株)製のUV硬化性ハードコーティング剤「ビームセット1200」を用いた。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0095】
(実施例4)
ハードコート層Bの形成において下記のハードコート層B形成用組成物4に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層B形成用組成物4>
活性エネルギー線硬化性樹脂としてトリプロピレングリコールジアクリレート33質量部、ジメチルアミノエチルメタクリレート33質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート36質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)184」)5質量部を有機溶剤に分散あるいは溶解した組成物である。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0096】
(実施例5)
ハードコート層Bの形成において下記のハードコート層B形成用組成物5に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層B形成用組成物5>
荒川化学工業(株)製のUV硬化性ハードコーティング剤「ビームセット1200」の固形分100質量部に対してジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを10質量部添加して、ハードコート層B形成用組成物5を調製した。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0097】
(実施例6)
ハードコート層Aの形成において下記のハードコート層A形成用組成物2に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層A形成用組成物2>
日本化薬(株)製のアクリル系ハードコート剤「KAYANOVA FOP−1700」の固形分100質量部に対して、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤として2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン2.5質量部添加して、ハードコート層A形成用組成物2を調製した。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0098】
(比較例1)
ハードコート層Bの形成において下記のハードコート層B形成用組成物6に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層B形成用組成物6>
活性エネルギー線硬化性樹脂として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを50質量部とウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製の「アートレジンUN901T」を50質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)184」)5質量部を有機溶剤に分散あるいは溶解した組成物である。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0099】
(比較例2)
ハードコート層Bの形成において下記のハードコート層B形成用組成物7に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層B形成用組成物7>
ハードコート層B形成用組成物6として、日本化薬(株)製のアクリル系ハードコート剤「KAYANOVA FOP−1700」を用いた。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0100】
(比較例3)
ハードコート層Bの形成において下記のハードコート層B形成用組成物8に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層B形成用組成物7>
活性エネルギー線硬化性樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア(登録商標)184」)5質量部を有機溶剤に分散あるいは溶解した組成物である。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0101】
(比較例4)
ハードコート層Aの形成において下記のハードコート層A形成用組成物3に変更する以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<ハードコート層A形成用組成物3>
ハードコート層A形成用組成物3として、荒川化学工業(株)製のUV硬化性ハードコーティング剤「ビームセット1470」を用いた。この組成物の屈折率は1.51であった。
【0102】
(比較例5)
下記の基材フィルムに変更する以外は、比較例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
<基材フィルム>
屈折率が1.65で厚みが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の両面に、それぞれ下記の易接着層形成用組成物2を乾燥厚みが90nmとなるようにが積層して、両面に易接着層を有するPETフィルムを用意した。
<易接着層形成用組成物1>
メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミドを63/35/1/1(質量比)で共重合させた水系アクリル樹脂液を75質量部(固形分)、メラミン系架橋剤として三和ケミカル製「ニカラックMW12LF」を20質量部(固形分)、オキサゾリン系架橋剤として日本触媒製「エポクロスWS500」を5質量部(固形分)、平均粒径80nmのコロイダルシリカを0.2質量部(固形分)混合して水系組成物を作製した。この組成物の屈折率は1.52であった。
【0103】
<評価>
実施例および比較例で作製したハードコートフィルムについて、鉛筆硬度、引張伸度、ペンによる摺動性試験および反射色ムラを評価した。その結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
本発明の実施例はいずれも、ペンによる摺動試験においてハードコート層Aは傷の発生がなく、ハードコート層Bはクラックの発生がなく、さらに反射色ムラの発生もない。
【0106】
一方、比較例1〜3および5は、ハードコート層Bの引張伸度が10%未満であり、ハードコート層Bのペンによる摺動試験においてクラックが発生している。また、比較例5は、基材フィルム、易接着層およびハードコート層A、Bの屈折率の関係が、前述の式2を満足していないために、反射色ムラの発生が認められる。
【0107】
比較例4は、ハードコート層Bの鉛筆硬度が2H未満であり、ハードコート層Aのペンによる摺動性試験において傷の発生がある。
【符号の説明】
【0108】
1 ハードコートフィルム
2 タッチパネル
3 粘着剤層
4 ペン
10 基材フィルム
11 ハードコート層A(本発明の態様)、表面ハードコート層(従来技術の場合)
12 ハードコート層B(本発明の態様)、裏面ハードコート層(従来技術の場合)
21 上部電極
22 下部電極
23 上部電極の基材
24 上部電極の上部電極層
25 下部電極の基材
26 下部電極の下部電極層
27 絶縁スペーサ
31 ガラス板
32 両面粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面にハードコート層Aを有し、基材フィルムの他方の面にハードコート層Bを有するハードコートフィルムであって、前記ハードコート層Aの鉛筆硬度が2H以上であり、前記ハードコート層Bの引張伸度が10%以上であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムが、屈折率(nf)が1.63〜1.70のポリエチレンテレフタレートフィルムであり、このポリエチレンテレフタレートフィルムは両面にそれぞれ屈折率(np)が1.54〜1.61の易接着層を有し、前記ハードコート層Aおよび前記ハードコート層Bの屈折率(nh)がそれぞれ1.48〜1.55であり、かつ前記基材フィルムの両面とも下記式1〜式3の全てを満足する、請求項1のハードコートフィルム。
nf>np>nh ・・・・式1
nf−np<0.1 ・・・・式2
np−nh<0.1 ・・・・式3
【請求項3】
請求項1または2のハードコートフィルム、上部電極層、および下部電極層がこの順に積層され、
前記ハードコートフィルムの前記ハードコート層B側の面が、前記上部電極層側に向けられているタッチパネル。
【請求項4】
前記上部電極層と基材とで上部電極が形成されており、
前記下部電極層と基材とで下部電極が形成されており、
前記ハードコートフィルムの前記ハードコート層B側の面が、前記上部電極の基材と粘着剤層を介して貼り合わされている、請求項3のタッチパネル。
【請求項5】
前記ハードコートフィルムの前記ハードコート層B側の面に前記上部電極層が積層され、このハードコートフィルムとこの上部電極層とで上部電極が形成されており、
前記下部電極層と基材とで下部電極が形成されている、請求項3のタッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−111804(P2013−111804A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258460(P2011−258460)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】