説明

ハードコートフィルムの干渉ムラの検査方法

【課題】 使用する場合の品質として求められる、反射光干渉ムラが許容範囲内の水準であることを正しく反映し、恒常的に高頻度で精度を保つことができ、大面積の検査面であっても、その反射光干渉ムラを変質させずに簡便に効率良く測定することができる測定方法を提供する。
【解決手段】 ハードコート層を有するポリマーフィルムを液体の表面に浮かべることを特徴とするハードコートフィルムの干渉ムラの検査方法であり、用いる液体としては、水が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートされたポリマーフィルムの検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムをはじめとするポリマーフィルムにハードコートする場合おいて、フィルムの品質管理項目の一つとして、反射光干渉ムラが許容範囲内の水準であることの確認がある。
【0003】
かかる反射光干渉ムラを目視または機械的装置いずれの手段で検査する場合でも、実際のフィルム使用時の状態を反映し、検査面を検査中は平坦に固定・維持する必要がある。その方法として、通常、一定張力を加え緊張状態とすることが行われている。しかしこの方法では、検査面積が大きくなるほど全面に渡り均一な張力を与えることが難しくなり、不均一な張力に起因する凹凸が新たに惹起され、平面性が変質してしまうため、フィルムをガラス等の平面に固定して使用する場合の品質として求められる反射光干渉ムラを必ずしも正しく反映したものとならない。
【0004】
張力を掛けずにフィルムを固定・維持する方法として、フィルムを平坦な台上に広げる方法もあるが、この方法ではフィルムと台表面との間に残存した空気によるフィルムの膨らみが平面性を損ねてしまうため、布を巻きつけた棒でしごく等の方法でこれを除去しなければならないが、完全に空気を除くことは難しいうえ、空気を完全に除くため強くしごくと局所的に張力を掛ける形となり平面性を変質させ、結果として光干渉ムラの見え方に変化を生じてしまう恐れがある。
【0005】
平坦な台の表面をスポンジなど通気性のある素材で構成することで、前記空気溜りの問題を解決することはできるが、通気性のある素材で高精度の平坦さを実現するのは容易ではなく、加えてこれら素材は比較的軟質で劣化しやすいことから、メンテナンスコスト等を勘案すると恒常的に高頻度で行う検査には適していなかった。
【0006】
このほかに、張力を掛けずにフィルムを固定・維持する別の方法として、評価試料フィルムを吊るす方法も挙げられるが、完全な無風状態を実現するのは容易ではなく、作業者あるいは検査装置の動作等で生じる風の影響で検査精度を保てないといった問題がある。
【0007】
フィルムの固定・維持に際して平面性を変質させる可能性が高いほど反射光干渉ムラ検査結果がばらつくため、合否判定の再現性を維持するためには検査の試行回数を増やさざるを得ないが、これでは検査効率が著しく低下し製造コストを押し上げてしまうため、大面積の検査面をフィルムの平面性を変えずに簡便に固定・維持する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−27561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、使用する場合の品質として求められる、反射光干渉ムラが許容範囲内の水準であることを正しく反映し、恒常的に高頻度で精度を保つことができ、大面積の検査面であっても、その反射光干渉ムラを変質させずに簡便に効率良く測定することができる測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の方法によれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、ハードコート層を有するポリマーフィルムを液体の表面に浮かべることを特徴とするハードコートフィルムの干渉ムラの検査方法に存する。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうポリマーフィルムとは、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂や、ポリウレタン、アルキド樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂からなるシート状成形体を指す。
【0013】
本発明に適用する液体は、評価対象のフィルムを浮かべ静置することができるものであれば特に限定されないが、ある程度の液量を開放系で使用することになるため、揮発性・毒性・引火性はいずれも低いか、もしくはない方が好ましい。また、フィルムを静置させる目的に照らせば、液面は波立ちにくい方が良く、液体の粘性率は高い方が好ましい。これらの条件を満足する液体として水が特に好適である。なお、水に比べ比重の大きいポリマーからなるフィルム例えばポリエステルフィルムであっても、水の表面張力が高くかつポリエステルフィルムに対する水の濡れ性がさほど低くはないため、フィルムを意図的に水中へ沈めない限り液面上に浮かべた状態を保持することは容易であり、本発明の方法を適用することができる。
【0014】
フィルムは、検査対象となるハードコート面を上面とし、液面上に浮かべる。本発明の方法は、大面積全体を同時に液面に接触させ浮かべるとフィルムと液面との間に空気溜りを生じることがあるので、一端あるいは一辺を液面に接触させ、徐々に穏やかにフィルムを液面上に敷いていくことが好ましい。その場合でも、
微細な気泡を巻き込むことがあるので、その場合は水中側よりヘラ等の道具を用いて溜まった空気を取り除いてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検査方法は、ハードコートしたポリマーフィルムの反射光干渉ムラを簡便且つ再現性良く検査することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。以下の例では、評価対象の反射光干渉ムラとして、ハードコートフィルムに3波長蛍光灯による光を反射した際に見える“干渉ムラ”の本数に着目し、作用効果の確認として固定・維持方法の違いによってデータのバラツキがどのように異なっているかを示す。
・干渉ムラの評価
検査面に対して目線仰角約30°で目視検査を行い、干渉ムラの本数を確認する。この作業を20回実施した。なお、干渉ムラの見える程度は検査員ごとにことなるので、以下の評価は全て同一検査員が行った。
【0017】
比較例1:
ハードコートを行った、厚み25μmの1080mm×1000mmのサイズの二軸配向ポリエステルフィルム(以下、試料フィルムと呼ぶ)の一辺を水平に固定しフィルムを吊るして目視検査を試みた。フィルム下辺を固定せずフィルム自重以外の張力が掛からない状態では、検査面を平坦に保つことができず干渉ムラ本数を数えることができなかった。
【0018】
実施例1:
内容量50mm×1200mm×1200mmのバットに60Lの水を入れ、静置した。試料フィルムの一辺を水面に付け、徐々にフィルムを水面上に敷くように広げ、水面に浮かべ、目視検査を行った。なお、フィルムを敷き広げる過程で、ブレード部がシリコーンゴムでできたヘラを水中より差し入れ、水面とフィルム間に溜まった泡を適宜横方向に逃がすことで取り除いた。
【0019】
比較例2:
平行に設置された二組のニップロール間に試料フィルムの辺とロールの軸が平行となるように挟み、10Nの張力を掛け、目視検査を行った。
【0020】
比較例3:
試料フィルムを鏡面仕上げの金属板上に広げ、ガーゼを巻きつけた木の棒でしごき密着させた一時間静置した後、目視検査を行った。
【0021】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の方法は、例えば、光学フィルム用途のように、広い面積を要するフィルムの欠陥を測定する方法として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層を有するポリマーフィルムを液体の表面に浮かべることを特徴とするハードコートフィルムの干渉ムラの検査方法。