説明

ハードコートフィルム

【課題】優れた密着性と表面硬度とを兼ね備えたハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】透明基材の一面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコート層は(A)下記式(1)で表されるポリアルキレングリコールジアクリレート5〜10質量部、(B)3官能以上のアクリレート化合物90〜95質量部、但し(A)成分と(B)成分は合計で100質量部、及び(C)光重合開始剤1〜10質量部を含むハードコート層用塗液を硬化して形成されることを特徴とする。
CH2=CH-CO-(OR)n-O-CO-CH=CH2 式(1)
(n=3〜9、R=C3H6又はC4H8

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性と表面硬度に優れるディスプレイ用ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル等の電子画像表示装置(電子ディスプレイ)はその表面に、表面保護、近赤外線吸収機能等の機能を付与する目的で、光学フィルタが設けられている。光学フィルタにはパネル前面にガラスを配置し、ガラスにディスプレイ用フィルム及び電磁波遮蔽層を付与するガラスフィルタタイプ及びディスプレイパネルに直接ディスプレイ用フィルム及び電磁波遮蔽層を付与するフィルムフィルタタイプがある。
【0003】
フィルムフィルタタイプの光学フィルタの場合、一般にポリエステル系樹脂等の透明基材が用いられるが、硬度や耐擦傷性が不十分で傷つき易いという欠点を有している。そのため、透明基材上にハードコート層を積層することによってフィルムの表面硬度の向上が図られている。ハードコート層は、硬度を高めるために架橋密度を上げる必要がある。しかしながら、架橋密度を上げると、ハードコート層の硬化収縮が大きくなり、基材との密着性が悪化し、実用上問題がある。
【0004】
ディスプレイ用のハードコートフィルムとは異なるが、光ディスク記録媒体の表面における同様の問題を解決するために、表面硬度を低下させることなく硬化収縮を低減させたハードコート用樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。当該ハードコート用樹脂組成物は、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2官能性(メタ)アクリレート20〜40重量部と3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレート20〜50重量部を含んでおり、さらに光重合開始剤を含んでいる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」の用語はアクリレートとメタクリレートの両方を意味しており、「(メタ)アクリル酸」及び「(メタ)アクリル系重合体」の用語も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-63244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたハードコート用樹脂組成物を用いて形成されたハードコートフィルムは、硬化収縮を抑えることで密着性は確保されているが、3官能性以上の多官能性(メタ)アクリレートに対する2官能性(メタ)アクリレートの含有率が低いため表面硬度が十分ではない。従って、本発明の目的は密着性を確保したまま、高い表面硬度を有するハードコートフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は次の手段を採る。本発明のハードコートフィルムは、透明基材の一面にハードコート層を備え、前記ハードコート層は
(A)下記式(1)で表されるポリアルキレングリコールジアクリレート5〜10質量部、(B)3官能以上のアクリレート化合物90〜95質量部、但し(A)成分と(B)成分は合計で100質量部、及び(C)光重合開始剤1〜10質量部を含むハードコート層用塗液を硬化して形成されることを特徴とする。
CH2=CH-CO-(OR)n-O-CO-CH=CH2 式(1)
(n=3〜9、R=C3H6又はC4H8
【発明の効果】
【0008】
上記発明によれば、(A)ポリアルキレングリコールジアクリレートが特定構造に限定されているとともに、(A)及び(B)成分をそれぞれ5〜10質量部、及び90〜95質量部の比率で含むため、優れた表面硬度と密着性を兼ね備えたハードコートフィルムを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。本実施形態のハードコートフィルムは透明基材の一面にハードコート層を備えている。また、必要に応じてハードコート層上に低屈折率層を設けたり、透明基材の他面に近赤外線吸収性を有する粘着層を積層することもできる。
【0010】
<透明基材>
透明基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂で代表されるポリエステル系樹脂及び、トリアセテートセルロース(TAC)系樹脂等で形成された透明なフィルムである。透明基材の厚さは通常25〜400μm、好ましくは35〜250μmである。なお、透明基材には、各種の添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0011】
<ハードコート層>
ハードコート層は透明基材の直上に積層される層であり、フィルムの表面硬度を向上させる機能を有する。ハードコート層は、(A)ポリアルキレングリコールジアクリレート、(B)3官能以上のアクリレート化合物、及び(C)光重合開始剤を含むハードコート層用塗液を硬化させることにより形成される。また、ハードコート層の厚さは通常0.5〜20μm、好ましくは1〜10μmである。
【0012】
(A)ポリアルキレングリコールジアクリレートは、下記式(1)で示される化合物であり、重合開始剤のもと、塗液を硬化する。また、R=C3H6又はC4H8とすることで、硬化収縮を抑制し、ハードコート層の密着性を高める働きがある。
CH2=CH-CO-(OR)n-O-CO-CH=CH2 式(1)
(n=3〜9、R=C3H6又はC4H8
【0013】
(B)3官能以上のアクリレート化合物を含むハードコート層用塗液を用いることによって、形成されるハードコート層の物理物性(鉛筆硬度、耐擦傷性)を高めることができる。(B)3官能以上のアクリレート化合物を含まないハードコート層用塗液で形成されたハードコート層は、塗膜としての物理物性が弱い。(B)3官能以上のアクリレート化合物は、3官能以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物であり、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)等が挙げられる。
【0014】
(C)光重合開始剤はハードコート層用塗液を硬化させてハードコート層を形成する際の開始剤として用いられる。光重合開始剤としては従来公知のものでよく、例えばα−ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノケトン、α−アミノアセトフェノン、ベンゾイン系化合物およびアシルフォスフィンオキサイド系化合物等の光重合開始剤が挙げられる。中でも、反応性が高いという理由から、α−ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンおよびアシルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましく、α−ヒドロキシアセトフェノン、アシルフォスフィンオキサイド系化合物が特に好ましい。
【0015】
さらに、ハードコート層中には任意の添加剤を添加することができる。例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び表面調整剤等の従来公知の添加剤を使用することができる。紫外線吸収剤はヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましい。帯電防止剤はイオン系導電剤が好ましい。表面調整剤はシリコーン系が好ましい。
【0016】
<組成比>
ハードコート層用塗液は、(A)ポリアルキレングリコールジアクリレートを5〜10質量部、(B)3官能以上のアクリレート化合物を90〜95質量部、但し(A)と(B)の合計は100質量部、及び(C)光重合開始剤を1〜10質量部含むモノマー組成物である。ハードコート層用塗液を硬化して得られるハードコート層において、(A)ポリアルキレングリコールジアクリレートが密着性、(B)3官能以上のアクリレート化合物が表面硬度にそれぞれ影響を与える。優れた表面硬度と密着性を両立するために、(A)と(B)の合計100質量部に対して、(A)が5〜10質量部であることが望ましい。(A)が5質量部より少ない場合は、得られるハードコート層の密着性が低くなり、10質量部より多い場合は、表面硬度が低くなる。
【0017】
<低屈折率層>
低屈折率層は、透明基材及びハードコート層よりも低い屈折率を有する層であり、外部光源から照射された光線の反射を抑える機能層である。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.44であることが好ましい。屈折率が1.20未満の場合には、低屈折率層は十分な塗膜強度を有することが難しくなる。一方、屈折率が1.44を超える場合には、十分な反射防止性能が得られない。低屈折率層の厚みは、kλ/4とすることが光の干渉作用により表面反射が減少し、透過率が向上するため好ましい。ここで、λは光の波長400〜650nm、kは1又は3を表す。このように低屈折率層の厚みをkλ/4とすることで反射防止の効果をより高めることができる。この場合、kが1のときには、反射防止性能(視感度反射率)が向上し、kが3のときには耐擦傷性が向上する。
【0018】
低屈折率層は低屈折率層用塗液を硬化することによって形成さる。当該低屈折率層用塗液は2官能以上のアクリレート化合物を主成分とし、加えて中空シリカ微粒子を含むことが好ましい。2官能のアクリレート化合物の例としては、2官能のアルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化合物が挙げられる。3官能以上のアクリレート化合物としては前述したものが挙げられる。中空シリカ微粒子は、シリカ(二酸化珪素、S)がほぼ球状に形成され、その外殻内に中空部を有する微粒子である。中空シリカ微粒子の平均粒子径は好ましくは10〜100nm、より好ましくは20〜60nmである。中空シリカ微粒子の平均粒子径が10nmより小さい場合、中空シリカ微粒子の製造が難しくなって好ましくない。一方、平均粒子径が100nmより大きい場合、低屈折率層における光の散乱が大きくなり、薄膜においては反射が大きくなり、反射防止機能が低下する。
【0019】
<近赤外線吸収性(NIRA)粘着層>
近赤外線吸収性粘着層は、近赤外線吸収(NIRA)機能と粘着機能を併せ持った機能層であり、変性(メタ)アクリル系重合体、重合性不飽和基を有するカルボン酸成分、光重合開始剤、シラン化合物、及び近赤外線吸収剤を含む粘着剤組成物に紫外線等の活性エネルギー線を照射して硬化することにより形成される。
【0020】
近赤外線吸収性を有する粘着層の厚さは10〜30μmが好ましく、15〜25μmがさらに好ましい。厚さが10μm未満であると、近赤外線吸収性を有する粘着層を介してハードコートフィルムをディスプレイパネルに貼合する際に微小な異物を巻き込んだ場合、その異物を粘着層が十分に取り込むことができずに、貼合後に異物起因の跡が残ってしまうため好ましくない。一方、30μmより厚いとハンドリング性が悪くなるため好ましくない。
【0021】
近赤外線吸収剤は、近赤外領域に吸収を有する色素であるならば、特に限定されない。そのような色素として、例えばポリメチン系、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ジチオール金属錯塩系、ナフトキノン系、アントロキノン系、トリフェニルメタン系、アミニウム系、ジインモニウム系などである。これらの近赤外線遮蔽剤は、必要に応じて二種以上を併用しても良い。この中でも、安定性の観点よりジイモニウム系が好ましい。
【0022】
<形成方法>
透明基材上へハードコート層を形成する方法は従来公知のものでよく、特に限定されない。ハードコート層用塗液を塗布する方法としては、例えば、ラインコーティング法、ウエットコーティング法等があり、生産性あるいはコストの面より、好ましくはウエットコーティング法である。ウエットコーティング法としては公知のものでよく、例えば、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法などがある。ハードコート層用塗液は、塗布した後に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化される。また、透明基材とハードコート層との密着性をさらに向上させるために、必要に応じて透明基材表面に予めコロナ放電等の前処理を施すことができる。
【0023】
低屈折率層及び近赤外線吸収性を有する粘着層を形成する方法も従来公知のものでよく、特に制限されない。これらの層もハードコート層と同様の方法で形成することができる。
【0024】
前記ハードコート層用塗液あるいは低屈折率層用塗液を塗布するに当たり、その塗液濃度を調整するため、希釈溶剤を使用することができる。希釈溶剤として具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、メチルグリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。各実施例及び比較例においてハードコートフィルムを作成し、以下の測定方法でその密着性及び鉛筆硬度を測定している。
【0026】
〔密着性の測定方法〕
JISD0202-1988に基づき碁盤目テープ剥離試験により評価を行なった。セロハンテープ(「CT24」,ニチバン株式会社製)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。判定は100マスの内、剥離しないマス目の数で表し、ハードコート層が剥離しない場合を100/100、完全に剥離する場合を0/100と表記した。
【0027】
〔鉛筆硬度の測定方法〕
安田精機株式会社製の鉛筆引っかき硬度試験機を使用し、JISK5600の規定に基づいてハードコート層の鉛筆硬度を測定した。
【0028】
(実施例1−1)
下記原料を混合してハードコート層用塗液とした。このハードコート層用塗液をロールコーターにて厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(以下PET)上に乾燥膜厚が4μmとなるように塗布し、80℃で60秒乾燥した。その後、120W高圧水銀灯(日本電池株式会社製)により窒素雰囲気下で紫外線を照射(積算光量500mJ/cm2)することによって硬化させハードコートフィルムを作成した。該ハードコートフィルムの密着性及び鉛筆硬度を測定した。測定結果を下記表1に示した。
(A):ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(下記式(1)のR=C4H8、n=9) 5質量部
(B):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA) 95質量部
(C):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、イルガキュア189(I189)) 7.5質量部
メチルイソブチルケトン 100質量部
CH2=CH-CO-(OR)n-O-CO-CH=CH2 式(1)
(n=3〜9、R=C3H6又はC4H8
【0029】
(実施例1−2〜1−18)
表1に示す組成にてハードコート層用塗液を作成し、このハードコート層用塗液をロールコーターにて厚さ100μmのPET上にそれぞれ表1に示すような乾燥膜厚となるように塗布し、実施例1と同様に硬化させて、ハードコートフィルムを作成した。その密着性及び鉛筆硬度の測定結果を表1に示した。
【0030】
(実施例1−19)
下記成分からなるハードコート層用塗液を実施例1−1と同様に硬化させて、ハードコートフィルムを作成した。その密着性及び鉛筆硬度の測定結果を表1に示した。
(A)ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(式(1)のR=C4H、n=9) 5質量部
(B)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 95質量部
(C)1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.5質量部
メチルイソブチルケトン 100質量部
ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体(分子量 15,000、大成ファインケミカル製、4級アンモニウム塩タイプ帯電防止ポリマー 1SX-1055(カチオン系帯電防止剤)) 5質量部
【0031】
(実施例1−20)
下記成分からなるハードコート層用塗液を実施例1−1と同様に硬化させて、ハードコートフィルムを作成した。その密着性及び鉛筆硬度の測定結果を表1に示した。
(A)ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(式(1)のR=C4H、n=9) 5質量部
(B)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 95質量部
(C)1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.5質量部
2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(BASF製、チヌビン479(トリアジン系紫外線吸収剤)) 5質量部
メチルイソブチルケトン 100質量部
【0032】
(実施例1-21)
下記成分からなるハードコート層用塗液を実施例1−1と同様に硬化させて、ハードコートフィルムを作成した。その密着性及び鉛筆硬度の測定結果を表1に示した。
(A)ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(式(1)のR=C4H、n=9) 5質量部
(B)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 95質量部
(C)1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 7.5質量部
メチルイソブチルケトン 100質量部
ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン(ビックケミー製、BYK3570) 5質量部
【0033】
(比較例1−1)
下記成分からなるハードコート層用塗液を実施例1−1と同様に硬化させて、ハードコートフィルムを作成した。その密着性及び鉛筆硬度の測定結果を表1に示した。
(A)ポリエチレングリコールジアクリレート(式(1)のR=C2H4、n=9) 5質量部
(B)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 95質量部
(C)α−ヒドロキシアセトフェノン(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、イルガキュア184(I184)) 7.5質量部
メチルイソブチルケトン 100質量部
【0034】
(比較例1−2〜1−6)
表1に示すような組成にてハードコート層用塗液を作成し、実施例1−1と同様に硬化させて、ハードコートフィルムを作成した。その密着性及び鉛筆硬度の測定結果を表1に示した。
【0035】
表中における略称
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
I189:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
I184:α−ヒドロキシアセトフェノン
I907:α−アミノケトン(チバスペシャルティケミカルズ製、イルガキュア907)
1SX−1055:ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体
チヌビン479:2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン
BYK3570:ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン
【表1】

【0036】
(実施例2)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔日本化薬株式会社製、DPHA、6官能アクリレート〕を100質量部、中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で150質量部、光重合開始剤〔チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、イルガキュア907〕を12.5質量部及びイソプロピルアルコールを4308質量部混合して低屈折率層用塗液を調製した。実施例1−1のハードコートフィルムのハードコート層上に低屈折率層用塗液を、膜厚がkλ/4(k:1、λ:550nm)になるようにグラビアコート法で塗布し、乾燥後、窒素雰囲気下で400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させることにより、ハードコート層上に機能層である低屈折率層を有するハードコートフィルムを作製した。ハードコート層上に低屈折率層を設けた状態での密着性及び鉛筆硬度の測定結果を表2に示した。
【0037】
(実施例3)
<変性(メタ)アクリル系重合体A1の調製>
2Lフラスコにアクリル系共重合体〔根上工業株式会社製の商品名:パラクロンAW4500H、固形分濃度40%/トルエン、ブチルアクリレート単位、エチルアクリレート単位、メチルメタクリレート単位、ヒドロキシブチルアクリレート単位、及びヒドロキシエチルアクリレート単位を含む。重量平均分子量は330,000、ガラス転移温度は−8℃。水酸基含有量はアクリル系共重合体100質量部当たり15mmol(アクリル系共重合体1分子当たり50個)。〕586質量部、酢酸エチル890質量部、反応触媒としてジブチル錫ラウレート0.3質量部を加え、撹拌しながら40℃に加熱した。続いて、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製の商品名:カレンズMOI)1.8質量部を酢酸エチル120質量部に溶解し、前記フラスコ内の温度を40℃に保持しながら滴下した。滴下終了後、反応液の滴定分析によりイソシアネート基の消失を確認するまで40℃で5時間反応を継続することにより変性(メタ)アクリル系重合体A1を得た(重量平均分子量は331,000、ガラス転移温度は−8℃)。
<アクリル樹脂組成物A2の調製>
【0038】
n‐ブチルアクリレート95.0質量部、アクリル酸4.5質量部、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート1・0質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部、酢酸エチル90質量部、トルエン60質量部を混合し、窒素雰囲気下で混合物を65℃に加温して10時間重合反応を行い、アクリル樹脂組成物A2を調製した。
【0039】
<近赤外線吸収性粘着層の形成>
変性(メタ)アクリル系重合体A1を固形分換算で85.0質量部、アクリル酸〔大阪有機化学工業株式会社の商品名:98%アクリル酸〕15.0質量部、光重合開始剤〔チバスペシャルティケミカルズ株式会社の商品名:イルガキュア819〕0.7質量部、3‐イソシアネートプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業株式会社の商品名:KBE‐9007〕1.5質量部、ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸)‐N,N,N’,N’‐テトラキス[p‐ジ(イソプロピルオキシエチル)アミノフェニル]‐p‐フェニレンジアミンのトルエン分散液(固形分濃度5質量%、平均粒子径0.015μm)43.0質量部(固形分換算で2.2質量部)、テトラアザポルフィリン化合物〔山本化成株式会社の商品名:PD‐320〕0.18質量部、及び固形分濃度が27質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)を加え攪拌して、近赤外線吸収性粘着剤組成物を得た。
前記粘着剤組成物をセパレートフィルム〔東洋紡績株式会社の商品名:E7002〕上に乾燥膜厚が15μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した後、65℃で2分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプにより80mJ/cmの紫外線を照射して近赤外線吸収性粘着層を形成した。
【0040】
実施例1−1のハードコートフィルムのハードコート層と反対の面に前記粘着層を貼り合わせ近赤外線吸収性を有する粘着層を有するハードコートフィルムを作製した。ハードコート層の密着性及び鉛筆硬度の測定結果を表2に示した。
【表2】

【0041】
表1に示したように、実施例1−1〜1−21では、密着性が高く、鉛筆硬度も高いハードコートフィルムを得ることができた。一方、比較例1−1のハードコートフィルムは(A)ポリアルキレングリコールジアクリレートのRがCであったため、ハードコート層の密着性が低かった。また、比較例1−1のハードコートフィルムは鉛筆硬度も低く、十分な表面硬度を得られなかった。比較例1−2〜1−5のハードコートフィルムは、(B)3官能以上のアクリレート化合物を用いていないため、鉛筆硬度が低く、十分な表面硬度を得られなかった。比較例1−6のハードコートフィルムは、(A)ポリアルキレングリコールを用いていないため、密着性が低かった。実施例2及び3では、低屈折率層又は近赤外線吸収性を有する粘着層を積層しても優れた密着性及び鉛筆硬度を兼ね備えるハードコートフィルムを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一面にハードコート層を備えるハードコートフィルムであって、前記ハードコート層は
(A)下記式(1)で表されるポリアルキレングリコールジアクリレート5〜10質量部、
(B)3官能以上のアクリレート化合物90〜95質量部、但し(A)成分と(B)成分は合計で100質量部、及び
(C)光重合開始剤1〜10質量部
を含むハードコート層用塗液を硬化して形成されることを特徴とするハードコートフィルム。
CH2=CH-CO-(OR)n-O-CO-CH=CH2 式(1)
(n=3〜9、R=C3H6又はC4H8
【請求項2】
請求項1のハードコートフィルムのハードコート層上に透明基材及びハードコート層より屈折率の低い低屈折率層を備えるハードコートフィルム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のハードコートフィルムのハードコート層と反対の面に近赤外線吸収性を有する粘着層を設ける光学フィルタ。


【公開番号】特開2012−152976(P2012−152976A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12783(P2011−12783)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】