説明

ハードコートフィルム

【課題】両面ハードコートフィルムでありながらも、打ち抜き加工の際にエッジ部分にクラックが発生しにくく、かつ耐指紋性に優れたハードコートフィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルムの一方の面にハードコート層A、他方の面にハードコート層Bを有するハードコートフィルムであって、ハードコート層Aの厚みが2μm以上10μm以下であり、ハードコート層Bの厚みが0.05μm以上2.5μm以下であり、ハードコート層Aの厚みがハードコート層Bの厚みよりも0.5μm以上厚く、ハードコート層Aの表面における水の接触角が78度以上90度以下、かつn−ドデカンの接触角が20度以下であるハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハードコートフィルムに関する。特に、打ち抜き加工に適し、かつ耐指紋性に優れ、とりわけアイコンシート用として好適に用いられるハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルは、透明ないし半透明の入力デバイスをLCD(液晶表示装置)等のディスプレイ上に直接設けることにより、画面を見ながら入力操作することが可能であり、誰にでも簡単に操作ができ、また文字や絵の入力も可能であることから、マン/マシンインターフェースとして多く用いられるようになってきた。
【0003】
タッチパネルは、光学方式、超音波方式、電磁誘導方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがあるが、中〜小型のタッチパネルでは抵抗膜方式が主流となっている。また、これらの方式によって、タッチパネルの表面に用いられる材料は異なるが、多くの場合はプラスチックフィルムに何らかの硬度の高い材料を設けたハードコートフィルムが用いられている。
【0004】
このようなタッチパネルの用途としては、ATMなどの端末やカーナビゲーションシステム、スマートフォン、携帯音楽再生用端末、ゲーム機など多岐にわたっているが、特に最近の薄型化、意匠性の向上、デザインの多種・多彩化に伴い、タッチパネルの表面に使用されるハードコートフィルムは、うら面(ハードコートフィルムにおいてタッチパネル側となる面)に枠やアイコン、ロゴ等の印刷を行い、タッチパネルと一体化させることが多くなって来た。このようにうら面に印刷が施されたハードコートフィルムのことをアイコンシートと呼ぶことか多い。このアイコンシートは、一般的に、片面(おもて面、タッチパネルにおいて外側となる面)にハードコート処理をしたプラスチックフィルムの、ハードコート処理とは反対面(うら面)に意匠性を高めるための蒸着加工や、枠やロゴの印刷を行い、印刷部分以外の蒸着部分をエッチング処理するなどして、この一連の工程により得られた1枚の加工シートから複数枚(10〜30枚程度)のアイコンシートが作られて、最後に必要なサイズに断裁(打ち抜き)加工されてタッチパネルメーカーに供される。
【0005】
ところで、このようなタッチパネルの用途としては、ATMなどの端末やカーナビゲーションシステム、スマートフォン、携帯音楽再生用端末、ゲーム機など多岐にわたっている。タッチパネルへの入力方法としては、これらの用途に応じて、主に人の指で入力する場合とプラスチック製のスタイラスペンで入力する場合とがある。これらのうち、指入力においては、タッチパネル表面に指紋が残りやすいという問題がある。かかる問題を解決すべく、ハードコート層に界面活性剤を用いたり、アルカリ性水溶液で表面処理したりする技術が、特許文献1〜4に開示されている。
【0006】
一方、指入力のタッチパネルは、例えば代表的な用途であるカーナビゲーションシステ
ムのごとく屋外で使用されるものが多く、またその画質は実用レベルであれば良く、低へ
イズやクリア感などといった要求は高くない。そのような場合においては、外光の反射や
映り込み防止のために、ほとんどの場合はアンチグレア(AG)処理ハードコート(HC
)フィルムがタッチパネル表面に設けられている(例えば特許文献5、6)。そして、か
かるAGHCは元来白っぽく見えるために、もともと指紋は見えにくく、そのためこれま
で指紋に関する問題はあまり重要視されていなかったのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−114355号公報
【特許文献2】特開2004−230562号公報
【特許文献3】特開2005−186584号公報
【特許文献4】特開2009−40056号公報
【特許文献5】特開2007−58162号公報
【特許文献6】特開2008−96781号公報
【特許文献7】特開平10−16111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなアイコンシート製造においては、片面ハードコートフィルムのうら面に印刷などの加工がなされるものであるが、近年のさらなる高品質の要求に対しては、各加工時にかかるうら面に傷が付いてしまうと、品質が不十分となり、歩留り低下となってしまう。そこで、うら面にもハードコート層を設けることが考えられるが、本発明者は、そうした場合には、打ち抜き加工の際にエッジ部分にクラックが生じる問題があることを新たに見出した。
【0009】
また、近年、スマートフォンや携帯音楽再生用端末のごとく画像や動画を見ることを目的とした端末においては、ヘイズの低いクリア感の高いタッチパネルが要求されている。加えて、多彩な入力が可能であるとの理由から、これらの用途においても、例えば静電容量方式のタッチパネルが導入され、指入力によるものが主流となってきた。この場合、クリア感の低下を避けるためAGHCフィルムを用いずに、クリアHCフィルムを用いる必要があるが、その場合は、クリアHCフィルム表面を指で触れることになるため、入力時に付着した指紋が非常に目立ってしまうという大きな問題がある。また、付着した指紋が拭き取りにくいという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、両面ハードコートフィルムでありながらも、打ち抜き加工の際にエッジ部分にクラックが発生しにくく、かつ指紋が付着しても目立たず、また指紋の拭き取り性にも優れる(以下、これらをまとめて耐指紋性と呼称する場合がある。)ハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、表裏のハードコート層について、それぞれの厚みおよび厚みの差を特定の数値範囲として、さらにおもて面となるハードコート層の水およびn−ドデカンの接触角を特定の数値範囲とすることによって、打ち抜き加工の際にクラックが生じにくく、かつ耐指紋性に優れることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち本発明は、基材フィルムの一方の面にハードコート層A、他方の面にハードコート層Bを有するハードコートフィルムであって、ハードコート層Aの厚みが2μm以上10μm以下であり、ハードコート層Bの厚みが0.05μm以上2.5μm以下であり、ハードコート層Aの厚みがハードコート層Bの厚みよりも0.5μm以上厚く、ハードコート層Aの表面における水の接触角が78度以上90度以下、かつn−ドデカンの接触角が20度以下であるハードコートフィルムである。
【0013】
また本発明は、基材フィルムとハードコート層Aおよび/またはハードコート層Bとの間にポリエステル樹脂と架橋剤とを構成成分として含有する易接着層を有すること、ハードコート層Bが平均粒径50〜500nmの不活性粒子を、ハードコート層Bの質量を基準として2〜10質量%含有すること、ハードコート層Bの表面における水の接触角が88度以下、かつn−ドデカンの接触角が20度以下であることのうち、少なくともいずれか1つの態様を具備することによって、さらに優れたハードコートフィルムを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、両面ハードコートフィルムでありながらも、打ち抜き加工の際にエッジ部分にクラックが発生しにくく、かつ耐指紋性にも優れるハードコートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<ハードコートフィルム>
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの一方の面にハードコート層A、他方の面にハードコート層Bを有するものである。
【0016】
<ハードコート層A>
本発明におけるハードコート層Aは、本発明のハードコートフィルムをタッチパネル用、とりわけアイコンシート用として用いる際には、最終製品において最表面に設けられる層であるため、硬度は高い方が望ましい。ハードコート層Aの厚みは、硬度が鉛筆硬度でH以上、好ましくは2H以上、さらに好ましくは3H以上を確保できる程度の厚みであれば特に規制されるものではないが、下限は2μm以上である。かかる厚みは、好ましくは3.5μm以上であり、凝集破壊であるキズだけでなく、塑性変形の凹みも目立ち難くなる。このような観点から、ハードコート層Aの厚みは、更に好ましくは4.5μm以上である。他方、上限は10μm以下であり、好ましくは8.5μm以下、更に好ましくは7μm以下である。ハードコート層Aの厚みが厚すぎると、ハードコート層Aが硬化する時や、硬化後に蒸着や印刷などの加工を行なう時の熱でハードコート層Aが収縮し、ハードコートフィルムがカールしやすくなる傾向にあり、後に貼り合せる際に問題が生じ易くなる。また、ハードコート層Aの厚みを上記数値範囲とすることによって、打ち抜き加工時のエッジ部分のクラック発生をより抑制できる傾向にある。
【0017】
(ハードコート層Aの接触角)
本発明におけるハードコート層Aは、その表面における水の接触角が78度以上90度以下、かつn−ドデカンの接触角が20度以下である。水およびn−ドデカンの接触角が上記数値範囲にあると、耐指紋性に優れる。すなわち指紋中の油分(本発明ではn−ドデカンにより代替評価としている。)がより濡れ広がり易くなり、かかる指紋中の油分が光を拡散して白く目立ってしまうのをより抑制することができ、結果として指紋をより目立たなくすることができる。また同時に、付着した指紋の拭き取り性がより良好になる。水の接触角が78度よりも小さい場合は、水分/油分ともに濡れ広がり易くなる傾向にあり、拭き取り性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、水の接触角が90度よりも大きい場合は、水分(指紋中や拭取り時の洗浄液や水、呼気中の水分)が油分より下側に入り込み難くなるためか、付着した指紋の拭き取り性の向上効果が著しく低下する傾向にある。また、n−ドデカンの接触角が20度を超える場合は、指紋成分中の油分の濡れ広がりが不十分となる傾向にあり、かかる油分に当たった光が拡散してしまい、指紋自体が白く目立ち易くなる傾向にある。このような観点から、ハードコート層A表面における接触角の態様としては、水の接触角が78度以上86度以下、かつn−ドデカンの接触角が15度以下であることがより好ましく、水の接触角が80度以上85度以下、かつn−ドデカンの接触角が10度以下であることがさらに好ましい。かかる接触角の数値範囲を達成するためには、例えば後述するような放射線硬化性樹脂Aを用いる方法を例示することができ、本発明においては好ましい。
【0018】
(放射線硬化性樹脂A)
本発明におけるハードコート層Aは、本発明の規定する水の接触角およびn−ドデカンの接触角を満たすものであれば、それを構成するための原料は特に限定されず、例えば、主に前述の放射線硬化型樹脂Aからなるものであってもよい。ここで「主に」とは、ハードコート層の全質量中に80質量%以上、好ましくは90質量%以上であることを示す。
特に、本発明においては、後述する放射線硬化性樹脂Aを用いることが、本発明が規定する接触角の態様を満足するための好ましい方法として例示することができる。
【0019】
かかる放射線硬化性樹脂Aとしては、後述する放射線硬化性樹脂Bにおける多官能(メタ)アクリレート化合物からなるアクリルポリマーの主鎖もしくは側鎖に(ポリ)アルキレングリコール成分が共重合された構造を形成しうる(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。かかる(ポリ)アルキレングリコール成分は、繰り返し構造を有さずにモノ(アルキレングリコール)であってもよいし、繰り返し構造を有してオリゴ(アルキレングリコール)あるいはポリ(アルキレングリコール)であってもよい。(ポリ)アルキレングリコール成分の具体例としては、(ポリ)エチレングリコールや(ポリ)プロピレングリコール等を好ましく例示することができ、中でも(ポリ)エチレングリコールが好ましい。(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化型樹脂の好ましい態様としては、(ポリ)アルキレングリコール成分の両末端に(メタ)アクリロイル基を官能基として有する化合物を含む態様が挙げられる。また、硬化後に多官能(メタ)アクリレート化合物(オリゴマーまたはポリマー)に(ポリ)アルキレングリコール成分がランダム共重合、または特に好ましくはブロック共重合した構造を形成しうるものも好ましく挙げられる。
【0020】
(ポリ)アルキレングリコール成分は、数平均分子量Mnが、好ましくは46〜1000000、さらに好ましくは60〜500000である。数平均分子量Mnが上記数値範囲にあると、ハードコート層の表面における水の接触角とn−ドデカンの接触角とを、本発明が規定する数値範囲とすることが容易となる。数平均分子量Mnが高すぎる場合は、水の接触角が高くなりすぎる傾向にある。また、塗剤の粘度が高くなりすぎるため、塗工が困難となる傾向にある。また極性の低い溶剤に溶けにくくなる傾向にあるため、塗剤としての扱いが困難となる傾向にある。
【0021】
(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量は、多官能(メタ)アクリレート化合物からなるアクリルポリマーの質量に対して、好ましくは1質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上4質量%以下、特に好ましくは2質量%以上3質量%以下である。(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量が上記数値範囲にあると、ハードコート層Aの表面における水の接触角とn−ドデカンの接触角とを、本発明が規定する数値範囲とすることが容易となる。(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量を増やすと、水の接触角は小さくなる傾向にあるが、n−ドデカンの接触角にはあまり大きな影響を及ぼさない。そのため、(ポリ)アルキレングリコール成分を用いる方法によると、通常の界面活性剤を添加するのみでは得られない水の接触角の範囲とn−ドデカンの接触角の範囲の組み合わせとすることができる。
【0022】
以上のような放射線硬化性樹脂Aの数平均分子量Mnは、好ましくは100〜1000000、さらに好ましくは1000〜500000である。数平均分子量Mnが高すぎる場合は、粘度が高すぎるため、塗工が困難となる傾向にある。
【0023】
上記のような態様を有する(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化型樹脂は、市販品を用いることもでき、かかる市販品としては、例えばKZ6404(JSR株式会社製)、ルシフラールG−004(日本ペイント工業製)、ビームセット1460(荒川化学工業製)等があげられる。
【0024】
本発明者は、本発明のような接触角の調整は、濡れ性を調整し得る界面活性剤のような独立した添加剤の単純な添加によっては達成できないことを見出した。すなわち界面活性剤を添加した場合は、塗工・硬化後のハードコート層表面には界面活性剤の親水基と疎水基とが混在してしまうため、水に対する濡れ性と油(n−ドデカン)に対する濡れ性とが同時に悪くなってしまう。一方で界面活性剤を添加していない一般的なアクリル系のハードコート層は、n−ドデカンの接触角は低くなる傾向にあるが、水の接触角が低くなりすぎる傾向にある。いずれにしても通常のハードコート層やそれに界面活性剤を添加したものでは、本発明が好ましく規定する接触角の範囲を実現できず、すなわち優れた耐指紋性が得られないことが確認された。一方、上述したような(ポリ)アルキレングリコール成分含有放射線硬化型樹脂を用いる方法においては、(ポリ)アルキレングリコール成分の共重合量を増やすと、水の接触角は低くなる傾向にあるが、n−ドデカンの接触角にはあまり影響を及ぼさない。そのため、上記のような水接触角およびn−ドデカン接触角を同時に達成することが可能となる。
【0025】
<ハードコート層B>
本発明におけるハードコート層Bは、本発明のハードコートフィルムをタッチパネル用、とりわけアイコンシート用として用いる際には、この層の表面に蒸着や印刷などの加工が施される層である。本発明のハードコートフィルムは、後に打ち抜き加工にて断裁されるが、ハードコート層Bの厚みが厚すぎると、かかる打ち抜き加工時に断裁部分近辺のハードコート層にクラックが発生し意匠性が悪くなる。このため、ハードコート層Bの厚みの上限は、2.5μm以下であり、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1.5μm以下である。他方、下限は、0.05μm以上であり、薄すぎると耐傷性に劣るものとなり、歩留低下を引き起こす。このような観点から、ハードコート層Bの厚みの下限は、好ましくは0.1μm以上である。
【0026】
なお、ハードコート層Bは、工程における耐傷付き性を付与する目的で設けられるものであり、このような観点からは、硬度は、好ましくはB以上であればよく、より好ましくはHB以上であればよく、さらに好ましくはF以上であればよい。他方、打ち抜き加工性の向上効果を高くしたり、蒸着性や印刷性を高くしたり、ハードコート層Bと蒸着層や印刷層との密着性を高くしたりする観点においては、H以下が好ましい。これらのバランスに優れるという観点から、ハードコート層Bの硬度は、HB〜Hが好ましい。
【0027】
本発明においては、ハードコート層Aの厚みおよびハードコート層Bの厚みがそれぞれ上記数値範囲にあると同時に、ハードコート層Aの厚みがハードコート層Bの厚みよりも厚く、その差が0.5μm以上である。厚みの差を上記数値範囲とすることによって、打ち抜き加工時のエッジ部分のクラック発生を抑制することができる。厚みの差が小さすぎる場合は、クラックが発生し易くなる傾向にある。このような観点から、厚みの差は、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、特に好ましくは4μm以上である。他方、厚みの差が大きいと、クラックが発生し難くなる傾向にあり好ましい傾向にあるが、厚みの差が大きすぎる場合は、ハードコートフィルムがカールし易い傾向にあるため、9μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。
【0028】
(放射線硬化性樹脂B)
本発明におけるハードコート層Bは、主たる成分として硬化性樹脂よりなる。かかる硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や放射線硬化性樹脂などがある。本発明においては、放射線硬化性樹脂が好ましく、なかでも紫外線硬化性樹脂が好ましい。本発明におけるハードコート層Bは、主たる成分として以下の放射線硬化樹脂Bよりなることが好ましい。なお、ここで「主たる」とは、ハードコート層の質量を基準として、51質量%以上、好ましくは55質量%以上を意味する。
【0029】
本発明における放射線硬化性樹脂Bは、放射線により硬化させることができるモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。本発明における放射線硬化性樹脂Bとしては、硬化後の架橋密度を高くすることができ、表面硬度の向上効果を高くすることができ、かつ透明性の向上効果を高くすることができるという観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー、あるいは多官能(メタ)アクリレートポリマー等の多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0030】
かかる多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であるが、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有することが好ましく、そのような態様とすることによって、放射線硬化性樹脂Aの架橋反応が進行しやすくなり、表面硬度の向上効果をより高くすることができる。また、本発明における多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に(メタ)アクリロイル基以外の他の重合性官能基を含有してもよい。
【0031】
分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えばネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート)、メラミン(メタ)アクリレート等、およびこれらのうち少なくとも1種からなる2〜20量体程度のオリゴマーや、これらのうち少なくとも1種からなるポリマーを挙げることができる。このような多官能(メタ)アクリレート化合物は、一種類を単独で用いても良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
【0032】
多官能(メタ)アクリルオリゴマー/ポリマーの繰り返し単位数は、特には制限されないが、例えば数平均分子量で150〜1000000、好ましくは1000〜500000であることが好ましく、塗布外観の向上効果を高くすることができる。数平均分子量が150に満たない場合や、1000000を超える場合は、粘度が低すぎたり高すぎたりする傾向にあり、塗布外観の向上効果が低くなる傾向にある。
【0033】
以上のような、分子内に少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、例えばアロニックスM−400、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、TO−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、KAYARD D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬製)、ニカラックMX−302(三和ケミカル社製)等の市販品として入手することができる。
【0034】
(ハードコート層Bの接触角)
また、本発明におけるハードコート層Bは、その表面における水の接触角が88度以下、かつn−ドデカンの接触角が20度以下であることが好ましい。水およびn−ドデカンの接触角が上記数値範囲にあると、蒸着や印刷との接着性に優れる。このような観点から、ハードコート層B表面における接触角の態様としては、水の接触角が86度以下、かつn−ドデカンの接触角が15度以下であることがより好ましく、水の接触角が85度以下、かつn−ドデカンの接触角が10度以下であることがさらに好ましい。かかる接触角の数値範囲を達成するためには、例えば前述の放射線硬化性樹脂Aを用いる方法を例示することができ、本発明においては好ましい。この場合、放射線硬化樹脂Aは、ハードコート層Bの全質量中に80質量%以上、好ましくは90質量%以上とすればよい。
【0035】
ハードコート層B表面における接触角の調整もまた、ハードコート層A表面の接触角の調整と同様に、濡れ性を調整し得る界面活性剤のような独立した添加剤の単純な添加によっては達成できない。よって通常のハードコート層やそれに界面活性剤を添加したものでは、本発明が好ましく規定するハードコート層B表面の接触角の範囲を実現できず、すなわち優れた接着性が得られないこととなる。
【0036】
(光重合開始剤)
本発明においては、より硬度に優れたハードコート層Aおよび/またはB(以下、ハードコート層Aおよび/またはBを指す場合、これらをまとめて単にハードコート層と呼称する場合がある。)を形成するために、ハードコート層に光重合開始剤を添加するのが好ましい。光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フロオレノン、アントラキノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等を挙げることができる。かかる光重合開始剤の添加量は、硬化性樹脂100質量%を基準として、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。添加量を上記数値範囲とすることによって、ハードコート層の表面硬度の向上効果をより高くすることができる。添加量が多すぎる場合は、添加した光重合開始剤が可塑剤として働く傾向にあり、ハードコート層の強度が低くなってしまう恐れがある。
【0037】
(不活性粒子)
本発明におけるハードコート層は、不活性粒子を含有することができる。
かかる不活性粒子は、有機粒子であってもよいし、無機粒子であってもよい。有機粒子としては、例えばポリスチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、スチレン−アクリル樹脂粒子、ジビニルベンゼン−アクリル樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ポリイミド樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等の高分子樹脂粒子が挙げられる。中でも、透明性に優れるという観点から、アクリル樹脂粒子が好ましい。また、無機粒子としては、(1)二酸化ケイ素(水和物、ケイ砂、石英等を含む);(2)各種結晶形態のアルミナ;(3)SiO成分を30質量%以上含有するケイ酸塩(例えば非晶質もしくは結晶質の粘土鉱物、アルミノシリケート(焼成物や水和物を含む)、温石綿、ジルコン、フライアッシュ等);(4)Mg、Zn、Zr、およびTiの酸化物;(5)Ca、およびBaの硫酸塩;(6)Li、Ba、およびCaのリン酸塩(1水素塩や2水素塩を含む);(7)Li、Na、およびKの安息香酸塩;(8)Ca、Ba、Zn、およびMnのテレフタル酸塩;(9)Mg、Ca、Ba、Zn、Cd、Pb、Sr、Mn、Fe、Co、およびNiのチタン酸塩;(10)Ba、およびPbのクロム酸塩;(11)炭素(例えばカーボンブラック、グラファイト等);(12)ガラス(例えばガラス粉、ガラスビーズ等);(13)Ca、およびMgの炭酸塩;(14)ホタル石;(15)スピネル型酸化物等が挙げられる。このうち、透明性に優れるという観点から、二酸化ケイ素が好ましい。
【0038】
また不活性粒子の平均粒径は、50〜500nmであることが好ましい。平均粒径が上記数値範囲にあると、耐ブロッキング性に優れる。このような観点から、平均粒径は、さらに好ましくは70〜350nm、特に好ましくは80〜280nmである。
また、不活性粒子の含有量は、ハードコート層の質量を基準として2〜10質量%であることが好ましい。含有量が上記数値範囲にあると、耐ブロッキング性に優れる。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜6質量%である。
【0039】
本発明においては、このような不活性粒子を、ハードコート層Bが含有する態様が好ましく、良好な外観を維持したまま、本発明のハードコートフィルムを巻き取った際に、ブロッキングを生じにくくすることができる。そうすることによって、保護フィルム等を用いなくとも巻き取ることが可能となる。この場合、ハードコート層Aは、実質的に不活性粒子を含有しないことが、透明性の観点から好ましい。
【0040】
(その他添加できる成分)
本発明におけるハードコート層は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記不活性粒子以外の無機微粒子や有機微粒子、光増感剤、レベリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料等を含有することができる。
【0041】
<ハードコート層の形成方法>
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層を形成するための塗液(以下、ハードコート(HC)剤と呼称する場合がある。)を、後述する基材フィルムのハードコート層を形成したい側の表面に塗工し、加熱乾燥し、硬化することにより得ることができる。
【0042】
本発明におけるHC剤は、溶媒に、硬化性樹脂、および任意に添加してもよい光重合開始剤、不活性粒子、その他添加できる成分を添加し、混合した溶液である。各成分の添加にあたっては、粉体等の固体として添加してもよいし、固体を適当な溶媒を用いて溶液あるいは分散分単体の態様としたものを添加してもよい。HC剤に用いられる溶媒は、特に限定はされないが、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、セカンダリーブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸ブチル、酢酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類等を用いることができ、HC剤の分散性が良好となり、ハードコート層の外観が良好となる。中でも、溶解性が良好であるという観点から、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが特に好ましい。HC剤の固形分濃度としては、1〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、このような態様とすることによって、塗り斑等の欠点を低減することができる。
【0043】
HC剤を塗布する方法としては、それ自体公知の方法を採用できる。例えばリップダイレクト法、コンマコーター法、スリットリバース法、ダイコーター法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、バーコーター法等を好ましく挙げることができる。これらの塗布方法によって、基材フィルム上にHC剤を塗布し、ハードコート(HC)塗膜を形成し、得られたHC塗膜を加熱乾燥する。加熱乾燥の条件としては、50〜150℃で10〜180秒間加熱することが好ましく、50〜120℃で20〜150秒間加熱することがさらに好ましく、50〜80℃で30〜120秒間加熱することが特に好ましい。加熱乾燥後、紫外線照射または電子線照射によりHC塗膜を硬化する。紫外線照射の場合、その照射量は、好ましくは10〜2000mJ/cm、さらに好ましくは50〜1500mJ/cm、特に好ましくは100〜1000mJ/cmである。
【0044】
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの両面にハードコート層を有するものであるが、それぞれのハードコート層を順次設けてもよいし、両面にHC剤を塗工して同時にハードコート層を設けてもよい。
【0045】
<基材フィルム>
本発明における基材フィルムは、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレントリアセチルセルロース、アクリル等からなるシートあるいはフィルムを挙げることができる。中でも、透明性等の光学特性、機械特性、耐熱性、価格のバランスが良いという観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなるフィルムが好ましい。
【0046】
基材フィルムの厚みは特には限定されないが、タッチパネルに適した剛性がありかつハンドリング性が良好であるという観点から、好ましくは25μm以上300μm以下、さらに好ましくは40μm以上200μm以下、特に好ましくは50μm以上150μm以下である。
【0047】
<易接着層>
本発明では、基材フィルムとハードコート層Aおよび/またはハードコート層Bとの間に、易接着層を有することが好ましい。かかる易接着層は、ポリエステル樹脂と架橋剤とを構成成分として含有する。かかる易接着層により、基材フィルムとハードコート層との接着性をより向上することができる。また、易接着層を基材フィルム上に有することにより、基材フィルムの易滑性、耐傷性、耐ブロッキング性をより向上することができる。
【0048】
以下、易接着層を構成する各構成成分について説明する。
(ポリエステル樹脂)
易接着層に用いられるポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸酸成分とジオール成分から得られるポリエステルを用いることができる。多価塩基成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を例示することができる。
【0049】
かかるポリエステル樹脂としては、2種以上のジカルボン酸成分を用いた共重合ポリエステルを用いることが好ましい。ポリエステル樹脂には、若干量であればマレイン酸、イタコン酸等の不飽和多塩基酸成分が、或いはp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸成分が含まれていてもよい。
【0050】
ポリエステル樹脂のジオール成分としては、エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン等や、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを例示することができる。
【0051】
ポリエステル樹脂は、ガラス転移点温度が、好ましくは40〜100℃である。ガラス転移点温度が40℃未満であるとフィルム同士でブロッキングが発生しやすくなる傾向にあり、100℃を超えると易接着層が硬くて脆くなる傾向にあり、耐傷性が悪化する傾向にあり好ましくない。ガラス転移点温度は、さらに好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、より優れた接着性や耐傷性を得ることができる。
【0052】
ポリエステル樹脂の固有粘度は、0.4以上0.7未満であることが好ましい。固有粘度が0.4未満であるとポリエステル樹脂自体からの低分子量物の発生が起こりやすくなる傾向にあり、基材の透明性を悪化させ易くなる傾向にあり、好ましくない。固有粘度は、好ましくは0.5以上0.7未満である。この範囲であれば、ポリエステル樹脂自体からの低分子量物の発生をより高度に抑制でき、かつポリエステル樹脂の凝集力がより高くなる故に、より優れた接着性や耐傷性を得ることができる。
また、ポリエステル樹脂は水に可溶性または分散性のものが好ましいが、多少の有機溶剤を含有する水に可溶なものも用いることができる。
【0053】
ポリエステル樹脂は例えば次の方法で製造することができる。ジカルボン酸成分とジオール成分をエステル交換反応器に仕込み、触媒を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃に制御して生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行なう。次いで、温度を徐々に255℃まで上昇させ、系内を減圧下にして重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得ることができる。重縮合時に分子量が上昇してくると溶融粘度が高くなり、系内の攪拌が難しくなる。易接着層に使用されるポリエステル樹脂はホモのポリエチレンテレフタレートと比較すると分子量が低い割に溶融粘度が高くなり、系内の攪拌が非常に難しく、攪拌設備のモーターのトルクを上げること、羽根の形状を工夫すること、重合時間を延ばすこと等で固有粘度を上げることができる。ポリエステル樹脂の、易接着層100質量%中での含有割合は、好ましくは50〜95質量%、さらに好ましくは60〜90質量%である。
【0054】
(架橋剤)
易接着層に用いられる架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤およびイソシアネート系架橋剤が好ましい。これらは1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0055】
エポキシ系架橋剤としては、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等が挙げられる。ここで、ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0056】
オキサゾリン系架橋剤としては、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましい。かかる重合体は、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適であり、これをモノマー成分として含有する重合体、すなわちオキサゾリン基を含有するアクリル樹脂が、本発明においては特に接着性を高くすることができるため好ましい。かかる重合体においては、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンを1〜10(mmol/g,solid)含有することが好ましい。他のモノマーとしては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等のア(メタ)クリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0057】
メラミン系架橋剤としては、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物及びそれらの混合物が好ましい。メチロールメラミン誘導体としては、例えば、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。
【0058】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、1,6−ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4、4´−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3´−ビトリレン−4,4´ジイソシアネート、3,3´ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0059】
易接着層中の架橋剤の含有割合は、易接着層100質量%中に好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは1〜20質量%、特に好ましくは3〜10質量%である。含有割合が0.1質量%より少ないと、易接着層の凝集力を高める効果が発現しにくくなる傾向にあり、接着性が不足する傾向にあり好ましくない。他方、30質量%より多いと、易接着層が硬くなりすぎる傾向にあり、応力緩和が少なくなる傾向にあり、接着性向上の効果が発現しにくくなったり、易接着層を有するフィルムを回収使用した場合に架橋体による異物が発生しやすくなる傾向にあり好ましくない。
易接着層の架橋剤としては、上記のうちオキサゾリン系架橋剤が、取り扱いやすく、塗布液のポットライフが長いことから好ましい。
【0060】
(微粒子)
本発明における易接着層は、基材フィルムの滑性、耐傷性をより向上させるという観点から、微粒子を含有することが好ましい。かかる微粒子は、平均粒子径が20〜200nm、好ましくは40〜120nmである。200nmより大きいと微粒子の落脱が発生しやすくなり、20nmよりも小さいと十分な滑性、耐傷性が得られない場合があり好ましくない。微粒子は通常、易接着層の組成物中に含有される。
【0061】
かかる微粒子としては例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子;アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の有機微粒子を用いることができる。これらは1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0062】
易接着層中における微粒子の含有量は、易接着層100質量%中に0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。含有量が0.1質量%未満であると十分な滑性、耐傷性が得られにくくなる傾向にあり、10質量%を超えると塗膜の凝集力が低くなる傾向にあり接着性が悪化する傾向にあり好ましくない。
【0063】
(脂肪族ワックス)
易接着層には、基材フィルムの滑性をより向上するという観点から、脂肪族ワックスを含有させることが好ましい。
脂肪族ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、パームワックス、ロジン変性ワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス;フィッシャートロプッシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックスを挙げることができる。就中、ハードコートや粘着剤等に対する易接着性と滑性が良好なことから、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスが特に好ましい。これらは環境負荷の低減が可能であることおよび取扱い易さから水分散体として用いることが好ましい。
【0064】
これらの脂肪族ワックスの、易接着層100質量%中の含有量は、好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは2〜5質量%である。含有量が0.5質量%未満ではフィルム表面の滑性が十分には得られない傾向にあり好ましくない。他方、含有量が30質量%を超えると、基材フィルムとの密着性が不足する傾向にあり、またハードコート層に対する接着性が不足する傾向にあり好ましくない。
【0065】
<易接着層の形成方法>
本発明において上記各構成成分は、易接着層を形成するための塗液(水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液を含む。以下、単に塗液と呼称する場合がある。)の形態で使用されることが好ましい。かかる塗液には、必要に応じて、前記各構成成分以外の他の樹脂、例えば帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、架橋剤を添加することができる。
【0066】
本発明に用いる塗液の固形分濃度は、通常20質量%以下が好ましいが、特に1〜10質量%であることが好ましい。この割合が1質量%未満であると、基材フィルムへの塗れ性が不足することがあり、20質量%を超えると塗液の安定性や易接着層の外観が悪化することがあり好ましくない。
【0067】
塗液の塗布は、任意の段階で実施することができるが、基材フィルムの製造過程で実施する、いわゆるインラインコーティングが好ましく、更には配向結晶化が完了する前のフィルムに塗布するのが好ましい。ここで、結晶配向が完了する前のフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に延伸した一軸延伸フィルム、更には縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムに、塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0068】
塗液を基材フィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理として基材フィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは塗液に界面活性剤を添加することが好ましい。かかる界面活性剤は、フィルムへの塗液の濡れを促進する機能や塗液の安定性を向上させるものであり、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤の添加量は、塗液中に、0.01〜2質量%含まれていることが好ましい。
【0069】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組合せて用いることができる。なお、塗膜は必要に応じフィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0070】
易接着層の厚さは、好ましくは0.01〜0.3μm、より好ましくは0.02〜0.25μm、さらに好ましくは0.05〜0.1μmであり、すなわち塗液の塗布量は、易接着層の厚さが上記数値範囲となるような量であることが好ましい。易接着層の厚さが薄過ぎると、接着性に劣る傾向にあり、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘイズ値が高くなったりする傾向にある。
【0071】
<ハードコートフィルムの特性>
本発明のハードコートフィルムのヘイズは、タッチパネル等の光学用途として用いた際にLCDの視認性に優れるという観点から、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。かかるヘイズは、基材フィルムのヘイズを低くしたり、易接着層における微粒子、ハードコート層の成分や添加する不活性粒子の態様を適宜調整することにより達成することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。
【0073】
(1)ヘイズ
ハードコートフィルムのヘイズ(Hz)は、JIS K7150に準拠して、スガ試験機(株)製のヘイズメーターHCM−2Bにて測定を行った。測定光は、ハードコート層A側から入射した。測定は、任意の5箇所について実施し、それらの平均値をヘイズ(Hz)(単位:%)とした。
【0074】
(2)ハードコート層の厚み
サンプルフィルムを鋭利な剃刀にてカットし、得られた断面を光学顕微鏡によって観察することでハードコート層の厚みを測定した。測定は、ハードコート層Aおよびハードコート層Bのそれぞれについて、任意の10箇所について実施し、それぞれの平均値をハードコート層の厚み(単位;μm)とした。
【0075】
(3)鉛筆硬度
JIS K5600に準拠し実施した。(荷重:750g)
評価は、ハードコートフィルムのハードコート層表面において実施した。
【0076】
(4)打ち抜き性(断裁性)
ハードコートフィルムの打ち抜き性は、株式会社山越工作所製の手動打抜き器(PAT.NO.1835841)を用いて、サンプルフィルムから縦50mm×横40mmのサイズに100枚打ち抜き、打ち抜いたハードコートフィルムの四辺を目視観察してクラックの有無を確認した。クラックの入った枚数により下記の通り判定した。
◎:0枚
○:1〜2枚
△:3〜4枚
×:5枚以上
なお打ち抜きは、ハードコート層Aが上刃側となるようにして行なった。
【0077】
(5)接触角
(5−1)水の接触角
ハードコート層表面に5mmの高さから0.2mLの蒸留水をシリンジにてゆっくりと滴下し、30秒間放置後、その接触角(ハードコート層表面と液滴の接線が成す角)をCCDカメラで観察して測定した。同様の操作を5回繰り返し、平均値を用いた。
(5−2)n−ドデカンの接触角
ハードコート層表面に5mmの高さから0.2mLのn−ドデカンをシリンジにてゆっくりと滴下し、15秒間放置後、その接触角(ハードコート層表面と液滴の接線が成す角)をCCDカメラで観察して測定した。同様の操作を5回繰り返し、平均値を用いた。なお、接触角が5度以下の領域においては、接触角の数値を正確に求めることができないため、接触角が5度以下であるという結果を以って、測定値とした。
【0078】
(6)接着性評価
日本電子(株)製真空蒸着装置(型番:JEE−4X)を用いてハードコート層Bの表面にアルミを蒸着し(厚みはおよそ20〜30nmとした。)、ハードコート層Aの表面をガラス板に両面テープで固定した。次いで、ハードコート層Bのアルミ蒸着をした表面にセロテープ(登録商標)を貼り合せ、1分後に垂直方向に素早く剥離する。その時に、ハードコート層B表面にアルミが残っている程度を下記の指標で判定。
◎ :アルミ蒸着層の剥がれ無し。
○ :アルミ蒸着層が少し剥がれる程度。(目安:1〜5%)
× :部分的に剥がれる。(目安:5〜50%)
××:セロテープ(登録商標)を貼った部分が剥がれる。(目安:50〜100%)
【0079】
(7)(ポリ)アルキレングリコール成分の含有量の測定方法
放射線硬化型樹脂を分取GPCによって各含有成分に分け、それぞれの成分につき熱分解GC−MSを行なうことで構成する構造を同定した。その後H−NMRのピーク積分値から各成分の定量を行い、(ポリ)アルキレングリコール成分の含有量を同定した。
[分取GPC条件]
カラム:JAIGEL−2H×2本 600×22mmI.D.(日本分析工業製)
移動相溶媒:クロロホルム3.5ml/min
[熱分解GC−MS条件]
熱分解温度:600℃単純熱分解およびオンラインメチル化熱分解
メチル化剤:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)
カラム:ZB−1,長さ30m×内径0.32mm,膜厚0.5μm
GC温度:40℃(0min),15℃/min,322℃(10min)
H−NMRによる定量]
計算式:含有量=分子量×(積分比/H数),合計が100になるように規格化。
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、GPCの面積比が重量比と一致すると仮定し、H−NMRのアクリル基の積分値(1000)をその比率に割り振った値とした。
【0080】
(8)耐指紋性評価
(8−1)指紋の見え方
ハードコートフィルムを、裏面を黒く塗ったガラス板上に置き、指をハードコートフィルムの端面に押し付けることで、指紋の半分をフィルムに半分をガラスに同時に付着させた。その指紋の正面からの見え方を以下の基準に基づいて判断した
○ :ハードコート上の指紋がほとんど見えない
△ :ハードコート上の指紋とガラス上の指紋が同程度に目立つ
× :ハードコート上の指紋の方がガラス上の指紋よりも目立つ
(8−2)指紋の拭き取り性
ハードコートフィルム表面に指を押し付けて指紋を付着させた後、ティッシュペーパーを用いて5往復の拭取りを実施した後の指紋の見え方について下記の基準で判断した
○ :拭取り後、指紋が見えない
△ :指紋の拭取り後が残って見える
× :指紋成分が広がるだけでほとんど拭取れない
【0081】
(9)ガラス転移点温度(Tg)
樹脂サンプルの場合は約10mg、フィルムサンプル(基材フィルム)の場合は約20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差走査熱量計(DSC)(DuPont Instrument910 DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で290℃まで昇温させ、290℃で3分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度DSCに装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させて、ガラス転移点温度Tg(単位:℃)を測定した。
【0082】
[実施例1]
基材フィルムとして帝人デュポンフィルム社製ポリエステルフィルム(タイプ:O4L86W、厚み188μm、ポリエステル樹脂/架橋剤/微粒子/脂肪族ワックス=90/5/2/3(固形分の質量%)を構成成分として含有する厚み75nmの易接着層を両面に有するポリエステルフィルム)の片面(かかる面をおもて面とする。)に、以下のHC剤を塗工した。
HC剤:放射線硬化型樹脂Aとして、ビームセット1460(商品名、荒川化学工業(株)製。主としてペンタエリスリトールトリアクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレート(質量比:83/17)からなるアクリルポリマーに、(ポリ)アルキレングリコール成分として、上記アクリルポリマーの質量に対して2.9質量%の繰り返しエチレングリコール単位(分子量2,000〜6,000のポリエチレングリコール)が共重合された樹脂と、光重合開始剤とを含有する。メチルエチルケトン(MEK)/キシレン=9/1(質量比)混合溶液、固形分濃度80質量%。)100質量部を、t−ブタノール135質量部で希釈することにより、固形分濃度34質量%の塗液を得た。(ポリ)アルキレングリコール成分については、H−NMR、IR、GC−MS等の分析から共重合されていることを確認した。
塗工は、リバースグラビア塗工方式で、乾燥後の塗布厚みが6μmになるように行い、70℃×2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射しハードコート層Aを形成した。
【0083】
次に、基材フィルムにおいてハードコート層Aを形成した面と反対の面に、ハードコート層BのHC剤として、放射線硬化性樹脂Bとして荒川化学工業社製のハードコート塗料(商品名ビームセット1460)を用いて、それに平均粒径100nmのシリカ粒子(商品名MEK−ST−ZL)を、ハードコート層Bの質量に対して2質量%となるように添加したものを、リバースグラビア塗工方式で、乾燥後の塗布厚みが2.0μmになるように塗工し、70℃×2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射しハードコート層Bを形成した。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性に優れ、保護フィルムを貼り合わせずに巻き取ることができた。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
ハードコート層Aを形成するためのHC剤として、中国塗料社製フォルシードNo.423C(固形分50%)をそのまま用いた以外は実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性に優れ、保護フィルムを貼り合わせずに巻き取ることができた。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0085】
[実施例3]
ハードコート層Bの形成において、酸素濃度1000ppm以下の窒素パージ雰囲気下で紫外線照射し、乾燥後のハードコート層Bの厚みを1.0μmとする以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性に優れ、保護フィルムを貼り合わせずに巻き取ることができた。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0086】
[実施例4]
ハードコート層Bにおいて、シリカ粒子を添加しない以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性が低く、巻き取る前に保護フィルム(サンエー化研製、PAC−3−60)をニップロールで貼り合せた後に巻き取る必要があった。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0087】
[実施例5]
ハードコート層Bを形成するためのHC剤において、放射線硬化性樹脂Bとしてアイカ工業社製のアイカアイトロンZ−770UHを用い、HC剤の固形分濃度が同様となるように希釈溶媒の量を調整した以外は、実施例4と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性が低く、巻き取る前に保護フィルム(サンエー化研製、PAC−3−60)をニップロールで貼り合せた後に巻き取る必要があった。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0088】
[実施例6]
ハードコート層Bの形成において、酸素濃度1000ppm以下の窒素パージ雰囲気下で紫外線照射し、乾燥後のハードコート層Bの厚みを0.5μmとした以外は、実施例5と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性が低く、巻き取る前に保護フィルム(サンエー化研製、PAC−3−60)をニップロールで貼り合せた後に巻き取る必要があった。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0089】
[実施例7]
実施例1のハードコート層Aを形成するための塗液の調製において、放射線硬化型樹脂として、繰り返しエチレングリコール単位の共重合割合を、アクリルポリマーの質量に対して2.2質量%としたものを用いた以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性に優れ、保護フィルムを貼り合わせずに巻き取ることができた。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0090】
[実施例8]
実施例1のハードコート層Aを形成するための塗液の調製において、放射線硬化型樹脂として、繰り返しエチレングリコール単位の共重合割合を、アクリルポリマーの質量に対して3.8質量%としたものを用いた以外は実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性に優れ、保護フィルムを貼り合わせずに巻き取ることができた。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0091】
[実施例9〜12]
ハードコート層AおよびBの乾燥後の厚みを表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。なお、厚みが1μm以下の場合は、酸素濃度1000ppm以下の窒素パージ雰囲気下で紫外線照射した。得られたハードコートフィルムは、いずれも巻き取り性に優れ、保護フィルムを貼り合わせずに巻き取ることができた。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0092】
[実施例13]
ハードコート層Bを形成するためのHC剤として、アイカ工業社製のハードコート塗料(Z−782−13)を用いた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性に優れ、保護フィルムを貼り合わせずに巻き取ることができた。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0093】
[比較例1]
基材フィルムとして帝人デュポンフィルム社製ポリエステルフィルム(タイプ:O4L86W、厚み188μm(ポリエステル樹脂/架橋剤/微粒子/脂肪族ワックス=90/5/2/3(固形分の質量%)を構成成分として含有する厚み75nmの易接着層を両面に有するポリエステルフィルム)の片面(かかる面をおもて面とする。)に、HC剤としてJSR(株)製のハードコート塗料(デソライトZ7501)をリバースグラビア塗工方式で、乾燥後の塗布厚みが6μmになるように塗工し、70℃×2分間の条件で乾燥した。次いで、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射しハードコート層Aを形成した。
次に、基材フィルムにおいてハードコート層Aを形成した面と反対の面に、おもて面と同じHC剤をリバースグラビア塗工方式で、乾燥後の塗布厚みが2.0μmになるように塗工し、70℃×2分間の条件で乾燥した。次いで、おもて面と同様に、紫外線照射装置(FusionUV Systems Japan(株)製:商品名フュージョンHバルブ)を用いて、光量200mJ/cmの条件で紫外線を照射しハードコート層Bを形成し、ハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、巻き取り性が低く、巻き取る前に保護フィルム(サンエー化研製、PAC−3−60)をニップロールで貼り合せた後に巻き取る必要があった。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0094】
[比較例2〜7]
ハードコート層AおよびBの乾燥後の厚みを表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。得られたハードコートフィルムは、いずれも巻き取り性に優れ、保護フィルムを貼り合わせずに巻き取ることができた。得られたハードコートフィルムの特性を表1に示す。
【0095】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のハードコートフィルムは、打ち抜き加工性に優れると同時に耐指紋性に優れるため、打ち抜き加工が施される用途に好適に用いられる。とりわけアイコンシート用として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面にハードコート層A、他方の面にハードコート層Bを有するハードコートフィルムであって、ハードコート層Aの厚みが2μm以上10μm以下であり、ハードコート層Bの厚みが0.05μm以上2.5μm以下であり、ハードコート層Aの厚みがハードコート層Bの厚みよりも0.5μm以上厚く、ハードコート層Aの表面における水の接触角が78度以上90度以下、かつn−ドデカンの接触角が20度以下であるハードコートフィルム。
【請求項2】
基材フィルムとハードコート層Aおよび/またはハードコート層Bとの間にポリエステル樹脂と架橋剤とを構成成分として含有する易接着層を有する請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
ハードコート層Bが平均粒径50〜500nmの不活性粒子を、ハードコート層Bの質量を基準として2〜10質量%含有する請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
ハードコート層Bの表面における水の接触角が88度以下、かつn−ドデカンの接触角が20度以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のハードコートフィルム。

【公開番号】特開2013−6312(P2013−6312A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139440(P2011−139440)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】