説明

ハードコート層形成用組成物、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板、及び画像表示装置

【課題】膜硬度に優れ、防汚性及び透明基材との密着性に優れたハードコート層を提供し得るハードコート層形成用組成物を提供すること。
【解決手段】下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有するハードコート層形成用組成物。
(a)重合性不飽和基を有する含フッ素化合物、及び重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の防汚剤
(b)炭酸ジメチル
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層形成用組成物、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板、及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置では、表示面への傷付きを防止するために、透明基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムを設けることが好適である。該ハードコート層は高い硬度の他に、高い防汚性、及び透明基材との高い密着性が要求される。
【0003】
前記ハードコートフィルムなどの光学フィルムに防汚性を付与する方法としては、含フッ素化合物又はポリシロキサン化合物などの防汚剤を添加することが知られている。例えば特許文献1には、反射防止フィルムにおける低屈折率層に含フッ素化合物からなる防汚剤を含有させることが記載されている。
特許文献2には、含フッ素化合物又は含ケイ素化合物を含む防汚層を有する反射防止フィルムが記載されている。
また、光学フィルムにおいて、含フッ素化合物又はポリシロキサン化合物は、界面活性剤としても使用され得る。例えば、特許文献3には、反射防止フィルムにおける防眩層に、界面活性剤として含フッ素化合物又はポリシロキサン化合物を添加してもよいことが記載されている。
【0004】
また、これとは別に、特許文献4及び5には、ハードコート層形成用組成物、又は防眩層形成用組成物に、溶媒として炭酸ジメチルを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−152311号公報
【特許文献2】特開2004−354699号公報
【特許文献3】特開2008−134394号公報
【特許文献4】特開2007−268420号公報
【特許文献5】特開2010−20267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜5に記載された技術では、膜硬度に優れ、防汚性及び透明基材との密着性に優れたハードコート層を有する光学フィルムを提供するには至っていない。
本発明の目的は、膜硬度に優れ、防汚性及び透明基材との密着性に優れたハードコート層を提供し得るハードコート層形成用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、膜硬度に優れ、透明基材とハードコート層との密着性、及び防汚性に優れるハードコート層を有する光学フィルムを提供することである。
本発明の更なる別の目的は、該光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの検討により、防汚剤は、少ない添加量で優れた防汚機能を発揮するためには、ハードコート層の表面に局在化することが好ましいことがわかった。また、防汚剤がハードコート層の表面ではなく、内部に均一に分布すると防汚機能が低下し、かつハードコート層の硬度を低下させる傾向があることがわかった。
本発明者らは、防汚剤の局在化について更に検討を進めた結果、ハードコート層形成用組成物に用いる溶媒が防汚剤の局在化(ひいては防汚性の向上)に大きく影響することをつきとめ、特に炭酸ジメチルと特定の防汚剤を用いることで、膜強度に優れ、防汚性及び透明基材との密着性に優れたハードコート層を提供し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、下記手段により、前記課題を解決し目的を達成し得る。
【0008】
1.
下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有するハードコート層形成用組成物。
(a)重合性不飽和基を有する含フッ素化合物、及び重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の防汚剤
(b)炭酸ジメチル
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤
2.
前記(a)防汚剤として重合性不飽和基を有する含フッ素化合物を含有し、該含フッ素化合物が、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有する、上記1に記載のハードコート層形成用組成物。
3.
前記含フッ素化合物が重合性不飽和基を一分子中に4つ以上有する、上記2に記載のハードコート層形成用組成物。
4.
前記含フッ素化合物が、−(CFO)−(CFCFO)−で表されるパーフルオロポリエーテル基(上記p及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。ただしp+qは1以上の整数である。)を有する、上記2又は3に記載のハードコート層形成用組成物。
5.
前記含フッ素化合物の重量平均分子量が1000以上5000未満である、上記2〜4のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
6.
前記(a)として、重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物を含有し、該ポリシロキサン化合物が、重合性不飽和基を一分子中に複数有するジメチルシロキサンである、上記1に記載のハードコート層形成用組成物。
7.
前記(a)防汚剤の表面張力が25.0mN/m以下である、上記1〜6のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
8.
更に(e)シリカ微粒子を含有する上記1〜7のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
9.
(c)不飽和二重結合を有する化合物が水素結合性の置換基を有する、上記1〜8のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
10.
更に、導電性化合物を含有する、上記1〜9のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
11.
前記(b)炭酸ジメチルの含有量が全溶剤に対して10質量%以上である上記1〜10のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
12.
透明基材上に、上記1〜11のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層を有する光学フィルム。
13.
前記透明基材がセルロースアシレートフィルムである上記12に記載の光学フィルム。
14.
上記12又は13に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板。
15.
上記12又は13に記載の光学フィルム又は上記15に記載の偏光板を有する画像表示装置。
16.
セルロースアシレートフィルム基材上に、ハードコート層を有する光学フィルムの製造方法であって、該セルロースアシレートフィルム基材上に上記1〜11のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物を塗布、硬化してハードコート層を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膜硬度に優れ、防汚性及び透明基材との密着性に優れたハードコート層を提供し得るハードコート層形成用組成物を提供することができる。また、膜硬度に優れ、透明基材とハードコート層との密着性、及び防汚性に優れるハードコート層を有する光学フィルムを提供することができる。
また、該光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
なお、本発明においては、「モノマーに相当する繰り返し単位」、及び「モノマーに由来する繰り返し単位」とは、モノマーの重合後に得られる成分が繰り返し単位となることを意味している。
【0011】
本発明のハードコート層形成用組成物は、下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有する。
(a)重合性不飽和基を有する含フッ素化合物、及び重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の防汚剤
(b)炭酸ジメチル
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤
【0012】
[(a)防汚剤]
本発明のハードコート層形成用組成物に含まれる前記(a)重合性不飽和基を有する含フッ素化合物、及び重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の防汚剤について説明する。
【0013】
[重合性不飽和基を有する含フッ素化合物]
本発明における重合性不飽和基を有する含フッ素化合物(以下、「含フッ素防汚剤」ともいう)について説明する。
本発明の含フッ素防汚剤は下記一般式(F)で表される構造を含むフッ素系化合物であることが好ましい。
一般式(F): (Rf)−[(W)−(R
(式中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは連結基、Rは重合性不飽和基を表す。nは1〜3の整数を表す。mは1〜3の整数を表す。)
【0014】
本発明における含フッ素防汚剤は、重合性不飽和基を有することで、以下の(1)〜(3)の効果があると考えられる。
(1)有機溶剤への溶解性、不飽和二重結合を有する化合物等との相溶性が高まるため、防汚剤が凝集体を形成することなく、均一に表面に局在化できるようになると考えられる。また、凝集体による欠陥の発生を防ぐことができる。
(2)含フッ素防汚剤が表面に局在化しても、含フッ素防汚剤同士、或いは不飽和二重結合を有する化合物と光重合反応により共有結合を形成できるため、磨耗による防汚剤の剥がれ、ひいては防汚性の悪化を防ぐことができる。
(3)防汚剤がブリードアウトして析出することによる防汚性の損失や、外観の悪化を防ぐことができる。
【0015】
一般式(F)において、Rは重合性不飽和基を表す。重合性不飽和基は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合反応を起こしうる基であれば特に限定は無く、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換した基が好ましく用いられる。
重合性不飽和基の具体例としては以下のものが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
一般式(F)において、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表す。
ここで、(パー)フルオロアルキル基は、フルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、(パー)フルオロポリエーテル基は、フルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。防汚性の観点では、Rf中のフッ素含有率は高いほうが好ましい。
【0018】
(パー)フルオロアルキル基は、炭素数1〜20の基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜10の基である。
(パー)フルオロアルキル基は、直鎖(例えば−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF、CHCF(CF、CH(CH)CFCF、CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等)であっても良い。
【0019】
(パー)フルオロポリエーテル基は、(パー)フルオロアルキル基がエーテル結合を有している場合を指し、1価でも2価以上の基であってもよい。フルオロポリエーテル基としては、例えば−CHOCHCFCF、−CHCHOCHH、−CHCHOCHCH17、−CHCHOCFCFOCFCFH、フッ素原子を4個以上有する炭素数4〜20のフルオロシクロアルキル基等が挙げられる。また、パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、−(CFO)−(CFCFO)−、−[CF(CF)CFO]―[CF(CF)]−、−(CFCFCFO)−、−(CFCFO)−などが挙げられる。
p及びqの総計は1〜83が好ましく、1〜43が更に好ましく、5〜23が最も好ましい。
本発明の含フッ素防汚剤は、防汚性に優れるという観点から−(CFO)−(CFCFO)−で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
上記p及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。ただしp+qは1以上の整数である。
【0020】
本発明においては、前記(1)〜(3)に示した効果がより顕著に得られるという観点から、含フッ素防汚剤は、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有することが好ましい。
【0021】
一般式(F)において、Wは連結基を表す。Wとしては、例えばアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアルキレン基、又はこれらの組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、オキシ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、スルホンアミド基等やこれらの組み合わさった官能基を有しても良い。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
【0022】
含フッ素防汚剤のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。
【0023】
好ましい含フッ素防汚剤の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833、オプツールDAC(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300、MCF−323(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
前記(1)〜(3)に示した効果がより顕著に得られるという観点から、一般式(F)において、nとmの積(n×m)は2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0025】
一般式(F)において、nとmが同時に1である場合について、以下の好ましい態様の具体例として下記一般式(F−1)〜(F−3)が挙げられる。
【0026】
一般式(F−1):
Rf(CFCFR’CHCHOCOCR=CH
【0027】
(式中、Rfは、フッ素原子、又は炭素数が1〜10であるフルオロアルキル基のいずれかを示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは単結合又はアルキレン基を示し、R’は単結合又は2価の連結基を示し、pは重合度を示す整数であり、重合度pはk(kは3以上の整数)以上である。)
【0028】
R’が2価の連結基を表す場合、該2価の連結基としては、前述のWと同様のものが挙げられる。
【0029】
一般式(F−1)におけるフッ素原子を含むテロマー型アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類等が挙げられる。
【0030】
一般式(F−1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0031】
【化2】

【0032】
上記の一般式(F−1)で表される化合物は、合成の際にテロメリゼイションを用いると、テロメリゼイションの条件及び反応混合物の分離条件等によっては一般式(F−1)の基Rf(CFCFR’CHCHO−のpがそれぞれk、k+1、k+2、・・・等の複数の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むことがある。
【0033】
一般式(F−2):
F(CF−CH−CHX−CHY(式中、qは1〜20の整数、X及びYはそれぞれ独立に(メタ)アクリロイルオキシ基又は水酸基のいずれかであり、少なくとも一方は(メタ)アクリロイルオキシ基である。)
【0034】
一般式(F−2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、末端にトリフルオロメチル基(CF−)をもつ炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有しており、この含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは少量でもトリフルオロメチル基が表面に有効に配向される。
【0035】
防汚性及び製造の容易性から、qは6〜20が好ましく、8〜10より好ましい。炭素数8〜10のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、他の鎖長のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと比較しても優れた撥水・撥油性を発現するため、防汚性に優れる。
【0036】
一般式(F−2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン及び1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシ4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン等が挙げられる。本発明においては、1−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカンが好ましい。
【0037】
一般式(F−3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOCOCR=CH (式中Rは水素原子又はメチル基であり、sは1〜20の整数であり、rは1〜4の整数を表す。)
【0038】
上記一般式(F−3)で表されるフッ素原子含有単官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(FG−3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させることにより得ることができる。
【0039】
一般式(FG−3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOH(一般式(FG−3)中、sは1〜20の整数の整数であり、rは1〜4の整数を表す。)
【0040】
前記一般式(FG−3)表されるフッ素原子含有アルコール化合物の具体例としては、例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサオクタン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘキサデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15−ペンタオキサノナデカン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサイコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18−ヘキサオキサドコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1−オール、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサペンタコサン−1−オール等を挙げることができる。
これらは市場で入手でき、その具体例としては例えば、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサヘプタン−1−オール(商品名「C5GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサデカン−1−オール(商品名「C7GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6−ジオキサデカン−1−オール(商品名「C8GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9−トリオキサトリデカン−1−オール(商品名「C10GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサヘキサデカン−1−オール(商品名「C12GOL」、エクスフロアー社製)等が挙げられる。
本発明においては、1H,1H−ペルフルオロ−3,6,9,12−テトラオキサトリデカン−1−オールを用いることが好ましい。
【0041】
また、前記一般式(FG−3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と反応させる(メタ)アクリル酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸フルオライド、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド、(メタ)アクリル酸アイオダイドを挙げることができる。入手しやすさ等の観点から(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。
【0042】
以下に一般式(F−3)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、一般式(F−3)で表される好ましい具体例は、特開2007−264221号公報にも記載がある。
【0043】
(b−1):FOCOCOCFCHOCOCH=CH
(b−2):FOCOCOCFCHOCOC(CH)=CH
【0044】
更に一般式(F−3)で表される化合物とは別に、下記一般式(F−3)’で表される化合物も好ましく用いることができる。
【0045】
一般式(F−3)’:
Rf−[(O)(O=C)(CX−CX=CX
(式中、X及びXは各々独立に、H又はFを表し、XはH、F、CH又はCFを表し、X及びXは各々独立に、H、F、又はCFを表し、a、b、及びcは各々独立に0又は1を表し、Rfは炭素数18〜200のエーテル結合を含む含フッ素アルキル基を表す)であって、Rf基中に、
一般式(FG−3)’:
−(CXCFCFO)−
(式中、XはF又はH)で示される繰り返し単位を6個以上有することを特徴とする含フッ素不飽和化合物。
【0046】
前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物の例としては、
(c−1) Rf−[(O)(O=C)−CX=CX
(c−2) Rf−[(O)(O=C)−CX=CX
(c−3) Rf−[(O)(O=C)−CF=CH
などを挙げることができ、上記含フッ素ポリエーテル化合物の重合性不飽和基としては、以下の構造を含むものを好ましく用いることができる。(c−1)〜(c−3)における各記号の定義は一般式(FG−3)’と同義である。
【0047】
【化3】

【0048】
また、前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物は、重合性不飽和基を複数個有していても良く、
【0049】
【化4】

【0050】
などの構造が好ましく挙げられる。本発明においては−O(C=O)CF=CHの構造を有するものが重合(硬化)反応性が特に高く、効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
【0051】
前記一般式(F−3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物においてRf基は、一般式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖は繰り返し単位で6個以上Rf中に含んでいることが重要であり、それによって防汚性を付与できる。
また更に詳しくは、含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上のものを含んでいる混合物でもよいが、混合物の形で使用する場合、前記繰り返し単位が6個未満の含フッ素不飽和化合物と6個以上の含フッ素不飽和化合物との分布においてポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上の含フッ素不飽和化合物の存在比率が最も高い混合物とするのが好ましい。
一般式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位は6個以上であることが好ましく、10個以上がより好ましく、18個以上が更に好ましく、20個以上が特に好ましい。それによって、撥水性だけでなく、防汚性、特に油成分を含む汚れに対する除去性を改善できる。また、気体透過性もより一層効果的に付与できる。また、含フッ素ポリエーテル鎖はRf基の末端にあっても、鎖中の途中に存在していても良い。
【0052】
Rf基は具体的には、
一般式(c−4):
−(CXCFCFO)−(R
(式中、Xは式(FG−3)’と同じ、Rは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含むアルキル基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキル基から選ばれる少なくとも1種、Rは二価以上の有機基、tは6〜66の整数、eは0又は1を表す。)の構造であることが好ましい。
つまり、二価以上の有機基Rを介して、反応性の炭素−炭素二重結合と結合し、更に末端にRを有する含フッ素有機基である。
は一般式(FG−3)’の含フッ素ポリエーテル鎖を反応性の炭素−炭素二重結合に結合させることができる有機基であれば、如何なるものでもよい。例えば、アルキレン基、含フッ素アルキレン基、エーテル結合を含むアルキレン基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基から選ばれる。中でも含フッ素アルキレン基、エーテル結合を含む含フッ素アルキレン基であることが、透明性、低屈折率性の面で好ましい。
【0053】
一般式(F−3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物の具体例としては、再公表特許WO2003/022906号パンフレットに挙げられる化合物などが好ましく用いられる。本発明においては、CH=CF−COO―CHCFCF−(OCFCFCF−OCを特に好ましく用いることができる。
【0054】
一般式(F)において、nとmが同時に1でない場合については、以下の好ましい態様として一般式(F−4)及び一般式(F−5)が挙げられる。
【0055】
一般式(F−4):(Rf)−[(W)−(R
(一般式(F−4)中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは連結基、Rは不飽和二重結合を有する官能基を表す。nは1〜3、mは1〜3の整数を表し、nとmは同時に1であることはない。)
撥水撥油性に優れると共に撥水撥油性の持続(防汚耐久性)に優れるという観点からnが2〜3、mが1〜3であることが好ましく、nが2〜3、mが2〜3であることがより好ましく、nが3、mが2〜3であることが最も好ましい。
【0056】
Rfは一価から三価のものを用いることができる。Rfが一価の場合、末端基としては(C2n+1)−、(C2n+1O)−、(XC2nO)−、(XC2n+1)−(式中Xは水素、塩素、又は臭素であり、nは1〜10の整数)であることが好ましい。具体的にはCFO(CO)CF−、CO(CFCFCFO)CFCF−、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)−、F(CF(CF)CFO)CF(CF)−等を好ましく使用することができる。
【0057】
ここでpの平均値は0〜50である。好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20、最も好ましくは4〜15である。
【0058】
Rfが二価の場合は、−(CFO)(CO)CF−、−(CFO(CO)(CF−、−CFO(CO)CF−、−CO(CO)−、−CF(CF)(OCFCF(CF))OC2tO(CF(CF)CFO)CF(CF)−等を好ましく使用することができる。
【0059】
ここで、式中q、r、sの平均値は0〜50である。好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20、最も好ましくは4〜15である。tは2〜6の整数である。
一般式(F−4)で表される化合物の好ましい具体例や合成方法は国際公開第2005/113690号に記載されている。
【0060】
以下では、F(CF(CF)CFO)CF(CF)−においてpの平均値が6〜7のものを“HFPO−”と記載し、−(CF(CF)CFO)CF(CF)−においてpの平均値が6〜7のものを“−HFPO−”と記載し、一般式(F−4)の具体的化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
【0061】
(d−1):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CHCHCH
(d−2):HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
(d−3):HFPO−CONH−CNHCHとトリメチロールプロパントリアクリレートの1:1マイケル付加重合物
(d−4):(CH=CHCOOCHH−C−CONH−HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
(d−5):(CH=CHCOOCH−C−CONH−HFPO−CONH−C−(CHOCOCH=CH
【0062】
更に、一般式(F−4)で表される化合物として下記一般式(F−5)で表される化合物を用いることもできる。
【0063】
一般式(F−5):
CH=CX−COO−CHY−CH−OCO−CX=CH
(式中X及びXは、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、Yは、フッ素原子を3以上有する炭素数2〜20のフルオロアルキル基又はフッ素原子を4個以上有する炭素数4〜20のフルオロシクロアルキル基を示す。)
【0064】
本発明において、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物は、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していても良い。含フッ素防汚剤が複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していることにより、硬化させた際には、三次元網目構造を呈し、ガラス転移温度が高く、防汚剤の転写性が低く、また汚れの繰り返しの拭取りに対する耐久性を向上させることができる。更には、耐熱性、耐候性等に優れた硬化被膜を得ることができる。
【0065】
前記一般式(F−5)で表される化合物の具体例としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール等を好ましく挙げることができ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。このようなジ(メタ)アクリル酸エステルを調製するには、特開平6−306326号公報に挙げられるような公知の方法により製造できる。本発明においては、ジアクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコールが好ましく用いられる。
【0066】
本発明においては、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物として、一分子中に複数個の(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を有している化合物であってもよい。
【0067】
本発明における含フッ素防汚剤は、モノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでも良い。
含フッ素防汚剤は、更にハードコート層皮膜中での結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。
含フッ素防汚剤はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0068】
また、(a)成分である重合性不飽和基を有する含フッ素化合物は、分子中にケイ素原子を含有してもよく、シロキサン構造を含有してもよいし、シロキサン構造以外の構造を有してもよい。ただし、重合性不飽和基を有する含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、重量平均分子量は15000未満である。
【0069】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該化合物は好ましくは下記一般式(F−6)で表される。
【0070】
一般式(F−6):
SiO(4−a−b−c)/2
(式中、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であり、Rはフッ素原子を含有する有機基であり、Rは重合性不飽和基を含有する有機基であり、0<a、0<b、0<c、a+b+c<4である。)
【0071】
aは好ましくは1〜1.75、より好ましくは1〜1.5であり、1以上であると化合物の合成が工業的に容易となり、1.75以下であると硬化性、防汚性の両立がしやすくなる。
【0072】
における重合性不飽和基としては、前記一般式(F)におけるRと同様の重合性不飽和基が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換した基である。
【0073】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該シロキサン構造の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としては(メタ)アクリロイル基、(メタアクリロイルオキシ)基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられ、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が防汚剤のブリードアウトを抑止する観点で好ましい。また置換基数としては、官能基等量として1500〜20000g・mol−1が防汚剤の偏在性向上とブリードアウト抑止の観点で好ましい。
【0074】
はフッ素原子を含有する有機基であり、C2x+1(CH−(式中、xは1〜8の整数、pは2〜10の整数である。)で示される基又はパーフルオロポリエーテル置換アルキル基であることが好ましい。bは好ましくは0.2〜0.4、より好ましくは0.2〜0.25であり、0.2以上であると防汚性が向上し、0.4以下であると硬化性が向上する。Rは炭素数8のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0075】
は(メタ)アクリル基を含有する有機基であり、工業的な合成のし易さからSi原子への結合がSi−O−C結合であることがより好ましい。cは好ましくは0.4〜0.8、より好ましくは0.6〜0.8であり、0.4以上であると硬化性が向上し、0.8以下であると防汚性が向上する。
【0076】
また、a+b+cは好ましくは2〜2.7、より好ましくは2〜2.5であり、2より小さいと表面への偏在化が起こりにくくなり、2.7より大きいと硬化性、防汚性の両立ができなくなる。
【0077】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該化合物は、1分子中にF原子を3個以上及びSi原子を3個以上、好ましくはF原子を3〜17個及びSi原子を3〜8個含有するものであることが好ましい。F原子が3個以上あると防汚性が十分となり、Si原子が3個以上あるとでは表面への偏在化が促進され、防汚性が十分となる。
【0078】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該化合物は、特開2007−145884号公報に挙げられる公知の方法などを用いて製造することができる。
【0079】
含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、該シロキサン構造としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、これらの中で特に分岐状、環状のものが、後述する不飽和二重結合を有する化合物等と相溶性がよく、ハジキがなく、表面への偏在化が起こりやすいために好ましい。
【0080】
ここで、シロキサン構造が分岐状の化合物としては、下記一般式(F−7)で表されるものが好ましい。
一般式(F−7):
SiR〔OSiR(OR3−m3−k
(式中、R、R、Rは上記と同様であり、m=0,1又は2、特にm=2であり、k=0又は1である。)
【0081】
また、シロキサン構造が環状構造の化合物としては、下記一般式(F−8)で表されるものが好ましい。
一般式(F−8):
(RRSiO)(RRSiO)(式中、R、R、Rは上記と同様であり、n≧2、特に3≦n≦5である。)
【0082】
このような含フッ素ポリシロキサン化合物の具体例としては以下の化合物等が挙げられる。
【0083】
【化5】

【0084】
[含フッ素防汚剤の分子量]
重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤の重量平均分子量(Mw)は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などを用いて測定できる。本発明で用いる含フッ素防汚剤のMwは400以上5000未満が好ましく、1000以上5000未満がより好ましく、1000以上3500未満が更に好ましい。Mwが400以上であると、防汚剤の表面移行性が高くなるため好ましい。また、Mwが5000未満であると、塗布から硬化する工程の間に、含フッ素防汚剤の表面移行性が妨げられず、ハードコート層表面に均一に配向しやすいため、防汚性及び膜硬度が向上するため好ましい。
ただし、含フッ素化合物がシロキサン構造を含有する場合、Mwは15000未満であり、好ましくは1000以上5000未満であり、より好ましくは1000以上3500未満である。
【0085】
[含フッ素防汚剤の添加量]
重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。添加量が1質量%以上であると、撥水撥油性を有する防汚剤の割合が適度になり、十分な防汚性が得られる。また、添加量が20質量%以下であると、バインダー成分と混合できない防汚剤が表面に析出することがなく、膜が白化したり表面に白粉を生じることがないため好ましい。
【0086】
[重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物]
次に、前記(a)成分として用いることができる、重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物について説明する。なお、以下、分子量が15000以上のポリシロキサン化合物を「ポリシロキサン防汚剤」と呼ぶ。
【0087】
ポリシロキサン防汚剤は、好ましくは下記一般式(F−6)で表される。
【0088】
一般式(F−6):
SiO(4−a−b−c)/2
(式中、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であり、Rはフッ素原子を含有する有機基であり、Rは重合性不飽和基を含有する有機基であり、0<a、0<b、0<c、a+b+c<4である。)
【0089】
aは好ましくは1〜1.75、より好ましくは1〜1.5であり、1以上であると化合物の合成が工業的に容易となり、1.75以下であると硬化性、防汚性の両立がしやすくなる。
【0090】
における重合性不飽和基としては、前記一般式(F)におけるRと同様の重合性不飽和基が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換した基である。
ポリシロキサン防汚剤においても、前記(1)〜(3)の効果がより顕著に得られるという観点から、ポリシロキサン防汚剤は、一分子中に重合性不飽和基を複数有することが好ましく、一分子中に重合性不飽和基を複数有するポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。
【0091】
ポリシロキサン防汚剤の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び/又は側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としては(メタ)アクリロイル基、(メタアクリロイルオキシ)基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられ、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が防汚剤のブリードアウトを抑止する観点で好ましい。また置換基数としては、官能基等量として1500〜20000g・mol−1が防汚剤の偏在性向上とブリードアウト抑止の観点で好ましい。
【0092】
はフッ素原子を含有する有機基であり、C2x+1(CH−(式中、xは1〜8の整数、pは2〜10の整数である。)で示される基又はパーフルオロポリエーテル置換アルキル基であることが好ましい。bは好ましくは0.2〜0.4、より好ましくは0.2〜0.25であり、0.2以上であると防汚性が向上し、0.4以下であると硬化性が向上する。
【0093】
は(メタ)アクリル基を含有する有機基であり、工業的な合成のし易さからSi原子への結合がSi−O−C結合であることがより好ましい。cは好ましくは0.4〜0.8、より好ましくは0.6〜0.8であり、0.4以上であると硬化性が向上し、0.8以下であると防汚性が向上する。
【0094】
また、a+b+cは好ましくは2〜2.7、より好ましくは2〜2.5であり、2より小さいと表面への偏在化が起こりにくくなり、2.7より大きいと硬化性、防汚性の両立ができなくなる。
【0095】
ポリシロキサン防汚剤は、1分子中にF原子を3個以上及びSi原子を3個以上、好ましくはF原子を3〜17個及びSi原子を3〜8個含有するものであることが好ましい。F原子が3個以上あると防汚性が十分となり、Si原子が3個以上あるとでは表面への偏在化が促進され、防汚性が十分となる。
【0096】
ポリシロキサン防汚剤は、特開2007−145884号公報に挙げられる公知の方法などを用いて製造することができる。
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン{例えば“KF−100T”,“X−22−169AS”,“KF−102”,“X−22−3701IE”,“X−22−164C”,“X−22−5002”,“X−22−173B”,“X−22−174D”,“X−22−167B”,“X−22−161AS”(商品名)、以上、信越化学工業(株)製;“AK−5”,“AK−30”,“AK−32”(商品名)、以上東亜合成(株)製;、「サイラプレーンFM0725」,「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ(株)製;、“DMS−U22”、“RMS−033”、“UMS−182”(商品名)、以上Gelest製等}を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。
【0097】
ポリシロキサン防汚剤に含まれるシロキサン構造としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、これらの中で特に分岐状、環状のものが、後述する不飽和二重結合を有する化合物等と相溶性がよく、ハジキがなく、表面への偏在化が起こりやすいために好ましい。
【0098】
[ポリシロキサン防汚剤の分子量]
ポリシロキサン防汚剤の重量平均分子量は、15000以上であり、好ましくは15000以上50000以下であり、より好ましくは、18000以上30000以下である。ポリシロキサン防汚剤の重量平均分子量が15000未満であると、ポリシロキサンの表面偏在性が低減することにより、防汚性の悪化並びに硬度の低下を招く観点から好ましくない。ただし、前述の重合性不飽和基を有する含フッ素化合物がポリシロキサン構造を有する場合は上記問題は起こらない。
ポリシロキサン防汚剤の重量平均分子量は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などを用いて測定できる。
【0099】
[ポリシロキサン防汚剤の添加量]
ポリシロキサン防汚剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して1質量%以上25質量%未満であることが好ましく、1質量%以上20質量%未満がより好ましく、1質量%以上15質量%未満が更に好ましく、1質量%以上10質量%未満が最も好ましい。添加量が1質量%以上であると、撥水撥油性を有する防汚剤の割合が適度になり、十分な防汚性が得られる。また、添加量が25質量%未満であると、バインダー成分と混合できない防汚剤が表面に析出することがなく、膜が白化したり表面に白粉を生じることがないため好ましい。
【0100】
ハードコート層内における防汚剤の膜厚方向の分布状態は、Xをハードコート層の表面近傍におけるフッ素量あるいはシリコーン量、Yをハードコート層全体でのフッ素量あるいはシリコーン量としたとき、51%<X/Y<100%を満たすことが好ましい。X/Yが51%より大きい場合、防汚剤がハードコート層の膜内部まで分布しておらず、防汚性、膜硬度の点で好ましい。なお、表面近傍とは、ハードコート層の表面から1μm未満の深さの領域を指し、飛行時間二次イオン質量分析(TOF−SIMS)で測定したFフラグメントあるいはSi15フラグメントの比率で測定することができる。
【0101】
前記(a)防汚剤は、20℃において液体又は溶媒に溶解するものが好ましい。該溶媒としては、化合物の極性に応じて適宜選択することができるが炭酸ジメチルと混和する有機溶媒が好ましく、脂肪族又は報告族のアルコール、ケトン、エステル、エーテル系溶媒が挙げられる。炭酸ジメチルに溶解すれば特に好ましい。
前記(a)防汚剤の表面張力は、防汚性の観点から、表面張力が25.0mN/m以下であることが好ましく、23.0mN/m以下であることがより好ましく、16.0mN/m以下であることが更に好ましい。
防汚剤の表面張力は、単膜での表面張力であり、以下のようにして測定できる。
(防汚剤の表面張力の測定方法)
石英基板上に防汚剤をスピンコート、溶媒を含有する場合は乾燥させ膜を作成した。続いて、接触角計[“CA−X”型接触角計、協和界面科学(株)製]を用い、乾燥状態(20℃/65%RH)で、液体として純水を使用して直径1.0mmの液滴を針先に作り、これを上記のスピンコート膜の表面に接触させてフィルム上に液滴を作った。フィルムと液体とが接する点における、液体表面に対する接線とフィルム表面がなす角で、液体を含む側の角度を接触角とし、測定した。また、水の代わりにヨウ化メチレンを用いて接触角を測定し、以下の式より表面自由エネルギーを求めた。
表面自由エネルギー(γs:単位、mN/m)とはD.K.Owens:J.Appl.Polym.Sci.,13,1741(1969)を参考に、反射防止フィルム上で実験的に求めた純水HOとヨウ化メチレンCHのそれぞれの接触角θH2O、θCH2I2から以下の連立方程式a,bより求めたγsとγsの和で表される値γs(=γs+γs)で定義した。
a.1+cosθH2O=2√γs(√γH2O/γH2O)+2√γs(√γH2O/γH2O
b.1+cosθCH2I2=2√γs(√γCH2I2/γCH2I2)+2√γs(√γCH2I2/γCH2I2
γH2O=21.8、γH2O=51.0、γH2O=72.8、
γCH2I2=49.5、γCH2I2=1.3、γCH2I2=50.8
【0102】
[(b)炭酸ジメチル]
次に、本発明のハードコート層形成用組成物は、(b)炭酸ジメチルを含有する。
本発明において、前記(a)特定の防汚剤と、(b)炭酸ジメチルとを組み合わせることで、(a)防汚剤がハードコート層の表面に局在化し、防汚性が大きく向上し、かつ膜の硬度も向上する。これらの効果は、種々の溶媒のなかでも炭酸ジメチルのみに特有のものである。また、上記効果は、(a)防汚剤の表面張力が25mN/m以下である場合に特に顕著になる。
更に、炭酸ジメチルを用いることで防汚剤の添加量を少なくすることも期待される。
【0103】
後述するように、本発明の光学フィルムは、透明基材としてセルロースアシレートフィルムを用いることが好ましい。(b)炭酸ジメチルは、セルロースアシレートフィルムを短時間で膨潤・溶解する溶剤であり、ハードコート層とセルロースアシレートフィルムとの密着性を良好にするとともに、TAC(セルローストリアセテート)フィルムに塗工する場合、例えばワイヤーバーコート法、ダイコート法等で塗工する時に、レベリング性が良好となる。特に単層流延法によって作成されたTACフィルムは、複数層共流延法と比較し、フィルム表面の平滑性が劣る傾向があり、防眩層をウエット塗工した際に生じるTACフィルムの平面性不良起因の筋状の塗工ムラ等が発生し易いが、沸点が80℃以上、好ましくは85℃以上の溶剤を使用すると、平面性不良起因の筋状の塗工ムラ等が改善できる傾向があり、塗工適性上優位である。
【0104】
溶剤としては、塗工時の乾燥性、更なる防汚性向上等を考慮し、(b)炭酸ジメチル以外の有機溶剤を、密着性、及び防汚性が低下しない範囲で使用できる。
係る有機溶剤としては、例えばジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−プチロラクトン、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
本発明のハードコート層形成用組成物の固形分の濃度は20〜80質量%の範囲となるように溶媒を用いるのが好ましく、より好ましくは30〜75質量%であり、更に好ましくは40〜70質量%である。
(b)炭酸ジメチルの含有量は、(a)防汚剤を十分表面に偏在させるようコントロールできる量使用することが好ましい。またハードコート層に含有される他の素材の塗布液への溶解性の調整の観点、及び基材とハードコート層との混在領域の厚みを調整する観点から、全溶剤((a),(c),(d)成分を溶解又は分散させるための、(b)及び(b)以外の有機溶剤)に対して10質量%以上が好ましく、10質量%〜70質量%がより好ましく、15質量%〜60質量%が更に好ましい。
【0106】
[(c)不飽和二重結合を有する化合物]
次に、本発明のハードコート層形成用組成物に含有される(c)不飽和二重結合を有する化合物について説明する。
(c)不飽和二重結合を有する化合物はバインダーとして機能することができ、重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーであることが好ましい。該重合性不飽和基を2つ以上有する多官能モノマーは、硬化剤として機能することができ、塗膜の強度や耐擦傷性を向上させることが可能となる。重合性不飽和基は3つ以上であることがより好ましい。
【0107】
(c)不飽和二重結合を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CHが好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
【0108】
重合性の不飽和結合を有する化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0109】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0110】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKエステル A−TMMT、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA等を挙げることができる。
非含フッ素多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
【0111】
(c)不飽和二重結合を有する化合物としては、水素結合性の置換基を有する化合物であることが、防汚剤の表面偏在性が向上し、防汚性、膜硬度を更に向上させることができるという理由から好ましい。水素結合性の置換基とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子と水素結合とが共有結合で結びついた置換基を指し、具体的にはOH−、SH−、−NH−、CHO−、CHN−などが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類や水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。市販されている(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKオリゴ U4HA、同NKエステルA−TMM−3、日本化薬(株)製KAYARAD PET−30等を挙げることができる。
【0112】
本発明のハードコート層形成用組成物中の(c)不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、十分な重合率を与えて硬度などを付与するため、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、70〜99質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましい。
【0113】
[(d)光重合開始剤]
次に、本発明のハードコート層形成用組成物に含有される(d)光重合開始剤について説明する。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0114】
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0115】
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア819」、「イルガキュア907」、「イルガキュア1870」(CGI−403/Irg184=7/3混合開始剤)、「イルガキュア500」、「イルガキュア369」、「イルガキュア1173」、「イルガキュア2959」、「イルガキュア4265」、「イルガキュア4263」、「イルガキュア127」、“OXE01”等;日本化薬(株)製の「カヤキュアーDETX−S」、「カヤキュアーBP−100」、「カヤキュアーBDMK」、「カヤキュアーCTX」、「カヤキュアーBMS」、「カヤキュアー2−EAQ」、「カヤキュアーABQ」、「カヤキュアーCPTX」、「カヤキュアーEPD」、「カヤキュアーITX」、「カヤキュアーQTX」、「カヤキュアーBTC」、「カヤキュアーMCA」など;サートマー社製の“Esacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KTO46,KT37,KIP150,TZT)”等、及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0116】
本発明のハードコート層形成用組成物中の(d)光重合開始剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分多く、かつ開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという理由から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0117】
本発明のハードコート層形成用組成物には、上記した以外の成分を添加することもできる。特に、(e)シリカ微粒子を含有することは、シリカ微粒子が親水的であることにより防汚剤の表面偏在性が向上し、防汚性、膜硬度を更に向上させることができるという理由から好ましい。また、これ以外にも屈折率を制御する効果や架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。
【0118】
[(e)シリカ微粒子]
シリカ微粒子のサイズ(1次粒径)は15nm以上100nm未満、更に好ましくは20nm以上80nm以下、最も好ましくは25nm以上60nm以下であり、微粒子の平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。無機微粒子の粒径が小さすぎると、防汚剤の表面偏在性を高める効果が少なくなり、大きすぎるとハードコート層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球形が最も好ましいが、不定形等の球形以外であっても問題無い。また、シリカ微粒子は粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いてもよい。
【0119】
本発明に使用することができるシリカ微粒子は塗布液中での分散性向上、膜強度向上のために表面処理を施していてもよく、表面処理方法の具体例及びその好ましい例は、特開2007−298974号公報の[0119]〜[0147]に記載のものと同様である。
【0120】
シリカ微粒子の具体的な例としては、MiBK−ST、MiBK−SD(以上、平均粒子径15nm、日産化学工業(株)製シリカゾル)、MEK−ST−L(平均粒子径50nm、日産化学工業(株)製シリカゾル)などを好ましく用いることができる。
【0121】
シリカ微粒子の添加量は、防汚剤の偏在性向上を補助する観点から、組成物中の全固形分に対して5〜40質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましい。
【0122】
[導電性化合物]
本発明の光学フィルムにおけるハードコート層は、帯電防止性を付与する目的で導電性化合物を含有してもよい。特に、親水性を有する導電性化合物を用いることにより、防汚剤の表面偏在性を向上させることができ、防汚性、膜硬度を更に向上させることができる。導電性化合物に親水性を持たせるためには、親水性基を導電性化合物に導入してもよく、親水性基としては、高い導電性を発現させ、かつ比較的安価である観点から、カチオン性基を有することが好ましく、中でも4級アンモニウム塩基を有することがより好ましい。
【0123】
本発明に用いられる導電性化合物は、特に制限はないが、イオン導電性化合物又は電子伝導性化合物が挙げられる。イオン導電性化合物としては、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性等のイオン導電性化合物が挙げられる。電子伝導性化合物としては、芳香族炭素環又は芳香族ヘテロ環を、単結合又は二価以上の連結基で連結した非共役高分子又は共役高分子である電子伝導性化合物が挙げられる。これらの中では帯電防止性能が高く、比較的安価で、更に基材側領域に偏在させる観点から、4級アンモニウム塩基を有する化合物(カチオン系化合物)が好適である。
【0124】
4級アンモニウム塩基を有する化合物としては、低分子型又は高分子型のいずれを用いることもできるが、ブリードアウト等による帯電防止性の変動がないことから高分子型カチオン系帯電防止剤がより好ましく用いられる。高分子型の4級アンモニウム塩基を有するカチオン化合物としては、公知化合物の中から適宜選択して用いることができるが、基材側領域に偏在させる観点から、下記一般式(I)〜(III)で表される構造単位の少なくとも1つの単位を有するポリマーが好ましい。
【0125】
【化6】

【0126】
一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子又は−CHCOOを表す。Yは水素原子又は−COOを表す。Mはプロトン又はカチオンを表す。Lは−CONH−、−COO−、−CO−又は−O−を表す。Jはアルキレン基又はアリーレン基を表す。Qは下記群Aから選ばれる基を表す。
【0127】
【化7】

【0128】
式中、R、R’及びR’’は、それぞれ独立に、アルキル基を表す。Jはアルキレン基又はアリーレン基を表す。Xはアニオンを表す。p及びqは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0129】
【化8】

【0130】
【化9】

【0131】
一般式(II)、(III)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、RとR及びRとRはそれぞれ互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。A、B及びDは、それぞれ独立に、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−RCOR−、−RCOOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−又は―R23NHCONHR24NHCONHR25−を表す。Eは単結合、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基、−RCOR−、−RCOOR10OCOR11−、−R12OCR13COOR14−、−R15−(OR16−、−R17CONHR18NHCOR19−、−R20OCONHR21NHCOR22−又は―R23NHCONHR24NHCONHR25−又は−NHCOR26CONH−を表す。R、R、R、R11、R12、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R22、R23、R25及びR26はアルキレン基を表す。R10、R13、R18、R21及びR24は、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基及びアルキレンアリーレン基から選ばれる連結基を表す。mは1〜4の正の整数を表す。Xはアニオンを表す。Z、Zは−N=C−基とともに5員又は6員環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、≡N[X]−なる4級塩の形でEに連結してもよい。nは5〜300の整数を表す。
【0132】
一般式(I)〜(III)の基について説明する。
ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子が挙げられ、塩素原子が好ましい。アルキル基は、炭素数1〜4の分岐又は直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましい。アルキレン基は、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が特に好ましい。アリーレン基は、炭素数6〜15のアリーレン基が好ましく、フェニレン、ジフェニレン、フェニルメチレン基、フェニルジメチレン基、ナフチレン基がより好ましく、フェニルメチレン基が特に好ましい、これらの基は置換基を有していてもよい。アルケニレン基は、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、アリーレンアルキレン基は、炭素数6〜12のアリーレンアルキレン基が好ましい、これらの基は置換基を有していてもよい。各基に置換してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0133】
一般式(I)において、Rは水素原子が好ましい。
Yは、好ましくは水素原子である。
Jは、好ましくはフェニルメチレン基である。
Qは、好ましくは群Aから選ばれる下記一般式(VI)であり、R、R’及びR’’は各々メチル基である。
は、ハロゲンイオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンなどが挙げられ、好ましくはハロゲンイオンであり、より好ましくは塩素イオンである。p及びqは、好ましくは0又は1であり、より好ましくはp=0、q=1である。
【0134】
【化10】

【0135】
一般式(II)及び(III)において、R、R、R及びRは、好ましくは炭素数1〜4の置換又は無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。A、B及びDは、好ましくはそれぞれ独立に、炭素数2〜10の置換又は無置換のアルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基を表し、好ましくはフェニルジメチレン基である。
は、ハロゲンイオン、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオンなどが挙げられ、好ましくはハロゲンイオンであり、より好ましくは塩素イオンである。
Eは、好ましくはEは単結合、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、アリーレンアルキレン基を表す。Z、Zが、−N=C−基とともに形成する5員又は6員環としては、ジアゾニアビシクロオクタン環等を例示することができる。
【0136】
以下に、一般式(I)〜(III)で表される構造のユニットを有する化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。なお、下記の具体例における添え字(m、x、y、z、r及び実際の数値)の内、mは各ユニットの繰り返し単位数を表し、x、y、z、rは各々のユニットのモル比を表す。
【0137】
【化11】

【0138】
【化12】

【0139】
【化13】

【0140】
【化14】

【0141】
【化15】

【0142】
上記で例示した導電性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上の化合物を併用して用いることもできる。また、帯電防止剤の分子内に重合性基を有する帯電防止化合物は、帯電防止層の耐擦傷性(膜強度)も高めることができるので、より好ましい。
【0143】
電子伝導性化合物としては、好ましくは芳香族炭素環又は芳香族ヘテロ環を、単結合又は二価以上の連結基で連結した非共役高分子又は共役高分子である。非共役高分子又は共役高分子における前記芳香族炭素環としては、例えばベンゼン環が挙げられ、更に縮環を形成してもよい。非共役高分子又は共役高分子における前記芳香族ヘテロ環としては、例えばピリジン環、ビラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、インドール環、カルバゾール環、ペンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環などが挙げられ、更に縮環を形成してもよく、置換基を有してもよい。
【0144】
また、非共役高分子又は共役高分子における前記二価以上の連結基としては、炭素原子、珪素原子、窒素原子、硼素原子、酸素原子、硫黄原子、金属、金属イオンなどで形成される連結基が挙げられる。好ましくは、炭素原子、窒素原子、珪素原子、硼素原子、酸素原子、硫黄原子及びこれらの組み合わせから形成される基であり、組み合わせにより形成される基としては、置換若しくは無置換のメチレン基、カルボニル基、イミノ基、スルホニル基、スルフィニル基、エステル基、アミド基、シリル基などが挙げられる。
【0145】
電子伝導性化合物としては、具体的には、置換又は非置換の導電性ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセチレン、ポリピリジルビニレン、ポリアジン、又はこれらの誘導体等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
また、所望の導電性を達成できる範囲であれば、導電性を有しない他のポリマーとの混合物として用いることもでき、導電性ポリマーを構成し得るモノマーと導電性を有しない他のモノマーとのコポリマーも用いることができる。
【0147】
電子伝導性化合物としては、共役高分子であることが更に好ましい。共役高分子の例としては、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリフルオレン、ポリアズレン、ポリ(パラフェニレンサルファイド)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、複鎖型共役系高分子(ポリペリナフタレンなど)、金属フタロシアニン系高分子、その他共役系高分子(ポリ(パラキシリレン)、ポリ[α−(5,5’−ビチオフェンジイル)ベンジリデン]など)、又はこれらの誘導体等が挙げられる。
好ましくはポリ(パラフェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)が挙げられ、より好ましくはポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール又はこれらの誘導体、更に好ましくはポリチオフェン及びその誘導体の少なくともいずれかが挙げられる。
【0148】
以下に、電子伝導性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの他にも、国際公開第98/01909号記載の化合物等が挙げられる。x及びyは各ユニットの繰り返し単位数を表す。
【0149】
【化16】

【0150】
【化17】

【0151】
本発明で用いる電子伝導性化合物の質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは10,000〜500,000であり、更に好ましくは10,000〜100,000である。ここで質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算質量平均分子量である。
【0152】
本発明で用いる電子伝導性化合物は、塗布性及び他の成分との親和性付与の観点から、有機溶剤に可溶であることが好ましい。ここで、「可溶」とは溶剤中に単一分子状態又は複数の単一分子が会合した状態で溶解しているか、粒子径が300nm以下の粒子状に分散されている状態を指す。
一般に、電子伝導性化合物は水を主成分とする溶媒に溶解することから、化合物としては親水性を有するが、このような電子伝導性化合物を有機溶剤に可溶化するには、電子伝導性化合物を含む組成物中に、有機溶剤との親和性を上げる化合物(例えば可溶化補助剤等)や有機溶剤中での分散剤等を添加する、あるいは疎水化処理したポリアニオンドーパントを用いることにより、有機溶剤に可溶化することができる。これらの方法により本発明で示される有機溶剤へも溶解可能となるが、化合物としての親水性は残っており、本発明の方法を適用すれば導電性化合物の偏在が可能である。
【0153】
導電性化合物のハードコート層における分布としては、元素分析(ESCA)によるハードコート層表面側の窒素又は硫黄の原子量が0.5〜5mol%であることが好ましい。この範囲であれば良好な帯電防止性が得易い。より好ましくは0.5〜3.5mol%であり、更に好ましくは0.5〜2.5mol%である。
【0154】
本発明のハードコート層形成用組成物は導電性化合物を含有してもよいし、含有しなくてもよい。導電性化合物を含有する場合、導電性化合物の好ましい含有量は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、1〜30質量%である。
【0155】
本発明のハードコート層には、これらの他に更に添加剤を含有することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、ポリマーの分解を抑える目的で、紫外線吸収剤、亜リン酸エステル、ヒドロキサム酸、ヒドロキシアミン、イミダゾール、ハイドロキノン、フタル酸、などを挙げることができる。また、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物(特に、フッ素系界面活性剤)、内部散乱性付与の目的でのマット粒子などを挙げることができる。更には、防眩性を付与する目的で、特開2008−268939号公報等に記載されている樹脂粒子、膜の均一性を高める目的で、特開2004−331812号公報、特開2004−163610号公報等に記載されているレベリング剤なども好ましく併用することができる。
【0156】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、透明基材上に前記ハードコート層形成用組成物を用いて形成されたハードコート層を有する。
【0157】
本発明の光学フィルムとして、特に好ましい態様は、セルロースアシレートフィルム基材上に、ハードコート層を有する光学フィルムであって、該セルロースアシレートフィルム基材のハードコート層の界面には、基材成分とハードコート層成分が混在した領域が存在し、かつ該ハードコート層が前記防汚剤を含有し、該防汚剤が該ハードコート層の表面側(透明基材と反対側の界面側)に局在して存在する光学フィルムである。
ここで、ハードコート層とは、ハードコート層成分が含まれている部分全体を指し、基材とは、ハードコート層成分を含まない部分を示すこととする。
本発明の光学フィルムでは、基材成分とハードコート層成分が混在した領域が存在していることが好ましい。このように各成分が混じり合うことにより、基材とハードコート層密着性が向上する。基材成分とハードコート層成分が混在した領域の厚さは、ハードコート層全体の厚さに対して5%以上99%以下であることが好ましく、10%以上80%以下であることが更に好ましく、15%以上70%以下であることがもっとも好ましい。混在した領域が5%以上であると基材とハードコート層との密着性が十分になり、また99%以下であるとハードコート層の最表面に基材成分が露出することがないため、更なる上層との密着性が低下しない。
また、混在した領域は、フィルムをミクロトームで切削し、断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で分析した時に、基材成分とハードコート層成分が共に検出される部分として測定することができ、この領域の膜厚も同様にTOF−SIMSの断面情報から測定することができる。例えば、基材としてセルロースアセテートフィルムを、ハードコート成分(不飽和二重結合を有する化合物)としてアクリロイル基を有する化合物を用いた場合は、基材を表す二次イオンとしてCを、ハードコート成分(不飽和二重結合を有する化合物)を表す二次イオンとしCをそれぞれ検出し、全膜厚に対す両二次イオンが検出される領域の膜厚を測定することで、混在した領域の割合を知ることができる。
【0158】
[透明基材]
本発明の光学フィルムにおいては、透明基材(支持体)として種々用いることができるが、セルロース系ポリマーを含む基材が好ましく、セルロースアシレートフィルムを用いることがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムとしては、特に限定されないが、ディスプレイに設置する場合は、セルローストリアセテートフィルムを偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてそのまま用いることができるため、生産性やコストの点でセルローストリアセテートフィルムが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムの厚さは、通常、25μm〜1000μm程度であるが、取り扱い性が良好で、かつ必要な基材強度が得られる40μm〜200μmが好ましい。
【0159】
本発明ではセルロースアシレートフィルムに、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従う。セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。
【0160】
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることが更に好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0161】
一般に、セルロースアシレートの2,3,6位の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。更にセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
【0162】
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044、実施例、合成例1、段落番号0048〜0049、合成例2、段落番号0051〜0052、合成例3に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
【0163】
[ハードコート層の物性]
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性能を得るための光学設計から、1.48〜1.65であることが好ましい。更に望ましくは1.48〜1.60、最も好ましくは1.48〜1.55である。
【0164】
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、0.5μm〜20μmとし、好ましくは1μm〜10μm、更に好ましくは1μm〜5μmである。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0165】
(光学フィルムの製造方法)
本発明の光学フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
まずハードコート層形成用組成物が調製される。次に、該組成物をディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法(米国特許2681294号明細書、特開2006−122889号公報参照)がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
【0166】
塗布した後、乾燥、光照射してハードコート層形成用組成物から形成される層を硬化し、これによりハードコート層が形成される。必要に応じて、透明基材上にあらかじめその他の層を塗設しておき、その上にハードコート層を形成することも可能である。このようにして本発明の光学フィルムが得られる。また必要に応じて前記したようなその他の層を設けることもできる。本発明の光学フィルムの製造方法において、複数の層を同時に塗布してもよいし、逐次塗布してもよい。
【0167】
本発明の光学フィルムの製造方法の特に好ましい態様としては、セルロースアシレートフィルム基材上に、ハードコート層を有する光学フィルムの製造方法であって、該基材上に前記ハードコート層形成用組成物を塗布、硬化してハードコート層を形成する光学フィルムの製造方法である。
【0168】
[偏光板用保護フィルム]
光学フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いる場合、薄膜層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化する、所謂ケン化処理を行うことで、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良することができる。
偏光子の2枚の保護フィルムのうち、光学フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ましい。
【0169】
上述したケン化処理について説明する。ケン化処理は、加温したアルカリ水溶液中に一定時間光学フィルムを浸漬し、水洗を行った後、中和するための酸洗浄を行う処理である。透明支持体の偏光膜と貼り合わせる側の面が浸水化されればどのような処理条件でも構わないため、処理剤の濃度、処理剤液の温度、処理時間は適宜決定されるが、通常生産性を確保する必要から3分以内で処理可能なように処理条件を決定する。一般的な条件としては、アルカリ濃度が3質量%〜25質量%であり、処理温度は30℃〜70℃、処理時間は15秒〜5分である。アルカリ処理に用いるアルカリ種としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適であり、酸洗浄に使用する酸としては硫酸が好適であり、水洗に用いる水はイオン交換水又は純水が好適である。
本発明の光学フィルムの帯電防止層は、このようなケン化処理によってアルカリ水溶液に晒されても、帯電防止性能が良好に保たれる。
【0170】
本発明の光学フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いる場合、セルロースアシレートフィルムは、セルローストリアセテートフィルムであることが好ましい。
【0171】
[偏光板]
次に、本発明の偏光板について説明する。
本発明の偏光板は、偏光膜と該偏光膜の両面を保護する2枚の保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が本発明の光学フィルム又は反射防止フィルムであることを特徴とする。
【0172】
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
【0173】
光学フィルムのセルロースアシレートフィルムが、必要に応じてポリビニルアルコールからなる接着剤層等を介して偏光膜に接着しており、偏光膜のもう一方の側にも保護フィルムを有する構成が好ましい。もう一方の保護フィルムの偏光膜と反対側の面には粘着剤層を有していても良い。
【0174】
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、物理強度、帯電防止性、耐久性に優れた偏光板が作製できる。
【0175】
また、本発明の偏光板は、光学補償機能を有することもできる。その場合、2枚の表面保護フィルムの表面及び裏面のいずれかの一面側のみを上記光学フィルムを用いて形成されており、該偏光板の光学フィルムを有する側とは他面側の表面保護フィルムが光学補償フィルムであることが好ましい。
【0176】
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、更に、液晶表示装置の明室でのコントラスト、上下左右の視野角を改善することができる。
【0177】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルム、反射防止フィルム又は偏光板をディスプレイの最表面に有する。
本発明の光学フィルム、反射防止フィルム及び偏光板は液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いることができる。
特に、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、透過型/半透過型液晶表示装置において、液晶セルのバックライト側の最表層に用いることが特に好ましい。
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
【実施例】
【0178】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0179】
〔光学フィルムの作製〕
下記に示す通りに、ハードコート層形成用の塗布液を調製し、透明基材上にハードコート層を形成して、光学フィルム試料1〜23を作製した。
【0180】
(ハードコート層用塗布液A−1の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液A−1(固形分濃度50質量%)とした。
炭酸ジメチル 300質量部
メチルイソブチルケトン 700質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物(PET30、日本化薬(株)製) 920質量部
光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
30質量部
反応性シリコーン(RMS−033、信越化学(株)製) 50質量部
【0181】
ハードコート層用塗布液A−1と類似の方法で、各成分を下記表1のように混合して溶剤に溶解して表1記載の比率になるように調整し、固形分濃度50質量%のハードコート層用塗布液A−2〜A−23を作製した。表1において溶剤1と溶剤2の含有量は(溶剤1+溶剤2)の合計の含有量に対する質量%である。
【0182】
【表1】

【0183】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
MIBK−ST:シリカゾル(MIBK−ST、固形分30質量%、日産化学工業(株)製)
光重合開始剤イルガキュア184(Irg.184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
RMS−033:反応性基含有ポリシロキサン(Gelest製、Mw=28000)
X22−164B:反応性シリコーン(信越化学(株)製、Mw=3300)
IP−9:前記導電性化合物IP−9
オプツールDAC:フッ素系化合物(ダイキン化学工業(株)製)
d−4:前記一般式(F−4)の具体的化合物(d−4)
a−5:前記一般式(F−1)の具体的化合物a−5
A−TMM−3:ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業(株)NKエステル)
A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)NKエステル)
MF−1:国際公開第2003/022906号の実施例記載の下記含フッ素不飽和化合物
【0184】
【化18】

【0185】
(ハードコート層A−1の作製)
層厚80μmの透明支持体としてのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士フイルム(株)製、屈折率1.48)上に、前記ハードコート層用塗布液A−1をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量150mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層A−1を形成した。
【0186】
同様の方法でハードコート層用塗布液A−2〜23を用いてハードコート層A−2〜23を作製した。なお、ハードコート層の屈折率の測定は、各層の塗布液を約4μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、多波長アッベ屈折計DR−M2(アタゴ(株)製)にて測定した。「DR−M2,M4用干渉フィルター546(e)nm
部品番号:RE−3523」のフィルターを使用して測定した屈折率を波長550nmにおける屈折率として採用した。
【0187】
(光学フィルムの評価)
以下の方法により光学フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0188】
(1)基材とハードコート層界面の観察
フィルムをミクロトームで切削し、断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で分析し、界面の状態を観察した。基材成分とハードコート層成分が共に検出される部分を基材とハードコート層成分が混在した領域とし、この領域の膜厚も同じTOF−SIMSの断面情報から測定し、ハードコート層全体の厚さに対する基材成分とハードコート層成分が混在した領域の厚さの割合を算出した。また、Xをハードコート層の表面近傍におけるフッ素量あるいはシリコーン量、Yをハードコート層全体でのフッ素量、あるいはシリコーン量としたときのX/Yを算出した。なお、基材を表す二次イオンとしてCを、ハードコート成分(不飽和二重結合を有する化合物)を表す二次イオンとしCをそれぞれ検出した。防汚剤を表す二次イオンとしてはFフラグメントあるいはSi15フラグメントを検出した。
【0189】
(2)防汚性
フィルムをガラス面上に粘着剤で固定し、25℃60RH%の条件下で黒マジック「マッキー極細(商品名:ZEBRA製)」のペン先(細)にて直径5mmの円形を3周書き込み、10秒後に10枚重ねに折り束ねたベンコット(商品名、旭化成(株))でベンコットの束がへこむ程度の荷重で2往復拭き取る。マジック跡が拭き取りで消えなくなるまで前記の書き込みと拭き取りを前記条件で繰り返し、拭き取りできた回数により防汚性を以下の基準で評価し、△以上をOKとした。
◎:消えなくなるまでの回数が30回以上
○:消えなくなるまでの回数が5回以上30回未満
△:消えなくなるまでの回数が1回以上5回未満
×:拭取れない
【0190】
(3)密着性評価
JIS−K−5400に記載の碁盤目剥離法にて評価を行った。即ち、試料表面に1mm間隔で100個の碁盤目を入れ、セロハンテープ(ニチバン(株)製)で密着試験を行った。新しいセロハンテープを貼ったあとに剥離し、以下の基準で判定した。
◎・・碁盤目中のマスの剥離が起こらない
○・・碁盤目中のマスの剥離が無いものが90%以上で、僅かに剥離するが問題がない
△・・碁盤目中のマスの剥離が無いものが70%以上90%未満であり、僅かに剥離するがほとんど問題がない
×・・碁盤目中のマスの剥離が無いものが70%未満であり、非常に問題である
【0191】
(4)鉛筆硬度
JIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。光学フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS S 6006に規定する試験用鉛筆を用いて評価した。ハードコート性能として、硬度は2.5H以上であることが好ましい。
【0192】
(5)ゴミ付き防止性評価
光学フィルムの透明支持体側をCRT表面に貼り付け、0.5μm以上の埃及びティッシュペーパー屑を、1ft(立法フィート)当たり100〜200万個有する部屋で24時間使用した。反射防止フィルム100cm当たり、付着した埃とティッシュペーパー屑の数を測定し、それぞれの結果の平均値で以下のように評価した。
A:20個未満で、ほとんど屑が付着しない
B:20個以上200個未満で、小量の屑が付着するが問題はない
C:200個以上で、多量の屑が付着する
【0193】
【表2】

【0194】
表2に示すように、本発明のハードコート層形成用組成物を使用すると、防汚性を改善してかつ、密着性、鉛筆硬度にも優れた光学フィルムを得ることができた。また、導電性化合物を含有する試料No.21及び22ではごみ付き防止性もA又はBランクになり、上記効果に加えて良好なごみ付き防止性も付与することができた。
【0195】
(光学フィルムの鹸化処理)
前記試料No.6に以下の処理を行った。1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した光学フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済みの光学フィルムを作製した。
【0196】
(偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)と、鹸化処理済みの光学フィルムを、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面に接着、保護して偏光板(試料No.24)を作製した。
【0197】
有機ELディスプレイの表面にハードコート層が外側になるように試料No.24を接着剤で貼り付けた。傷つきや面状ムラが無く良好な表示性能が得られ、かつマジック汚れも良好に拭取れた。
【0198】
参考のため、下記表3に各溶媒の分子量、SP値、沸点、セルローストリアセテート(TAC)溶解性、及び防汚性を示す。
【0199】
(SP値)
化合物のSP値とは溶解性パラメーターで、どれだけ溶媒などに溶けやすいかということを数値化したものであり、有機化合物ではよく使われる極性と同義で、このSP値が大きい程、極性が大きいことを表す。SP値は例えばFedorの推算法(SP値基礎・応用と計算方法 p.66:山本秀樹著:情報機構(2005.3.31発行)で計算した値である。
【0200】
(TAC溶解性)
溶媒のTAC溶解性Sは次の方法で評価できる。質量Mを測った基材フィルムを溶媒に5分間浸漬し、溶媒から取り出したものを(著しく軟化している場合はろ過する)200℃のオーブンで1分間乾燥させる。その後再び質量M’を測定し、基材フィルムの質量の変化分より、溶解性S=基材フィルムの質量変化量=(M−M’)/M×100 (質量%)とし、以下のように評価した。
◎・・・50%<S≦100%で、基材を非常に溶解する
○・・・30%<S≦50%で、基材を溶解する
△・・・5%<S≦30%で、基材を小量溶解するが効果は小さい
×・・・0%≦S<5%で、基材をほとんど溶解しない
【0201】
【表3】

【0202】
表3に示すとおり、本発明における炭酸ジメチルと同じような物性(分子量、SP値、沸点、及びTAC膨潤性)を示す溶媒であっても、炭酸ジメチルのような防汚剤の局在性を示す溶媒はない。この結果からも、炭酸ジメチルを用いることで本発明のような格別の効果が得られることは予想し得ないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有するハードコート層形成用組成物。
(a)重合性不飽和基を有する含フッ素化合物、及び重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の防汚剤
(b)炭酸ジメチル
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤
【請求項2】
前記(a)防汚剤として重合性不飽和基を有する含フッ素化合物を含有し、該含フッ素化合物が、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有する、請求項1に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項3】
前記含フッ素化合物が重合性不飽和基を一分子中に4つ以上有する、請求項2に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項4】
前記含フッ素化合物が、−(CFO)−(CFCFO)−で表されるパーフルオロポリエーテル基(上記p及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。ただしp+qは1以上の整数である。)を有する、請求項2又は3に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項5】
前記含フッ素化合物の重量平均分子量が1000以上5000未満である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項6】
前記(a)として、重合性不飽和基を有する重量平均分子量が15000以上のポリシロキサン化合物を含有し、該ポリシロキサン化合物が、重合性不飽和基を一分子中に複数有するジメチルシロキサンである、請求項1に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項7】
前記(a)防汚剤の表面張力が25.0mN/m以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項8】
更に(e)シリカ微粒子を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項9】
(c)不飽和二重結合を有する化合物が水素結合性の置換基を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項10】
更に、導電性化合物を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項11】
前記(b)炭酸ジメチルの含有量が全溶剤に対して10質量%以上である請求項1〜10のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項12】
透明基材上に、請求項1〜11のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層を有する光学フィルム。
【請求項13】
前記透明基材がセルロースアシレートフィルムである請求項12に記載の光学フィルム。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の光学フィルム又は請求項15に記載の偏光板を有する画像表示装置。
【請求項16】
セルロースアシレートフィルム基材上に、ハードコート層を有する光学フィルムの製造方法であって、該セルロースアシレートフィルム基材上に請求項1〜11のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物を塗布、硬化してハードコート層を形成する工程を有する光学フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−88699(P2012−88699A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207956(P2011−207956)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】