説明

ハードコート層用組成物、ハードコートフィルム、偏光板及び画像表示装置

【課題】優れたブロッキング防止性能とレベリング性能とを有するハードコート層を形成することのできるハードコート層用組成物、該ハードコート層用組成物を用いてなるハードコートフィルム、偏光板及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】レベリング剤と、シリカ微粒子と、バインダー樹脂とを含有するハードコート層用組成物であって、上記レベリング剤は、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及び、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成とするフッ素系レベリング剤を含有することを特徴とするハードコート層用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層用組成物、ハードコートフィルム、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー等の画像表示装置においては、一般に最表面には反射防止のための光学積層体が設けられている。このような反射防止用光学積層体は、光の散乱や干渉によって、像の映り込みを抑制したり反射率を低減したりするものである。
【0003】
上記光学積層体としては、透明性基材の表面にハードコート層を形成したハードコートフィルムが知られている。
このようなハードコートフィルムは、安価及び大量生産の観点から長尺で製造され、その後ロールに巻き取られるが、ハードコートフィルムの表面が平滑であると、ロールからハードコートフィルムを繰り出す際に、隣接するハードコートフィルム同士が貼りつき、ブロッキングといわれる現象が生じて歩留まりが低下するという問題があった。
【0004】
このようなブロッキングの問題に対して、例えば、ハードコート層に易滑剤を添加し、該ハードコート層表面に存在する易滑剤によって、ハードコート層表面に滑り性(易滑性)を付与する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来の易滑剤を添加する方法では、該易滑剤がハードコート層中に均一分散されるため、充分な易滑性を得るためには、その添加量を多くする必要があり、高コストとなる問題があり、また、ハードコート層の透明性を損なうという問題もあった。
【0005】
また、ハードコート層に易滑剤とレベリング剤とを添加してハードコート層に易滑性を付与する方法も知られている。
このようなハードコート層に添加されるレベリング剤としては、例えば、C8テロマー(パーフルオロオクチル基(C17−))を含むフッ素系レベリング剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、近年、より高いレベルでのブロッキング防止性が要求されており、従来のレベリング剤を併用したハードコートフィルムでは、近年の高レベルでのブロッキング防止性を満足させることができないものであった。
更に、C8テロマーは、その製造過程において生成されるパーフルロオオクタン酸の環境負荷、人体への影響が懸念される物質であり、より環境負荷等の少ない材料を用いたハートコートフィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−249815号公報
【特許文献2】特開2010−241019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、優れたブロッキング防止性能とレベリング性能とを有するハードコート層を形成することのできるハードコート層用組成物、該ハードコート層用組成物を用いてなるハードコートフィルム、偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、シリカ微粒子と、特定のモノマー組成からなるフッ素系レベリング剤とを含有するハードコート層用組成物は、硬化させてハードコート層としたときに、所定のハードコート性に加えて、極めて優れたブロッキング性を発揮できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、レベリング剤と、シリカ微粒子と、バインダー樹脂とを含有するハードコート層用組成物であって、上記レベリング剤は、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及び、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成とするフッ素系レベリング剤を含有することを特徴とするハードコート層用組成物である。
【0010】
本発明のハードコート層用組成物において、上記フッ素系レベリング剤のモノマー組成中、ポリプロピレングリコールモノアクリレートが10〜50質量%であり、ポリエチレングリコールモノアクリレートが10〜50質量%であり、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートが10〜50質量%であることが好ましい。
また、上記フッ素系レベリング剤におけるフッ素原子含有率が、7〜34質量%であることが好ましい。
また、上記フッ素系レベリング剤の重量平均分子量が、11000〜25000であることが好ましい。
また、本発明のハードコート層用組成物は、上記シリカ微粒子100質量部に対して、上記フッ素系レベリング剤を5〜60質量部含有することが好ましい。
【0011】
本発明はまた、光透過性基材及びハードコート層を有し、上記ハードコート層は、本発明のハードコート層用組成物の硬化物からなることを特徴とするハードコートフィルムでもある。
また、本発明は、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に上述のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板でもある。
更に、本発明は、最表面に上述のハードコートフィルム、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のハードコート層用組成物は、レベリング剤と、シリカ微粒子と、バインダー樹脂とを含有する。
上記レベリング剤は、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及び、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成とするフッ素系レベリング剤を含有するものである。
上記フッ素系レベリング剤は、本発明のハードコート層用組成物を用いてハードコート層を形成したときに、本発明のハードコート層用組成物に含まれるバインダー樹脂との相互作用により、該ハードコート層の上層部(光透過性基材と反対側の表面付近)に偏在する。この結果、本発明のハードコート層用組成物によると、平面性が良好なハードコート層が形成でき、レベリンク性能に優れたハードコートフィルムを得ることができる。
また、上記フッ素系レベリング剤は、モノマー組成として、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、及び、ポリエチレングリコールモノアクリレートを含むため、ある程度の親水性が担保される。本発明のハードコート層用組成物を用いてハードコート層を形成すると、シリカ微粒子を引き寄せ、シリカ微粒子がハードコート層の上層部に偏在する。この結果、本発明のハードコート層用組成物によると、優れたブロッキング防止性能を有するハードコートフィルムを得ることができる。
これに対して、上述したフッ素系レベリング剤とは異なるモノマー組成の従来のレベリング剤とシリカ微粒子とを含む従来のハードコート用組成物では、親水性であるシリカ微粒子との相性により、上記レベリング剤がハードコート層の上層部に偏在したとしても、該レベリング剤の親水性が不充分であったため、シリカ微粒子を引き寄せることがなく、その結果、シリカ微粒子は、ハードコート層に均一分散し、ハードコートフィルムのブロッキング防止性能は不充分になると考えられる。
すなわち、ハードコートフィルムに優れたレベリング性能とブロッキング性能とを付与するためには、上記ハードコート層用組成物に添加するレベリング剤にある程度の親水性が担保されることが必要である。
【0013】
本発明のハードコート層用組成物において、上記フッ素系レベリング剤のモノマー組成中、上記ポリプロピレングリコールモノアクリレートが10〜50質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、上記フッ素系レベリング剤によるハードコート層の上層部の親水性の程度が低下し、シリカ微粒子の偏在が不充分となってハードコートフィルムとしたときにブロッキング防止性能が不充分となることがある。一方、50質量%を超えると、上記フッ素系レベリング剤のフッ素原子含有率が少なくなり、ハードコートフィルムとしたときのレベリング性能が不充分となることがある。
【0014】
また、上記フッ素系レベリング剤のモノマー組成中、上記ポリエチレングリコールモノアクリレートが10〜50質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、上記フッ素系レベリング剤の親水性が低下し、シリカ微粒子の偏在が不充分となってハードコートフィルムとしたときにブロッキング防止性能が不充分となることがある。一方、50質量%を超えると、上記フッ素系レベリング剤のフッ素原子含有率が少なくなり、ハードコートフィルムとしたときのレベリング性能が不充分となることがある。
【0015】
また、上記フッ素系レベリング剤のモノマー組成中、上記2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートが10〜50質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、上記フッ素系レベリング剤のフッ素原子含有率が少なくなり、ハードコートフィルムとしたときのレベリング性能が不充分となることがある。一方、50質量%を超えると、上記フッ素系レベリング剤の親水性が低下し、シリカ微粒子の偏在が不充分となってハードコートフィルムとしたときにブロッキング防止性能が不充分となることがある。
【0016】
上述したモノマー組成からなるフッ素系レベリング剤は、フッ素原子含有率が7〜34質量%であることが好ましい。7質量%未満であると、ハードコートフィルムとしたときにレベリング性能が不充分となることがある。一方、34質量%を超えると、ハードコートフィルムとしたときにブロッキング性能が不充分となることがある。上記フッ素原子含有率のより好ましい下限は10質量%、より好ましい上限は30質量%である。
【0017】
上記フッ素系レベリング剤は、重量平均分子量が、11000〜25000であることが好ましい。11000未満であると、シリカ微粒子を充分にひきつけることができないことがあり、25000を超えると、充分なレベリング性能が得られないことがある。上記重量平均分子量のより好ましい下限は13000であり、より好ましい上限は2万である。
なお、上記フッ素系レベリング剤の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)の方法により得られる値である。
【0018】
本発明のハードコート層用組成物は、レベリング剤として上述したフッ素系レベリング剤のみを含有することが好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他のレベリング剤を含んでいてもよい。
上記その他のレベリング剤としては、例えば、上述したモノマー組成と異なるフッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤等の公知のものを挙げることができる。
【0019】
本発明のハードコート層用組成物では、後述するシリカ微粒子100質量部に対して、上述したフッ素系レベリング剤を5〜60質量部含有することが好まく、より好ましい下限は7質量部、より好ましい上限は50質量部である。5質量部未満であると、ハードコートフィルムとしたときに光学特性が劣ることがあり、60質量部を超えると、ハードコートフィルムとしたときに光学特性が劣ったり、充分なブロッキング防止性能が得られないことがある。
【0020】
本発明のハードコート層用組成物は、シリカ微粒子を含有する。
上記シリカ微粒子は、ブロッキング防止剤(易滑剤)として機能する材料であり、該シリカ微粒子を含有することでハードコートフィルムとしたときに、好適なブロッキング防止性能が得られる。
【0021】
上記シリカ微粒子としては、反応基を持たない、平均一次粒径が100〜600nmの粒子が挙げられる。100nm未満であると、本発明のハードコート層用組成物を用いて形成したハードコートフィルムにブロッキング防止性が発揮されないおそれがある。600nmを超えると、上記ハードコートフィルムのヘイズが高くなるおそれがある。上記平均一次粒径は、100〜350nmであることがより好ましい。
なお、上記平均一次粒径は、メチルイソブチルケトン5重量%分散液の状態でレーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定して得られる値である。また、上記シリカ微粒子の平均一次粒径は、ハードコートフィルムとしたときに、SEM等の顕微鏡観察により測定したシリカ微粒子の直径の平均値として算出することもできる。
【0022】
上記シリカ微粒子の含有量は、本発明のハードコート層用組成物の樹脂固形分100質量部に対して1〜4質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、本発明のハードコート層用組成物を用いて形成したハードコートフィルムにブロッキング防止性が発揮されないおそれがある。4質量部を超えると、本発明のハードコート層用組成物を用いて形成したハードコートフィルムのヘイズが上昇するなど光学特性が悪化したり、分散性が著しく悪化し、凝集・ゲル化の原因となり、結果として上記ハードコートフィルム表面の外観上の欠点やヘイズの上昇につながるおそれがある。
【0023】
本発明のハードコート用組成物は、バインダー樹脂を含有する。
上記バインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線又は電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、又は、熱硬化型樹脂を挙げることができる。より好ましくは電離放射線硬化型樹脂である。なお、本明細書において、「樹脂」は、モノマー、オリゴマー等の樹脂成分も包含する概念である。
【0024】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物を挙げることができる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等及びこれらをエチレンオキサイド(EО)等で変性した多官能化合物、又は、上記多官能化合物と(メタ)アクリレート等の反応生成物(例えば多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートエステル)等を挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。
【0025】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0026】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、製膜性、透明性や耐候性のという観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0027】
上記バインダー樹脂として使用できる熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
なお、本発明のハードコート層用組成物において、上記バインダー樹脂は、市販されているものを用いることもでき、例えば、ビームセットDT3(アクリレートモノマー、アクリルアクリレートオリゴマー、アクリルアクリレートポリマーの混合物、荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0028】
また、本発明のハードコート層用組成物において、上記バインダー樹脂は、イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含有することで、本発明のハードコート層用組成物を用いて形成したハードコートフィルムは、高い硬度と優れた復元性とを有するものとすることができる。
ここで、上記「高い硬度」とは、具体的には、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「3H」以上のことである。
【0029】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、ジイソシアネートからなるイソシアヌレートの末端のイソシアネート基に、多官能モノマーを反応させたウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
上記多官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0031】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、官能基数が9以上であることが好ましい。上記官能基数が9未満であると、充分な硬度が得られないおそれがある。上記官能基数は、12以上であることがより好ましく、15であることが更に好ましい。
【0032】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が1500〜3000であることが好ましい。
1500未満であると、充分な硬度が得られないおそれがある。3000を超えると、本発明のハードコート層用組成物の粘度が上昇して塗工が困難となったり、形成したハードコート層の硬化反応に阻害が生じ充分な硬度が得られないおそれがある。
上記重量平均分子量は、1800〜2500であることがより好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算で求めた値である。
【0033】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートとしては、なかでも、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の三量体でイソシアヌル骨格を形成したイソシアヌレートの3箇所の末端イソシアネートに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)を反応させたウレタンアクリレートが好ましい。このようなウレタンアクリレートは、官能基数が多く、分子量にある程度の大きさがあり、更に骨格にイソシアヌル骨格を有するため、高い硬度を実現し得るとともに、ウレタンアクリレートの特徴としての弾性を有し、例えば、ハードコートフィルムの鉛筆硬度試験による表面の凹みの回復といった復元性も実現し得る。
【0034】
上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂成分中、固形分で30〜50質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、充分な硬度が得られないおそれがある。50質量%を超えると、ハードコートフィルムのカールが発生しやすくなるおそれがある。上記含有量は、35〜50質量%であることがより好ましい。
なお、上記ハードコートフィルムのカールとは、ハードコート層形成時の紫外線硬化反応によって硬化収縮が起こり、塗膜が収縮する為に、塗膜(ハードコート層)と基材との間に応力差が生じて塗膜側にフィルムがカールする現象をいう。
【0035】
上記バインダー樹脂として上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含有する場合、更に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを含有することにより、ハードコートフィルムとしたときに、該ハードコートフィルム同士が貼り付くといったブロッキングをより好適に防止することができる。また、ハードコートフィルムのカールの発生を好適に防止することもできる。
【0036】
上記ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートの含有量は、上記バインダー樹脂成分中、固形分で15〜35質量%であることが好ましい。15質量%未満であると、充分な硬度が得られないおそれがあり、35質量%を超えると、ハードコートフィルムとしたときにカールが発生したり、ブロッキングが発生したりするおそれがある。上記含有量は、20〜35質量%であることがより好ましい。
【0037】
上記ハードコート層用組成物は、更に、バインダー樹脂として、官能基数が6以下のウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
上述したイソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートに加え、官能基数が比較的少ないウレタン(メタ)アクリレートを併用することにより、高い鉛筆硬度を維持しながら、かつ、ハードコートフィルムとしたときのカールを防止することができる。
上記官能基数が6以下のウレタン(メタ)アクリレートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及び/又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)からなるウレタン(メタ)アクリレートであって、官能基数2〜3の多官能アクリレートモノマーを付加させたものであることが好ましい。
【0038】
上記官能基数が6以下のウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂成分中、固形分で15〜35質量%であることが好ましい。15質量%未満であると、ハードコートフィルムとしたときのカールが発生するおそれがある。35質量%を超えると、充分な硬度が得られないおそれがある。
【0039】
上記バインダー樹脂として、上述した樹脂成分の他に、(メタ)アクリルポリマーを含有することが好ましい。上記イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートに加えて、上記(メタ)アクリルポリマーを含有することにより、ハードコートフィルムのカールやダメージを防止することができる。
上記ダメージとは、ハードコート層形成時の紫外線硬化反応による発熱や、該発熱により急激に加熱され、紫外線照射が一気に終了することにより急激に冷却されることによって、硬化収縮とあいまってハードコート層と基材とが流れ方向にスジ状に波打つ現象をいう。
【0040】
上記(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量が1万〜3万であることが好ましい。
上記重量平均分子量が1万未満であると、充分な硬度が得られないおそれがある。3万を超えると、塗膜密着性が低下したり、ハードコート層用組成物の粘度が上昇して塗工面が悪化したり、ハンドリングが悪くなるおそれがある。上記重量平均分子量は、下限が1万であることが好ましく、上限が2万であることが好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)の方法により得られる値である。
【0041】
上記(メタ)アクリルポリマーは、アクリル二重結合当量が200〜300である。上記アクリル二重結合当量が200未満であると、合成することも難しく、また、ガラス転移温度が低下してしまう。300を超えると、二重結合が少なく、硬化させて得られるハードコート層の硬度や耐擦傷性が低下する。
上記アクリル二重結合当量は、下限が210であることが好ましく、上限が270であることが好ましい。
上記アクリル二重結合当量は、配合したモノマーから算出される二重結合量と重量平均分子量により求めた値である。
【0042】
上記(メタ)アクリルポリマーは、上記重量平均分子量と上記アクリル二重結合当量との比(重量平均分子量/アクリル二重結合当量)が50〜80であることが好ましい。
上記比が50未満であると、硬度、耐擦傷性が悪化するおそれがある。80を超えると、密着性が悪化するおそれがある。
上記比は、下限が50であり、上限が70であることがより好ましい。
【0043】
上記(メタ)アクリルポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が40〜100℃であることが好ましい。ガラス転移温度が40℃未満であると、硬度、耐擦傷性が不充分となるおそれがある。100℃を超えると、ハードコート層用組成物の粘度が上昇したり、上記組成物がゲル化したりするおそれがある。上記ガラス転移温度の下限は、50℃であることがより好ましく、上限は70℃であることがより好ましい。
上記ガラス転移温度は、ポリマーを構成するモノマーのTgから計算する方法により得られる値である。
【0044】
上記(メタ)アクリルポリマーは、酸価が1mgKOH/g以下であることが好ましい。上記酸価が、1mgKOH/gを超えると、所望の硬度を有するハードコート層を得ることができないおそれがある。また、ブロッキング防止性が劣る可能性がある。
上記酸価は、0.8mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0045】
上記(メタ)アクリルポリマーは、ハードコート層用組成物のバインダー樹脂中、固形分で5〜20質量%含有されることが好ましい。5質量%未満であると、マーキング跡残りを防止できないおそれがある。20質量%を超えると、ハードコート層の硬度が低下するおそれがある。上記(メタ)アクリルポリマーの含有量は10〜20質量%であることがより好ましい。
【0046】
本発明のハードコート層用組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、公知のものであれば特に限定されず、例えば、アセトフェノン類(例えば、商品名イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、商品名イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォリノプロパン−1−オン)、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。なかでも、アセトフェノン類であることが好ましい。
【0047】
上記光重合開始剤の含有量は、本発明のハードコート層用組成物中の樹脂固形分100質量部に対して、1〜7質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、光重合開始剤の量が不足し、硬化不足となるおそれがある。7質量部を超えると、光重合開始剤が過剰となり、過剰であることによる光重合反応の違いが生じ、かえって硬度不足を引き起こす、溶け残りによる欠点が生じる、といったおそれがある。
上記光重合開始剤の含有量は、上記樹脂固形分100質量部に対して2〜5質量部であることがより好ましい。
【0048】
上記ハードコート層用組成物は、上述した成分以外に、必要に応じて他の成分を更に含んでいてもよい。
上記他の成分としては、熱重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防汚剤、スリップ剤、屈折率調整剤、分散剤等を挙げることができる。これらは公知のものを使用することができる。
【0049】
本発明のハードコート層用組成物は、上述のレベリング剤、シリカ微粒子、バインダー樹脂、及び、必要に応じて光重合開始剤、並びに、他の成分を溶媒中に混合分散させて調製することができる。
上記混合分散は、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー等の公知の装置を使用して行うとよい。
【0050】
上記溶媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル)等が挙げられる。
なかでも、上記溶媒としては、上述した樹脂成分及び他の添加剤を溶解又は分散させ、本発明のハードコート層用組成物を好適に塗工できる点で、メチルイソブチルケトン、及び/又は、メチルエチルケトンが好ましい。
【0051】
本発明のハードコート層用組成物は、総固形分が30〜45%であることが好ましい。30%未満であると、残留溶剤が残ったり、白化が生じるおそれがある。45%を超えると、本発明のハードコート層用組成物の粘度が高くなり、塗工性が低下して表面にムラやスジが出たり、干渉縞が発生するおそれがある。上記固形分は、35〜45%であることがより好ましい。
【0052】
本発明のハードコート層用組成物を、後述する光透過性基材上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥させた後、上記塗膜を硬化させることでハードコート層を形成することができる。
【0053】
本発明のハードコート層用組成物を塗布して塗膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の公知の各種方法を挙げることができる。
【0054】
また、塗布量(乾燥塗布量)は、3〜15g/mであることが好ましい。3g/m未満であると、所望の硬度のハードコート層が得られないおそれがある。15g/mを超えると、カールやダメージの防止が不充分となるおそれがある。上記塗布量は、4〜9g/mであることがより好ましい。
【0055】
上記乾燥の方法としては特に限定されないが、一般的に30〜120℃で3〜120秒間乾燥を行うとよい。
【0056】
上記塗膜を硬化させる方法としては、本発明のハードコート層用組成物の内容等に応じて公知の方法を適宜選択すればよい。例えば、本発明のハードコート層用組成物に含まれる樹脂成分が紫外線硬化型のものであれば、塗膜に紫外線を照射することにより硬化させればよい。
上記紫外線を照射する場合は、紫外線照射量が80mJ/cm以上であることが好ましく、100mJ/cm以上であることがより好ましく、130mJ/cm以上であることが更に好ましい。
【0057】
上記ハードコート層は、層厚みが3〜15μmであることが好ましい。
3μm未満であると、硬度が不充分となるおそれがある。15μmを超えると、残留溶剤が残ったり、塗膜密着性が低下するおそれがある。上記ハードコート層の層厚みは、4〜9μmであることがより好ましい。
上記層厚みは、ハードコート層の断面を、電子顕微鏡(SEM、TEM、STEM)で観察することにより測定して得られた値である。
【0058】
上記光透過性基材は、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものが好ましい。
上記光透過性基材を形成する材料の具体例としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましくはポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、トリアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。
【0059】
上記光透過性基材としては、また、脂環構造を有した非晶質オレフィンポリマー(Cyclo−Olefin−Polymer:COP)フィルムも使用することができる。これは、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が用いられている基材であり、例えば、日本ゼオン社製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト社製スミライトFS−1700、JSR社製アートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学社製アペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成社製オプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。また、トリアセチルセルロースの代替基材として旭化成ケミカルズ社製のFVシリーズ(低複屈折率、低光弾性率フィルム)も好ましい。
【0060】
上記光透過性基材として、上記熱可塑性樹脂を柔軟性に富んだフィルム状体として使用することが好ましいが、硬化性が要求される使用態様に応じて、これら熱可塑性樹脂の板を使用することも可能であり、又は、ガラス板の板状体のものを使用してもよい。
【0061】
上記光透過性基材の厚さとしては、20〜300μmであることが好ましく、より好ましくは上限が200μmであり、下限が30μmである。光透過性基材が板状体の場合にはこれらの厚さを超える厚さであってもよい。
また、上記光透過性基材は、その上に防眩層を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤もしくはプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。
【0062】
上述の光透過性基材及びハードコート層を有し、上記ハードコート層は、本発明のハードコート層用組成物の硬化物からなるハードコートフィルムもまた、本発明1つである。
本発明のハードコートフィルムは、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、3H以上であることが好ましく、4H以上であることがより好ましい。
【0063】
本発明のハードコートフィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、ディスプレイ表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある他、所望のコントラストが得られないおそれがある。上記全光線透過率は、91%以上であることがより好ましい。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
【0064】
また、本発明のハードコートフィルムは、ヘイズが1%以下であることが好ましい。1%を超えると、所望の光学特性が得られず、本発明のハードコートフィルムを画像表示表面に設置した際の視認性が低下する。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
【0065】
本発明のハードコートフィルムは、上述のように、特定のレベリング剤及びシリカ微粒子を含有する本発明のハードコート層用組成物を用いて形成されたハードコート層を有する。そのため、本発明のハードコートフィルムは、優れたレベリング性及びブロッキング防止性を有する。
また、本発明のハードコートフィルムは、バインダー樹脂として、イソシアヌル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートを含有することで、高い硬度と優れた復元性とを有するものとすることができる。
【0066】
また、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光素子の表面に、光透過性基材を貼り合わせる等して本発明のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板も本発明の1つである。
【0067】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と本発明のハードコートフィルムとのラミネート処理においては、光透過性基材にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好となる。
【0068】
本発明はまた、最表面に上記ハードコートフィルム又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられる。
【0069】
上記LCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の防眩性フィルム又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。
【0070】
本発明が上記ハードコートフィルムを有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源はハードコートフィルムの下側(基材側)から照射される。なお、STN型の液晶表示装置には、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0071】
上記PDPは、表面ガラス基板と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述したハードコートフィルムを備えるものでもある。
【0072】
その他の画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質等の発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述したハードコートフィルムを備えるものである。
【0073】
本発明のハードコートフィルムは、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、液晶パネル、PDP、ELD、タッチパネル、電子ペーパー等の高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明のハードコート層用組成物は、上述した構成からなるものであるため、優れたレベリング性能とブロッキング性能とを有するハードコート層を備えたハードコートフィルムを得ることができる。このため、本発明のハードコート層用組成物を用いてなる本発明のハードコートフィルムは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、電子ペーパー等のディスプレイ、特に高精細化ディスプレイに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
【0076】
(実施例1)
イルガキュア184(光重合開始剤、BASFジャパン社製)4質量部を、メチルエチルケトン(MEK)/メチルイソブチルケトン(MIBK)の混合溶剤中に添加して攪拌し溶解させて、最終固形分が40質量%の溶液を調製した。この溶液に、樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)とU−4HA(4官能ウレタンオリゴマー、重量平均分子量600、新中村化学社製)とU−15HA(15官能ウレタンオリゴマー、重量平均分子量2300、新中村化学社製)とポリマー(7975−D41、アクリル二重結合当量250、重量平均分子量15000、日立化成工業社製)を、固形分比で、25質量部:25質量部:40質量部:10質量部となるように添加して攪拌した。この溶液に、レベリング剤(製品名:メガファックF−477、DIC社製)を固形分比で0.2質量部添加して撹拌し、更に、シリカ微粒子(SIRMIBK15WT%−E65、CIKナノテック社製)を固形分比で2質量部添加して攪拌し、ハードコート層用組成物を調製した。
このハードコート層用組成物を、トリアセチルセルロース(TAC)基材(商品名KC4UAW、厚み40μm、コニカミノルタオプト社製)上に、スリットリバースコートにより、乾燥塗布量8g/mとなるように塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜を70℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射量150mJ/cmで紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み7μmのハードコート層を形成し、実施例1のハードコートフィルムを得た。
なお、「メガファックF−477」は、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及び、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成とするフッ素系レベリング剤である。
【0077】
(実施例2)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤の配合量を0.1質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0078】
(実施例3)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤の配合量を0.6質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0079】
(実施例4)
実施例1のハードコート層用組成物において、シリカ微粒子の配合量を1質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0080】
(実施例5)
実施例1のハードコート層用組成物において、シリカ微粒子の配合量を1.5質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0081】
(実施例6)
実施例1のハードコート層用組成物において、シリカ微粒子の配合量を3質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0082】
(実施例7)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤の配合量を0.6質量部とし、シリカ微粒子の配合量を1.3質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0083】
(実施例8)
実施例1のハードコート層用組成物において、樹脂成分として、ビームセットDT3(アクリルモノマー、アクリルアクリレートオリゴマー、アクリルアクリレートポリマーの混合物、荒川化学工業社製)100質量部を用い、シリカ微粒子の配合量を1.5質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0084】
(比較例1)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤(製品名:メガファックF−477、DIC社製)に代えて、レベリング剤(製品名:メガファックF−444、DIC社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
なお、「メガファックF−444」は、下記化学式(1)で表される化合物からなるフッ素系レベリング剤である。
【0085】
【化1】

【0086】
(比較例2)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤(製品名:メガファックF−477、DIC社製)に代えて、レベリング剤(製品名:メガファックF−554、DIC社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
なお、「メガファックF−554」は、ポリイソブチレングリコールモノアクリレート及び2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成とするフッ素系レベリング剤である。
【0087】
(比較例3)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤(製品名:メガファックF−477、DIC社製)に代えて、レベリング剤(製品名:メガファックF−552、DIC社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
なお、「メガファックF−552」は、メタクリル酸メチル、アクリル酸オクタデシル及び2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成とするフッ素系レベリング剤である。
【0088】
(比較例4)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤(製品名:メガファックF−477、DIC社製)に代えて、レベリング剤(製品名:メガファックMCF−350、DIC社製)を用いた以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
なお、「メガファックMCF−350」は、メタクリル酸メチル、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、トリレンジイソシアネート(TDI)、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート及び下記化学式(2)で表される化合物をモノマー組成とするフッ素系レベリング剤である。
【0089】
【化2】

【0090】
(参考列1)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤の配合量を0.05質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0091】
(参考例2)
実施例1のハードコート層用組成物において、シリカ微粒子の配合量を0.5質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0092】
(参考例3)
実施例1のハードコート層用組成物において、レベリング剤の配合量を0.7質量部とし、シリカ微粒子の配合量を1質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0093】
(参考例4)
実施例1のハードコート層用組成物において、シリカ微粒子の配合量を5質量部とした以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0094】
(参考例5)
実施例1のハードコート層用組成物において、樹脂成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)のみを100質量部で用いた以外は、実施例1と同様にしてTAC基材上にハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを得た。
【0095】
得られたハードコートフィルムについて、下記の項目において評価した。評価結果を表1に示した。
<鉛筆硬度試験>
各ハードコートフィルムを、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆(硬度HB〜3H)を用いて、JISK5600−5−4(1999)が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、4.9Nの荷重にて、ハードコート層が形成された表面の鉛筆硬度を測定した。
【0096】
<ブロッキング防止性>
各ハードコートフィルムを2枚準備し、それぞれのハードコート層同士を擦り合わせて滑りやすさを下記の基準にて評価した。
◎:良く滑るもの
○:滑りやすいもの
△:やや滑るもの
×:滑らないもの
【0097】
<レベリング性>
ハードコートフィルムを蛍光灯下で透過・反射で、目視にて評価した。
○:外観上なんら問題が見られない
×:ムラ・スジ・白化・ヘイズの上昇等レベリング剤不足又は過剰、相溶性の悪さ等による外観の悪化が見られる
【0098】
【表1】

【0099】
表1より、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及び、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成としたフッ素系レベリング剤を含有するハードコート層用組成物を用いた実施例のハードコートフィルムは、鉛筆硬度試験、ブロッキング防止性及びレベリング性のいずれも良好な結果であった。
一方、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及び、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成としなかったフッ素系レベリング剤を含有するハードコート層用組成物を用いた比較例のハードコートフィルムは、いずれもブロッキング防止性に劣るものであった。
また、フッ素系レベリング剤の含有量が少ないハードコート層用組成物を用いた参考例1のハードコートフィルム、及び、シリカ微粒子の含有量の少ない参考例2のハードコートフィルムは、いずれも実施例と比較してブロッキング防止性に劣るものであった。また、レベリング剤の含有量の多い参考例3のハードコートフィルムは、白化及びハードコート層用組成物の泡立ちが発生したため、レベリング性の評価に劣り、シリカ微粒子の含有量の多い参考例4のハードコートフィルムは、ヘイズが高くレベリング性の評価に劣るものであった。また、樹脂成分としてPETAのみを用いた参考例5のハードコートフィルムは、鉛筆硬度に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のハードコート層用組成物を用いたハードコートフィルムは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、タッチパネル、電子ペーパー等のディスプレイ、特に高精細化ディスプレイに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベリング剤と、シリカ微粒子と、バインダー樹脂とを含有するハードコート層用組成物であって、
前記レベリング剤は、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、及び、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートをモノマー組成とするフッ素系レベリング剤を含有する
ことを特徴とするハードコート層用組成物。
【請求項2】
フッ素系レベリング剤のモノマー組成中、ポリプロピレングリコールモノアクリレートが10〜50質量%であり、ポリエチレングリコールモノアクリレートが10〜50質量%であり、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートが10〜50質量%である請求項1記載のハードコート層用組成物。
【請求項3】
フッ素系レベリング剤におけるフッ素原子含有率が、7〜34質量%である請求項1又は2記載のハードコート層用組成物。
【請求項4】
フッ素系レベリング剤の重量平均分子量が、11000〜25000である請求項1、2又は3記載のハードコート層用組成物。
【請求項5】
シリカ微粒子100質量部に対して、フッ素系レベリング剤を5〜60質量部含有する請求項1、2、3又は4記載のハードコート層用組成物。
【請求項6】
光透過性基材及びハードコート層を有し、
前記ハードコート層は、請求項1、2、3、4又は5記載のハードコート層用組成物の硬化物からなる
ことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項7】
偏光素子を備えてなる偏光板であって、
前記偏光素子の表面に請求項6記載のハードコートフィルムを備えることを特徴とする偏光板。
【請求項8】
最表面に請求項6記載のハードコートフィルム、又は、請求項7記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2012−252275(P2012−252275A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126617(P2011−126617)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】